説明

インダクタプレート

【課題】 本願発明は、インダクタプレートがインキ、グリス等の高粘度流体を収容する収容缶の底についた状態でも、最後まで高粘度流体を吸い上げることのできるインダクタプレートを提供することにある。
【解決手段】 この発明は、高粘度流体が収容される収容缶に装着され、高粘度流体の吸引/送出に伴って降下する液面に対応して移動するインダクタプレートを具備するプランジャポンプにおいて、前記インダクタプレートは、前記プランジャポンプの吸入口と連通する略円錐状に形成された円錐状空間部と、該円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁にわたって形成されるフランジ部とによって構成され、前記フランジ部には、前記円錐状空間部と前記収容缶の底部との間に所定の隙間を形成する隙間形成構造を設けたことにある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インキ、グリス等の高粘度流体が貯蔵されたドラム缶やペール缶等の上部に載置され、ドラム缶内の高粘度流体を吸引して印刷機等の機器に送出するプランジャポンプにおいて、高粘度流体の減少に伴って降下する液面と共にドラム缶内を降下して、高粘度流体を確実に吸引できるようにするインダクタプレートに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、2つのプランジャポンプを平行に配置して、ドラム缶内のUVインキのチャンバー内への吸い込み、及びチャンバーからの吐出を前記各プランジャポンプで交互に行いながら、前記UVインキを高圧で被送給体に送給すると共に、一方のプランジャポンプがUVインキを吐出すると同時に、一方のチャンバー内に第1の洗浄剤を吸い込んで、該チャンバー内に第1の洗浄液を充満させて、チャンバー内周壁面に付着したUVインキを前記第1の洗浄剤で洗浄して除去する一方、他方のプランジャポンプがUVインキを吸い込むと同時に、他方のプランジャポンプのチャンバーの内周壁面に付着したUVインキを洗浄した後の第1の洗浄剤を排出するという動作を交互に繰り返す一方、各プランジャから各チャンバーの内周壁面に第2の洗浄剤を吐出して、該第2の洗浄剤を流動させることにより、チャンバー内周壁面にUVインキが付着してポリマー化するのを防止することを開示する。
【0003】
また、この特許文献1は、左・右流入筒の下面には、左・右流入筒と連通する左・右連通口を開口したインキ押し付けフランジ73が連結されており、このインキ押し付けフランジの外径が、UVインキタンクの内径と一致するよう形成されていることを開示する。また、インク送給筒が、前記インキ押し付けフランジの中央に突設された取り付けボス上において、中空のインキ流入室を備えて形成されていることを開示する。さらに、インキ押し付けフランジの中央に突設された取付ボスには、空気逃がし孔が形成され、この空気逃がし孔が外部に設けられたエア抜きと連結され、UVインキタンク内にあるエアを外部に逃がして、インキ押し付けフランジをUVインキに密着させるようにしていることを開示する。また、特許文献1において、インキ押し付けフランジには、中央に位置する前記空気逃がし孔に向かって傾斜するテーパが形成され、インキ押し付けフランジとUVインキの間の空気を確実に抜くことができるものである。
【0004】
特許文献1に開示された一対のプランジャポンプを具備するインキ送給装置に対して、本出願人は特許文献2で示すように、印刷用インキ等の高粘度の流体を確実に吸入/吐出するプランジャポンプを提案した。このプランジャポンプにおいては、高粘度インキを吸入空間に引き上げるためのショベルプレートが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−1152号公報
【特許文献2】特開2004−316475号公報(特許第4114145号)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人によるプランジャポンプは、特許文献1に開示されるのと同様に、インキ等の高粘度流体が収容されたドラム缶やペール缶等(以下、収容缶)に直接設置されるもので、収容缶の内径に等しい外径を有するインダクタプレートの中央に固定されるものである。このインダクタプレートには、インダクタプレートが収容缶の底に到達した場合に、プランジャポンプの稼働を停止させる停止用スイッチが設けられる。
【0007】
しかしながら、プランジャポンプ自体が収容缶から高粘度流体を吸い終わった状態(インダクタプレートが収容缶の底にについた状態)で、収容缶内の底に相当量の高粘度流体が残るという不具合があり、この状態でプランジャポンプを稼働させても高粘度流体が吸えず、空打ち状態となるという不具合があった。
【0008】
このため、本願発明は、インダクタプレートが収容缶の底についた状態でも、最後まで高粘度流体を吸い上げることのできるインダクタプレートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
したがって、この発明は、インキ、グリス等の高粘度流体が収容される収容缶に装着され、高粘度流体の吸引/送出に伴って降下する液面に対応して移動するインダクタプレートを具備するプランジャポンプにおいて、前記インダクタプレートは、前記プランジャポンプの吸入口と連通する略円錐状に形成された円錐状空間部と、該円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁にわたって形成されるフランジ部とによって構成され、前記フランジ部には、前記円錐状空間部と前記収容缶の底部との間に所定の隙間を形成する隙間形成構造が設けられることにある。
【0010】
また、前記隙間形成構造は、前記円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁に向かって漸次傾斜するテーパ部であることが望ましい。
【0011】
さらに、前記隙間形成構造は、前記円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁に向かって放射状に形成された複数の溝部であることが望ましい。さらにまた、前記溝部は、インダクタプレートの外周縁で狭く、前記円錐状空間部の外周縁で広くなるように形成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本願発明によれば、インダクタプレートに、吸入口と連通する円錐状空間部と、この円錐状空間部と前記収容缶の底部との間に所定の空間を画成するように、テーパ部又は溝部を設けたので、インダクタプレートが収容缶の底部に到達した後に、所定時間プランジャポンプを稼働させることによって収容缶の底部に残留した高粘度流体を確実に吸引することが可能になるため、高粘度流体の使用効率が向上するという効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本願発明に係るプランジャポンプを用いたインキ送給装置の概略構成を示した正面図である。
【図2】本願発明に係るプランジャポンプを用いたインキ送給装置の概略構成を示した側面図である。
【図3】本願発明に係るプランジャポンプの降下状態を示した説明図である。
【図4】本願発明に係るプランジャポンプに装着されるインダクタプレートの実施例を示したもので、(a)はその断面図、(b)は底面図を示す。
【図5】本願発明に係るプランジャポンプに装着されるインダクタプレートの別の実施例を示したもので、(a)はその断面図、(b)は底面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願発明に係る高粘度流体送給装置1は、例えば図1及び図2に示すように、ベース2上に載置されたインキ、グリス等の高粘度流体を収納した収容缶(ドラム缶、ペール缶等)3に配置されるプランジャポンプ4と、プランジャポンプ4を作動させる作動部5と、プランジャポンプ4及び作動部5を保持すると共に、前記収容缶3内の高粘度流体6の量に対応して降下させるプランジャリフト部7とによって構成される。前記プランジャポンプ4の先端には、前記高粘度流体の表面に接触するインダクタプレート8が設けられる。
【0015】
このインダクタプレート8は、図3に示すように、プランジャポンプ4の稼働によって高粘度流体が吸引送出されると、高粘度流体の減少に伴って収容缶3の内周壁面に沿って下降するもので、プランジャポンプ4の吸入口41と連通する略円錐状に形成された円錐状空間11を画成する円錐状空間部12と、この円錐状空間部12の外周縁13から前記インダクタプレート8の外周縁15との間に形成されるフランジ部14とによって構成されている。尚、フランジ部14の外周端15には、高粘度流体の漏れを防止するためのシールとしてワイパゴムが配されている。さらに、前記フランジ部14には、前記インダクタプレート8が収容缶3の底部20に到達したことを検知するセンサ又はスイッチ30が設けられているものである。尚、インダクタプレート8には、前記円錐状空間11と連通する中央貫通孔42が形成される。また、この例では、前記円錐状空間11内を高粘度流体をかき上げるためのショベルプレート9が上下に移動するようになっている。
【0016】
さらに、本願発明に係るインダクタプレート8は、前記フランジ部14と収容缶3の底部20との間に、高粘度流体の流れを良好にするための所定の隙間を形成する隙間形成構造を具備したことを特徴とするものである。
【0017】
これによって、インダクタプレート8がインキ収容缶3の底部20に接触したことがセンサ又はスイッチ30によって検出された後、さらに所定時間プランジャポンプ4を稼働させると、収容缶3の底に残った高粘度流体を、隙間形成構造を介して確実に吸い上げることができるものである。
【実施例1】
【0018】
本願発明の実施例1に係るインダクタプレート8の隙間形成構造は、図4(a),(b)で示すように、前記円錐状空間部12の外周縁13から前記インダクタプレート8の外周縁15にかけて、前記フランジ部14の表面に形成されたテーパ部50である。
【0019】
これによって、インダクタプレート8が収容缶3の底部20に接触したことがセンサ又はスイッチ30によって検出された後、さらに所定時間プランジャポンプ4を稼働させると、収容缶3の底に残ったインキ、グリス等の高粘度流体を、テーパ部50を介して確実に吸い上げることができるものである。
【実施例2】
【0020】
本願発明の実施例2に係るインダクタプレート8の隙間形成構造は、図5(a),(b)で示すように、前記フランジ部14に放射状に形成された複数の溝部51である。
【0021】
この溝部51は、前記インダクタプレート8の外周縁15側で狭く、前記円錐状空間部12の外周縁13側で広くなるように形成されているものである。
【0022】
これによって、インダクタプレート8が収容缶3の底部20に接触したことがセンサ又はスイッチ30によって検出された後、さらに所定時間プランジャポンプ4を稼働させると、収容缶3の底に残ったインキ、グリス等の高粘度流体を、複数の溝部51を介して確実に吸い上げることができるものである。
【符号の説明】
【0023】
1 高粘度流体送給装置
3 収容缶
4 プランジャポンプ
8 インダクタプレート
9 ショベルプレート
11 円錐状空間
12 円錐状空間部
14 フランジ部
41 吸入口
50 テーパ部
51 溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高粘度流体が収納される収容缶に装着され、高粘度流体の吸引/送出に伴って降下する高粘度流体液面に対応して移動するインダクタプレートを具備するプランジャポンプにおいて、
前記インダクタプレートは、前記プランジャポンプの吸入口と連通する略円錐状に形成された円錐状空間部と、該円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁にわたって形成されるフランジ部とによって構成され、前記フランジ部には、前記円錐状空間部と前記収容缶の底部との間に所定の隙間を形成する隙間形成構造が設けられることを特徴とするインダクタプレート。
【請求項2】
前記隙間形成構造は、前記円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁に向かって漸次傾斜するテーパ部であることを特徴とする請求項1記載のインダクタプレート。
【請求項3】
前記隙間形成構造は、前記円錐状空間部の外周縁から前記インダクタプレートの外周縁に向かって放射状に形成された複数の溝部であることを特徴とする請求項1記載のインダクタプレート。
【請求項4】
前記溝部は、インダクタプレートの外周縁で狭く、前記円錐状空間部の外周縁で広くなるように形成されることを特徴とする請求項3記載のインダクタプレート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−74883(P2011−74883A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229360(P2009−229360)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(300008634)株式会社ケイ・ジー・ケイ (8)
【Fターム(参考)】