説明

インスリン類似体

A鎖の19位にチロシン残基の修飾を含む、インスリンの完全な効力を有する類似体が提供される。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
インスリンは驚異的なペプチドホルモンである。インスリンは、実質的にすべての形態の糖尿病においてグルコースを低下させる比類なき能力を示す。残念ながら、その薬理作用はグルコース感受性ではなく、それ自体、過剰に作用して、生命を脅かす低血糖症をもたらすことがある。一貫性のない薬理作用がインスリン療法の顕著な特徴であるので、低血糖症の発生を伴わずに血糖を正常化することは極めて困難である。さらに、天然インスリンは作用期間が短く、基礎グルコースの管理における使用に適するようにするためには改変が必要である。インスリン療法における1つの中心的な目標は、1日1回型の作用時間を提供できるインスリン製剤を設計することである。インスリン投薬の作用時間を延長することは、注射部位でのインスリンの溶解度を低下させることによって達成できる。
【0002】
溶解度を低下させるための3つの立証された異なる分子手法があり、それらは:(1)亜鉛との不溶性懸濁液としてのインスリンの製剤、(2)カチオン性アミノ酸の添加を介してその等電点を生理的pHに上昇させること、(3)溶解度を低下させ、アルブミンに結合する疎水性リガンドを提供する共有結合修飾、を含む。これらの手法はすべて、注射部位での沈殿、およびその後の再可溶化と活性ホルモンとしての血液への輸送に伴って起こる固有の変動性によって制限される。
【0003】
プロドラッグ化学は、投与部位からのクリアランスおよび高度に定義された濃度での血漿中の平衡後のインスリン作用の開始と期間を正確に制御する選択的機構を提供する。現在の長時間作用性インスリン類似体および製剤と比べてそのような手法の主要な利点は、インスリンの貯蔵所が、注射が行われる皮下脂肪組織ではなく血液画分であることである。これは、沈殿および可溶化の変動性を取り除く。これはまた、皮下注射以外の経路によるペプチドホルモンの投与を可能にする。有効なプロドラッグ−ホルモンを確立するために、プロドラッグ構造エレメントの可逆的な結合のための基礎を形成することができる活性部位の構造アドレス(structural address)が必要である。構造アドレスは2つの鍵となる特徴を提供する必要がある:(1)選択的化学修飾のための潜在能、および(2)プロドラッグ構造エレメントの除去時に天然形態で完全な活性を提供する能力である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インスリンは、低い効力の一本鎖プロインスリン前駆体から酵素プロセシングを介する生合成によって誘導される二本鎖ヘテロ二量体である。ヒトインスリンは、ジスルフィド結合によって共に結合された、合計51個のアミノ酸を有する2本のペプチド鎖(「A鎖」(配列番号1)と「B鎖」(配列番号2))から成る。B鎖のC末端領域とA鎖の2つの末端は三次元構造において会合し、インスリン受容体への高親和性結合のための部位を構築する。天然インスリン構造は、アミド結合したプロドラッグエレメントの選択的構築のために使用され得る、活性部位残基における限られた独自の化学エレメントを有する。プロドラッグエレメントの結合のためのエレメントを提供するように修飾できる2つの部位は、天然A鎖の19位のチロシン残基(「A19チロシン」)および天然B鎖の24位のフェニルアラニン残基(「B24フェニルアラニン」)を含む。これら2つのアミノ酸はどちらも、インスリン作用における中心的な重要性を有する。しかし、導入することができ、それでもなお完全な効力を維持することができる構造変化の種類に関しては、これら2つのアミノ酸はまた、極めて限定的であることが証明されている。
【0005】
本明細書で開示するように、出願人は、A19位で修飾された、インスリンプロドラッグ誘導体を構築するために潜在的に使用できる完全な効力のインスリン類似体を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの実施形態によれば、1個のアミノ基が、効力の喪失を伴わずにインスリンの活性部位内のペプチドに挿入された、完全な効力のインスリン類似体が提供される。より詳細には、A鎖の19位の天然チロシンに代わる4−アミノフェニルアラニンのアミノ酸部分の選択的挿入を、インスリンペプチドの効力の喪失を伴わずに受け入れることができる。特定のジペプチドによるこの活性部位アミノ基のその後の化学的アミド化は、活性を著しく低下させ、適切なプロドラッグとして働く。
【0007】
1つの実施形態によれば、インスリンペプチドのA鎖が配列:
GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)
を含み、B鎖が配列:
LCGXLVEALYLVCGERGFF(配列番号4)
を含むインスリン類似体が提供される。
[配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式:
【化1】

[式中、Rは、−NHまたはOCHである]
のアミノ酸であり;
は、アスパラギンまたはグリシンであり;
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択される]
さらなる実施形態では、B鎖は、配列X11VNQXLCGXLVEALYLVCGERGFFYTX10(配列番号5)
を含む。
[配列中、
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択され;
は、アスパラギン酸塩−リシンジペプチド、リシン−プロリンジペプチドまたはプロリン−リシンジペプチドであり;
10は、トレオニン、アラニンまたはトレオニン−アルギニン−アルギニントリペプチドであり;
11は、フェニルアラニンおよびデスアミノ−フェニルアラニンから成る群より選択される]
【0008】
1つの実施形態によれば、インスリンペプチドのA鎖が、配列GIVEQCCTSICSLYQLENXCN(配列番号6)を含み、B鎖が、HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号7)、FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号8)およびFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKPT(配列番号9)から成る群より選択される配列を含む、インスリン類似体が提供される。
[配列中、Xは、一般式:
【化2】

のアミノ酸である]
【0009】
1つの実施形態によれば、一本鎖A19インスリン類似体が提供される。この実施形態では、ヒトインスリンB鎖のカルボキシ末端またはその機能的類似体は、本開示のA19 A鎖類似体のN末端に共有結合で連結されている。1つの実施形態では、B鎖は、4〜12または4〜8アミノ酸のペプチドリンカーを介してA鎖に連結されている。
【0010】
もう1つの実施形態では、ペプチドに親水性部分を共有結合させることによってインスリン類似体の溶解度を高める。1つの実施形態では、親水性部分は、B鎖のN末端アミノ酸または配列番号9の28位のアミノ酸または配列番号8の29位のアミノ酸のいずれかに連結される。1つの実施形態では、親水性部分は、約500〜約40,000ダルトンの範囲から選択される分子量を有する、ポリエチレングリコール(PEG)鎖である。1つの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は、約500〜約5,000ダルトンの範囲から選択される分子量を有する。もう1つの実施形態では、ポリエチレングリコール鎖は約10,000〜約20,000ダルトンの分子量を有する。
【0011】
アシル化またはアルキル化は、循環中のインスリンペプチドの半減期を高めることができる。アシル化またはアルキル化は、好都合にも、インスリン受容体における作用の開始を遅延させる、および/または作用の期間を延長させることができる。インスリン類似体は、親水性部分が連結されている同じアミノ酸位置でまたは異なるアミノ酸位置でアシル化またはアルキル化し得る。
【0012】
1つの実施形態によれば、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の純度レベルの、本明細書で開示される新規A19インスリン類似体のいずれか、および医薬的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含有する医薬組成物が提供される。そのような組成物は、少なくとも0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、11mg/ml、12mg/ml、13mg/ml、14mg/ml、15mg/ml、16mg/ml、17mg/ml、18mg/ml、19mg/ml、20mg/ml、21mg/ml、22mg/ml、23mg/ml、24mg/ml、25mg/mlまたはそれ以上の濃度で、本明細書で開示されるA19インスリン類似体を含有し得る。1つの実施形態では、医薬組成物は、滅菌され、場合により様々な包装容器内に納められて貯蔵される水溶液を含む。他の実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥粉末を含む。医薬組成物は、組成物を患者に投与するための使い捨て装置を含むキットの一部としてさらに包装され得る。容器またはキットは、周囲室温または冷蔵温度での保存に関してラベル表示され得る。
【0013】
1つの実施形態によれば、インスリン依存患者における血糖値を調節する改善された方法が提供される。その方法は、本開示のA19インスリン類似体を糖尿病の管理のために治療上有効な量で投与する工程を含む。1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、約5,000〜約40,000ダルトンの範囲から選択される分子量を有するPEG鎖でペグ化される。
【0014】
==関連出願の相互参照==
本出願は、その開示が全体として参照により明白に本明細書に組み込まれる、2008年12月19日出願の米国特許出願第61/139,221号の優先権を主張する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、ヒトインスリンを調製するための2段階合成法の概略図である。手順の詳細は実施例1で述べられており、工程aの試薬は2,2’ジチオビス(5−ニトロピリジン)、室温のDMSOを含み、工程bの試薬はインスリンA(6、11および20位のAcmならびに7位のSH)、室温のDMSOを含み、工程cの試薬はI、80%AcOHを含む。
【図2】図2は、精製天然インスリンと合成ヒトインスリンのインスリン受容体への特異的結合を比較するグラフである。結果が示すように、2つの分子は同様の結合活性を有する。
【図3】図3は、天然インスリンとA19インスリン類似体(インスリン(p−NH−F)19)の相対的インスリン受容体結合を比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
本発明を説明し、特許請求する際に、以下の用語を以下で述べる定義に従って使用する。
【0017】
本明細書で使用される、「プロドラッグ」という用語は、化学修飾を受けた後にその薬理学的作用を示す任意の化合物と定義される。
【0018】
「生物活性ポリペプチド」は、インビトロおよび/またはインビボで生物学的作用を及ぼすことができるポリペプチドを指す。
【0019】
その立体化学を明記していないアミノ酸の指定は、アミノ酸のLもしくはD形態またはラセミ混合物を包含することが意図されている。
【0020】
本明細書で使用される、「医薬的に許容される担体」という用語は、リン酸緩衝生理食塩水、水、水中油型または油中水型乳剤のような乳剤、および様々なタイプの湿潤剤などの、標準的な医薬担体の任意のものを含む。この用語はまた、米国連邦政府の規制当局によって承認されたまたはヒトを含む動物における使用のために米国薬局方にリストされている物質の任意のものを包含する。
【0021】
本明細書で使用される、「医薬的に許容される塩」という用語は、親化合物の生物活性を保持し、生物学的にまたは他の理由から望ましくないものではない化合物の塩を指す。本明細書で開示される化合物の多くは、アミノ基および/またはカルボキシル基またはそれらに類似の基の存在によって酸性および/または塩基性塩を形成することができる。
【0022】
医薬的に許容される塩基付加塩は、無機および有機塩基から調製することができる。無機塩基から誘導される塩は、ほんの一例として、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩およびマグネシウム塩を含む。有機塩基から誘導される塩は、第一級、第二級および第三級アミンの塩を含むが、これらに限定されない。
【0023】
医薬的に許容される酸付加塩は、無機および有機酸から調製され得る。無機酸から誘導される塩は、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等を含む。有機酸から誘導される塩は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、桂皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸等を含む。
【0024】
本明細書で使用される、「治療すること」という用語は、特定の障害もしくは疾患の予防、特定の障害もしくは疾患に関連する症状の緩和、および/または前記症状を予防するもしくは除去することを含む。たとえば、本明細書で使用される「糖尿病を治療すること」という用語は、一般に血糖値を正常値近くに維持することを指し、所与の状況に依存して血糖値を上昇させるまたは低下させることを含み得る。
【0025】
本明細書で使用される、インスリン類似体の「有効」量または「治療有効量」は、非毒性であるが所望効果を与えるのに十分なインスリン類似体の量を指す。たとえば、1つの所望効果は、低血糖症の予防または治療である。「有効」な量は、個体の年齢および全般的健康状態、投与方法等に依存して、被験者によって異なる。従って、正確な「有効量」を特定することは必ずしも可能ではない。しかし、任意の個別症例における適切な「有効」量は、常套的な実験を用いて当業者によって決定され得る。
【0026】
「非経口的」という用語は、消化管を通さず、鼻内、吸入、皮下、筋肉内、髄腔内または静脈内などの何らかの他の経路によることを意味する。
【0027】
本明細書で使用される「インスリンペプチド」という用語は、配列番号1のA鎖と配列番号2のB鎖を含む51アミノ酸のヘテロ二量体、ならびにその一本鎖インスリン類似体(たとえば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第96/34882号および米国特許第6,630,348号に開示されているものを含む)を表す一般用語であり、A19、B16もしくはB25位のアミノ酸の4−アミノフェニルアラニンへの改変、またはA5、A8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21、B1、B2、B3、B4、B5、B9、B10、B13、B14、B17、B20、B21、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30位から選択される位置の1もしくはそれ以上のアミノ酸置換、またはB1〜4位およびB26〜30位のいずれかまたは全部の欠失を含む、天然A鎖および/またはB鎖の修飾された誘導体を含むヘテロ二量体および一本鎖類似体を包含する。
【0028】
本明細書で使用される、「一本鎖インスリン類似体」という用語は、インスリンのA鎖とB鎖がポリペプチドリンカーによって共有結合で連結されている、構造的に関連するタンパク質の群を包含する。
【0029】
本明細書で使用される「A19 A鎖類似体」は、配列番号6のA鎖を含むアミノ酸およびA5、A8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、A21から選択される位置に1またはそれ以上のアミノ酸置換を含む配列番号6の修飾された誘導体を表す。
【0030】
「A19インスリン類似体」は、天然インスリンのA鎖の19位の天然チロシン残基の4−アミノフェニルアラニンまたは4−メトキシフェニルアラニンによる置換を有するインスリンペプチドである。
【0031】
本明細書で使用されるアミノ酸「修飾」は、アミノ酸の置換、またはアミノ酸への化学基の付加および/もしくはアミノ酸からの化学基の除去によるアミノ酸の誘導体化を指し、ヒトタンパク質中で一般的に認められる20個のアミノ酸、ならびに異型または非天然のアミノ酸のいずれかによる置換を含む。異型アミノ酸の商業的入手源は、Sigma−Aldrich(Milwaukee,WI)、ChemPep Inc.(Miami,FL)、およびGenzyme Pharmaceuticals(Cambridge,MA)を含む。異型アミノ酸は、商業的供給者から購入し得るか、新たに合成し得る、または天然アミノ酸から化学修飾もしくは誘導体化し得る。
【0032】
本明細書で使用されるアミノ酸「置換」は、あるアミノ酸残基の異なるアミノ酸残基による置換を指す。本出願全体を通して、文字と番号による特定アミノ酸位置(たとえばA5位)のすべての参照は、それぞれの天然ヒトインスリンA鎖(配列番号1)またはB鎖(配列番号2)におけるA鎖のその位置(たとえばA5位)またはB鎖のその位置(たとえばB5位)のアミノ酸、またはその任意の類似体における対応するアミノ酸位置を指す。たとえば、いかなるさらなる精緻化も伴わない「B28位」への本明細書での参照は、配列番号2の第一アミノ酸が欠失しているインスリン類似体のB鎖の対応する位置、B27を意味する。
【0033】
本明細書で使用される、「保存的アミノ酸置換」という用語は、本明細書では以下の5つの群の1つの中での交換と定義される:
I.小型の脂肪族の非極性またはわずかに極性の残基:
Ala、Ser、Thr、Pro、Gly;
II.極性の負に荷電した残基およびそれらのアミド:
Asp、Asn、Glu、Gln;
III.極性の正に荷電した残基:
His、Arg、Lys;オルニチン(Orn)
IV.大型の脂肪族の非極性残基:
Met、Leu、Ile、Val、Cys、ノルロイシン(Nle)、ホモシステイン
V.大型の芳香族残基:
Phe、Tyr、Trp、アセチルフェニルアラニン。
【0034】
本明細書で使用される「ポリエチレングリコール鎖」または「PEG鎖」という一般的用語は、一般式H(OCHCHOH[式中、nは少なくとも9である]によって表される、分枝または直鎖状の、エチレンオキシドと水の縮合重合体の混合物を指す。いかなるさらなる特徴づけも伴わずに、この用語は、500〜80,000ダルトンの範囲から選択される平均総分子量を有するエチレングリコールの重合体を含むことが意図されている。「ポリエチレングリコール鎖」または「PEG鎖」は、そのおおよその平均分子量を示す数字接尾語と組み合わせて使用される。たとえば、PEG−5,000は、約5,000ダルトンの総分子量平均を有するポリエチレングリコール鎖を指す。
【0035】
本明細書で使用される「ペグ化」という用語および同様の用語は、化合物にポリエチレングリコール鎖を連結することによってその天然の状態から改変された化合物を指す。「ペグ化ポリペプチド」は、ポリペプチドに共有結合されたPEG鎖を有するポリペプチドである。
【0036】
本明細書で使用される「リンカー」は、2つの別個の実体を互いに結合する結合、分子または分子の群である。リンカーは、2つの実体の最適の間隔を提供し得るかまたは2つの実体が互いから分離されることを可能にする不安定結合をさらに供給し得る。不安定結合は、光開裂性基、酸不安定部分、塩基不安定部分および酵素開裂性基を含む。
【0037】
本明細書で使用される「二量体」は、リンカーによって互いに共有結合された2つのサブユニットを含む複合体である。二量体という用語は、いかなる限定語も伴わずに使用される場合、ホモ二量体とヘテロ二量体の両方を包含する。ホモ二量体は2つの同一サブユニットを含み、ヘテロ二量体は異なる2つのサブユニットを含むが、2つのサブユニットは実質的に互いに類似する。
【0038】
本明細書で使用される、nが1〜6である「C〜Cアルキル」という用語は、1から特定数の炭素原子を有する分枝または直鎖状アルキル基を表す。典型的なC〜Cアルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル等を含むが、これらに限定されない。
【0039】
本明細書で使用されるnが2〜6である「C〜Cアルケニル」という用語は、2から特定数の炭素原子および少なくとも1つの二重結合を有するオレフィン性不飽和分枝または直鎖状基を表す。そのような基の例として、1−プロペニル、2−プロペニル(−CH−CH=CH)、1,3−ブタジエニル(−CH=CHCH=CH)、1−ブテニル(−CH=CHCHCH)、ヘキセニル、ペンテニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
nが2〜6である「C〜Cアルキニル」という用語は、2からn個の炭素原子および少なくとも1つの三重結合を有する不飽和分枝または直鎖状基を指す。そのような基の例として、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、1−ペンチニル等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル等を含むがこれらに限定されない、1または2個の芳香環を有する単環式または二環式炭素環系を指す。アリール環の大きさおよび置換基または連結基の存在は、存在する炭素の数を指定することによって示される。たとえば、(C〜Cアルキル)(C〜C10アリール)という用語は、1〜3員アルキル鎖によって親部分に結合された5〜10員アリールを指す。
【0042】
本明細書で使用される「ヘテロアリール」という用語は、1または2個の芳香環を含み、芳香環中に少なくとも1個の窒素、酸素または硫黄原子を含む単環式または二環式環系を指す。ヘテロアリール環の大きさおよび置換基または連結基の存在は、存在する炭素の数を指定することによって指示される。たとえば、(C〜Cアルキル)(C〜Cヘテロアリール)という用語は、1〜「n」員アルキル鎖によって親部分に結合された5または6員ヘテロアリールを指す。
【0043】
本明細書で使用される、さらなる指定を伴わない「患者」という用語は、任意の家畜化された温血脊椎動物(たとえば、家畜、ウマ、ネコ、イヌおよび他のペット動物を含むが、これらに限定されない)ならびにヒトを包含することが意図されている。
【0044】
本開示は、天然インスリンと比較してインスリン受容体および/またはIGF−1受容体における高い活性を保持するインスリン類似体を対象とする。1つの実施形態では、インスリン類似体は天然インスリンのA鎖の19位に存在するチロシン残基の修飾を含み、前記類似体は天然インスリンの活性を保持する。そのような類似体を本明細書では「A19インスリン類似体」と称する。A19インスリン類似体は、天然インスリンペプチドと比較して付加的な修飾を含んでもよく、このインスリン類似体は、天然インスリンと比較してインスリン受容体において70%、80%、90%、95%、100%またはそれ以上の活性を示す。
【0045】
1つの実施形態では、アミノ基が、効力の喪失を伴わずにインスリンの活性部位内のペプチドに挿入されたインスリン誘導体が調製される。より詳細には、A鎖の19位の天然チロシンの4−アミノフェニルアミノ酸部分による選択的置換を、インスリンペプチドの効力の喪失を伴わずに受け入れることができる。プロドラッグ部分によるこの活性部位アミノ基のその後の化学的アミド化は、活性を著しく低下させ、従ってインスリンの適切なプロドラッグを提供する。
【0046】
1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、A5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18、A21、B1、B2、B3、B4、B5、B9、B10、B13、B14、B17、B20、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置に、天然インスリンと比較して、1またはそれ以上の付加的なアミノ酸置換を含み、1つの実施形態では、それらのアミノ酸置換は保存的アミノ酸置換である。インスリンの所望活性に有害な影響を及ぼさないこれらの位置における適切なアミノ酸置換は、たとえば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、Mayer,et al.,Insulin Structure and Function,Biopolymers.2007;88(5):687−713に示されているように、当業者に公知である。
【0047】
1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、天然チロシン残基の芳香環上に存在するヒドロキシル基のアミノ基またはメトキシ基による置換を含み、A5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18、B1、B2、B3、B4、B5、B13、B14、B17、B20、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置に1〜15、1〜10、1〜8、1〜5、または1〜3アミノ酸置換をさらに含む。1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、A5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18、B1、B2、B3、B4、B5、B13、B14、B17、B20、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置に1〜10、1〜8、1〜5、または1〜3アミノ酸置換を含み、この類似体は、天然インスリン配列と比較して、天然インスリンBペプチドのB1〜4位およびB26〜30位のアミノ酸の1またはそれ以上の欠失によってさらに修飾されている。もう1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、A5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18、B1、B2、B3、B4、B5、B13、B14、B17、B20、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置に1〜8、1〜5、または1〜3アミノ酸置換を含み、天然インスリン配列と比較して、アミノ酸B1〜4および/またはB26〜30の欠失によってさらに修飾されている。
【0048】
1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、天然チロシン残基の芳香環上に存在するヒドロキシル基のアミノ基またはメトキシ基による置換を含み、ヒスチジン、アルギニンおよびリシンから成る群より選択されるアミノ酸によるA8位のアミノ酸置換(天然インスリンペプチドと比較して)をさらに含む。さらなる実施形態では、B10位のアミノ酸は、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモグルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択されるアミノ酸である。1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、天然チロシン残基の芳香環上に存在するヒドロキシル基のアミノ基またはメトキシ基による置換を含み、天然インスリンペプチドと比較して、A8およびB28〜30から成る群より選択される位置のアミノ酸置換をさらに含む。
【0049】
1つの実施形態によれば、配列GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)を含有するA鎖ポリペプチド鎖を含むインスリン類似体またはA5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18位から選択される、1〜9、1〜5もしくは1〜3アミノ酸修飾によって配列番号3と異なる配列を含有するその類似体が提供される。
[配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式
【化3】

[式中、Rは、NHもしくはOCHである]
のアミノ酸であり;そして
は、アスパラギン、グリシンもしくはアラニンである]
1つの実施形態では、Rは、NHである。別の実施形態では、Xは、トレオニンであり、Xは、アスパラギンであり、Rは、NHである。
【0050】
より詳細には、1つの実施形態では、GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)のA鎖配列ならびにXLCGXLVEALYLVCGERGFF(配列番号4)の配列を含有するB鎖配列を含むA19インスリン類似体、または配列番号3および/もしくは配列番号4が、独立して、A5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18、B1、B2、B3、B4、B5、B13、B14、B17、B20、B22、B23、B26、B27、B28、B29およびB30位から選択される1〜3アミノ酸修飾によってそれぞれの配列番号3および/もしくは配列番号4配列と異なるその類似体が提供される。
[配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式
【化4】

[式中、Rは、NHもしくはOCHである]
のアミノ酸であり;
は、アスパラギンもしくはグリシンであり;
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択される]
【0051】
もう1つの実施形態では、GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)のA鎖配列ならびにX11VNQXLCGXLVEALYLVCGERGFFYTX10(配列番号5)の配列を含有するB鎖配列を含むA19インスリン類似体が提供される。
[配列中、
は、トレオニン、ヒスチジン、アルギニンおよびリシンから成る群より選択され;
は、一般式
【化5】

のアミノ酸であり;
は、アスパラギンまたはグリシンであり;
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択され;
は、アスパラギン酸塩−リシンジペプチド、リシン−プロリンジペプチドまたはプロリン−リシンジペプチドであり;
10は、トレオニンまたはトレオニン−アルギニン−アルギニントリペプチドであり;
11は、フェニルアラニンおよびデスアミノ−フェニルアラニンから成る群より選択される]
1つの実施形態では、B鎖配列は、配列HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号7)を含み、さらなる実施形態では、B鎖は、FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号8)、FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKPT(配列番号9)およびFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKTRR(配列番号10)から成る群より選択される。さらなる実施形態では、GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)のA鎖配列ならびに配列番号7、配列番号8および配列番号9から成る群より選択される配列を含有するB鎖配列を含むA19インスリン類似体が提供される。
[配列中、Xは、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され、Xは、一般式
【化6】

のアミノ酸であり、そしてXはアスパラギンであり、1つの実施形態では、Xはトレオニンであり、Xは4−アミノフェニルアラニンであり、そしてXはアスパラギンである]
【0052】
1つの実施形態では、GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)のA鎖配列ならびにFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号8)またはFVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKPT(配列番号9)の配列を含有するB鎖配列を含むA19インスリン類似体が提供される。
[配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式
【化7】

[式中、Rは、NHまたはOCHである]
のアミノ酸であり;そして
は、アスパラギンまたはグリシンである]
さらなる実施形態では、RはNHであり、そしてXはアスパラギンであり、また1つの実施形態では、RはNHであり、Xはトレオニンであり、そしてXはアスパラギンである。
【0053】
1つの実施形態によれば、A19アミノ酸が、一般式
【化8】

のアミノ酸で置換されている一本鎖インスリン類似体が提供される。
[式中、Rは、NHまたはOCHである]
1つの実施形態によれば、一本鎖インスリン類似体は、式:B−P−A19の化合物を含む[式中、Bは、インスリンのB鎖またはその機能的類似体を表し、A19は、本明細書で開示されるA19 A鎖類似体を表し、そしてPは、A鎖のアミノ末端をB鎖のカルボキシ末端に共有結合で連結する、ペプチドリンカーを含むリンカーを表す]。1つの実施形態では、リンカーは、約5〜約18、または約10〜約14、または約4〜約8、または約6アミノ酸のペプチドリンカーである。
【0054】
1つの実施形態では、一本鎖インスリン類似体は、式:B−P−A19の化合物を含む。
[式中、
Bは、XLCGXX6LVEALYLVCGERGFF(配列番号4)の配列を含有するB鎖配列を表し;
A19は、GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)の配列を含有するA鎖配列を表し;そして
Pは、4〜8アミノ酸のペプチドリンカーを表し、さらに配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式
【化9】

[式中、Rは、NHまたはOCHである]
のアミノ酸であり;
は、アスパラギンまたはグリシンであり;
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択される]
1つの実施形態によれば、ペプチドリンカーは、5〜18アミノ酸長であり、Gly−Gly−Gly−Pro−Gly−Lys−Arg(配列番号11)、Gly−Tyr−Gly−Ser−Ser−Ser−Arg−Arg−Ala−Pro−Gln−Thr(配列番号12)、Arg−Arg−Gly−Pro−Gly−Gly−Gly(配列番号21)、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lys−Arg(配列番号13)、Arg−Arg−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号14)、Gly−Gly−Ala−Pro−Gly−Asp−Val−Lys−Arg (配列番号15)、Arg−Arg−Ala−Pro−Gly−Asp−Val−Gly−Gly(配列番号16)、Gly−Gly−Tyr−Pro−Gly−Asp−Val−Lys−Arg(配列番号17)、Arg−Arg−Tyr−Pro−Gly−Asp−Val−Gly−Gly(配列番号18)、Gly−Gly−His−Pro−Gly−Asp−Val−Lys−Arg(配列番号19)およびArg−Arg−His−Pro−Gly−Asp−Val−Gly−Gly(配列番号20)から成る群より選択される配列を含む。
【0055】
1つの実施形態では、ペプチドリンカーは、AGRGSGK(配列番号24)、AGLGSGK(配列番号25)、AGMGSGK(配列番号26)、ASWGSGK(配列番号27)、TGLGSGQ(配列番号28)、TGLGRGK(配列番号29)、TGLGSGK(配列番号30)、HGLYSGK(配列番号31)、KGLGSGQ(配列番号32)、VGLMSGK(配列番号33)、VGLSSGQ(配列番号34)、VGLYSGK(配列番号35)、VGLSSGK(配列番号36)、VGMSSGK(配列番号37)、VWSSSGK(配列番号38)、VGSSSGK(配列番号39)、VGMSSGK(配列番号40)、TGLGSGR(配列番号41)、TGLGKGQ(配列番号42)、KGLSSGQ(配列番号43)、VKLSSGQ(配列番号44)、VGLKSGQ(配列番号45)、TGLGKGQ(配列番号46)およびVGLSKGQ(配列番号47)から成る群より選択される配列を含む。1つの実施形態では、ペプチドリンカーは、7〜12アミノ酸長であり、配列Gly−Gly−Gly−Pro−Gly−Lys−Arg(配列番号11)またはGly−Tyr−Gly−Ser−Ser−Ser−Arg−Arg−Ala−Pro−Gln−Thr(配列番号12)を含む。
【0056】
1つの実施形態では、一本鎖インスリン類似体は、アミノ酸配列:
Phe−Val−Asn−Gln−His−Leu−Cys−Gly−Ser−His−Leu−Val−Glu−Ala−Leu−Tyr−Leu−Val−Cys−Gly−Glu−Arg−Gly−Phe−Phe−Tyr−Thr−Pro−Lys−Thr−Gln−Pro−Leu−Ala−Leu−Glu−Gly−Ser−Leu−Gln−Lys−Arg−Gly−Ile−Val−Glu−Gln−Cys−Cys−Thr−Ser−Ile−Cys−Ser−Leu−Tyr−Gln−Leu−Glu−Asn−Xaa−Cys−Asn(配列番号23)を有する。
[配列中、Xaaは、一般式
【化10】

[式中、Rは、NHまたはOCHである]
のアミノ酸である]
【0057】
本明細書で開示されるA19インスリン類似体は、ペプチドの腎クリアランスを防ぐことによってペプチドの有効期間を延長させつつ、生理的pHの水溶液へのペプチドの溶解度を改善するようにさらに修飾することができる。ペプチドは、血漿タンパク質と比較した場合それらの比較的小さな分子サイズのために容易に除去される。ペプチドの分子量を40kDa超に増大させると、腎閾値を上回り、血漿中の持続期間を有意に延長させる。従って、1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、共有結合で連結された親水性部分を含むようにさらに修飾される。1つの実施形態では、親水性部分は、血漿タンパク質、ポリエチレン鎖または免疫グロブリンのFc部分である。それ故、1つの実施形態では、本明細書で開示されるA19インスリン類似体は、アミノ酸の側鎖に共有結合で連結された1またはそれ以上の親水性基を含むようにさらに修飾される。
【0058】
1つの実施形態によれば、本明細書で開示されるA19インスリン類似体は、B鎖のN末端アミノ酸または、たとえば配列番号9の28位もしくは配列番号8の29位を含む、B鎖のカルボキシ末端に位置するリシンアミノ酸の側鎖に親水性部分を連結することによって修飾される。1つの実施形態では、ペプチドリンカーのアミノ酸の1個が、ペプチドリンカーの側鎖に親水性部分を連結することによって修飾された一本鎖インスリン類似体が提供される。1つの実施形態では、修飾アミノ酸は、システイン、リシンまたはアセチルフェニルアラニンである。1つの実施形態では、ペプチドリンカーは、TGLGSGQ(配列番号28)、VGLSSGQ(配列番号34)、VGLSSGK(配列番号36)、TGLGSGR(配列番号41)、TGLGKGQ(配列番号42)、KGLSSGQ(配列番号43)、VKLSSGQ(配列番号44)、VGLKSGQ(配列番号45)、TGLGKGQ(配列番号46)およびVGLSKGQ(配列番号47)から成る群より選択され、親水性部分(たとえばポリエチレングリコール)は、ペプチドリンカーのリシン側鎖に連結される。もう1つの実施形態では、本明細書で開示されるA19インスリン類似体は、A19インスリン類似体のB鎖のカルボキシ末端への修飾アミノ酸の付加によってさらに修飾され、C末端に付加されるアミノ酸は、そのアミノ酸に連結された親水性部分を含むように修飾される。1つの実施形態では、C末端に付加されるアミノ酸は、修飾されたシステイン、リシンまたはアセチルフェニルアラニンである。1つの実施形態では、親水性部分は、血漿タンパク質、ポリエチレンオキシド鎖および免疫グロブリンのFc部分から成る群より選択される。
【0059】
1つの実施形態では、親水性基はポリエチレンオキシド鎖であり、1つの実施形態では、2またはそれ以上のポリエチレンオキシド鎖が、A19インスリン類似体の2またはそれ以上のアミノ酸側鎖に共有結合で連結される。1つの実施形態によれば、親水性部分は、A9、A14、A15、B22、B28、B29およびB鎖のC末端またはN末端から成る群より選択される位置で、本明細書で開示されるA19インスリン類似体のアミノ酸側鎖に共有結合で連結される。複数のポリエチレンオキシド鎖を有するA19インスリン類似体に関しては、ポリエチレンオキシド鎖は、B鎖のN末端アミノ酸で、またはB鎖のカルボキシ末端に位置するリシンアミノ酸の側鎖に、またはペプチドのC末端の単一アミノ酸の付加によって結合することができ、この付加されるアミノ酸は、その側鎖に連結されたポリエチレンオキシド鎖を有する。
【0060】
1つの実施形態によれば、本明細書で開示されるA19インスリン類似体は、アミノ酸置換によってさらに修飾され、この置換アミノ酸は、たとえばポリエチレングリコールを含む、親水性部分と架橋するのに適した側鎖を含む。1つの実施形態では、親水性部分が連結されるA19インスリン類似体の位置のアミノ酸を、親水性部分を導入するまたは親水性部分の結合を容易にする天然または合成アミノ酸で置換する(またはC末端に付加する)。たとえば、1つの実施形態では、A5、A8、A9、A10、A12、A14、A15、A17、A18、B1、B2、B3、B4、B5、B13、B14、B17、B21、B22、B26、B27、B28、B29およびB30から選択される位置の天然アミノ酸を、ポリエチレンオキシド鎖の共有結合での連結を可能にするリシン、システインまたはアセチルフェニルアラニン残基で置換する(またはリシン、システインまたはアセチルフェニルアラニン残基をC末端に付加する)。
【0061】
1つの実施形態では、A19インスリン類似体は、B鎖のアミノ末端もしくはカルボキシ末端に付加された単一システイン残基を有するか、またはA19インスリン類似体は、少なくとも1個のシステイン残基で置換されており、このシステイン残基の側鎖は、たとえばマレイミド、ビニルスルホン、2−ピリジルチオ、ハロアルキルおよびハロアシルを含むチオール反応性試薬でさらに修飾されている。これらのチオール反応性試薬は、カルボキシ、ケト、ヒドロキシルおよびエーテル基ならびにポリエチレングリコール単位などの他の親水性部分を含んでもよい。別の実施形態では、A19インスリン類似体は、B鎖のカルボキシ末端に付加された単一リシン残基を有するか、またはA19インスリン類似体はリシンで置換されており、置換リシン残基の側鎖は、カルボン酸の活性エステル(スクシンイミド、無水物等)などのアミン反応性試薬またはポリエチレングリコールなどの親水性部分のアルデヒドを使用してさらに修飾されている。
【0062】
A19インスリン類似体がポリエチレングリコール鎖を含む実施形態では、ポリエチレン鎖は直鎖の形態であってもよく、または分枝であってもよい。1つの実施形態によれば、ポリエチレングリコール鎖は、約20,000〜約60,000ダルトンの範囲から選択される平均分子量を有する。複数のポリエチレングリコール鎖をA19インスリン類似体に連結して、最適の溶解度および血液クリアランス特性を有するA19インスリン類似体を提供することができる。1つの実施形態では、A19インスリン類似体を、約20,000〜約60,000ダルトンの範囲から選択される平均分子量を有する1本のポリエチレングリコール鎖に連結する。もう1つの実施形態では、A19インスリン類似体を、2本の鎖の総平均分子量が約40,000〜約80,000ダルトンの範囲から選択される2本のポリエチレングリコール鎖に連結する。1つの実施形態では、20,000または60,000ダルトンの平均分子量を有する1本のポリエチレングリコール鎖をA19インスリン類似体に連結する。もう1つの実施形態では、1本のポリエチレングリコール鎖をA19インスリン類似体に連結し、1本のポリエチレングリコール鎖は、約40,000〜約50,000ダルトンの範囲から選択される平均分子量を有する。1つの実施形態では、2本のポリエチレングリコール鎖をA19インスリン類似体に連結し、第一および第二ポリエチレングリコール鎖は各々20,000ダルトンの平均分子量を有する。もう1つの実施形態では、2本のポリエチレングリコール鎖をA19インスリン類似体に連結し、第一および第二ポリエチレングリコール鎖は各々40,000ダルトンの平均分子量を有する。
【0063】
さらなる実施形態では、ペプチドに共有結合された2またはそれ以上のポリエチレングリコール鎖を含むA19インスリン類似体が提供され、このポリエチレングリコール鎖の合計分子量は約40,000〜約60,000ダルトンである。1つの実施形態では、ペグ化A19インスリン類似体は、B鎖のN末端および/または配列番号9の28位もしくは配列番号8の29位から選択される1またはそれ以上のアミノ酸に連結されたポリエチレングリコール鎖を含み、PEG鎖の総分子量は約40,000〜約80,000ダルトンである。
【0064】
1つの実施形態によれば、A19インスリン類似体の溶解度、安定性および/または薬物動態を改善するために血漿タンパク質がペプチドのアミノ酸側鎖に共有結合で連結されたA19インスリン類似体が提供される。たとえば、血清アルブミンを本明細書で提供されるA19インスリン類似体に共有結合することができる。血漿タンパク質は、B鎖のN末端またはA鎖もしくはB鎖のC末端に連結することができる。1つの実施形態では、血漿タンパク質をB鎖のN末端および/または配列番号9の28位もしくは配列番号8の29位に対応するアミノ酸に共有結合する。
【0065】
1つの実施形態によれば、免疫グロブリン分子のFc部分に相当する直鎖状アミノ酸配列が、開示されるA19インスリン類似体のアミノ酸側鎖に共有結合で連結されたA19インスリン類似体が提供される。Fc部分の結合は、A19インスリン類似体の溶解度、安定性および/または薬物動態を改善するために行われる。Fc部分は、B鎖のN末端またはA鎖もしくはB鎖のC末端に連結することができる。たとえば、免疫グロブリン分子のFc部分に相当するアミノ酸配列を、たとえば配列番号9の28位または配列番号8の29位に対応するアミノ酸への連結を含む、B鎖のC末端に共有結合することができる。Fc部分は、典型的にはIgGから単離されたものであるが、任意の免疫グロブリンからのFcペプチドフラグメントが同等に機能するはずである。
【0066】
本発明の特定態様では、A19インスリン類似体を、A19インスリン類似体のアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールの直接アシル化によってアシル基を含むように修飾する。一部の実施形態では、A19インスリン類似体を、アミノ酸の側鎖アミン、ヒドロキシルまたはチオールを介して直接アシル化する。一部の実施形態では、アシル化は、A9、A14、A15、B22、B28またはB29から選択される1またはそれ以上の位置においてなされる。これに関して、アシル化A19インスリン類似体は、配列番号3のA鎖アミノ酸配列および配列番号5のB鎖、またはA9、A14、A15、B22、B28もしくはB29位のアミノ酸の少なくとも1つが側鎖アミン、ヒドロキシルまたはチオールを含む任意のアミノ酸に修飾された配列番号3および/もしくは配列番号5の修飾アミノ酸配列を含み得る。一部の特定実施形態では、A19インスリン類似体の直接アシル化は、B28またはB29位のアミノ酸の側鎖アミン、ヒドロキシルまたはチオールを介して起こる。1つのさらなる実施形態では、A19インスリン類似体は、B28またはB29位に存在するLysのε−アミノ基に結合した1〜24個の炭素原子を有するカルボン酸のアシル基を含む。
【0067】
1つの実施形態では、ペプチドリンカーのアミノ酸の1つが、ペプチドリンカーのアミノ酸の側鎖のアミン、ヒドロキシルまたはチオールの直接アシル化によってアシル基を含むように修飾されている、一般式B−P−A19の一本鎖インスリン類似体が提供される。1つの実施形態によれば、一本鎖インスリン類似体のペプチドリンカーは、AGRGSGK(配列番号24)、AGLGSGK(配列番号25)、AGMGSGK(配列番号26)、ASWGSGK(配列番号27)、TGLGSGQ(配列番号28)、TGLGRGK(配列番号29)、TGLGSGK(配列番号30)、HGLYSGK(配列番号31)、KGLGSGQ(配列番号32)、VGLMSGK(配列番号33)、VGLSSGQ(配列番号34)、VGLYSGK(配列番号35)、VGLSSGK(配列番号36)、VGMSSGK(配列番号37)、VWSSSGK(配列番号38)、VGSSSGK(配列番号39)、VGMSSGK(配列番号40)、TGLGSGR(配列番号41)、TGLGKGQ(配列番号42)、KGLSSGQ(配列番号43)、VKLSSGQ(配列番号44)、VGLKSGQ(配列番号45)、TGLGKGQ(配列番号46)およびVGLSKGQ(配列番号47)から成る群より選択され、A鎖中、B鎖中または連結ペプチド中の少なくとも1つのリシン残基はアシル化によって化学修飾されている。1つの実施形態では、アシル化基は、1〜5、10〜12または12〜24炭素鎖を含む。
【0068】
本開示はまた、本発明のA19インスリン類似体が、場合により共有結合を介して、また場合によりリンカーを介して、コンジュゲートに連結されている他のコンジュゲートを包含する。連結は、共有化学結合、静電相互作用、水素相互作用、イオン相互作用、ファンデルワールス相互作用、または疎水性もしくは親水性相互作用などの物理的力によって実現することができる。様々な非共有結合カップリングシステムを使用してよく、たとえばビオチン−アビジン、リガンド/受容体、酵素/基質、核酸/核酸結合タンパク質、脂質/脂質結合タンパク質、細胞接着パートナー、または互いに対して親和性を有する任意の結合パートナーもしくはそのフラグメントを含む。
【0069】
本開示のA19インスリン類似体は、ペプチドの標的アミノ酸残基を、これらの標的アミノ酸の選択される側鎖またはN末端もしくはC末端残基と反応することができる有機誘導体化剤と反応させることにより、直接共有結合による連結を介してコンジュゲート部分に連結することができる。ペプチドまたはコンジュゲート部分上の反応基は、たとえばアルデヒド、アミノ、エステル、チオール、α−ハロアセチル、マレイミドまたはヒドラジノ基を含む。誘導体化剤は、たとえばマレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リシン残基を介したコンジュゲーション)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸または当技術分野で公知の他の物質を含む。あるいは、コンジュゲート部分は、リンカーまたは多糖もしくはポリペプチド担体などの中間担体を介して間接的にペプチドに連結することができる。多糖担体の例としてアミノデキストランが挙げられる。適切なポリペプチド担体の例として、ポリリシン、ポリグルタミン酸、ポリアスパラギン酸、それらのコポリマー、および生じる負荷担体に望ましい溶解度特性を付与する、これらのアミノ酸とたとえばセリンなどの他のアミノ酸の混合ポリマーが挙げられる。
【0070】
例示的なコンジュゲート部分は、異種ペプチドもしくはポリペプチド(たとえば血漿タンパク質を含む)、標的化剤、免疫グロブリンもしくはその部分(たとえば可変領域、CDRもしくはFc領域)、放射性同位体、発蛍光団もしくは酵素標識などの診断標識、水溶性ポリマーを含むポリマー、または他の治療もしくは診断物質を含むが、これらに限定されない。1つの実施形態では、本開示のA19インスリン類似体および血漿タンパク質を含むコンジュゲートが提供され、血漿タンパク質は、アルブミン、トランスフェリンおよびフィブリノーゲンから成る群より選択される。1つの実施形態では、コンジュゲートの血漿タンパク質部分はアルブミンまたはトランスフェリンである。一部の実施形態では、A19インスリン類似体はリンカーを介してコンジュゲート部分に結合され、このリンカーは、1〜約60個の原子、または1〜30個の原子またはそれ以上の長さ、2〜5個の原子、2〜10個の原子、5〜10個の原子、または10〜20個の原子の長さの鎖を含む。一部の実施形態では、鎖の原子はすべて炭素原子である。一部の実施形態では、リンカーの骨格中の鎖原子は、C、O、NおよびSから成る群より選択される。炭素原子およびリンカーは、より可溶性のコンジュゲートを提供するためにそれらの予想される溶解度(親水性)に従って選択され得る。一部の実施形態では、リンカーは、標的組織または器官または細胞中で認められる酵素または他の触媒または加水分解条件による切断に供される官能基を提供する。一部の実施形態では、リンカーの長さは、立体障害の潜在的可能性を低減するのに十分な長さである。リンカーが共有結合またはペプチジル結合であり、コンジュゲートがポリペプチドである場合、コンジュゲート全体が融合タンパク質であり得る。そのようなペプチジルリンカーは任意の長さであってよい。例示的なリンカーは、約1〜50アミノ酸長、5〜50、3〜5、5〜10、5〜15または10〜30アミノ酸長である。そのような融合タンパク質は、選択的に、当業者に公知の組換え遺伝子操作法によって作製され得る。
【0071】
開示されるA19インスリン類似体は、インスリンペプチドに関してこれまでに記述されている任意の使用に適すると考えられる。従って、本明細書で述べるA19インスリン類似体は、高血糖症を治療するため、または高い血糖値から生じる他の代謝性疾患を治療するために使用できる。従って、本発明は、高血糖値に有する患者を治療する際に使用するための、本開示のA19インスリン類似体および医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物を包含する。1つの実施形態によれば、本明細書で開示されるA19インスリン類似体を使用して治療される患者は家畜であり、もう1つの実施形態では、治療される患者はヒトである。
【0072】
本開示に従って高血糖症を治療する1つの方法は、静脈内、腹腔内、皮下または筋肉内などの非経口経路、髄腔内、経皮、経直腸、経口、経鼻または吸入によるものを含む、任意の標準的な投与経路を用いて本明細書で開示されるA19インスリン類似体を患者に投与する工程を含む。1つの実施形態では、組成物は皮下的にまたは筋肉内に投与される。1つの実施形態では、組成物は非経口的に投与され、A19インスリン類似体は注射器中に予備充填される。
【0073】
本発明のA19インスリン類似体は、単独でまたは他の抗糖尿病薬と組み合わせて投与され得る。当技術分野で公知のまたは試験中の抗糖尿病薬は、天然インスリン、天然グルカゴンおよびそれらの機能的誘導体、トルブタミド(Orinase)、アセトヘキサミド(Dymelor)、トラザミド(Tolinase)、クロルプロパミド(Diabinese)、グリピジド(Glucotrol)、グリブリド(Diabeta、Micronase、Glynase)、グリメピリド(Amaryl)もしくはグリクラジド(Diamicron)などのスルホニル尿素、;レパグリニド(Prandin)もしくはナテグリニド(Starlix)などのメグリチニド;メトホルミン(Glucophage)もしくはフェンホルミンなどのビグアナイド薬;ロシグリタゾン(Avandia)、ピオグリタゾン(Actos)もしくはトログリタゾン(Rezulin)などのチアゾリジンジオン、または他のPPARγ阻害剤;ミグリトール(Glyset)、アカルボース(Precose/Glucobay)などの、炭水化物消化を阻害するαグルコシダーゼ阻害剤;エクセナチド(Byetta)もしくはプラムリンチド;ビルダグリプチンもしくはシタグリプチンなどのジペプチジルペプチダーゼ−4(DPP−4)阻害剤;SGLT(ナトリウム依存性グルコース輸送体1)阻害剤;またはFBPアーゼ(フルクトース1,6−ビスホスファターゼ)阻害剤を含む。
【0074】
本明細書で開示されるA19インスリン類似体を含有する医薬組成物は、標準的な医薬的に許容される担体を使用して製剤化され、当業者に公知の投与経路によって患者に投与される。従って、本開示はまた、本明細書で開示されるA19インスリン類似体の1またはそれ以上、またはその医薬的に許容される塩を、医薬的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物を包含する。1つの実施形態では、医薬組成物は、リン酸緩衝系中pH約4.0〜約7.0ので1mg/ml濃度のA19インスリン類似体を含有する。医薬組成物はA19インスリン類似体を唯一の医薬的活性成分として含有してもよく、またはA19インスリン類似体を1もしくはそれ以上の付加的な活性物質と組み合わせることができる。1つの実施形態によれば、好ましくは無菌で、好ましくは少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%または99%の純度レベルの、本明細書で開示されるA19インスリン類似体の1つ、および医薬的に許容される希釈剤、担体または賦形剤を含有する医薬組成物が提供される。そのような組成物は、生じる活性ペプチドが少なくとも0.5mg/ml、1mg/ml、2mg/ml、3mg/ml、4mg/ml、5mg/ml、6mg/ml、7mg/ml、8mg/ml、9mg/ml、10mg/ml、11mg/ml、12mg/ml、13mg/ml、14mg/ml、15mg/ml、16mg/ml、17mg/ml、18mg/ml、19mg/ml、20mg/ml、21mg/ml、22mg/ml、23mg/ml、24mg/ml、25mg/mlまたはそれ以上の濃度で存在する、A19インスリン類似体を含有し得る。1つの実施形態では、医薬組成物は、滅菌され、場合により様々な容器内で保存される水溶液を含む。
【0075】
本発明の化合物を1つの実施形態に従って使用して、注射用のあらかじめ製剤された溶液を調製することができる。他の実施形態では、医薬組成物は凍結乾燥粉末を含む。医薬組成物は、組成物を患者に投与するための使い捨て装置を含むキットの一部としてさらに包装され得る。容器またはキットは、周囲室温または冷蔵温度での保存に関してラベル表示され得る。
【0076】
本明細書で述べるすべての治療方法、医薬組成物、キットおよび他の同様の実施形態は、A19インスリン類似体がすべての医薬的に許容されるその塩を含むことを企図する。
【0077】
1つの実施形態では、キットは、A19インスリン類似体組成物を患者に投与するための装置と共に提供される。キットは、様々な容器、たとえばバイアル、チューブ、ビン等をさらに含み得る。好ましくは、キットは使用のための指示書も含む。1つの実施形態によれば、キットの装置は、組成物がエアロゾル装置内に前充填されたエアロゾル投与装置である。もう1つの実施形態では、キットは注射器と針を含み、1つの実施形態では、インスリン類似体組成物は注射器内に前充填される。
【0078】
本発明の化合物は、標準的な合成方法、組換えDNA技術、またはペプチドおよび融合タンパク質を調製する任意の他の方法によって調製され得る。特定の非天然アミノ酸は標準的な組換えDNA技術によって発現することができないが、それらの調製のための技術は当技術分野において公知である。非ペプチド部分を含有する本発明の化合物は、該当する場合は標準的なペプチド化学反応に加えて、標準的な有機化学反応によって合成され得る。
【実施例】
【0079】
[実施例1]
==インスリンAおよびB鎖の合成==
インスリンAおよびB鎖を、Boc化学を用いて4−メチルベンズヒドリルアミン(MBHA)樹脂または4−ヒドロキシメチルフェニルアセトアミドメチル(PAM)樹脂上で合成した。95:5のHF/p−クレゾールを使用して0℃で1時間、ペプチドを樹脂から切断した。HFの除去およびエーテル沈殿後、ペプチドを50%酢酸水溶液に溶解し、凍結乾燥した。あるいは、Fmoc化学を用いてペプチドを合成した。これらのペプチドは、トリフルオロ酢酸(TFA)/トリイソプロピルシラン(TIS)/HO(95:2.5:2.5)を使用して室温で2時間インキュベートし、樹脂から切断した。過剰量のジエチルエーテルを添加してペプチドを沈殿させ、ペレットを酸性緩衝水溶液に可溶化した。ペプチドの品質をRP−HPLCによってモニターし、質量分析(ESIまたはMALDI)によって確認した。
【0080】
インスリンA鎖を、7位のアミノ酸の単一遊離システインを用いて合成し、他のすべてのシステインをアセトアミドメチルA−(SH)(Acm)6、11、20として保護した。インスリンB鎖を、7位の単一遊離システインを用いて合成し、その他のシステインをアセトアミドメチルB−(SH)(Acm)19として保護した。粗ペプチドを従来のRP−HPLCによって精製した。
【0081】
合成したA鎖とB鎖を、図1に概略を示す一般手順に従ってそれらの天然ジスルフィド結合を介して互いに連結した。それぞれのB鎖を、DMFまたはDMSOに溶解することによってCys−Npys誘導体へと活性化し、2,2’−ジチオビス(5−ニトロピリジン)(Npys)と1:1のモル比で室温にて反応させた。活性化をRP−HPLCによってモニターし、生成物をESI−MSによって確認した。
【0082】
それぞれのA−(SH)(Acm)6、11、20およびB−(Nyps)(Acm)19を1:1のモル比で10mg/mlの総ペプチド濃度に溶解することによって第一B7−A7ジスルフィド結合を形成した。鎖の結合反応が完了したとき、混合物を50%酢酸水溶液の濃度に希釈した。最後の2つのジスルフィド結合は、ヨウ素の添加を介して同時に形成した。40倍モル過剰のヨウ素を溶液に添加し、混合物を室温でさらに1時間撹拌した。アスコルビン酸水溶液を添加して反応を終了させた。混合物をRP−HPLCによって精製し、最終化合物をMALDI−MSによって確認した。図2および表1のデータに示すように、この手順に従って調製した合成インスリンは、インスリン受容体結合に関して精製インスリンに良好に匹敵する。
【0083】
修飾アミノ酸(A19位の4−アミノフェニルアラニンなど)を含むインスリンペプチドも、たとえば米国特許第7,045,337号および同第7,083,970号において教示される系を含む、非コードアミノ酸のタンパク質への組込みを可能にする系を用いてインビボで合成することができる。
表1:天然インスリンと比較した合成インスリンの活性

【0084】
[実施例2]
==還元的アルキル化によるアミン基(N末端およびリシン)のペグ化==
a.合成
インスリン(またはインスリン類似体)、mPEG20k−アルデヒドおよびNaBHCNを1:2:30のモル比でpH4.1〜4.4の酢酸緩衝液に溶解した。反応溶液は、0.1N NaCl、0.2N酢酸および0.1N NaCOから成る。インスリンペプチド濃度は約0.5mg/mlであった。反応は室温で6時間にわたって行った。反応完了の程度をRP−HPLCによってモニターし、反応の収率は約50%であった。
【0085】
b.精製
反応混合物を0.1%TFAで2〜5倍に希釈し、準備ておいたRP−HPLCカラムに供した。HPLC条件:C4カラム;流速10ml/分;A緩衝液、水中10%ACNおよび0.1%TFA;B緩衝液、ACN中0.1%TFA;Bの直線勾配(%)が0〜40%(0〜80分);PEG−インスリンまたは類似体は約35%のB緩衝液で溶出した。加硫分解またはトリプシン分解を介した化学修飾後、所望化合物をMALDI−TOFによって確認した。
【0086】
==N−ヒドロキシスクシンイミドアシル化によるアミン基(N末端およびリシン)のペグ化==
a.合成
インスリン(またはインスリン類似体)をmPEG20k−NHSと共に0.1Nビシン緩衝液(pH8.0)に1:1のモル比で溶解した。インスリンペプチド濃度は約0.5mg/mlであった。反応の進行をHPLCによってモニターした。反応の収率は、室温で2時間後に約90%であった。
【0087】
b.精製
反応混合物を2〜5倍に希釈し、RP−HPLCに供した。HPLC条件:C4カラム;流速10ml/分;A緩衝液、水中10%ACNおよび0.1%TFA;B緩衝液、ACN中0.1%TFA;Bの直線勾配(%)が0〜40%(0〜80分);PEG−インスリンまたは類似体を約35%Bで収集した。加硫分解またはトリプシン分解を介した化学修飾後、所望化合物をMALDI−TOFによって確認した。
【0088】
==フェニルアラニンの芳香環上のアセチル基の還元的アミノペグ化==
a.合成
インスリン(またはインスリン類似体)、mPEG20k−ヒドラジドおよびNaBHCNを1:2:20のモル比で酢酸緩衝液(pH4.1〜4.4)に溶解した。反応溶液は、0.1N NaCl、0.2N酢酸および0.1N NaCOから成る。インスリンまたはインスリン類似体濃度は、室温で24時間、約0.5mg/mlであった。反応の経過をHPLCによってモニターした。反応の変換率は約50%であった(HPLCによって算定した)。
【0089】
b.精製
反応混合物を2〜5倍に希釈し、RP−HPLCに供した。HPLC条件:C4カラム;流速10ml/分;A緩衝液、水中10%ACNおよび0.1%TFA;B緩衝液、ACN中0.1%TFA;B直線勾配(%)が0〜40%(0〜80分);PEG−インスリンまたはPEG−インスリン類似体を約35%Bで収集した。加硫分解またはトリプシン分解を介した化学修飾後、所望化合物をMALDI−TOFによって確認した。
【0090】
[実施例3]
==インスリン受容体結合アッセイ==
インスリンまたはIGF−1受容体に対する各々のペプチドの親和性を、シンチレーション近接技術を利用した競合結合アッセイにおいて測定した。ペプチドの連続3倍希釈をTris−Cl緩衝液(0.05M Tris−HCl、pH7.5、0.15M NaCl、0.1%w/vウシ血清アルブミン)中で作製し、96穴プレート(Corning Inc.,Acton,MA)において0.05nM(3−[125I]−ヨードチロシル)A TyrA14インスリンまたは(3−[125I]−ヨードチロシル)IGF−1(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)と混合した。ヒトインスリンまたはIGF−1受容体を過剰発現する細胞から調製した形質膜フラグメントの1〜6μgを各ウエルに分注し、0.25mg/ウエルのポリエチレンイミン処理コムギ胚芽凝集素A型シンチレーション近接アッセイビーズ(Amersham Biosciences,Piscataway,NJ)を添加した。800rpmで5分間振とうした後、プレートを室温で12時間インキュベートし、MicroBeta1450液体シンチレーションカウンター(Perkin−Elmer,Wellesley,MA)で放射能を測定した。非特異的結合(NSB)の放射能を、試験試料の最高濃度よりも4倍高い濃度の「非放射性(コールド)」天然リガンドを含むウエルで測定した。競合物質を含まないウエルで総結合放射能を検出した。特異的結合のパーセントを以下のように計算した:特異的結合%=(結合−NSB/総結合−NSB)×100。IC50値は、Originソフトウエア(OriginLab,Northampton,MA)を用いて決定した。
【0091】
[実施例4]
==インスリン受容体リン酸化アッセイ==
インスリンまたはインスリン類似体の受容体リン酸化を測定するため、受容体をトランスフェクトしたHEK293細胞を96穴組織培養プレート(Costar No.3596,Cambridge,MA)に播種し、100IU/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、10mM HEPESおよび0.25%ウシ増殖血清(HyClone SH30541,Logan,UT)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中、37℃、5%COおよび90%湿度で16〜20時間培養した。インスリンまたはインスリン類似体の連続希釈を、0.5%ウシ血清アルブミン(Roche Applied Science No.100350,Indianapolis,IN)を添加したDMEM中で調製し、接着した細胞を含むウエルに添加した。5%COの加湿条件下で37℃で15分間インキュベートした後、細胞を5%パラホルムアルデヒドにより室温で20分間固定し、リン酸緩衝食塩水pH7.4で2回洗浄して、PBS中2%ウシ血清アルブミンで1時間ブロックした。次にプレートを3回洗浄し、製造者の推奨に従って2%ウシ血清アルブミン含有PBS中で再構成したホスホチロシンに対するホースラディッシュペルオキシダーゼ結合抗体(Upstate biotechnology No.16−105,Temecula,CA)で満たした。室温で3時間インキュベートした後、プレートを4回洗浄し、TMB single solution substrate(Invitrogen,No.00−2023,Carlbad,CA)0.1mlを各々のウエルに添加した。1N HCl 0.05mlを添加することによって5分後に発色を停止させた。450nmの吸光度をTitertek Multiscan MCC340(ThermoFisher,Pittsburgh,PA)で測定した。吸光度に対するペプチド濃度用量反応曲線をプロットし、Originソフトウエア(OriginLab,Northampton,MA)を用いてEC50値を決定した。
【0092】
[実施例5]
A19のインスリンの特定類似体を合成し、インスリン受容体におけるそれらの活性に関して特徴づけた。2つの活性の高い構造類似体がA19で同定されたが、2番目の活性部位の芳香族残基(B24)での同程度の構造変化により、同様の完全な活性のインスリン類似体は同定されなかった。表2および3は、インスリン受容体における完全な活性のために、A19位が高度に構造保存されていることを例示する。表2は、A19に修飾を有する2つのインスリン類似体だけが天然インスリンと同様の受容体結合活性を有することを明らかにする。4−アミノフェニルアラニンインスリン類似体に関して、3つの別々の実験からのデータを提示する。「活性(本試験)」と表示された欄は、同時に実施された2つの別々の実験における、天然インスリンに比較したインスリン類似体の結合パーセントを比較する。「活性(0.60nM)」と表示された欄は、このアッセイを用いてインスリン結合に関して得られた過去平均値と比較したインスリン類似体の相対的結合パーセントである。どちらの分析においても、2つのA19インスリン類似体(4−アミノフェニルアラニンおよび4−メトキシフェニルアラニン)は天然インスリンにおおよそ等しい受容体結合を示す。図3は、インスリン受容体への天然インスリンとA19インスリン類似体のそれぞれの特異的結合を示すグラフである。表3は、天然インスリンと等しい結合活性を示す2つのA19インスリン類似体(4−アミノおよび4−メトキシ)が、同時にインスリン受容体における等しいリン酸化活性も示すことを説明するデータを提示する。
表2:A19インスリン類似体のインスリン受容体結合活性

表3:A19インスリン類似体のインスリン受容体リン酸化活性


【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)を含むポリペプチド、またはA5、A8、A9、A10、A14、A15、A17、A18位から選択される1〜3個のアミノ酸修飾によって配列番号3と異なる配列を含むその類似体。
[配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式:
【化1】

[式中、Rは、NHもしくはOCHである]
のアミノ酸であり;そして
は、アスパラギン、グリシンもしくはアラニンである]
【請求項2】
がNHである、請求項1に記載のインスリン類似体。
【請求項3】
GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)
の配列を含有するA鎖配列;および
LCGXLVEALYLVCGERGFF(配列番号4)
の配列を含有するB鎖配列を含むインスリン類似体。
[配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式:
【化2】

[式中、Rは、NHまたはOCHである]
のアミノ酸であり;
は、アスパラギンまたはグリシンであり;
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択される]
【請求項4】
前記B鎖配列が、配列X11VNQXLCGXLVEALYLVCGERGFFYTX10(配列番号5)を含む、請求項3に記載のインスリン類似体。
[配列中、
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択され;
は、アスパラギン酸塩−リシンジペプチド、リシン−プロリンジペプチドまたはプロリン−リシンジペプチドであり;
10は、トレオニン、アラニンまたはトレオニン−アルギニン−アルギニントリペプチドであり;
11は、フェニルアラニンおよびデスアミノ−フェニルアラニンから成る群より選択される]
【請求項5】
前記A鎖配列が、配列GIVEQCCTSICSLYQLENXCN(配列番号6)を含む、請求項3に記載のインスリン類似体。
[配列中、Xは、一般式:
【化3】

のアミノ酸である]
【請求項6】
前記B鎖配列が、配列HLCGSHLVEALYLVCGERGFF(配列番号7)を含む、請求項5に記載のインスリン類似体。
【請求項7】
前記B鎖配列が、配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTPKT(配列番号8)を含む、請求項5に記載のインスリン類似体。
【請求項8】
前記B鎖配列が、配列FVNQHLCGSHLVEALYLVCGERGFFYTKPT(配列番号9)を含む、請求項5に記載のインスリン類似体。
【請求項9】
前記B鎖のアミノ酸に連結されている親水性部分をさらに含む、請求項3に記載のインスリン類似体。
【請求項10】
前記親水性部分が前記B鎖の前記N末端アミノ酸に連結されている、請求項9に記載のインスリン類似体。
【請求項11】
親水性部分が、前記B鎖の前記N末端アミノ酸または配列番号8の29位の前記アミノ酸のいずれかに連結されている、請求項7に記載のインスリン類似体。
【請求項12】
親水性部分が、前記B鎖の前記N末端アミノ酸または配列番号9の28位の前記アミノ酸のいずれかに連結されている、請求項8に記載のインスリン類似体。
【請求項13】
前記親水性部分がポリエチレングリコールである、請求項9〜12のいずれか一項に記載のインスリン類似体。
【請求項14】
式:B−P−A19の化合物を含む一本鎖インスリン類似体。
[式中、
Bは、XLCGXLVEALYLVCGERGFF(配列番号4)の配列を含む配列を表し;
A19は、GIVEQCCXSICSLYQLENXCX(配列番号3)の配列を含む配列を表し;そして
Pは、約4〜約14アミノ酸のペプチドリンカーを表し、さらに、
配列中、
は、トレオニンおよびヒスチジンから成る群より選択され;
は、一般式:
【化4】

[式中、Rは、NHまたはOCHである]
のアミノ酸であり;
は、アスパラギンまたはグリシンであり;
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択される]
【請求項15】
前記ペプチドリンカーが、
Gly−Gly−Gly−Pro−Gly−Lys−Arg(配列番号11)、Gly−Tyr−Gly−Ser−Ser−Ser−Arg−Arg−Ala−Pro−Gln−Thr(配列番号12)、Arg−Arg−Gly−Pro−Gly−Gly−Gly(配列番号21)、Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Lys−Arg(配列番号13)、Arg−Arg−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly(配列番号14)、Gly−Gly−Ala−Pro−Gly−Asp−Val−Lys−Arg(配列番号15)、Arg−Arg−Ala−Pro−Gly−Asp−Val−Gly−Gly(配列番号16)、Gly−Gly−Tyr−Pro−Gly−Asp−Val−Lys−Arg(配列番号17)、Arg−Arg−Tyr−Pro−Gly−Asp−Val−Gly−Gly(配列番号18)、Gly−Gly−His−Pro−Gly−Asp−Val−Lys−Arg(配列番号19)およびArg−Arg−His−Pro−Gly−Asp−Val−Gly−Gly(配列番号20)
から成る群より選択される、請求項14に記載の一本鎖インスリン類似体。
【請求項16】
がNHである、請求項15に記載の一本鎖インスリン類似体。
【請求項17】
がNHであり;
B鎖が、X11VNQXLCGXLVEALYLVCGERGFFYTX10(配列番号5)の配列を含み;そして
前記ペプチドリンカーが4〜8アミノ酸長であり;さらに、
配列中、
は、ヒスチジンおよびトレオニンから成る群より選択され;
は、アラニン、グリシンおよびセリンから成る群より選択され;
は、ヒスチジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、ホモシステイン酸およびシステイン酸から成る群より選択され;
は、アスパラギン酸塩−リシンジペプチド、リシン−プロリンジペプチドまたはプロリン−リシンジペプチドであり;
10は、トレオニン、アラニンまたはトレオニン−アルギニン−アルギニントリペプチドであり;
11は、フェニルアラニンおよびデスアミノ−フェニルアラニンから成る群より選択される、
請求項14に記載の一本鎖インスリン類似体。
【請求項18】
前記ペプチドリンカーが、配列:GGGPGKR(配列番号11)、AGRGSGK(配列番号24)、AGLGSGK(配列番号25)、AGMGSGK(配列番号26)、ASWGSGK(配列番号27)、TGLGSGQ(配列番号28)、TGLGRGK(配列番号29)、TGLGSGK(配列番号30)、HGLYSGK(配列番号31)、KGLGSGQ(配列番号32)、VGLMSGK(配列番号33)、VGLSSGQ(配列番号34)、VGLYSGK(配列番号35)、VGLSSGK(配列番号36)、VGMSSGK(配列番号37)、VWSSSGK(配列番号38)、VGSSSGK(配列番号39)およびVGMSSGK(配列番号40)を含む、請求項17に記載の一本鎖インスリン類似体。
【請求項19】
親水性部分が、前記B鎖のA9、A14、A15、B22、B28、B29位、前記C末端もしくはN末端のアミノ酸側鎖または前記ペプチドリンカーのリシン側鎖を介して連結されている、請求項3〜8または14〜18のいずれか一項に記載のインスリン類似体。
【請求項20】
前記類似体が、A9、A14、A15、B22、B28またはB29から選択される1またはそれ以上の位置でアシル化されている、請求項1〜18のいずれか一項に記載のインスリン類似体。
【請求項21】
請求項3または14に記載の前記インスリン類似体および医薬的に許容される担体を含有する医薬組成物。
【請求項22】
請求項21に記載の医薬組成物の有効量を投与することを含む、糖尿病を治療する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−512899(P2012−512899A)
【公表日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−542482(P2011−542482)
【出願日】平成21年12月18日(2009.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/068712
【国際公開番号】WO2010/080606
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(507277642)インディアナ ユニバーシティー リサーチ アンド テクノロジー コーポレーション (21)
【氏名又は名称原語表記】INDIANA UNIVERSITY RESEARCH AND TECHNOLOGY CORPORATION
【Fターム(参考)】