説明

インパクトプリンタ

【課題】定期的な保守点検をすることなく、印字不良の発生を防止する手段を提供する。
【解決手段】インパクトプリンタの印字ヘッド31の吸入方向の上流側に、印字対象媒体Sの印字面を直接押圧しながら転動する押圧ローラ46を取付け、その押圧ローラ46の吸入方向の上流側の直近の印字面を押圧する先端48aを有する可動ガイド48を設け、印字ヘッド31による印字中に、可動ガイド48の先端48aを印字面を押圧する押圧位置に位置させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現金自動預払機等の自動取引装置に装着され、払込書等の単票媒体および通帳等の冊子状媒体に印字を行うインパクトプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインパクトプリンタは、印字方向に移動しながら紙葉状の印字媒体上に印字を行う印字ヘッドと、印字ヘッドに印字媒体を挟んで対向配置された一体型のプラテンと、印字ヘッドの媒体吸入方向Aの下流側の直近の印字媒体上を押圧するガイドベルトと、印字ヘッドに取付けられた、ガイドベルトを押圧するメディアフォローとを備え、印字ヘッドにより印字媒体上に印字するときは、メディアフォローによりガイドベルトを介して印字媒体をプラテンとの間で押圧し、印字ヘッドの移動と共にメディアフォローをガイドベルト上で摺動させて、印字媒体の印字方向への位置ずれを防止している(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
また、縦綴じ通帳(印字方向の中央に、その直交方向に沿って綴じ目が設けられた通帳をいう。)に印字を行うインパクトプリンタは、印字方向に移動しながら縦綴じ通帳の見開きページに印字する印字ヘッドと、印字ヘッドの先端部に設けられた用紙ガイドと、印字ヘッドに通帳を挟んで対向配置され、印字ヘッドに対する印字高さを位置決めする3分割型のプラテンと、プラテンを昇降させるカム機構とを備え、綴じ目を載置する中央プラテンを、その両側に配置されたプラテンにバネで支持させ、印字ヘッドにより通帳の見開きページ上に印字するときは、縦綴じ通帳の綴じ目が位置する中央プラテンを下方に沈め、両側のプラテンによりそれぞれの見開きページを用紙ガイドに押し当てて印字している(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−130179号公報(主に、公報第4ページ右上欄15行〜右下欄20行、第6図、第7図)
【特許文献2】特開平8−337022号公報(段落0006−0008、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の特許文献1および特許文献2の技術においては、印字対象の媒体を1枚の紙葉からなる単票または冊子状の通帳に限定しているため、上記のような印字動作を行わせることができるが、払込書等の単票媒体および縦綴じ通帳や横綴じ通帳(印字方向の直交方向の中央に、印字方向に沿って綴じ目が設けられた通帳をいう。)等の冊子状媒体を、インパクト式の一つの印字ヘッドで印字する場合には、特許文献2のように3分割のプラテンを用いて単票媒体に印字しようとすると、中央プラテンと両側のプラテンとにより単票媒体を用紙ガイドに押し当てて印字するときに、単票媒体上を摺動する用紙ガイドにより、中央プラテンと両側のプラテンとの間に存在する隙間に単票媒体が入り込み、そこがシワになって印字カスレ等の印字不良が発生する場合があるという問題や、隙間上に位置する印字ピンが隙間に入り込み、単票媒体に印字ピンによる穴が開いてしまう場合があるという問題が生ずる。
【0006】
このため、特許文献1のような一体型のプラテンを用いてガイドベルト上を摺動するメディアフォローによって単票媒体および冊子状媒体を押圧しながら印字すると、単票媒体においては、上記した問題の発生や印字媒体の印字面の印字方向への位置ずれ等の印字不良を防止することは可能であるが、ガイドベルトは印字ピンの突出量に相当する厚さを有する薄い樹脂フィルムやステンレス板等が用いられ、メディアフォローの摺動によってガイドベルトが磨耗するため、ガイドベルトの定期的な交換が必要になり、冊子状媒体においては、ガイドベルトが繰返し屈曲することになり、ガイドベルトが磨耗や疲労によって破損するため、ガイドベルトの定期的な交換が必要になり、保守点検のための負担を増大させるという問題がある。
【0007】
また、ガイドベルトが破損した場合には、印字ヘッドと印字面との隙間が適正にならず、印字不良や、ガイドベルトの破損した部分に媒体が引っ掛かってジャムが発生する場合があるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたもので、定期的な保守点検をすることなく、印字不良の発生を防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記課題を解決するために、吸入した印字対象媒体に、前記印字対象媒体の吸入方向の直交方向である印字方向に移動しながら印字を行う印字ヘッドを備えたインパクトプリンタにおいて、前記印字ヘッドの前記吸入方向の上流側に取付けられ、前記印字対象媒体の印字面を直接押圧しながら転動する押圧ローラと、前記押圧ローラの前記吸入方向の上流側の直近の前記印字面を押圧する先端を有し、前記印字面を押圧する押圧位置と、前記印字面から退避する退避位置との間を回動する可動ガイドとを設け、前記印字ヘッドによる印字中に、前記可動ガイドを前記押圧位置に位置させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
これにより、本発明は、印字中に可動ガイドの先端で押圧ローラの押圧部の直近の印字面を押圧して印字面の位置ずれ等の印字不良を防止することができると共に、定期的な保守点検を行うことなく良好な印字品質を長期間に亘って保つことができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例の現金自動預払機の外観を示す説明図
【図2】実施例の媒体処理装置の構成を示す説明図
【図3】実施例の印字ユニットの側面を示す説明図
【図4】実施例の印字ユニットの上面を示す説明図
【図5】実施例の印字ヘッドの正面を示す説明図
【図6】実施例の可動ガイドの外観を示す説明図
【図7】実施例の印字ユニットの吸入時の状態を示す説明図
【図8】実施例の印字ユニットの印字動作を示す説明図
【図9】実施例の印字ユニットの印字動作を示す説明図
【図10】実施例の印字ユニットの排出搬送動作を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明によるインパクトプリンタの実施例について説明する。
【実施例】
【0013】
図1において、1は本体装置としての現金自動預払機であり、銀行等の金融機関の支店やコンビニエンスストア等の店舗に設置され、利用者が選択した取引の入力を受付け、これを基に図示しないホストコンピュータと交信して利用者との取引処理を自動で行う機能等を有している。
【0014】
2は操作表示部であり、現金自動預払機1の正面に設けられ、LCD等の表示画面とタッチパネル等の入力手段との組合せで構成されており、表示画面に取引選択画面や各種の入力画面、利用者の処置を促す画面等を表示する他、入力手段により利用者からの入力を受付ける。
【0015】
3はカード処理部であり、吸入された利用者のキャッシュカードやクレジットカード等の取引カードの磁気ストライプやICチップ等に記録されている取引カードの金融機関名や支店名、口座番号、口座科目等の口座情報等からなるカード情報を読み書きする機能を有すると共に明細票等に取引内容等を印字する機能を有している。
【0016】
4は通帳ユニットであり、利用者が持参した冊子状媒体としての通帳の磁気ストライプやICチップ等に記録されている通帳情報を読み書きする機能を有すると共に取引内容等を利用者の通帳に記帳する機能を有しており、その正面側には利用者の通帳を吸入すると共に記帳済の通帳を排出するための通帳吸排口4aが設けられている。
【0017】
5は紙幣処理部であり、入金取引時等に利用者が投入した紙幣を受入れ、これを鑑別および計数して収納庫に収納し、出金取引時等に収納庫から利用者に支払う紙幣を繰出し、これを計数して利用者に引渡す機能を有している。
【0018】
6は硬貨処理部であり、入金取引時等に利用者が投入した硬貨を受入れ、これを鑑別および計数して収納庫に収納し、出金取引時等に収納庫から利用者に支払う硬貨を繰出し、これを計数して利用者に引渡す機能を有している。
【0019】
7は単票ユニットであり、利用者が持参した1枚の紙葉からなる水道やガス等の公共料金の払込書等の単票媒体の記入内容を読取る機能等を有しており、その正面側には利用者の単票媒体を吸入すると共に読取不能の単票媒体を利用者に返却するための単票吸入口7aが設けられている。
【0020】
通帳ユニット4は、図2に示すように、通帳の吸入および排出を行うための通帳吸排口4a、通帳吸排口4aを開閉するシャッタ10、吸入された通帳を幅寄せして搬送状態を整位する幅寄せ部11、通帳の磁気ストライプ等に記録されている口座番号や記帳最終ページとその最終行等の通帳情報を読み書きする磁気ヘッドを有する読取書込部12、通帳を搬送するための一対のローラを対向配置した複数の搬送ローラ13を有する通帳搬送路14が設けられており、通帳搬送路14の通帳吸排口4aの近傍には、通帳吸排口4aに印字ページを開いた状態でセットされた通帳の幅(吸入方向と直交する方向の長さをいう。)を検出するための図示しない幅検出センサ、開いた状態で吸入された通帳の吸入方向の長さを検出する図示しない長さ検出センサ等が設けられ、通帳搬送路14の読取書込部12の吸入方向の下流側には、通帳吸排口4aから開いた状態で受入れた通帳のページをめくるページめくり部15、めくられたページのページマークを読取るページマーク読取部16が設けられている。
【0021】
18はインパクトプリンタとしての印字ユニットであり、通帳搬送路14の吸入方向の下流端に直線的に連結する通帳ユニット4内の印字搬送路19に配置され、通帳ユニット4の通帳吸排口4aから吸入された通帳、および単票ユニット7の単票吸入口7aから吸入された単票媒体の印字面に所定の記載内容を印字する機能を有している。
【0022】
20は通帳回収部であり、通帳吸排口4aから排出され、取忘れられた通帳を収納して回収する収納庫であって、印字搬送路19の吸入方向の下流端に配置されている。
【0023】
本実施例の通帳ユニット4は、縦綴じ通帳と横綴じ通帳との2種類の通帳を、混在させて取扱うように構成されている。
【0024】
単票ユニット7は、払込先の口座番号や払込金額等が記入された単票媒体である払込書等を取扱うユニットであって、払込書を吸入するための単票吸入口7a、吸入された払込書の記入内容等を読取るスキャナ部22、払込取引の終了後に印字ユニット18で取引日時や取引店舗名等の記載内容が印字された印字処理済の払込書を収納する単票収納庫23、24、および単票媒体を搬送するための一対のローラを対向配置した複数の搬送ローラ25を有する単票搬送路26等が設けられており、単票搬送路26の単票吸入口7aの反対側の端部は、ページマーク読取部16と印字ユニット18との間の通帳搬送路14と印字搬送路19との連結部に合流している。
【0025】
また、印字搬送路19および単票搬送路26の各分岐部には、通帳や単票媒体の搬送方向を切替える切替ブレード27a〜27dが設けられている。
【0026】
本実施例の媒体処理装置は、通帳ユニット4および通帳ユニット4に単票搬送路26で連結された単票ユニット7で構成され、印字対象媒体である単票媒体および通帳を1つの印字ユニット18を用いて印字処理する機能を有しており、通帳ユニット4およびその上に隣接して併設された単票ユニット7が、現金自動預払機1に並べて装着されている。
【0027】
図3、図4において、31は印字ユニット18の印字ヘッドであり、ドット毎に設けた超鋼ワイヤ等からなる複数の印字ピンを有するインパクト式の印字ヘッドであって、キャリッジ31aのガイド穴に嵌合させた、単票媒体および通帳の吸入方向の直交方向(印字方向という。図4参照)に上下に並設されたガイドレール32a、32bに案内されて印字方向に往復移動し、印字データに応じて突出させた印字ピンにより、単票媒体または通帳の印字面に図示しないインクリボンのインクを転写して所定の記載内容を印字する機能を有している。
【0028】
なお、本実施例の印字ヘッド31は、通常設けられている用紙ガイドが、省略されている。
【0029】
33はプラテンであり、印字対象媒体(単票媒体および通帳)の中で最も印字方向の長さが長い印字対象媒体の印字方向長さより長い長手方向長さを有し、印字ヘッド31側の上面が平面とされその吸入方向の両側に傾斜面33aが形成された一体型のプラテンであって、印字搬送路19を搬送される印字対象媒体を挟んで印字ヘッド31に対向配置され、圧縮コイルスプリング等のバネ部材34によって支持されており、印字ヘッド31から突出する印字ピンによる打撃を受止める機能を有している。
【0030】
また、プラテン33およびバネ部材34は、図示しない駆動源からの駆動力によって回動するカムを有する昇降機構35により昇降可能に支持されており、印字ヘッド31による印字中は、昇降機構35により後述する押圧ローラ46に印字対象媒体を押圧する印字位置へ上昇し、印字中以外の場合は、昇降機構35により押圧ローラ46から離間した離間位置に下降する。
【0031】
更に、バネ部材34は、印刷対象媒体の厚さが変化したときに、押圧ローラ46への押圧力を一定に保つ機能を有している。
【0032】
37は印字ヘッド31の吸入方向の上流側に配置された第1の搬送ローラであり、単票媒体および通帳からなる印字対象媒体の厚さに応じて挟持搬送するためにフィードローラ38およびプレスローラ39を対向配置して形成されたローラ対であって、フィードローラ38のローラ軸38aは、印字ユニット18のサイドフレーム18aに回転自在に支持され、プレスローラ39のローラ軸39aは、サイドフレーム18aに図示しない押圧バネを介してフィードローラ38の方向に往復移動可能に支持されている。
【0033】
また、フィードローラ38およびプレスローラ39は、それぞれ図示しない駆動源からの駆動力により連動して正逆方向に回転駆動され、挟持した印字対象媒体を吸入方向およびその逆方向(排出方向という。)に搬送する。
【0034】
41は印字ヘッド31の吸入方向の下流側に配置された第2の搬送ローラであり、第1の搬送ローラ37と同様に構成された、フィードローラ42およびそのローラ軸42a、プレスローラ43およびそのローラ軸43aを有しており、挟持した印字対象媒体を吸入方向および排出方向に搬送する。
【0035】
また、第1および第2の搬送ローラ37、41の各フィードローラ38、42には、図示しない歯付ベルト等の駆動ベルトが掛渡されており、フィードローラ38と42は同期して回転するよう構成されている。
【0036】
44は上下一対のガイド板で形成された第1の搬送ガイドであり、サイドフレーム18aに固定されてプラテン33の吸入方向の上流側に配置され、フィードローラ38およびプレスローラ39をガイド板の間に突出させる窓部が形成されており、フィードローラ38とプレスローラ39とに挟持されて搬送される印字対象媒体の表裏の面を案内する機能を有している。
【0037】
45は上下一対のガイド板で形成された第2の搬送ガイドであり、サイドフレーム18aに固定されてプラテン33の吸入方向の下流側に配置され、フィードローラ42およびプレスローラ43をガイド板の間に突出させる窓部が形成されており、フィードローラ42とプレスローラ43とに挟持されて搬送される印字対象媒体の表裏の面を案内する機能を有している。
【0038】
本実施例の印字搬送路19は、第1および第2の搬送ローラ37、41、第1および第2の搬送ガイド44、45等で構成される。なお、図4は、第1および第2の搬送ガイド44、45を省略した状態で描いてある。
【0039】
46は押圧ローラであり、転がり軸受等で形成されて印字ヘッド31の吸入方向の上流側に配置され、図5に示すように、プラテン33側の外周面を印字ヘッド31の先端から印字ピンの突出量Tに相当する分突出させた状態で回転軸46aを中心に回転自在に取付けられており、印字動作時に、印字ヘッド31の移動に伴って移動し、上昇させたプラテン33の上面との間で印字対象媒体の印字面をその外周面で直接押圧しながら印字面との摩擦力で転動し、印字ヘッド31の近傍の印字対象媒体をプラテン33に押付けて印字対象媒体を平坦化する機能を有している(図8参照)。
【0040】
48は可動ガイドであり、押圧ローラ46の吸入方向の上流側の、押圧ローラ46の押圧部の直近の印字対象媒体の印字面を押圧する先端48aが形成された、印字対象媒体(単票媒体および通帳)の中で最も長い印字面の印字方向長さを有する印字対象媒体の印字面の印字方向の全長より長い長手方向長さを有する可動部材であって、フィードローラ38のローラ軸38aに回動可能に取付られており、先端48aのローラ軸38aを挟んだ反対側に設けられたリンクピン49(図6参照)に連結するリンク機構50を介して駆動源としてのソレノイド51のプランジャ51aの往復動作により駆動され、印字対象媒体の印字面を押圧する押圧位置(図7〜図9参照)と、印字面から退避する退避位置(図10参照)との間をローラ軸38aを中心に回動し、印字ヘッド31による印字中は、押圧位置に位置して印字対象媒体の印字面の印字方向への移動を防止する機能を有している。
【0041】
本実施例の可動ガイド48の先端48aは、樹脂材料で形成され、図6に示すように、コの字状に形成された可動ガイド48の本体48bに、ネジ等の固定部材53で固定されている。
【0042】
上記した押圧位置は、ソレノイド51へ通電してプランジャ51aを吸引したときの位置であって、そのときの可動ガイド48の先端48aの位置は、そのプラテン33側の角部が、押圧ローラ46のプラテン33側の外周面よりプラテン33側で、プラテン33の吸入方向上流側の傾斜面33a上に位置し、かつ上昇させたプラテン33の上面より下方に位置するようになっている(図7参照)。
【0043】
また、退避位置は、ソレノイド51を非通電としプランジャ51aの吸引を解除して内蔵バネにより突出させたときの位置であって、そのときの可動ガイド48の先端48aの位置は、そのプラテン33側の角部が、押圧ローラ46のプラテン33側の外周面より上方に位置するようになっている(図10参照)。
【0044】
なお、印字ユニット18は、常時は、可動ガイド48が、ソレノイド51を非通電とした退避位置に位置し、プラテン33が、昇降機構35により離間位置に位置しており、図3に示す状態になっている。
【0045】
以下に、図7ないし図10を用いて、本実施例の印字ユニット18による印字処理について説明する。
【0046】
なお、以下に示す各動作は、媒体処理装置の図示しない制御部が、図示しない記憶部に格納されているプログラムによって、上記した各部を制御して実行するものである。
【0047】
また、以下の説明においては、印字対象媒体を単票媒体である払込書(以下、払込書Sと記す。)として説明する。
【0048】
利用者が、払込書Sを単票ユニット7の単票吸入口7aセットすると、制御部は、その払込書Sを単票搬送路26によってスキャナ部22へ搬送し、スキャナ部22によって払込書Sの記入内容等を読取る。
【0049】
このとき、記入内容等が読み取れなかった場合は、制御部は搬送ローラ25を逆転させ、払込書Sを単票吸入口7aへ搬送して利用者に返却する。
【0050】
払込書Sの記入内容等を読取った制御部は、その記入内容を現金自動預払機1の図示しない主制御部へ送信し、主制御部が図示しないホストコンピュータと交信して払込書Sの記入内容に基づく払込取引を実行し、払込取引の処理が終了すると、主制御部は取引日時や取引店舗名等の所定の記載内容を添付した印字指令を制御部へ送信する。
【0051】
印字指令を受信した制御部は、所定の記載内容を払込書Sの印字面に印字するために、その払込書Sを単票搬送路26によって印字ユニット18の方向へ搬送する。
【0052】
このとき、制御部は、払込書Sの印字ユニット18への吸入に備えるために、図7に示すように、ソレノイド51に通電してプランジャ51aを吸引し、リンク機構50を介して可動ガイド48を退避位置から押圧位置へ回動させる。
【0053】
そして、制御部は、払込書Sを単票搬送路26から印字搬送路19へ搬送し、払込書Sの吸入方向の先端を第1の搬送ローラ37のフィードローラ38とプレスローラ39との間に挟持させ、第1の搬送ローラ37によって払込書Sを印字のための所定位置へ向けて搬送する。
【0054】
この場合に、本実施例の可動ガイド48は、その押圧位置において、先端48aのプラテン33側の角部が、押圧ローラ46の外周面よりプラテン33側に位置しているので、払込書Sの先端が押圧ローラ46に引っ掛かることなく円滑に搬送される。
【0055】
払込書Sを印字のための所定位置へ向けて搬送していた制御部は、払込書Sを所定位置へ搬送すると、第1および第2の搬送ローラ37、41の駆動を停止し、図8に示すように、昇降機構35によりプラテン33を離間位置から印字位置へ上昇させて、払込書Sを押圧ローラ46に押圧し、印字ヘッド31をガイドレール32a、32bに沿って印字方向に移動させながら印字面への所定の記載内容の印字動作を開始し、改行が必要な場合は、第1および第2の搬送ローラ37、41を所定の角度回転させて改行動作を行いながら印字動作を継続する。
【0056】
この場合に、図8に示すように、印字動作の初期において、払込書Sの吸入方向の先端が第2の搬送ローラ41に挟持されていない状態であっても、本実施例の押圧ローラ46は印字面を転動しており、かつ可動ガイド48の先端48aが押圧ローラ46の押圧部の吸入方向の上流側の直近の印字面を押圧しているので、印字ヘッド31による印字中に、払込書Sの印字面が印字方向へずれることはなく、印字不良が生ずることはない。
【0057】
また、印字動作の終期において、払込書Sの先端が改行動作によって第2の搬送ローラ41に挟持され、その吸入方向の後端の第1の搬送ローラ37による挟持が解除された後は、図9に示すように、可動ガイド48の先端48aが押圧ローラ46の押圧部の直近の後端部の印字面を押圧しているので、印字ヘッド31による印字中に、払込書Sの印字面が印字方向へずれることはなく、印字不良が生ずることはない。
【0058】
更に、本実施例の押圧ローラ46は、転動しながら印字面を押圧するので、印字面を傷つけることはない。
【0059】
そして、印字ヘッド31による印字動作が終了すると、制御部は、印字処理済の払込書Sを印字ユニット18から排出するために、図10に示すように、ソレノイド51を非通電にしてプランジャ51aの吸引を解除し、リンク機構50を介して可動ガイド48を押圧位置から退避位置へ回動させ、昇降機構35によりプラテン33を印字位置から離間位置へ下降させ、第1および第2の搬送ローラ37、41を逆回転させて、払込書Sを排出方向に搬送する。
【0060】
このとき、本実施例の可動ガイド48は、その退避位置において、先端48aのプラテン33側の角部が、押圧ローラ46の外周面より上方に位置しているので、払込書Sの吸入方向の後端、つまり排出方向の先端が可動ガイド48に引っ掛かることなく円滑に搬送される。
【0061】
その後に、制御部は、印字処理済の払込書Sを印字搬送路19から単票搬送路26へ搬送して単票収納庫23または24へ収納する。
【0062】
印字処理済の払込書Sを単票収納庫23等へ収納した制御部は、処理終了通知を現金自動預払機1の主制御部へ送信し、これを受信した主制御部は、カード処理部3によって取引内容等を印字した明細票を発行する。
【0063】
このようにして、払込書Sの記入内容に基づく払込取引が行われる。
【0064】
なお、上記においては、印字対象媒体を払込書等の単票媒体として説明したが、印字対象媒体を冊子状媒体としての通帳とした場合も同様である。
【0065】
この場合には、制御部は、通帳ユニット4の通帳吸排口4aのシャッタ10を開作動させて利用者が印字ページを開いた状態でセットした通帳を通帳搬送路14により吸入し、幅寄せ部11で幅寄せした通帳の通帳情報を読取書込部12で読取って、利用者が選択した取引の取引処理を実行し、その後に当該通帳を通帳搬送路14から印字搬送路19へ搬送して、上記と同様に可動ガイド48で押圧ローラ46の押圧部の直近の印字面を押圧しながら、印字ヘッド31により取引内容等の所定の記載内容を印字し、その後に印字処理済の通帳を印字搬送路19、通帳搬送路14により通帳吸排口4aへ搬送し、通帳吸排口4aから排出して利用者に返却するようにする。
【0066】
また、上記においては、印字ヘッド31による印刷動作の継続中は、常に可動ガイド48を押圧位置に位置させるとして説明したが、印字対象媒体の先端または後端が第1または第2の搬送ローラ37、41から外れている場合のみ、つまり印字対象媒体が第1および第2の搬送ローラ37、41に挟持されている場合を除く印字動作中に、可動ガイド48を押圧位置に位置させるようにしてもよい。
【0067】
この場合には、印字対象媒体の先端または後端の挟持が解除されていることを、印字行数で検出して可動ガイド48の回動制御を行うようにするとよい。このようにすれば、特別なセンサを設けることなく可動ガイド48の回動制御を行うことができる。
【0068】
上記のように、本実施例では、印字対象媒体の印字面の押圧ローラ46による押圧部の直近を先端48aで押圧する可動ガイド48を設け、印字ヘッド31による印字面への印字中に可動ガイド48の先端48aで印字面を押圧するようにしたので、印字対象媒体の印字面の印字方向への位置ずれを防止することができると共に、印字面を傷つけることなく長期間に亘って印字品質を良好に保つことができる。
【0069】
また、印字ヘッド31に設けた押圧ローラ46を転動させて、印字対象媒体の印字面を直接プラテン33との間で押圧するので、押圧ローラ46に磨耗や疲労が生ずることはなく、定期的な保守点検を行うことなく、ガイドベルトの破損に伴う印字不良やジャムの発生を防止することができる。
【0070】
以上説明したように、本実施例では、印字ヘッドの吸入方向の上流側に、印字対象媒体の印字面を直接押圧しながら転動する押圧ローラを取付け、その押圧ローラの吸入方向の上流側の直近の印字面を押圧する先端を有する可動ガイドを設け、印字ヘッドによる印字中に、可動ガイドを印字面を押圧する押圧位置に位置させるようにしたことによって、印字中に可動ガイドの先端で押圧ローラの押圧部の直近の印字面を押圧して印字面の位置ずれ等の印字不良を防止することができると共に、定期的な保守点検を行うことなく良好な印字品質を長期間に亘って保つことができる。
【0071】
なお、上記実施例においては、可動ガイドはソレノイドで回動させるとして説明したが、カム機構で回動させるようにしてもよい。
【0072】
また、上記実施例においては、印字ユニットを本体装置としての現金自動預払機に装着した場合を例に説明したが、インパクト式の印字ヘッドを有するプリンタ装置であれば、本発明を適用することができ、上記と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0073】
1 現金自動預払機
2 操作表示部
3 カード処理部
4 通帳ユニット
4a 通帳吸排口
5 紙幣処理部
6 硬貨処理部
7 単票ユニット
7a 単票吸入口
10 シャッタ
11 幅寄せ部
12 読取書込部
13、25 搬送ローラ
14 通帳搬送路
15 ページめくり部
16 ページマーク読取部
18 印字ユニット
18a サイドフレーム
19 印字搬送路
20 通帳回収部
22 スキャナ部
23、24 単票収納庫
26 単票搬送路
27a〜27d 切替ブレード
31 印字ヘッド
31a キャリッジ
32a、32b ガイドレール
33 プラテン
33a 傾斜面
34 バネ部材
35 昇降機構
37 第1の搬送ローラ
38、42 フィードローラ
38a、39a、42a、43a ローラ軸
39、43 プレスローラ
41 第2の搬送ローラ
44 第1の搬送ガイド
45 第2の搬送ガイド
46 押圧ローラ
48 可動ガイド
48a 先端
48b 本体
49 リンクピン
50 リンク機構
51 ソレノイド
51a プランジャ
53 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸入した印字対象媒体に、前記印字対象媒体の吸入方向の直交方向である印字方向に移動しながら印字を行う印字ヘッドを備えたインパクトプリンタにおいて、
前記印字ヘッドの前記吸入方向の上流側に取付けられ、前記印字対象媒体の印字面を直接押圧しながら転動する押圧ローラと、
前記押圧ローラの前記吸入方向の上流側の直近の前記印字面を押圧する先端を有し、前記印字面を押圧する押圧位置と、前記印字面から退避する退避位置との間を回動する可動ガイドとを設け、
前記印字ヘッドによる印字中に、前記可動ガイドを前記押圧位置に位置させることを特徴とするインパクトプリンタ。
【請求項2】
請求項1において、
前記印字対象媒体は、単票媒体と冊子状媒体であることを特徴とするインパクトプリンタ。
【請求項3】
請求項1において、
前記可動ガイドの先端は、前記印字面の印字方向の全長を押圧することを特徴とするインパクトプリンタ。
【請求項4】
請求項1において、
前記印字ヘッドに前記印字対象媒体を挟んで対向配置された一体型のプラテンを設け、
前記押圧位置における前記可動ガイドの先端の位置は、前記押圧ローラの前記プラテン側の外周面より前記プラテン側の位置であることを特徴とするインパクトプリンタ。
【請求項5】
請求項1において、
前記印字対象媒体の印字位置への吸入時に、前記可動ガイドを前記押圧位置へ回動させることを特徴とするインパクトプリンタ。
【請求項6】
請求項1において、
前記印字ヘッドによる印字後の前記印字対象媒体の排出時に、前記可動ガイドを前記退避位置へ回動させることを特徴とするインパクトプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−121325(P2011−121325A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282426(P2009−282426)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】