説明

インターフェロン療法の有効性判定方法および判定用キットの改良

【課題】インターフェロン療法の有効性を事前に判定することを課題とする。
【解決手段】患者の体液中におけるマーカー物質の濃度を指標として、前記患者に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する。マーカー物質の濃度を測定する方法としては、イオン交換体や金属キレート体を固定化した基板等の担体にマーカー物質を捕捉し、質量分析により行なうことができる。前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むインターフェロン療法の有効性判定用キットによれば、より簡便かつ迅速に、インターフェロン療法が有効であるか否かを判定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインターフェロン療法の有効性判定方法および判定用システム、キットに関する。本発明は、さらに詳細には、C型肝炎患者の体液中におけるマーカー物質の濃度を指標として、当該C型肝炎患者に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するインターフェロン療法の有効性判定方法、および当該判定方法に用いるための判定用キットに関する。
【背景技術】
【0002】
インターフェロンは、「夢の薬」とも言われ、種々の難治性疾患の治療剤として使用されている。その治療対象としては、例えば、慢性骨髄性白血病(CML)、多発性骨髄腫、腎癌、黒色腫、多発性硬化症、C型肝炎などを挙げることができる。インターフェロンの作用機構としては、Th1サイトカインの産生、単球の活性化を抑制することが知られている。
【0003】
C型肝炎は、C型肝炎ウイルス(Hepatitis C virus。以下、「HCV」とも略記する。)の感染により発病するウイルス性肝炎である。C型肝炎は特別な症状が起こることなく徐々に進行し、治療せずにおくと10〜30年かけて肝硬変、さらに肝癌へと移行することが多い。
【0004】
C型肝炎の治療法として、従来より、インターフェロンの投与(インターフェロン療法)が行なわれている。インターフェロンはHCVの増殖を抑える作用があり、治療が成功すれば、HCVは体内から消える。しかし、インターフェロンの単独投与(インターフェロン単独療法)が有効なC型肝炎患者は限定的であることがわかっている。そこで、インターフェロンと別の抗ウイルス剤であるリバビリンとの併用投与(インターフェロン・リバビリン併用療法)が開発され、インターフェロン単独療法に比較して高い効果をあげている。しかしながら、インターフェロン・リバビリン併用療法によっても治療効果が認められないC型肝炎患者はなお多い。
【0005】
インターフェロンは、生体内で産生される生理活性物質の一つであり、抗ウイルス作用や抗ガン作用を有することが知られている。インターフェロンには、α、β、γの主要なサブタイプがあり、このうち、C型肝炎の治療に用いられているのはαとβである。インターフェロンαは筋肉注射で、インターフェロンβは静脈注射で主に投与され、C型肝炎に対する治療効果はほぼ同じといわれている。
【0006】
一方、リバビリン(Ribavirin,1−β−ribofuranosyl−1,2,4−triazole−3−carboxamide)は、プリン 骨格をもつ核酸アナログの一種であり、内服の抗ウイルス剤としてインフルエンザ、ヘルペス、麻疹等の治療に古くから用いられている。しかし、リバビリンの 単独投与はC型肝炎の治療にほとんど効果がなく、リバビリンはインターフェロンと併用することでHCVの排除効果を高める効果を発揮する。
【0007】
インターフェロン療法によりC型肝炎の治療を行なう場合は、40週程度の長期にわたる投与が必要である。しかし、インターフェロンには発熱、全身倦怠感、関節痛等の副作用があり、長期投与による患者の身体的負担は大きい。さらに、インターフェロンは高価な医薬であり、経済的負担も大きい。また、インターフェロン・リバビリン併用療法を行なう場合は、インターフェロン投与と同じ期間のリバビリン投与が必要であるが、リバビリンにも溶血を起こす副作用があり、患者の身体的・経済的負担はさらに大きい。そして、インターフェロン療法やインターフェロン・リバビリン併用療法による治療効果がないC型肝炎患者にとっては、これらの療法は副作用を引き起こすだけであり、何ら利益はない。したがって、C型肝炎患者に対するインターフェロン療法やインターフェロン・リバビリン併用療法の有効性を判定し、治療効果が期待できない患者をあらかじめ判別することが望ましい。
【0008】
C型肝炎患者においてインターフェロン療法がC型肝炎の治療に有効か否かは、ウイルス側の要因と患者側の要因の2つが関与しているといわれている。ウイルス側の要因としては、HCVの遺伝子型とHCVの量の関与が指摘されている。すなわち、HCVには複数の遺伝子型があり、遺伝子型が1a、1bのHCVにはインターフェロンが効きにくく、それ以外の、例えば遺伝子型が2a、2bのHCVにはインターフェロンが効きやすい。また、HCVの量が多いほどインターフェロンが効きにくい。そして、感染しているHCVの遺伝子型をあらかじめ調べる(タイピング)ことによって、インターフェロン療法の有効性を判定する方法が提案されている(特許文献1)。一方、患者側の要因として、C型肝炎患者の一塩基多型(SNP)によってインターフェロン療法の有効性を判定する方法も提案されている(特許文献2、特許文献3)。さらに、C型肝炎患者の肝臓におけるインターフェロンレセプターの発現量を指標として、インターフェロン療法の有効性を判定する方法も提案されている(特許文献4)。
【特許文献1】特開2001−238687号公報
【特許文献2】特開2003−339380号公報
【特許文献3】特開2004−298011号公報
【特許文献4】特開2001−149076号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、上記した方法は全て、患者から採取した検体からDNAやRNAを調製する必要があり、操作が煩雑である。また、インターフェロンレセプターの発現量によって判別する方法は、検体として肝組織を採取する必要があり、侵襲を伴う。一方、インターフェロン療法が有効な患者か否かを判別できるマーカー物質があれば、患者から採取した体液中のマーカー物質の濃度を測定するだけで、インターフェロン療法の有効性を判定することができる。しかし、そのようなマーカー物質は見出されていない。
【0010】
本発明の課題は、インターフェロンにより治療される被験体(例えば、C型肝炎患者)においてインターフェロン療法が有効な患者と有効でない患者を判別することができる体液中のマーカー物質を特定し、当該マーカー物質を用いてインターフェロン療法の有効性を判定する方法、および当該方法を簡便に行なうためのキットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、インターフェロン療法が有効でない被験体(例えば、C型肝炎患者)に特異的なマーカー物質を検索すべく、同療法が有効であった被験体(例えば、C型肝炎患者)と有効でなかった被験体(例えば、C型肝炎患者)の体液中のタンパク質を質量分析計スペクトルにより網羅的に比較し、特異的なマーカー物質を検索した。その結果、同療法が有効であった被験体と有効でなかった被験体との間で、統計的に有意差のある複数のタンパク質を見出した。そして、当該タンパク質の体液中における濃度を指標として、被験体におけるインターフェロン療法の有効性を判定することができることを見出した。さらに、当該判定方法を簡便に実施することができる判定用キットを構築し、本発明を完成した。すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
(1) 被験体由来のサンプル中の被験体由来のマーカー物質、上記マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または上記マーカー物質を選択的に認識する手段を含む、上記被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するためのシステム。
(2) 上記マーカー物質が、上記被験体の体液中に存在する、項目1に記載のシステム。
(3) 上記マーカー物質が、上記被験体の血液中に存在する、項目1に記載のシステム。
(4) 上記マーカー物質が、遺伝子産物である、項目1に記載のシステム。
(5) 上記マーカー物質が、トランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AI誘導体およびこれらのタンパク質のフラグメントならびにこれらに対応するタンパク質からなる群より選択される、1またはそれより多い物質を含む、項目1に記載のシステム。
(6)上記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、項目1に記載のシステム。
(7)上記因子は、タンパク質または上記複合分子である、項目1に記載のシステム。
(8)上記因子は、抗体である、項目1に記載のシステム。
(9)上記因子は、標識されるか、または標識可能である、項目1に記載のシステム。
(10)上記手段は、質量分析装置、核磁気共鳴測定装置、X線解析装置、SPR、クロマトグラフィー、免疫学的手段、生化学的手段、電気泳動機器、化学的分析機器、蛍光二次元ディファレンシャル電気泳動法、同位体標識法、タンデムアフィニティ精製法、物理学的手段、レーザーマイクロダイセクションおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、項目1に記載のシステム。
(11)さらに、上記マーカー物質の標準を含む、項目1に記載のシステム。
(12)さらに、上記サンプルを精製する手段を備える、項目1に記載のシステム。
(13)上記被験体は、哺乳動物を含む、項目1に記載のシステム。
(14)上記被験体は、齧歯類を含む、項目1に記載のシステム。
(15)上記被験体は、ヒトを含む、項目1に記載のシステム。
(16)上記因子または上記手段は、上記マーカー物質の定量をする能力を有する、項目1に記載のシステム。
(17)上記マーカー物質の定量を行うための定量手段をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(18)上記定量手段は、標準曲線と測定結果とを比較して上記マーカー物質が正常値の範囲内かどうかを判定する判定手段を含む、項目17に記載のシステム。
(19)上記判定手段は、コンピュータである、項目18に記載のシステム。
(20)上記システムは、上記マーカー物質または上記マーカー物質に特異的に相互作用する上記因子を含む組成物である、項目1に記載のシステム。
(21) 上記マーカー物質が、トランスサイレチンおよびトランスサイレチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含み、上記トランスサイレチン誘導体は、S−システイニルトランスサイレチン、S−システイニルトランスサイレチン、グルタチオン化トランスサイレチン、S−S結合形成トランスサイレチン、酸化トランスサイレチン、ホルミル化トランスサイレチン、アセチル化トランスサイレチン、リン酸化トランスサイレチン、糖鎖付加トランスサイレチン、ミリスチル化トランスサイレチンおよびこれらの複合誘導体からなる群より選択される、項目1に記載のシステム。
(22) 上記トランスサイレチンの減少および上記トランスサイレチン誘導体の減少からなる群より選択される少なくとも1つの現象が、インターフェロン療法が有効でないことの指標である、項目21に記載のシステム。
(23) 上記トランスサイレチンの減少および上記トランスサイレチン誘導体の減少の両方が、インターフェロン療法の有効性の低さの指標である、項目21に記載のシステム。
(24) 上記トランスサイレチンは、配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列によってコードされるか、または配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、あるいは、これらの改変配列を有する、項目21に記載のシステム。
(25) 上記トランスサイレチン誘導体は、配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、または配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列における、それぞれ、10位のシステインまたはそれに対応するシステインのシステインがシステイニル化されている誘導体である、項目21に記載のシステム。
(26) 上記因子または上記手段は、トランスサイレチンの単量体と四量体との区別をする能力を有する、項目1に記載のシステム。
(27) 上記因子または上記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの区別をする能力を有する、項目1に記載のシステム。
(28) 上記因子または上記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの区別をする能力を有する抗体を含む、項目1に記載のシステム。
(29) 上記因子または上記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを認識し、かつ、上記システムはトランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを識別する手段をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(30) 上記因子または上記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを認識し、上記システムはトランスサイレチンの分子量とS−システイニルトランスサイレチンの分子量とを識別する手段、およびトランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの相対比を測定する手段をさらに備える、項目1に記載のシステム。
(31) 上記マーカー物質が、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AI誘導体を含み、上記アポリポタンパク質AI誘導体は、プロ体またはフラグメント(YHAKATEHLSTLSEKAKPA LEDLRQGLLP VLESFKVSFL SALEEYTKKL NTQ)である、項目1に記載のシステム。
(32) 上記アポリポタンパク質AIの上昇および上記アポリポタンパク質AI誘導体の変動からなる群より選択される少なくとも1つの現象が、インターフェロン療法が有効でないことの指標である、項目31に記載のシステム。
(33) 上記アポリポタンパク質AIの上昇および上記アポリポタンパク質AI誘導体の変動からなる群より選択される少なくとも1つの現象がインターフェロン療法の有効性が低さの指標である、項目31に記載のシステム。
(34) 上記アポリポタンパク質AIは、配列番号5もしくは配列番号7に示される核酸配列によってコードされるか、または配列番号6もしくは配列番号8に示されるアミノ酸配列、あるいは、これらの改変配列を有する、項目31に記載のシステム。
(35) 上記因子または上記手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有する、項目31に記載のシステム。
(36) 上記因子または上記手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有する抗体を含む、項目31に記載のシステム。
(37) 上記因子または上記手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有し、かつ、上記システムは上記アポリポタンパク質AIを定量する手段を備える、項目31に記載のシステム。
(38)診断薬である、項目1に記載のシステム。
(39)被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するため、または上記判定を支援するための方法であって、
A)上記被験体由来の上記被検体由来のサンプル中のマーカー物質を測定する工程;および
B)上記測定結果から、上記被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
(40)項目2〜38のいずれか1項に記載の特徴を有する、項目39に記載の方法。
(41) 被験体由来のサンプル中の上記被験体由来のマーカー物質、上記マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または上記マーカー物質を選択的に認識する手段の、被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するための医薬の製造における、使用。
(42) 項目2〜38のいずれか1項に記載の特徴を有する、項目41に記載の使用。
(43) 被験体由来のサンプル中のマーカー物質、上記マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または上記マーカー物質を選択的に認識する手段の、被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するための使用。
(44) 項目2〜38のいずれか1項に記載の特徴を有する、項目43に記載の使用。
(45) 項目39に記載の方法であって、血液中のマーカー物質の濃度を測定し、その値を健常値と比較し、上記マーカー物質がトランスサイレチン、アポリポタンパク質A1またはその誘導体もしくはフラグメントの群から選択される1または2以上のタンパク質であることを特徴とする、方法。
(46) 上記マーカー物質が、下記マーカー物質(a)〜(c)の少なくとも1つである、項目45に記載の方法。
(a)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5880のイオンピークを生じるタンパク質、
(b)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5890のイオンピークを生じるタンパク質、
(c)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、有機溶媒で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6870のイオンピークを生じるタンパク質。
(47) 上記体液は、血液であることを特徴とする項目46に記載の方法。
(48) 質量分析により体液中における上記マーカー物質の濃度を測定することを特徴とする項目46または47に記載の方法。
(49) 被験体から体液を採取し、上記体液または体液成分を上記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、上記マーカー物質を捕捉し、上記マーカー物質の濃度を測定することを特徴とする項目46〜48のいずれかに記載のイ方法。
(50) 上記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体または金属キレート体であることを特徴とする項目49に記載の方法。
(51) 上記担体は平面部分を有し、上記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、上記平面部分の一部に固定化されていることを特徴とする項目49または50に記載の方法。
(52) 項目46〜51のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、上記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とするインターフェロン療法の有効性を判定するためのキット。
(53) 上記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体または金属キレート体であることを特徴とする項目52に記載のキット。
【0012】
本発明のひとつは、C型肝炎患者の体液中における下記マーカー物質(a)〜(c)の少なくとも1つの濃度を指標として、前記C型肝炎患者に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定することを特徴とするインターフェロン療法の有効性判定方法である。
(a)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5880のイオンピークを生じるタンパク質、
(b)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5890のイオンピークを生じるタンパク質、
(c)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、有機溶媒で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6870のイオンピークを生じるタンパク質。
【0013】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法は、C型肝炎患者の体液中におけるマーカー物質の濃度を指標とするものである。そして、マーカー物質とし て上記マーカー物質(a)〜(c)のうちの少なくとも1つを用いる。本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法によれば、通常の臨床検査と同様に、患者から採取した体液を検査材料としてインターフェロン療法の有効性を判定できるので、簡便かつ迅速である。ここで、「インターフェロン療法」には、インターフェロン単独療法の他に、インターフェロンと他の薬剤との併用療法、例えばインターフェロン・リバビリン併用療法を含むものとする。また、質量/電荷比の「約5880」、「約5890」、「約6870」とは、質量分析における測定値の誤差範囲を考慮した値であり、約5880は概ね5880±0.2%、約5890は概ね5890±0.2%、約6870は概ね6870±0.2%を指す。また、これらのマーカー物質はいずれも主に血液中に存在するタンパク質である。なお、マーカー物質(a)と(b)は、インターフェロン療法が有効でないC型肝炎患者の体液において、高値を示す。また、マーカー物質(c)(非修飾トランスサイレチン(13700)の二価イオンピーク)は、インターフェロン療法が有効でないC型肝炎患者の体液において、低値を示す。インターフェロンα、βなどの区別は重要だが、他のインターフェロンでも同様のメカニズムがあると考えられる。ApoAIフラグメントの精密質量測定。モノアイソトピックイオンピークが5873.8であり、同定データ(Mascot)で得たC末端側配列(Tyr192−Gln243)の理論分子量5874と一致した。方法はイオン交換カラムで精製→SDS−PAGEで精製→ゲルを切り出してABI4700質量分析計で測定され得る。
【0014】
本発明の一つの実施形態は、前記体液は、血液であることを特徴とする上記インターフェロン療法の有効性判定方法である。
【0015】
かかる構成により、検査材料を簡単に採取でき、より簡便かつ迅速にC型肝炎患者におけるインターフェロン療法の有効性を判定することができる。
【0016】
本発明の一つの実施形態は、質量分析により体液中における前記マーカー物質の濃度を測定することを特徴とする上記インターフェロン療法の有効性判定方法である。
【0017】
かかる構成により、質量/電荷比のイオンピーク強度によってマーカー物質の濃度を測定することができる。
【0018】
本発明の一つの実施形態は、C型肝炎患者から体液を採取し、該体液または体液成分を前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させ て、前記マーカー物質を捕捉し、前記マーカー物質の濃度を測定することを特徴とする上記インターフェロン療法の有効性判定方法である。
【0019】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法においては、検査材料となる体液または体液成分をマーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体 を使用する。そして、該担体に体液または体液成分を接触させて、体液または体液成分に含まれるマーカー物質を、マーカー物質に対する親和性を有する物質を介して担体上に捕捉する。そして、担体上に捕捉されたマーカー物質の濃度を測定する。本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法によれば、検査材料の取り扱いが容易であり、かつ捕捉されたマーカー物質を測定対象とするので、より正確にマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、体液成分の例としては、体液が血液である場合の血清または血漿が挙げられる。
【0020】
本発明の一つの実施形態は、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体または金属キレート体であることを特徴とする請求項4に記載のインターフェロン療法の有効性判定方法である。
【0021】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法においては、マーカー物質に対する親和性を有する物質としてイオン交換体または金属キレート体を用い、イオ ン交換基または金属キレート体を介して検査材料中のマーカー物質を担体上に捕捉する。イオン交換体または金属キレート体は各種のものが入手容易であるので、本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法においては、マーカー物質を捕捉するための担体を容易に調製することができ、作業が容易である。
【0022】
本発明の一つの実施形態は、前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されていることを特徴とする上記インターフェロン療法の有効性判定方法である。
【0023】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法では、平面部分を有する担体を用い、マーカー物質に対する親和性を有する物質は該平面部分の一部に固定化 されている。かかる構成により、マーカー物質に対する親和性を有する物質を、担体上の複数箇所にスポット的に固定化することができる。その結果、1個の担体で複数の検査材料を処理することができ、作業効率がよい。さらに、各スポットの面積を小さくすることにより、微量の検査材料からでもマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、平面部分を有する担体の例としては、チップ等の基板が挙げられる。
【0024】
本発明の一つの実施形態は、上記インターフェロン療法の有効性判定方法に用いるためのキットであって、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とするインターフェロン療法の有効性判定用キットである。
【0025】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定用キットは、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含む。かかる構成により、マーカー物質の濃度測定に際して当該担体を別途用意する必要がなく、きわめて簡便にマーカー物質の濃度を測定することができる。
【0026】
本発明の一つの実施形態は、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体または金属キレート体であることを特徴とする請求項7に記載のインターフェロン療法の有効性判定用キットである。
【0027】
かかる構成により、マーカー物質をより確実に担体上に捕捉することができる。
以下に、本発明の好ましい実施形態を示すが、当業者は本発明の説明および当該分野における周知慣用技術からその実施形態などを適宜実施することができ、本発明が奏する作用および効果を容易に理解することが認識されるべきである。
【発明の効果】
【0028】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法によれば、インターフェロン療法が有効な患者と有効でない患者を、より簡便かつ迅速に判別することができ る。その結果、当該療法が有効でないC型肝炎患者に対してインターフェロン療法を行なうことを、事前に防ぐことができる。
【0029】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定用キットによれば、インターフェロン療法が有効な患者と有効でない患者を、より簡便かつ迅速に判別することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
以下、本発明を説明する。本明細書の全体にわたり、単数形の冠詞(例えば、英語の場合は「a」、「an」、「the」など、他の言語における対応する冠詞、形容詞など)は、特に言及しない限り、その複数形の概念をも含むことが理解されるべきである。また、本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。
【0031】
(一般技術)
本明細書において用いられる分子生物学的手法、生化学的手法、微生物学的手法は、当該分野において周知であり慣用されるものであり、例えば、Maniatis,T.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harborおよびその3rd Ed.(2001);Ausubel,F.M.(1987).Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.AssociatESand Wiley−Interscience;Ausubel,F.M.(1989).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley−Interscience;Sambrook,J.et al.(1989).Molecular Cloning: A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor;Innis,M.A.(1990).PCR Protocols: A Guide to Methods and Applications,Academic Press;Ausubel,F.M.(1992).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Ausubel,F.M.(1995).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates;Innis,M.A.et al.(1995).PCR Strategies,Academic Press;Ausubel,F.M.(1999).Short Protocols in Molecular Biology: A Compendium of Methods from Current Protocols in Molecular Biology,Wiley,and annual updates;Sninsky,J.J.et al.(1999).PCR Applications: Protocols for Functional Genomics,Academic Press、別冊実験医学「遺伝子導入&発現解析実験法」羊土社、1997などに記載されており、これらは本明細書において関連する部分(全部であり得る)が参考として援用される。
【0032】
プロテインチップに関連する技術としては、例えば、サイファージェン社から入手可能な技術などを挙げることができる。
【0033】
(用語の説明)
以下に本明細書において使用される用語を説明する。
【0034】
(マーカー物質として同定された代表的な遺伝子産物)
本明細書において「マーカー物質」とは、ある状態(例えば、C型肝炎などの疾患)に罹患しているかまたはその危険性があるかどうかを追跡する示標となる物質をいう。このようなマーカー物質としては、遺伝子、遺伝子産物、代謝物質、酵素などを挙げることができる。
【0035】
本明細書において、「遺伝子産物」とは、遺伝子によってコードされるタンパク質またはmRNAをいう。本明細書では、糖代謝に直接関連しない遺伝子産物(すなわち、インスリンなどの糖代謝に関連しないタンパク質など)が糖尿病の指標として使用可能であることが見出された。
【0036】
本明細書において「トランスサイレチン(TTR)」とは、別名プレアルブミンともいい、同質のサブユニットからなる四量体を形成するタンパク質として知られており、血中ビタミンA輸送タンパク質であるレチノール結合タンパク質(RBP)とタンパク質複合体を形成し、チロキシン(T)と結合することが知られている。ラットでは、主なT輸送タンパク質として知られている。
【0037】
トランスサイレチンは、Raz,A.らにより単離精製され、神田らにより一次構造が同定された(Raz,A.& Goodman D.S.,(1969),J.Biol.Chem.224,3230−3237;Kanda,Y.et al.,(1974),J.Biol.Chem.,247,6796−6805)。これまで、その異常がアルツハイマー性痴呆および家族性アミロイドーシスポリニューロパチーと関連していることが知られている。
【0038】
トランスサイレチンの代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号1または配列番号3に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号2または配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号2または配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号1または配列番号3に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号2または配列番号4に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
であり得る。
【0039】
トランスサイレチンのアミノ酸配列としては、
(a)配列番号2または配列番号4に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号2または配列番号4に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号1または配列番号3に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号2または配列番号4に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。
【0040】
トランスサイレチンの代表的な配列は、配列番号1または配列番号3(核酸配列)および配列番号2または配列番号4(アミノ酸配列)において示される。
【0041】
ここで、トランスサイレチンの生物学的活性としては、例えば、四量体を形成するタンパク質として知られており、血中ビタミンA輸送タンパク質であるレチノール結合タンパク質(RBP)とタンパク質複合体を形成し、チロキシン(T)と結合する能力を挙げることができる。
【0042】
トランスサイレチンは分子量約14000のサブユニット4個からなる複合タンパク質であり、肝臓で合成される。血液中のトランスサイレチンの臨床的意義としては、栄養状態および肝臓のタンパク質合成能を反映しているとされ、ネフローゼ症候群や急性肝炎の回復期等で高値を示すことが知られている。なお、本明細書では、トランスサイレチンというときは、4量体の複合タンパク質とサブユニット単体とを特に区別せず、両方を指すものとする。
【0043】
トランスサイレチンおよびその誘導体は、ヒト、ラットのほか、他の動物(例えば、哺乳動物)でもそのホモログ(本明細書において、「対応する」遺伝子またはタンパク質などという)が知られている。従って、本明細書においてトランスサイレチンおよびその誘導体は、通常、特に言及しない場合は、ヒト、ラットのほか、生物一般において存在するトランスサイレチンおよびその誘導体を指す。
【0044】
本明細書において「トランスサイレチン誘導体」とは、トランスサイレチンの任意の誘導体を指し、特に、翻訳後修飾などの生体内での代謝産物をいう。代表的なトランスサイレチン誘導体の改変を、以下に質量変動値とともに示す:
【0045】
【表1】


【0046】
本明細書では、代表的な、トランスサイレチン誘導体としては、システイン化(システイニル)、グルタチオン化、S−S結合形成、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)、ホルミル化、アセチル化、リン酸化、糖鎖付加、ミリスチル化などを挙げることができるがそれらに限定されない。13926は誘導体を含むTTRピーク群の最大ピークであり、Cys化TTRと思われる。6870は非修飾TTRであり、TTRピーク群の一番左の小さいピークに相当し、約13700である。ただし、ピーク群全体で同じ増減をしていることから、誘導体を含むTTRを指標とすることができる。
【0047】
本発明では、被験体において、トランスサイレチンの量が減少し、代わって、トランスサイレチンの特定の誘導体(例えば、システイニルトランスサイレチン、グルタチオン化トランスサイレチン、S−S結合形成したトランスサイレチン、酸化トランスサイレチン(例えば、メチオニン側鎖が酸化したトランスサイレチン)、ホルミル化トランスサイレチン、アセチル化トランスサイレチン、リン酸化トランスサイレチン、糖鎖付加トランスサイレチン、ミリスチル化トランスサイレチン)が増加していることが明らかになった。従って、これらのトランスサイレチンの減少またはトランスサイレチン誘導体の増加を指標として、被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎等のインターフェロンが有効な疾患に対して有効であるか否かを判定することが可能である。
【0048】
本明細書において「アポリポタンパク質」または「アポ脂質タンパク質」とは、脂質と結合して脂質タンパク質を形成するタンパク質をいい、A、B、C、DおよびEに大別される。ヒトの血漿乳び脂粒(カイロミクロン),HDL,LDL,およびVLDLなどの典型的な成分であるリポタンパク質複合体のタンパク質成分である。アポリポタンパク質A1(APOA1と略することがある)は、HDLやカイロミクロン中に存在するアポリポタンパク質である。LCATの活性化因子でありHDLレセプターに対するリガンドである。このタンパク質の欠損は、低HDL血症を伴い,Tangier病を生じる。アポリポタンパク質Cなどについての概説は、Bondarenko,P.V.etal.J.Lipid Res.1999;40:543-555を参照のこと。
【0049】
アポリポタンパク質AIの代表的なヌクレオチド配列は、
(a)配列番号5または配列番号7に記載の塩基配列またはそのフラグメント配列を有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドまたはそのフラグメントをコードするポリヌクレオチド;
(c)配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が、置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有する改変体ポリペプチドまたはそのフラグメントであって、生物学的活性を有する改変体ポリペプチドをコードする、ポリヌクレオチド;
(d)配列番号5または配列番号7に記載の塩基配列のスプライス変異体もしくは対立遺伝子変異体またはそのフラグメントである、ポリヌクレオチド;
(e)配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列からなるポリペプチドの種相同体またはそのフラグメントをコードする、ポリヌクレオチド;
(f)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドにストリンジェント条件下でハイブリダイズし、かつ生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド;または
(g)(a)〜(e)のいずれか1つのポリヌクレオチドまたはその相補配列に対する同一性が少なくとも70%である塩基配列からなり、かつ、生物学的活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド
であり得る。
【0050】
アポリポタンパク質AIのアミノ酸配列としては、
(a)配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列またはそのフラグメントからなる、ポリペプチド;
(b)配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列において、1以上のアミノ酸が置換、付加および欠失からなる群より選択される1つの変異を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド;
(c)配列番号5または配列番号7に記載の塩基配列のスプライス変異体または対立遺伝子変異体によってコードされる、ポリペプチド;
(d)配列番号6または配列番号8に記載のアミノ酸配列の種相同体である、ポリペプチド;または
(e)(a)〜(d)のいずれか1つのポリペプチドに対する同一性が少なくとも70%であるアミノ酸配列を有し、かつ、生物学的活性を有する、ポリペプチド、
であり得る。
【0051】
アポリポタンパク質AIの代表的な配列は、配列番号5または配列番号7(核酸配列)および配列番号6または配列番号8(アミノ酸配列)において示される。
【0052】
アポリポタンパク質AIは、HDLやカイロミクロン中に存在するアポリポタンパク質である。その生物学的活性としては、LCATの活性化因子でありHDLレセプタに対するリガンドであるという能力が挙げられる。このタンパク質の欠損は、低HDL血症を伴い、Tangier病を生じる。
【0053】
アポリポタンパク質AIは、ヒト、ラットのほか、他の動物(例えば、哺乳動物)でもそのホモログ(本明細書において、「対応する」遺伝子またはタンパク質などという)が知られている。従って、本明細書においてアポリポタンパク質AIは、通常、特に言及しない場合は、ヒト、ラットのほか、生物一般において存在するアポリポタンパク質AIを指す。
【0054】
種々の誘導体を識別するには、識別可能な抗体などの特異的因子を用いるか、またはこれら特定の糖鎖を選択的に切断する酵素を用いて処理し、分子量が減少するかどうかを判定することなどによって確認することができる。
【0055】
(診断・事前診断(予防)因子)
本発明において、判定(例えば、診断、または事前診断)は、マーカー物質に特異的な因子または手段を用いて実現することができる。
【0056】
本明細書において「因子」(agent)としては、意図する目的を達成することができる限りどのような物質または他の要素(例えば、光、放射能、熱、電気などのエネルギー)でもあってもよい。そのような物質としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、オリゴペプチド、ペプチド、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、核酸(例えば、cDNA、ゲノムDNAのようなDNA、mRNAのようなRNAを含む)、ポリサッカリド、オリゴサッカリド、脂質、有機低分子(例えば、ホルモン、リガンド、情報伝達物質、有機低分子、コンビナトリアルケミストリで合成された分子、医薬品として利用され得る低分子(例えば、低分子リガンドなど)など)、これらの複合分子が挙げられるがそれらに限定されない。ポリヌクレオチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリヌクレオチドの配列に対して一定の配列相同性を(例えば、70%以上の配列同一性)もって相補性を有するポリヌクレオチド、プロモーター領域に結合する転写因子のようなポリペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。ポリペプチドに対して特異的な因子としては、代表的には、そのポリペプチドに対して特異的に指向された抗体またはその誘導体あるいはその類似物(例えば、単鎖抗体)、そのポリペプチドがレセプターまたはリガンドである場合の特異的なリガンドまたはレセプター、そのポリペプチドが酵素である場合、その基質などが挙げられるがそれらに限定されない。
【0057】
したがって、本明細書においてポリヌクレオチドまたはポリペプチドなどの生物学的因子に対して「特異的に相互作用する因子」とは、そのポリヌクレオチドまたはそのポリペプチドなどの生物学的因子に対する親和性が、他の無関連の(特に、同一性が30%未満の)ポリヌクレオチドまたはポリペプチドに対する親和性よりも、代表的には同等またはより高いか、好ましくは有意に(例えば、統計学的に有意に)高いものを包含する。そのような親和性は、例えば、ハイブリダイゼーションアッセイ、結合アッセイなどによって測定することができる。
【0058】
本明細書において第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」とは、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して、第二の物質または因子以外の物質または因子(特に、第二の物質または因子を含むサンプル中に存在する他の物質または因子)に対するよりも高い親和性で相互作用することをいう。物質または因子について特異的な相互作用としては、例えば、核酸におけるハイブリダイゼーション、タンパク質における抗原抗体反応、リガンド−レセプター反応、酵素−基質反応など、核酸およびタンパク質の両方が関係する場合、転写因子とその転写因子の結合部位との反応など、タンパク質−脂質相互作用、核酸−脂質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。従って、物質または因子がともに核酸である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、第一の物質または因子が、第二の物質または因子に対して少なくとも一部に相補性を有することが包含される。また例えば、物質または因子がともにタンパク質である場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」こととしては、例えば、抗原抗体反応による相互作用、レセプター−リガンド反応による相互作用、酵素−基質相互作用などが挙げられるがそれらに限定されない。2種類の物質または因子がタンパク質および核酸を含む場合、第一の物質または因子が第二の物質または因子に「特異的に相互作用する」ことには、転写因子と、その転写因子が対象とする核酸分子の結合領域との間の相互作用が包含される。
【0059】
本明細書において「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、多重特異性抗体、キメラ抗体、および抗イディオタイプ抗体、ならびにそれらの断片、例えばF(ab’)およびFab断片、ならびにその他の組換えにより生産された結合体を含む。さらにこのような抗体を、酵素、例えばアルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ、αガラクトシダーゼなど、に共有結合させまたは組換えにより融合させてよい。
【0060】
本明細書において「手段」とは、ある目的を達成する任意の道具となり得るものをいい、特に、本明細書では、「選択的に認識する手段」とは、ある対象を他のものとは異なって認識することができる手段をいう。
【0061】
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。
【0062】
本明細書において使用される抗体は、擬陽性が減じられるかぎり、どのような特異性の抗体を用いても良いことが理解される。従って、本発明において用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。
【0063】
本明細書において「抗原」(antigen)とは、抗体分子によって特異的に結合され得る任意の基質をいう。本明細書において「免疫原」(immunogen)とは、抗原特異的免疫応答を生じるリンパ球活性化を開始し得る抗原をいう。
【0064】
本明細書において使用される抗体は、擬陽性が減じられるかぎり、どのような特異性の抗体を用いても良いことが理解される。従って、本発明において用いられる抗体は、ポリクローナル抗体であってもよく、モノクローナル抗体であってもよい。
【0065】
本明細書において「リガンド」とは、あるタンパク質に特異的に結合する物質をいう。例えば,細胞膜上に存在する種々のレセプタータンパク質分子と特異的に結合するレクチン、抗原、抗体、ホルモン、神経伝達物質などがリガンドとして挙げられる。
【0066】
本明細書において「タンパク質」、「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーをいう。このポリマーは、直鎖であっても分岐していてもよく、環状であってもよい。アミノ酸は、天然のものであっても非天然のものであってもよく、改変されたアミノ酸であってもよい。この用語はまた、複数のポリペプチド鎖の複合体へとアセンブルされた複合体をさし得る。この用語はまた、天然または人工的に改変されたアミノ酸ポリマーも包含する。そのような改変としては、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化または任意の他の操作もしくは改変(例えば、標識成分との結合体化)などが挙げられる。この定義にはまた、例えば、アミノ酸の1または2以上のアナログを含むポリペプチド(例えば、非天然のアミノ酸などを含む)、ペプチド様化合物(例えば、ペプトイド)および当該分野において公知の他の改変が包含される。特に言及する場合、本発明の「ポリペプチド」は、マーカー物質を指すことがある。
【0067】
本明細書において「アミノ酸」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「誘導体アミノ酸」または「アミノ酸アナログ」とは、天然に存在するアミノ酸とは異なるがもとのアミノ酸と同様の機能を有するものをいう。そのような誘導体アミノ酸およびアミノ酸アナログは、当該分野において周知である。
【0068】
本明細書において「天然のアミノ酸」とは、天然のアミノ酸のL−異性体を意味する。天然のアミノ酸は、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、メチオニン、トレオニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、システイン、プロリン、ヒスチジン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、γ−カルボキシグルタミン酸、アルギニン、オルニチン、およびリジンである。特に示されない限り、本明細書でいう全てのアミノ酸はL体である。
【0069】
本明細書において「非天然アミノ酸」とは、タンパク質中で通常は天然に見出されないアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸の例として、上述のD型アミノ酸、ノルロイシン、パラ−ニトロフェニルアラニン、ホモフェニルアラニン、パラ−フルオロフェニルアラニン、3−アミノ−2−ベンジルプロピオン酸、ホモアルギニンのD体またはL体およびD−フェニルアラニンが挙げられる。
【0070】
本明細書において「アミノ酸アナログ」とは、アミノ酸ではないが、アミノ酸の物性および/または機能に類似する分子をいう。アミノ酸アナログとしては、例えば、エチオニン、カナバニン、2−メチルグルタミンなどが挙げられる。アミノ酸模倣物とは、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様な様式で機能する化合物をいう。
【0071】
アミノ酸は、その一般に公知の3文字記号か、またはIUPAC−IUB Biochemical Nomenclature Commissionにより推奨される1文字記号のいずれかにより、本明細書中で言及され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に受け入れられた1文字コードにより言及され得る。
【0072】
本明細書において「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」は、本明細書において同じ意味で使用され、任意の長さのヌクレオチドのポリマーをいう。この用語はまた、「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」を含む。「オリゴヌクレオチド誘導体」または「ポリヌクレオチド誘導体」とは、ヌクレオチドの誘導体を含むか、またはヌクレオチド間の結合が通常とは異なるオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドをいい、互換的に使用される。そのようなオリゴヌクレオチドとして具体的には、例えば、2’−O−メチル−リボヌクレオチド、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がホスホロチオエート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリン酸ジエステル結合がN3’−P5’ホスホロアミデート結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のリボースとリン酸ジエステル結合とがペプチド核酸結合に変換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5プロピニルウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のウラシルがC−5チアゾールウラシルで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがC−5プロピニルシトシンで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、オリゴヌクレオチド中のシトシンがフェノキサジン修飾シトシン(phenoxazine−modified cytosine)で置換されたオリゴヌクレオチド誘導体、DNA中のリボースが2’−O−プロピルリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体およびオリゴヌクレオチド中のリボースが2’−メトキシエトキシリボースで置換されたオリゴヌクレオチド誘導体などが例示される。他にそうではないと示されなければ、特定の核酸配列はまた、明示的に示された配列と同様に、その保存的に改変された改変体(例えば、縮重コドン置換体)および相補配列を包含することが企図される。具体的には、縮重コドン置換体は、1またはそれ以上の選択された(または、すべての)コドンの3番目の位置が混合塩基および/またはデオキシイノシン残基で置換された配列を作成することにより達成され得る(Batzerら、Nucleic Acid Res.19:5081(1991);Ohtsukaら、J.Biol.Chem.260:2605−2608(1985);Rossoliniら、Mol.Cell.Probes 8:91−98(1994))。
【0073】
本明細書において「ヌクレオチド」は、天然のものでも非天然のものでもよい。「ヌクレオチド誘導体」または「ヌクレオチドアナログ」とは、天然に存在するヌクレオチドとは異なるがもとのヌクレオチドと同様の機能を有するものをいう。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログは、当該分野において周知である。そのようなヌクレオチド誘導体およびヌクレオチドアナログの例としては、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラルメチルホスホネート、2’−O−メチルリボヌクレオチド、ペプチド型核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0074】
本明細書において「複合分子」とは、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、脂質、糖、低分子などの分子が複数種連結してできた分子をいう。そのような複合分子としては、例えば、糖脂質、糖ペプチドなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書では、配列番号2のアミノ酸を有するポリペプチドまたはその改変体もしくはフラグメントであって、診断に関与する生物学的な活性性を有する限り、それぞれの改変体もしくはフラグメントなどをコードする核酸分子も使用することができる。また、そのような核酸分子を含む複合分子も使用することができる。
【0075】
本明細書において「核酸」はまた、遺伝子、cDNA、mRNA、オリゴヌクレオチド、およびポリヌクレオチドと互換可能に使用される。特定の核酸配列はまた、「スプライス改変体」を包含する。同様に、核酸によりコードされた特定のタンパク質は、その核酸のスプライス改変体によりコードされる任意のタンパク質を暗黙に包含する。その名が示唆するように「スプライス改変体」は、遺伝子のオルタナティブスプライシングの産物である。転写後、最初の核酸転写物は、異なる(別の)核酸スプライス産物が異なるポリペプチドをコードするようにスプライスされ得る。スプライス改変体の産生機構は変化するが、エキソンのオルタナティブスプライシングを含む。読み過し転写により同じ核酸に由来する別のポリペプチドもまた、この定義に包含される。スプライシング反応の任意の産物(組換え形態のスプライス産物を含む)がこの定義に含まれる。スプライシングの違いは、本発明において識別性を有するマーカー物質の生成をもたらし得る。
【0076】
本明細書において「遺伝子」とは、遺伝形質を規定する因子をいう。通常染色体上に一定の順序に配列している。タンパク質の一次構造を規定する遺伝子を構造遺伝子といい、その発現を左右する遺伝子を調節遺伝子という。本明細書では、「遺伝子」は、「ポリヌクレオチド」、「オリゴヌクレオチド」および「核酸」ならびに/あるいは「タンパク質」「ポリペプチド」、「オリゴペプチド」および「ペプチド」をさすことがある。
【0077】
本明細書において遺伝子の「相同性」とは、2以上の遺伝子配列の、互いに対する同一性の程度をいう。従って、ある2つの遺伝子の相同性が高いほど、それらの配列の同一性または類似性は高い。2種類の遺伝子が相同性を有するか否かは、配列の直接の比較、または核酸の場合ストリンジェントな条件下でのハイブリダイゼーション法によって調べられ得る。2つの遺伝子配列を直接比較する場合、その遺伝子配列間でDNA配列が、代表的には少なくとも50%同一である場合、好ましくは少なくとも70%同一である場合、より好ましくは少なくとも80%、90%、95%、96%、97%、98%または99%同一である場合、それらの遺伝子は相同性を有する。
【0078】
本明細書ではアミノ酸および塩基配列の類似性、相同性および同一性の比較は、配列分析用ツールであるBLASTを用いてデフォルトパラメータを用いて算出される。同一性の検索は例えば、NCBIのBLAST 2.2.9 (2004.5.12 発行)を用いて行うことができる。本明細書における同一性の値は通常は上記BLASTを用い、デフォルトの条件でアラインした際の値をいう。ただし、パラメータの変更により、より高い値が出る場合は、最も高い値を同一性の値とする。複数の領域で同一性が評価される場合はそのうちの最も高い値を同一性の値とする。
【0079】
本明細書において「対応する」アミノ酸または核酸とは、あるポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子において、比較の基準となるポリペプチドまたはポリヌクレオチドにおける所定のアミノ酸またはヌクレオチドと同様の作用を有するか、または有することが予測されるアミノ酸またはヌクレオチドをいい、特に酵素分子にあっては、活性部位中の同様の位置に存在し触媒活性に同様の寄与をするアミノ酸をいう。例えば、アンチセンス分子であれば、そのアンチセンス分子の特定の部分に対応するオルソログにおける同様の部分であり得る。対応するアミノ酸は、例えば、システイン化、グルタチオン化、S−S結合形成、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)、ホルミル化、アセチル化、リン酸化、糖鎖付加、ミリスチル化などがされる特定のアミノ酸であり得る。あるいは、対応するアミノ酸は、二量体化を担うアミノ酸であり得る。このような「対応する」アミノ酸または核酸は、一定範囲にわたる領域またはドメインであってもよい。従って、そのような場合、本明細書において「対応する」領域またはドメインと称される。
【0080】
本明細書において「対応する」遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)とは、ある種において、比較の基準となる種における所定の遺伝子と同様の作用を有するか、または有することが予測される遺伝子(例えば、ポリペプチド分子またはポリヌクレオチド分子)をいい、そのような作用を有する遺伝子が複数存在する場合、進化学的に同じ起源を有するものをいう。従って、ある遺伝子に対応する遺伝子は、その遺伝子のオルソログであり得る。従って、マウス、ラットのアポリポタンパク質AI,トランスサイレチンは、それぞれ、ヒトにおいて、対応するアポリポタンパク質AI,トランスサイレチンを見出すことができる。そのような対応する遺伝子は、当該分野において周知の技術を用いて同定することができる。したがって、例えば、ある動物(例えば、マウス)における対応する遺伝子は、対応する遺伝子の基準となる遺伝子(例えば、アポリポタンパク質AI,トランスサイレチン)は、の配列をクエリ配列として用いてその動物(例えばヒト、ラット)の配列データベースを検索することによって見出すことができる。
【0081】
本明細書において「フラグメント」とは、全長のポリペプチドまたはポリヌクレオチド(長さがn)に対して、1〜n−1までの配列長さを有するポリペプチドまたはポリヌクレオチドをいう。フラグメントの長さは、その目的に応じて、適宜変更することができ、例えば、その長さの下限としては、ポリペプチドの場合、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50およびそれ以上のアミノ酸が挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。また、ポリヌクレオチドの場合、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、40、50、75、100およびそれ以上のヌクレオチドが挙げられ、ここの具体的に列挙していない整数で表される長さ(例えば、11など)もまた、下限として適切であり得る。本明細書において、このようなフラグメントは、例えば、全長のものがマーカーとして機能する場合、そのフラグメント自体もまたマーカーとしての機能を有する限り、本発明の範囲内に入ることが理解される。
【0082】
本発明では、特定の長さのフラグメントがマーカー物質として用いられ得る。そのようなフラグメントとしては、例えば、YHAKATEHL STLSEKAKPALEDLRQGLLP VLESFKVSFL SALEEYTKKL NTQ(配列番号6の192から243位)などを挙げることができる。
【0083】
本明細書中で使用される「接触(させる)」とは、化合物を、直接的または間接的のいずれかで、本発明のポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して物理的に近接させることを意味する。ポリペプチドまたはポリヌクレオチドは、多くの緩衝液、塩、溶液などに存在し得る。接触とは、核酸分子またはそのフラグメントをコードするポリペプチドを含む、例えば、ビーカー、マイクロタイタープレート、細胞培養フラスコまたはマイクロアレイ(例えば、遺伝子チップ)などに化合物を置くことが挙げられる。
【0084】
本明細書において「ストリンジェントな条件でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、当該分野で慣用される周知の条件をいう。本発明のポリヌクレオチド中から選択されたポリヌクレオチドをプローブとして、コロニー・ハイブリダイゼーション法、プラーク・ハイブリダイゼーション法あるいはサザンブロットハイブリダイゼーション法などを用いることにより、そのようなポリヌクレオチドを得ることができる。具体的には、コロニーあるいはプラーク由来のDNAを固定化したフィルターを用いて、0.7〜1.0MのNaCl存在下、65℃でハイブリダイゼーションを行った後、0.1〜2倍濃度のSSC(saline−sodium citrate)溶液(1倍濃度のSSC溶液の組成は、150mM 塩化ナトリウム、15mM クエン酸ナトリウムである)を用い、65℃条件下でフィルターを洗浄することにより同定できるポリヌクレオチドを意味する。ハイブリダイゼーションは、Molecular Cloning 2nd ed.,Current Protocols in Molecular Biology,Supplement 1〜38、DNA Cloning 1:Core Techniques,A PRac1tical Approach,Second Edition,Oxford University Press(1995)などの実験書に記載されている方法に準じて行うことができる。ここで、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする配列からは、好ましくは、A配列のみまたはT配列のみを含む配列が除外される。従って、本発明において使用されるポリペプチド(例えば、トランスサイレチンなど)には、本発明で特に記載されたポリペプチドをコードする核酸分子に対して、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする核酸分子によってコードされるポリペプチドも包含される。
【0085】
本明細書において「ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチド」とは、上記ハイブリダイズ条件下で別のポリヌクレオチドにハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドをいう。ハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとして具体的には、配列番号2、4、6などで表されるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするDNAの塩基配列と少なくとも60%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、好ましくは80%以上の相同性を有するポリヌクレオチド、さらに好ましくは95%以上の相同性を有するポリヌクレオチドを挙げることができる。
【0086】
DNA二重鎖の安定性に影響を与える因子としては、塩基の組成、長さおよび塩基対不一致の程度が挙げられる。ハイブリダイゼーション条件は、当業者によって調整され得、これらの変数を適用させ、そして異なる配列関連性のDNAがハイブリッドを形成するのを可能にする。完全に一致したDNA二重鎖の融解温度は、以下の式によって概算され得る。
Tm(℃)=81.5+16.6(log[Na])+0.41(%G+C)−600/N−0.72(%ホルムアミド)
ここで、Nは、形成される二重鎖の長さであり、[Na]は、ハイブリダイゼーション溶液または洗浄溶液中のナトリウムイオンのモル濃度であり、%G+Cは、ハイブリッド中の(グアニン+シトシン)塩基のパーセンテージである。不完全に一致したハイブリッドに関して、融解温度は、各1%不一致(ミスマッチ)に対して約1℃ずつ減少する。
【0087】
本明細書において「精製された」生物学的因子(例えば、核酸またはタンパク質など)とは、その生物学的因子に天然に随伴する因子の少なくとも一部が除去されたものをいう。したがって、通常、精製された生物学的因子におけるその生物学的因子の純度は、その生物学的因子が通常存在する状態よりも高い(すなわち濃縮されている)。
【0088】
本明細書中で使用される用語「精製された」は、好ましくは少なくとも75重量%、より好ましくは少なくとも85重量%、よりさらに好ましくは少なくとも95重量%、そして最も好ましくは少なくとも98重量%の、同型の生物学的因子が存在することを意味する。
【0089】
本明細書において遺伝子、ポリヌクレオチド、ポリペプチドなどの「発現」とは、その遺伝子などがインビボで一定の作用を受けて、別の形態になることをいう。好ましくは、遺伝子、ポリヌクレオチドなどが、転写および翻訳されて、ポリペプチドの形態になることをいうが、転写されてmRNAが作製されることもまた発現の一態様であり得る。より好ましくは、そのようなポリペプチドの形態は、翻訳後プロセシングを受けたもの(本明細書にいう誘導体)であり得る。
【0090】
本明細書においてポリペプチド発現の「検出」または「定量」は、例えば、mRNAの測定および免疫学的測定方法を含む適切な方法を用いて達成され得る。分子生物学的測定方法としては、例えば、ノーザンブロット法、ドットブロット法またはPCR法などが例示される。免疫学的測定方法としては、例えば、方法としては、マイクロタイタープレートを用いるELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などが例示される。また、定量方法としては、ELISA法またはRIA法などが例示される。
【0091】
本明細書において「発現量」とは、目的の細胞などにおいて、ポリペプチドまたはmRNAが発現される量をいう。そのような発現量としては、本発明の抗体を用いてELISA法、RIA法、蛍光抗体法、ウェスタンブロット法、免疫組織染色法などの免疫学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明ポリペプチドのタンパク質レベルでの発現量、またはノーザンブロット法、ドットブロット法、PCR法などの分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明において使用されるポリペプチドのmRNAレベルでの発現量が挙げられる。「発現量の変化」とは、上記免疫学的測定方法または分子生物学的測定方法を含む任意の適切な方法により評価される本発明において使用されるポリペプチドのタンパク質レベルまたはmRNAレベルでの発現量が増加あるいは減少することを意味する。
【0092】
本明細書中で使用される用語「結合」は、2つのタンパク質もしくは化合物または関連するタンパク質もしくは化合物の間、あるいはそれらの組み合わせの間での、物理的相互作用または化学的相互作用を意味する。結合には、イオン結合、非イオン結合、水素結合、ファンデルワールス結合、疎水性相互作用などが含まれる。物理的相互作用(結合)は、直接的または間接的であり得、間接的なものは、別のタンパク質または化合物の効果を介するかまたは起因する。直接的な結合とは、別のタンパク質または化合物の効果を介してもまたはそれらに起因しても起こらず、他の実質的な化学中間体を伴わない、相互作用をいう。
【0093】
本明細書中で使用される用語「調節する(modulate)」または「改変する(modify)」は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における増加または減少あるいは維持を意味する。
【0094】
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「減少」または「抑制」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における減少、または減少させる活性をいう。
【0095】
本明細書において、活性、発現産物(例えば、タンパク質、転写物(RNAなど))の「増加」または「活性化」あるいはその類義語は、特定の活性、転写物またはタンパク質の量、質または効果における増加または増加させる活性をいう。
【0096】
本明細書において「プローブ」とは、インビトロおよび/またはインビボなどのスクリーニングなどの生物学的実験において用いられる、検索の手段となる物質をいい、例えば、特定の塩基配列を含む核酸分子または特定のアミノ酸配列を含むペプチドなどが挙げられるがそれに限定されない。本明細書においてプローブは、マーカー検出手段としてもちいられる。
【0097】
通常プローブとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相同なまたは相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、少なくとも核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。
【0098】
本明細書において「検索」とは、電子的にまたは生物学的あるいは他の方法により、ある核酸塩基配列を利用して、特定の機能および/または性質を有する他の核酸塩基配列を見出すことをいう。電子的な検索としては、BLAST(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403−410(1990))、FASTA(Pearson & Lipman,Proc.Natl.Acad.Sci.,USA 85:2444−2448(1988))、Smith and Waterman法(Smith and Waterman,J.Mol.Biol.147:195−197(1981))、およびNeedleman and Wunsch法(Needleman and Wunsch,J.Mol.Biol.48:443−453(1970))などが挙げられるがそれらに限定されない。生物学的な検索としては、ストリンジェントハイブリダイゼーション、ゲノムDNAをナイロンメンブレン等に貼り付けたマクロアレイまたはガラス板に貼り付けたマイクロアレイ(マイクロアレイアッセイ)、PCRおよびin situハイブリダイゼーションなどが挙げられるがそれらに限定されない。本明細書において、本発明において使用される遺伝子には、このような電子的検索、生物学的検索によって同定された対応遺伝子も含まれるべきであることが意図される。
【0099】
本明細書における「プライマー」とは、高分子合成酵素反応において、合成される高分子化合物の反応の開始に必要な物質をいう。核酸分子の合成反応では、合成されるべき高分子化合物の一部の配列に相補的な核酸分子(例えば、DNAまたはRNAなど)が用いられ得る。本明細書においてプライマーはマーカー検出手段として使用され得る。
【0100】
通常プライマーとして用いられる核酸分子としては、目的とする遺伝子の核酸配列と相補的な、少なくとも8の連続するヌクレオチド長の核酸配列を有するものが挙げられる。そのような核酸配列は、好ましくは、少なくとも9の連続するヌクレオチド長の、より好ましくは少なくとも10の連続するヌクレオチド長の、さらに好ましくは少なくとも11の連続するヌクレオチド長の、少なくとも12の連続するヌクレオチド長の、少なくとも13の連続するヌクレオチド長の、少なくとも14の連続するヌクレオチド長の、少なくとも15の連続するヌクレオチド長の、少なくとも16の連続するヌクレオチド長の、少なくとも17の連続するヌクレオチド長の、少なくとも18の連続するヌクレオチド長の、少なくとも19の連続するヌクレオチド長の、少なくとも20の連続するヌクレオチド長の、少なくとも25の連続するヌクレオチド長の、少なくとも30の連続するヌクレオチド長の、少なくとも40の連続するヌクレオチド長の、少なくとも50の連続するヌクレオチド長の、核酸配列であり得る。プローブとして使用される核酸配列には、上述の配列に対して、少なくとも70%相同な、より好ましくは、少なくとも80%相同な、さらに好ましくは、少なくとも90%相同な、少なくとも95%相同な核酸配列が含まれる。プライマーとして適切な配列は、合成(増幅)が意図される配列の性質によって変動し得るが、当業者は、意図される配列に応じて適宜プライマーを設計することができる。そのようなプライマーの設計は当該分野において周知であり、手動でおこなってもよくコンピュータプログラム(例えば、LASERGENE,PrimerSelect,DNAStar)を用いて行ってもよい。
【0101】
本明細書において「生物学的活性」とは、ある因子(例えば、ポリペプチドまたはタンパク質)が、生体内において有し得る活性のことをいい、種々の機能を発揮する活性が包含される。例えば、ある因子がリガンドである場合、その生物学的活性は、そのリガンドが対応するレセプターに結合する活性を包含する。
【0102】
(トランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AIおよびアポリポタンパク質AI誘導体、ならびにこれらに対応するタンパク質の検出)
体液などに含まれるトランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AIおよびアポリポタンパク質AI誘導体、ならびにこれらに対応するタンパク質を検出する際には、これらトランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AIおよびアポリポタンパク質AI誘導体、ならびにこれらに対応するタンパク質を特異的に認識する抗体(以下、トランスサイレチン抗体、トランスサイレチン誘導体抗体、アポリポタンパク質AI抗体およびアポリポタンパク質AI誘導体抗体ならびにこれらに対応するタンパク質の抗体などと呼ぶ)を作製する。このような抗体は、従来公知の手法を用いて作製することができる。なお、抗体は、モノクローナル抗体であっても、ポリクローナル抗体であっても良い。他のマーカー物質(例えば、トランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AIおよびアポリポタンパク質AI誘導体、ならびにこれらに対応するタンパク質など)についても、同様に抗体を作製することができる。
【0103】
一例として、トランスサイレチンモノクローナル抗体の調製方法を以下に記載する。トランスサイレチンモノクローナル抗体は、抗原で免疫した動物から得られる抗体産生細胞と、ミエローマ細胞との細胞融合によりハイブリドーマを調製し、得られるハイブリドーマからトランスサイレチンの活性を特異的に阻害する抗体を産生するクローンを選択することにより調製することができる。
【0104】
動物の免疫に抗原として用いるトランスサイレチンタンパク質としては、組換えDNA法または化学合成により調製したトランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列の全部若しくは一部のペプチドが挙げられる。例えば、配列番号2に示したトランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列における、21〜147番目のアミノ酸配列からなるペプチド(すなわち、成熟型)を抗原として使用することができる。また、細胞表面に存在するトランスサイレチンタンパク質を特異的に検出するためのトランスサイレチンモノクローナル抗体としては、配列番号2に示したトランスサイレチンタンパク質のアミノ酸配列における任意の10以上からなるペプチドを抗原として使用することが好ましい。他のトランスサイレチンの分子経路における任意の因子(例えば、トランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AIおよびアポリポタンパク質AI誘導体、ならびにこれらに対応するタンパク質など)についても同様に抗原を設計することができる。
【0105】
得られた抗原用トランスサイレチンをキャリアータンパク質(例えばサイログロブリン)に結合させた後、アジュバントを添加する。アジュバントとしては、フロイント完全アジュバント、フロイントの不完全アジュバント等が挙げられ、これらの何れのものを混合してもよい。
【0106】
上記のようにして得られた抗原を哺乳動物、例えばマウス、ラット、ウマ、サル、ウサギ、ヤギ、ヒツジなどの哺乳動物に投与する。免疫は、既存の方法であれば何れの方法をも用いることができるが、主として静脈内注射、皮下注射、腹腔内注射などにより行う。また、免疫の間隔は特に限定されず、数日から数週間間隔で、好ましくは4〜21日間隔で免疫する。
【0107】
最終の免疫日から2〜3日後に抗体産生細胞を採集する。抗体産生細胞としては、脾臓細胞、リンパ節細胞、末梢血細胞が挙げられるが、一般に脾臓細胞が用いられる。抗原の免疫量は1回にマウス1匹当たり、例えば100μg用いられる。
【0108】
免疫した動物の免疫応答レベルを確認し、また、細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選択するため、免疫した動物の血中抗体価、または抗体産生細胞の培養上清中の抗体価を測定する。抗体検出の方法としては、公知技術、例えばEIA(エンザイムイムノアッセイ)、RIA(ラジオイムノアッセイ)、ELISA(酵素連結イムノソルベントアッセイ)等が挙げられる。
【0109】
抗体産生細胞と融合させるミエローマ(骨髄腫)細胞として、マウス、ラット、ヒトなど種々の動物に由来し、当業者が一般に入手可能な株化細胞を使用する。使用する細胞株としては、薬剤抵抗性を有し、未融合の状態では選択培地(例えばHAT培地)で生存できず、融合した状態でのみ生存できる性質を有するものが用いられる。一般的に8−アザグアニン耐性株が用いられ、この細胞株は、ヒポキサンチン−グアニン−ホスホリボシルトランスフェラーゼを欠損し、ヒポキサンチン・アミノプテリン・チミジン(HAT)培地に生育できないものである。
【0110】
ミエローマ細胞は、既に公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J.Immunol.(1979)123:1548−1550)、P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology (1978)81:1−7)、NS−1(Kohler,G.and Milstein,C.,Eur.J.Immunol.(1976)6:511−519)、MPC−11 (Margulies,D.H.et al.,Cell (1976)8:405−415)、SP2/0 (Shulman,M.et al.,Nature (1978)276:269−270)、FO(de St.Groth,S.F.et al.,J.Immunol.Methods (1980)35:1−21)、S194 (Trowbridge,I.S.,J.Exp.Med.(1978)148:313−323)、R210 (Galfre,G.et al.,Nature (1979)277:131−133)等が好適に使用される。
【0111】
抗体産生細胞は、脾臓細胞、リンパ節細胞などから得られる。すなわち、前記各種動物から脾臓、リンパ節等を摘出または採取し、これら組織を破砕する。得られる破砕物をPBS 、DMEM、RPMI1640等の培地または緩衝液に懸濁し、ステンレスメッシュ等で濾過後、遠心分離を行うことにより目的とする抗体産生細胞を調製する。
【0112】
次に、上記ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを細胞融合させる。細胞融合は、MEM 、DMEM、RPME−1640培地などの動物細胞培養用培地中で、ミエローマ細胞と抗体産生細胞とを、混合比1:1〜1:10で融合促進剤の存在下、30〜37℃で1〜15分間接触させることによって行われる。細胞融合を促進させるためには、平均分子量1,000〜6,000のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコールまたはセンダイウイルスなどの融合促進剤や融合ウイルスを使用することができる。また、電気刺激(例えばエレクトロポレーション)を利用した市販の細胞融合装置を用いて抗体産生細胞とミエローマ細胞とを融合させることもできる。
【0113】
細胞融合処理後の細胞から目的とするハイブリドーマを選別する。その方法として、選択培地における細胞の選択的増殖を利用する方法等が挙げられる。すなわち、細胞懸濁液を適切な培地で希釈後、マイクロタイタープレート上にまき、各ウェルに選択培地(HAT培地など)を加え、以後適当に選択培地を交換して培養を行う。その結果、生育してくる細胞をハイブリドーマとして得ることができる。
【0114】
ハイブリドーマのスクリーニングは、限界希釈法、蛍光励起セルソーター法等により行い、最終的にモノクローナル抗体産生ハイブリドーマを取得する。取得したハイブリドーマからモノクローナル抗体を採取する方法としては、通常の細胞培養法や腹水形成法等が挙げられる。細胞培養法においては、ハイブリドーマを10〜20%ウシ胎児血清含有RPMI−1640培地、MEM培地、または無血清培地等の動物細胞培養培地中で、通常の培養条件(例えば37℃,5%CO濃度)で2〜14日間培養し、その培養上清から抗体を取得する。腹水形成法においては、ミエローマ細胞由来の哺乳動物と同種の動物の腹腔内にハイブリドーマを投与し、ハイブリドーマを大量に増殖させる。そして、1〜4週間後に腹水または血清を採取する。
【0115】
上記抗体の採取方法において、抗体の精製が必要とされる場合は、硫安塩析法、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどの公知の方法を適宜に選択して、またはこれらを組み合わせることにより精製する。
【0116】
従って、抗原は、抗体と結合したり、Bリンパ球、Tリンパ球などの特異的レセプターに結合して、抗体産生および/または細胞障害などの免疫反応をひきおこす物質(例えば、タンパク質、脂質、糖などが挙げられるがそれらに限定されない)である。ここで、抗体またはリンパ球レセプターとの結合性を、「抗原性」(antigecity)という。抗体産生などの免疫応答を誘導する特性を「免疫原性」(immunogenicity)という。抗原として使用される物質は、例えば、その目的とする物質(例えば、タンパク質)を少なくとも1つ含む。含まれる物質は、全長が好ましいが、免疫を惹起し得るエピトープを少なくとも一つ含んでいれば、部分配列でもよい。本明細書において「エピトープ」または「抗原決定基」とは、抗体またはリンパ球レセプターが結合する抗原分子中の部位をいう。エピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
【0117】
エピトープは、必ずしもその正確な位置および構造が判明していないとしても使用することができる。従って、エピトープには特定の免疫グロブリンによる認識に関与するアミノ酸残基のセット、または、T細胞の場合は、T細胞レセプタータンパク質および/もしくは主要組織適合性複合体(MHC)レセプターによる認識について必要であるアミノ酸残基のセットが包含される。この用語はまた、「抗原決定基」または「抗原決定部位」と交換可能に使用される。免疫系分野において、インビボまたはインビトロで、エピトープは、分子の特徴(例えば、一次ペプチド構造、二次ペプチド構造または三次ペプチド構造および電荷)であり、免疫グロブリン、T細胞レセプターまたはHLA分子によって認識される部位を形成する。ペプチドを含むエピトープは、エピトープに独特な空間的コンフォメーション中に3つ以上のアミノ酸を含み得る。一般に、エピトープは、少なくとも5つのこのようなアミノ酸からなり、代表的には少なくとも6つ、7つ、8つ、9つ、または10のこのようなアミノ酸からなる。エピトープの長さは、より長いほど、もとのペプチドの抗原性に類似することから一般的に好ましいが、コンフォメーションを考慮すると、必ずしもそうでないことがある。アミノ酸の空間的コンフォメーションを決定する方法は、当該分野で公知であり、例えば、X線結晶学、および2次元核磁気共鳴分光法を含む。さらに、所定のタンパク質におけるエピトープの同定は、当該分野で周知の技術を使用して容易に達成される。例えば、Geysenら(1984)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:3998(所定の抗原における免疫原性エピトープの位置を決定するために迅速にペプチドを合成する一般的な方法);米国特許第4,708,871号(抗原のエピトープを同定し、そして化学的に合成するための手順);およびGeysenら(1986)Molecular Immunology 23:709(所定の抗体に対して高い親和性を有するペプチドを同定するための技術)を参照されたい。同じエピトープを認識する抗体は、単純な免疫アッセイにおいて同定され得る。このように、ペプチドを含むエピトープを決定する方法は、当該分野において周知であり、そのようなエピトープは、核酸またはアミノ酸の一次配列が提供されると、当業者はそのような周知慣用技術を用いて決定することができる。
【0118】
従って、ペプチドを含むエピトープとして使用するためには、少なくとも3アミノ酸の長さの配列が必要であり、好ましくは、この配列は、少なくとも4アミノ酸、より好ましくは少なくとも5アミノ酸、少なくとも6アミノ酸、少なくとも7アミノ酸、少なくとも8アミノ酸、少なくとも9アミノ酸、少なくとも10アミノ酸、少なくとも15アミノ酸、少なくとも20アミノ酸、少なくとも25アミノ酸の長さの配列が必要であり得る。エピトープは線状であってもコンフォメーション形態であってもよい。
【0119】
(改変体)
あるアミノ酸は、相互作用結合能力の明らかな低下または消失なしに、例えば、糖鎖結合領域、システイニル化領域、カチオン性領域または基質分子の結合部位のようなタンパク質構造において他のアミノ酸に置換され得る。あるタンパク質の生物学的機能を規定するのは、タンパク質の相互作用能力および性質である。従って、特定のアミノ酸の置換がアミノ酸配列において、またはそのDNAコード配列のレベルにおいて行われ得、置換後もなお、もとの性質を維持するタンパク質が生じ得る。従って、生物学的有用性の明らかな損失なしに、種々の改変が、本明細書において開示されたペプチドまたはこのペプチドをコードする対応するDNAにおいて行われ得る。
【0120】
上記のような改変を設計する際に、アミノ酸の疎水性指数が考慮され得る。タンパク質における相互作用的な生物学的機能を与える際の疎水性アミノ酸指数の重要性は、一般に当該分野で認められている(Kyte.JおよびDoolittle,R.F.J.Mol.Biol.157(1):105−132,1982)。アミノ酸の疎水的性質は、生成したタンパク質の二次構造に寄与し、次いでそのタンパク質と他の分子(例えば、酵素、基質、レセプター、DNA、抗体、抗原など)との相互作用を規定する。各アミノ酸は、それらの疎水性および電荷の性質に基づく疎水性指数を割り当てられる。それらは:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(−0.4);スレオニン(−0.7);セリン(−0.8);トリプトファン(−0.9);チロシン(−1.3);プロリン(−1.6);ヒスチジン(−3.2);グルタミン酸(−3.5);グルタミン(−3.5);アスパラギン酸(−3.5);アスパラギン(−3.5);リジン(−3.9);およびアルギニン(−4.5))である。
【0121】
あるアミノ酸を、同様の疎水性指数を有する他のアミノ酸により置換して、そして依然として同様の生物学的機能を有するタンパク質(例えば、酵素活性において等価なタンパク質)を生じさせ得ることが当該分野で周知である。このようなアミノ酸置換において、疎水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。疎水性に基づくこのようなアミノ酸の置換は効率的であることが当該分野において理解される。
【0122】
親水性指数もまた、本発明のアミノ酸配列を改変するのに有用である。米国特許第4,554,101号に記載されるように、以下の親水性指数がアミノ酸残基に割り当てられている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパラギン酸(+3.0±1);グルタミン酸(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);スレオニン(−0.4);プロリン(−0.5±1);アラニン(−0.5);ヒスチジン(−0.5);システイン(−1.0);メチオニン(−1.3);バリン(−1.5);ロイシン(−1.8);イソロイシン(−1.8);チロシン(−2.3);フェニルアラニン(−2.5);およびトリプトファン(−3.4)。アミノ酸が同様の親水性指数を有しかつ依然として生物学的等価体を与え得る別のものに置換され得ることが理解される。このようなアミノ酸置換において、親水性指数が±2以内であることが好ましく、±1以内であることがより好ましく、および±0.5以内であることがさらにより好ましい。
【0123】
本発明において、「保存的置換」とは、アミノ酸置換において、元のアミノ酸と置換されるアミノ酸との親水性指数または/および疎水性指数が上記のように類似している置換をいう。保存的置換の例は、当業者に周知であり、例えば、次の各グループ内での置換:アルギニンおよびリジン;グルタミン酸およびアスパラギン酸;セリンおよびスレオニン;グルタミンおよびアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、およびイソロイシン、などが挙げられるがこれらに限定されない。
【0124】
本明細書において「改変体」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの物質に対して、一部が変更されているものをいう。そのような改変体としては、置換改変体、付加改変体、欠失改変体、短縮(truncated)改変体、対立遺伝子変異体などが挙げられる。対立遺伝子(allele)とは、同一遺伝子座に属し、互いに区別される遺伝的改変体のことをいう。従って、「対立遺伝子変異体」とは、ある遺伝子に対して、対立遺伝子の関係にある改変体をいう。「種相同体またはホモログ(homolog)」とは、ある種の中で、ある遺伝子とアミノ酸レベルまたはヌクレオチドレベルで、相同性(好ましくは、60%以上の相同性、より好ましくは、80%以上、85%以上、90%以上、95%以上の相同性)を有するものをいう。そのような種相同体を取得する方法は、本明細書の記載から明らかである。「オルソログ(ortholog)」とは、オルソロガス遺伝子(orthologous gene)ともいい、二つの遺伝子がある共通祖先からの種分化に由来する遺伝子をいう。例えば、多重遺伝子構造をもつヘモグロビン遺伝子ファミリーを例にとると、ヒトとマウスのαヘモグロビン遺伝子はオルソログであるが,ヒトのαヘモグロビン遺伝子とβヘモグロビン遺伝子はパラログ(遺伝子重複で生じた遺伝子)である。
【0125】
本明細書において「保存的(に改変された)改変体」は、アミノ酸配列および核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、保存的に改変された改変体とは、同一のまたは本質的に同一のアミノ酸配列をコードする核酸をいい、核酸がアミノ酸配列をコードしない場合には、本質的に同一な配列をいう。遺伝コードの縮重のため、多数の機能的に同一な核酸が任意の所定のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG、およびGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンにより特定される全ての位置で、そのコドンは、コードされたポリペプチドを変更することなく、記載された対応するコドンの任意のものに変更され得る。このような核酸の変動は、保存的に改変された変異の1つの種である「サイレント改変(変異)」である。ポリペプチドをコードする本明細書中のすべての核酸配列はまた、その核酸の可能なすべてのサイレント変異を記載する。当該分野において、核酸中の各コドン(通常メチオニンのための唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンのための唯一のコドンであるTGGを除く)が、機能的に同一な分子を産生するために改変され得ることが理解される。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載された各配列において暗黙に含まれる。好ましくは、そのような改変は、ポリペプチドの高次構造に多大な影響を与えるアミノ酸であるシステインの置換を回避するようになされ得る。
【0126】
本明細書中において、機能的に等価なポリペプチドを作製するために、アミノ酸の置換のほかに、アミノ酸の付加、欠失、または修飾もまた行うことができる。アミノ酸の置換とは、もとのペプチドを1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸で置換することをいう。アミノ酸の付加とは、もとのペプチド鎖に1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を付加することをいう。アミノ酸の欠失とは、もとのペプチドから1つ以上、例えば、1〜10個、好ましくは1〜5個、より好ましくは1〜3個のアミノ酸を欠失させることをいう。アミノ酸修飾は、アミド化、カルボキシル化、硫酸化、ハロゲン化、アルキル化、グリコシル化、リン酸化、水酸化、アシル化(例えば、アセチル化)などを含むが、これらに限定されない。置換、または付加されるアミノ酸は、天然のアミノ酸であってもよく、非天然のアミノ酸、またはアミノ酸アナログでもよい。天然のアミノ酸が好ましい。
【0127】
本明細書において、ポリペプチドまたはポリヌクレオチドの「置換、付加または欠失」とは、もとのポリペプチドまたはポリヌクレオチドに対して、それぞれアミノ酸もしくはその代替物、またはヌクレオチドもしくはその代替物が、置き換わること、付け加わることまたは取り除かれることをいう。このような置換、付加または欠失の技術は、当該分野において周知であり、そのような技術の例としては、部位特異的変異誘発技術などが挙げられる。置換、付加または欠失は、1つ以上であれば任意の数でよく、そのような数は、その置換、付加または欠失を有する改変体において目的とする機能(例えば、マーカーなど)が保持される限り、多くすることができる。例えば、そのような数は、1または数個であり得、そして好ましくは、全体の長さの20%以内、10%以内、または100個以下、50個以下、25個以下などであり得る。
【0128】
本明細書において「誘導体」は、上記のような「改変体」に対しても存在し得る。
【0129】
(診断方法)
本明細書において「診断」とは、被検体における疾患、障害、状態などに関連する種々のパラメータを同定し、そのような疾患、障害、状態の現状または未来を判定することをいう。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、体内の状態を調べることができ、そのような情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。本明細書において、狭義には、「診断」は、現状を診断することをいうが、広義には「事前診断
を含む。また、本明細書では、インターフェロンなどの薬剤の有効性を「判定」することも「診断」と同義で用いられる。
【0130】
本明細書において特に、「事前診断」とは、インターフェロンが有効な疾患に対してインターフェロンが有効かどうかを判定について言及する場合、糖尿病の発症前の段階を検出することをいい、将来の発症リスクを判定すること、糖尿病の予防を目的として糖尿病に罹患するおそれの有無を判定することを含む。本発明の方法、装置、システムを用いることによって、体内の状態を事前に調べることができ、そのような情報を用いて、被検体における疾患、障害、状態、投与すべき処置または予防のための処方物または方法などの種々のパラメータを選定することができる。
【0131】
本発明の診断方法は、原則として、身体から出たものを利用することができることから、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることから、産業上有用である。本明細書において、医師などの医療従事者の手を離れて実施することができることを明確にするために、特に「事前診断もしくは診断を支援」すると称することがある。
【0132】
本明細書において「治療」とは、ある疾患または障害について、そのような状態になった場合に、そのような疾患または障害の悪化を防止、好ましくは、現状維持、より好ましくは、軽減、さらに好ましくは消退させることをいう。
【0133】
本発明のインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する方法においては、マーカー物質として、血液中のこれら2種の血清タンパク質のうちの少なくとも1種の濃度を測定する。そして、その測定値を健常値と比較することにより、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する。本発明のインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する方法においては、2種のマーカー物質の一部だけの濃度を測定してもよいし、2種(またはその誘導体を含め)全部の濃度を測定してもよい。特に、全部のマーカー物質の濃度を測定する場合は、マルチマーカーシステムを組んで多方面からインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定することができ、診断の精度が高い。また、これら3種の血清タンパク質はいずれも健常者の血液中にも存在しているので、その濃度の変動をモニタリングすることにより、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定することもできる。
【0134】
本明細書において「インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する」とは、C型肝炎などのインターフェロン療法が有効な疾患に罹患した患者に対して、インターフェロン療法が有効であるか否かを判定することのみならず、インターフェロン療法が有効な疾患の予防を目的としてインターフェロン療法が有効な疾患に罹患するおそれのある被験体において、インターフェロン療法が有効であるか否かを判定することも含む。
【0135】
ここで、各マーカー物質における質量/電荷比(以下、「M/Z」と略記することもある。)の「約5880」、「約5890」、「約6890」等の値は、質量分析における測定値の誤差範囲を考慮した値であり、概ね±0.2%の幅を有する。他の質量/電荷比についても全く同様に、概ね±0.2%の幅を有する。また、これらのマーカー物質はいずれも主に血液中に存在するタンパク質である。マーカー物質(a)と(b)は、インターフェロン療法が有効でないC型肝炎患者の体液において、高値を示す。また、マーカー物質(c)は、インターフェロン療法が有効でないC型肝炎患者の体液において、低値を示す。13926は誘導体を含むTTRピーク群の最大ピークであり、Cys化TTRと思われる。6870は非修飾TTRであり、TTRピーク群の一番左の小さいピークに相当し、約13700である。ただし、ピーク群全体で同じ増減をしていることから、誘導体を含むTTRを指標とすることができる。
【0136】
本発明の疾病の診断方法の好ましい実施形態においては、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を使用する。そして、該担体に体液または体液成分を接触させて、体液または体液成分に含まれるマーカー物質を、マーカー物質に対する親和性を有する物質を介して担体上に捕捉し、捕捉されたマーカー物質の量に基づいて体液中のマーカー物質の濃度を算出する。本発明の判定方法によれば、担体上に捕捉されたマーカー物質を測定対象とするので、測定試料中に含まれる夾雑物質の影響を低減させることができ、より高感度かつ高精度でマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、体液成分の例としては、体液が血液である場合の血清または血漿が挙げられる。
【0137】
本発明の判定方法の好ましい実施形態では、平面部分を有する担体を用い、マーカー物質に対する親和性を有する物質は該平面部分の一部に固定化されている。かかる構成により、マーカー物質に対する親和性を有する物質を、担体上の複数箇所にスポット的に固定化することができる。その結果、1個の担体で複数の測定試料を同時処理することや、1個の担体で複数のマーカー物質の濃度を同時測定することが可能となり、作業効率がよい。さらに、各スポットの面積を小さくすることにより、微量の測定試料からでもマーカー物質の濃度を測定することができる。なお、平面部分を有する担体の例としては、チップ等の基板が挙げられる。
【0138】
本発明の判定方法の好ましい実施形態においては、マーカー物質に対する親和性を有する物質としてイオン交換体、金属キレート体または抗体を用い、イオン交換体、金属キレート体または抗体を介して測定試料中のマーカー物質を担体上に捕捉する。当該物質がイオン交換体または金属キレート体の場合は各種のものが入手容易であり、マーカー物質を捕捉するための担体を容易に調製することができる。また、当該物質が抗体の場合は、より特異的にマーカー物質を捕捉することができる。捕捉されたマーカー物質の量を測定する方法としては、質量分析、イムノアッセイ(抗体の場合)が挙げられる。
【0139】
(システム)
本明細書において、「システム」とは、診断するための任意の系をいい、一般に、1または複数の構成要素からなり、複数の構成要素がある場合それらの要素は互いに作用・関連し合っており、全体として調和のとれた挙動・機能を示すという3条件を満足する系をいう。システムは、装置、組成物、診断薬など任意の形態であり得る。従って、システムは、例えば、測定装置を備える大掛かりなシステムから、クロマトグラフィーを備えるシステム、免疫反応を利用したキット、抗体を含む組成物(すなわち、マーカー物質のモノクローナル抗体を含む、体外医薬品である診断薬)などを包含することが理解される。
【0140】
(スクリーニング)
本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
【0141】
本明細書において「スクリーニング」とは、目的とするある特定の性質をもつ生物または物質などの標的を、特定の操作/評価方法で多数を含む集団の中から選抜することをいう。スクリーニングのために、本発明の因子(例えば、抗体)、ポリペプチドまたは核酸分子を使用することができる。スクリーニングは、インビトロ、インビボなど実在物質を用いた系を使用してもよく、インシリコ(コンピュータを用いた系)の系を用いて生成されたライブラリーを用いてもよい。本発明では、所望の活性を有するスクリーニングによって得られた化合物もまた、本発明の範囲内に包含されることが理解される。また本発明では、本発明の開示をもとに、コンピュータモデリングによる薬物が提供されることも企図される。
【0142】
1実施形態において、本発明は、本発明のタンパク質または本発明のポリペプチド、あるいはその生物学的に活性な部分に結合するか、またはこれらの活性を調節する、候補化合物もしくは試験化合物をスクリーニングするためのアッセイを提供する。本発明の試験化合物は、当該分野において公知のコンビナトリアルライブラリー法における多数のアプローチの任意のものを使用して得られ得、これには、以下が挙げられる:生物学的ライブラリー;空間的にアクセス可能な平行固相もしくは溶液相ライブラリー;逆重畳を要する合成ライブラリー法;「1ビーズ1化合物」ライブラリー法;およびアフィニティークロマトグラフィー選択を使用する合成ライブラリー法。生物学的ライブラリーアプローチはペプチドライブラリーに限定されるが、他の4つのアプローチは、ペプチド、非ペプチドオリゴマーもしくは化合物の低分子ライブラリーに適用可能である(Lam(1997)Anticancer Drug Des.12:145)。
【0143】
分子ライブラリーの合成のための方法の例は、当該分野において、例えば以下に見出され得る:DeWittら(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6909;Erbら(1994)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 91:11422;Zuckermannら(1994)J.Med.Chem 37:2678;Choら(1993)Science 261:1303;Carrellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2059;Carrellら(1994)Angew Chem.Int.Ed.Engl.33:2061;およびGallopら(1994)J.Med.Chem 37:1233。
【0144】
化合物のライブラリーは、溶液中で(例えば、Houghten(1992)BioTechniques 13:412〜421)、あるいはビーズ上(Lam(1991)Nature 354:82〜84)、チップ上(Fodor(1993)Nature 364:555〜556)、細菌(Ladner 米国特許第5,223,409号)、胞子(Ladner、上記)、プラスミド(Cullら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1865〜1869)またはファージ上(ScottおよびSmith(1990)Science 249:386〜390;Devlin(1990)Science 249:404〜406;Cwirlaら(1990)Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.87:6378〜6382;Felici(1991)J Mol Biol 222:301〜310;Ladner上記)において示され得る。
【0145】
本発明は、他の実施形態において、本発明の活性成分(例えば、ポリペプチドまたは核酸)と同等に有効な因子をスクリーニングするための道具として、コンピュータによる定量的構造活性相関(quantitative structure activity relationship=QSAR)モデル化技術を使用して得られる化合物もまた、本発明に包含される。ここで、コンピュータ技術は、いくつかのコンピュータによって作成した基質鋳型、ファーマコフォア、ならびに本発明の活性部位の相同モデルの作製などを包含する。一般に、インビトロで得られたデータから、ある物質に対する相互作用物質の通常の特性基をモデル化することに対する方法は、CATALYSTTM ファーマコフォア法(Ekins et al.、Pharmacogenetics,9:477〜489,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,288:21〜29,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,290:429〜438,1999;Ekins et al.、J.Pharmacol.& Exp.Ther.,291:424〜433,1999)および比較分子電界分析(comparative molecular field analysis;CoMFA)(Jones et al.、Drug Metabolism & Disposition,24:1〜6,1996)などを使用して示されている。本発明において、コンピュータモデリングは、分子モデル化ソフトウェア(例えば、CATALYSTTMバージョン4(Molecular Simulations,Inc.,San Diego,CA)など)を使用して行われ得る。
【0146】
活性部位に対する化合物のフィッティングは、当該分野で公知の種々のコンピュータモデリング技術のいずれかを使用してで行うことができる。視覚による検査および活性部位に対する化合物のマニュアルによる操作は、QUANTA(Molecular Simulations,Burlington,MA,1992)、SYBYL(Molecular Modeling Software,Tripos Associates,Inc.,St.Louis,MO,1992)、AMBER(Weiner et al.、J.Am.Chem.Soc.,106:765−784,1984)、CHARMM(Brooks et al.、J.Comp.Chem.,4:187〜217,1983)などのようなプログラムを使用して行うことができる。これに加え、CHARMM、AMBERなどのような標準的な力の場を使用してエネルギーの最小化を行うこともできる。他のさらに特殊化されたコンピュータモデリングは、GRID(Goodford et al.、J.Med.Chem.,28:849〜857,1985)、MCSS(Miranker and Karplus,Function and Genetics,11:29〜34,1991)、AUTODOCK(Goodsell and Olsen,Proteins:S tructure,Function and Genetics,8:195〜202,1990)、DOCK(Kuntz et al.、J.Mol.Biol.,161:269〜288,(1982))などを含む。さらなる構造の化合物は、空白の活性部位、既知の低分子化合物における活性部位などに、LUDI(Bohm,J.Comp.Aid.Molec.Design,6:61〜78,1992)、LEGEND(Nishibata and Itai,Tetrahedron,47:8985,1991)、LeapFrog(Tripos Associates,St.Louis,MO)などのようなコンピュータプログラムを使用して新規に構築することもできる。このようなモデリングは、当該分野において周知慣用されており、当業者は、本明細書の開示に従って、適宜本発明の範囲に入る化合物を設計することができる。
【0147】
本発明は、このようなスクリーニング方法によって得られた物質も提供する。
【0148】
(投与・注入・医薬)
本発明のスクリーニング方法によって得られた物質を含む組成物は、生物への移入に適した形態であれば、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。投与経路としては経口投与、非経口投与、患部への直接投与などが挙げられる。
【0149】
本明細書において「キット」とは、通常2つ以上の区画に分けて、提供されるべき部分(例えば、抗体、標識など)が提供されるユニットをいう。混合されて提供されるべきでなく、使用直前に混合して使用することが好ましいような組成物の提供を目的とするときに、このキットの形態は好ましい。そのようなキットは、好ましくは、提供される部分(例えば、試薬をどのように処理すべきかを記載する指示書または説明書を備えていることが有利である。本明細書においてキットが試薬キットとして使用される場合、キットには、通常、抗体の使い方などを記載した指示書などが含まれる。
【0150】
本明細書において「指示書」は、本発明の医薬などを投与する方法を医師、患者など投与を行う人に対する説明を記載したものである。この指示書は、本発明の診断薬の使い方、または医薬などを投与することを指示する文言が記載されている。また、指示書には、投与部位として、骨格筋に投与(例えば、注射などによる)することを指示する文言が記載されていてもよい。この指示書は、本発明が実施される国の監督官庁(例えば、日本であれば厚生労働省、米国であれば食品医薬品局(FDA)など)が規定した様式に従って作成され、その監督官庁により承認を受けた旨が明記される。指示書は、いわゆる添付文書(package insert)であり、通常は紙媒体で提供されるが、それに限定されず、例えば、電子媒体(例えば、インターネットで提供されるホームページ、電子メール)のような形態でも提供され得る。
【0151】
本明細書において「被験体」とは、本発明の処置が適用される生物をいい、「患者」ともいわれる。患者または被験体は好ましくは、ヒトであり得る。
【0152】
本明細書において「生体内」または「インビボ」(in vivo)とは、生体の内部をいう。特定の文脈において、「生体内」は、目的とする物質が配置されるべき位置をいう。
【0153】
本明細書において「インビトロ」とは、種々の研究目的のために生体の一部分が「生体外に」(例えば、試験管内に)摘出または遊離されている状態をいう。インビボと対照をなす用語である。
【0154】
本明細書において「エキソビボ」とは、遺伝子導入を行うための標的細胞を被験体より抽出し、インビトロで治療遺伝子または因子を導入した後に、再び同一被験体に戻す場合、一連の動作をエキソビボという。
【0155】
本発明において使用されるポリペプチド、核酸、医薬ならびにそのようなポリペプチドまたは核酸によって調製された組成物は、生物への移入に適した形態であれば、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。投与方法は、経口投与、非経口投与(例えば、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、粘膜投与、直腸内投与、膣内投与、患部への局所投与、皮膚投与など)、患部への直接投与などが挙げられる。そのような投与のための処方物は、任意の製剤形態で提供され得る。そのような製剤形態としては、例えば、液剤、注射剤、徐放剤が挙げられる。本発明の組成物および医薬は、全身投与されるとき、発熱物質を含ない、経口的に受容可能な水溶液の形態であり得る。そのような薬学的に受容可能なタンパク質溶液の調製は、pH、等張性、安定性などに相当な注意を払うことを条件として、当業者の技術範囲内である。
【0156】
本発明において医薬の処方のために使用される溶媒は、水性または非水性のいずれかの性質を有し得る。さらに、そのビヒクルは、処方物の、pH、容量オスモル濃度、粘性、明澄性、色、滅菌性、安定性、等張性、崩壊速度、または臭いを改変または維持するための他の処方物材料を含み得る。同様に、本発明の組成物は、有効成分の放出速度を改変または維持するため、または有効成分の吸収もしくは透過を促進するための他の処方物材料を含み得る。
【0157】
本発明の製剤の処方手順は、当該分野において公知であり、例えば、日本薬局方、米国薬局方、他の国の薬局方などに記載されている。従って、当業者は、本明細書の記載があれば、過度な実験を行うことなく、投与すべき量を決定することができる。
【0158】
(好ましい実施形態)
以下に本発明の好ましい実施形態を説明する。以下に提供される実施形態は、本発明のよりよい理解のために提供されるものであり、本発明の範囲は以下の記載に限定されるべきでないことが理解される。従って、当業者は、本明細書中の記載を参酌して、本発明の範囲内で適宜改変を行うことができることは明らかである。
【0159】
(診断システム)
1つの局面において、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定(診断または事前診断)するためのシステムを提供する。
【0160】
ある具体的な局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのシステムまたは組成物を提供する。
【0161】
ある具体的な局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質に特異的に相互作用する因子を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのシステムまたは組成物を提供する。
【0162】
ある具体的な局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質を選択的に認識する手段を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのシステムを提供する。
【0163】
ある具体的な局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのシステムまたは組成物を提供する。
【0164】
ある具体的な局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質に特異的に相互作用する因子を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのシステムまたは組成物を提供する。
【0165】
ある具体的な局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質を選択的に認識する手段を含む、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのシステムを提供する。
【0166】
これらの組成物またはシステムは、上記マーカー物質を同定することができる限り、任意の被験体由来のサンプル中のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段を用いることができることが理解され得る。従って、本明細書において具体的に記載された因子または手段のみならず、当該分野において公知の任意の等価の因子または手段を用いることができることが理解される。
【0167】
1つの実施形態において、使用されるマーカー物質は、前記被験体の体液、好ましくは血液中に存在するものであることが特徴である。理論に束縛されることを望まないが、体液であれば、取り出した後処理が簡便であり、大量の診断または診断支援が可能であるからである。理論に束縛されることを望まないが、血液が好ましいのは、本発明のマーカー物質の挙動が顕著に反映されるからである。
【0168】
1つの実施形態では、本発明において使用されるマーカー物質は、遺伝子産物であることが特徴である。特に、この遺伝子産物は、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するのに直接関連することがこれまで知られていなかったものであることが好ましい。なぜなら、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するのに直接関連することが知られていないマーカーでも、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するためのマーカー物質として判定、診断または事前診断が可能になることは、これまで知られておらず、簡便、早期にインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定することが可能になるからである。また、本発明において同定されたマーカー物質は、モデル動物においてもマーカーとなることが示されており、ヒトにおいて経験的に見出されてきたマーカーのように、多数の病因によって変動し得、従って、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するにおいて反応性のみに起因するかどうかが不明であったものが多いところ、本発明のマーカー物質では、そのような不明確性は無い。なぜなら、本発明のマーカー物質は、プロテインチップによる網羅解析の結果見出されたものであり、かつ、モデル動物における確認も行っているからである。
【0169】
具体的な実施形態では、本発明において用いられるマーカー物質は、トランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AIおよびアポリポタンパク質AI誘導体、ならびにこれらに対応するタンパク質からなる群より選択される、1またはそれより多い物質を含む。好ましくは、2以上、3以上、あるいはそれより多い数のマーカー物質(特に、各々、誘導体と対を成しているものを1群とみなしたとき、異なる群から選択される複数のマーカー物質)を含むことが有利である。マルチマーカーシステムとして、より精確な診断を行うことが可能であり、確定診断をも可能にするからである。
【0170】
1つの実施形態では、本発明において使用される因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択され、好ましくは、因子は、タンパク質または複合分子(例えば、糖タンパク質、脂質タンパク質など)である。好ましくは、因子は、抗体(例えば、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体)である。このような因子は、標識されるか、または標識可能であることが好ましい。なぜなら、診断することが容易となるからである。
【0171】
本明細書において「標識」とは、目的となる分子または物質を他から識別するための存在(たとえば、物質、エネルギー、電磁波など)をいう。そのような標識方法としては、RI(ラジオアイソトープ)法、蛍光法、ビオチン法、化学発光法等を挙げることができる。上記の核酸断片および相補性を示すオリゴヌクレオチドを何れも蛍光法によって標識する場合には、蛍光発光極大波長が互いに異なる蛍光物質によって標識を行う。蛍光発光極大波長の差は、10nm以上であることが好ましい。蛍光物質としては、核酸の塩基部分と結合できるものであれば何れも用いることができるが、シアニン色素(例えば、CyDyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、ローダミン6G試薬、N−アセトキシ−N2−アセチルアミノフルオレン(AAF)、AAIF(AAFのヨウ素誘導体)等を使用することが好ましい。蛍光発光極大波長の差が10nm以上である蛍光物質としては、例えば、Cy5とローダミン6G試薬との組み合わせ、Cy3とフルオレセインとの組み合わせ、ローダミン6G試薬とフルオレセインとの組み合わせ等を挙げることができる。本発明では、このような標識を利用して、使用される検出手段に検出され得るように目的とする対象を改変することができる。そのような改変は、当該分野において公知であり、当業者は標識におよび目的とする対象に応じて適宜そのような方法を実施することができる。
【0172】
本発明の好ましい実施形態において、使用される手段は、質量分析装置、核磁気共鳴測定装置、X線解析装置、SPR、クロマトグラフィー(例えば、HPLC、薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー)、免疫学的手段(例えば、ウェスタンブロッティング、ELISA、RIA)、生化学的手段(例えば、pI電気泳動、サザンブロッティング、二次元電気泳動)、電気泳動機器、化学的分析機器、蛍光二次元ディファレンシャル電気泳動法(2DE−DIGE)、同位体標識法(ICAT)、タンデムアフィニティ精製法(TAP法)、物理学的手段、レーザーマイクロダイセクションおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される。
【0173】
本発明の好ましい実施形態では、本発明のシステムは、さらに、マーカー物質の標準を含む。このような標準は、マーカー物質の検出手段(該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段など)が正常に機能しているかどうかを確認するために用いることが好ましい。
【0174】
好ましい実施形態では、本発明では、対象となるサンプルを精製する手段をさらに備え得る。このような精製手段としては、例えば、クロマトグラフィーなどを挙げることができる。精製することによって、診断の精度を上げることができることから、好ましい実施形態において使用され得るが、これは必須ではない。
【0175】
本発明において、被験体は、哺乳動物を含み、1つの実施形態では、被験体は、齧歯類を含む。このような齧歯類(例えば、ラット、マウスなど)は、モデル動物、特に、糖尿病のモデル動物が作製されていることから好ましい。好ましい実施形態では、被験体は、ヒトを含む。
【0176】
1つの実施形態では、本発明において使用される因子または手段は、本発明のマーカー物質の定量をする能力を有する。このような定量は、標準曲線を描いたときに、検量線がきちんと描ける手段または因子であるものがよい。好ましくは、例えば、抗体、質量分析、クロマトグラフィー分析などを挙げることができる。従って、ある実施形態では、本発明のシステムは、マーカー物質の定量を行うための定量手段をさらに備える。
【0177】
1つの実施形態では、定量手段は、標準曲線と測定結果とを比較して前記マーカー物質が正常値の範囲内かどうかを判定する判定手段を含む。このような判定手段は、コンピュータを用いて実現することができる。
【0178】
1つの実施形態では、本発明のシステムは、マーカー物質またはマーカー物質に特異的に相互作用する前記因子を含む組成物である。
【0179】
(トランスサイレチン関連)
1つの局面では、本発明のシステムにおいて対象となるマーカー物質は、トランスサイレチンおよびトランスサイレチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含み、該トランスサイレチン誘導体は、S−システイニルトランスサイレチン、グルタチオン化トランスサイレチン、S−S結合形成トランスサイレチン、酸化(例えば、メチオニン側鎖の酸化)トランスサイレチン、ホルミル化トランスサイレチン、アセチル化トランスサイレチン、リン酸化トランスサイレチン、糖鎖付加トランスサイレチン、ミリスチル化トランスサイレチンなどを挙げることができる。特に、S−システイニルトランスサイレチンであることが好ましい。
【0180】
従って、1つの実施形態では、トランスサイレチンの減少およびトランスサイレチン誘導体の減少からなる群より選択される少なくとも1つの現象は、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であることの指標である。
【0181】
好ましくは、トランスサイレチンの減少およびトランスサイレチン誘導体の減少の両方は、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効である程度、または将来のインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効である指標であり得る。このような指標は、本明細書の記載に基づいて当業者が決定することができることが理解される。
【0182】
具体的な実施形態では、本発明において対象となるトランスサイレチンは、配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列によってコードされるか、または配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、あるいは、これらの改変配列を有する。
【0183】
別の実施形態では、本発明において対象となるトランスサイレチン誘導体は、配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、または配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列における、それぞれ、30位(成熟形態では10位)のシステインまたはそれに対応するシステインがシステイニル化されている誘導体であるか、あるいは、これらの改変配列を有し得る。
【0184】
1つの実施形態では、本発明において使用される因子または手段は、トランスサイレチンの単量体と四量体との区別をする能力を有する。
【0185】
別の実施形態では、本発明において使用される因子または手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの区別をする能力を有する(例えば、抗体)。このような能力を有する因子または手段は、例えば、抗体であれば、抗体のライブラリーを作製し、さらに、そのライブラリーの中から、トランスサイレチンまたはS−システイニルトランスサイレチンのいずれか一方に特異的に(好ましくは、選択的に)反応するものを選択することによって作製することができ、このような技術は、当該分野において周知技術を用いて達成することができる。抗体以外でも同様に、当該分野において周知技術を用いて達成することができる。
【0186】
好ましい実施形態では、本発明における因子または手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを認識し、かつ、本発明のシステムはトランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを識別する手段をさらに備える。例えば、抗体+電気泳動などの分子量等での識別手段の組み合わせを提供することによって、トランスサイレチン類は同定するが、誘導体とそれ以外とを識別するために電気泳動または質量分析などを利用することで識別を達成することができることが理解される。このような技術は、当該分野において周知技術を用いて達成することができる。
【0187】
好ましい実施形態では、本発明における因子または手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを認識し、本発明のシステムはトランスサイレチンの分子量とS−システイニルトランスサイレチンの分子量とを識別する手段、およびトランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの相対比を測定する手段をさらに備える。このようなシステムを提供することによって、本発明は、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定することができる。
【0188】
(アポリポタンパク質AI)
好ましい局面では、本発明のシステムにおいて用いられるマーカー物質は、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AI誘導体を含み、該アポリポタンパク質AI誘導体は、プロアポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質フラグメント(5.9kDa=配列番号6の192位チロシン〜243位グルタミン)などを挙げることができる。
【0189】
1つの実施形態では、アポリポタンパク質AIの減少およびアポリポタンパク質AI誘導体の変動からなる群より選択される少なくとも1つの現象が、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であることの指標であり得る。
【0190】
1つの実施形態では、アポリポタンパク質AIの減少およびアポリポタンパク質AI誘導体の変動からなる群より選択される少なくとも1つの現象が、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する指標であり得る。
【0191】
具体的な実施形態では、本発明において対象となるアポリポタンパク質AIは、配列番号5もしくは配列番号7に示される核酸配列によってコードされるか、または配列番号6もしくは配列番号8に示されるアミノ酸配列、あるいは、これらの改変配列を有する。
【0192】
別の実施形態では、本発明において対象となるプロアポリポタンパク質AIは、上記配列においてリード配列が結合したものであり得る。あるいは、本発明において対象となるアポリポタンパク質AIは、アポリポタンパク質AIフラグメントであり得る。
【0193】
1つの実施形態では、本発明において使用される因子または手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有する(例えば、抗体)。このような能力を有する因子または手段は、例えば、抗体であれば、抗体のライブラリーを作製し、さらに、そのライブラリーの中から、アポリポタンパク質AIを特異的に(好ましくは、選択的に)反応するものを選択することによって作製することができ、このような技術は、当該分野において周知技術を用いて達成することができる。抗体以外でも同様に、当該分野において周知技術を用いて達成することができる。
【0194】
好ましい実施形態では、本発明における因子または手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有し、かつ、システムは該アポリポタンパク質AIを定量する手段を備える。このようなシステムを提供することによって、本発明は、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定することができる。
【0195】
(診断方法)
1つの局面において、本発明は、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定(事前診断もしくは診断など)するため、または該判定を支援するための方法であって、A)該被験体由来のサンプル中のマーカー物質を測定する工程;およびB)該測定結果から、該被験体がインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを決定する工程、を包含する、方法を提供する。ここで、サンプルの取得は、どのような手段であっても良い。通常、医師以外の担当者が測定に従事する場合は、何らかの形で医師が取得したものであり得る。測定結果から、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを決定する工程は、正常値と比べて、各々のマーカー物質に比較して異常であるかどうかを判定することによって実施することができる。
【0196】
本発明の方法において、使用されるマーカー物質などは、上記(システム)、(トランスサイレチン)、(アポリポタンパク質AI)、の項において記載される任意の1または複数の特徴を矛盾することがない限り有していても良いことが理解される。
【0197】
(使用)
1つの局面において、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段の、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するための医薬の製造における、使用を提供する。ここで、サンプルの取得は、どのような手段であっても良い。通常、医師以外の担当者が測定に従事する場合は、何らかの形で医師が取得したものであり得る。測定結果から、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを決定する工程は、正常値と比べて、各々のマーカー物質に比較して異常であるかどうかを判定することによって実施することができる。
【0198】
本発明の方法において、使用されるマーカー物質などは、上記(システム)、(トランスサイレチン)、(アポリポタンパク質AI)の項において記載される任意の1または複数の特徴を矛盾することがない限り有していても良いことが理解される。
【0199】
別の局面では、本発明は、被験体由来のサンプル中のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段の、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定するための使用を提供する。ここで、サンプルの取得は、どのような手段であっても良い。通常、医師以外の担当者が測定に従事する場合は、何らかの形で医師が取得したものであり得る。測定結果から、インターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する工程は、正常値と比べて、各々のマーカー物質に比較して異常であるかどうかを判定することによって実施することができる。
【0200】
本発明の方法において、使用されるマーカー物質などは、上記(システム)、(トランスサイレチン)、(アポリポタンパク質AI)、の項において記載される任意の1または複数の特徴を矛盾することがない限り有していても良いことが理解される。
【0201】
(さらなる説明)
本発明のインターフェロン療法が有効な疾患に対してインターフェロン療法が有効であるか否かを判定する方法において、マーカー物質の濃度を測定する方法は、そのマーカー物質の濃度を特異的に測定できる方法であれば、タンパク質の定量に一般に用いられている方法をそのまま用いることができる。例えば、各種のイムノアッセイ、質量分析(MS)、クロマトグラフィー、電気泳動等を用いることができる。
【0202】
イムノアッセイによれば、夾雑物質の多い試料のままでも正確にマーカー物質の濃度を測定することが出来る。イムノアッセイの例としては、抗原抗体結合物を直接的または間接的に測定する沈降反応、凝集反応、溶血反応などの古典的な方法や、標識法と組み合わせて検出感度を高めたエンザイムイムノアッセイ(EIA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光イムノアッセイ(FIA)等の方法が挙げられる。なお、これらのイムノアッセイに用いるマーカー物質に特異的な抗体は、モノクローナルでもよいし、ポリクローナルでもよい。
【0203】
質量分析によってマーカー物質の濃度を測定する場合のイオン化の方法としては、マトリクス支援レーザーイオン化(matrix−assisted laser desorption/ionization、MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)のいずれも適用可能であるが、多価イオンの生成が少ないMALDIが好ましい。特に、飛行時間質量分析計(time−of−flight mass spectromer、TOF)と組み合わせたMALDI−TOF−MSによれば、より正確にマーカー物質の濃度を測定することができる。さらに、2台の質量分析計を用いたMS/MSによれば、より正確にマーカー物質の濃度を測定することができる。
【0204】
電気泳動によりマーカー物質の濃度を測定する場合は、例えば、検査材料をSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)に供して目的のマーカー物質を分離し、適宜の色素や蛍光物質でゲルを染色し、目的のマーカー物質に相当するバンドの濃さや蛍光強度を測定すればよい。SDS−PAGEだけではマーカー物質の分離が不十分な場合は、等電点電気泳動(IEF)と組み合わせた2次元電気泳動を用いることもできる。さらに、ゲルから直接検出するのではなく、ウエスタンブロッティングを行って膜上のマーカー物質の量を測定することもできる。
【0205】
クロマトグラフィーによってマーカー物質の濃度を測定する場合は、例えば、液体高速クロマトグラフィー(HPLC)による方法を用いることができる。すなわち、試料をHPLCに供して目的のマーカー物質を分離し、そのクロマトグラムのピーク面積を測定することにより試料中のマーカー物質の濃度を測定することができる。
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法は、患者体液における下記マーカー物質(a)〜(c)の少なくとも1個の濃度を指標とする。
(a)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5880のイオンピークを生じるタンパク質、
(b)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5890のイオンピークを生じるタンパク質、
(c)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、有機溶媒で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6870のイオンピークを生じるタンパク質。
【0206】
これらのマーカー物質は、いずれもインターフェロン療法が有効である患者と有効でない患者との間で、体液中における濃度が有意に差があるタンパク質であ る。すなわち、マーカー物質(a)と(b)は、インターフェロン療法が有効でない患者において有意に高値を示し、マーカー物質(c)は、インターフェロン療法が有効でない患者において有意に低値を示す。
【0207】
好ましくは、マーカー物質(a)またはマーカー物質(b)と、マーカー物質(c)とを組み合わせて使用する。すなわち、マーカー物質(a)またはマーカー物 質(b)と、マーカー物質(c)とは挙動が逆(高値と低値)であるので、マーカー物質(a)またはマーカー物質(b)と、マーカー物質(c)とを組み合わせて使用することで、さらに正確にインターフェロン療法の有効性を判定できると考えられる。
【0208】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法における好ましい実施形態の一つは、マーカー物質を担体上に捕捉し、その捕捉されたマーカー物質を測定対 象とすることである。すなわち、マーカー物質に対する親和性を有する物質を担体に固定化し、その親和性を有する物質を介してマーカー物質を担体上に捕捉する。本実施形態によれば、試料中に含まれる夾雑物質の影響を低減させることができ、より高感度かつ高精度でマーカー物質の濃度を測定することができる。本実施形態において用いることができる担体の例としては、ビーズ、金属、ガラス、樹脂等のような一般的なものの他、基板のような、平面部分を有する担体を用いることができる。基板を用いる場合は、その平面部分の一部にマーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化することが好ましい。例としては、基板としてチップを用い、その表面の複数箇所にスポット的にマーカー物質に親和性を有する物質を固定化した担体が挙げられる。なお「親和性」の例としては、イオン結合、金属キレート体とタンパク質中のヒスチジン残基等とのアフィニティ、若しくは疎水性相互作用等の化学的な作用の他、抗原と抗体、酵素と基質、ホルモンとレセプターのようなバイオアフィニティ、が挙げられる。
【0209】
イオン結合によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、イオン交換体を担体に固定化する。この場合、イオン交換体には陽イオン交換体、陰イオン交換体 のいずれも用いることができ、さらに、強陽イオン交換体、弱陽イオン交換体、強陰イオン交換体、弱陰イオン交換体のいずれも用いることができるが、弱陽イオン交換体が好ましく用いられる。弱陽イオン交換体の例としては、カルボキシメチル(CM)等の弱陽イオン交換基を有するものが挙げられる。また、強陽イオン交換体の例としては、スルホプロピル(SP)等の強陽イオン交換基を有するものが挙げられる。また、弱陰イオン交換体の例としては、ジメチルアミノエチル(DE)、ジエチルアミノエチル(DEAE)等の弱陰イオン交換基を有するものが挙げられる。さらに、強陰イオン交換体の例としては、4級アンモニウム(トリメチルアミノメチル)(QA)、4級アミノエチル(ジエチル,モノ・2−ヒドロキシブチルアミノエチル)(QAE)、4級アンモニウム(トリメチルアンモニウム)(QMA)等の強陰イオン交換基を有するものが挙げられる。
【0210】
金属キレート体を介してマーカー物質を捕捉する場合は、例えば、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、Al3+、Fe3+、Ga3+等の金属キレート体を固定化した担体を用いることができるが、Cu2+が特に好ましい。
【0211】
疎水性相互作用によってマーカー物質を担体に捕捉する場合は、担体に疎水基をもつ物質を固定化する。疎水基の例としては、C4〜C20のアルキル基、フェニル基等が挙げられる。
【0212】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法において、体液中のマーカー物質の濃度を測定する方法は、そのマーカー物質の濃度を特異的に測定できる方 法であれば特に制限はなく、例えば、質量分析を用いることができる。すなわち、質量分析によって生じる各マーカー物質由来のイオンピークを特定し、そのイオンピーク強度をもって各マーカー物質の量(濃度)を測定することができる。質量分析によってマーカー物質の濃度を測定する場合のイオン化の方法としては、マトリクス支援レーザーイオン化(matrix−assisted laser desorption/ionization、MALDI)、エレクトロスプレーイオン化(electrospray ionization、ESI)のいずれも適用可能であるが、多価イオンの生成が少ないMALDIが好ましい。特に、飛行時間質量分析計(time−of−flight mass spectromer、TOF)と組み合わせたMALDI−TOF−MSによれば、より正確にマーカー物質由来のイオンピークを特定することができる。さらに、2台の質量分析計を用いたMS/MSによれば、より正確にマーカー物質の濃度を測定することができる。
【0213】
特に好ましい実施形態では、担体として基板を用い、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(surface−enhanced laser desorption/ionization)−飛行時間質量分析(time−of−flight mass spectrometry)(以下、「SELDI−TOF−MS」と称する)を行うことにより、マーカー物質の濃度を測定する。本実施形態によれば、マーカー物質の濃度をより正確に測定することができる。使用できる基板の種類としては、陽イオン交換基板、陰イオン交換基板、順相基板、逆相基板、金属イオン基板、抗体基板等を用いることができるが、陽イオン交換基板、陽イオン交換基板、特に、弱陽イオン交換基板、並びに、金属イオン基板が好ましく用いられる。
【0214】
質量分析以外の方法でマーカー物質の濃度を測定する方法としては、タンパク質の定量に一般的に用いられている方法が採用可能であり、各種のイムノアッセイ、液体クロマトグラフィー法、電気泳動法、ウェスタンブロット法等を使用することができる。
【0215】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法において使用する体液としては、血液が好ましく用いられる。すなわち、C型肝炎患者から採取した血液を検 体とし、その血液から調製した血清または血漿(体液成分)を検査材料とすることが好ましい。血清または血漿は遠心分離等の公知の方法で血液から調製することができる。
【0216】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法によって実際にC型肝炎患者に対するインターフェロン療法の有効性を判定する手順の一例を、順を追って説 明する。この例では、マーカー物質(a)、(b)、(c)全ての濃度を並行して測定する。まず、被験者であるC型肝炎患者から血液を採取し、検査材料となる血清を調製する。次に、この血清をpH9.0の条件でQAE等の強陰イオン交換樹脂に接触させる。このとき、マーカー物質(a)と(b)は捕捉されずに素通りし、マーカー物質(c)は捕捉される。ここで、素通り画分を確保する。次に、強陰イオン交換樹脂をpH3.0の溶出液で洗浄し、さらに、有機溶媒で溶出する。このとき、有機溶媒で溶出した画分にマーカー物質(c)が含まれるので、有機溶媒溶出画分を確保する。
【0217】
まず、確保した素通り画分をCM等の弱陽イオン交換体を固定化した基板に接触させ、次いで、pH4.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(a) が基板上に捕捉される。また、確保した素通り画分を銅イオン結合金属キレート体を固定化した基板に接触させ、次いで、pH7.0かつ0.5M NaClの条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(b)が基板上に捕捉される。また、有機溶媒溶出画分をCM等の弱陽イオン交換体を固定化した基板に接触させ、次いで、pH4.0の条件で洗浄する。このとき、マーカー物質(c)が基板上に捕捉される。最後に、各基板をSELDI−TOF−MSに供し、検出される各マーカー物質のイオンピークの強度を測定する。そして、各イオンピーク強度を基準値と比較し、インターフェロン療法の有効性を判定する。
【0218】
なお、上記の例の基準値としては、例えば、インターフェロン療法によりHCVが消失した(効果があった)C型肝炎患者の血清と、インターフェロン療法に よりHCVが消失しなかった(効果がなかった)C型肝炎患者の血清を用いて、同様のSELDI−TOF−MSをあらかじめ行い、両者を比較して設定したカットオフ値を採用することができる。
【0219】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定方法は、従来技術であるHCVのタイピングやSNP解析と組み合わせて行ってもよい。
【0220】
本発明のインターフェロン療法の有効性判定用キットは、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むものである。本発明のインター フェロン療法の有効性判定用キットにおける好ましい実施形態では、CM等の弱陽イオン交換体を固定化した基板、または銅イオン等の金属キレート基板を含む。本実施形態によれば、SELDI−TOF−MSによるマーカー物質の濃度測定を簡便に行なうことができる。なお、本キット中には他の試薬類、例えば、標準物質、前処理用の各種緩衝液等を含めてもよい。
【0221】
上述の患者は、C型肝炎罹患患者を例示したが、これは、他のインターフェロンが有効な疾患の患者であってもよく、患者でないが、予防のためにインターフェロンを用いる場合の判定方法として用いてもよい。
【0222】



(評価方法)
1つの局面において、本発明は物質の評価方法を提供し、この方法は、インターフェロン療法が有効ではない動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中におけるマーカー物質の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被検物質が有するインターフェロン療法の感受性の改善効果を評価するものである。その結果、被検物質が有するインターフェロン感受性の改善効果を評価することができる。なお、「動物」には、ラット等の飼育可能な動物の他、ヒトも含むものとする。
【0223】
かかる構成により、より正確に、被検物質が有するインターフェロン感受性の改善効果を評価することができる。
【0224】
かかる構成により、測定試料となる体液を簡単に採取でき、より簡便かつ迅速に、被検物質が有するインターフェロン感受性の改善効果を評価することができる。
【0225】
かかる構成により、機能性食品の開発を目的として、インターフェロン感受性の改善効果を評価することができる。
【0226】
上記した本発明の疾病の診断方法と同様に、本発明の物質の評価方法においても、前記体液または体液成分を、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、体液中の前記マーカー物質を担体上に捕捉し、捕捉された前記マーカー物質の量に基づいて体液中の前記マーカー物質の濃度を算出する構成(請求項10)、前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されている構成、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体、金属キレート体または抗体である構成が推奨される。
【0227】
本発明の物質の評価方法では、インターフェロン治療が有効ではない動物に被験物質を摂取させ、該動物における上記マーカー物質の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被検物質が有するインターフェロン感受性の改善効果を評価するものである。なお、被検物質がインターフェロン感受性の改善効果を有する場合、体液中におけるグループ1に属するマーカー物質の濃度はより低値を示し、グループ2に属するマーカー物質の濃度はより高値を示す。
【0228】
好ましい実施形態では、上記基準値として、インターフェロン療法が有効ではない動物に、インターフェロン感受性の改善効果を有さない既知物質を摂取させた際の、該動物の体液中における前記マーカー物質の濃度を用いる。すなわち、インターフェロン療法が有効ではない動物に、インターフェロン感受性の改善効果を有さない既知物質を摂取させた場合、その体液中の上記マーカー物質の濃度は「異常値」となる。そして、被検物質を摂取させた上記動物における値(測定値)と当該基準値(異常値)とを比較し、測定値が基準値と有意に差がありかつ正常側である場合(正常側に維持された場合)に、当該被検物質がインターフェロン感受性の改善効果を有すると評価することができる。具体的には、グループ1に属するマーカー物質を指標とする場合は、測定値が当該基準値に比べて有意に低いときに、グループ2に属するマーカー物質を指標とする場合は、測定値が基準値に比べて有意に高いときに、当該被検物質がインターフェロン感受性の改善効果を有すると評価することができる。
【0229】
さらに、基準値は複数あってもよい。例えば、上記の異常値に加え、インターフェロン療法が有効ではない動物における値(正常値。陰性対照。)を基準値に加えることができる。具体的には、(1)インターフェロン療法が有効な動物に、普通食または被検物質を摂取させる群(正常値を示す群)、(2)インターフェロン療法が有効でない動物に、インターフェロン感受性の改善効果を有さない既知物質を摂取させる群(異常値を示す群)、および、(3)インターフェロン療法が有効でない動物に被検物質を摂取させる群、の3群を設定し、動物を飼育する。そして、各動物の体液中の上記マーカー物質を測定し、各測定値を比較する。このとき、(1)と(2)とで有意差があり、(3)と(2)とで有意差があり、かつ(3)が(2)に比べて正常側((1)に近い側)である場合(正常側に維持された場合)に、当該被検物質がインターフェロン感受性の改善効果を有すると評価することができる。すなわち、被検物質にインターフェロン感受性の改善効果があれば、(3)において血糖値が正常値に維持され、マーカー物質の濃度が正常値である(1)に近い値をとる。
【0230】
さらに、基準値として、(4)インターフェロン療法が有効でない動物に、インターフェロン感受性の改善効果を有する既知物質を摂取させる群、の動物における値(陽性対照)を加えることもできる。具体的には、上記(1)〜(3)に加えて、上記(4)の群を設定し、動物を飼育する。このとき、(1)と(2)とで有意差があり、(3)と(2)とで有意差があり、かつ(3)が(2)に比べて正常側((1)および(4)に近い側)である場合に、当該被検物質がインターフェロン感受性の改善効果を有すると評価することができる。すなわち、このような被検物質は、(4)で採用した上記既知物質と同様の挙動を示し、同様の作用を有する物質といえる。
【0231】
上記した「インターフェロン療法が有効ではない動物」は、例えば、遺伝的に必ず糖尿病を発症する動物を用いることで、実現できる。同様に、「インターフェロン療法が有効である動物」は、例えば、経験的に有効であることが分かっている系統のモデル動物を用いることで、実現できる。
【0232】
本発明の物質の評価方法に使用する動物としては、特に限定はなく、例えばマウス、ラット、ウサギ、ブタ等を使用することができる。特に、ラットとマウスはその飼育が容易であるので、本発明の評価方法に好ましくに用いられる。動物の飼育方法としては特に限定はなく、例えば、飼料を自由摂取させて、3〜20日程度飼育すればよい。さらに、動物としてヒトを用いることもできる。ヒトを用いる場合は、臨床試験の結果によって物質を評価することになる。
【0233】
本様相の物質の評価方法において使用する動物の体液としては、血液が好ましく用いられる。特に、血液から調製した血清または血漿(体液成分)を測定試料とすることが好ましい。血清または血漿は遠心分離等の公知の方法で血液から調製することができる。
【0234】
本発明の物質の評価方法における被検物質としては、食品素材、医薬原体などが挙げられる。特に、食品素材を評価対象とする場合は、機能性食品の開発に役立てることができる。
【0235】
本発明の物質の評価方法を簡便に行なうために、必要な試薬類をまとめて評価用キットを構築することができる。当該評価用キットとしては、例えば、マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むものが挙げられる。特に、担体として、CM等の弱陽イオン交換体、銅イオン等の金属キレート体、あるいはマーカー物質に対する抗体を固定化した基板を含めた評価用キットによれば、SELDI−TOF−MSや抗体チップによるイムノアッセイを簡便に行なうことができる。本キット中には他の試薬類、例えば、標準物質、前処理用の各種緩衝液等を含めてもよい。
【0236】
本発明の物質のスクリーニング方法は、本発明の物質の評価方法によって被検物質を評価し、インターフェロン感受性の改善効果を有する物質をスクリーニングするものである。本発明の物質のスクリーニング方法においても、上記した本発明の物質の評価方法の実施形態と全く同様の実施形態をとることができる。さらに、上記した評価用キットと同様の構成からなるスクリーニング用キットを構築することもできる。
【0237】
本発明はまた、本発明に記載の物質の評価方法によって被検物質を評価し、インターフェロン感受性の改善効果を有する物質をスクリーニングすることを特徴とする物質のスクリーニング方法である。
【0238】
本発明は物質のスクリーニング方法にかかり、動物の体液中におけるマーカー物質(例えば、(a)〜(n)の14種)の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、インターフェロン感受性の改善効果を有する物質をスクリーニングするものである。本発明の物質のスクリーニング方法では、血糖を直接指標とするのではなく、別のマーカー物質を指標とするので、動物における血糖値が上昇する前の状態をも捉えることができる。その結果、インターフェロン感受性の改善効果を有する物質をスクリーニングすることができる。特に、被検物質が食品素材の場合は、インターフェロン感受性の改善効果を有する機能性食品の開発に有用な食品素材をスクリーニングすることができる。
【0239】
本発明は、このようなスクリーニング方法によって得られた物質も提供する。
【0240】

本明細書において引用された、科学文献、特許、特許出願などの参考文献は、その全体が、各々具体的に記載されたのと同じ程度に本明細書において参考として援用される。
【0241】
以上、本発明を、理解の容易のために好ましい実施形態を示して説明してきた。以下に、実施例に基づいて本発明を説明するが、上述の説明および以下の実施例は、例示の目的のみに提供され、本発明を限定する目的で提供したのではない。従って、本発明の範囲は、本明細書に具体的に記載された実施形態にも実施例にも限定されず、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例】
【0242】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0243】
(実施例1)
1.プロテインチップを用いた候補タンパク質の検索
インターフェロンα・リバビリン併用療法を受けたC型肝炎患者で、効果があった患者(CR)8名、および、効果がなかった患者(NR)8名について、治療 前の血清サンプルを収集した。治療効果の確認は、血中におけるHCV数を測定することにより行なった。各血清サンプル20μLに、変性バッファー(9M 尿素、2% CHAPS、50mM Tris−HCl(pH9.0))30μLを加えて前処理を行い、タンパク質を変性させた。次に、前処理した各血清サンプルを強陰イオン交換樹脂カラム(Q Ceramic Hyper D、バイオセプラ社)にアプライした。次に、pH9.0の緩衝液(50mM Tris−HCl(pH9.0)、0.1%(w/v)1−o−N−オクチル−β−D−グルコピラノシド(以下、「OGP」と称する。))、pH7.0の緩衝液(50mM HEPES−NaOH(pH7.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH5.0の緩衝液(100mM 酢酸ナトリウム(pH5.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH4.0の緩衝液(100mM 酢酸ナトリウム(pH4.0)、0.1%(w/v)OGP)、pH3.0の緩衝液(50mM クエン酸ナトリウム(pH3.0)、0.1%(w/v)OGP)、および有機溶媒(33.3%イソプロピルアルコール、16.7%アセトニトリル、0.1%トリフルオロ酢酸からなる混合液)各200μLで順に溶出させ、画分1(pH9.0で溶出、素通り)、画分2(pH7.0で溶出)、画分3(pH5.0で溶出)、画分4(pH4.0で溶出)、画分5(pH3.0で溶出)、画分6(有機溶媒)の6つの画分を得た。
【0244】
得られた各画分10μLをpH4.0のプロテインチップ結合バッファー(100mM 酢酸ナトリウム)で10倍希釈した後、陽イオン交換チップCM10 (サイファージェン社)に添加した。同様に、得られた各画分10μLをpH7.0のプロテインチップ結合バッファー(100mM リン酸、0.5M NaCl)で10倍希釈した後、銅修飾チップIMAC30(サイファージェン社)に添加した。各プロテインチップを各結合バッファーで3回洗浄した後に脱イオン水で1回洗浄し、乾燥させた。次に、エネルギー吸収分子であるシナピン酸(SPA)を添加し、プロテインチップリーダーModel PBS IIc(サイファージェン社)を用いて、SELDI−TOF−MSを行なった。なお、測定分子量範囲(M/Z)は、3000〜200000の範囲で行なった。また、測定は2連で行い、M/Zの平均値を算出した。データ解析は、Protein Chip Software、CiphergenExpress Data Magnager、およびBiomarker Patterns Software(いずれもサイファージェン社)を用いて行なった。具体的には、ベースライン補正、分子量校正、スペクトルの正規化処理を行なった後、シングルマーカー解析および数本のマーカーを組み合わせたマルチフロー解析を行なった。その結果、プロテインチップの種類、画分の種類、チップの洗浄条件等の組み合わせによって多数のピークが検出された。これらのピークのうち、CRとNRとの間で有意に強度が異なる複数のピークについて、p値、ROC面積、およびイオンピーク強度を算出した。その結果から、計3種のピークをピックアップした。
2.マーカー物質(a)の特定
陽イオン交換チップCM10(弱陽イオン交換体)を用い、画分1(pH9.0、素通り)についてSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷 比が5880(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークは、治療が有効であったCRでは低値を示し、治療が有効でなかったNRにおいて高値を示した。図1(a)に、CRとNRに分けてピーク強度をプロットしたグラフを示す。また、図1(b)に、図1(a)の結果を、最大値、75%値、中央値、25%値、および最小値で示したグラフを示す。さらに、図1(c)に本ピークのROC曲線を示す。なお、ROC面積が1に近いほど(曲線が左上に寄るほど)その測定系の精度が高いことを示す。その結果、ピークのp値は0.0001、ROC面積は0.891であった。このように、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MASSに供すると質量/電荷比が約5880のピークを生じるタンパク質が、C型肝炎患者におけるインターフェロンα・リバビリン併用療法の有効性の指標となることがわかった。すなわち、C型肝炎患者の血清を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約5880のイオンピーク強度が基準値より高い場合、そのC型肝炎患者にはインターフェロンα・リバビリン併用療法は有効でないと判断することができる。
3.マーカー物質(b)の特定
銅修飾チップIMAC30を用い、画分1(pH9.0、素通り)についてSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が5890(平均値) のイオンピークが検出された。本ピークは、治療が有効であったCRでは低値を示し、治療が有効でなかったNRにおいて高値を示した。図2(a)に、CRとNRに分けてピーク強度をプロットしたグラフを示す。また、図2(b)に、図2(a)の結果を、最大値、75%値、中央値、25%値、および最小値で示したグラフを示す。さらに、図2(c)に本ピークのROC曲線を示す。その結果、ピークのp値は0.00005、ROC面積は0.933であった。このように、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MASSに供すると質量/電荷比が約5890のピークを生じるタンパク質が、C型肝炎患者におけるインターフェロンα・リバビリン併用療法の有効性の指標となることがわかった。すなわち、C型肝炎患者の血清を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約5890のイオンピーク強度が基準値より高い場合、そのC型肝炎患者にはインターフェロンα・リバビリン併用療法は有効でないと判断することができる。
4.マーカー物質(c)の特定
陽イオン交換チップCM10(弱陽イオン交換体)を用い、画分6(有機溶媒)についてSELDI−TOF−MSを行なった場合に、質量/電荷比が 6869(平均値)のイオンピークが検出された。本ピークは、治療が有効であったCRでは高値を示し、治療が有効でなかったNRにおいて低値を示した。図3(a)に、CRとNRに分けてピーク強度をプロットしたグラフを示す。また、図3(b)に、図3(a)の結果を、最大値、75%値、中央値、25%値、および最小値で示したグラフを示す。さらに、図3(c)に本ピークのROC曲線を示す。その結果、ピークのp値は0.0001、ROC面積は0.867であった。このように、血液中のタンパク質でSELDI−TOF−MASSに供すると質量/電荷比が約6870のピークを生じるタンパク質が、C型肝炎患者におけるインターフェロンα・リバビリン併用療法の有効性の指標となることがわかった。すなわち、C型肝炎患者の血清を検査材料として、上記した条件のSELDI−TOF−MSを行い、質量/電荷比が約6870のイオンピーク強度が基準値より低い場合、そのC型肝炎患者にはインターフェロンα・リバビリン併用療法は有効でないと判断できる。
【0245】
(実施例2)
1枚の弱陽イオン交換チップCM10、1枚の銅修飾チップIMAC30、500mLの変性バッファー、500mLの溶出バッファー(pH7.0)、 500mLの溶出バッファー(pH4.0)、1gのSPAを1セットとして、インターフェロン療法の有効性判定用キットを構築した。本キットは、SELDI−TOF−MSによって被検者の体液中のマーカー物質の濃度を測定し、インターフェロン療法の有効性を判定するためのものである。
【0246】
(実施例3:C型肝炎患者(CR,NR)の血清由来TTRの精製同定スキーム)
(A イオン交換による精製法)
CR(治療終了後24週の時点でウイルス陰性化が続いている症例かつインターフェロンα−2bおよびリバビリン投与前)血清3mL,NR(治療中もウイルス陰性化が認められなかった症例かつインターフェロンα−2bおよびリバビリン投与前)血清3.5mLを50mM Tris−HCl(pH7.0)にて10倍希釈を行い、ウイルス除去フィルターであるAsahiKASEI Planova 35N(0.01m)を用いてウイルス除去を行った。
【0247】
フィルタリング処理後、強陰イオン交換カラムであるAmersham HiTrapQ HP 5mLを用いて分画を行った。はじめに50mM Tris−HCl(pH7.0)にて5CV洗浄を行い、50mM Tris−HCl(pH7.0),160mM NaCl, 50mM Tris−HCl (pH7.0), 200mM NaClの順に5CV洗浄を行った。溶出は50mM酢酸ナトリウム(pH4.0)を用いて2CV行った。溶出サンプルは5倍量のアセトンにてアセトン沈殿を行い、得られた沈殿物を62.5mM Tris−HCl(pH6.8),1% SDS,20%グリセロール,0.005% BPB混合溶液200μLに溶解しSDS−PAGE用のサンプルとした。
【0248】
ゲルからの抽出およびMALDI−TOF−MS分析)
ゲルからの抽出は、メタノールと100mM 重炭酸アンモニウムの等量混合溶液を用いて脱色を行い、超純水:100mM 重炭酸アンモニウム:MeCN=2:5:3の比で混合した混合溶液(15μL)を用いて行った。
得られた抽出液2μLを金属プレートに乗せ、マトリックスには飽和CHCA 0.4μLを用いてApplied Biosystems 4700 Proteomics Analyzerにて測定を行った。
【0249】
得られた精製サンプルを、SELDIスペクトルにかけた。SELDIマススペクトルは、飽和CHCA 1.0μLへ変更した以外は上記と同様であった。また、他は、機種名以外は上記と同じであった。その結果をCRについては図4Aに、NRについては図5Aに、標準血清について図6Aに示す。示されるように、ピークとして、それぞれ、13927.1+H、13931.5+H、および13926.2+Hが観察された。
【0250】
B.SDS−PAGEによる精製法)
A.の要領で作成した上記サンプルを200μL使用し、DRC Perfect NT Gelポリペプチド分析用を用い、定電圧(100V,2.5hr)にて分画を行った。泳動バッファーは100mM Tris,100mM Tricine,0.1% SDSを用いた。泳動終了後、10% AcOH in 40% MeOHにて固定化を行い、超純水にて洗浄後、クーマシーブリリアントブルー(CBB)にて染色を行った。
【0251】
アセトン沈澱後にSDS−PAGEを行った後、CBB染色で染色した結果を図4Bに示す。一番左は分子量マーカーを示し(分子量の数値は、上から26,625、16,950、14,437、3,496、1,423(1423はかなり薄い)である。)、左3レーンは、CR血清を示し、右3レーンはNR血清を示す。一番右は何も示していない。
【0252】
ここで、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを、CR血清について図4Cに、NR血清について図5Cにおよび標準血清について図6Cに示す。示されるように、ピークとして、13934.3+H、13926.1+Hおよび13915.3+Hが観察された。このように分子量レベルで7の増加、5の減少および11の減少がCR血清、NR血清および標準血清のそれぞれ見られた。SDS−PAGEからのバンド抽出物が目的物(TTR)のほぼ純品であることの確認のみ。MALDI-TOF-分析で用いた同じバンド抽出物がマーカーと同一であることを裏付けるためのデータである。
【0253】
C.ウェスタンブロッティングによる同定法)
B.の要領でSDS−PAGEを行った後、CBBで染色を行わず、下記の要領でPVDF膜にブロッティングを行い、BIO−RAD,Amplified Alkaline Phosphatase Goat Anti−Rabbit Immun−Blot Assay Kit,170−6412,Lot 300002087により検出を行った。
【0254】
(1)試薬の調製
・陽極バッファー
60mM Tris,40mM CAPS,0.1% SDS,pH9.6
・陰極バッファー
60mM Tris,40mM CAPS,15% MeOH,pH9.6
・Tris−緩衝生理食塩水(Tris−buffer saline=TBS)
20mM Tris−HCl,500mM NaCl,pH7.5
・洗浄溶液(Wash Solution;TTBS)
20mM Tris−HCl, 500mM NaCl,0.05% Tween−20 , pH 7.5
・ブロッキングバッファー(Blocking Buffer)
5% ノンファットドライミルク(non−fat dry milk) in TBS
・1次抗体溶液
抗プレアルブミンウサギポリクローナルIgG(Santa Cruz Biotechnology, anti Prealbumin (FL−147) rabbit polyclonal IgG, sc−13098, Lot E0203)をTTBSで1000倍希釈(終濃度0.2μg/mL)
・2次抗体溶液
ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Biotinylated Goat Anti Rabbit IgG(H+L), Lot300001183)をTTBSで3000倍希釈
・ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体(Streptavidin−biotinylated alkaline phosphatase complex)
ストレプトアビジン10μLを30mLのTTBSに溶解し、更にビオチン化アルカリホスファターゼ10μLを加え、2時間、室温でインキュベートする。
・AP発色溶液(color development solution)
25×ストックを超純水にて25倍希釈し、AP発色バッファー(AP color development buffer)を作成する。AP発色バッファー20mLに対し200μLのAP発色試薬A(AP color development reagent A), 200μLのAP発色試薬B(AP color development reagent B)を添加しAP発色溶液(AP color development solution)とする。
(2)陽極板に陽極バッファーを湿潤させたろ紙を重ね、その上にメタノールを5分間湿潤させたPVDF膜(7×6cm)を重ね、更にゲルを乗せ、陰極バッファーを湿潤させたろ紙を重ね、陰極板を乗せ、定電流105mAで30分通電した。
(3)通電後、PVDF膜は超純水に浸し、5分振とうした。
(4)PVDF膜は風乾後、ブロッキングバッファーにてブロッキングを行った。ブロッキングは室温、にて1時間振とうの条件で行った。
(5)ブロッキング後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうを行いブロッキングバッファーの洗浄を行った。
(6)1次抗体溶液に浸し、室温で2時間、振とうを行った。
(7)1次抗体反応後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうし洗浄を行った。
(8)2次抗体溶液に浸し、室温で2時間、振とうを行った。
(9)(8)の作業中、ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体を作製した。
(10)2次抗体反応後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうし洗浄を行った。
(11)ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体溶液に浸し、室温で2時間、振とうを行った。
(12)ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体反応後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうし洗浄を行った。
(13)AP発色溶液に浸し、ヒトTTRであることを確認した。
【0255】
結果は、図7に示す。
【0256】
このようにして決定されたトランスサイレチンの詳細は、図8に示す。図8Aは、トランスサイレチン(ヒト)のアミノ酸配列を示す。図8Bは、トランスサイレチンの立体構造(PDB、1DVQ)の立体図を示す。
【0257】
上記結果をProtein−ViewおよびMascot−Search−Resultで調査したところ、ヒトトランスサイレチンであることが確認された(図9〜図10)。
13926は誘導体を含むTTRピーク群の最大ピークであり、Cys化TTRと思われる。6870は非修飾TTRであり、TTRピーク群の一番左の小さいピークに相当し、約13700である。ただし、ピーク群全体で同じ増減をしていることから、誘導体を含むTTRを指標とすることができる。
このことは、より詳細なM/Zの分析結果を示す(NU-138)図10A〜図10Eにおいて実証される。図10Aは、ピーク13760についての統計計算結果を示す。図10Bは、CR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。図10Cは、NR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。図10Dは、CR血清とNR血清とにおける13760ピークの比較を示す。示されるように、CR血清のほうがピークが有意に高かった。図10Eは、ROCプロット図を示す。ROC曲線receiver operating characteristic curve(受信者動作特性曲線)は、スクリーニング検査等の精度の評価や従来の検査と新しい検査の比較に用いられ、どの範囲でカットオフポイント cut-off point を取るかを示すものである。カットオフポイントをどこに取るかで、ある状態にある者とない者を区別する検査の能力を視覚的に示すことが可能となる。ROC曲線は、縦軸を真の陽性率、つまり敏感度(sensitivity)、横軸を偽陽性率、つまり(1−特異度)(1-specificity)を尺度としてプロットする。まず、検査結果のどの値を異常、つまり所見ありと判断するかのカットオフポイントを決める。その値で陽性とされる有疾病者と非疾病者の割合より敏感度と偽陽性率を計算する。同様にして他のカットオフポイントとした検査値での敏感度と偽陽性率を計算し、このようにして求めた値をグラフにプロットし、曲線を描く。注意しなくてはならないのは、ここでいう偽陽性率は厳密な意味での偽陽性率(疾病がないにもかかわらず陽性となる割合)とは異なり、ROC曲線においての定義であることである。
このように図10Eにより、本発明のTTRが良い指標であることが実証される。
【0258】
(実施例4:C型肝炎患者(CR,NR)の血清由来Apo A1 フラグメントの精製同定スキーム)
A.イオン交換による精製法
CR(治療終了後24週の時点でウイルス陰性化が続いている症例かつIFNα−2b&リバビリン投与前)血清3mL,NR(治療中もウイルス陰性化が認められなかった症例かつIFNa−2b&リバビリン投与前)血清7mLを50mM Tris−HCl (pH7.0)にて10倍希釈を行い、ウイルス除去フィルターであるAsahiKASEI Planova 35N(0.01m)にてウイルス除去を行った。
【0259】
フィルタリング処理後、強陽イオン交換カラムであるAmersham HiTrapSP HP 5mLを用いて分画を行った。はじめに50mM Tris−HCl (pH7.0)にて5CV洗浄を行い、溶出は50mM Tris−HCl (pH9.0)を用いて2CV行った。本カラムより溶出されたサンプルを強陰イオン交換カラムであるAmersham HiTrapQ HP 1mLを用いて更に分画を行った。はじめに50mM Tris−HCl (pH9.0)にて5CV洗浄を行い、溶出は50mM Tris−HCl (pH7.0)を用いて2CV行った。こうして出来た溶出サンプルは10倍量のアセトンにてアセトン沈殿を行い、得られた沈殿物を62.5mM Tris−HCl (pH6.8), 1% SDS, 20%グリセロール, 0.005% BPB混合溶液200μLに溶解しSDS−PAGE用のサンプルとした。
【0260】
ゲルからの抽出およびMALDI−TOF−MS分析)
ゲルからの抽出は、メタノールと100mM 重炭酸アンモニウムの等量混合溶液を用いて脱色を行い、超純水:100mM 重炭酸アンモニウム:MeCN=2:5:3の比で混合した混合溶液(15μL)を用いて行った。
得られた抽出液2μLを金属プレートに乗せ、マトリックスには飽和CHCA 0.4μLを用いてApplied Biosystems 4700 Proteomics Analyzerにて測定を行った。
【0261】
得られた精製サンプルを、SELDIスペクトルにかけた。SELDIマススペクトルは、飽和CHCA 1.0μLへ変更した以外は上記と同様であった。また、他は、機種名以外は上記と同じであった。その結果をCRについては図11Aに、NRについては図12Aに、標準血清について図13Aに示す。示されるように、ピークとして、それぞれ、5870.7+H、5872.3+Hおよび5870.2+Hが観察された。
【0262】
(B. SDS−PAGEによる精製法)
A.の要領で作成した上記サンプルを25μL使用し、DRC Perfect NT Gelポリペプチド分析用を用い、定電圧 (100V, 75min)にて分画を行った。泳動バッファーは100mM Tris , 100mM Tricine , 0.1% SDSを用いた。泳動終了後、10% AcOH in 40% MeOHにて固定化を行い、超純水にて洗浄後、CBBにて染色を行った。
【0263】
アセトン沈澱後にSDS−PAGEを行った後、CBB染色で染色した結果を図4Bに示す。一番左は分子量マーカーを示し(分子量の数値は、上から26,625、16,950、14,437、3,496、1,423(1423はかなり薄い)である。)、左2レーンは、CR血清を示し、右4レーンはNR血清を示す。一番右は何も示していない。
【0264】
ここで、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを、CR血清について図11Cに、NR血清について図12Cにおよび標準血清について図13Cに示す。示されるように、ピークとして、それぞれ、5871.4+H、5873.2+Hおよび5875.6+Hが観察された。このように分子量レベルで1の増加、1の増加および3.6の増加がCR血清、NR血清および標準血清のそれぞれ見られた。SDS−PAGEからのバンド抽出物が目的物(ApoAIフラグメント)の純品であることの確認のみ。MALDI-TOF-分析で用いた同じバンド抽出物がマーカーと同一であることを裏付けるためのデータである。
【0265】
C.ウェスタンブロッティングによる同定法)
B.の要領でSDS−PAGEを行った後、CBBで染色を行わず、下記の要領でPVDF膜にブロッティングを行い、BIO−RAD, Amplified Alkaline Phosphatase Goat Anti−Rabbit Immun−Blot Assay Kit, 170−6412, Lot 300002087により検出を行った。
【0266】
(1)試薬の調製
・陽極バッファー
60mM Tris,40mM CAPS,0.1% SDS,pH9.6
・陰極バッファー
60mM Tris,40mM CAPS,15% MeOH,pH9.6
・Tris−緩衝生理食塩水(Tris−buffer saline=TBS)
20mM Tris−HCl,500mM NaCl,pH7.5
・洗浄溶液(Wash Solution;TTBS)
20mM Tris−HCl, 500mM NaCl,0.05% Tween−20 , pH 7.5
・ブロッキングバッファー(Blocking Buffer)
5% ノンファットドライミルク(non−fat dry milk) in TBS
・1次抗体溶液
ヤギ抗ヒトアポリポプロテインA1(ApoA1)ポリクローナルIgG(Academy Biomedical Company, Goat Anti−Human Apolipoprotein A1 (Apo A1),Polyclonal Antibody;Affinity purified,11AG2B,Lot)をTTBSで5000倍希釈(終濃度0.2μg/mL)
・2次抗体溶液
ビオチン化ヤギ抗ウサギIgG(H+L)(Zymed Laboratories Inc. Biotin−Rabbit Anti−Goat IgG(H+L))をTTBSで3000倍希釈
・ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体(Streptavidin−biotinylated alkaline phosphatase complex)
ストレプトアビジン10μLを30mLのTTBSに溶解し、更にビオチン化アルカリホスファターゼ10μLを加え、2時間、室温でインキュベートする。
・AP発色溶液(color development solution)
25×ストックを超純水にて25倍希釈し、AP発色バッファー(AP color development buffer)を作成する。AP発色バッファー20mLに対し200μLのAP発色試薬A(AP color development reagent A), 200μLのAP発色試薬B(AP color development reagent B)を添加しAP発色溶液(AP color development solution)とする。
(2)陽極板に陽極バッファーを湿潤させたろ紙を重ね、その上にメタノールを5分間湿潤させたPVDF膜(7×5cm)を重ね、更にゲルを乗せ、陰極バッファーを湿潤させたろ紙を重ね、陰極板を乗せ、定電流88mAで13分通電した。
(3)通電後、PVDF膜は超純水に浸し、5分振とうした。
(4)PVDF膜は風乾後、ブロッキングバッファーにてブロッキングを行った。ブロッキングは室温、にて1時間振とうの条件で行った。
(5)ブロッキング後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうを行いブロッキングバッファーの洗浄を行った。
(6)1次抗体溶液に浸し、室温で2時間、振とうを行った。
(7)1次抗体反応後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうし洗浄を行った。
(8)2次抗体溶液に浸し、室温で2時間、振とうを行った。
(9)(8)の作業中、ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体作製した。
(10)2次抗体反応後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうし洗浄を行った。
(11)ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体溶液に浸し、室温で2時間、振とうを行った。
(12)ストレプトアビジン−ビオチン化アルカリホスファターゼ複合体反応後、TTBSに浸し室温にて5分×3回、振とうし洗浄を行った。
(13)AP発色溶液に浸し、ヒトApoA1(human Apo A1)由来のフラグメントであることを確認した。
【0267】
その結果を図14に示す。
【0268】
このようにして決定されたヒトApoA1の詳細は、図15に示す。図15Aは、ヒトApoA1のアミノ酸配列を示す。図15Bは、ヒトApoA1の立体構造(PDB、1DVQ)の立体図を示す。
【0269】
図16には、本発明のヒトApoA1フラグメントは、5.9kDaフラグメントであることを示すマススペクトル結果を示す。ApoAIフラグメントの精密質量測定。モノアイソトピックイオンピークが5873.8であり、同定データ(Mascot)で得たC末端側配列(Tyr192−Gln243)の理論分子量5874と一致した。方法はイオン交換カラムで精製→SDS−PAGEで精製→ゲルを切り出してABI4700質量分析計で測定した。
【0270】
上記結果をProtein−ViewおよびMascot−Search−Resultで調査したところ、ヒトApoA1フラグメントであることが確認された(図17〜図18)。これら2つのバンドは、SELDIの誤差範囲内であり同一視可能であることが明らかになった。5880というのは平均値であり、実測値は5866〜5890。同一視できる理論的説明は上記されている。
このことは、より詳細なM/Zの分析結果を示す(NU-138)図19A〜図19Eにおいて実証される。図19Aは、ピーク13760についての統計計算結果を示す。図19Bは、CR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。図19Cは、NR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。図19Dは、CR血清とNR血清とにおける13760ピークの比較を示す。示されるように、NR血清のほうがピークが有意に高かった。図19Eは、ROCプロット図を示す。
このように図19Eにより、本発明のApoA1が良い指標であることが実証される。
C末端側の近い位置で切断されている文献が2報ある(J. Lipid Res.
1999. 40: 654-664およびTHE JOURNAL OFBIOLOGICAL CHEMISTRY Vol. 279, No. 20, Issue of May 14, pp. 21431-21438, 2004)。いずれも上流側のTruncateされたフラグメント(大きい方)を検出しているため、今回のケースも同様に、上流側のTruncateされたフラグメントを検出することによって、同様のマーカーにできる可能性はある。実際、ウェスタンブロッティングでは、5.9kDa以外のフラグメントが検出されている。
【0271】
(実施例5:スクリーニング)
まず、本発明において見出されたマーカー物質の変動(好ましくは、正常化)をさせる可能性のある物質を、スクリーニングする。
【0272】
本実施例では、インターフェロンが有効な疾患に罹患している動物または将来の発症リスクが高い動物に被験物質を摂取させ、該動物の体液中における該マーカー物質の少なくとも1つの濃度を基準値と比較し、被検物質が有するインターフェロンが有効な疾患に対する反応性の改善効果または将来の発症リスクの低減効果を評価する。
【0273】
(実施例6:ヒトでのスクリーニング)
実施例5で動物モデルでインターフェロン感受性の改善効果が見られた物質について、実際にヒト被験体においても効果があるかを評価する。これは、通常の治験と同様の手続に則って行う。
【0274】
このようなスクリーニングにより、実際にインターフェロンが有効な疾患に罹患している動物において効果のある被験物質がヒトで有効であることを確認することができる。
【0275】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。本明細書において引用した特許、特許出願および文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0276】
本発明は、医薬品産業等において利用性を有する。特に、診断薬の製造において産業上の利用可能性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0277】
【図1】質量/電荷比が5880(平均値)のイオンピークについての測定結果を表し、図1(a)は、CRとNRに分けてピーク強度をプロットしたグラフであり、 図1(b)は、図1(a)の結果を、最大値、75%値、中央値、25%値、および最小値で示したグラフであり、図1(c)はROC曲線を示す。
【図2】質量/電荷比が5890(平均値)のイオンピークについての測定結果を表し、図2(a)は、CRとNRに分けてピーク強度をプロットしたグラフであり、 図2(b)は、図2(a)の結果を、最大値、75%値、中央値、25%値、および最小値で示したグラフであり、図2(c)はROC曲線を示す。
【図3】質量/電荷比が6869(平均値)のイオンピークについての測定結果を表し、図3(a)は、CRとNRに分けてピーク強度をプロットしたグラフであり、 図3(b)は、図3(a)の結果を、最大値、75%値、中央値、25%値、および最小値で示したグラフであり、図3(c)はROC曲線を示す。
【図4】図4は、ヒトトランスサイレチンについて、CR血清についての分析結果を示す。図4Aは、CR血清のSELDIマススペクトルの結果を示し、図4Bは、CR血清のSDS−PAGEの結果を示し、図4Cは、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを示す。
【図5】図5は、ヒトトランスサイレチンについて、NR血清についての分析結果を示す。図5Aは、NR血清のSELDIマススペクトルの結果を示し、図5Bは、NR血清のSDS−PAGEの結果を示し、図5Cは、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを示す。
【図6】図6は、ヒトトランスサイレチンについて、標準血清についての分析結果を示す。図6Aは、標準血清のSELDIマススペクトルの結果を示し、図6Bは、標準血清のSDS−PAGEの結果を示し、図6Cは、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを示す。
【図7】図7は、トランスサイレチンを同定したウェスタンブロットの結果を示す(実施例3)。
【図8】図8は、実施例3において決定されたトランスサイレチンの詳細を示す。図8Aは、トランスサイレチン(ヒト)のアミノ酸配列を示す。図8Bは、トランスサイレチンの立体構造(PDB、1DVQ)の立体図を示す。
【図9】図9は、Protein−ViewおよびMascot−Search−Resultで調査したところ、ヒトトランスサイレチンであることを確認した調査結果を示す。
【図10−1】図10は、Protein−ViewおよびMascot−Search−Resultで調査したところ、ヒトトランスサイレチンであることを確認した調査結果を示す。
【図10−2】図10−2は、図10−1の続きである。
【図10−3】図10−3は、図10−2の続きである。
【図10−4】図10−4は、図10−3の続きである。
【図10−5】図10−5は、図10−4の続きである。
【図10−6】図10−6は、図10−5の続きである。
【図10A】図10Aは、ピーク13760についての統計計算結果を示す。
【図10B】図10Bは、ピーク13760についてのCR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。
【図10C】図10Cは、NR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。
【図10D】図10Dは、CR血清とNR血清とにおける13760ピークの比較を示す。示されるように、CR血清のほうがピークが有意に高かった。
【図10E】図10Eは、ROCプロット図を示す。
【図11】図11は、ヒトApoA1について、CR血清についての分析結果を示す。図11Aは、CR血清のSELDIマススペクトルの結果を示し、図11Bは、CR血清のSDS−PAGEの結果を示し、図11Cは、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを示す。
【図12】図12は、ヒトApoA1について、NR血清についての分析結果を示す。図12Aは、NR血清のSELDIマススペクトルの結果を示し、図12Bは、NR血清のSDS−PAGEの結果を示し、図12Cは、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを示す。
【図13】図13は、ヒトApoA1について、標準血清についての分析結果を示す。図13Aは、標準血清のSELDIマススペクトルの結果を示し、図13Bは、標準血清のSDS−PAGEの結果を示し、図13Cは、増減の見られたマーカーを抽出し再度SELDIスペクトルをとったものを示す。
【図14】図14は、ヒトApoA1を同定したウェスタンブロットの結果を示す(実施例4)。
【図15】図15は、実施例4において決定されたヒトApoA1の詳細を示す。図15Aは、ヒトApoA1のアミノ酸配列を示す。図15Bは、ヒトApoA1の立体構造(PDB、1DVQ)の立体図を示す。
【図16】図16には、本発明のヒトApoA1フラグメントは、5.9kDaフラグメントであることを示すマススペクトル結果を示す。ApoAIフラグメントの精密質量測定。モノアイソトピックイオンピークが5873.8であり、同定データ(Mascot)で得たC末端側配列(Tyr192−Gln243)の理論分子量5874と一致した。方法はイオン交換カラムで精製→SDS−PAGEで精製→ゲルを切り出してABI4700質量分析計で測定した。
【図17−1】図17は、Protein−ViewおよびMascot−Search−Resultで調査したところ、ヒトApoA1フラグメントであることを確認したことを示す。
【図17−2】図17−2は、図17−1の続きである。
【図17−3】図17−3は、図17−2の続きである。
【図17−4】図17−4は、図17−3の続きである。
【図17−5】図17−5は、図17−4の続きである。
【図17−6】図17−6は、図17−5の続きである。
【図18−1】図18は、Protein−ViewおよびMascot−Search−Resultで調査したところ、ヒトApoA1フラグメントであることを確認したことを示す。
【図18−2】図18−2は、図18−1の続きである。
【図18−3】図18−3は、図18−2の続きである。
【図19A】図19Aは、本発明のApoA1のピーク13760についての統計計算結果を示す。
【図19B】図19Bは、本発明のApoA1のCR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。
【図19C】図19Cは、本発明のApoA1のNR血清についてのマススペクトル分析結果を示す。矢印は、13760のピークを示す。
【図19D】図19Dは、本発明のApoA1のCR血清とNR血清とにおける13760ピークの比較を示す。示されるように、NR血清のほうがピークが有意に高かった。
【図19E】図19Eは、本発明のApoA1のROCプロット図を示す。
【配列表フリーテキスト】
【0278】
配列番号1−2 トランスサイレチン ヒト(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)
配列番号3−4 トランスサイレチン ラット(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)
配列番号5−6 アポリポタンパク質AI ヒト(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)、
配列番号7−8 アポリポタンパク質AI ラット(それぞれ、核酸配列およびアミノ酸配列)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体由来のサンプル中の被験体由来のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段を含む、該被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するためのシステム。
【請求項2】
前記マーカー物質が、前記被験体の体液中に存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記マーカー物質が、前記被験体の血液中に存在する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記マーカー物質が、遺伝子産物である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記マーカー物質が、トランスサイレチン、トランスサイレチン誘導体、アポリポタンパク質AI、アポリポタンパク質AI誘導体およびこれらのタンパク質のフラグメントならびにこれらに対応するタンパク質からなる群より選択される、1またはそれより多い物質を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記因子は、核酸分子、ポリペプチド、脂質、糖鎖、有機低分子およびそれらの複合分子からなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記因子は、タンパク質または前記複合分子である、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記因子は、抗体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記因子は、標識されるか、または標識可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記手段は、質量分析装置、核磁気共鳴測定装置、X線解析装置、SPR、クロマトグラフィー、免疫学的手段、生化学的手段、電気泳動機器、化学的分析機器、蛍光二次元ディファレンシャル電気泳動法、同位体標識法、タンデムアフィニティ精製法、物理学的手段、レーザーマイクロダイセクションおよびこれらの組み合わせからなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
さらに、前記マーカー物質の標準を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
さらに、前記サンプルを精製する手段を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記被験体は、哺乳動物を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記被験体は、齧歯類を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記被験体は、ヒトを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記因子または前記手段は、前記マーカー物質の定量をする能力を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記マーカー物質の定量を行うための定量手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記定量手段は、標準曲線と測定結果とを比較して前記マーカー物質が正常値の範囲内かどうかを判定する判定手段を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記判定手段は、コンピュータである、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記システムは、前記マーカー物質または該マーカー物質に特異的に相互作用する前記因子を含む組成物である、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記マーカー物質が、トランスサイレチンおよびトランスサイレチン誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの物質を含み、該トランスサイレチン誘導体は、S−システイニルトランスサイレチン、S−システイニルトランスサイレチン、グルタチオン化トランスサイレチン、S−S結合形成トランスサイレチン、酸化トランスサイレチン、ホルミル化トランスサイレチン、アセチル化トランスサイレチン、リン酸化トランスサイレチン、糖鎖付加トランスサイレチン、ミリスチル化トランスサイレチンおよびこれらの複合誘導体からなる群より選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記トランスサイレチンの減少および前記トランスサイレチン誘導体の減少からなる群より選択される少なくとも1つの現象が、インターフェロン療法が有効でないことの指標である、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
前記トランスサイレチンの減少および前記トランスサイレチン誘導体の減少の両方が、インターフェロン療法の有効性の低さの指標である、請求項21に記載のシステム。
【請求項24】
前記トランスサイレチンは、配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列によってコードされるか、または配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列を有する、あるいは、これらの改変配列を有する、請求項21に記載のシステム。
【請求項25】
前記トランスサイレチン誘導体は、配列番号1もしくは配列番号3に示される核酸配列によってコードされるアミノ酸配列、または配列番号2もしくは配列番号4に示されるアミノ酸配列における、それぞれ、10位のシステインまたはそれに対応するシステインのシステインがシステイニル化されている誘導体である、請求項21に記載のシステム。
【請求項26】
前記因子または前記手段は、トランスサイレチンの単量体と四量体との区別をする能力を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記因子または前記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの区別をする能力を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記因子または前記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの区別をする能力を有する抗体を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記因子または前記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを認識し、かつ、前記システムはトランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを識別する手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記因子または前記手段は、トランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとを認識し、前記システムはトランスサイレチンの分子量とS−システイニルトランスサイレチンの分子量とを識別する手段、およびトランスサイレチンとS−システイニルトランスサイレチンとの相対比を測定する手段をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記マーカー物質が、アポリポタンパク質AIまたはアポリポタンパク質AI誘導体を含み、該アポリポタンパク質AI誘導体は、プロ体またはフラグメント(YHAKATEHLSTLSEKAKPA LEDLRQGLLP VLESFKVSFL SALEEYTKKL NTQ)である、請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記アポリポタンパク質AIの上昇および前記アポリポタンパク質AI誘導体の変動からなる群より選択される少なくとも1つの現象が、インターフェロン療法が有効でないことの指標である、請求項31に記載のシステム。
【請求項33】
前記アポリポタンパク質AIの上昇および前記アポリポタンパク質AI誘導体の変動からなる群より選択される少なくとも1つの現象がインターフェロン療法の有効性が低さの指標である、請求項31に記載のシステム。
【請求項34】
前記アポリポタンパク質AIは、配列番号5もしくは配列番号7に示される核酸配列によってコードされるか、または配列番号6もしくは配列番号8に示されるアミノ酸配列、あるいは、これらの改変配列を有する、請求項31に記載のシステム。
【請求項35】
前記因子または前記手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有する、請求項31に記載のシステム。
【請求項36】
前記因子または前記手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有する抗体を含む、請求項31に記載のシステム。
【請求項37】
前記因子または前記手段は、アポリポタンパク質AIを選択的に識別する能力を有し、かつ、前記システムは該アポリポタンパク質AIを定量する手段を備える、請求項31に記載のシステム。
【請求項38】
診断薬である、請求項1に記載のシステム。
【請求項39】
被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するため、または該判定を支援するための方法であって、
A)該被験体由来の該被検体由来のサンプル中のマーカー物質を測定する工程;および
B)該測定結果から、該被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを決定する工程、
を包含する、方法。
【請求項40】
請求項2〜38のいずれか1項に記載の特徴を有する、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
被験体由来のサンプル中の該被験体由来のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段の、被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するための医薬の製造における、使用。
【請求項42】
請求項2〜38のいずれか1項に記載の特徴を有する、請求項41に記載の使用。
【請求項43】
被験体由来のサンプル中のマーカー物質、該マーカー物質に特異的に相互作用する因子、または該マーカー物質を選択的に認識する手段の、被験体へのインターフェロン療法がC型肝炎に対して有効であるか否かを判定するための使用。
【請求項44】
請求項2〜38のいずれか1項に記載の特徴を有する、請求項43に記載の使用。
【請求項45】
請求項39に記載の方法であって、血液中のマーカー物質の濃度を測定し、その値を健常値と比較し、前記マーカー物質がトランスサイレチン、アポリポタンパク質A1またはその誘導体もしくはフラグメントの群から選択される1または2以上のタンパク質であることを特徴とする、方法。
【請求項46】
前記マーカー物質が、下記マーカー物質(a)〜(c)の少なくとも1つである、請求項45に記載の方法。
(a)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5880のイオンピークを生じるタンパク質、
(b)pH9.0で強陰イオン交換体に結合せず、pH7.0かつ0.5MのNaCl濃度で銅イオン結合金属キレート体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約5890のイオンピークを生じるタンパク質、
(c)pH9.0で強陰イオン交換体に結合し、有機溶媒で強陰イオン交換体に結合せず、pH4.0で弱陽イオン交換体に結合し、かつ質量分析に供すると質量/電荷比が約6870のイオンピークを生じるタンパク質。
【請求項47】
前記体液は、血液であることを特徴とする請求項46に記載の方法。
【請求項48】
質量分析により体液中における前記マーカー物質の濃度を測定することを特徴とする請求項46または47に記載の方法。
【請求項49】
被験体から体液を採取し、該体液または体液成分を前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体に接触させて、前記マーカー物質を捕捉し、前記マーカー物質の濃度を測定することを特徴とする請求項46〜48のいずれかに記載のイ方法。
【請求項50】
前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体または金属キレート体であることを特徴とする請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記担体は平面部分を有し、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、該平面部分の一部に固定化されていることを特徴とする請求項49または50に記載の方法。
【請求項52】
請求項46〜51のいずれかに記載の方法に用いるためのキットであって、前記マーカー物質に対する親和性を有する物質を固定化した担体を含むことを特徴とするインターフェロン療法の有効性を判定するためのキット。
【請求項53】
前記マーカー物質に対する親和性を有する物質は、イオン交換体または金属キレート体であることを特徴とする請求項52に記載のキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10−1】
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【図10−2】
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【図10−3】
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【図10−4】
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【図10−5】
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【図10−6】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17−1】
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【図17−2】
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【図17−3】
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【図17−4】
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【図17−5】
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【図17−6】
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【図18−1】
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【図18−2】
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【図18−3】
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【図19A】
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【図19B】
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【図19C】
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【図19D】
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【図19E】
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【公開番号】特開2007−278811(P2007−278811A)
【公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−104745(P2006−104745)
【出願日】平成18年4月5日(2006.4.5)
【出願人】(303058708)株式会社バイオマーカーサイエンス (27)
【Fターム(参考)】