説明

インドール類およびそれを含む医薬組成物

【課題】 経口吸収性の良いβ3−アドレナリン受容体刺激作用を有する化合物を提供する。
【解決手段】式(I):
【化1】


(式中、R1は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、ハロゲン原子等を表す。R2は水素原子等を表す。R3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、水素原子等を表す。R7は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、ハロゲン原子等を表す。R8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。R9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアリール基等を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品として有用であり、経口吸収性に優れた新規なインドール類およびその薬学的に許容される塩に関するものである。
【背景技術】
【0002】
交感神経のβ−アドレナリン受容体にはβ1、β2およびβ3として分類される3種類のサブタイプが存在し、それらは特定の生体内組織に分布し、それぞれが特有の機能を有することが知られている。
例えば、β1−アドレナリン受容体は主に心臓に存在し、当該受容体を介する刺激は心拍数の増加、心収縮力の増強を引き起こす。β2−アドレナリン受容体は主に血管、気管支および子宮の平滑筋に存在し、当該受容体を介する刺激はそれぞれ血管および気管支の拡張および子宮収縮の抑制をもたらす。また、β3−アドレナリン受容体は主に脂肪細胞、胆嚢および腸管に存在し、その他に脳、肝臓、胃、前立腺等にも存在することが知られており、当該受容体を介する刺激により脂肪の分解亢進作用、腸管運動の抑制作用、グルコースの取り込み促進作用、抗うつ作用等が引き起こされることが報告されている。
また、最近、ヒト膀胱にも主としてβ3−アドレナリン受容体が存在し、β3−アドレナリン受容体刺激薬によりヒトの膀胱平滑筋が弛緩することが報告されている。
これまでに多くのβ1−アドレナリン受容体刺激薬およびβ2−アドレナリン受容体刺激薬が開発されており、強心剤、気管支拡張剤および切迫流・早産防止剤等として医療に供されている。
一方、β3−アドレナリン受容体刺激薬は、肥満症、高血糖症、腸管運動亢進に起因する過敏性大腸炎等の疾患、頻尿または尿失禁、うつ病、胆石または胆道運動亢進に起因する疾患等の予防または治療薬としての有用性が見出されている。現在、優れたβ3−アドレナリン受容体刺激薬の開発に向けて研究開発が盛んに行われ、β3−アドレナリン受容体刺激作用を有する化合物が知られているが(例えば、特許文献1参照)、β3−アドレナリン受容体刺激薬として上市されるには至っていない。
それ故、優れたβ3−アドレナリン受容体刺激作用を有する新規なβ3−アドレナリン受容体刺激薬の開発が大いに望まれている。
より好ましくは、β1および/またはβ2−アドレナリン受容体刺激作用に比し、強力なβ3−アドレナリン受容体刺激作用を有することにより、β1および/またはβ2−アドレナリン受容体刺激作用に起因する、例えば、心悸亢進、手指の振戦等の副作用が減弱されたより選択性の高い新規なβ3−アドレナリン受容体刺激薬の開発が望まれている。
また、特許文献2で開示されている化合物は、β1および/またはβ2−アドレナリン受容体刺激作用が低いことにより前記心悸亢進、手指の振戦等の副作用が減弱されることが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−255743号公報
【特許文献2】国際公開第03/106418号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、優れたβ3−アドレナリン受容体刺激作用を有する新規なβ3−アドレナリン受容体刺激薬、より好ましくは、β1および/またはβ2−アドレナリン受容体刺激作用に比し、強力なβ3−アドレナリン受容体刺激作用を有することにより、β1および/またはβ2−アドレナリン受容体刺激作用に起因する、例えば、心悸亢進、手指の振戦等の副作用が減弱された選択性の高いβ3−アドレナリン受容体刺激薬について、経口吸収性の良い化合物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従来、国際公開第03/106418号パンフレットで開示されている化合物は、β1および/またはβ2−アドレナリン受容体刺激作用が低いことにより前記心悸亢進、手指の振戦等の副作用が減弱された、医薬として優れた化合物であったが、経口吸収性に改善の余地があることを本発明者らは見出した。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意研究したところ、前記式(I)で表されるインドール誘導体およびその薬学的に許容される塩が優れた経口吸収性を有することを見出し、本発明を成すに至った。
即ち、本発明は以下のものに関する。
【0006】
[1] 式(I):
【0007】
【化1】

(式中、R1は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
2は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
7は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
[2] 式(II):
【0008】
【化2】

(式中、R2は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
[3] R2、R3、R4、R5、およびR6が水素原子である、[2]記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[4] 式(IIa):
【0009】
【化3】

(式中、R8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
[5] R9が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、または置換アルキル基(該置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルカノイル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基およびカルボキシ基から選ばれ、1または複数、同一または異なって存在する。)である、[4]記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[6] (2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)プロパン酸エチルである、[1]記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[7] (2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)−3−メチルブタン酸エチルである、[1]記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[8] (2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)ペンタン酸エチルである、[1]記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
[9] [1]〜[8]のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
[10] [1]〜[8]のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する疾患の治療剤。
[11] 治療が必要な患者に、[1]〜[8]のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することからなる、肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する疾患の治療方法。
[12] [1]〜[8]のいずれかに記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の、肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する疾患の治療剤の製造のための使用。
【0010】
式(III):
【0011】
【化4】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は上記と同じ意味を表す)で表されるカルボン酸誘導体は経口吸収性が十分ではなかったが、式(III)で表される化合物のカルボキシ基をエステル化することにより得られる式(I):
【0012】
【化5】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は上記と同じ意味を表す)で表される化合物は経口吸収性が改善される。
【0013】
以下、式(I)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩を、必要に応じ「本発明化合物」と総称する。
【発明の効果】
【0014】
本発明化合物は、経口吸収性に優れたβ3−アドレナリン受容体刺激薬として、例えば肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する過敏性大腸炎等の疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する胃炎、胃・十二指腸潰瘍、腸炎、過敏性大腸症候群、胆のう・胆道疾患、または尿路結石症等の疾患の治療等に有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明における各種の用語を詳細に説明すると次の通りである。なお、特に指示のない限り、各々の基の説明は他の基の一部である場合も含む。
【0016】
ハロゲン原子としては例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
アルキル基としては、例えば直鎖または分枝した炭素原子数1〜6個のアルキル基等が挙げられ、具体的には例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、2−ブチル、2−メチルプロピル、1,1−ジメチルエチル、ペンチル、3−ペンチル、3−メチルブチル、ヘキシル、3−ヘキシル、4−メチルペンチル等が挙げられる。好ましいアルキル基としては、例えば直鎖または分枝した炭素原子数1〜4個のアルキル基等が挙げられる。
アルコキシ基としては、上記アルキル基の結合手に酸素原子が一つ結合した基が挙げられる。
【0017】
アルケニル基としては、例えばビニル、アリル、プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等の直鎖または分枝した炭素原子数6以下のアルケニル基等が挙げられる。
アルキニル基としては、例えばエチニル、プロパルギル、1−ブチニル、2−ブチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、2−ヘキシニル等の直鎖または分枝した炭素原子数6以下のアルキニル基等が挙げられる。
シクロアルキル基としては、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどの3〜8員環のシクロアルキル基等が挙げられる。
アルカノイル基としては、例えばホルミル、アセチルまたはプロパノイル等の炭素原子数1〜6のアルカノイル基等が挙げられる。
アラルキル基のアリール部分としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数10以下のアリール基等が、アルキル部分としては、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル等の炭素原子数6以下のアルキル基等が挙げられる。代表的なアラルキル基としては、例えばベンジル基、1−または2−フェネチル基等が挙げられる。
【0018】
置換アルキル基、置換アルコキシ基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、または置換シクロアルキル基の置換基は一個または同一もしくは異なって複数個あってもよく、置換基としては、例えばハロゲン原子、シアノ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基、水酸基、アルコキシ基、アルカノイルオキシ基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、カルバモイル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、カルボキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルチオ基、アルキルスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アルカノイルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、フタルイミド基、アルカノイル基、アリールチオ基、アリールスルホニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基、アリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)またはヘテロアリール基(ハロゲン原子、アルキル基、またはアルコキシ基等によって、1または複数、同一または異なって置換されていてもよい)等が挙げられる。
【0019】
アリール基としては、例えばフェニル、1−または2−ナフチル等の炭素原子数10以下のアリール基等が挙げられる。
ヘテロアリール基としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子からなる群から選ばれる1〜4個のヘテロ原子を含有する、5〜10員の単環または二環のヘテロアリール基等が挙げられる。具体的には例えば、ピリジル、フリル、チエニル、キノリル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、またはインドリル等が挙げられる。
【0020】
置換アリール基および置換アラルキル基における置換基としては、1または複数、同一または異なって、例えばハロゲン原子、ハロゲン原子で置換されてもよいアルキル基、ハロゲン原子で置換されてもよいアルコキシ基、またはニトロ基等が挙げられる。好ましい置換基としてはメトキシ等のアルコキシ基が挙げられる。
【0021】
アルキルチオ基としては、上記アルキル基の結合部位に硫黄原子が1つ結合した基が挙げられる。
アルキルスルフィニル基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−S(O)−で表される基が1つ結合した基が挙げられる。
アルキルスルホニル基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−SO2−で表される基が1つ結合した基が挙げられる。
アルコキシカルボニル基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−OC(=O)−で表される基の酸素原子側が結合した基が挙げられる。
アルカノイル基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−C(=O)−で表される基が1つ結合した基が挙げられる。
アルカノイルアミノ基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−NHC(=O)−で表される基の炭素原子側が結合し、さらに窒素原子上にC1〜C8アルキル基等が置換していてもよい基が挙げられる。
アルキルアミノカルボニル基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−C(=O)NH−で表される基の窒素原子側が結合し、さらに窒素原子上にC1〜C8アルキル基等が置換していてもよい基が挙げられる。
モノもしくはジアルキルアミノ基としては、アミノ基の水素が一つまたは両方が独立に、置換もしくは無置換のアルキル基で置換された基が挙げられる。
アルキルスルホニルアミノ基は、上記アルキル基の結合部位に式:−NHSO2−で表される基の硫黄原子側が結合し、さらに窒素原子上にC1〜C8アルキル基等が置換していてもよい基が挙げられる。
アリールチオ基としては、上記アリール基の結合部位に硫黄原子が1つ結合した基が挙げられる。
アリールスルホニル基としては、上記アリール基の結合部位に式:−SO2−で表される基が1つ結合した基が挙げられる。
アルカノイルオキシ基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−OC(=O)−で表される基の炭素原子側が結合した基が挙げられる。
アルコキシカルボニルオキシ基としては、上記アルキル基の結合部位に式:−OC(=O)O−で表される基が結合した基が挙げられる。
【0022】
9における置換アルキル基の置換基としては、好ましくは、例えば、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基またはシクロアルキルオキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0023】
次に本発明の合成方法および合成中間体について詳細に説明する。
(A)式(I)で表される化合物の合成方法
【0024】
【化6】

(式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR9は上記と同じ意味を表す)
式(III)で表される化合物は、文献に開示されている方法で合成できる。(例えば、WO03/106418等参照。)
式(I)で表される化合物は、式(III)で表される化合物またはその塩を、常法によりエステル化、またはエステル交換することにより得ることができる。
例えば、式(III)で表される化合物をアルコール(R9OH)に溶解し、必要に応じて補助溶媒を使用し、酸の存在下で、0〜100℃、好ましくは20〜50℃の温度で処理することで式(I)で表される化合物が得られる。
この反応にとくに適する酸は、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸などを用いることが可能であり、好ましくは塩酸、臭化水素酸、硫酸などの無機酸が挙げられる。
補助溶媒としては、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
【0025】
本発明化合物は、常法に従いその薬学的に許容される塩とすることができる。このような塩としては塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸との酸付加塩、ギ酸、酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸との酸付加塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、ピリジン、リジン等の有機塩基との塩を挙げることができる。
【0026】
本発明化合物には水やエタノール等の薬学的に許容される溶媒との溶媒和物も含まれる。
【0027】
前記製造方法により得られる本発明化合物は、慣用の分離手段である分別再結晶法、クロマトグラフィーを用いた精製方法、溶媒抽出法、再沈殿等により単離精製することができる。
またいずれの製法においても得られる生成物は、反応条件により酸付加塩または遊離塩基の形をとる。これらの生成物は常法により所望の酸付加塩または遊離塩基の形に変換することができる。
前記各製法によって得られる本発明の化合物または原料化合物がラセミ体またはジアステレオマー混合物である場合には、常法、例えば欧州特許出願公開第455006号明細書に記載の方法に従って各立体異性体に分離することができる。
なお、以上説明した反応において、特定の保護基を例示した場合に限らず、各出発化合物がカルボキシ基や水酸基、アミノ基のような、反応に活性な基を有する場合には、これらの基を予め適当な保護基で保護しておき、本反応を実施した後に保護基を除去することにより、目的化合物を製造することができる。保護、脱保護の方法としては各々の保護基に応じ、文献(例えば、Green, T. W.およびWuts, P. G. M., Protective Groups in Organic Synthesis, John Wiley & Sons, Inc. (1999)等)記載の方法により行うことができる。
【0028】
本発明化合物は、これらを医薬として用いるにあたり経口的または非経口的に投与することができる。すなわち通常用いられる投与形態、例えば粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、あるいは、例えば、その溶液、乳剤、懸濁液の剤型にしたものを注射の型で非経口投与することができる。坐剤の型で直腸投与することもできる。前記の適当な投与剤型は、例えば、許容される通常の担体、賦型剤、結合剤、安定剤、希釈剤に本発明化合物を配合することにより製造することができる。注射剤型で用いる場合には、例えば、許容される緩衝剤、溶解補助剤、等張剤を添加することもできる。投与量および投与回数は、例えば、対象疾患、症状、年齢、体重、投与形態によって異なるが、通常は成人に対し1日あたり0.1〜2000mg好ましくは1〜200mgを1回または数回(例えば2〜4回)に分けて投与することができる。
【0029】
以下に、参考例、実施例および試験例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0030】
実施例1
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)プロパン酸エチル (化合物2)
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)プロパン酸(化合物1)(3.273g,8.86mmol)のエタノール(65mL)溶液に、4規定塩酸ジオキサン溶液(26mL)を加えて室温で2時間攪拌した。反応液の溶媒を留去した後、残渣に飽和重曹水とクロロホルムを加えて分配抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥したのち、セライトを用いて濾過した。濾液の溶媒を留去して、アモルファス状の表題化合物(3.47g,収率99%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.26(3H,t,J=7.1Hz),1.69(3H,d,J=6.8Hz),2.66(1H,dd,J=12.3,9.4Hz),2.91-3.06(5H,m),4.22(2H,q,J=7.1Hz),4.67(1H,dd,J=9.3,3.5Hz), 4.88(1H,q,J=6.8Hz),6.58(1H,d,J=7.7Hz),6.98(1H,dd,J=7.9,7.7Hz),7.03(1H,d,J=2.1Hz),7.24-7.26(2H,m),7.68(1H,ddd,J=7.8,2.0,1.6Hz),8.51(1H,dd,J=4.8,1.6Hz),8.56(1H,d,J=2.0Hz),8.58(1H,brs).
【0031】
実施例2
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)−3−メチルブタン酸エチル (化合物3)
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)−3−メチルブタン酸(化合物5)(100mg,0.252mmol)のエタノール(5mL)溶液に、4規定塩酸ジオキサン溶液(2mL)を加えて40℃で3.5時間攪拌した。反応液の溶媒を留去した後、残渣に飽和重曹水とクロロホルムを加えて分配抽出した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過したのち、溶媒を留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エタノール/クロロホルム = 1/5〜5/1)にて精製してアモルファス状の表題化合物(101mg,収率94%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.13(3H,d,J=6.9Hz),1.13(3H,d,J=6.8Hz),1.23(3H,t,J=7.1Hz),2.33-2.37(1H,m),2.66(1H,dd,J=12.3,9.4Hz),2.88-3.03(5H,m),4.19(2H,q,J=7.1Hz),4.52(1H,d,J=5.5Hz),4.68(1H,dd,J=9.3,3.5Hz),6.57(1H,d,J=7.7Hz),6.95-6.99(2H,m),7.22-7.25(2H,m),7.67(1H,ddd,J=7.8,2.1,1.8Hz),8.48(1H,dd,J=4.8,1.8Hz),8.55(1H,d,J=2.1Hz),8.69(1H,brs).
【0032】
実施例3
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)ペンタン酸エチル (化合物4)
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)ペンタン酸(化合物6)(205mg,0.516mmol)のエタノール(5mL)溶液に、1規定塩酸ジエチルエーテル溶液(1mL)を加えて50℃で10時間攪拌した。反応液を飽和重曹水に注ぎ、クロロホルムを加えて分配抽出した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥、ろ過したのち、溶媒を留去して、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(エタノール/クロロホルム = 1/5〜1/3)にて精製して表題化合物(166mg,収率75%)を得た。
1H-NMR(CDCl3)δ:1.01(3H, t, J= 7.4 Hz), 1.24 (3H, t, J= 7.1 Hz), 1.54-1.68 (2H, m), 1.93-2.04 (2H, m), 2.66 (1H, dd, J= 12.2, 9.4 Hz), 2.92-3.07 (5H, m), 4.20 (2h, q, J= 7.1 Hz), 4.67 (1H, dd, J= 9.4, 3.6 Hz), 4.75 (1H, dd, J= 8.0, 4.8 Hz), 6.56 (1H, d, J= 7.7 Hz), 6.98 (1H, dd, J= 8.0, 7.7 Hz), 7.03 (1h, d, J= 2.1 Hz), 7.23-7.26 (2H, m), 7.69 (1H, ddd, J= 7.9, 2.1, 1.6 Hz), 8.51 (1H, dd, J= 4.8, 1.6 Hz), 8.53 (1H, br s), 8.57 (1H, d, J= 2.1 Hz).
【0033】
試験例1
化合物1〜4を使用し、Crj:CD(SD)系雄性ラット(日本チャールス・リバー) 7週齢に非絶食下、それぞれ10mg/kgで経口投与した。投与後15、30分、1、2、4、6、24時間後にエーテル麻酔下採血し、室温で約30分放置後、遠心分離(3,000 r.p.m., 10分)して血清を得た。得られた血清は、分析まで-20℃で保存した。血清50 μLに内部標準(I.S.)溶液100μLを加えて攪拌後、遠心分離(10,000 r.p.m., 2分)した。上清約100μLに水100μLを加えて攪拌したものをセントリカット(倉敷紡績)で遠心濾過(10,000 r.p.m., 1分)し、濾液10μLをLC-MS/MSで分析した。その結果、化合物2を経口投与したときの生物学的利用率(BA)は20.9%、化合物3を経口投与したときのBAは11.8%、化合物4を経口投与したときのBAは11.0%となり、カルボン酸体である化合物1を経口投与した場合(生物学的利用率:1.2%)と比べて、優れた経口吸収性を持つことが確認された。表1および図1に血清中薬物濃度推移データを示した。なお、試験化合物2を投与したいずれのマウスの血液からも当該試験化合物は一切認められず化合物1のみが検出され、試験化合物3を投与したいずれのマウスの血液からも当該試験化合物は一切認められず化合物5のみが検出され、試験化合物4を投与したいずれのマウスの血液からも当該試験化合物は一切認められず化合物6のみが検出された。
BAは静脈内投与のデータから算出した(下記表2参照)。
【0034】
【表1】

N.D.:検出限界以下
【0035】
生物学的利用率算出の際に用いた静脈内投与データ(投与量は1mg/kg)を表2に示す。
【0036】
【表2】

N.D.:検出限界以下
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の化合物は経口吸収性に優れており、β3−アドレナリン受容体刺激薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明化合物のラット経口吸収性評価試験データを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】

(式中、R1は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
2は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
7は、存在しないか、1つまたは複数、同一もしくは異なって存在し置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基、またはアミノ基を表す。
8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
式(II):
【化2】

(式中、R2は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
3、R4、R5、およびR6はそれぞれ独立して、水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
2、R3、R4、R5、およびR6が水素原子である、請求項2記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
式(IIa):
【化3】

(式中、R8は水素原子、または置換もしくは無置換のアルキル基を表す。
9は、置換もしくは無置換のアルキル基、置換もしくは無置換のアルケニル基、置換もしくは無置換のアルキニル基、置換もしくは無置換のシクロアルキル基、置換もしくは無置換のアラルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表す。)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
9が、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル基、アリール基、または置換アルキル基(該置換基は、ハロゲン原子、水酸基、アルカノイル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、シアノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、シクロアルキルオキシカルボニルオキシ基およびカルボキシ基から選ばれ、1または複数、同一または異なって存在する。)である、請求項4記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)プロパン酸エチルである、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)−3−メチルブタン酸エチルである、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
(2S)−2−((3−(2−(((2R)−2−ヒドロキシ−2−ピリジン−3−イルエチル)アミノ)エチル)−1H−インドール−7−イル)オキシ)ペンタン酸エチルである、請求項1記載の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する医薬組成物。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩を有効成分として含有する、肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する疾患の治療剤。
【請求項11】
治療が必要な患者に、請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の有効量を投与することからなる、肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する疾患の治療方法。
【請求項12】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の化合物またはその薬学的に許容される塩の、肥満症、高血糖症、高インスリン血症、糖尿病、高中性脂肪血症、頻尿、尿失禁、過活動膀胱症候群、うつ病、腸管運動亢進に起因する疾患、胆石、または胆管運動亢進に起因する疾患の治療剤の製造のための使用。


【図1】
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【公開番号】特開2008−100916(P2008−100916A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−14983(P2005−14983)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000002912)大日本住友製薬株式会社 (332)
【Fターム(参考)】