説明

インピーダンス測定装置

【課題】測定対象体を接続したときに、誤ったインピーダンスが表示される事態の発生を回避して、最初のインピーダンスの表示から正しいインピーダンスを表示させる。
【解決手段】測定対象体14に流れる測定用電流I1および測定対象体14の両端間電圧Vmを予め規定された時間長の測定期間に亘って測定する測定処理を実行し、かつ測定用電流I1および両端間電圧Vmを測定する都度、測定した測定用電流I1および両端間電圧Vmに基づいて測定対象体14の抵抗値R1を算出して表示部11に表示させる算出処理を実行する処理部10を備えると共に、測定対象体14の接続・未接続を検出する接続検出部9を備え、処理部10は、測定対象体14の接続が接続検出部9によって検出されるまでは測定処理の実行を停止し、測定対象体14の接続が接続検出部9によって検出されたときに、測定処理の実行を開始する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、予め規定された時間長の測定期間に亘る測定処理を実行して、測定対象体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
測定対象体のインピーダンスを測定するインピーダンス測定装置として、下記特許文献に従来の技術として開示された抵抗測定装置が知られている。この抵抗測定装置は、測定対象抵抗体(測定対象体)に定電流の測定用電流を供給する定電流供給部と、測定対象抵抗体に測定用電流が流れる際にその端子間に発生する両端電圧に基づいて測定対象抵抗体の抵抗値を計測する抵抗値計測部と、抵抗値計測部によって計測された抵抗値を表示する表示部とを備えている。
【0003】
具体的には、抵抗値計測部は、測定対象抵抗体の両端間に発生した両端電圧を差動増幅する高入力インピーダンスの差動増幅器と、演算増幅器、抵抗およびコンデンサから構成される積分回路と、差動増幅器の出力電圧に基づく積分回路に対する充電を制御するためのスイッチと、積分回路の放電を制御するためのスイッチと、放電用の抵抗と、基準電源と、コンパレータと、所定周波数のクロック信号を生成するクロック信号生成回路と、各スイッチのオン/オフ制御などを実行する制御回路と、クロック信号の入力数を計測するカウンタと、カウンタから出力されるカウント値に基づいて測定対象抵抗体の抵抗値を測定するCPUとを備え、測定対象抵抗体の両端間に発生した両端電圧を二重積分方式によって測定する。
【0004】
この抵抗計測部では、定電流供給部によって定電流の測定用電流が測定対象抵抗体に供給されている状態において、差動増幅器が、測定対象抵抗体の両端に発生している両端電圧を入力して、測定対象抵抗体の両端電圧に応じた電圧を出力する。一方、制御回路は、クロック信号生成回路から出力されるクロック信号に同期して所定時間毎に制御信号を出力することにより、差動増幅器の出力電圧を積分回路に供給するためのスイッチをオン状態に制御する。これにより、このスイッチがオン状態となる充電期間において、差動増幅器の出力電圧で積分回路のコンデンサに電荷が蓄積されて、充電電圧が上昇する(第1積分)。
【0005】
その後、充電期間が経過したときには、制御回路は、制御信号の出力を停止させて、差動増幅器の出力電圧を積分回路に供給するためのスイッチをオフ状態にすると共に、他の制御信号を出力することにより、積分回路と基準電源との間のスイッチをオン状態に制御する。これにより、差動増幅器の出力電圧とは逆極性の電圧源である基準電源が抵抗を介して積分回路のコンデンサに接続されるため、蓄積されているコンデンサの電荷が放電されて、充電電圧が徐々に低下する。また、制御回路は、コンデンサの放電開始と同時に、カウンタに対して計測開始信号を出力する。これにより、カウンタは、クロック信号生成回路から出力されるクロック信号の入力数の計測を開始する(第2積分)。
【0006】
一方、コンパレータは、演算増幅器の出力電圧と基準電圧であるグランド電位とを比較し、演算増幅器の出力電圧がグランド電位になった時に、つまりコンデンサが完全放電させられた時に、その出力を反転させたロウレベル信号であるストップ信号を出力する。これにより、制御回路は、計測開始信号を停止して、カウンタのカウンタ動作を停止すると共に、積分回路と基準電源との間のスイッチをオフ状態に制御して両者を切り離す。次に、CPUは、放電期間の間にカウンタによって計測されたカウント値を入力し、このカウンタ値に基づいて、測定対象抵抗体の抵抗値を演算すると共に、演算した抵抗値を表示部に表示させる。
【0007】
この構成の抵抗測定装置では、制御回路が所定時間毎に制御信号を出力して、各構成要素が上記した動作を実行することにより、測定対象抵抗体の抵抗値が所定時間毎に表示部に更新されつつ表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平11−101830号公報(第2−3頁、第3図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、この従来の抵抗測定装置には、以下の改善すべき課題が存在している。すなわち、この抵抗測定装置では、測定対象抵抗体が接続されているか否かに拘わらず、制御回路が、クロック信号生成回路から出力されるクロック信号に同期して所定時間毎に制御信号を出力することにより、差動増幅器の出力電圧を積分回路に供給するためのスイッチに対するオン状態の制御を開始し、CPUはカウントによって計測されたカウント値に基づいて抵抗値を演算する(以下、制御回路による制御信号の出力からCPUによる抵抗値の演算までの一連の動作を、「抵抗値演算動作」ともいう)。つまり、この抵抗測定装置は、図3に示すように、測定対象抵抗体が接続されているか否かに拘わらず、抵抗値演算動作を所定時間毎に繰り返し実行している。
【0010】
一般的に、この抵抗測定装置による抵抗値演算動作の開始タイミングと、抵抗測定装置への測定対象抵抗体の接続タイミングとは同期していない。このため、この抵抗測定装置では、同図に示すように、測定対象抵抗体の接続は、殆どの場合、抵抗値演算動作の途中で行われることになる。これにより、このときの抵抗値演算動作において演算される抵抗値は、測定対象抵抗体の未接続状態で行った抵抗値演算の結果も反映されることから、測定対象抵抗体が接続されている状態で抵抗値演算動作を開始して得られる正常な抵抗値とは異なった値(誤った値)となる。
【0011】
したがって、この抵抗測定装置には、測定対象抵抗体を接続したときの抵抗値演算動作によって演算される抵抗値が誤った値となることから、測定対象抵抗体を接続した直後に表示部に表示される抵抗値(測定範囲外の表示の後に最初に表示される抵抗値)が誤った値になるという解決すべき課題が存在している。また、図3に示すように、次の抵抗値演算動作によって演算される抵抗値(次の所定時間で演算される抵抗値)は正しい抵抗値となるため、表示部に正しい抵抗値を更新表示させることができるが、この正しい抵抗値の表示までに時間がかかるため、これを改善するのが好ましい。
【0012】
本発明は、かかる課題を改善すべくなされたものであり、測定対象体を接続したときに、誤ったインピーダンスが表示される事態の発生を回避して、最初のインピーダンスの表示から正しいインピーダンスを表示させ得るインピーダンス測定装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成すべく本発明に係るインピーダンス測定装置は、接続されている測定対象体に流れる測定用電流および当該測定対象体の両端間に発生する両端間電圧を測定すると共にその際に当該測定用電流および当該両端間電圧の少なくとも一方を予め規定された時間長の測定期間に亘って測定する測定処理を実行し、かつ前記測定用電流および前記両端間電圧を測定する都度、当該測定した測定用電流および両端間電圧に基づいて前記測定対象体のインピーダンスを算出して表示部に表示させる算出処理を実行する処理部を備えたインピーダンス測定装置であって、前記測定対象体の接続・未接続を検出する接続検出部を備え、前記処理部は、前記測定対象体の接続が前記接続検出部によって検出されるまでは前記測定処理の実行を停止し、当該測定対象体の接続が前記接続検出部によって検出されたときに、当該測定処理の実行を開始する。なお、インピーダンスには、純抵抗のレジスタンス、インダクタの誘導リアクタンス、キャパシタの容量リアクタンス、およびこれらのパラメータのうちの任意の2以上の合成パラメータを意味するものとする。
【0014】
また、請求項2記載のインピーダンス測定装置は、請求項1記載のインピーダンス測定装置において、前記処理部は、前記測定対象体の未接続が前記接続検出部によって検出されているときに、前記表示部にその旨を表示させる。
【0015】
また、請求項3記載のインピーダンス測定装置は、請求項1または2記載のインピーダンス測定装置において、前記処理部は、前記測定処理および前記算出処理を開始した後に、前記測定対象体の未接続が前記接続検出部によって検出されたときは、当該測定処理および当該算出処理を停止すると共に前記表示部にその旨を表示させる。
【発明の効果】
【0016】
請求項1記載のインピーダンス測定装置によれば、測定対象体が接続されている状態において、処理部が測定処理を開始することにより、測定対象体が未接続の状態で測定処理を実行した場合に算出される誤った値のインピーダンスを表示部に表示させるといった事態の発生を確実に回避することができる。また、測定対象体を接続した後に最初に表示部に表示されるインピーダンスから正しいインピーダンスを表示させることができる。
【0017】
請求項2記載のインピーダンス測定装置によれば、測定対象体の未接続が接続検出部によって検出されているときに、処理部がその旨を表示部に表示させることにより、測定対象体のインピーダンス測定装置への接続が確実に行われているか否かを確実かつ容易に確認することができる。
【0018】
請求項3記載のインピーダンス測定装置では、処理部が、測定処理および算出処理を開始した後に、測定対象体の未接続が接続検出部によって検出されたときに、測定処理および算出処理を停止すると共に表示部にその旨を表示させる。したがって、このインピーダンス測定装置によれば、測定対象体の未接続状態で測定処理を続行することによって算出される誤った値のインピーダンスが表示部に表示される事態の発生を回避することができると共に、測定対象体が接続状態から未接続状態に至ったことを明確に報知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】絶縁抵抗計1の構成図である。
【図2】絶縁抵抗計1の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【図3】従来の抵抗測定装置の動作を説明するためのタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、インピーダンス測定装置の実施の形態について説明する。なお、インピーダンス測定装置の一例として、測定対象体に直流電流を供給したときの測定対象体の抵抗を絶縁抵抗として測定する絶縁抵抗計を例に挙げて説明する。
【0021】
最初に、絶縁抵抗計1の構成について、図1を参照して説明する。
【0022】
絶縁抵抗計1は、一例として、第1接続端子2、第2接続端子3、電源部4、電流検出部5、電圧検出部6、切替スイッチ7、A/D変換部8、接続検出部9、処理部10および表示部11を備え、第1プローブ12および第2プローブ13を介して第1接続端子2と第2接続端子3との間に接続された測定対象体14の抵抗値(絶縁抵抗値)R1を、測定対象体14に流れる測定用電流I1と測定対象体14の両端間電圧Vmとに基づいて測定(算出)する。
【0023】
第1接続端子2には、第1プローブ12が接続される。また、第1接続端子2は、この第1プローブ12を介して測定対象体14の一端側に接続される。第2接続端子3には、第2プローブ13が接続される。また、第2接続端子3は、この第2プローブ13を介して測定対象体14の他端側に接続される。
【0024】
電源部4は、予め規定された電圧値(例えば、1000V)の試験電圧(直流電圧)V1を生成すると共に、第1接続端子2に出力する。この構成により、各プローブ12,13間に測定対象体14が接続されているときには、この試験電圧V1が、第1接続端子2および第1プローブ12を介して測定対象体14の一端側に印加される。
【0025】
電流検出部5は、第2接続端子3と回路グランドとの間に配設されて、電源部4からの試験電圧V1の印加に起因して測定対象体14に流れる測定用電流(直流電流)I1を検出すると共に、測定用電流I1の電流値に応じて電圧値が変化する電圧Viに変換して出力する。電流検出部5は、図示はしないが、一例として、第2接続端子3と回路グランドとの間に接続された電流検出用抵抗(例えば、数十mΩ程度の抵抗)と、この電流検出用抵抗での測定用電流I1による電圧降下を検出して電圧Viとして出力するアンプとで構成されている。この構成により、測定用電流I1が流れることによって電流検出部5において発生する電圧降下は、試験電圧V1の電圧値と比較して無視できるレベルに規定されている。また、電圧Viは、A/D変換部8の入力定格に適合するレベルに規定されている。
【0026】
電圧検出部6は、一例として、電路L1(電源部4と第1接続端子2とを接続する電路)と回路グランドとの間に配設されて、回路グランドの電位を基準としたときに第1接続端子2に発生する電圧を検出すると共に分圧して検出電圧V2(以下、「電圧V2」ともいう)として出力する。電圧検出部6は、図示はしないが、互いに直列に接続された状態で電路L1と回路グランドとの間に接続された2本の分圧抵抗で構成されている。この電圧V2は、A/D変換部8の入力定格に適合するレベルに規定されている。
【0027】
この絶縁抵抗計1では、第2接続端子3側に配設された電流検出部5での電圧降下が上記したように無視できるレベルであるため、電圧検出部6は、第1接続端子2に発生する電圧(試験電圧V1)を検出することにより、各プローブ12,13間に発生する電圧Vmを検出する。なお、この電圧Vmは、第1接続端子2と第2接続端子3との間に測定対象体14が接続されているときには、測定対象体14の両端間に発生する電圧(両端間電圧)となる。このため、両端間電圧Vmともいう。
【0028】
切替スイッチ7は、電流検出部5から出力される電圧Vi、および電圧検出部6から出力される電圧V2を入力すると共に、これらのうちの処理部10によって選択された任意の一方を出力する。A/D変換部8は、切替スイッチ7から電圧Viが出力されているときには、この電圧ViをデジタルデータDiに変換して処理部10に出力する。また、A/D変換部8は、切替スイッチ7から電圧V2が出力されているときには、この電圧V2をデジタルデータDvに変換して処理部10に出力する。
【0029】
接続検出部9は、電流検出部5から出力される電圧Viのレベル(電圧値)に基づいて、絶縁抵抗計1(具体的には、一対のプローブ12,13間)への測定対象体14の接続・未接続を検出する。本例では、一例として、接続検出部9は、反転入力端子に基準電圧Vrefが入力され、かつ非反転入力端子に電圧Viが入力される比較器(コンパレータ)で構成されている。この構成により、接続検出部9は、電圧Viの電圧値が基準電圧Vref以下のときにはローレベルとなり、電圧Viの電圧値が基準電圧Vrefを超えるときにはハイレベルとなる検出信号S1を出力する。
【0030】
絶縁抵抗計1に測定対象体14が接続されていないとき(未接続状態のとき)には、測定用電流I1が発生しないため、電圧Viはゼロボルトまたはゼロボルトに近い値となる。一方、絶縁抵抗計1に測定対象体14が接続されているとき(接続状態のとき)には、測定用電流I1が発生するため、電圧Viはゼロボルトではない値となる。このため、一例として、未接続状態および接続状態のときの電圧Viの各値の中間電圧に基準電圧Vrefを予め規定しておくことにより、検出信号S1がハイレベルのときには、測定対象体14が接続されていると判別でき、ローレベルのときには接続されていないと判別することができるようになっている。
【0031】
処理部10は、一例として、CPUおよびメモリ(いずれも図示せず)で構成されて、切替スイッチ7から電圧Viが出力されているときには、A/D変換部8から出力されるデジタルデータDiに基づいて測定用電流I1の電流値を測定(算出)する。また、処理部10は、切替スイッチ7から電圧V2が出力されているときには、A/D変換部8から出力されるデジタルデータDvに基づいて両端間電圧Vmの電圧値(両端間電圧値)を測定(算出)する。以上の構成により、電流検出部5、切替スイッチ7、A/D変換部8および処理部10は、測定用電流I1を測定するための電流測定部Miを構成する。また、電圧検出部6、切替スイッチ7、A/D変換部8および処理部10は、両端間電圧Vmを測定するための電圧測定部Mvを構成する。
【0032】
処理部10は、一例として、電圧Viや電圧V2に含まれているノイズ成分を低減するため、各デジタルデータDi,Dvに対して予め規定された時間長の測定期間に亘る測定処理(例えば、上記した二重積分方式を利用した測定処理)を行って、測定用電流I1の電流値および両端間電圧Vmの電圧値を測定(算出)する。なお、電圧Viおよび電圧V2のうちの一方に含まれるノイズ成分のみを低減する必要がある場合には、処理部10が予め規定された時間長の測定期間に亘る測定処理をデジタルデータDi,Dvに対して(電圧Viおよび電圧V2に対して、つまり、測定用電流I1および両端間電圧Vmに対して)それぞれ実行する上記構成に代えて、電圧Viおよび電圧V2のうちの一方に対応するデジタルデータ(デジタルデータDiまたはデジタルデータDv)に対して、予め規定された時間長の測定期間に亘る測定処理を実行する構成を採用することもできる。この場合、電圧Viおよび電圧V2のうちの他方については、上記の測定期間内の任意の時間におけるこの他方に対応するデジタルデータ(瞬時値を示すデジタルデータ)をそのまま使用して測定するか、または、測定期間に含まれるより短い期間内のこの他方に対応するデジタルデータに対して測定処理を実行して測定する。
【0033】
また、処理部10は、このようにして測定(算出)した測定用電流I1の電流値と両端間電圧Vmの電圧値とに基づいて測定対象体14の抵抗値R1を算出して、表示部11に表示させる算出処理を測定処理を実行する都度(測定用電流I1の電流値および両端間電圧Vmの電圧値を測定する都度)、実行する。また、処理部10が測定処理と算出処理とを1回ずつ実行するために要する時間は、測定処理に要する時間に対して算出処理に要する時間が短いため、実質的には上記した測定期間の時間長とほぼ同じ時間(以下、「所定時間」ともいう)に規定される。
【0034】
表示部11は、一例として、LCD(Liquid Crystal Display)などの表示装置で構成されている。また、表示部11は、処理部10から判別処理および抵抗測定処理での結果を入力して、画面に表示する。
【0035】
次に、絶縁抵抗計1の動作について、図面を参照して説明する。なお、第1接続端子2および第2接続端子3間には、当初、測定対象体14は接続されていないものとする(測定対象体14の接続状態が未接続であるものとする)。
【0036】
絶縁抵抗計1では、電源部4が、試験電圧V1の第1接続端子2への出力を実行している。また、電流検出部5が、第2接続端子3から回路グランドに流れる測定用電流I1を検出して、電圧Viを出力している。また、電圧検出部6が、第1接続端子2および第2接続端子3間に発生している電圧Vmを検出して分圧することにより、電圧V2を出力している。
【0037】
また、測定対象体14が未接続の状態においては、第1プローブ12および第2プローブ13間で測定用電流I1の電流経路が分断されているため、測定用電流I1は発生していない。これにより、電流検出部5は、電圧値が基準電圧Vref以下となる電圧Viを出力している。したがって、接続検出部9は、この電圧Viと基準電圧Vrefとを比較することにより、図2に示すように、ローレベルとなる検出信号S1を処理部10に出力している。
【0038】
処理部10は、接続検出部9から出力される検出信号S1のレベルを常時検出しつつ、図2に示すように、このレベルがローレベルのときには、測定対象体14の接続状態が「未接続」であると判別して、測定処理を開始せずに、測定対象体14が未接続の状態である旨を示す表示(例えば、「未接続」の文字)を表示部11に表示させる。これにより、測定対象体14が未接続状態であることが報知される。
【0039】
測定対象体14の未接続状態から、第1プローブ12および第2プローブ13間に測定対象体14が接続されたときには、電路L1から、第1プローブ12、測定対象体14、第2プローブ13および電流検出部5を経由して回路グランドに至る測定用電流I1の電流経路が形成される。このため、この電流経路に測定用電流I1が発生する。これにより、電流検出部5は、電圧値が基準電圧Vrefを超える電圧Viの出力を開始する。したがって、接続検出部9は、この電圧Viと基準電圧Vrefとを比較することにより、ハイレベルとなる検出信号S1を処理部10に出力する。
【0040】
処理部10は、接続検出部9から出力される検出信号S1のレベルを常時検出しつつ、検出信号S1のレベルがハイレベルとなったことを検出したときには、測定対象体14の接続状態が「接続」であると判別して、測定処理を開始する。なお、この開始した測定処理およびこれに続く算出処理が完了するまでは、測定対象体14の抵抗値R1は測定(算出)されない。このため、処理部10は、測定対象体14が未接続の状態である旨を示す表示(「未接続」)に代えて、例えば図2に示すように、測定対象体14の抵抗値R1を測定している最中である旨を示す表示(例えば、「測定中」の文字)を表示部11に表示させる。なお、「未接続」の文字を引き続き表示させる構成を採用することもできる。
【0041】
処理部10は、切替スイッチ7を切り替えて、A/D変換部8に電圧Viおよび電圧V2をそれぞれ入力しつつ、図2に示すように、予め規定された時間長の測定期間に亘る測定処理を実行することにより、測定用電流I1の電流値および両端間電圧Vmの電圧値を測定する。次いで、処理部10は、算出処理を実行することにより、測定処理によって測定された測定用電流I1の電流値と両端間電圧Vmの電圧値とに基づいて、測定対象体14の抵抗値R1を算出すると共に、測定している最中である旨を示す表示に代えて、算出した抵抗値R1を表示部11に表示させる。このように、処理部10が、測定対象体14が接続されている状態において、測定処理を最初から実行する(測定処理を開始する)ことにより、測定対象体14が未接続の状態で測定処理を実行することによって算出される誤った値の抵抗値R1が表示部11に表示される事態の発生が回避されている。
【0042】
処理部10は、検出している検出信号S1のレベルがハイレベルであるときには、図2に示すように、上記した測定処理および算出処理からなる一連の処理を所定時間で繰り返し実行する。これにより、表示部11には、測定された測定対象体14の抵抗値R1が所定時間毎に更新されつつ表示される。
【0043】
一方、この測定対象体14の接続状態において、測定対象体14が第1プローブ12および第2プローブ13間から外されたとき(測定対象体14の接続状態が未接続となったとき)には、上記した測定用電流I1の電流経路が第1プローブ12および第2プローブ13間で分断されて、測定用電流I1が発生しない状態となる。
【0044】
これにより、電流検出部5は、電圧値が基準電圧Vref以下となる電圧Viの出力を開始し、接続検出部9は、この電圧Viと基準電圧Vrefとを比較することにより、図2に示すように、ローレベルとなる検出信号S1を処理部10に出力する。
【0045】
例えば、図2に示すように、測定処理の開始から数えて、n回目の測定処理を処理部10が実行している途中に、測定対象体14の接続状態が未接続となったときには、処理部10は、検出信号S1のレベルがローレベルとなったことを検出することで、測定対象体14の接続状態が「未接続」となったと判別して、このn回目の測定処理を直ちに停止すると共に、測定対象体14が未接続の状態である旨を示す表示(「未接続」の文字)を表示部11に表示させる。これにより、測定対象体14が未接続の状態で測定処理を続行した場合に算出される誤った値の抵抗値R1が表示部11に表示される事態の発生が回避されると共に、測定対象体14が接続状態から未接続状態に至ったことが明確に示される(報知される)。
【0046】
このように、この絶縁抵抗計1では、接続検出部9が測定対象体14の絶縁抵抗計1への接続・未接続を検出し、処理部10が、測定対象体14の接続が接続検出部9によって検出されるまでは測定処理の実行を停止し、測定対象体14の接続が接続検出部9によって検出されたときに、測定処理の実行を開始する。
【0047】
したがって、この絶縁抵抗計1によれば、測定対象体14が接続されている状態において、処理部10が測定処理を開始することにより、つまり、測定処理を最初から実行することにより、測定対象体14が未接続の状態で測定処理を実行した場合に算出される誤った値の抵抗値R1を表示部11に表示させるといった事態の発生を確実に回避することができる。また、測定対象体14を接続した後に最初に表示部11に表示される抵抗値R1から正しい抵抗値R1を表示させることができる。
【0048】
また、この絶縁抵抗計1によれば、測定対象体14の未接続が接続検出部9によって検出されているときに、処理部10がその旨(本例では、「未接続」の文字)を表示部11に表示させることにより、測定対象体14の絶縁抵抗計1への接続が確実に行われているか否かを確実かつ容易に確認することができる。
【0049】
また、この絶縁抵抗計1では、処理部10が、測定処理および算出処理を開始した後に、測定対象体14の未接続が接続検出部9によって検出されたときに、測定処理および算出処理を停止すると共に表示部11にその旨(本例では、「未接続」の文字)を表示させる。したがって、この絶縁抵抗計1によれば、測定対象体14の未接続状態で測定処理を続行することによって算出される誤った値の抵抗値R1が表示部11に表示される事態の発生を回避することができると共に、測定対象体14が接続状態から未接続状態に至ったことを明確に報知することができる。
【0050】
なお、上記の絶縁抵抗計1では、電源部4が測定対象体14に直流電圧である試験電圧V1を印加し、これによって測定対象体14に流れる直流電流である測定用電流I1を電流検出部5が検出する構成を採用しているが、電源部4を交流電源で構成して、交流電圧である試験電圧V1を測定対象体14に印加し、これによって測定対象体14に流れる交流電流である測定用電流I1を電流検出部5が検出する構成を採用して、測定対象体14が抵抗体のときのその抵抗値(純抵抗のレジスタンス)だけでなく、測定対象体14がインダクタのときのその誘導リアクタンスや、キャパシタのときのその容量リアクタンスなどのパラメータを測定することもできる。さらには、測定対象体14が抵抗、インダクタおよびキャパシタのうちの任意の2以上の組み合わせで構成されるものであるときには、レジスタンス、誘導リアクタンスおよび容量リアクタンスの各パラメータの合成パラメータを測定することもできる。
【0051】
電源部4を交流電源で構成する上記の構成では、電流検出部5は、例えば、上記した絶縁抵抗計1における構成(電流検出用抵抗およびアンプを有する構成)に、電流検出用抵抗での測定用電流I1による電圧降下を整流して直流電圧に変換して、アンプに出力する整流回路を追加して構成する。なお、電源部4および電流検出部5以外の他の構成要素については、絶縁抵抗計1と同一の構成要素で実現される。
【0052】
この構成を採用した絶縁抵抗計では、処理部10は、各デジタルデータDi,Dvに基づいて、抵抗、キャパシタおよびインダクタなどで構成される測定対象体14のインピーダンスを算出(測定)して、表示部11に表示させる。
【0053】
この絶縁抵抗計においても、上記した絶縁抵抗計1と同様にして、測定対象体14が接続されている状態において、処理部10が測定処理を開始することができ、これにより、測定対象体14の未接続状態で測定処理を実行することによって誤った値のインピーダンスを算出して、このインピーダンスを表示部11に表示させるといった事態の発生を確実に回避することができる。また、上記した絶縁抵抗計1の他の効果についても同様にして奏することができる。
【0054】
また、インピーダンス測定装置の一例として、絶縁抵抗計を例に挙げて説明したが、これに限定されるものではなく、抵抗計やLCRメータなどの他の一般的な抵抗測定装置にも適用することができるのは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 絶縁抵抗計
9 接続検出部
10 処理部
12 第1プローブ
13 第2プローブ
14 測定対象体
I1 測定用電流
Ith 電流閾値
R1 抵抗値
Vm 両端間電圧
Vth 電圧閾値

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接続されている測定対象体に流れる測定用電流および当該測定対象体の両端間に発生する両端間電圧を測定すると共にその際に当該測定用電流および当該両端間電圧の少なくとも一方を予め規定された時間長の測定期間に亘って測定する測定処理を実行し、かつ前記測定用電流および前記両端間電圧を測定する都度、当該測定した測定用電流および両端間電圧に基づいて前記測定対象体のインピーダンスを算出して表示部に表示させる算出処理を実行する処理部を備えたインピーダンス測定装置であって、
前記測定対象体の接続・未接続を検出する接続検出部を備え、
前記処理部は、前記測定対象体の接続が前記接続検出部によって検出されるまでは前記測定処理の実行を停止し、当該測定対象体の接続が前記接続検出部によって検出されたときに、当該測定処理の実行を開始するインピーダンス測定装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記測定対象体の未接続が前記接続検出部によって検出されているときに、前記表示部にその旨を表示させる請求項1記載のインピーダンス測定装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記測定処理および前記算出処理を開始した後に、前記測定対象体の未接続が前記接続検出部によって検出されたときは、当該測定処理および当該算出処理を停止すると共に前記表示部にその旨を表示させる請求項1または2記載のインピーダンス測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−233843(P2012−233843A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104147(P2011−104147)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000227180)日置電機株式会社 (982)
【Fターム(参考)】