説明

インダクタンス素子装置の製造方法

【課題】小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現するインダクタンス素子装置の製造方法を得ることを目的とする。
【解決手段】インダクタンス素子装置の製造方法において、実装基板60にコア(T型部21)を固着するコア固着工程と、導電線40の一端を端子ピン31,32(固定位置、端子接続箇所)に固定した後、実装基板60を回転することにより、コア(T型部21)に導電線40を巻回する巻装工程とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装基板上にトランスやチョークコイル等のインダクタンス素子を実装するインダクタンス素子装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子のコアに巻線する方法においては、例えば、端子台付ボビンを用いて行い、まず端子台付ボビンに導電線を巻回してボビン組立体を作製し、このボビン組立体をコアに装着するという方法にて行っていた(例えば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特許第3665585号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、上記トランスやチョークコイル等のインダクタンス素子においては、小型化、省スペース化が要求されるとともに、部品点数の削減やコスト削減の要求も高い。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、小型化、省スペース化が図れ、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現するインダクタンス素子装置の製造方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明のインダクタンス素子装置の製造方法は、実装基板にコアを固着するコア固着工程と、導電線の一端を固定位置に固定した後、実装基板を回転することにより、コアに導電線を巻回する巻装工程とを有することを特徴とする。
【0007】
本発明のインダクタンス素子装置の製造方法によれば、最終的に実装される実装基板にコアが固着され、この状態で導電線をコアに巻線するので、ボビン等を使用することなく、導電線をコアに直接容易に巻回することができるので、小型化、省スペース化が図れ、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、本発明にかかるインダクタンス素子装置の製造方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0009】
(実施の形態)
図1は本実施の形態において対象とするコアの斜視図である。図1において、本実施の形態において対象とするコア20は、分割された2つの部分である概略T字型を成すT型部21と概略C型を成すC型部22とから構成され、フェライトや圧粉磁芯等の磁性部材で形成されている。T型部21は、巻線が巻回される被巻回部である円柱状の中脚部21aと、この中脚部21aを中央部に立設する長尺平板状の延長部21bとから成る。C型部22は、矩形状の一対の側脚部22a,22aと、この2つの側脚部22a,22aを繋ぐ連結部22bとから成る。そしてこのT型部21とC型部22とを対向させて合わせることで、側脚部22a,22aと延長部21bと連結部22bとで構成される矩形枠状部の内側に中脚部21aを有するコア20が構成されている。つまり、コア20は、中脚部(被巻回部)21aが、覆われるものがなく且つ外方に向かって突出するように、2つに分割されている。
【0010】
次ぎに、本実施の形態のインダクタンス素子装置の製造方法について説明する。図2は実装基板にコア20のT型部21を固着する様子を示す斜視である。図2において、まず、実装基板60のコア固着位置60aに、分割されたコア20の一方であるT型部21が、例えば接着剤により固着される(コア固着工程)。実装基板60のコア固着位置60aの周囲に設けられた端子ピン立設位置60bには、巻線の両端部が引出線として絡げられる端子ピン31,32(端子接続箇所)が、はんだ付けにより立設されている(図2中他の端子ピンは省略している)。
【0011】
図3はT型部21の中脚部21aに第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。図4はT型部21の中脚部21aに第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。次ぎに、図3に示されるように、導電線40(40a)の一方の端を端子ピン31に電気的に接続するように絡げ(端子接続工程)、その後、図中矢印で示すように実装基板60を回転させて中脚部21aに導電線40(40a)を巻回することにより巻線を形成する(巻装工程)。そして、所定回数巻回した後に導電線40(40a)の反対側の端を端子ピン32に絡げる(端子接続工程)。次いで、図4に示されるように、他の端子ピン33に別の導電線40(40b)の一方の端を絡げ(端子接続工程)、矢印で示すように実装基板60を回転させて中脚部21aに導電線40(40b)を巻回して巻線を形成し(巻装工程)、所定回数巻回した後に、導電線40(40b)の反対側の端を、端子ピン34に絡げる(端子接続工程)。このように、端子挿入工程と巻装工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成する。
【0012】
なお、上記製造方法においては、導電線40の端を端子ピンに絡げた後、導電線40を中脚部21aに巻回しているが、この限りではなく、例えば、所定の固定位置に導電線40の端を固定しておき、中脚部21aに巻回した後、固定位置から外して端子ピンに接続し直してもよいし、さらには、すべての巻線を中脚部21aに巻回した後、各導電線40の端を端子ピンに接続するようにしてもよい。すなわち、端子挿入工程と巻装工程とは、順序が互いに入れ替わってもよい。また、上記巻装工程においては、自動巻線機を用いて導電線40を巻回してもよいし、手作業により巻回してもよい。
【0013】
また、本実施の形態においては、巻線の両端部が電気的に接続される端子接続箇所として端子ピン31〜34が設けられているが、端子接続箇所は端子ピンに限らず、例えば端子パッド等でもよい。
【0014】
また、本実施の形態のコア巻線方法においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、各巻線間の絶縁は、導電線40に被覆された例えばエナメル等の被覆材により確保している。巻線構造の耐圧を向上させたい場合には、被覆材の厚さを大きくする。
【0015】
図5はT型部21の中脚部21aに第三コイルが巻回された後、C型部22が固着される様子を示す斜視図である。上記端子接続工程と巻装工程とを繰り返して中脚部21aに所定数の巻線を形成した後、接着剤等でT型部21にC型部22を固着する(コア合体工程)。
【0016】
以上のように、本実施の形態のトランス(インダクタンス素子装置)の製造方法は、実装基板60にT型部21を固着するコア固着工程と、導電線40の一端を固定位置に固定した後、T型部21に導電線40を巻回する巻装工程とを有している。また、本実施の形態のトランス(インダクタンス素子装置)は、実装基板60と、実装基板60に固着されたT型部21と、実装基板60に固着された状態のT型部21に巻回されることにより、T型部21に巻装された巻線とを有している。このように、最終的に実装される実装基板60にT型部21が固着され、この状態でT型部21に巻線するので、ボビン等を使用することなく、導電線40を直接T型部21に容易に巻回することができ、小型化、省スペース化を図り、さらに部品点数の削減やコスト削減を実現することができる。
【0017】
なお、本実施の形態においては、対象としたコア20が、T型部21とC型部22から構成されるものであったが、図6に示すような一対のE型部21B,22Bを突き合わせるようないわゆるEE型のコア20Bや、図7に示すようなE型部21CとI型部22Cとを組み合わせるいわゆるEI型のコア20Cであっても適用することができる。
【0018】
図8は中脚部21aに嵌める筒状治具の様子を示す斜視図である。上記実施の形態においては、中脚部21aに直接導電線40を巻回しているが、巻線構造の耐圧をさらに向上させたい場合には、例えば以下のようにする。すなわち、図8に示すように、中脚部21aに円筒状の筒状治具45を嵌め、上記と同じ方法にて筒状治具45の周囲に導電線40を巻回し、コア合体工程の前に筒状治具45を引き抜くことにより、中脚部21aと巻線との間に空間を形成する。このように構成することにより、巻線構造の耐圧、ひいてはこの巻線構造を用いたトランス等の装置の耐圧を向上させることができる。
【0019】
図6に示すEE型コア20Bや図7に示すEI型コア20Cにおいては、被巻回部である中脚部の周囲に側脚部が突出しているので、自動巻線機を用いて導電線を巻回する場合、側脚部と導電線とが干渉して巻回しづらいことがある。このような場合には、図8に示す筒状治具45よりさらに長い(中脚部より所定量長い)筒状治具を用いて、これを中脚部に嵌め、側脚部より高さの高くなった部分に導電線を巻回し、その後、巻線を中脚部に移動(スライド)させるようにしながら筒状治具を引き抜くことにより、中脚部の周囲に側脚部が突出している場合であっても自動巻線機を用いて中脚部に容易に導電線を巻回することができる。
【産業上の利用可能性】
【0020】
以上のように、本発明は、実装基板上にトランスやチョークコイル等のインダクタンス素子を実装するインダクタンス素子装置の製造方法に適用されて有効なものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施の形態において対象とするコアの斜視図である。
【図2】実装基板にコアのT型部を固着する様子を示す斜視図である。
【図3】T型部の中脚部に第一コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図4】T型部の中脚部に第二コイルが巻回された様子を示す斜視図である。
【図5】T型部の中脚部に第三コイルが巻回された後、C型部が固着される様子を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態において対象とする他の形状のコアであるEE型コアの斜視図である。
【図7】本実施の形態において対象とする他の形状のコアであるEI型コアの斜視図である。
【図8】中脚部と巻線との間に空間を形成する目的で中脚部に筒状治具を嵌める様子を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0022】
20 コア
21 T型部
21a 中脚部(被巻回部)
21b 延長部
22 C型部
22a 側脚部
22b 連結部
31〜34 端子ピン(固定位置、端子接続箇所)
40 導電線
45 筒状治具
60 実装基板
60a コア固着位置
60b 端子ピン立設位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板にコアを固着するコア固着工程と、
導電線の一端を固定位置に固定した後、前記実装基板を回転することにより、前記コアに前記導電線を巻回する巻装工程と
を有することを特徴とするインダクタンス素子装置の製造方法。
【請求項2】
前記導電線の端を端子接続箇所に接続する端子接続工程を
さらに有することを特徴とするインダクタンス素子装置の製造方法。
【請求項3】
前記コア固着工程にて、前記実装基板に固着される前記コアは、被巻回部が突出するように少なくとも2つに分割されたものである
ことを特徴とする請求項1または2に記載のインダクタンス素子装置の製造方法。
【請求項4】
前記コアに着脱自在に嵌められる筒状治具を用いて、
前記巻装工程においては、前記コアに前記筒状治具を嵌めて該筒状治具の周囲に前記導電線を巻回した後、当該筒状治具を外して、前記コアに前記導電線を巻回することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインダクタンス素子装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−243855(P2008−243855A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77843(P2007−77843)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(390013723)デンセイ・ラムダ株式会社 (272)
【Fターム(参考)】