インターフェロンをPEGで標識する方法
インターフェロン分子の部位特異的標識の方法が提供される。当該方法は、(a)アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を含む標識分子を準備する工程と;(b)C末端ヒドラジド部分を有するインターフェロン分子を準備する工程と;(c)当該PEG部分のアルデヒドまたはケトン部分を当該インターフェロン分子のC末端ヒドラジドと反応させて、標識されたインターフェロン分子を形成する工程であって、この標識されたインターフェロン分子は、ヒドラゾン結合を介して当該インターフェロン分子のC末端に結合されたPEG部分を含む、工程と、を含む。このような方法を使用して標識されたインターフェロン分子も記載される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ペプチド、タンパク質などの部位特異的修飾の方法に関する。特に本願は、インターフェロンなどのタンパク質をPEGで標識する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えタンパク質治療法は、癌から代謝障害および自己免疫疾患の範囲にわたる様々な症状のために有効な処置として現れたが、この組み換えタンパク質治療法は、一般に、その薬物動態および免疫原性によって限定される。その結果として、これらを克服するために、グリコシル化、アルブミンの結合、環化およびPEG化を含めたいくつかの戦略が開発されてきた。タンパク質のグリコシル化は、(1種または複数種の)炭水化物の結合であり、これは、タンパク質の安定性を支援する可能性があり、かつタンパク質分解および免疫認識からの何らかの防御を与える可能性がある(非特許文献1)。ヒトアルブミンは、血液循環において最も一般的な血清タンパク質であり、約19日という稀な長い半減期を有する。その結果として、タンパク質のNまたはC末端へのアルブミンの遺伝子融合は、十分に耐容性があり、得られた融合タンパク質は著しく増大した半減期を有する(非特許文献2)。
【0003】
PEG化、つまりポリエチレングリコールの共有結合による結合(非特許文献3)は、ほぼ間違いなく、タンパク質の薬物動態を改良するために最も広く使用され受け容れられている方法である。PEGは、低い多分散性をもつ広い範囲の分子量で入手できる、繰り返し単位(−C2H3−O−)nに基づくポリマーであり、線状および分岐状のどちらであることもできる。PEGの高い柔軟性および水和は、PEGが、大きい流体力学半径を有して、PEGが結合されるタンパク質のサイズを著しく増大させ、その結果としてPEGの腎臓クリアランスを著しく減少させるということを意味する。加えて、潜在的に免疫原性のエピトープおよびプロテアーゼ切断部位は隠され、それぞれ免疫原性およびタンパク質分解を低下させる。さらには、PEG化によって、タンパク質の溶解性および安定性を実質的に改善することができる。
【0004】
しかしながら、PEG化についての公知の方法は、タンパク質求核剤、例えばリジン側鎖にあるアミノ基によるアシル化またはアルキル化を受ける求電子的なPEG誘導体を使用するので、一般に部位選択的ではない(非特許文献4)。これは、1つのPEG分子がいくつかの異なる部位でタンパク質に結合されて異なる位置異性体を生成する、不均一なタンパク質調製物を生成することが多い。タンパク質内のいくつかの位置で、PEGの結合は、受容体の結合を阻止するかまたは妨げる。加えて、いくつかのPEG分子が同じタンパク質に異なる部位で結合されている、多PEG化された種も存在する可能性がある。その結果として、PEG化されたタンパク質調製物の全活性は、非修飾のタンパク質に比べて低下する。結果として、部位特異的タンパク質PEG化のための方法に対するニーズがある;タンパク質配列内の明確な位置で単独のPEG部分を組み込むことによって、非選択的なPEG化(すなわち、多数のPEGの位置異性体を含有する調製物)に関連する有害な効果は克服される可能性がある。
【0005】
標識をタンパク質に部位特異的な様式で導入するために用いられる最も一般的な方法は、特有のフリーのシステインを修飾のための位置で一次配列に導入することである。次いで、このフリーのシステインのスルフヒドリル側鎖は、標識のマレイミド誘導体と反応して部位特異的修飾をもたらす。しかしながら、このためには、その一次配列内のすべての他の天然に存在するフリーのシステインが、アミノ酸変異誘発を通して取り除かれることが必要である。加えて、タンパク質が天然にジスルフィド結合を含有する場合は、その分子内に余分なシステインを付加することは、そのタンパク質の正しい折り畳みを妨げる可能性がある。
【0006】
結果として、タンパク質の部位特異的PEG化のために他のアプローチが検討されてきた。非特許文献5は、PEG−チオエステルと標的タンパク質上のN末端システインとの間の未変性の化学的ライゲーションによって、PEGをタンパク質のN末端に結合することを記載する。これは、すでに存在していなければ、タンパク質の配列にN末端システインを付加することを必要とするが、この付加はシステイン含有タンパク質におけるタンパク質の折り畳みを妨げる可能性がある。非特許文献6は、α−アミノN末端アミンだけが反応性である酸性条件下での(リジン残基のε−アミノ基よりも低いpkaを参照)、PEGアルデヒドを用いたタンパク質の還元的アルキル化によってPEGをN末端に結合することを記載する(非特許文献6)。しかしながら、依然として、この方法を用いるといくらかのε−アミノPEG化が生じる可能性がある。ジスルフィド架橋へのPEGの組み込みは、非特許文献7で示唆されている。これは、2つのシステインチオールを遊離させるためのジスルフィドの最初の還元、次いでPEGが共有結合で結合されている3炭素架橋を与えるためのビスアルキル化を含む。しかしながら、このアプローチは、溶媒曝露のジスルフィド結合を含有するタンパク質に限定される。さらなる方法は、E.coliの中で発現された組み換えタンパク質が酵素によってグリコシル化され、PEGがその天然のグリコシル化部位でグリカンを介して結合される、天然のグリコシル化部位でのPEG化である(非特許文献8)。このアプローチは、天然にグリコシル化されているタンパク質に限定される。非特許文献9は、チオ酸/アジドアミド化を介したタンパク質C末端PEG化を記載する;この方法では、タンパク質はVMAインテインCBD融合タンパク質として発現され、Na2Sを用いて加ヒドロチオール的に切断されてチオ酸を与え、次いでこのチオ酸は、PEG−スルホンアジドと反応することができる。しかしながら、このチオ酸タンパク質は、標識反応の間に加水分解を受けて、そのタンパク質の標識されていないC末端カルボン酸誘導体を副生成物として与えるやすい。
【0007】
非特許文献10は、E.coli中でのタンパク質発現の間に、反応性の化学基を有する非天然のアミノ酸を組み込むことを記載する。この反応性の化学基によって、その後のPEG官能性の結合が可能にすることができる。これは、ユニークなコドン(例えば、中途終止コドン(amber nonsense codon)、UAG)およびE.coliの中へと操作された対応する転移RNA:アミノアシル−tRNA−シンテターゼ対を使用して成し遂げられる。
【0008】
特許文献1および特許文献2は、ウイルス感染症の処置のためのPEG化されたインターフェロンの使用を記載する。同様に、特許文献3は、PEG化されたインターフェロンを記載する。しかしながら、これらの文献によってインターフェロンのPEG化について記載された方法は、部位特異的ではない。
【0009】
現在、アデノシンデアミナーゼ、G−CSF、エリスロポエチン、IFNα2aおよびIFNα2bのPEG化されたバージョンを含めて9種のPEG化されたタンパク質治療法が治療用途用に承認されている(非特許文献11)。
【0010】
C型肝炎ウイルスの処置において試用され、かつ特定の癌における使用については臨床評価段階にある、2種の承認されたIFNα2のPEG化されたバージョンがある(非特許文献12)。Pegasys(登録商標) (ホフマン・ラ・ロシュ(Hoffmann La Roche))は、分岐状の40kDa PEG−NHSに結合された組み換えIFNα2aである。これは、9種の位置的PEG異性体を含む。しかしながら、これは、インビトロアッセイにおいて非PEG化IFNα2aのわずか7%の活性しか保持しない(非特許文献13;非特許文献14)。PegIntron(登録商標) (シェリング・プラウ(Schering Plough))は、14種の位置異性体(そのうちヒスチジン34が47.8%を構成する)を含む95%モノPEG化タンパク質を生じる、単鎖の12kDa スクシンイミジルカーボネートPEGに結合された、組み換えIFNα2bである。PegIntron(登録商標)は、インビトロアッセイにおいて非PEG化IFNα2bと比べて28%抗ウイルス活性を保持する(非特許文献15)。
【0011】
Betaseron(登録商標) (EUではBetaferon)(バイエル・シェリング・ファーマ(Bayer Shering Pharma))およびさらに最近のものではExtavia(ノバルティス(Novartis))は、多発性硬化症の処置において使用される組み換えIFNβ1bタンパク質であり、これらは肝炎および特定の癌を含めた他の疾患の処置については臨床評価段階にある(非特許文献16;非特許文献17)。しかしながら、IFNβ1bに関する特定の問題は、IFNβ1bは、迅速に血液から除去され、このため、頻繁な投与管理体制が必要であるが、この頻繁な投与は注入部位で壊死を生じる可能性があり、そして患者の服薬率を下げる、ということである。中和抗体も1つの問題であり、1つの2年の研究において45%の患者がこれら中和抗体を生成させた。現在、承認されたPEG化されたIFNβ1bバージョンはない。しかしながら、これまでのこの領域における研究としては、非修飾のIFNβ1bの24〜31%活性を有する5種の位置異性体の混合物を生じる第一級アミンのランダムPEG化、および(主に)N末端アミンのPEG化(35%活性)が挙げられる。位置79(天然のグリコシル化部位)またはNもしくはC末端のいずれかにおける操作されたフリーのCys残基を使用する部位特異的PEG化の試みは、不十分な部位特異的結合のため、成功しなかった(非特許文献18)。別の戦略は、ビシン(bicin)(ビス−N−2−ヒドロキシエチルグリシンアミド)リンカーを使用して2〜3のPEG分子を無作為に結合した。生理的条件下では、ビシンの迅速な加水分解によりPEGが放出され、活性なIFNβ1bが残る。しかしながら、これらの放出可能なPEG化された形態の活性は、非修飾のIFNβ1bの7〜27%の間でしかなかった(非特許文献19)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2005/110455号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/076474号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/059129号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Doores,K.J.、Gamblin,D.P.、およびDavis,B.G.、「Exploring and exploiting the therapeutic potential of glycoconjugates」、Chemistry、2006年、第12巻、656−665頁
【非特許文献2】Subramanian,G.M.、Fiscella,M.、Lamouse−Smith,A.、Zeuzem,S.、およびMcHutchison,J.G.、「Albinterferon alpha−2b: a genetic fusion protein for the treatment of chronic hepatitis C」、Nat. Biotechnol.、2007年、第25巻、1411−1419頁
【非特許文献3】Veronese,F.M.およびMero,A.、「The impact of PEGylation on biological therapies」、BioDrugs.、2008年、第22巻、315−329頁
【非特許文献4】Roberts,M.J.、Bentley,M.D.、およびHarris,J.M.、「Chemistry for peptide and protein PEGylation」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、459−476頁
【非特許文献5】Marsac,Y.、Cramer,J.、Olschewski,D.、Alexandrov,K.、およびBecker,C.F.、「Site−specific attachment of polyethylene glycol−like oligomers to proteins and peptides」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、1492−1498頁
【非特許文献6】Kinstler,O.、Molineux,G.、Treuheit,M.、Ladd,D.、およびGegg,C.、「Mono−N−terminal poly(ethylene glycol)−protein conjugates」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、477−485頁
【非特許文献7】Brocchini,S.、Godwin,A.、Balan,S.、Choi,J.W.、Zloh,M.、およびShaunak,S.、「Disulfide bridge based PEGylation of proteins」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2008年、第60巻、3−12頁
【非特許文献8】DeFrees,S.、Wang,Z.G.、Xing,R.、Scott,A.E.、Wang,J.、Zopf,D.、Gouty,D.L.、Sjoberg,E.R.、Panneerselvam,K.、Brinkman−Van der Linden EC、Bayer,R.J.、Tarp,M.A.、およびClausen,H.、「GlycoPEGylation of recombinant therapeutic proteins produced in Escherichia coli.」、Glycobiology、2006年、第16巻、833−843頁
【非特許文献9】Zhang,X.、Li,F.、Lu,X.W.、およびLiu,C.F.、「Protein C−terminal modification through thioacid/azide amidation」、Bioconjug.Chem、2009年、第20巻、197−200頁
【非特許文献10】Xie,J.およびSchultz,P.G.、「A chemical toolkit for proteins−an expanded genetic code」、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、2006年、第7巻、775−782頁
【非特許文献11】VeroneseおよびMero、Biodrugs、2008年、第22巻、第5号、315頁
【非特許文献12】Ferrantini,M.、Capone,I.、およびBelardelli,F.、「Interferon−alpha and cancer: mechanisms of action and new perspectives of clinical use」、Biochimie、2007年、第89巻、884−893頁
【非特許文献13】Dhalluin,C、Ross,A.、Leuthold,L.A.、Foser,S.、Gsell,B.、Muller,F.、およびSenn,H.、「Structural and biophysical characterization of the 40 kDa PEG−interferon−alpha2a and its individual positional isomers」、Bioconjug.Chem、2005年、第16巻、504−517頁
【非特許文献14】Foser,S.、Schacher,A.、Weyer,K.A.、Brugger,D.、Dietel,E.、Marti,S.、およびSchreitmuller,T.、「Isolation,structural characterization,and antiviral activity of positional isomers of monopegylated interferon alpha−2a (PEGASYS)」、Protein Expr.Purif.、2003年、第30巻、78−87頁
【非特許文献15】Wang,Y.S.、Youngster,S.、Grace,M.、Bausch,J.、Bordens,R.、およびWyss,D.F.、「Structural and biological characterization of pegylated recombinant interferon alpha−2b and its therapeutic implications」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、547−570頁
【非特許文献16】Fine,H.A、Wen,P.Y.、Robertson,M.、O’Neill,A.、Kowal,J.、Loeffler,J.S.、およびBlack,P.M.、「A phase I trial of a new recombinant human beta−interferon (BG9015) for the treatment of patients with recurrent gliomas」、Clin.Cancer Res、1997年、第3巻、381−387頁
【非特許文献17】Fukutomi,T.、Nakamuta,M.、Fukutomi,M.、Iwao,M.、Watanabe,H.、Hiroshige,K.、Tanabe,Y.、およびNawata,H.、「Decline of hepatitis C virus load in serum during the first 24 h after administration of interferon−beta as a predictor of the efficacy of therapy」、J Hepatol.、2001年、第34巻、100−107頁
【非特許文献18】Basu,A、Yang、K.、Wang,M.、Liu,S.、Chintala,R.、Palm,T.、Zhao,H.、Peng,P.、Wu,D.、Zhang,Z.、Hua,J.、Hsieh,M.C.、Zhou,J.、Petti,G.、Li,X.、Janjua,A.、Mendez,M.、Liu、J.、Longley、C.、Zhang,Z.、Mehlig,M.、Borowski,V.、Viswanathan,M.、およびFilpula,D.、「Structure−function engineering of interferon−beta−1b for improving stability,solubility,potency,immunogenicity,and pharmacokinetic properties by site−selective mono−PEGylation」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、618−630
【非特許文献19】Zhao,H.、Yang,K.、Martinez.A.、Basu,A、Chintala,R.、Liu,H.C.、Janjua,A、Wang,M.、およびFilpula.D.、「Linear and branched bicin linkers for releasable PEGylation of macromolecules: controlled release in vivo and in vitro from mono− and multi−PEGylated proteins」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、341−351頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
タンパク質治療法の有効性および安定性を改良するために、例えば腎臓クリアランスを遅延すること、免疫原性を減少させること、および/またはタンパク質分解を減少させることによって、インターフェロン治療学の有効性を長期化するための手段についての明確なニーズが存在する。しかしながら、当該技術分野で公知のいくつかの方法が存在するが、各々は、例えばさらなる化学部分の導入の必要性、修飾の部位の制限、タンパク質の折り畳みに対する効果および活性に対する効果において、短所を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、治療的に使用するために、インターフェロンを安定化する代替方法を検討してきた。本発明者らは、インターフェロンをPEG化する新規な方法を開発した。当該方法は、部位特異的であり、そして、試験されるインターフェロンについて、実施例に記載されるとおり、従来の技法を使用してPEG化された対応するインターフェロンよりもかなり大きい、PEG化されていないインターフェロンの抗ウイルス活性に実際に迫る抗ウイルス活性を有するPEG化されたインターフェロンを生じた。これは、PEG官能性の新規なオキソカルボン酸誘導体、例えばピルボイル誘導体を生成させることにより、促進された。C末端ヒドラジド組み換えタンパク質は、ピルボイルPEGとの反応に供され、PEG官能性がヒドラゾン結合を介してタンパク質のC末端に直接結合されている、部位特異的にC末端PEG化されたタンパク質を良好な収率で生成した。このヒドラゾン結合は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いる穏和な条件下での、還元によってさらに安定化することができる。
【0016】
従って、本発明の第1の態様では、インターフェロン分子の部位特異的標識の方法であって、
(a)標識分子を準備する工程であって、当該標識分子はアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を含む、工程と;
(b)インターフェロン分子を準備する工程であって、当該インターフェロン分子はC末端ヒドラジド部分を有する、工程と;
(c)当該PEG部分のアルデヒドまたはケトン部分を当該インターフェロン分子のC末端ヒドラジドと反応させて、標識されたインターフェロン分子を形成する工程であって、この標識されたインターフェロン分子は、ヒドラゾン結合を介して当該インターフェロン分子のC末端に結合されたPEG部分を含む、工程と、
を含む方法が提供される。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、このヒドラゾン結合は式Iを有する:
【化1】
式中、RはHまたはいずれかの置換もしくは非置換の、好ましくは非置換のアルキル基である。
【0018】
1つの実施形態では、当該方法は、
d)工程(c)で生成された標識されたインターフェロン分子を還元剤と反応させ、ヒドラゾン結合が対応する置換ヒドラジンに還元される工程
を含む。
【0019】
ヒドラゾン結合をその還元形へと還元することは、下に概略的に示される:
【化2】
【0020】
いずれの適切な還元剤も工程(d)で使用してよい。ヒドラゾン結合が還元される1つの実施形態では、還元剤はシアノ水素化ホウ素である。
【0021】
本発明の方法では、いずれかの適切なアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG分子が使用されてもよい。1つの実施形態では、このアルデヒドまたはケトン部分はα−ジケトンまたはα−ケト−アルデヒド基である。
【0022】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分である。PEGのいずれの適切なオキソカルボン酸誘導体が使用されてもよい。本発明の特定の実施形態では、使用されるオキソカルボキシレート残基はピルボイル基である。
【0023】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、芳香族ケトンまたは芳香族アルデヒド部分を有するPEG部分、例えばPEGのベンズアルデヒド誘導体である。
【0024】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、トリフルオロメチルケトン部分を有するPEG部分である。
【0025】
いずれの適切なインターフェロン分子を、本発明で使用してよい。末端ヒドラジド部分は、いずれかの当該技術分野で公知の技法を使用して生成してもよい。実施例に記載されるとおり、本発明者らは、N末端でインテインドメインに遺伝子的に融合されたインターフェロン分子のヒドラジンに誘導される切断によって、インターフェロン分子上にこのようなC末端ヒドラジド部分を生成することができた。従って、本発明の第1の態様の1つの実施形態では、工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有するインターフェロン分子は、ヒドラジンと、N末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子を含む前駆体分子との反応によって生成される。
【0026】
実施例に記載されるとおり、そして本発明者らが驚いたことには、この方法を使用してインターフェロンヒドラジドを生成する際に、この反応がキレート剤、EDTAの存在下で行われるときには、切断されたインターフェロンの収率は著しく改善されるということが見出された。
【0027】
従って、インテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子の切断によってインターフェロン分子が生成される本発明の1つの実施形態では、当該前駆体分子は、少なくとも10μM、例えば少なくとも0.1mM、例えば少なくとも0.2mM、少なくとも0.5mM、または少なくとも0.75mMのキレート剤の存在下で、ヒドラジンとの反応に供される。このような実施形態では、いずれの適切なキレート剤を使用してもよい。使用してもよいキレート剤としては、DTPA、EDTA、またはEGTAが挙げられる。1つのこのような実施形態では、キレート剤はEDTAである。
【0028】
さらに、実施例に記載されるとおり、本発明者らは、特に驚いたことには、対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断によって生成されるインターフェロンのC末端ヒドラジド誘導体は、その折り畳まれた形態で単離されるということを見出した。これは、E.coliの中で発現されるときに封入体を形成するので、PEG化のための活性タンパク質を生成するために、可溶化および再折り畳みを必要とする、インターフェロン(αおよびβ)を生成するための従来の方法とは対照的である。本願明細書において実施例に記載されるとおり、当該PEG化方法は、タンパク質の折り畳みを促進するための再折り畳み工程、または添加剤を何ら必要とすることなく、折り畳まれたタンパク質の生成をもたらす。タンパク質の折り畳みおよびジスルフィド連結性は、当該ヒドラジン切断工程によっては影響を受けないようである。このため、前駆体融合タンパク質のヒドラジン切断の後に、折り畳まれたC末端ヒドラジドタンパク質の直接の単離が可能である。
【0029】
インテイン融合物としての発現は、ある場合には、タンパク質の溶解性の助けとなるようである。タンパク質の折り畳みおよびジスルフィド連結性は、その後のヒドラジン切断工程によっては影響を受けない。
【0030】
このように、工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有するインターフェロン分子が、ヒドラジンとN末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子との反応によって生成される本発明の1つの実施形態では、N末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子のヒドラジン切断によって得られるC末端ヒドラジドインターフェロンタンパク質は、再折り畳み工程または再折り畳み剤を何ら必要とすることなく、折り畳まれたタンパク質として得られる。
【0031】
従って、本発明の1つの実施形態では、当該方法は、再折り畳み工程または再折り畳み剤の不存在下で行われる。
【0032】
このように、1つの実施形態では、工程(b)のC末端ヒドラジドインターフェロン分子は折り畳まれたインターフェロン分子であり、工程(c)で形成される標識されたインターフェロン分子は折り畳まれたインターフェロン分子である。
【0033】
本発明の方法を使用して生成されるところの実施例に記載されたインターフェロンについて得られるさらに別の驚くべき利点は、非選択的にPEG化されたインターフェロン分子と比べて、増大した活性であった。
【0034】
従って、本発明の1つの実施形態では、当該標識されたインターフェロン分子は、対応するPEG化されていないインターフェロン分子の抗ウイルス活性の20%よりも大きい抗ウイルス活性を有する。本発明の特定の実施形態では、当該PEG化されたインターフェロンは、対応するPEG化されていないインターフェロン分子の活性の少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を有する。
【0035】
当該インターフェロン分子の抗ウイルス活性は、当該技術分野で公知のいずれの適切なアッセイ方法を使用して評価されてもよい。1つの実施形態では、抗ウイルス活性は、癌細胞(例えばA549肺癌細胞)および適切なウイルス(例えばEMC)を使用する細胞変性効果阻害アッセイを使用して、評価される。このような試験の一例は、実施例3.4に記載されている。
【0036】
本発明の特定の実施形態では、標識およびインターフェロンのうちの少なくとも1つは1以上のジスルフィド結合を含む。本発明の標識方法の際立った利点は、本発明の標識方法がチオールの不存在下で行われてもよいということである。このため、ジスルフィド結合を含むタンパク質/ペプチドの効率的なライゲーションおよびこのような結合を有しないタンパク質の効率的なライゲーションが可能になる。他の標識方法は、2−メルカプトエタンスルホン酸(MESNA)、ベンジルメルカプタン、チオフェノール、(4−カルボキシルメチル)チオフェノール(MPPA)などのチオールの存在を必要とすることがしばしばである。
【0037】
本発明者らは、PEG部分のアルデヒドまたはケトン部分と、当該インターフェロン分子のC末端ヒドラジドとが反応して標識されたインターフェロン分子を形成することは、アニリンまたはパラメトキシアニリンなどのアニリン分子の存在によって増進され、反応速度および収率の両方が増大するということを見出した。
【0038】
従って、本発明の1つの実施形態では、工程(c)は、アニリンまたはパラメトキシアニリンなどのアニリン分子の存在下で行われる。このアニリンまたはパラメトキシアニリンは、1〜500mM、例えば、5〜200mM、例えば5〜100mMの範囲の濃度で用いてもよい。例えば、アニリンが使用される場合、この範囲は1〜50mMであってもよく、例えば、パラメトキシアニリンが使用される場合、この範囲は20〜500mMであってもよい。
【0039】
本発明の第1の態様の方法は、いずれかのインターフェロンを標識するために使用されてもよい。本発明の特定の実施形態では、このインターフェロン分子はIFNα2bである。別の実施形態では、このインターフェロン分子はIFNβ1bである。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、C末端PEG化されたインターフェロン分子であって、PEG部分はヒドラゾン結合を介してインターフェロン分子のC末端に結合されている、C末端PEG化されたインターフェロン分子が提供される。別の実施形態では、このPEG部分は、還元されたヒドラゾン結合、すなわち置換ヒドラジン、すなわち、式
−NH−NH−CHR−
(式中、RはHまたはいずれかの置換もしくは非置換のアルキル基である)
を有する結合を介してインターフェロン分子のC末端に結合される。
【0041】
本発明の第1または第2の態様の1つの実施形態では、インターフェロン分子はIFNα2b分子である。別の実施形態では、インターフェロン分子はIFNβ1b分子である。
【0042】
本発明の第1または第2の態様の特定の実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である:
配列番号1:
CDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKEG。
【0043】
1つの実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子からなる。
【0044】
本発明の第1または第2の態様の別の特定の実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%、例えば少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である:
配列番号2
SYNLLGFLQRSSNFQSQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRNG。
【0045】
1つの実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子からなる。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、PEG部分は、およそ10kDa質量の線状PEG部分である。
【0047】
本発明の1つの特定の実施形態では、C末端PEG化されたインターフェロン分子は、式
[配列番号1]−NH−N=CR−[PEG]、
(式中、Rは−CH3であり、PEGはおよそ10kDa質量の線状PEG分子である)を有する。
【0048】
本発明の別の特定の実施形態では、C末端PEG化されたインターフェロン分子は、式
[配列番号2]−NH−N=CR−[PEG]、
(式中、Rは−CH3であり、PEGはおよそ10kDa質量の線状PEG分子である)を有する。
【0049】
本発明の第3の態様によれば、医薬における使用のための、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロン分子、または本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンが提供される。
【0050】
本発明の第4の態様は、必要とする患者において、インターフェロン処置が有用でありうる病状を処置する方法であって、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンを投与することを含む方法を提供する。このような病状としては、癌、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、およびウイルス感染症、例えばインフルエンザが挙げられる。
【0051】
本発明の第5の態様は、癌、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置における使用のための、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンを提供する。
【0052】
本発明の第6の態様は、癌、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置のための医薬の調製における、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンの使用を提供する。
【0053】
本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンを含む医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明の第8の態様は、図1〜10のいずれか1つを参照して実質的に本願明細書に記載されるとおりの標識されたインターフェロン分子を生成する方法を提供する。
【0055】
本発明の第9の態様は、図1〜10のいずれか1つを参照して実質的に本願明細書に記載されるとおりのC末端PEG化されたインターフェロン分子を提供する。
【0056】
本発明の各態様の好ましい特徴は、変更すべきところは変更して、他の態様の各々にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】N末端ピルボイル官能性を含有する10kDa PEG標的化合物の調製のためのスキームを示す。
【図2】対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断によりインターフェロンの末端ヒドラジド誘導体を生成する方法を概略的に示す。
【図3】IFNα2bインテインCBD融合タンパク質の精製およびヒドラジン切断を示すゲルを示す。
【図4】精製されたIFNα2bヒドラジドのES MSを示す。
【図5】IFNα2bヒドラジドのPEG化およびIFNα2bPEGの精製のSDS PAGE分析を示す。
【図6】部位特異的にPEG化されたIFNa2bを概略的に示す。
【図7】IFNβ1bインテインCBD融合タンパク質の精製およびヒドラジン切断の分析において使用されたゲルを示し、そして表Aを含む。
【図8】精製されたIFNβ1bヒドラジドのES MSを示す。
【図9】IFNβ1bヒドラジドPEG化反応のSDS PAGE分析を示す。
【図10】C末端PEG化されたIFNβ1b分子を概略的に示す。
【図11】IFNβ1b誘導体の抗ウイルス活性±SDを示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
特段の記載がない限り、用語「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」はほとんど同義で使用される。
【0059】
公知のPEG化されたインターフェロンに勝る注目すべき利点を有する、PEG化されたインターフェロンの生成を可能にするインターフェロンの部位特異的C末端PEG化の方法が提供される。これは、PEGのオキソカルボン酸誘導体などのアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を生成すること、およびこれとC末端ヒドラジドインターフェロン(これは、対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断によって任意に生成されてもよい)との反応によって、促進された。これは、PEG官能性がヒドラゾン結合を介してタンパク質のC末端に直接結合されている、部位特異的にC末端PEG化されたタンパク質を生成する。
【0060】
PEG
いずれの適切なポリエチレングリコールを、本発明で使用してよい。本発明に関しては、用語「ポリエチレングリコール(PEG)」は、ポリオキシエチレン(POE)と同義で使用される。本発明に関しては、用語「ポリエチレングリコール(PEG)」は、ポリオキシエチレン(POE)と同義で使用され、このPEG/POEは、いずれの適切なサイズのものであってもよい。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、PEG分子は、1〜60KDa、例えば2〜40KDa、例えば2〜20kDaの範囲の、例えば5〜18kDa、例えば8〜15kDa、例えば19〜12KDaの範囲の、例えばおよそ10kDaの質量を有する。特定の実施形態では、PEG分子は、およそ10kDaの線状PEG分子である。この分子量は、いずれの適切な従来の技法を使用して、例えば適切な重量マーカーを用いるゲル濾過カラムクロマトグラフィ、MALDI−TOF質量分析などによって確かめられうる。
【0062】
このPEGは、例えば、線状、分岐状、星型または櫛型PEGであってもよい。異なる形態のPEGも、当業者にとっては周知であるとおり、重合プロセスのために使用される開始剤に依存して、入手できる。
【0063】
本発明における使用のためのPEG分子は、いずれかの適切なアルデヒドまたはケトン部分で官能化されてもよい。
【0064】
1つの実施形態では、このアルデヒドまたはケトン部分は、α−ジケトンまたはα−ケト−アルデヒド基である。
【0065】
1つの実施形態では、このアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、式IIを有する:
【化3】
(式中、Xは存在してもよいし存在しなくてもよいリンカーであり、Rはプロトン、Hまたはいずれかの他の官能性である)。1つの実施形態では、Rは、置換もしくは非置換のアルキル基である。存在する場合、Xは、いずれの適切なリンカーであってもよい。1つの実施形態では、XはNHである。別の実施形態では、XはOである。別の実施形態では、Xは(CH2)n(式中、nは0、1、2、3、4またはいずれかの整数、例えば5〜100の範囲の整数、例えば5〜50または5〜10の範囲の整数である)である。
【0066】
さらなる実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、芳香族ケトンまたは芳香族アルデヒド部分を有するPEG部分、例えばPEGのベンズアルデヒド誘導体である。このようなPEG部分は、概略的に式IIIとして示される:
【化4】
(式中、Rはプロトン、Hまたは別の官能性であり;存在してもよいし存在しなくてもよいXは式IIについて定義されており、そしてPEGは、いずれかの位置で環に結合されている)。この環の他の位置は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。1つの実施形態では、Rは置換または非置換のアルキル基である。
【0067】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、トリフルオロメチルケトン部分を有するPEG部分である。このようなPEG部分は、概略的に式IVとして示される:
【化5】
(式中、Xは、存在してもよいし存在しなくてもよいリンカーである)。1つの実施形態では、Xは、式IIについて定義されるとおりである。
【0068】
1つの実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分である。1つのこのような実施形態では、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分は、式Vを有する:
【化6】
(式中、Rはプロトン、Hまたは別の官能性である)。1つの実施形態では、Rは置換または非置換のアルキル基である。
【0069】
例えばピルボイル、グルオキシロイル(gluoxyloyl)(グリオキシリル)、アセトアセチル、メソキサリル、メソキサロ(mesoxalo)、オキサルアセチル(oxalacetyl)、またはオキサルアセト(oxalaceto)残基など、いずれの適切なオキソカルボキシレート残基を使用してもよい。本発明の特定の実施形態では、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分は、ピルボイルPEGである。別の実施形態では、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分は、グルオキシロイル(グリオキシリル)PEGである。
【0070】
1つの実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、マレイミド部分を有するPEG部分を包含すると考えられる。別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、マレイミド部分を有するPEG部分を包含しないと考えられる。
【0071】
インターフェロン分子
本発明のおよび本発明における使用のためのインターフェロン分子は、天然の、組み換え型のまたは合成のインターフェロン分子であってもよく、そしていずれのインターフェロン型、例えばI型インターフェロン(IFN α、β、λ、ω、τ、κ、ε、およびζなど)、II型インターフェロン(IFNγなど)、ならびにIII型インターフェロン(IL−29、IL−28AおよびIL28Bなど)であってもよい。本発明の特定の実施形態では、インターフェロン分子はIFNα2bである。別の実施形態では、インターフェロン分子はIFNβ1bである。インターフェロン分子は、全長インターフェロン分子の断片および誘導体を包含する。誘導体としては、天然のインターフェロンの対応する配列と少なくとも60%、例えば少なくとも70%、80%もしくは90%の配列相同性を有する類似体またはその断片が挙げられる。このような誘導体および断片は、任意に、さらなるペプチジルまたは非ペプチジル部分に連結されてもよい。このような断片および誘導体は、インターフェロンの治療活性、例えば本願明細書に記載される抗ウイルス活性を保持することが好ましい。本発明の特定の実施形態では、インターフェロン分子はIFNα2である。別の実施形態では、インターフェロン分子はIFNβである。
【0072】
本発明のおよび本発明における使用のためのインターフェロン分子は、任意に、C末端に1以上のさらなるアミノ酸残基を有してもよい。1つの実施形態では、インターフェロン分子は、C末端にグリシンが付加されたインターフェロン分子である。1つの実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である。別の特定の実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である。
【0073】
本発明のおよび本発明における使用のためのインターフェロン分子は、任意に、N末端に、またはN末端およびC末端の両方に1以上のさらなるアミノ酸残基を有してもよい。
【0074】
合成オリゴペプチドのヒドラジド含有誘導体は、公知の方法、例えば、固相合成技法を使用して、容易に生成されうる。
【0075】
カルボン酸官能性は、カルボジイミドを使用して活性化され、次いでヒドラジンとの反応に供されてもよい。
【0076】
上記のとおり、本発明者らは、N末端でインテインドメインに融合されたインターフェロンは、ヒドラジン処理によってインテインから選択的に切断して、所望のインターフェロンの対応するヒドラジド誘導体として所望のインターフェロンを遊離させることができ、この対応するヒドラジド誘導体は、その後、PEG分子、例えばピルボイルPEG分子、のアルデヒドまたはケトン官能基との反応のために使用して、本発明に係るPEG化されたインターフェロンを生成することができるということも見出した。
【0077】
このような方法は、タンパク質スプライシング(Paulus H. Annu Rev Biochem、2000年、第69巻、447−496頁)として知られる天然に存在する生物学的現象の操作に基づく。タンパク質スプライシングは、内部領域(インテインと呼ばれる)の正確な除去、および2つの隣接配列(エクステインと呼ばれる)のライゲーションを生じる一連の分子内再編成を前駆体タンパク質が受ける、翻訳後のプロセスである。エクステインのいずれにおいても一般に配列要件はないのに対して、インテインはいくつかの保存配列モチーフによって特徴付けられ、このタンパク質ドメインファミリーの優に100を超えるメンバーが今では特定されている。
【0078】
タンパク質スプライシングにおける第1工程は、N−エクステインユニットが、常にインテインのN末端の直近に位置する保存されたCys/Ser/Thr残基の側鎖のSHまたはOH基へと移される、N→S(またはN→O)アシルシフトを含む。この機構を深く考察すると、タンパク質スプライシングの第1工程だけを促進することができるいくつかの変異インテインの設計につながった(Chongら、Gene、1997年、第192巻、271−281頁、(Norenら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、2000年、第39巻、450−466頁)。これらの操作されたインテインのうちの1つへのインフレームのN末端融合物として発現されたタンパク質は、チオールによって、分子間トランスチオエステル化反応を介して切断することができ、組み換えタンパク質C末端チオエステル誘導体を生成することができる(Chongら、Gene、1997年、第192巻、271−281頁、(Norenら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、2000年、第39巻、450−466頁)(New England Biolabs Impact System 国際公開第00/18881号パンフレット、国際公開第0047751号パンフレット)。次いで、N末端システイン残基を含有するペプチド配列は、発現タンパク質ライゲーション(expressed protein ligation、EPL)またはインテイン媒介タンパク質ライゲーション(intein−mediated protein ligation、IPL)と呼ばれる手順で、このような組み換えC末端チオエステルタンパク質のC末端へと特異的にライゲーションすることができる(Muirら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1998年、第95巻、6705−6710頁、Evans Jrら、Prot.Sci.、1998年、第7巻、2256−2264頁)。組み換えタンパク質を標識するための1つのアプローチは、対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断による組み換えC末端ヒドラジドタンパク質の生成、およびその後の、国際公開第2005/014620(A1)号パンフレットに記載されているようなヒドラゾン結合形成反応を介した標識を介するものである。簡潔に言えば、所望のタンパク質は、操作されたインテインドメインのN末端融合物として発現される。その後の、タンパク質−インテイン結合体におけるNからSへのアシルシフトは、チオエステルで連結された中間体を生じ、この中間体は、ヒドラジンによって化学的に切断して、所望のタンパク質C末端ヒドラジドを与えることができる。
【0079】
医薬組成物
当該PEG化されたインターフェロンは、医薬組成物として投与されてもよい。本発明に係る医薬組成物、および本発明に係る使用のための医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に許容できる賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者にとっては周知である他の物質(例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro ARら編、Lippincott Williams & Wilkins、2005年)を参照)を含んでもよい。このような物質としては、酢酸塩、Tris、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などのバッファー;抗酸化物質;防腐剤;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;炭水化物;キレート剤;等張化剤(tonicifier);ならびに界面活性剤を挙げてもよい。
【0080】
また、当該医薬組成物は、処置しようとする特定の徴候のために必要であるとして選択される、好ましくは、本発明の結合メンバー、核酸または組成物の活性に悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する1以上のさらなる活性化合物を含有してもよい。例えば、癌の処置においては、当該インターフェロンに加えて、当該組成物は、化学療法剤を含んでもよい。
【0081】
当該有効成分(例えばインターフェロン)は、いずれの適切な経路を介しておよびいずれの適切な手段を介して、例えばミクロスフェア、マイクロカプセル、リポソーム、他の微粒子送達システムを介して投与されてもよい。例えば、有効成分は、例えば、コアセルベーション技法によってまたは界面重合によって調製されてもよいマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)内に、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中、またはマクロエマルション中に封入されてもよい。さらなる詳細については、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro ARら編、Lippincott Williams & Wilkins、2005年を参照。
【0082】
持続放出調剤を、活性剤の送達のために使用してよい。持続放出調剤の適切な例としては、抗体を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスであって、このマトリクスが成形品、例えば膜、座薬またはマイクロカプセルの形態にあるものが挙げられる。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性のエチレン−酢酸ビニルコポリマー、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0083】
本発明のPEG化されたインターフェロンを送達するために、いずれの適切な投与経路を使用してもよい。1つの実施形態では、インターフェロンは筋肉内に送達される。
【0084】
活性剤、生成物または組成物は、腫瘍部位もしくは他の所望の部位へと局所的に投与されてもよいし、または腫瘍もしくは他の細胞を標的にするようにして送達されてもよい。抗体または細胞特異的リガンドなどのターゲッティング系の使用により、活性剤をより特異的に特定の種類の細胞へと送達するために、ターゲッティング療法を使用してもよい。例えば、薬剤が容認し難いほど毒性である場合、またはターゲッティングを用いなければ、薬剤があまりに高い投薬量を必要とする場合、またはターゲッティングを用いなければ、薬剤が標的細胞に入ることができないであろうと考えられる場合など、ターゲッティングは、様々な理由で望ましい可能性がある。
【0085】
本発明の活性剤または組成物は、個体に「治療上有効量」で投与されることが好ましく、これは、その個体に利益を見えるようにするのに十分な量である。実際の投薬治療方式は、処置しようとする状態、その重症度、処置しようとする患者、使用される薬剤を含めたいくつかの要因に依存することになり、医師の判断によることになる。最適の用量は、例えば、年齢、性別、体重、処置しようとする状態の重症度、投与しようとする有効成分および投与経路を含めたいくつかのパラメータに基づいて医師が決定することができる。
【0086】
処置
「処置」は、ヒトまたは非ヒトの動物に利益を与えることができるいずれの措置も含む。処置は、すでに存在する状態に関してのものでもよいし、または予防的なもの(予防的処置)であってもよい。処置は、治癒効果、軽減効果または予防効果を含みうる。
【0087】
本発明のPEG化されたインターフェロンは、インターフェロンに基づく処置が有用であるいずれの状態の処置で使用されてもよい。これらには、悪性腫瘍、肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状が含まれうる。
【0088】
1つの実施形態では、本発明は、癌の処置において使用されてもよい。「癌の処置」には、癌性増殖および/または血管新生によって引き起こされる状態の処置が含まれ、新生物の成長物または腫瘍の処置が含まれる。本発明を使用して処置することができる腫瘍の例は、例えば、肉腫(骨肉腫および軟部肉腫が挙げられる)、細胞腫(例えば、乳癌、肺癌、膀胱癌、甲状腺癌、前立腺癌、結腸癌、直腸癌、膵癌、胃癌、肝癌、子宮癌、前立腺癌、子宮頸癌および卵巣癌、非小細胞性肺癌、肝細胞癌)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫が挙げられる)、神経芽細胞腫、黒色腫、骨髄腫、ウィルムス腫瘍、および白血病(急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病が挙げられる)、星状細胞種、神経膠腫および網膜芽細胞腫である。
【0089】
本発明は、すでに存在する癌の処置および初期の処置において、または外科手術後の癌の再発の予防において特に有用である可能性がある。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、ウイルス感染症、例えばC型肝炎感染、インフルエンザなどの処置において使用されてもよい。
【0091】
別の実施形態では、本発明は、多発性硬化症の処置において使用されてもよい。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、自己免疫障害、例えば紅斑性狼瘡の処置において使用されてもよい。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、依存性糖尿病(IDDM)の処置において使用されてもよい。
【0094】
本発明は、これより、添付の図面を参照して、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0095】
実施例1:ピルボイル−PEGの生成
N末端ピルボイル官能性を含有する10kDaのPEG標的化合物(4)を、図1のスキーム1に示すように調製した。これは、予め形成された塩化ピルボイル(2)を用いた市販のPEGアミン(3)の一晩のアシル化によって成し遂げられた。このPEGアミンは、ネクター(Nektar){MeO−PEG−NH2Nektar/2M2U0l01/PT03F24]から入手した。
【0096】
酸塩化物(2)は、ピルビン酸(1)をα,α−ジクロロメチルメチルエーテルで処理することにより形成した。簡潔に言えば、ピルビン酸(5g)を、還流冷却器、滴下漏斗を具えかつ2N NaOH(水溶液)を含有するdreschel瓶に接続した50mlの3つ口丸底フラスコに窒素下で入れた。α,α−ジクロロメチルメチルエーテル(5.16ml)を滴下し、この反応混合物を50℃に30分間加熱し、副生成物であるギ酸メチルを減圧下でのエバポレーションによって除去し、粗製酸塩化物を黄色油状物として82%収率(4.96g)で得た。
【0097】
上記粗製酸塩化物を82%収率で得たが、これは(1H NMRによって判定したところ)次の工程で使用するには十分純粋であった。この酸塩化物は非常に感湿性が高かった。試験的な反応の間に湿気に曝したところ、この生成物の部分的な分解が生じた。
【0098】
標的化合物(4)は、精製した酸塩化物(2)とPEGアミン(3)との間の一晩のカップリングによって、89%収率で形成した。簡潔に言えば、MeO−PEG−NH2(500mg)および無水DCM(5ml)を、窒素下で50mlの丸底フラスコに入れた。トリエチルアミン(11ml)を加え、この反応混合物を0℃に冷却した。温度を5℃より低く保ちながら、塩化ピルボイル(10mg)を滴下した。この反応混合物を一晩かけて室温まで戻し、有機層を2N HCl(2×10ml)、次いでH2O(10ml)で洗浄し、この有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去し、残渣をEt2Oでスラリーにし、純粋な生成物を白色固体として82%収率(425mg)で得た。
【0099】
実施例2:部位特異的にC末端PEG化されたIFNα2bヒドラジドの生成
実施例2.1:可溶性IFNα2bヒドラジドのクローニング、発現および精製
IFNα2b cDNA(IMAGE clone 30915269)をジーン・サービス社(Gene Service Ltd.)から購入した。IFNα2bコード配列を、以下のプライマーを使用するPCRによって増幅した:
順方向プライマーを、5’ IFNα2b配列のすぐ上流にNdeI部位を含むように設計した:
5’−GGTGGTCATATGTGTGATCTGCCTCAAACCC−3’
逆方向プライマーを、IFNα2bコード配列の末端の終止コドンを取り除き、それを、SapI部位のすぐ後に続くグリシンコドンで置き換えるように設計した:
5’−GGTGGTTGCTCTTCCGCACCCTTCCTTACTTCTTAAACTTTCTTGC−3’
【0100】
得られたPCR産物をpTXB1ベクター(NEB)のNdeI SapI部位にクローニングした。このpTXB1 IFNα2b GLY構築物は、IFNα2bがグリシンを介してGyrAインテインのN末端に連結されており、次にこのGyrAインテインがキチン結合ドメイン(CBD)のN末端に融合されている、融合タンパク質をコードする。これを、E.coli Rosetta garni B(DE3) pLysS細胞(ノバジェン(Novagen))に形質転換し、発現を、0.2mM IPTGを用いて18℃で一晩誘導した。細胞を遠心分離によってペレット化し、1mM AEBSFを伴う溶解バッファー(20mM リン酸ナトリウム pH 7.4、0.5M NaCl、0.5mM EDTA、15% グリセロール、0.1% Sarkosyl NL)中で、超音波処理によって溶解した。可溶性分画を、溶解バッファー中、4℃で1.5時間予め平衡化したキチンビーズと混合した。次いで、このビーズを溶解バッファーで、次いでライゲーションバッファー(200mM リン酸ナトリウム pH 7.4、200mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14)で十分に洗浄し、キチンビーズ上に固定された精製したIFNα2b GyrAインテインCBD融合タンパク質を得た(図3、レーン4)。
【0101】
ライゲーションバッファー中でこれらのビーズを1%ヒドラジンで一晩処理して、IFNα2bヒドラジドを生成した。この反応を図2に概略的に示す。切断の際に1mMのEDTAを添加すると、切断された物質の収率が増加した(図3でレーン5および9を比較のこと)。いずれかの1つの理論に限定されるわけではないが、EDTAが、このインテインの活性を潜在的に阻害する可能性があるごく微量の金属イオンを取り除くということが考えられる。IFNα2bヒドラジドは、0.1% TFAを伴う水およびアセトニトリル 0.1% TFA勾配中におけるJupiter C5カラム(フェノメネックス(Phenomenix))での逆相(RP)HPLCによって精製し、純粋なタンパク質親液物(lyophile)を得た。N末端metなしでの予想される質量IFNα2b=19,340Da;実測した質量=19,336Da;典型的な収率は約0.7mg/(細胞培養液1L)である(図4)。本実施例で作製したIFNα2bヒドラジドの配列は以下のとおりである:
CDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKEG−NHNH2
【0102】
N−エチルマレイミド(NEM)との反応を使用して、このIFNα2bヒドラジドが正しく折り畳まれていることを確認した。NEMはフリーのシステインと反応して、125の質量の増加を生じる。IFNα2bは4つのシステインおよび2つのジスルフィド結合を有し、それゆえ折り畳まれたタンパク質はNEMとのインキュベーションに際して質量が増加しないであろう。数μgの純粋なIFNα2bヒドラジドを20μlの水または40% アセトニトリルに溶解した。対照として10μlを取り除き、5μlの1mg/ml NEMを、残りに加え、室温で少なくとも30分間インキュベーションし、次いでES MS分析によって分析した。IFNα2bは、125Daだけ質量が増加した陽性対照(ペプチド配列CERGDKGYVPSVF)とは対照的に、NEMとは反応しなかった。従って、これらの結果は、対応するインテイン融合タンパク質の発現およびヒドラジン切断の後にIFNα2bの折り畳まれたC末端ヒドラジド誘導体が直接生成したということを示す。
【0103】
実施例2.2:IFNα2bヒドラジドのPEG化
20倍モル過剰のピルボイル−PEGを100μlの、0.1% TFAを伴う40% アセトニトリルに溶解し、上記IFNα2b親液物に加えた。反応液を室温で一晩(約16時間)放置し、還元条件下にあるMESランニングバッファー中で、NuPAGE 4−12% Bis−Trisゲルで分析した(図5A)。IFNα2bのC末端チオエステルを同じ条件下でピルボイルPEGとインキュベーションしたときには、PEG化生成物はまったく観察されず、これは、C末端ヒドラジド基のみを介する部位特異的PEG化と整合する。この反応を図6に概略的に示す。
【0104】
実施例2.3:PEG化されたIFNα2bの精製
まず、イオン交換を使用して、未反応のピルボイル−PEGを除去した。PEGは電荷を帯びておらず、それゆえ、PEGは、電荷を帯びているタンパク質とは対照的に、イオン交換カラムに結合しないであろう。上記100μlのIFNα2b PEG反応液を、バッファーA(20mM Tris pH7.3、0.05% Zwittergent 3−14)の中で1mlにし、AKTA精製装置システム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))を介して1ml HiTrap Q FF陰イオン交換カラムに装荷した。このカラムを5〜10CVのバッファーAで洗浄して、結合していない未反応のピルボイル−PEGを除去し、結合したタンパク質を0〜1M NaCl勾配(20CV)にわたって溶出した。分画を、還元条件下にあるMESランニングバッファー中で、NuPAGE 4−12% Bis−Trisゲルで分析した(図5B)。このゲルを二重に流した;1つはクマシーで染色し、他方は、文献(Kurfurst、1992;Leeら、2008)にある方法に基づいて、PEGについて染色した。簡潔に言えば、このゲルを20mlの0.1M 過塩素酸の中で15分間撹拌し、次いで5mlの5%(質量/体積)塩化バリウム溶液および2mlの0.1M ヨウ素に10分間移し、水中で脱染した。これは、未反応のピルボイル−PEGは、予想したとおり、カラムに結合しなかったということを示す。所望のIFNα2bPEGを含有する分画を、VivaSpin2 3K MWCO遠心濃縮器(ザルトリウス(Sartorius))を使用して濃縮した。これを、10mM リン酸ナトリウム pH 7.4、50mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14中で、Superdex 200 10/300 GLカラム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))に通して流し、PEG化されたIFNα2bを未反応のIFNα2bヒドラジドから分離した。プールした分画を、クマシー染色を用いてSDS PAGEによって分析した(図5C)。
【0105】
実施例2.4:IFNα2bPEGおよびヒドラジド対照の抗ウイルス活性
精製したIFNα2bPEG、ならびにPEG化された分子と同じ精製および取り扱い工程を経たIFNα2bヒドラジド対照の抗ウイルス活性を、ヒトA549肺癌細胞およびEMCウイルスを用いる細胞変性効果阻害アッセイ(ピービーエル・インターフェロン・ソース(PBL Interferon Source)によって実施された)を使用して測定した(表A)。IFNα2bヒドラジドの活性は、IFNα2b標品よりも高かったが、これは、おそらくは標品のIFNα2bの場合のような封入体からの再折り畳みではなく、当該折り畳まれた物質の初期精製に起因する。あるいは、例えばエキソプロテアーゼに対するC末端の感受性を低下させることにより、C末端におけるヒドラジド基の存在が有利である可能性があると考えることも可能である。部位特異的にC末端PEG化されたIFNα2bの活性(180±68U/mg)は、ViraferonPEGの不均一なPEG化された調製物(77MIU/mg実測値および70MIU/mg報告値)の2倍を超えている。
【0106】
C末端PEG化されたIFNα2bの活性は、不均一的にPEG化されたViraferonPEG(77MIU/mg実測値および70MIU/mg報告値)の活性よりも著しく高い。
【0107】
実施例3:部位特異的にC末端PEG化されたIFNβ1bヒドラジドの生成
実施例3.1:可溶性IFNβ1bヒドラジドのクローニング、発現および精製
付加的なC末端グリシンを有するIFNβ1bタンパク質配列
SYNLLGFLQRSSNFQSQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRNG
をコードするDNAを、E.coli中での発現について最適化し、5’ NdeI部位および3’ SapI部位を含有する以下の隣接DNA配列を用いて、GeneArtによって合成した:
5’−GGT GGT CAT ... [IFNβ1b配列] ... TGC GGA AGA GCA ACC ACC−3’
【0108】
NdeIおよびSapIを用いた、供給されたDNAの消化によりIFNβ1b断片を得た。この断片は、同様に消化したpTXB1ベクターに直接ライゲーションすることができた。このpTXB1 IFNβ1b GLY構築物は、IFNβ1bがグリシンを介してGyrAインテインのN末端に連結されており、次にこのGyrAインテインがキチン結合ドメイン(CBD)のN末端に融合されている、融合タンパク質をコードする。これを、E.coli Origami(DE3)細胞(ノバジェン(Novagen))に形質転換し、発現を、0.2mM IPTGを用いて18℃で一晩誘導した。細胞を遠心分離によってペレット化し、1mM AEBSFを伴う溶解バッファー(20mM リン酸ナトリウム pH 7.4、0.5M NaCl、0.5mM EDTA、15% グリセロール、0.1% Sarkosyl NL)中で、超音波処理によって溶解した。可溶性分画を、溶解バッファー中、4℃で1.5時間予め平衡化したキチンビーズと混合した。次いで、このビーズを溶解バッファーで、次いでライゲーションバッファー(200mM リン酸ナトリウム pH 7.4、200mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14)で十分に洗浄し、キチンビーズ上に固定された精製したIFNβ1b GyrAインテインCB融合タンパク質を得た(図7、レーン2)。
【0109】
ライゲーションバッファー中でこれらのビーズを1% ヒドラジンおよび1mM EDTAで一晩処理して、IFNβ1bヒドラジドを生成した(図7、レーン3)。DTTで処理したIFNβ1bヒドラジドは、SDS PAGE分析に関してよりゆっくりと流れるバンドを与え(図7で、レーン3および4を比較)、これは、ジスルフィド結合が回収した化学種の中で形成されかつDTT処置に際して還元されたことと整合する。N末端metを含まないIFNβ1bの予想される質量=19,950Da;実測した質量=19,964Da(図8)。IFNβ1bヒドラジドを、0.05% Zwittergent 3−14を伴う3mM 酢酸 pH 3.7中で、Superdex 75カラム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))で精製し、純粋なタンパク質ヒドラジドを得た。NEM反応を実施例3.1に記載したようにして行い、タンパク質の折り畳みについて探索した。陽性対照とは対照的に、NEMとのインキュベーションに際してIFNβ1bの質量の増加はなく、これは、ジスルフィド結合が未変化であり、このタンパク質が正しく折り畳まれているということを示す。一定分量を、1μgのIFNβ1bヒドラジドあたり50μgのマンニトールとともに凍結乾燥した。これらの一定分量を10mM リン酸ナトリウム pH 7.4に再溶解し、最終のバッファー組成物、10mM リン酸ナトリウム pH 7.4、50mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14、13.7mM マンニトール)を得て、IFNβヒドラジド対照として使用した。
【0110】
実施例3.2:IFNβ1bのPEG化
上記のSuperdex 75分画中のIFNβ1bの濃度を280nmでの吸光度から見積もり、200倍モル過剰のピルボイル−PEGに加えた。この反応液を4℃で一晩置き、次いで還元条件下にあるMESランニングバッファー中で、NuPAGE 4−12% Bis−Trisゲルで分析し、クマシーで染色した(図9)。このPEG化されたIFNβ1bを図10に概略的に示す。
【0111】
実施例3.3:PEG化されたIFNβ1bの精製
イオン交換を第1工程として使用して、未反応のピルボイル−PEGを除去した。このIFNβ1b PEG反応液を、バッファーA(25mM リン酸ナトリウム pH 7.4、0.05% Zwittergent 3−14)中で5倍に希釈し、AKTA精製装置システム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))を介して1ml HiTrap SP XL陽イオン交換カラムに装荷した。このカラムを5CVのバッファーAで洗浄して、結合していない未反応のピルボイル−PEGを除去し、結合したタンパク質を0〜0.5M NaCl勾配(20CV)にわたって溶出した。ヒツジポリクローナル抗ヒトIFNβ一次抗体(ピービーエル・インターフェロン・ソース(PBL Interferon Source))およびウサギ抗ヒツジHRPに接合された二次抗体(インビトロジェン(Invitrogen))を使用するウエスタンブロットによって、分画を分析した。IFNβ1bPEGを含有する分画を、VivaSpin2 3K MWCO遠心濃縮器(ザルトリウス(Sartorius))を使用して濃縮し、0.05% Zwittergent 3−14を伴うPBS中でSuperdex 200 10/300 GLカラム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))に通して流し、PEG化されたIFNβ2bを未反応のIFNβ2bヒドラジドから分離した。これらの分画を上記のとおりのウエスタンブロットによって分析し、純粋な分画を濃縮し、一定分量に分け、1μgのIFNβ1bヒドラジドあたり50μgのマンニトールとともに凍結乾燥した。
【0112】
実施例3.4:IFNβ1bPEGおよびIFNβ1bヒドラジドの抗ウイルス活性
精製したIFNβ1bヒドラジドおよびIFNβ1bPEGの抗ウイルス活性を、ヒトA549肺癌細胞およびEMCウイルスを用いる細胞変性効果阻害アッセイ(ピービーエル・インターフェロン・ソース(PBL Interferon Source))を使用して測定した(図11)。IFNβ1bヒドラジドの活性は、IFNβ1b標品の活性よりも低かったが、これは、おそらくは、当該タンパク質の不安定性および当該配合物中に安定化成分がないことに起因する。部位特異的にC末端PEG化されたIFNβ1bは、ヒドラジドよりも大きい活性を示したが、これは、おそらくは、PEGによってもたらされるタンパク質安定性の増加を反映しており、この活性は、非PEG化IFNβ1b標品の活性と並んでいた。(C末端PEG化されたIFNβ1bの活性(37±13MIU/mg)は、PEG化されていないIFNβ1b標品(30MIU/mg)に匹敵する)。現在、IFNβ1bの承認されたPEG化されたバージョンは存在しない。
【0113】
本願明細書の中で参照されたすべての文献は、参照により本願明細書に援用したものとする。本発明の記載された実施形態に対する種々の改変および変更は、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、請求項に係る発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないということを理解されたい。実際、当業者にとっては自明である本発明の実施の記載された態様の種々の改変は、本発明によって包含されるということが意図されている。
【0114】
引用文献の一覧
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【技術分野】
【0001】
本願は、ペプチド、タンパク質などの部位特異的修飾の方法に関する。特に本願は、インターフェロンなどのタンパク質をPEGで標識する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
組み換えタンパク質治療法は、癌から代謝障害および自己免疫疾患の範囲にわたる様々な症状のために有効な処置として現れたが、この組み換えタンパク質治療法は、一般に、その薬物動態および免疫原性によって限定される。その結果として、これらを克服するために、グリコシル化、アルブミンの結合、環化およびPEG化を含めたいくつかの戦略が開発されてきた。タンパク質のグリコシル化は、(1種または複数種の)炭水化物の結合であり、これは、タンパク質の安定性を支援する可能性があり、かつタンパク質分解および免疫認識からの何らかの防御を与える可能性がある(非特許文献1)。ヒトアルブミンは、血液循環において最も一般的な血清タンパク質であり、約19日という稀な長い半減期を有する。その結果として、タンパク質のNまたはC末端へのアルブミンの遺伝子融合は、十分に耐容性があり、得られた融合タンパク質は著しく増大した半減期を有する(非特許文献2)。
【0003】
PEG化、つまりポリエチレングリコールの共有結合による結合(非特許文献3)は、ほぼ間違いなく、タンパク質の薬物動態を改良するために最も広く使用され受け容れられている方法である。PEGは、低い多分散性をもつ広い範囲の分子量で入手できる、繰り返し単位(−C2H3−O−)nに基づくポリマーであり、線状および分岐状のどちらであることもできる。PEGの高い柔軟性および水和は、PEGが、大きい流体力学半径を有して、PEGが結合されるタンパク質のサイズを著しく増大させ、その結果としてPEGの腎臓クリアランスを著しく減少させるということを意味する。加えて、潜在的に免疫原性のエピトープおよびプロテアーゼ切断部位は隠され、それぞれ免疫原性およびタンパク質分解を低下させる。さらには、PEG化によって、タンパク質の溶解性および安定性を実質的に改善することができる。
【0004】
しかしながら、PEG化についての公知の方法は、タンパク質求核剤、例えばリジン側鎖にあるアミノ基によるアシル化またはアルキル化を受ける求電子的なPEG誘導体を使用するので、一般に部位選択的ではない(非特許文献4)。これは、1つのPEG分子がいくつかの異なる部位でタンパク質に結合されて異なる位置異性体を生成する、不均一なタンパク質調製物を生成することが多い。タンパク質内のいくつかの位置で、PEGの結合は、受容体の結合を阻止するかまたは妨げる。加えて、いくつかのPEG分子が同じタンパク質に異なる部位で結合されている、多PEG化された種も存在する可能性がある。その結果として、PEG化されたタンパク質調製物の全活性は、非修飾のタンパク質に比べて低下する。結果として、部位特異的タンパク質PEG化のための方法に対するニーズがある;タンパク質配列内の明確な位置で単独のPEG部分を組み込むことによって、非選択的なPEG化(すなわち、多数のPEGの位置異性体を含有する調製物)に関連する有害な効果は克服される可能性がある。
【0005】
標識をタンパク質に部位特異的な様式で導入するために用いられる最も一般的な方法は、特有のフリーのシステインを修飾のための位置で一次配列に導入することである。次いで、このフリーのシステインのスルフヒドリル側鎖は、標識のマレイミド誘導体と反応して部位特異的修飾をもたらす。しかしながら、このためには、その一次配列内のすべての他の天然に存在するフリーのシステインが、アミノ酸変異誘発を通して取り除かれることが必要である。加えて、タンパク質が天然にジスルフィド結合を含有する場合は、その分子内に余分なシステインを付加することは、そのタンパク質の正しい折り畳みを妨げる可能性がある。
【0006】
結果として、タンパク質の部位特異的PEG化のために他のアプローチが検討されてきた。非特許文献5は、PEG−チオエステルと標的タンパク質上のN末端システインとの間の未変性の化学的ライゲーションによって、PEGをタンパク質のN末端に結合することを記載する。これは、すでに存在していなければ、タンパク質の配列にN末端システインを付加することを必要とするが、この付加はシステイン含有タンパク質におけるタンパク質の折り畳みを妨げる可能性がある。非特許文献6は、α−アミノN末端アミンだけが反応性である酸性条件下での(リジン残基のε−アミノ基よりも低いpkaを参照)、PEGアルデヒドを用いたタンパク質の還元的アルキル化によってPEGをN末端に結合することを記載する(非特許文献6)。しかしながら、依然として、この方法を用いるといくらかのε−アミノPEG化が生じる可能性がある。ジスルフィド架橋へのPEGの組み込みは、非特許文献7で示唆されている。これは、2つのシステインチオールを遊離させるためのジスルフィドの最初の還元、次いでPEGが共有結合で結合されている3炭素架橋を与えるためのビスアルキル化を含む。しかしながら、このアプローチは、溶媒曝露のジスルフィド結合を含有するタンパク質に限定される。さらなる方法は、E.coliの中で発現された組み換えタンパク質が酵素によってグリコシル化され、PEGがその天然のグリコシル化部位でグリカンを介して結合される、天然のグリコシル化部位でのPEG化である(非特許文献8)。このアプローチは、天然にグリコシル化されているタンパク質に限定される。非特許文献9は、チオ酸/アジドアミド化を介したタンパク質C末端PEG化を記載する;この方法では、タンパク質はVMAインテインCBD融合タンパク質として発現され、Na2Sを用いて加ヒドロチオール的に切断されてチオ酸を与え、次いでこのチオ酸は、PEG−スルホンアジドと反応することができる。しかしながら、このチオ酸タンパク質は、標識反応の間に加水分解を受けて、そのタンパク質の標識されていないC末端カルボン酸誘導体を副生成物として与えるやすい。
【0007】
非特許文献10は、E.coli中でのタンパク質発現の間に、反応性の化学基を有する非天然のアミノ酸を組み込むことを記載する。この反応性の化学基によって、その後のPEG官能性の結合が可能にすることができる。これは、ユニークなコドン(例えば、中途終止コドン(amber nonsense codon)、UAG)およびE.coliの中へと操作された対応する転移RNA:アミノアシル−tRNA−シンテターゼ対を使用して成し遂げられる。
【0008】
特許文献1および特許文献2は、ウイルス感染症の処置のためのPEG化されたインターフェロンの使用を記載する。同様に、特許文献3は、PEG化されたインターフェロンを記載する。しかしながら、これらの文献によってインターフェロンのPEG化について記載された方法は、部位特異的ではない。
【0009】
現在、アデノシンデアミナーゼ、G−CSF、エリスロポエチン、IFNα2aおよびIFNα2bのPEG化されたバージョンを含めて9種のPEG化されたタンパク質治療法が治療用途用に承認されている(非特許文献11)。
【0010】
C型肝炎ウイルスの処置において試用され、かつ特定の癌における使用については臨床評価段階にある、2種の承認されたIFNα2のPEG化されたバージョンがある(非特許文献12)。Pegasys(登録商標) (ホフマン・ラ・ロシュ(Hoffmann La Roche))は、分岐状の40kDa PEG−NHSに結合された組み換えIFNα2aである。これは、9種の位置的PEG異性体を含む。しかしながら、これは、インビトロアッセイにおいて非PEG化IFNα2aのわずか7%の活性しか保持しない(非特許文献13;非特許文献14)。PegIntron(登録商標) (シェリング・プラウ(Schering Plough))は、14種の位置異性体(そのうちヒスチジン34が47.8%を構成する)を含む95%モノPEG化タンパク質を生じる、単鎖の12kDa スクシンイミジルカーボネートPEGに結合された、組み換えIFNα2bである。PegIntron(登録商標)は、インビトロアッセイにおいて非PEG化IFNα2bと比べて28%抗ウイルス活性を保持する(非特許文献15)。
【0011】
Betaseron(登録商標) (EUではBetaferon)(バイエル・シェリング・ファーマ(Bayer Shering Pharma))およびさらに最近のものではExtavia(ノバルティス(Novartis))は、多発性硬化症の処置において使用される組み換えIFNβ1bタンパク質であり、これらは肝炎および特定の癌を含めた他の疾患の処置については臨床評価段階にある(非特許文献16;非特許文献17)。しかしながら、IFNβ1bに関する特定の問題は、IFNβ1bは、迅速に血液から除去され、このため、頻繁な投与管理体制が必要であるが、この頻繁な投与は注入部位で壊死を生じる可能性があり、そして患者の服薬率を下げる、ということである。中和抗体も1つの問題であり、1つの2年の研究において45%の患者がこれら中和抗体を生成させた。現在、承認されたPEG化されたIFNβ1bバージョンはない。しかしながら、これまでのこの領域における研究としては、非修飾のIFNβ1bの24〜31%活性を有する5種の位置異性体の混合物を生じる第一級アミンのランダムPEG化、および(主に)N末端アミンのPEG化(35%活性)が挙げられる。位置79(天然のグリコシル化部位)またはNもしくはC末端のいずれかにおける操作されたフリーのCys残基を使用する部位特異的PEG化の試みは、不十分な部位特異的結合のため、成功しなかった(非特許文献18)。別の戦略は、ビシン(bicin)(ビス−N−2−ヒドロキシエチルグリシンアミド)リンカーを使用して2〜3のPEG分子を無作為に結合した。生理的条件下では、ビシンの迅速な加水分解によりPEGが放出され、活性なIFNβ1bが残る。しかしながら、これらの放出可能なPEG化された形態の活性は、非修飾のIFNβ1bの7〜27%の間でしかなかった(非特許文献19)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2005/110455号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/076474号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2005/059129号明細書
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Doores,K.J.、Gamblin,D.P.、およびDavis,B.G.、「Exploring and exploiting the therapeutic potential of glycoconjugates」、Chemistry、2006年、第12巻、656−665頁
【非特許文献2】Subramanian,G.M.、Fiscella,M.、Lamouse−Smith,A.、Zeuzem,S.、およびMcHutchison,J.G.、「Albinterferon alpha−2b: a genetic fusion protein for the treatment of chronic hepatitis C」、Nat. Biotechnol.、2007年、第25巻、1411−1419頁
【非特許文献3】Veronese,F.M.およびMero,A.、「The impact of PEGylation on biological therapies」、BioDrugs.、2008年、第22巻、315−329頁
【非特許文献4】Roberts,M.J.、Bentley,M.D.、およびHarris,J.M.、「Chemistry for peptide and protein PEGylation」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、459−476頁
【非特許文献5】Marsac,Y.、Cramer,J.、Olschewski,D.、Alexandrov,K.、およびBecker,C.F.、「Site−specific attachment of polyethylene glycol−like oligomers to proteins and peptides」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、1492−1498頁
【非特許文献6】Kinstler,O.、Molineux,G.、Treuheit,M.、Ladd,D.、およびGegg,C.、「Mono−N−terminal poly(ethylene glycol)−protein conjugates」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、477−485頁
【非特許文献7】Brocchini,S.、Godwin,A.、Balan,S.、Choi,J.W.、Zloh,M.、およびShaunak,S.、「Disulfide bridge based PEGylation of proteins」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2008年、第60巻、3−12頁
【非特許文献8】DeFrees,S.、Wang,Z.G.、Xing,R.、Scott,A.E.、Wang,J.、Zopf,D.、Gouty,D.L.、Sjoberg,E.R.、Panneerselvam,K.、Brinkman−Van der Linden EC、Bayer,R.J.、Tarp,M.A.、およびClausen,H.、「GlycoPEGylation of recombinant therapeutic proteins produced in Escherichia coli.」、Glycobiology、2006年、第16巻、833−843頁
【非特許文献9】Zhang,X.、Li,F.、Lu,X.W.、およびLiu,C.F.、「Protein C−terminal modification through thioacid/azide amidation」、Bioconjug.Chem、2009年、第20巻、197−200頁
【非特許文献10】Xie,J.およびSchultz,P.G.、「A chemical toolkit for proteins−an expanded genetic code」、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、2006年、第7巻、775−782頁
【非特許文献11】VeroneseおよびMero、Biodrugs、2008年、第22巻、第5号、315頁
【非特許文献12】Ferrantini,M.、Capone,I.、およびBelardelli,F.、「Interferon−alpha and cancer: mechanisms of action and new perspectives of clinical use」、Biochimie、2007年、第89巻、884−893頁
【非特許文献13】Dhalluin,C、Ross,A.、Leuthold,L.A.、Foser,S.、Gsell,B.、Muller,F.、およびSenn,H.、「Structural and biophysical characterization of the 40 kDa PEG−interferon−alpha2a and its individual positional isomers」、Bioconjug.Chem、2005年、第16巻、504−517頁
【非特許文献14】Foser,S.、Schacher,A.、Weyer,K.A.、Brugger,D.、Dietel,E.、Marti,S.、およびSchreitmuller,T.、「Isolation,structural characterization,and antiviral activity of positional isomers of monopegylated interferon alpha−2a (PEGASYS)」、Protein Expr.Purif.、2003年、第30巻、78−87頁
【非特許文献15】Wang,Y.S.、Youngster,S.、Grace,M.、Bausch,J.、Bordens,R.、およびWyss,D.F.、「Structural and biological characterization of pegylated recombinant interferon alpha−2b and its therapeutic implications」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、547−570頁
【非特許文献16】Fine,H.A、Wen,P.Y.、Robertson,M.、O’Neill,A.、Kowal,J.、Loeffler,J.S.、およびBlack,P.M.、「A phase I trial of a new recombinant human beta−interferon (BG9015) for the treatment of patients with recurrent gliomas」、Clin.Cancer Res、1997年、第3巻、381−387頁
【非特許文献17】Fukutomi,T.、Nakamuta,M.、Fukutomi,M.、Iwao,M.、Watanabe,H.、Hiroshige,K.、Tanabe,Y.、およびNawata,H.、「Decline of hepatitis C virus load in serum during the first 24 h after administration of interferon−beta as a predictor of the efficacy of therapy」、J Hepatol.、2001年、第34巻、100−107頁
【非特許文献18】Basu,A、Yang、K.、Wang,M.、Liu,S.、Chintala,R.、Palm,T.、Zhao,H.、Peng,P.、Wu,D.、Zhang,Z.、Hua,J.、Hsieh,M.C.、Zhou,J.、Petti,G.、Li,X.、Janjua,A.、Mendez,M.、Liu、J.、Longley、C.、Zhang,Z.、Mehlig,M.、Borowski,V.、Viswanathan,M.、およびFilpula,D.、「Structure−function engineering of interferon−beta−1b for improving stability,solubility,potency,immunogenicity,and pharmacokinetic properties by site−selective mono−PEGylation」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、618−630
【非特許文献19】Zhao,H.、Yang,K.、Martinez.A.、Basu,A、Chintala,R.、Liu,H.C.、Janjua,A、Wang,M.、およびFilpula.D.、「Linear and branched bicin linkers for releasable PEGylation of macromolecules: controlled release in vivo and in vitro from mono− and multi−PEGylated proteins」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、341−351頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
タンパク質治療法の有効性および安定性を改良するために、例えば腎臓クリアランスを遅延すること、免疫原性を減少させること、および/またはタンパク質分解を減少させることによって、インターフェロン治療学の有効性を長期化するための手段についての明確なニーズが存在する。しかしながら、当該技術分野で公知のいくつかの方法が存在するが、各々は、例えばさらなる化学部分の導入の必要性、修飾の部位の制限、タンパク質の折り畳みに対する効果および活性に対する効果において、短所を有する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、治療的に使用するために、インターフェロンを安定化する代替方法を検討してきた。本発明者らは、インターフェロンをPEG化する新規な方法を開発した。当該方法は、部位特異的であり、そして、試験されるインターフェロンについて、実施例に記載されるとおり、従来の技法を使用してPEG化された対応するインターフェロンよりもかなり大きい、PEG化されていないインターフェロンの抗ウイルス活性に実際に迫る抗ウイルス活性を有するPEG化されたインターフェロンを生じた。これは、PEG官能性の新規なオキソカルボン酸誘導体、例えばピルボイル誘導体を生成させることにより、促進された。C末端ヒドラジド組み換えタンパク質は、ピルボイルPEGとの反応に供され、PEG官能性がヒドラゾン結合を介してタンパク質のC末端に直接結合されている、部位特異的にC末端PEG化されたタンパク質を良好な収率で生成した。このヒドラゾン結合は、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを用いる穏和な条件下での、還元によってさらに安定化することができる。
【0016】
従って、本発明の第1の態様では、インターフェロン分子の部位特異的標識の方法であって、
(a)標識分子を準備する工程であって、当該標識分子はアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を含む、工程と;
(b)インターフェロン分子を準備する工程であって、当該インターフェロン分子はC末端ヒドラジド部分を有する、工程と;
(c)当該PEG部分のアルデヒドまたはケトン部分を当該インターフェロン分子のC末端ヒドラジドと反応させて、標識されたインターフェロン分子を形成する工程であって、この標識されたインターフェロン分子は、ヒドラゾン結合を介して当該インターフェロン分子のC末端に結合されたPEG部分を含む、工程と、
を含む方法が提供される。
【0017】
本発明の1つの実施形態では、このヒドラゾン結合は式Iを有する:
【化1】
式中、RはHまたはいずれかの置換もしくは非置換の、好ましくは非置換のアルキル基である。
【0018】
1つの実施形態では、当該方法は、
d)工程(c)で生成された標識されたインターフェロン分子を還元剤と反応させ、ヒドラゾン結合が対応する置換ヒドラジンに還元される工程
を含む。
【0019】
ヒドラゾン結合をその還元形へと還元することは、下に概略的に示される:
【化2】
【0020】
いずれの適切な還元剤も工程(d)で使用してよい。ヒドラゾン結合が還元される1つの実施形態では、還元剤はシアノ水素化ホウ素である。
【0021】
本発明の方法では、いずれかの適切なアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG分子が使用されてもよい。1つの実施形態では、このアルデヒドまたはケトン部分はα−ジケトンまたはα−ケト−アルデヒド基である。
【0022】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分である。PEGのいずれの適切なオキソカルボン酸誘導体が使用されてもよい。本発明の特定の実施形態では、使用されるオキソカルボキシレート残基はピルボイル基である。
【0023】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、芳香族ケトンまたは芳香族アルデヒド部分を有するPEG部分、例えばPEGのベンズアルデヒド誘導体である。
【0024】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、トリフルオロメチルケトン部分を有するPEG部分である。
【0025】
いずれの適切なインターフェロン分子を、本発明で使用してよい。末端ヒドラジド部分は、いずれかの当該技術分野で公知の技法を使用して生成してもよい。実施例に記載されるとおり、本発明者らは、N末端でインテインドメインに遺伝子的に融合されたインターフェロン分子のヒドラジンに誘導される切断によって、インターフェロン分子上にこのようなC末端ヒドラジド部分を生成することができた。従って、本発明の第1の態様の1つの実施形態では、工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有するインターフェロン分子は、ヒドラジンと、N末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子を含む前駆体分子との反応によって生成される。
【0026】
実施例に記載されるとおり、そして本発明者らが驚いたことには、この方法を使用してインターフェロンヒドラジドを生成する際に、この反応がキレート剤、EDTAの存在下で行われるときには、切断されたインターフェロンの収率は著しく改善されるということが見出された。
【0027】
従って、インテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子の切断によってインターフェロン分子が生成される本発明の1つの実施形態では、当該前駆体分子は、少なくとも10μM、例えば少なくとも0.1mM、例えば少なくとも0.2mM、少なくとも0.5mM、または少なくとも0.75mMのキレート剤の存在下で、ヒドラジンとの反応に供される。このような実施形態では、いずれの適切なキレート剤を使用してもよい。使用してもよいキレート剤としては、DTPA、EDTA、またはEGTAが挙げられる。1つのこのような実施形態では、キレート剤はEDTAである。
【0028】
さらに、実施例に記載されるとおり、本発明者らは、特に驚いたことには、対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断によって生成されるインターフェロンのC末端ヒドラジド誘導体は、その折り畳まれた形態で単離されるということを見出した。これは、E.coliの中で発現されるときに封入体を形成するので、PEG化のための活性タンパク質を生成するために、可溶化および再折り畳みを必要とする、インターフェロン(αおよびβ)を生成するための従来の方法とは対照的である。本願明細書において実施例に記載されるとおり、当該PEG化方法は、タンパク質の折り畳みを促進するための再折り畳み工程、または添加剤を何ら必要とすることなく、折り畳まれたタンパク質の生成をもたらす。タンパク質の折り畳みおよびジスルフィド連結性は、当該ヒドラジン切断工程によっては影響を受けないようである。このため、前駆体融合タンパク質のヒドラジン切断の後に、折り畳まれたC末端ヒドラジドタンパク質の直接の単離が可能である。
【0029】
インテイン融合物としての発現は、ある場合には、タンパク質の溶解性の助けとなるようである。タンパク質の折り畳みおよびジスルフィド連結性は、その後のヒドラジン切断工程によっては影響を受けない。
【0030】
このように、工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有するインターフェロン分子が、ヒドラジンとN末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子との反応によって生成される本発明の1つの実施形態では、N末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子のヒドラジン切断によって得られるC末端ヒドラジドインターフェロンタンパク質は、再折り畳み工程または再折り畳み剤を何ら必要とすることなく、折り畳まれたタンパク質として得られる。
【0031】
従って、本発明の1つの実施形態では、当該方法は、再折り畳み工程または再折り畳み剤の不存在下で行われる。
【0032】
このように、1つの実施形態では、工程(b)のC末端ヒドラジドインターフェロン分子は折り畳まれたインターフェロン分子であり、工程(c)で形成される標識されたインターフェロン分子は折り畳まれたインターフェロン分子である。
【0033】
本発明の方法を使用して生成されるところの実施例に記載されたインターフェロンについて得られるさらに別の驚くべき利点は、非選択的にPEG化されたインターフェロン分子と比べて、増大した活性であった。
【0034】
従って、本発明の1つの実施形態では、当該標識されたインターフェロン分子は、対応するPEG化されていないインターフェロン分子の抗ウイルス活性の20%よりも大きい抗ウイルス活性を有する。本発明の特定の実施形態では、当該PEG化されたインターフェロンは、対応するPEG化されていないインターフェロン分子の活性の少なくとも30%、例えば少なくとも40%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%を有する。
【0035】
当該インターフェロン分子の抗ウイルス活性は、当該技術分野で公知のいずれの適切なアッセイ方法を使用して評価されてもよい。1つの実施形態では、抗ウイルス活性は、癌細胞(例えばA549肺癌細胞)および適切なウイルス(例えばEMC)を使用する細胞変性効果阻害アッセイを使用して、評価される。このような試験の一例は、実施例3.4に記載されている。
【0036】
本発明の特定の実施形態では、標識およびインターフェロンのうちの少なくとも1つは1以上のジスルフィド結合を含む。本発明の標識方法の際立った利点は、本発明の標識方法がチオールの不存在下で行われてもよいということである。このため、ジスルフィド結合を含むタンパク質/ペプチドの効率的なライゲーションおよびこのような結合を有しないタンパク質の効率的なライゲーションが可能になる。他の標識方法は、2−メルカプトエタンスルホン酸(MESNA)、ベンジルメルカプタン、チオフェノール、(4−カルボキシルメチル)チオフェノール(MPPA)などのチオールの存在を必要とすることがしばしばである。
【0037】
本発明者らは、PEG部分のアルデヒドまたはケトン部分と、当該インターフェロン分子のC末端ヒドラジドとが反応して標識されたインターフェロン分子を形成することは、アニリンまたはパラメトキシアニリンなどのアニリン分子の存在によって増進され、反応速度および収率の両方が増大するということを見出した。
【0038】
従って、本発明の1つの実施形態では、工程(c)は、アニリンまたはパラメトキシアニリンなどのアニリン分子の存在下で行われる。このアニリンまたはパラメトキシアニリンは、1〜500mM、例えば、5〜200mM、例えば5〜100mMの範囲の濃度で用いてもよい。例えば、アニリンが使用される場合、この範囲は1〜50mMであってもよく、例えば、パラメトキシアニリンが使用される場合、この範囲は20〜500mMであってもよい。
【0039】
本発明の第1の態様の方法は、いずれかのインターフェロンを標識するために使用されてもよい。本発明の特定の実施形態では、このインターフェロン分子はIFNα2bである。別の実施形態では、このインターフェロン分子はIFNβ1bである。
【0040】
本発明の第2の態様によれば、C末端PEG化されたインターフェロン分子であって、PEG部分はヒドラゾン結合を介してインターフェロン分子のC末端に結合されている、C末端PEG化されたインターフェロン分子が提供される。別の実施形態では、このPEG部分は、還元されたヒドラゾン結合、すなわち置換ヒドラジン、すなわち、式
−NH−NH−CHR−
(式中、RはHまたはいずれかの置換もしくは非置換のアルキル基である)
を有する結合を介してインターフェロン分子のC末端に結合される。
【0041】
本発明の第1または第2の態様の1つの実施形態では、インターフェロン分子はIFNα2b分子である。別の実施形態では、インターフェロン分子はIFNβ1b分子である。
【0042】
本発明の第1または第2の態様の特定の実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%、例えば少なくとも70%、例えば少なくとも80%、少なくとも90%、もしくは少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である:
配列番号1:
CDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKEG。
【0043】
1つの実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子からなる。
【0044】
本発明の第1または第2の態様の別の特定の実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%、例えば少なくとも70%、少なくとも80%、もしくは少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である:
配列番号2
SYNLLGFLQRSSNFQSQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRNG。
【0045】
1つの実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子からなる。
【0046】
本発明の特定の実施形態では、PEG部分は、およそ10kDa質量の線状PEG部分である。
【0047】
本発明の1つの特定の実施形態では、C末端PEG化されたインターフェロン分子は、式
[配列番号1]−NH−N=CR−[PEG]、
(式中、Rは−CH3であり、PEGはおよそ10kDa質量の線状PEG分子である)を有する。
【0048】
本発明の別の特定の実施形態では、C末端PEG化されたインターフェロン分子は、式
[配列番号2]−NH−N=CR−[PEG]、
(式中、Rは−CH3であり、PEGはおよそ10kDa質量の線状PEG分子である)を有する。
【0049】
本発明の第3の態様によれば、医薬における使用のための、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロン分子、または本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンが提供される。
【0050】
本発明の第4の態様は、必要とする患者において、インターフェロン処置が有用でありうる病状を処置する方法であって、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンを投与することを含む方法を提供する。このような病状としては、癌、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、およびウイルス感染症、例えばインフルエンザが挙げられる。
【0051】
本発明の第5の態様は、癌、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置における使用のための、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンを提供する。
【0052】
本発明の第6の態様は、癌、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置のための医薬の調製における、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンの使用を提供する。
【0053】
本発明の第7の態様は、本発明の第2の態様に係るPEG化されたインターフェロンまたは本発明の第1の態様の方法に従って生成されるPEG化されたインターフェロンを含む医薬組成物を提供する。
【0054】
本発明の第8の態様は、図1〜10のいずれか1つを参照して実質的に本願明細書に記載されるとおりの標識されたインターフェロン分子を生成する方法を提供する。
【0055】
本発明の第9の態様は、図1〜10のいずれか1つを参照して実質的に本願明細書に記載されるとおりのC末端PEG化されたインターフェロン分子を提供する。
【0056】
本発明の各態様の好ましい特徴は、変更すべきところは変更して、他の態様の各々にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】N末端ピルボイル官能性を含有する10kDa PEG標的化合物の調製のためのスキームを示す。
【図2】対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断によりインターフェロンの末端ヒドラジド誘導体を生成する方法を概略的に示す。
【図3】IFNα2bインテインCBD融合タンパク質の精製およびヒドラジン切断を示すゲルを示す。
【図4】精製されたIFNα2bヒドラジドのES MSを示す。
【図5】IFNα2bヒドラジドのPEG化およびIFNα2bPEGの精製のSDS PAGE分析を示す。
【図6】部位特異的にPEG化されたIFNa2bを概略的に示す。
【図7】IFNβ1bインテインCBD融合タンパク質の精製およびヒドラジン切断の分析において使用されたゲルを示し、そして表Aを含む。
【図8】精製されたIFNβ1bヒドラジドのES MSを示す。
【図9】IFNβ1bヒドラジドPEG化反応のSDS PAGE分析を示す。
【図10】C末端PEG化されたIFNβ1b分子を概略的に示す。
【図11】IFNβ1b誘導体の抗ウイルス活性±SDを示すグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
特段の記載がない限り、用語「ペプチド」、「オリゴペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」はほとんど同義で使用される。
【0059】
公知のPEG化されたインターフェロンに勝る注目すべき利点を有する、PEG化されたインターフェロンの生成を可能にするインターフェロンの部位特異的C末端PEG化の方法が提供される。これは、PEGのオキソカルボン酸誘導体などのアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を生成すること、およびこれとC末端ヒドラジドインターフェロン(これは、対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断によって任意に生成されてもよい)との反応によって、促進された。これは、PEG官能性がヒドラゾン結合を介してタンパク質のC末端に直接結合されている、部位特異的にC末端PEG化されたタンパク質を生成する。
【0060】
PEG
いずれの適切なポリエチレングリコールを、本発明で使用してよい。本発明に関しては、用語「ポリエチレングリコール(PEG)」は、ポリオキシエチレン(POE)と同義で使用される。本発明に関しては、用語「ポリエチレングリコール(PEG)」は、ポリオキシエチレン(POE)と同義で使用され、このPEG/POEは、いずれの適切なサイズのものであってもよい。
【0061】
本発明の特定の実施形態では、PEG分子は、1〜60KDa、例えば2〜40KDa、例えば2〜20kDaの範囲の、例えば5〜18kDa、例えば8〜15kDa、例えば19〜12KDaの範囲の、例えばおよそ10kDaの質量を有する。特定の実施形態では、PEG分子は、およそ10kDaの線状PEG分子である。この分子量は、いずれの適切な従来の技法を使用して、例えば適切な重量マーカーを用いるゲル濾過カラムクロマトグラフィ、MALDI−TOF質量分析などによって確かめられうる。
【0062】
このPEGは、例えば、線状、分岐状、星型または櫛型PEGであってもよい。異なる形態のPEGも、当業者にとっては周知であるとおり、重合プロセスのために使用される開始剤に依存して、入手できる。
【0063】
本発明における使用のためのPEG分子は、いずれかの適切なアルデヒドまたはケトン部分で官能化されてもよい。
【0064】
1つの実施形態では、このアルデヒドまたはケトン部分は、α−ジケトンまたはα−ケト−アルデヒド基である。
【0065】
1つの実施形態では、このアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、式IIを有する:
【化3】
(式中、Xは存在してもよいし存在しなくてもよいリンカーであり、Rはプロトン、Hまたはいずれかの他の官能性である)。1つの実施形態では、Rは、置換もしくは非置換のアルキル基である。存在する場合、Xは、いずれの適切なリンカーであってもよい。1つの実施形態では、XはNHである。別の実施形態では、XはOである。別の実施形態では、Xは(CH2)n(式中、nは0、1、2、3、4またはいずれかの整数、例えば5〜100の範囲の整数、例えば5〜50または5〜10の範囲の整数である)である。
【0066】
さらなる実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、芳香族ケトンまたは芳香族アルデヒド部分を有するPEG部分、例えばPEGのベンズアルデヒド誘導体である。このようなPEG部分は、概略的に式IIIとして示される:
【化4】
(式中、Rはプロトン、Hまたは別の官能性であり;存在してもよいし存在しなくてもよいXは式IIについて定義されており、そしてPEGは、いずれかの位置で環に結合されている)。この環の他の位置は、置換されていてもよいし、非置換であってもよい。1つの実施形態では、Rは置換または非置換のアルキル基である。
【0067】
本発明の別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、トリフルオロメチルケトン部分を有するPEG部分である。このようなPEG部分は、概略的に式IVとして示される:
【化5】
(式中、Xは、存在してもよいし存在しなくてもよいリンカーである)。1つの実施形態では、Xは、式IIについて定義されるとおりである。
【0068】
1つの実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分である。1つのこのような実施形態では、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分は、式Vを有する:
【化6】
(式中、Rはプロトン、Hまたは別の官能性である)。1つの実施形態では、Rは置換または非置換のアルキル基である。
【0069】
例えばピルボイル、グルオキシロイル(gluoxyloyl)(グリオキシリル)、アセトアセチル、メソキサリル、メソキサロ(mesoxalo)、オキサルアセチル(oxalacetyl)、またはオキサルアセト(oxalaceto)残基など、いずれの適切なオキソカルボキシレート残基を使用してもよい。本発明の特定の実施形態では、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分は、ピルボイルPEGである。別の実施形態では、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分は、グルオキシロイル(グリオキシリル)PEGである。
【0070】
1つの実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、マレイミド部分を有するPEG部分を包含すると考えられる。別の実施形態では、アルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分は、マレイミド部分を有するPEG部分を包含しないと考えられる。
【0071】
インターフェロン分子
本発明のおよび本発明における使用のためのインターフェロン分子は、天然の、組み換え型のまたは合成のインターフェロン分子であってもよく、そしていずれのインターフェロン型、例えばI型インターフェロン(IFN α、β、λ、ω、τ、κ、ε、およびζなど)、II型インターフェロン(IFNγなど)、ならびにIII型インターフェロン(IL−29、IL−28AおよびIL28Bなど)であってもよい。本発明の特定の実施形態では、インターフェロン分子はIFNα2bである。別の実施形態では、インターフェロン分子はIFNβ1bである。インターフェロン分子は、全長インターフェロン分子の断片および誘導体を包含する。誘導体としては、天然のインターフェロンの対応する配列と少なくとも60%、例えば少なくとも70%、80%もしくは90%の配列相同性を有する類似体またはその断片が挙げられる。このような誘導体および断片は、任意に、さらなるペプチジルまたは非ペプチジル部分に連結されてもよい。このような断片および誘導体は、インターフェロンの治療活性、例えば本願明細書に記載される抗ウイルス活性を保持することが好ましい。本発明の特定の実施形態では、インターフェロン分子はIFNα2である。別の実施形態では、インターフェロン分子はIFNβである。
【0072】
本発明のおよび本発明における使用のためのインターフェロン分子は、任意に、C末端に1以上のさらなるアミノ酸残基を有してもよい。1つの実施形態では、インターフェロン分子は、C末端にグリシンが付加されたインターフェロン分子である。1つの実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号1に示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である。別の特定の実施形態では、インターフェロン分子は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、例えば少なくとも95%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である。
【0073】
本発明のおよび本発明における使用のためのインターフェロン分子は、任意に、N末端に、またはN末端およびC末端の両方に1以上のさらなるアミノ酸残基を有してもよい。
【0074】
合成オリゴペプチドのヒドラジド含有誘導体は、公知の方法、例えば、固相合成技法を使用して、容易に生成されうる。
【0075】
カルボン酸官能性は、カルボジイミドを使用して活性化され、次いでヒドラジンとの反応に供されてもよい。
【0076】
上記のとおり、本発明者らは、N末端でインテインドメインに融合されたインターフェロンは、ヒドラジン処理によってインテインから選択的に切断して、所望のインターフェロンの対応するヒドラジド誘導体として所望のインターフェロンを遊離させることができ、この対応するヒドラジド誘導体は、その後、PEG分子、例えばピルボイルPEG分子、のアルデヒドまたはケトン官能基との反応のために使用して、本発明に係るPEG化されたインターフェロンを生成することができるということも見出した。
【0077】
このような方法は、タンパク質スプライシング(Paulus H. Annu Rev Biochem、2000年、第69巻、447−496頁)として知られる天然に存在する生物学的現象の操作に基づく。タンパク質スプライシングは、内部領域(インテインと呼ばれる)の正確な除去、および2つの隣接配列(エクステインと呼ばれる)のライゲーションを生じる一連の分子内再編成を前駆体タンパク質が受ける、翻訳後のプロセスである。エクステインのいずれにおいても一般に配列要件はないのに対して、インテインはいくつかの保存配列モチーフによって特徴付けられ、このタンパク質ドメインファミリーの優に100を超えるメンバーが今では特定されている。
【0078】
タンパク質スプライシングにおける第1工程は、N−エクステインユニットが、常にインテインのN末端の直近に位置する保存されたCys/Ser/Thr残基の側鎖のSHまたはOH基へと移される、N→S(またはN→O)アシルシフトを含む。この機構を深く考察すると、タンパク質スプライシングの第1工程だけを促進することができるいくつかの変異インテインの設計につながった(Chongら、Gene、1997年、第192巻、271−281頁、(Norenら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、2000年、第39巻、450−466頁)。これらの操作されたインテインのうちの1つへのインフレームのN末端融合物として発現されたタンパク質は、チオールによって、分子間トランスチオエステル化反応を介して切断することができ、組み換えタンパク質C末端チオエステル誘導体を生成することができる(Chongら、Gene、1997年、第192巻、271−281頁、(Norenら、Angew.Chem.Int.Ed.Engl.、2000年、第39巻、450−466頁)(New England Biolabs Impact System 国際公開第00/18881号パンフレット、国際公開第0047751号パンフレット)。次いで、N末端システイン残基を含有するペプチド配列は、発現タンパク質ライゲーション(expressed protein ligation、EPL)またはインテイン媒介タンパク質ライゲーション(intein−mediated protein ligation、IPL)と呼ばれる手順で、このような組み換えC末端チオエステルタンパク質のC末端へと特異的にライゲーションすることができる(Muirら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA.、1998年、第95巻、6705−6710頁、Evans Jrら、Prot.Sci.、1998年、第7巻、2256−2264頁)。組み換えタンパク質を標識するための1つのアプローチは、対応するインテイン融合タンパク質のヒドラジン切断による組み換えC末端ヒドラジドタンパク質の生成、およびその後の、国際公開第2005/014620(A1)号パンフレットに記載されているようなヒドラゾン結合形成反応を介した標識を介するものである。簡潔に言えば、所望のタンパク質は、操作されたインテインドメインのN末端融合物として発現される。その後の、タンパク質−インテイン結合体におけるNからSへのアシルシフトは、チオエステルで連結された中間体を生じ、この中間体は、ヒドラジンによって化学的に切断して、所望のタンパク質C末端ヒドラジドを与えることができる。
【0079】
医薬組成物
当該PEG化されたインターフェロンは、医薬組成物として投与されてもよい。本発明に係る医薬組成物、および本発明に係る使用のための医薬組成物は、有効成分に加えて、薬学的に許容できる賦形剤、担体、バッファー、安定剤または当業者にとっては周知である他の物質(例えば、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro ARら編、Lippincott Williams & Wilkins、2005年)を参照)を含んでもよい。このような物質としては、酢酸塩、Tris、リン酸塩、クエン酸塩、および他の有機酸などのバッファー;抗酸化物質;防腐剤;血清アルブミン、ゼラチン、または免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、またはリジンなどのアミノ酸;炭水化物;キレート剤;等張化剤(tonicifier);ならびに界面活性剤を挙げてもよい。
【0080】
また、当該医薬組成物は、処置しようとする特定の徴候のために必要であるとして選択される、好ましくは、本発明の結合メンバー、核酸または組成物の活性に悪影響を及ぼさない補完的な活性を有する1以上のさらなる活性化合物を含有してもよい。例えば、癌の処置においては、当該インターフェロンに加えて、当該組成物は、化学療法剤を含んでもよい。
【0081】
当該有効成分(例えばインターフェロン)は、いずれの適切な経路を介しておよびいずれの適切な手段を介して、例えばミクロスフェア、マイクロカプセル、リポソーム、他の微粒子送達システムを介して投与されてもよい。例えば、有効成分は、例えば、コアセルベーション技法によってまたは界面重合によって調製されてもよいマイクロカプセル(それぞれ、例えば、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)内に、コロイド状薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、ミクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)中、またはマクロエマルション中に封入されてもよい。さらなる詳細については、Remington:the Science and Practice of Pharmacy、第21版、Gennaro ARら編、Lippincott Williams & Wilkins、2005年を参照。
【0082】
持続放出調剤を、活性剤の送達のために使用してよい。持続放出調剤の適切な例としては、抗体を含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスであって、このマトリクスが成形品、例えば膜、座薬またはマイクロカプセルの形態にあるものが挙げられる。持続放出マトリクスの例としては、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチル−メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号明細書)、L−グルタミン酸およびL−グルタミン酸エチルのコポリマー、非分解性のエチレン−酢酸ビニルコポリマー、分解性の乳酸−グリコール酸コポリマー、およびポリ−D−(−)−3−ヒドロキシ酪酸が挙げられる。
【0083】
本発明のPEG化されたインターフェロンを送達するために、いずれの適切な投与経路を使用してもよい。1つの実施形態では、インターフェロンは筋肉内に送達される。
【0084】
活性剤、生成物または組成物は、腫瘍部位もしくは他の所望の部位へと局所的に投与されてもよいし、または腫瘍もしくは他の細胞を標的にするようにして送達されてもよい。抗体または細胞特異的リガンドなどのターゲッティング系の使用により、活性剤をより特異的に特定の種類の細胞へと送達するために、ターゲッティング療法を使用してもよい。例えば、薬剤が容認し難いほど毒性である場合、またはターゲッティングを用いなければ、薬剤があまりに高い投薬量を必要とする場合、またはターゲッティングを用いなければ、薬剤が標的細胞に入ることができないであろうと考えられる場合など、ターゲッティングは、様々な理由で望ましい可能性がある。
【0085】
本発明の活性剤または組成物は、個体に「治療上有効量」で投与されることが好ましく、これは、その個体に利益を見えるようにするのに十分な量である。実際の投薬治療方式は、処置しようとする状態、その重症度、処置しようとする患者、使用される薬剤を含めたいくつかの要因に依存することになり、医師の判断によることになる。最適の用量は、例えば、年齢、性別、体重、処置しようとする状態の重症度、投与しようとする有効成分および投与経路を含めたいくつかのパラメータに基づいて医師が決定することができる。
【0086】
処置
「処置」は、ヒトまたは非ヒトの動物に利益を与えることができるいずれの措置も含む。処置は、すでに存在する状態に関してのものでもよいし、または予防的なもの(予防的処置)であってもよい。処置は、治癒効果、軽減効果または予防効果を含みうる。
【0087】
本発明のPEG化されたインターフェロンは、インターフェロンに基づく処置が有用であるいずれの状態の処置で使用されてもよい。これらには、悪性腫瘍、肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状が含まれうる。
【0088】
1つの実施形態では、本発明は、癌の処置において使用されてもよい。「癌の処置」には、癌性増殖および/または血管新生によって引き起こされる状態の処置が含まれ、新生物の成長物または腫瘍の処置が含まれる。本発明を使用して処置することができる腫瘍の例は、例えば、肉腫(骨肉腫および軟部肉腫が挙げられる)、細胞腫(例えば、乳癌、肺癌、膀胱癌、甲状腺癌、前立腺癌、結腸癌、直腸癌、膵癌、胃癌、肝癌、子宮癌、前立腺癌、子宮頸癌および卵巣癌、非小細胞性肺癌、肝細胞癌)、リンパ腫(ホジキンリンパ腫および非ホジキンリンパ腫が挙げられる)、神経芽細胞腫、黒色腫、骨髄腫、ウィルムス腫瘍、および白血病(急性リンパ芽球性白血病および急性骨髄芽球性白血病が挙げられる)、星状細胞種、神経膠腫および網膜芽細胞腫である。
【0089】
本発明は、すでに存在する癌の処置および初期の処置において、または外科手術後の癌の再発の予防において特に有用である可能性がある。
【0090】
別の実施形態では、本発明は、ウイルス感染症、例えばC型肝炎感染、インフルエンザなどの処置において使用されてもよい。
【0091】
別の実施形態では、本発明は、多発性硬化症の処置において使用されてもよい。
【0092】
別の実施形態では、本発明は、自己免疫障害、例えば紅斑性狼瘡の処置において使用されてもよい。
【0093】
別の実施形態では、本発明は、依存性糖尿病(IDDM)の処置において使用されてもよい。
【0094】
本発明は、これより、添付の図面を参照して、以下の非限定的な実施例においてさらに説明される。
【実施例】
【0095】
実施例1:ピルボイル−PEGの生成
N末端ピルボイル官能性を含有する10kDaのPEG標的化合物(4)を、図1のスキーム1に示すように調製した。これは、予め形成された塩化ピルボイル(2)を用いた市販のPEGアミン(3)の一晩のアシル化によって成し遂げられた。このPEGアミンは、ネクター(Nektar){MeO−PEG−NH2Nektar/2M2U0l01/PT03F24]から入手した。
【0096】
酸塩化物(2)は、ピルビン酸(1)をα,α−ジクロロメチルメチルエーテルで処理することにより形成した。簡潔に言えば、ピルビン酸(5g)を、還流冷却器、滴下漏斗を具えかつ2N NaOH(水溶液)を含有するdreschel瓶に接続した50mlの3つ口丸底フラスコに窒素下で入れた。α,α−ジクロロメチルメチルエーテル(5.16ml)を滴下し、この反応混合物を50℃に30分間加熱し、副生成物であるギ酸メチルを減圧下でのエバポレーションによって除去し、粗製酸塩化物を黄色油状物として82%収率(4.96g)で得た。
【0097】
上記粗製酸塩化物を82%収率で得たが、これは(1H NMRによって判定したところ)次の工程で使用するには十分純粋であった。この酸塩化物は非常に感湿性が高かった。試験的な反応の間に湿気に曝したところ、この生成物の部分的な分解が生じた。
【0098】
標的化合物(4)は、精製した酸塩化物(2)とPEGアミン(3)との間の一晩のカップリングによって、89%収率で形成した。簡潔に言えば、MeO−PEG−NH2(500mg)および無水DCM(5ml)を、窒素下で50mlの丸底フラスコに入れた。トリエチルアミン(11ml)を加え、この反応混合物を0℃に冷却した。温度を5℃より低く保ちながら、塩化ピルボイル(10mg)を滴下した。この反応混合物を一晩かけて室温まで戻し、有機層を2N HCl(2×10ml)、次いでH2O(10ml)で洗浄し、この有機層をNa2SO4で乾燥し、溶媒を減圧下で除去し、残渣をEt2Oでスラリーにし、純粋な生成物を白色固体として82%収率(425mg)で得た。
【0099】
実施例2:部位特異的にC末端PEG化されたIFNα2bヒドラジドの生成
実施例2.1:可溶性IFNα2bヒドラジドのクローニング、発現および精製
IFNα2b cDNA(IMAGE clone 30915269)をジーン・サービス社(Gene Service Ltd.)から購入した。IFNα2bコード配列を、以下のプライマーを使用するPCRによって増幅した:
順方向プライマーを、5’ IFNα2b配列のすぐ上流にNdeI部位を含むように設計した:
5’−GGTGGTCATATGTGTGATCTGCCTCAAACCC−3’
逆方向プライマーを、IFNα2bコード配列の末端の終止コドンを取り除き、それを、SapI部位のすぐ後に続くグリシンコドンで置き換えるように設計した:
5’−GGTGGTTGCTCTTCCGCACCCTTCCTTACTTCTTAAACTTTCTTGC−3’
【0100】
得られたPCR産物をpTXB1ベクター(NEB)のNdeI SapI部位にクローニングした。このpTXB1 IFNα2b GLY構築物は、IFNα2bがグリシンを介してGyrAインテインのN末端に連結されており、次にこのGyrAインテインがキチン結合ドメイン(CBD)のN末端に融合されている、融合タンパク質をコードする。これを、E.coli Rosetta garni B(DE3) pLysS細胞(ノバジェン(Novagen))に形質転換し、発現を、0.2mM IPTGを用いて18℃で一晩誘導した。細胞を遠心分離によってペレット化し、1mM AEBSFを伴う溶解バッファー(20mM リン酸ナトリウム pH 7.4、0.5M NaCl、0.5mM EDTA、15% グリセロール、0.1% Sarkosyl NL)中で、超音波処理によって溶解した。可溶性分画を、溶解バッファー中、4℃で1.5時間予め平衡化したキチンビーズと混合した。次いで、このビーズを溶解バッファーで、次いでライゲーションバッファー(200mM リン酸ナトリウム pH 7.4、200mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14)で十分に洗浄し、キチンビーズ上に固定された精製したIFNα2b GyrAインテインCBD融合タンパク質を得た(図3、レーン4)。
【0101】
ライゲーションバッファー中でこれらのビーズを1%ヒドラジンで一晩処理して、IFNα2bヒドラジドを生成した。この反応を図2に概略的に示す。切断の際に1mMのEDTAを添加すると、切断された物質の収率が増加した(図3でレーン5および9を比較のこと)。いずれかの1つの理論に限定されるわけではないが、EDTAが、このインテインの活性を潜在的に阻害する可能性があるごく微量の金属イオンを取り除くということが考えられる。IFNα2bヒドラジドは、0.1% TFAを伴う水およびアセトニトリル 0.1% TFA勾配中におけるJupiter C5カラム(フェノメネックス(Phenomenix))での逆相(RP)HPLCによって精製し、純粋なタンパク質親液物(lyophile)を得た。N末端metなしでの予想される質量IFNα2b=19,340Da;実測した質量=19,336Da;典型的な収率は約0.7mg/(細胞培養液1L)である(図4)。本実施例で作製したIFNα2bヒドラジドの配列は以下のとおりである:
CDLPQTHSLGSRRTLMLLAQMRRISLFSCLKDRHDFGFPQEEFGNQFQKAETIPVLHEMIQQIFNLFSTKDSSAAWDETLLDKFYTELYQQLNDLEACVIQGVGVTETPLMKEDSILAVRKYFQRITLYLKEKKYSPCAWEVVRAEIMRSFSLSTNLQESLRSKEG−NHNH2
【0102】
N−エチルマレイミド(NEM)との反応を使用して、このIFNα2bヒドラジドが正しく折り畳まれていることを確認した。NEMはフリーのシステインと反応して、125の質量の増加を生じる。IFNα2bは4つのシステインおよび2つのジスルフィド結合を有し、それゆえ折り畳まれたタンパク質はNEMとのインキュベーションに際して質量が増加しないであろう。数μgの純粋なIFNα2bヒドラジドを20μlの水または40% アセトニトリルに溶解した。対照として10μlを取り除き、5μlの1mg/ml NEMを、残りに加え、室温で少なくとも30分間インキュベーションし、次いでES MS分析によって分析した。IFNα2bは、125Daだけ質量が増加した陽性対照(ペプチド配列CERGDKGYVPSVF)とは対照的に、NEMとは反応しなかった。従って、これらの結果は、対応するインテイン融合タンパク質の発現およびヒドラジン切断の後にIFNα2bの折り畳まれたC末端ヒドラジド誘導体が直接生成したということを示す。
【0103】
実施例2.2:IFNα2bヒドラジドのPEG化
20倍モル過剰のピルボイル−PEGを100μlの、0.1% TFAを伴う40% アセトニトリルに溶解し、上記IFNα2b親液物に加えた。反応液を室温で一晩(約16時間)放置し、還元条件下にあるMESランニングバッファー中で、NuPAGE 4−12% Bis−Trisゲルで分析した(図5A)。IFNα2bのC末端チオエステルを同じ条件下でピルボイルPEGとインキュベーションしたときには、PEG化生成物はまったく観察されず、これは、C末端ヒドラジド基のみを介する部位特異的PEG化と整合する。この反応を図6に概略的に示す。
【0104】
実施例2.3:PEG化されたIFNα2bの精製
まず、イオン交換を使用して、未反応のピルボイル−PEGを除去した。PEGは電荷を帯びておらず、それゆえ、PEGは、電荷を帯びているタンパク質とは対照的に、イオン交換カラムに結合しないであろう。上記100μlのIFNα2b PEG反応液を、バッファーA(20mM Tris pH7.3、0.05% Zwittergent 3−14)の中で1mlにし、AKTA精製装置システム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))を介して1ml HiTrap Q FF陰イオン交換カラムに装荷した。このカラムを5〜10CVのバッファーAで洗浄して、結合していない未反応のピルボイル−PEGを除去し、結合したタンパク質を0〜1M NaCl勾配(20CV)にわたって溶出した。分画を、還元条件下にあるMESランニングバッファー中で、NuPAGE 4−12% Bis−Trisゲルで分析した(図5B)。このゲルを二重に流した;1つはクマシーで染色し、他方は、文献(Kurfurst、1992;Leeら、2008)にある方法に基づいて、PEGについて染色した。簡潔に言えば、このゲルを20mlの0.1M 過塩素酸の中で15分間撹拌し、次いで5mlの5%(質量/体積)塩化バリウム溶液および2mlの0.1M ヨウ素に10分間移し、水中で脱染した。これは、未反応のピルボイル−PEGは、予想したとおり、カラムに結合しなかったということを示す。所望のIFNα2bPEGを含有する分画を、VivaSpin2 3K MWCO遠心濃縮器(ザルトリウス(Sartorius))を使用して濃縮した。これを、10mM リン酸ナトリウム pH 7.4、50mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14中で、Superdex 200 10/300 GLカラム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))に通して流し、PEG化されたIFNα2bを未反応のIFNα2bヒドラジドから分離した。プールした分画を、クマシー染色を用いてSDS PAGEによって分析した(図5C)。
【0105】
実施例2.4:IFNα2bPEGおよびヒドラジド対照の抗ウイルス活性
精製したIFNα2bPEG、ならびにPEG化された分子と同じ精製および取り扱い工程を経たIFNα2bヒドラジド対照の抗ウイルス活性を、ヒトA549肺癌細胞およびEMCウイルスを用いる細胞変性効果阻害アッセイ(ピービーエル・インターフェロン・ソース(PBL Interferon Source)によって実施された)を使用して測定した(表A)。IFNα2bヒドラジドの活性は、IFNα2b標品よりも高かったが、これは、おそらくは標品のIFNα2bの場合のような封入体からの再折り畳みではなく、当該折り畳まれた物質の初期精製に起因する。あるいは、例えばエキソプロテアーゼに対するC末端の感受性を低下させることにより、C末端におけるヒドラジド基の存在が有利である可能性があると考えることも可能である。部位特異的にC末端PEG化されたIFNα2bの活性(180±68U/mg)は、ViraferonPEGの不均一なPEG化された調製物(77MIU/mg実測値および70MIU/mg報告値)の2倍を超えている。
【0106】
C末端PEG化されたIFNα2bの活性は、不均一的にPEG化されたViraferonPEG(77MIU/mg実測値および70MIU/mg報告値)の活性よりも著しく高い。
【0107】
実施例3:部位特異的にC末端PEG化されたIFNβ1bヒドラジドの生成
実施例3.1:可溶性IFNβ1bヒドラジドのクローニング、発現および精製
付加的なC末端グリシンを有するIFNβ1bタンパク質配列
SYNLLGFLQRSSNFQSQKLLWQLNGRLEYCLKDRMNFDIPEEIKQLQQFQKEDAALTIYEMLQNIFAIFRQDSSSTGWNETIVENLLANVYHQINHLKTVLEEKLEKEDFTRGKLMSSLHLKRYYGRILHYLKAKEYSHCAWTIVRVEILRNFYFINRLTGYLRNG
をコードするDNAを、E.coli中での発現について最適化し、5’ NdeI部位および3’ SapI部位を含有する以下の隣接DNA配列を用いて、GeneArtによって合成した:
5’−GGT GGT CAT ... [IFNβ1b配列] ... TGC GGA AGA GCA ACC ACC−3’
【0108】
NdeIおよびSapIを用いた、供給されたDNAの消化によりIFNβ1b断片を得た。この断片は、同様に消化したpTXB1ベクターに直接ライゲーションすることができた。このpTXB1 IFNβ1b GLY構築物は、IFNβ1bがグリシンを介してGyrAインテインのN末端に連結されており、次にこのGyrAインテインがキチン結合ドメイン(CBD)のN末端に融合されている、融合タンパク質をコードする。これを、E.coli Origami(DE3)細胞(ノバジェン(Novagen))に形質転換し、発現を、0.2mM IPTGを用いて18℃で一晩誘導した。細胞を遠心分離によってペレット化し、1mM AEBSFを伴う溶解バッファー(20mM リン酸ナトリウム pH 7.4、0.5M NaCl、0.5mM EDTA、15% グリセロール、0.1% Sarkosyl NL)中で、超音波処理によって溶解した。可溶性分画を、溶解バッファー中、4℃で1.5時間予め平衡化したキチンビーズと混合した。次いで、このビーズを溶解バッファーで、次いでライゲーションバッファー(200mM リン酸ナトリウム pH 7.4、200mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14)で十分に洗浄し、キチンビーズ上に固定された精製したIFNβ1b GyrAインテインCB融合タンパク質を得た(図7、レーン2)。
【0109】
ライゲーションバッファー中でこれらのビーズを1% ヒドラジンおよび1mM EDTAで一晩処理して、IFNβ1bヒドラジドを生成した(図7、レーン3)。DTTで処理したIFNβ1bヒドラジドは、SDS PAGE分析に関してよりゆっくりと流れるバンドを与え(図7で、レーン3および4を比較)、これは、ジスルフィド結合が回収した化学種の中で形成されかつDTT処置に際して還元されたことと整合する。N末端metを含まないIFNβ1bの予想される質量=19,950Da;実測した質量=19,964Da(図8)。IFNβ1bヒドラジドを、0.05% Zwittergent 3−14を伴う3mM 酢酸 pH 3.7中で、Superdex 75カラム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))で精製し、純粋なタンパク質ヒドラジドを得た。NEM反応を実施例3.1に記載したようにして行い、タンパク質の折り畳みについて探索した。陽性対照とは対照的に、NEMとのインキュベーションに際してIFNβ1bの質量の増加はなく、これは、ジスルフィド結合が未変化であり、このタンパク質が正しく折り畳まれているということを示す。一定分量を、1μgのIFNβ1bヒドラジドあたり50μgのマンニトールとともに凍結乾燥した。これらの一定分量を10mM リン酸ナトリウム pH 7.4に再溶解し、最終のバッファー組成物、10mM リン酸ナトリウム pH 7.4、50mM NaCl、0.05% Zwittergent 3−14、13.7mM マンニトール)を得て、IFNβヒドラジド対照として使用した。
【0110】
実施例3.2:IFNβ1bのPEG化
上記のSuperdex 75分画中のIFNβ1bの濃度を280nmでの吸光度から見積もり、200倍モル過剰のピルボイル−PEGに加えた。この反応液を4℃で一晩置き、次いで還元条件下にあるMESランニングバッファー中で、NuPAGE 4−12% Bis−Trisゲルで分析し、クマシーで染色した(図9)。このPEG化されたIFNβ1bを図10に概略的に示す。
【0111】
実施例3.3:PEG化されたIFNβ1bの精製
イオン交換を第1工程として使用して、未反応のピルボイル−PEGを除去した。このIFNβ1b PEG反応液を、バッファーA(25mM リン酸ナトリウム pH 7.4、0.05% Zwittergent 3−14)中で5倍に希釈し、AKTA精製装置システム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))を介して1ml HiTrap SP XL陽イオン交換カラムに装荷した。このカラムを5CVのバッファーAで洗浄して、結合していない未反応のピルボイル−PEGを除去し、結合したタンパク質を0〜0.5M NaCl勾配(20CV)にわたって溶出した。ヒツジポリクローナル抗ヒトIFNβ一次抗体(ピービーエル・インターフェロン・ソース(PBL Interferon Source))およびウサギ抗ヒツジHRPに接合された二次抗体(インビトロジェン(Invitrogen))を使用するウエスタンブロットによって、分画を分析した。IFNβ1bPEGを含有する分画を、VivaSpin2 3K MWCO遠心濃縮器(ザルトリウス(Sartorius))を使用して濃縮し、0.05% Zwittergent 3−14を伴うPBS中でSuperdex 200 10/300 GLカラム(ジーイー・ヘルスケア(GE Healthcare))に通して流し、PEG化されたIFNβ2bを未反応のIFNβ2bヒドラジドから分離した。これらの分画を上記のとおりのウエスタンブロットによって分析し、純粋な分画を濃縮し、一定分量に分け、1μgのIFNβ1bヒドラジドあたり50μgのマンニトールとともに凍結乾燥した。
【0112】
実施例3.4:IFNβ1bPEGおよびIFNβ1bヒドラジドの抗ウイルス活性
精製したIFNβ1bヒドラジドおよびIFNβ1bPEGの抗ウイルス活性を、ヒトA549肺癌細胞およびEMCウイルスを用いる細胞変性効果阻害アッセイ(ピービーエル・インターフェロン・ソース(PBL Interferon Source))を使用して測定した(図11)。IFNβ1bヒドラジドの活性は、IFNβ1b標品の活性よりも低かったが、これは、おそらくは、当該タンパク質の不安定性および当該配合物中に安定化成分がないことに起因する。部位特異的にC末端PEG化されたIFNβ1bは、ヒドラジドよりも大きい活性を示したが、これは、おそらくは、PEGによってもたらされるタンパク質安定性の増加を反映しており、この活性は、非PEG化IFNβ1b標品の活性と並んでいた。(C末端PEG化されたIFNβ1bの活性(37±13MIU/mg)は、PEG化されていないIFNβ1b標品(30MIU/mg)に匹敵する)。現在、IFNβ1bの承認されたPEG化されたバージョンは存在しない。
【0113】
本願明細書の中で参照されたすべての文献は、参照により本願明細書に援用したものとする。本発明の記載された実施形態に対する種々の改変および変更は、本発明の範囲および趣旨から逸脱せずに、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい実施形態に関連して記載してきたが、請求項に係る発明は、そのような特定の実施形態に不当に限定されるべきではないということを理解されたい。実際、当業者にとっては自明である本発明の実施の記載された態様の種々の改変は、本発明によって包含されるということが意図されている。
【0114】
引用文献の一覧
Basu,A、Yang、K.、Wang,M.、Liu,S.、Chintala,R.、Palm,T.、Zhao,H.、Peng,P.、Wu,D.、Zhang,Z.、Hua,J.、Hsieh,M.C.、Zhou,J.、Petti,G.、Li,X.、Janjua,A.、Mendez,M.、Liu、J.、Longley、C.、Zhang,Z.、Mehlig,M.、Borowski,V.、Viswanathan,M.、およびFilpula,D.、「Structure−function engineering of interferon−beta−1b for improving stability,solubility,potency,immunogenicity,and pharmacokinetic properties by site−selective mono−PEGylation」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、618−630。
Brocchini,S.、Godwin,A.、Balan,S.、Choi,J.W.、Zloh,M.、およびShaunak,S.、「Disulfide bridge based PEGylation of proteins」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2008年、第60巻、3−12頁。
DeFrees,S.、Wang,Z.G.、Xing,R.、Scott,A.E.、Wang,J.、Zopf,D.、Gouty,D.L.、Sjoberg,E.R.、Panneerselvam,K.、Brinkman−Van der Linden EC、Bayer,R.J.、Tarp,M.A.、およびClausen,H.、「GlycoPEGylation of recombinant therapeutic proteins produced in Escherichia coli.」、Glycobiology、2006年、第16巻、833−843頁。
Dhalluin,C、Ross,A.、Leuthold,L.A.、Foser,S.、Gsell,B.、Muller,F.、およびSenn,H.、「Structural and biophysical characterization of the 40 kDa PEG−interferon−alpha2a and its individual positional isomers」、Bioconjug.Chem、2005年、第16巻、504−517頁。
Dirksen,A.、Hackeng,T.M.、and Dawson,P.E.、「Nucleophilic catalysis of oxime ligation」、Angew.Chem Int Ed Engl.、2006年、第45巻、7581−7584頁。
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Ferrantini,M.、Capone,I.、およびBelardelli,F.、「Interferon−alpha and cancer: mechanisms of action and new perspectives of clinical use」、Biochimie、2007年、第89巻、884−893頁。
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Kinstler,O.、Molineux,G.、Treuheit,M.、Ladd,D.、およびGegg,C.、「Mono−N−terminal poly(ethylene glycol)−protein conjugates」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、477−485頁。
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Lee,D.L、Sharif,I.、Kodihalli,S.、Stewart,D.I.、およびTsvetnitsky,V.、「Preparation and characterization of monopegylated human granulocyte−macrophage colony−stimulating factor」、J Interferon Cytokine Res、2008年、第28巻、101−112頁。
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Subramanian,G.M.、Fiscella,M.、Lamouse−Smith,A.、Zeuzem,S.、およびMcHutchison,J.G.、「Albinterferon alpha−2b: a genetic fusion protein for the treatment of chronic hepatitis C」、Nat. Biotechnol.、2007年、第25巻、1411−1419頁。
Veronese,F.M.およびMero,A.、「The impact of PEGylation on biological therapies」、BioDrugs.、2008年、第22巻、315−329頁。
Wang,Y.S.、Youngster,S.、Grace,M.、Bausch,J.、Bordens,R.、およびWyss,D.F.、「Structural and biological characterization of pegylated recombinant interferon alpha−2b and its therapeutic implications」、Adv.Drug Deliv.Rev.、2002年、第54巻、547−570頁。
Xie,J.およびSchultz,P.G.、「A chemical toolkit for proteins−an expanded genetic code」、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、2006年、第7巻、775−782頁。
Zhang,X.、Li,F.、Lu,X.W.、およびLiu,C.F.、「Protein C−terminal modification through thioacid/azide amidation」、Bioconjug.Chem、2009年、第20巻、197−200頁。
Zhao,H.、Yang,K.、Martinez.A.、Basu,A、Chintala,R.、Liu,H.C.、Janjua,A、Wang,M.、およびFilpula.D.、「Linear and branched bicin linkers for releasable PEGylation of macromolecules: controlled release in vivo and in vitro from mono− and multi−PEGylated proteins」、Bioconjug.Chem、2006年、第17巻、341−351頁。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターフェロン分子の部位特異的標識の方法であって、
(a)標識分子を準備する工程であって、前記標識分子はアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を含む、工程と;
(b)インターフェロン分子を準備する工程であって、前記インターフェロン分子はC末端ヒドラジド部分を有する、工程と;
(c)前記PEG部分の前記アルデヒドまたはケトン部分を前記インターフェロン分子の前記C末端ヒドラジドと反応させて、標識されたインターフェロン分子を形成する工程であって、前記標識されたインターフェロン分子は、ヒドラゾン結合を介して前記インターフェロン分子のC末端に結合されたPEG部分を含む、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
アルデヒドまたはケトン部分を有する前記PEG部分は、α−ジケトンまたはα−ケト−アルデヒド基を有するPEG部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルデヒドまたはケトン部分を有する前記PEG部分は、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルデヒドまたはケトン部分は芳香族ケトンまたは芳香族アルデヒド部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オキソカルボキシレート残基は、ピルボイル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有する前記インターフェロン分子は、ヒドラジンと前駆体分子との反応によって生成され、前記前駆体分子は、チオエステル部分を介して、N末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ヒドラジンと前駆体分子との反応によって生成される工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有する前記インターフェロン分子は、再折り畳み工程または再折り畳み剤なしに、直接、折り畳まれたタンパク質として生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体分子は、少なくとも0.1mMのキレート剤、例えばEDTAの存在下で、ヒドラジンとの反応に供される、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記インターフェロン分子は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記インターフェロン分子はIFNα2bである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インターフェロン分子は、配列番号2として示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記インターフェロン分子はIFNβ1bである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標識されたインターフェロン分子は、対応するPEG化されていないインターフェロン分子の抗ウイルス活性の40%を超える抗ウイルス活性を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
C末端PEG化されたインターフェロン分子であって、前記PEG部分は、ヒドラゾン結合、または還元されたヒドラゾン結合を介して前記インターフェロン分子のC末端に結合されている、C末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項15】
前記インターフェロン分子は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項14に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項16】
前記インターフェロン分子はIFNα2bである、請求項15に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項17】
前記インターフェロン分子は、配列番号2として示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項14に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項18】
前記インターフェロン分子はIFNβ1bである、請求項17に記載の分子C末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項19】
前記PEG分子は、9kDa〜12kDaの範囲の質量、例えば約10kDaの質量の線状PEG分子である、請求項14から請求項18のいずれか1項に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項20】
必要とする患者において、インターフェロン処置が有用でありうる病状を処置する方法であって、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロンを投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記病状は、癌、IDDM、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、およびウイルス性症状からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
医薬における使用のための、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロン。
【請求項23】
癌、IDDM、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置のための、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロン。
【請求項24】
癌、IDDM、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置のための医薬の調製における、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロンの使用。
【請求項25】
請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロンを含む、医薬組成物。
【請求項26】
実質的に、図1〜11のうちの1以上を参照して本願明細書に記載されたとおりの標識されたインターフェロン分子を製造する方法。
【請求項27】
実質的に、図1〜11のうちの1以上を参照して本願明細書に記載されたとおりのC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項1】
インターフェロン分子の部位特異的標識の方法であって、
(a)標識分子を準備する工程であって、前記標識分子はアルデヒドまたはケトン部分を有するPEG部分を含む、工程と;
(b)インターフェロン分子を準備する工程であって、前記インターフェロン分子はC末端ヒドラジド部分を有する、工程と;
(c)前記PEG部分の前記アルデヒドまたはケトン部分を前記インターフェロン分子の前記C末端ヒドラジドと反応させて、標識されたインターフェロン分子を形成する工程であって、前記標識されたインターフェロン分子は、ヒドラゾン結合を介して前記インターフェロン分子のC末端に結合されたPEG部分を含む、工程と、
を含む方法。
【請求項2】
アルデヒドまたはケトン部分を有する前記PEG部分は、α−ジケトンまたはα−ケト−アルデヒド基を有するPEG部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アルデヒドまたはケトン部分を有する前記PEG部分は、オキソカルボキシレート残基を有するPEG部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記アルデヒドまたはケトン部分は芳香族ケトンまたは芳香族アルデヒド部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記オキソカルボキシレート残基は、ピルボイル基である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有する前記インターフェロン分子は、ヒドラジンと前駆体分子との反応によって生成され、前記前駆体分子は、チオエステル部分を介して、N末端でインテインドメインに融合された前駆体インターフェロン分子を含む、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
ヒドラジンと前駆体分子との反応によって生成される工程(b)のC末端ヒドラジド部分を有する前記インターフェロン分子は、再折り畳み工程または再折り畳み剤なしに、直接、折り畳まれたタンパク質として生成される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記前駆体分子は、少なくとも0.1mMのキレート剤、例えばEDTAの存在下で、ヒドラジンとの反応に供される、請求項6または請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記インターフェロン分子は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記インターフェロン分子はIFNα2bである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記インターフェロン分子は、配列番号2として示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記インターフェロン分子はIFNβ1bである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記標識されたインターフェロン分子は、対応するPEG化されていないインターフェロン分子の抗ウイルス活性の40%を超える抗ウイルス活性を有する、請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
C末端PEG化されたインターフェロン分子であって、前記PEG部分は、ヒドラゾン結合、または還元されたヒドラゾン結合を介して前記インターフェロン分子のC末端に結合されている、C末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項15】
前記インターフェロン分子は、配列番号1として示されるアミノ酸配列を有するIFNα2b分子、または配列番号1と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項14に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項16】
前記インターフェロン分子はIFNα2bである、請求項15に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項17】
前記インターフェロン分子は、配列番号2として示されるアミノ酸配列を有するIFNβ1b分子、または配列番号2と少なくとも60%の配列相同性を有するその断片もしくは誘導体である、請求項14に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項18】
前記インターフェロン分子はIFNβ1bである、請求項17に記載の分子C末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項19】
前記PEG分子は、9kDa〜12kDaの範囲の質量、例えば約10kDaの質量の線状PEG分子である、請求項14から請求項18のいずれか1項に記載のC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【請求項20】
必要とする患者において、インターフェロン処置が有用でありうる病状を処置する方法であって、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロンを投与することを含む、方法。
【請求項21】
前記病状は、癌、IDDM、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、およびウイルス性症状からなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
医薬における使用のための、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロン。
【請求項23】
癌、IDDM、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置のための、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロン。
【請求項24】
癌、IDDM、C型肝炎、多発性硬化症、自己免疫障害、またはウイルス性症状の処置のための医薬の調製における、請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロンの使用。
【請求項25】
請求項14から請求項19のいずれか1項に記載のPEG化されたインターフェロンまたは請求項1から請求項13のいずれか1項に記載の方法に従って製造されるPEG化されたインターフェロンを含む、医薬組成物。
【請求項26】
実質的に、図1〜11のうちの1以上を参照して本願明細書に記載されたとおりの標識されたインターフェロン分子を製造する方法。
【請求項27】
実質的に、図1〜11のうちの1以上を参照して本願明細書に記載されたとおりのC末端PEG化されたインターフェロン分子。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−526789(P2012−526789A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510367(P2012−510367)
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000981
【国際公開番号】WO2010/131015
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509118846)アルマック サイエンシーズ (スコットランド) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月17日(2010.5.17)
【国際出願番号】PCT/GB2010/000981
【国際公開番号】WO2010/131015
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(509118846)アルマック サイエンシーズ (スコットランド) リミテッド (1)
【Fターム(参考)】
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