説明

インバータ装置の防水カバー

【課題】小形コンパクトな構成で高い防水性を確保しつつ、冷却ファンを通じてインバータのユニットケースに導風した冷却風を効率よく周囲に排気する防水カバーを提供する。
【解決手段】ユニットケース1の前部ケース2にパワー半導体モジュールを含む回路部を収容し、後部ケース3の風胴に前記パワー半導体モジュールの放熱フィン,およびに冷却ファン6を配置し、該冷却ファン6を通じて風胴内に導風した冷却風をユニットケースから上方に排気するようにしたインバータ装置の防水カバー8を、樹脂成型品としてユニットケース1の頂部に被せ、かつ該防水カバー8の前部の左右両サイドには下向きに開放した排気放出路8aを形成するとともに、カバー内方の後部には冷却ファン6の排気口周域に沿って排気導風ガイド8bを起立形成し、冷却ファン6を通じて防水カバー8の内側に吐き出した冷却風の排気流を前記の排気放出路8aを通じて周囲に放出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用インバータを対象に、そのユニットケースの風胴に配した冷却ファンの排気性能を確保しつつ、周囲から飛沫,噴流水が冷却ファンに浸入するのを防ぐようにしたインバータ装置の防水カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
まず、頭記した汎用インバータの構成を図6,図7に示す。図において、1は前部ケース2と後部ケース3との組立体からなるユニットケースで、前部ケース2には主回路のパワー半導体モジュールを含む電子部品で構成した回路部4を収容し、後部ケース3には発熱部品である前記パワー半導体モジュールの放熱フィン5,および該放熱フィン5に冷却風を導風する冷却ファン6を内蔵している。なお、2aは前部ケース2の底面に開口した配線ケーブルの配管孔、7は前部ケース2の前面に配した操作パネルである。
【0003】
ここで、回路部4を収容した前部ケース2は周面および天井面が外郭壁で覆われた箱形筐体であるのに対し、後部ケース3は上下端面を開放して前部ケースの背後に結合した風胴構造になり、その頂部には冷却ファン6を配置し、運転時には冷却ファン6を通じて風胴内に導風した冷却風を図示矢印のようにユニットケース1から上方に吐き出して周囲に排気放流するようにしている。
【0004】
一方、前記インバータ装置は、その設置ロケーションの環境によって防水性が要求される場合がある。すなわち、インバータ装置を屋外の機械設備に併設する場合には、雨水や機械設備側から飛来する散水の飛沫がインバータ装置に降りかかる。この場合に電子回路部品は周囲を壁で覆われた箱型の前部ケース2に収容されているのに対して、冷却ファン6を内蔵した後部ケース3はその頂面に冷却風の排気口が開放しているために周囲から飛来する散水,噴流水が冷却ファン6(電装品)に浸入し、このままでは冷却ファンの電気系統が故障するおそれがある。
【0005】
そこで、従来ではインバータ装置を防水,防滴構造の収納盤(オプション品)に収容して使用現場に設置するようにし、その構成例としてユニットケースの外周,および天井面を包囲する板金製の箱形ケースの上部側面に防滴型の排気口を開口した構造になるインバータ装置の収納盤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−151874号公報(図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、先記の特許文献1に開示されている板金製の防水収納盤は材料費,製作費が高く、さらに盤の内方にはインバータ装置のユニットケースから吐き出される冷却風の排気通風路を確保するために、収納盤の外形サイズが大形化してインバータ装置の据付けに大きな設置スペースが必要となる。
【0008】
そこで、本発明は従来の板金製収納盤に代えて、安価な製作コストで製造できる樹脂成形品のカバーを採用し、しかも大きな据付スペースを取らない小形コンパクトな構成で高い防水,防滴機能を確保しつつ、インバータ装置のユニットケースに内蔵した冷却ファンの排気性能を損なわずユニットケースに導風した冷却風を効率よく周囲に排気放流できるよう巧みに構成したインバータ装置の防水カバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ユニットケースの前部にパワー半導体モジュールを含む回路部を収容し、後部を風胴としてここに前記パワー半導体モジュールの放熱フィン,およびに該放熱フィンに冷却風を導風する冷却ファンを配置し、該冷却ファンを通じて風胴に導風した冷却風をユニットケースから上方に排気放流するようにしたインバータ装置の防水カバーを、前記ユニットケースの上端部を包囲して該ケースの頂部に被せた樹脂成型品で構成し、かつ該カバーの内側には前記冷却ファンを通じてユニットケースから吐き出した排気流をユニットケースの側壁面に沿って下向きに放出する排気導風路を形成する(請求項1)。
【0010】
また、前記構成の防水カバーにおいては、カバー前部の左右両サイドには下向きに開放した排気放出路を形成し、カバー内方の後部には冷却ファンの排気口周域に起立する排気導風ガイドを形成する(請求項2)。
【発明の効果】
【0011】
上記した樹脂製の防水カバーは金型によるモールド成型が可能であり、板金製になる従来の収納盤に比べて安価な材料,製作費で製造できる。また、防水カバーはユニットケースの頂部に被せた小形コンパクトな外形で余分な占有スペースを殆ど必要としない。しかも、防水カバーには下向きに開放した左右両サイドの排気放出路、および冷却ファンの排気口周域に起立して排気を前記放出通路に導風する排気導風ガイドを形成したことにより、周囲からの散水,噴流水が冷却ファンの内部に浸入するのを効果的に防止しつつ、インバータ装置のユニットケース内に配した冷却ファンの排気性能を損なわずに冷却風を効率よく周囲に排気放出できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例による防水カバーの構成図であって、(a)はインバータ装置のユニットケースに装着する前の分解斜視図、(b)は組立状態を表す要部構造の側視断面図である。
【図2】図1における防水カバーの機能説明図であって、(a)は防水機能,(b)は冷却風の排気導風機能を表す図である。
【図3】図1の防水カバーを被着したインバータ装置のユニットケースに導風する冷却風の吸込み,排気経路を表す図である。
【図4】図1における防水カバーの構成図であって、(a)は底面側から見た外形斜視図、(b),(b)はそれぞれ(a)の矢視A−A,B−Bに沿った断面図である。
【図5】図4に示した防水カバーを製作する成型金型の模式図である。
【図6】汎用インバータを対象とするインバータ装置の斜視外形図である。
【図7】図6に示したインバータ装置の内部構造を表す断面側視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を図1〜図5に示す実施例に基づいて説明する。なお、実施例の図中で図6,図7に対応する部材には同じ符号を付してその説明は省略する。
すなわち、図示実施例においては、防水保護等級「4」ないし「5」に準拠する防水仕様のインバータ装置に適用するオプション品として、モールド樹脂製の防水カバー8がユニットケース1の上端部に被せてビス9により固定されている。
【0014】
ここで、防水カバー8は、図4で示すように底面,および背面を開放したアーチ天井形のカバー形状になり、その前半部の横幅をユニットケース1の幅寸法よりも多少大きめに拡大してカバー前部の左右両サイドに下向きに開放した排気放出路8aを形成するとともに、後半部のカバー内方にはユニットケース1の後部ケース3の頂部に配した冷却ファン6の排気口周域に沿ってその左右辺,および後辺の三辺を壁で取り囲む排気導風ガイド8bが起立形成されている。
【0015】
なお、かかるアーチ形状の防水カバー8(樹脂成型品)は、例えば図5の模式図で表すようなキャビティプレート10a,コアプレート10b,サイドコア10cからなる成型金型10を用いてモールド成形することができる。
【0016】
次に、前記構成になる防水カバー8の防水,排気機能を図2,図3により説明する。すなわち、図1(b)のようにユニットケース1の上端部を包囲して該ユニットケースの頂部に防水カバー8を被着した組立状態では、ユニットケース1の天井面,および上端部周域を防水カバー8が覆っている。また、前部ケース2の左右側面に沿って防水カバー8には排気放出路8aが下向きに開放し、該排気放出路8aと後部ケース3の風胴頂部に配した冷却ファン6の排気口との間に前記の排気導風ガイド8bを経由する排気導風路8cが防水カバー8の内方に形成される。
【0017】
これにより、インバータ装置を現地設備に据付け状態で周囲から降り掛かる散水,噴流水は、図2(a)で表すように防水カバー8に遮蔽されてユニットケース1の後部ケース3の頂部に配した冷却ファン3に浸入することがない。なお、防水カバー8の背面は開放しているが、この開放面はインバータ装置を据付けた盤の取付板により塞がれるので防水カバー8の背面側から雨水,散水の飛沫が直接浸入することがなく、また取付板との間の隙間を伝わって水がカバー内に浸入しても、前記の導風ガイド8bが止水板として機能するので冷却ファン6の内方に浸入するおそれはない。
【0018】
一方、後部ケース3の底面側から吸い込んで風胴内に導風した冷却風(図3参照)は、図1(b)の図中に矢印で表すように、冷却ファン6を通じて防水カバー8の内方に吐き出した後、排気導風ガイド8bの壁面に沿って風向ガイドされながら排気導風路8cを前方に向けて流れ、ここから防水カバーの天井アーチ面に沿ってカバー前部の左右両サイドに開口した下向きの排気放出路8aを流下して周囲に放流される。
【0019】
これにより、冷却ファン6を通じて防水カバー8の内方に吐き出した冷却風の排気流は、排気経路の途中で大きな風損を生じることなしにカバー内方の排気導風路8cから下向きに開口する排気放出路8aを経て効率よく排気させることができる。しかも、樹脂成形品の防水カバー8は、従来の板金製になる収納盤に比べて安価な材料費,製作費で製造できるほか、余分な占有スペースを要しない小形コンパクトな形状でインバータ装置のユニットケースに装着することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 ユニットケース
2 前部ケース
3 後部ケース(風胴)
4 回路部
5 放熱フィン
6 冷却ファン
8 防水カバー
8a 排気放出路
8b 排気導風ガイド
8c 排気導風路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユニットケースの前部にパワー半導体モジュールを含む回路部を収容し、後部を風胴としてここに前記パワー半導体モジュールの放熱フィン,およびに該放熱フィンに冷却風を導風する冷却ファンを配置し、該冷却ファンを通じて風胴に導風した冷却風をユニットケースから上方に排気放流するようにしたインバータ装置の防水カバーであって、
該防水カバーが前記ユニットケースの上端部を包囲して該ケースの頂部に被せた樹脂成型品になり、かつ該カバーの内側に前記冷却ファンを通じてユニットケースから吐き出した排気流をユニットケースの側壁面に沿って下向きに放出する排気導風路を形成したことを特徴とするインバータ装置の防水カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の防水カバーにおいて、カバー前部の左右両サイドには下向きに開放した排気放出通路を形成し、カバー内方の後部には冷却ファンの排気口周域に起立する排気導風ガイドを形成したことを特徴とするインバータ装置の防水カバー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−9554(P2013−9554A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−141642(P2011−141642)
【出願日】平成23年6月27日(2011.6.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】