説明

インシュレータ及び内燃機関の排気系

【課題】本発明は、熱に対する強度に優れ、内燃機関の排気系の温度低下を抑制することが可能なインシュレータ及び該インシュレータが装着されている内燃機関の排気系を提供することを目的とする。
【解決手段】インシュレータ310は、覆い部材311上に、表層として、セラミック繊維及び/又はガラス繊維からなるマット部材312が固定されている。また、排気マニホールド110は、インシュレータ310を、マット部材312と当接するように装着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気系用インシュレータ及び内燃機関の排気系に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排気マニホールド、排気管等の内燃機関の排気系には、放熱や騒音を防止するために、インシュレータが装着されている。
【0003】
特許文献1には、金属製の覆い部材と、覆い部材の内側に張り合わせた無機質繊維よりなるマット部材と、マット部材の表面に張り合わせた無機質耐熱クロス部材とを組み付けて一体化させたインシュレータにおいて、十字形座金の4本の腕部分の先端でマット部材のたるみを防止する構造が開示されている。具体的には、十字形座金を4本の腕部分で凹状に折り曲げ、クロス部材に開けた丸穴からマット部材を部分的に切り出した後の空所に入り込ませ、座金の中央部分を覆い部材にスポット溶接で固定している。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたインシュレータを内燃機関の排気系に装着しても、排気系と、クロス部材又は十字形座金との間の隙間に走行風が流れ込むため、排気系の温度が低下するという問題がある。このとき、十字形座金を介して熱伝導し、排気系の温度が低下するという問題もある。その結果、排気ガスを浄化する性能が低下することがある。
【0005】
また、特許文献1に記載されたインシュレータは、覆い部材の内側にマット部材が張り合わされているため、熱に対する強度が不十分であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−49426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術が有する問題に鑑み、熱に対する強度に優れ、内燃機関の排気系の温度低下を抑制することが可能なインシュレータ及び該インシュレータが装着されている内燃機関の排気系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のインシュレータは、金属製の覆い部材上に、表層として、セラミック繊維及び/又はガラス繊維からなるマット部材が固定されている。
【0009】
本発明の内燃機関の排気系は、本発明のインシュレータを、マット部材と当接するように装着している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、熱に対する強度に優れ、内燃機関の排気系の温度低下を抑制することが可能なインシュレータ及び該インシュレータが装着されている内燃機関の排気系を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の内燃機関の排気系の実施形態を示す模式図である。
【図2】図1のインシュレータを示す断面図である。
【図3】図1のインシュレータの比較例を示す断面図である。
【図4】図2のマット部材を示す斜視図である。
【図5】略三角柱状の爪が形成されている覆い部材の具体例を示す斜視図である。
【図6】略四角(台形)柱状の爪が形成されている覆い部材の具体例を示す斜視図である。
【図7】その他の形状の爪が形成されている覆い部材の具体例を示す斜視図である。
【図8】図6の(b)の覆い部材の変形例を示す斜視図である。
【図9】図8の覆い部材の作製方法を示す上面図である。
【図10】打ち抜き成形部の形状を示す斜視図である。
【図11】図2のインシュレータの変形例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、本発明を実施するための形態を図面と共に説明する。
【0013】
図1に、本発明の内燃機関の排気系の実施形態を示す。ディーゼルエンジンの排気系100は、ディーゼルエンジン200から排出された排気ガスが通過する排気マニホールド110、排気マニホールド110を通過した排気ガスを浄化する浄化装置120、浄化装置120で浄化された排気ガスが通過する排気管130、排気管130を通過した排気ガスを浄化する浄化装置140、浄化装置140で浄化された排気ガスが通過する排気管150及び排気管150を通過した排気ガスが排出されるマフラー160が接続されている。
【0014】
排気マニホールド110は、外周部にインシュレータ310が着脱自在に装着されている。
【0015】
インシュレータ310は、図2に示すように、アルミめっき鋼板からなる覆い部材311にスタッド313が設けられており、シリカアルミナ繊維からなるマット部材312が、スタッド313により、空間を介することなく密着した状態で、排気マニホールド110に固定されている。なお、マット部材312の側端部は、覆い部材311の側端部に形成されている折り返し部311aにより、空間を介することなく密着した状態で、被覆されている。このとき、排気マニホールド110にマット部材312が空間を介することなく密着しているため、排気マニホールド110と覆い部材311の間に隙間が形成されず、排気マニホールド110の温度低下を抑制することができる。その結果、後述する浄化装置120及び140の排気ガスを浄化する性能の低下を抑制することができる。
【0016】
なお、排気マニホールド110が複雑な形状であっても、マット部材312は、排気マニホールド110に空間を介することなく密着するため、排気マニホールド110の温度低下を抑制することができる。
【0017】
これに対して、図3に示すように、スタッド313を用いずに、スポット溶接(不図示)により、覆い部材311にステンレス鋼からなるメッシュ313'を固定すると、覆い部材311とメッシュ313'の間にマット部材312が挟持されるが、排気マニホールド110と覆い部材311の間に隙間が形成され、排気マニホールド110の温度が低下する。その結果、浄化装置の排気ガスを浄化する性能が低下する。
【0018】
覆い部材311は、折り返し部311aが側端部に形成されているため、マット部材312の側端部の側からの脱離を抑制することができる。また、覆い部材311は、折り返し部311aが形成されていない側の側端部に、ボルト孔311bが形成されている。
【0019】
覆い部材311を構成する材料としては、排気マニホールド110の形状に加工できれば、特に限定されず、鉄、アルミニウム、銅、ステンレス鋼等が挙げられる。
【0020】
覆い部材311の厚さは、エンジンの振動による破損が起こらない強度であれば、特に限定されず、通常、0.1〜0.6mmである。
【0021】
なお、覆い部材311は、強度を向上させるために、エンボス、ニンバス等の表面加工を施してもよいし、2枚以上重ね合わせてもよい。
【0022】
マット部材312は、図4に示すように、厚さ方向をz軸とすると、yz平面及びzx平面に含まれない単一の方向に、表裏両面からニードリングされており、交絡点312aが形成されている。このため、マット部材312は、スタッド313と良好に絡み合うことができる。
【0023】
マット部材312の交絡点312aの密度は、通常、20個/cmであり、5〜25個/cmが好ましい。
【0024】
以下、マット部材312の製造方法について説明する。
【0025】
まず、アルミニウムの含有量が70g/l、塩素に対するアルミニウムの原子比が1.8の塩基性塩化アルミニウム水溶液に、アルミナとシリカの組成比が60〜80:40〜20、好ましくは70〜74:30〜26となるように、シリカゾルを添加する。アルミナの組成比が60%以下であると、アルミナとシリカから生成されるムライトの組成比が小さくなるため、マット部材312の熱伝導度が大きくなり、十分な断熱性能が得られない。
【0026】
次に、ポリビニルアルコール等の樹脂を添加した後、濃縮して、紡糸液を調製する。さらに、紡糸液を用いて、ブローイング法により紡糸する。
【0027】
ブローイング法は、エアーノズルから吹き出される空気流と、紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液流を用いて紡糸する方法である。エアーノズルからのスリット当たりのガス流速は、通常、40〜200m/秒である。また、紡糸液供給ノズルの直径は、通常、0.1〜0.5mmであり、紡糸液供給ノズル1本当たりの紡糸液の供給量は、通常、1〜120ml/時であるが、3〜50ml/時が好ましい。このような条件で紡糸液供給ノズルから押し出される紡糸液は、十分に延伸され、溶着されにくいので、繊維径分布の狭い均一なシリカアルミナ繊維前駆体のシートが得られる。
【0028】
シリカアルミナ繊維前駆体の平均繊維長は、通常、250μm以上であり、500μm以上が好ましい。平均繊維長が250μm未満であると、シリカアルミナ繊維前駆体が十分に絡み合わず、十分な強度が得られない。また、シリカアルミナ繊維前駆体の平均直径は、通常、3〜8μmであり、5〜7μmが好ましい。
【0029】
次に、シリカアルミナ繊維前駆体のシートを積層した後、ニードリング装置を用いて、積層シートにニードルを抜き差しして、ニードリングする。ニードリング装置は、前述の単一の方向にニードルが設けられており、ニードルを抜き差しするために往復移動することが可能なニードルボード2個と、積層シートを支持する一対の支持板を有する。ニードルボードには、ニードルが、例えば、25〜5000個/100cmの密度で設けられており、一対の支持板には、2個のニードルボードに設けられているニードルに対応する貫通孔が形成されている。このとき、2個のニードルボードは、それぞれ、積層シートの表面及び裏面をニードリングし、2個のニードルボードには、それぞれ、ニードリングする位置が重ならないようにニードルが設けられている。このため、一対の支持板に支持された積層シートに対して、2個のニードルボードを往復移動させることにより、積層シートにニードルが抜き差しされ、繊維が交絡された交絡点が形成される。交絡点では、複雑に絡み合った繊維が単一の方向に配向されているため、積層シートの強度を向上させることができる。
【0030】
ニードリング装置には、積層シートを、例えば、20mm/秒で搬送する搬送手段が設けられていてもよい。
【0031】
次に、ニードリングされた積層シートを常温から加熱し、最高温度1250℃程度で連続焼成することにより、シリカアルミナ繊維からなるマット部材312が得られる。
【0032】
得られたマット部材312には、局所的にシリカアルミナ繊維が強く絡み合っているニードル痕が形成され、スタッド313や、後述する爪や引っ掛け部と、ニードル痕が絡むことにより、マット部材312をインシュレータ310に安定して固定することができる。このため、インシュレータ310を排気マニホールド110に着脱する際にマット部材312が脱落しにくい。
【0033】
マット部材312を構成する材料としては、排気マニホールド110の温度低下を抑制することが可能であれば、シリカアルミナ繊維に限定されず、アルミナ繊維、シリカ繊維、ロックウール等のセラミック繊維;ガラス繊維等が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、繊維の飛散や型崩れを抑制できることから、アルミナを50質量%以上含む繊維が好ましい。
【0034】
マット部材312の厚さは、通常、5〜10mm程度である。
【0035】
マット部材312の充填密度が0.15〜0.55g/cmであることが好ましい。充填密度が0.15g/cm未満であると、排気マニホールド110と覆い部材311の間に隙間が発生して、排気マニホールド110の温度低下を抑制しにくくなることがあり、0.55g/cmを超えると、排気マニホールド110にインシュレータ310を組み付けにくくなったり、マット部材312が折損しやすくなったりすることがある。
【0036】
なお、排気マニホールド110と覆い部材311の間に走行風が流れ込むことを抑制できるため、排気マニホールド110と覆い部材311の間に隙間が無い状態であることが好ましい。ただし、インシュレータ310の全域において、排気マニホールド110と覆い部材311の間に隙間が無い状態にする必要は無く、インシュレータ310の端部のみにおいて、排気マニホールド110と覆い部材311の間に隙間が無い状態であってもよい。このため、マット部材312の充填密度は、インシュレータ310の中央部よりも端部の方が大きいことが好ましい。
【0037】
スタッド313は、排気マニホールド110の温度低下を抑制するために、排気マニホールド110との間に所定の間隔を隔てて覆い部材311に接合されている。このとき、スタッド313と排気マニホールド110の間隔は0.5mm以上であることが好ましい。スタッド313と排気マニホールド110の間隔が0.5mm未満であると、振動により排気マニホールド110とスタッド313が接触して熱伝導することにより、排気マニホールド110の温度低下を抑制しにくくなることがある。
【0038】
スタッド313の径は、通常、2mm以上であり、2〜10mmが好ましい。スタッド313の径が2mm未満であると、スタッド313の強度が不十分になることがある。
【0039】
インシュレータ310は、マット部材312をスタッド313により覆い部材311に固定した後、側端部を折り返して折り返し部311aを形成することにより製造することができる。
【0040】
なお、マット部材312を、スタッド313により覆い部材311に固定する代わりに、爪が形成されている覆い部材に固定してもよい。
【0041】
爪の形状としては、マット部材312を固定することが可能であれば、特に限定されず、略三角柱状、略四角(台形)柱状等が挙げられる。
【0042】
図5、6及び7に、それぞれ略三角柱状の爪、略四角(台形)柱状の爪及びその他の形状の爪が形成されている覆い部材の具体例を示す。このとき、図5の(b)及び(d)、図6の(b)及び(d)、図7の(b)の爪には、引っ掛け部が形成されている。引っ掛け部の形状としては、マット部材312を固定することが可能であれば、特に限定されず、略三角柱状、略四角(台形)柱状等が挙げられる。
【0043】
例えば、図6の(b)の覆い部材は、溶接により台形柱状の爪を平板に固定すると共に、溶接により台形柱状の引っ掛け部を爪に固定することにより作製することができる。
【0044】
なお、図6の(b)の覆い部材以外の覆い部材についても、同様にして、作製することができる。
【0045】
爪は、排気マニホールド110の温度低下を抑制するために、排気マニホールド110との間に所定の間隔を隔てて形成される。このとき、爪と排気マニホールド110の間隔は0.5mm以上であることが好ましい。爪と排気マニホールド110の間隔が0.5mm未満であると、振動により排気マニホールド110と爪が接触して熱伝導することにより、排気マニホールド110の温度低下を抑制しにくくなることがある。
【0046】
爪の表面積は、通常、5〜10cm程度である。爪の表面積が小さすぎると、マット部材312を固定にくくなることがあり、爪の表面積が大きすぎると、排気マニホールド110の温度低下を抑制しにくくなることがある。
【0047】
なお、覆い部材に爪を2個以上設けてもよいし、爪に引っ掛け部を2個以上形成してもよい。
【0048】
図8に、図6の(b)の覆い部材の変形例を示す。このような覆い部材は、図9に示すように、平板の実線部を裁断した後、破線部で折り返すことにより、作製することができる。このため、溶接する必要が無く、容易に作製することができる。また、爪及び引っ掛け部の角度を容易に調整することができ、マット部材312を固定しやすい。
【0049】
なお、図6の(b)の覆い部材以外の覆い部材の変形例についても、図9と同様にして、作製することができる。
【0050】
また、マット部材312を、スタッド313により覆い部材311に固定する代わりに、打ち抜き成形されている覆い部材に固定してもよい。
【0051】
打ち抜き成形部の形状としては、マット部材312を固定することが可能であれば、特に限定されず、図10(a)及び(b)に示す形状が挙げられる。
【0052】
打ち抜き成形部は、排気マニホールド110の温度低下を抑制するために、排気マニホールド110との間に所定の間隔を隔てて形成される。このとき、打ち抜き成形部と排気マニホールド110の間隔は0.5mm以上であることが好ましい。打ち抜き成形部と排気マニホールド110の間隔が0.5mm未満であると、振動により排気マニホールド110と打ち抜き成形部が接触して熱伝導することにより、排気マニホールド110の温度低下を抑制しにくくなることがある。
【0053】
図11に、インシュレータ310の変形例を示す。インシュレータ310'は、覆い部材311上に、ステンレス鋼繊維からなる接合部材314がスポット溶接Wにより固定されており、マット部材312は、接合部材314に接合されている。このとき、マット部材312にスポット溶接Wによる隙間が形成されているが、インシュレータ310'を排気マニホールド110に装着すると、隙間は埋没する。このため、排気マニホールド110の温度低下を抑制することができる。
【0054】
マット部材312を接合部材314に接合する方法としては、熱に対する強度に優れていれば、特に限定されないが、ニードリング、ステッチ、ステープル等が挙げられる。
【0055】
接合部材314を構成する材料としては、覆い部材311上に、スポット溶接Wにより固定することが可能であれば、ステンレス鋼繊維に限定されず、鉄繊維、アルミニウム繊維、銅繊維等の金属繊維が挙げられ、二種以上併用してもよい。中でも、インシュレータ310'を溶接により排気マニホールド110等の排気管に固定できることから、鉄、ステンレス鋼繊維が好ましい。
【0056】
接合部材314の比重は、マット部材312を接合することが可能であれば、特に限定されず、通常、300〜1500g/mであり、1000g/m程度が好ましい。
【0057】
インシュレータ310'は、マット部材312と接合部材314を接合した後、マット部材312と接合された接合部材314を、スポット溶接Wにより、覆い部材311に固定することにより製造することができる。
【0058】
一方、インシュレータ310が装着される排気マニホールド110は、覆い部材311の折り返し部311aが配置される側と反対側の端部に、ボルト孔111aが形成されている取り付け部111が設けられている。このため、ボルト112により、インシュレータ310を排気マニホールド110に着脱自在に装着することができる。
【0059】
浄化装置120は、ディーゼル酸化触媒(DOC)が担持された担体121及びディーゼルパーティキュレートフィルタ(DPF)122の外周部に保持シール材(不図示)が配置された状態で、金属容器123に収納されている。このとき、ディーゼル酸化触媒は、排気ガスに含まれる一酸化炭素(CO)及び炭化水素(HC)を酸化する。また、ディーゼルパーティキュレートフィルタは、排気ガスに含まれる粒子状物質(PM)を捕捉して燃焼させる。
【0060】
浄化装置120は、外周部にインシュレータ320が着脱自在に装着されている。このとき、インシュレータ320としては、インシュレータ310で例示されたものと同様のものを用いることができ、インシュレータ310と同様にして、着脱自在に装着することができる。このため、浄化装置120の温度低下を抑制することができ、その結果、浄化装置120及び後述する浄化装置140の触媒作用の低下を抑制することができる。
【0061】
排気管130は、外周部にインシュレータ330が着脱自在に装着されている。このとき、インシュレータ330としては、インシュレータ310で例示されたものと同様のものを用いることができ、インシュレータ310と同様にして、着脱自在に装着することができる。このため、排気管130の温度低下を抑制することができ、その結果、後述する浄化装置140の触媒作用の低下を抑制することができる。
【0062】
第二の浄化装置140は、NOxの選択触媒還元(SCR)が行われ、触媒が担持された担体141の外周部に保持シール材(不図示)が配置された状態で、金属容器142に収納されている。このとき、図示していないが、浄化装置140の直前の排気管130に、尿素水が圧縮空気と共に噴射され、排出ガスに混合される。
【0063】
浄化装置140は、外周部にインシュレータ340が着脱自在に装着されている。このとき、インシュレータ340としては、インシュレータ310で例示されたものと同様のものを用いることができ、インシュレータ310と同様にして、着脱自在に装着することができる。このため、浄化装置140の温度低下を抑制することができ、その結果、浄化装置140の触媒作用の低下を抑制することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、排気マニホールド110、浄化装置120、排気管130及び浄化装置140に、それぞれインシュレータ310、320、330及び340を着脱自在に装着しているが、インシュレータ310、320、330及び340の少なくとも一つと、公知のインシュレータを用いてもよい。
【0065】
また、排気マニホールド110を通過する排気ガスのエネルギーを用いてタービンを回転させることにより、遠心式圧縮機を駆動させて、圧縮した空気をディーゼルエンジン200内に送り込むターボチャージャーを設けてもよい。
【0066】
ターボチャージャーは、外周部にインシュレータが着脱自在に装着されている。このとき、インシュレータとしては、インシュレータ310で例示されたものと同様のものを用いることができ、インシュレータ310と同様にして、着脱自在に装着することができる。このため、ターボチャージャーの温度低下を抑制することができ、その結果、排気ガスのエネルギーを効率的に用いることができると共に、浄化装置120及び140の触媒作用の低下を抑制することができる。
【0067】
さらに、排気マニホールド110を通過する排気ガスの一部を取り出して、吸気マニホールドに導き、再度吸気させる排気際循環(EGR)を設けてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、ディーゼルエンジンの排気系100について説明したが、内燃機関の排気系としては、特に限定されず、ガソリンエンジンの排気系等であってもよい。
【実施例】
【0069】
[実施例1]
100mm×100mm×4mmのアルミナ繊維からなるマット部材312と、100mm×100mm、比重が300〜1500g/mのステンレス鋼繊維(SUS434)からなる接合部材314を、350個/cmで接合部材314からマット部材312にニードリングすることにより接合した後、マット部材312と接合された接合部材314を、スポット溶接Wにより、100mm×100mm×1.5mmのステンレス鋼板(SUS409)からなる覆い部材311に固定して、インシュレータ310'を得た(図9参照)。
【0070】
[実施例2]
マット部材312と接合部材314を、直径が0.2mmの金属繊維を用いて3mm間隔でステッチすることにより接合した以外は、実施例1と同様にして、インシュレータ310'を得た。
【0071】
[比較例1]
100mm×100mm×1.5mmのステンレス鋼板(SUS409)からなる覆い部材上に、100mm×100mm×4mmのアルミナ繊維からなるマット部材及び100mm×100mm、金属繊維の直径が0.2mm、金属繊維間の間隔が0.50mmの平織りのメッシュを順次配置した後、スポット溶接により固定して、インシュレータを製造した。
【0072】
[比較例2]
100mm×100mm×1.5mmのステンレス鋼板(SUS409)からなる覆い部材上に、100mm×100mm×4mmのアルミナ繊維からなるマット部材を、接着剤アロンセラミックD(東亜合成社製)を用いて、接着することより固定し、インシュレータを製造した。
【0073】
[断熱性]
300℃に設定したホットプレートCH−180(ASONE社製)上に、100mm×100mm×1.5mmのステンレス鋼板(SUS409)及びインシュレータを順次配置し、ステンレス鋼板の表面と裏面の温度差を、熱電対を用いて測定した。このとき、家庭用扇風機DF35A(東芝社製)を弱に設定して、ヒーターに対して、距離1m、高さ60cmの位置から送風した場合と、送風しない場合の、ステンレス鋼板の表面と裏面の温度差の差から、断熱性を評価した。
【0074】
なお、断熱性を評価することにより、覆い部材とマット部材の間の隙間に走行風が流れ込むことによる内燃機関の排気系の温度低下を抑制する効果を評価することができる。
【0075】
[熱に対する強度]
インシュレータに、600℃で1時間保管した後、室温に冷却する熱サイクルを10回繰り返し、熱に対する強度を評価した。なお、覆い部材を持っても、マット部材が剥がれない場合を○、覆い部材を持つと、マット部材が剥がれる場合を×として、判定した。
【0076】
表1に、評価結果を示す。
【0077】
【表1】

表1から、実施例1、2のインシュレータは、断熱性及び熱に対する強度に優れることがわかる。一方、比較例1のインシュレータは、覆い部材とマット部材の間に隙間が形成されているため、断熱性に劣る。また、比較例2のインシュレータは、覆い部材とマット部材が接着されているため、熱に対する強度が劣る。
【符号の説明】
【0078】
100 ディーゼルエンジンの排気系
110 排気マニホールド
120、140 浄化装置
130、150 排気管
160 マフラー
200 ディーゼルエンジン
310、310' インシュレータ
311 覆い部材
312 マット部材
313 スタッド
314 接合部材
W スポット溶接

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気系用のインシュレータであって、
覆い部材上に、表層として、セラミック繊維及び/又はガラス繊維を含むマット部材が固定されていることを特徴とするインシュレータ。
【請求項2】
前記マット部材は、スタッドにより、前記覆い部材上に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項3】
前記覆い部材に、爪が設けられており、
前記マット部材は、前記爪により、前記覆い部材上に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項4】
前記マット部材は、ニードリングされていることを特徴とする請求項2又は3に記載のインシュレータ。
【請求項5】
前記覆い部材上に、金属繊維を含む接合部材が溶接により固定されており、
前記マット部材は、前記接合部材に接合されていることを特徴とする請求項1に記載のインシュレータ。
【請求項6】
前記マット部材は、ニードリング、ステッチ又はステープルにより、前記接合部材に接合されていることを特徴とする請求項5に記載のインシュレータ。
【請求項7】
前記金属繊維は、鉄、アルミニウム、銅及びステンレス鋼の少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項5又は6に記載のインシュレータ。
【請求項8】
前記セラミック繊維は、アルミナ、シリカ、シリカアルミナ及びロックウールの少なくとも一つを含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のインシュレータ。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載のインシュレータを、前記マット部材と当接するように装着していることを特徴とする内燃機関の排気系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−149371(P2011−149371A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−12502(P2010−12502)
【出願日】平成22年1月22日(2010.1.22)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】