説明

インプラントピンキット及びインプラントピンを埋め込むための方法

本発明は、インプラントピンキット及びインプラントピンを埋め込むための方法を与える。インプラントピンキットは、流路(11)を備えるカニューレ処置されたインプラントピン(1)、及び加熱装置(19)を有する。ピンの流路は、ピンの長手方向において延在し、ピンの近位端部における近位開口(13)をピンの遠位端部における遠位開口(15)に接続する。ピンの流路及び加熱装置は、加熱装置がピンの流路の少なくとも一部分内において収容されうるよう適合される。加熱装置は、ピン及び加熱装置の少なくとも一方において有される材料を熱的に加熱するよう適合される。それによって、ピンの可溶解性材料が液化され得るか、あるいは追加的な液化された可溶解性材料がピンへと挿入され得、液化された材料は続いて、標的構造におけるインプラントピンを補強及び固定するよう、遠位開口に向かって並びに遠位開口から出るよう押され得る。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2008年10月10日出願欧州特許出願第08 017 885.8号の出願日の優先権を主張し、該出願の開示は本願において参照として組み込まれる。
【0002】
本発明は、ヒトの骨等である標的(ターゲット)において固定され得るインプラントピン(implantation pin)を有するインプラントピンキットに係る。更に本発明は、かかる標的構造へとインプラントピンを埋め込むための方法に係る。
【背景技術】
【0003】
先行技術において、ヒトまたは動物に対する複数のインプラント(埋込み)装置(implantation device)が知られている。インプラントは、ヒトまたは動物の組織部分、特には骨等である骨格部分に対して積極的な接続(positive-fit connections)を少なくとも部分的に作り出す。そこでインプラントは、組織部分を共に接続する支援をし得るか、あるいは組織部分を支持または交換する他の手段または治療用補助装置に対して組織部分を接続する支援をし得る。
【0004】
1つの骨を他の骨に対して接続するために、あるいは骨を人工的名な担持、安定、もしくは支持部に対して、または骨を安定板もしくは固定板、ワイヤ、人工関節要素、義歯、骨移植片等である骨格部に代わる部品に対して接続するために、骨格部に対する接続を作り出すよう知られているインプラントは、スクリュ、ピン、ステープル等を有する。このような知られているインプラントは、例えば金属もしくはプラスチック、または生体適合性のある特徴及び十分な機械的安定性を備える他の材料から作られ得る。治癒後には、インプラントは更なる手術によって取り除かれ得るか、恒久的に体内に残され得、生体吸収可能な材料が使用されている場合には、生命組織によって徐々に分解及び置換される。
【0005】
技術的には、超音波振動の適用によって液化され得る材料を有するインプラントピンを与えることが知られている。そこでインプラントピンは、熱可塑性ポリマ等である成形可能材料(mouldable material)を有する。該材料は、インプラントピンを標的構造へと固定するよう超音波振動の適用時に液化され得、例えば近接する骨材料の細孔(pores)である近接する組織へと流れる。かかるインプラントピンは、本願の譲受人に譲渡された同時係属中の欧州特許出願第07008122.9(特許文献1)、及び本願の譲受人に譲渡された同時係属中のPCT出願番号PCT/EP2008/000789(特許文献2)において記載される。
【0006】
しかしながら、超音波エネルギが成形可能材料を液化するよう使用される従来のインプラントピンは、実際の外科手術における使用を複雑にし、かつそのコストを更に増大させる、という多種の問題に直面し得る。
【0007】
本願発明者は、従来のインプラントピンを埋め込む際に超音波エネルギの適用が、成形可能材料を液化するようインプラントピンに対して超音波振動を伝達するために実際の外科手術中にインプラントピンに対して大きな圧力が加えられることを要求し得る、という見解を有している。インプラントピンが埋め込まれるべき組織はそのような圧力に対して非常に傷つきやすいため、かかる大きな圧力の適用は望ましくないものであり得る。更に、超音波振動の適用は、複雑かつコストがかかる超音波ソノトロード(ultrasonic sonotrode)を必要とし得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許出願第07008122.9
【特許文献2】PCT出願番号PCT/EP2008/000789
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、従来のインプラントピンが有する問題の少なくとも複数を克服し得るインプラントピン、及びかかるインプラントピンを埋め込むための方法が必要とされ得る。特には、大きな圧力をピンに加えることなく埋め込まれ得るインプラントピンが必要とされ得る。更に、低コストで製造及び埋込みされ得るインプラントピンが必要とされ得る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述した必要性は、本願の独立請求項に従ったインプラントピンキット及びインプラントピンを埋め込むための方法によって満たされ得る。本発明の有利な実施例は、従属請求項に対して説明される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、インプラントピンキットが提案される。そこでインプラントピンキットは、流路(チャネル)を備えるカニューレ処置された(中空の)インプラントピン(cannulated implantation pin)、及び加熱装置を有する。ピンの流路は、ピンの長手方向において延在し、ピンの近位端部における近位開口をピンの遠位端部における遠位開口に接続させる。ピンの流路は、加熱装置を収容するよう適合される。加熱装置は、ピンの流路の少なくとも一部内において収容されるよう適合され、ピン及び/または加熱装置において有される熱的に加熱材料に適合される。
【0012】
本発明の要旨は、インプラントピンを埋め込む際に、ピンを補強及び固定するよう成形可能材料を液化するために超音波振動を与える代わりに、熱エネルギが成形可能材料を溶解するために使用され得、該材料が続いてカニューレ処置されたインプラントピンにおける流路を通って出口、即ちピンの遠位端部における遠位開口に向かって流れ得、近接する組織におけるピンを補強及び固定する、ということであるのが分かり得る。可溶解性材料(溶解可能な材料、meltable material)を液化するよう超音波振動エネルギの適用を熱エネルギの供給に変えることによって、インプラントピンを標的構造において固定するときに該ピンに大きな圧力を加える必要はなくなる。更に、複雑かつ高価な超音波ソノトロードも必要なくなり得る。その代わりに、可溶解性材料を液化するために必要なエネルギは、例えば加熱ワイヤであるような単純な加熱装置によって与えられ得る。
【0013】
以下に詳述される夫々の実施例に依存して、熱エネルギの適用は、ピン自体の可溶解性材料を溶解するよう使用され得、溶解された材料は続いて、機械的圧力を加えることによって遠位開口から出されなければならなくなり得る。あるいは、熱エネルギは、ピンの流路に隣接する領域を予め加熱するよう使用され得、ピンに対して外部に溶解される可溶解性材料は、ピンの流路に対して与えられ得、流路の遠位開口に到達する前に固化することなく予め加熱された流路を通って流れ得る。
【0014】
以下において、本発明の更なる可能な特徴、実施例、及び利点が詳述される。
【0015】
インプラントピンキットは、少なくとも2つの構成要素、即ちカニューレ処置されたインプラントピン及び加熱装置を有する。任意には、インプラントピンは、ピンを掴んでそれを埋め込んでいる間適所において保持するための追加的な保持装置、シャフトの遠位開口において出口に向かって溶解された材料を押圧する(press)ためのプランジャ、及び/またはピンへと挿入される溶解された材料を供給するための溶解材料供給装置(melted material supply device)等である更なる構成要素を有し得る。
【0016】
加熱装置は、電気エネルギ等であるエネルギが加熱装置に対して供給されるときにこのエネルギが熱へと転換されるよう適合され得、該熱は続いて近接する材料に対して移動される。この目的に対して加熱装置の形状は、ピンの流路へと挿入されるときに加熱装置が流路の壁に機械的に密接に接触し、該壁の材料に熱が移動するように選択され得る。
【0017】
インプラントピンの近位端部において配置される近位開口は、加熱装置がインプラント工程中に流路へと挿入され得また流路から引き出され得るよう、適合及び配置され得る。流路の遠位開口は、ピンの遠位端部においてピンの長手方向軸に対して法線である表面において位置付けられ得る。このようにして、流路内においてまたは流路に対して外部に供給される溶解材料は、流路を通って押されて遠位出口において流路から出得ることで、標的構造内側における深い位置まで溶解された材料をもたらし得る。あるいは、流路の遠位開口はピンのシャフトの側方表面において位置付けられ得る。このようにして、液化された可溶解性材料はシャフトの周方向表面に移動され得、ピンのシャフトの側方表面と標的構造における凹部の側壁との間において積極的な接続が得られ得る。更なる代替案において、流路は、シャフトの望ましくは対向する側方表面部分である多種の表面部分において複数の遠位開口へと放出する。言い換えれば流路は、複数の放出開口に繋がり得る複数のサブ流路に分岐し得る。かかる放出開口は、対向する箇所におけるシャフトの側方表面で位置付けられ得、液化された可溶解性材料は、ピンのシャフトの側表表面の周囲に均質に分布され得る。
【0018】
本発明の一実施例によれば、加熱装置は、電流が与えられると熱的に加熱されるよう適合される加熱ワイヤを有する。かかる加熱ワイヤを使用して、加熱装置は非常に単純かつ安価な方途において埋め込まれ得る。加熱ワイヤは、ピンの流路へと適合する円形断面を備え得る。望ましくは、加熱ワイヤは閉ループを有し、加熱ワイヤがピンの流路へと挿入されるとき、加熱ワイヤの両端は流路の近位開口に隣接して配置され得る。例えば、加熱ワイヤは同軸ケーブルを使用して実施され得、内側及び外側導体はケーブルの遠位端部において接続され、電圧は近位端部において加えられ得る。電気エネルギの源は、加熱装置へと一体的にされ得るか、または外部装置によって与えられ得る。
【0019】
本発明の一実施例によれば、流路に近接するピンの材料は熱的に溶解されるよう適合され、加熱装置は、流路に近接するピンの材料を熱的に加熱してそれを溶解するよう適合される。かかる実施例において、可溶解性材料は、ピンの流路へと挿入される加熱装置を使用してピンの内側で直接作られ得る。溶解された材料は続いて、遠位開口から出て近接する標的構造へと流れ出得るかあるいは押し出され得、再固化時に標的構造においてピンを固定し得る。外部から与えられなければならない追加的な溶解された材料はない。したがって、全ての必要な可溶解性材料は既にピン内において与えられるため、ピンは容易に取り扱われ得る。
【0020】
本願において「可溶解性(meltable)」という用語は、例えば300℃を下回り、望ましくは200℃を下回り、より望ましくは130℃を下回るような比較的低い温度で材料が溶解され得る、というように理解され得る。言い換えれば、材料は、夫々の加熱装置を使用して容易に得られ得る温度において溶解可能であり得る。
【0021】
インプラントピンは、完全に単一の材料から構成され得る。したがって、インプラントピン全体は、可溶解性材料から作られ得、例えば単一の一体的構成要素として製造され得る。1つのみの材料を有するインプラントピン全体を与えることで、かかるピンの製造が著しく単純化され得る。例えば、ピンは射出成形によって作られ得る。あるいは、ピンは異なる材料を有し得、ピンの流路に近接する領域における内側材料は比較的低温で溶解可能である一方、外側材料は、溶解可能ではないかあるいは実質的により高い温度においてのみ溶解可能であり、それによって非可溶解性の保護スリーブを与える。
【0022】
可溶解性材料は、熱エネルギの適用によって液化され得るいかなる材料であってもよい。言い換えれば、可溶解性材料は、本来は固体であり、熱エネルギの適用を受けて液化または軟化(可塑化、plastified)され、その後の冷却を受けてまた再固化し得る、という材料であるべきである。望ましくは、可溶解性材料は、その液状化が特には骨組織であるヒト組織を破壊または損傷しないエネルギ入力によって達成可能であり得るよう適合され得る。可溶解性材料は、例えば熱可塑性材料であり得る。かかる材料は、高温で液化または軟化し得る。例えば、インプラントピンの材料及び形状は、実質的にいかなる組織も損傷させないような所定の温度閾値を下回る温度において十分な液化の度合いを示すよう選択され得る。
【0023】
可溶解性または成形可能材料の例は、熱可塑性物質であり、例えばPA(ポリアミド)、PC(ポリカーボネート)、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、PMMA(ポリメチルメタクリラート)、POM(ポリオキシメチレン)、PES(ポリエーテルスルホン)、PEI(ポリエーテルイミド)、PPSU(ポリフェニルサルフォン、Polyphenylsulphone)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PSU(ポリスルホン)、または以下に記載される生体適合性または生体吸収性材料である。
【0024】
任意に、インプラントピンの表面コーティング、インプラントピンの大半の材料、及び可溶解性材料の少なくとも1つは、生体適合性材料を有する。生体適合性材料は、ヒトまたは動物の組織に負の干渉をしない材料であり得る。生体適合性材料の例は、特定のプラスチックまたはチタニウム等である特別に適合された金属合金であり得、例えばPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、UHMWPE(超高分子量ポリエチレン)、PLA(ポリ乳酸、Polylactic acid)、PLLA(ポリ−L−ラクチド、Poly-L-lactide)、PLDLA(ポリ(D,L−ラクチド))、PDLLA(ポリ−DL−ラクチド)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)等である。かかる生体適合性材料は、例えば骨へとピンを埋め込むときにインプラントピンの拒絶反応を避けるよう、インプラントの外側の「スキン(皮膚)」に対して特に使用され得る。ピンの外側スキン及び内側の成形可能材料の両方に対して使用され得る生体適合性の熱可塑性物質を使用することは有利であり、インプラントピン全体がこの単一の生体適合性材料で作られ得る。
【0025】
更に任意に、インプラントピンの表面コーティング、インプラントピンの大半の材料、及び成形可能材料の少なくとも1つは、生体吸収性材料を有する。かかる生体吸収性材料は、言って期間後にヒトまたは動物の身体によって吸収され得、かかる生体吸収性材料を有して構成されるピンの一部は、この期間ののちに生体組織に取って代わられ得、それによってインプラントピンと生体組織との間における接続の安定性を増大させ、拒絶反応を低減する。
【0026】
1つの可能な生体吸収性材料は、50%乃至90%のポリ−L−ラクチド及び10%乃至50%のポリ−D,L−ラクチドを有するコポリマを有する。特には、生体吸収性材料は、70重量%のポリ−L−ラクチド及び30重量%のポリ−D,L−ラクチドを有するコポリマであり得る。望ましくは、生体吸収性材料は非晶質材料として形成され得る。
【0027】
上述された材料は、インプラントピンに対して適切な材料であり得、該材料は、約60MPaの適切な引張強度及び約3500MPaの適切なE係数(弾性係数)を示し得る。更には、上述の材料を有するインプラントピンは、ヒトまたは動物の身体へと埋め込まれるときに略十分な時間の間その強度を維持し得る。かかる時間のスパンは約16乃至26週であり得る。上述されたコポリマは、ヒトまたは動物の身体において約2乃至3年の吸収時間を備え得る。材料は更に、標的構造におけるインプラント(埋込み)から24ヶ月後に200%までのインプラント量(implant volume)の増大を示し得る。かかる材料は更に、γ放射線によって容易に殺菌され得る。適切なエネルギ量は、20kGy乃至30kGyであり得、特には25kGyであり得る。
【0028】
可溶解性材料の液状化は、液状化された材料が容易にピンの流路を通って流れ得るようにされるべきである。したがって、液状化された材料は、低い粘度を備えるべきであるため、標的骨構造を破損または損傷させないよう、インプラントピン上へと過剰な圧力を加えることなく流路を通って押し出され得る。
【0029】
本発明の更なる一実施例によれば、インプラントピンキットは更にプランジャを有する。プランジャは、流路に近接して前に生成されていた溶解された材料をピンの遠位開口に向かって押圧するよう適合される。プランジャは、ピンの流路に対して近接する溶解された領域の断面に対して適合される形状を備え得る。したがって、プランジャは、ピンへと押し込まれ得、それによって前に溶解された材料をピンの対向する端部に向かって押圧し、該端部から溶解された材料は遠位開口を通って近接する標的構造へと出得る。故に、溶解された材料が高い粘性を備えるためピンから容易に流れ出得ないときでも、プランジャを使用してピンから押し進められ得る。更に、溶解された材料は、高い圧力を有して遠位開口から近接する標的材料構造へと押し出され得る。それによって、溶解された材料は、例えばピンが埋め込まれる骨の細孔へと深く押圧され得る。
【0030】
本発明の更なる一実施例によれば、インプラントピンキットは更に、溶解された材料をピンの流路の近位開口に供給するための溶解材料供給装置を有する。溶解材料供給装置は、外部装置であり得、該外部装置において可溶解性材料は、溶解するまで加熱され得、続いてピンの流路の近位開口へと押圧され得る。かかる外部装置は、インプラント工程中にピンのヘッドに機械的に結合され得る。かかるインプラントにおいて、加熱装置を使用してピンの流路が予め加熱され得ることが有利であり得、外部的に供給される溶解された材料は、素早い再固化及び流路の詰まりのリスクを伴って冷たい流路へと取り込まれる必要がない。あるいは、溶解材料供給装置は加熱装置へと一体的にされ得、加熱装置は、ピンの流路に供給され得る追加的な材料を加熱及び溶解するよう使用され得る。
【0031】
本発明の更なる一実施例によれば、インプラントピンキットにおいて、加熱装置は挿入体(insert)として与えられる。該挿入体は、加熱ワイヤに近接する可溶解性材料を有する。また挿入体は、溶解された材料が挿入体から出てピンの流路の遠位開口に向かって押圧するよう適合される圧縮配置(compression arrangement)を更に有する。挿入体全体は、ピンの流路に適合され得る形状を備え得る。挿入体が遠位開口に近接する位置において流路にあるとき、熱は、加熱ワイヤによって生成され得、可溶解性材料に移動され得る。該材料は、溶解されるとき、圧縮配置を使用して挿入体から出てピンへと押圧され得、遠位開口を通って近接する標的構造へと出得る。かかる工程は、「逆溶接(retro-welding)」とも称され得る。
【0032】
本発明の第2の態様によれば、上述されたインプラントピンキットを使用してインプラントピンを埋め込むための方法が提案される。当該方法は、インプラントピンを標的構造へと挿入する段階、加熱装置をピンの流路内において収容する段階、加熱装置を使用してピンの流路に近接する材料を加熱する段階、加熱装置を使用してピン内における可溶解性材料を溶解する段階、及びピンの流路の遠位開口から溶解された材料を押し出す段階、を有する。
【0033】
本発明の実施例は異なる対象に関して説明される、ことが留意されなければならない。特には、複数の実施例は装置請求項を参照して説明される一方、他の実施例は方法請求項を参照して説明される。しかしながら当業者は、上記及び以下の説明から、特記されない限り1つの種類の対象に属する特徴の組合せに加えて、異なる対象に関連する特徴間の組み合わせ及び特には装置請求項の特徴と方法請求項の特徴との組み合わせが本願に開示されているものと考えられる、ことを推測するものとする。
【0034】
本発明の上述された態様及び実施例、並びに更なる態様及び実施例は、以下に記載される実施例から明らかであり、実施例を参照して説明される。本発明は、実施例を参照して以下に詳述されるが、それに限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願の第1の実施例に従ったインプラントピンキット、及びインプラント方法の実施中における該キット一連の使用を図示する。
【図2】本願の第2の実施例に従ったインプラントピンキット、及びインプラント方法の実施中における該キット一連の使用を図示する。
【図3】本願の第3の実施例に従ったインプラントピンキット、及びインプラント方法の実施中における該キット一連の使用を図示する。
【図4】図3中のインプラントピンキットにおいて使用されるべき挿入体を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図面は単に概略的なものであり実寸大ではない、ことが留意されるべきである。対応する参照符号は、同様の要素を示すよう全図にわたって使用され得る。
【0037】
図1において、本発明の一実施例に従ったインプラントピン1を埋め込むための一連の方法は、連続する段階において概略的に示される。
【0038】
段階(a)において、インプラントピン1は、ヒトの骨等である標的構造5において前に作られてある凹部3へと挿入される。ピン1は、ピンヘッド7及びピンシャフト9を有する。ピンヘッド7は、ピンシャフト9より大きい断面を備える。ピンシャフト9の断面は、凹部3の断面より僅かに小さいように選択される。したがって、ピン1は、ピンヘッド7が凹部3の周囲に境接するまで凹部3へと容易に挿入され得る。
【0039】
インプラントピン1は流路11を有し、該流路11は、ピンヘッド7の上方側部の近位端部における近位開口13からピンシャフト9の下方側部における遠位開口15までピン1の長手方向に沿って延在する。ピンヘッドの材料は、可溶解性の望ましくは生体適合性材料を有する。
【0040】
段階(b)において、加熱装置19としての役割を有し得る加熱ワイヤ17は、ピンの流路11へと挿入される。加熱ワイヤ17は、近位開口13において流路へと導入され、遠位開口15に近接する領域に到達するまで流路11を通って押される。加熱ワイヤの形状は、加熱ワイヤがピンの流路へと導入されるときにピンの材料と機械的及び熱的接触するように選択される。
【0041】
加熱ワイヤ17は、インプラント装置21を使用して流路11へと導入される。非常に概略的にのみ図示されているインプラント装置21は、インプラントピンを保持し、加熱ワイヤ17を流路11へと押し、加熱ワイヤ17に対して電気エネルギを供給する役割を同時に有し得、流路11に近接する可溶解性材料を溶解させるよう十分に高い温度まで加熱ワイヤを加熱する。
【0042】
段階(c)において、流路11に近接する可溶解性材料23は、加熱ワイヤ17に対する電気エネルギの適用を受けて溶解される。
【0043】
段階(d)において、前に溶解された材料23は続いて、プランジャ25を使用して遠位開口15に向かって押される。プランジャ25は、インプラント装置21または別個の装置によって操作されかつ押され得、前に溶解された領域23の延長部分に略対応する断面を備える。プランジャ25を遠位開口15に向かって押すことによって、前に溶解された材料は、遠位開口15から押し出され、その後の再固化の際に標的構造5の凹部3内においてピン1を補強及び固定する役割を有する。
【0044】
最後に段階(e)において、加熱ワイヤ17及びプランジャ25は、そのインプラントを完了するようピンから引き出される。任意に、延伸された流路11は、そこにマッチングする合致片(図示せず)を導入することによって閉鎖及び安定化され得る。
【0045】
図2において、本発明の一実施例に従ったインプラントピン1を埋め込むための他の一連の方法は、連続的な段階において概略的に示される。
【0046】
段階(a)乃至(c)図1に関して上述された夫々の段階に対応するが、この場合例外として加熱ワイヤ17に近接する領域31における材料23’は、必ずしも完全に溶けるまで加熱される必要はない。その代わり、この領域31は、続いて導入される溶解された材料が遠位開口15に到達する前に再固化しない範囲まで事前に加熱されるのみである。
【0047】
段階(d)において、インプラント装置21は加熱ワイヤ17と共に取り除かれる。
【0048】
続いて段階(e)において、溶解材料供給装置33は、インプラントピンのヘッド7に対して接続される。液化された溶解材料35は、遠位開口15に向かって導入及び押圧され得る。流路11は前に加熱されているため、追加的に導入される溶解された材料は冷却及び固化しないが、その代わりにピンの近接する材料23’を、溶解された材料の全量が増大され得るよう該材料が溶解する温度まで更に加熱する。溶解された材料35は続いて、遠位開口15から押し出され、近接する骨材料の細孔へと流れ、それによってピン1を補強する。
【0049】
図3において、本発明の他の実施例に従ったインプラントピン1を埋め込むための更なる他の一連の方法が概略的に図示される。
【0050】
変更されたインプラントピン1’は、ピン1’の側方表面において追加的な遠位開口15’を与えられる。インプラントピン1’を標的構造5(段階(a))における凹部へと導入した後、挿入体41は、ピン1’の流路9’へと遠位開口15’に近接する位置まで摺動可能に導入される(段階(b))。
【0051】
更によく図示するために、図4において挿入体41が別個に示される。挿入体41は、加熱ワイヤ43及び圧縮配置45を有する。圧縮配置45は、上方圧縮板47及び下方圧縮板49を備える。圧縮板47,49の間には可溶解性材料53が置かれる。上方圧縮板は押しロッド51に対して接続され、それを用いて上方圧縮板47は、下方圧縮板49に向かって押され得る。挿入体41全体の形状は、該挿入体がピン1’の流路11’へと導入され得るよう適合される。
【0052】
段階(c)において、電気エネルギは挿入体41の加熱ワイヤ34に対して与えられる。挿入体41内に置かれる可溶解性材料53が溶解するとすぎに、前に挿入体41全体をその最終位置にもたらすよう使用されていた押しロッド51は、下方圧縮板49に向かって上方圧縮板47を押すよう使用され得る。それによって、圧縮板47,49間におかれた溶解された材料53は絞り出され、遠位開口15’に向かってまた遠位開口15’から押し出される。そこで、標的構造5においてピン1’を補強及び固定することができる。
【0053】
最後に、挿入体41は取り除かれ得る(段階(d))。任意で、残る中空の流路11’は、合致片(図示せず)を取り入れることによって閉鎖及び安定化され得る。
【0054】
「有する」という用語は他の要素または段階を除外するものではなく、単数形で表わされるものはその複数の存在を除外しない、ことは留意されるべきである。また、異なる実施例及び態様に関連して説明される要素は、組み合わされ得る。請求項における参照符号も請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0055】
1 ピン
2 凹部
5 標的
7 ピンヘッド
9 ピンシャフト
11 流路
13 近位開口
15 遠位開口
17 加熱ワイヤ
19 加熱装置
21 インプラント装置
23 溶解された材料
25 プランジャ
27 補強のための溶解された材料
29 残りの流路
31 加熱領域
33 溶解材料供給装置
35 供給される溶解材料
41 挿入体
43 加熱ワイヤ
45 圧縮配置
47 上方圧縮板
49 下方圧縮板
51 押しロッド
53 可溶解性材料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプラントピンキットであって、
流路を備えるカニューレ処置されたインプラントピンと、
加熱装置と、
を有し、
前記ピンの前記流路は、前記ピンの長手方向において延在し、前記ピンの近位端部における近位開口を前記ピンの遠位端部における遠位開口に接続し、
前記ピンの前記流路は、前記加熱装置の少なくとも一部分を収容するよう適合され、
前記加熱装置は、前記ピンの前記流路の少なくとも一部分内において少なくとも部分的に収容されるよう適合され、
前記加熱装置は、前記ピン及び前記加熱装置の少なくとも一方において有される材料を熱的に加熱するよう適合され、
当該インプラントピンキットは、前記カニューレ処置されたインプラントピンにおける前記流路を通って前記ピンの前記遠位端部における前記遠位開口に向かって流れ得る可溶解性材料を溶解するために熱エネルギが使用され得るよう適合され、それによって前記ピンを隣接する組織において固定する、
インプラントピンキット。
【請求項2】
前記加熱装置は、電流の適用を受けて熱的に加熱されるよう適合される加熱ワイヤを有する、
請求項1記載のインプラントピンキット。
【請求項3】
前記流路に近接する前記ピンの材料は、熱的に溶解されるよう適合され、
前記加熱装置は、前記流路に近接する前記ピンの材料を溶解するために該材料を熱的に加熱するよう適合される、
請求項1または2記載のインプラントピンキット。
【請求項4】
プランジャを更に有し、
該プランジャは、前記流路に近接する溶解された材料を前記ピンの前記遠位開口に向かって押圧するよう適合される、
請求項1乃至3のうちいずれか一項記載のインプラントピンキット。
【請求項5】
溶解された材料を前記ピンの前記流路の前記近位開口に対して供給するための溶解材料供給装置を更に有する、
請求項1乃至4のうちいずれか一項記載のインプラントピンキット。
【請求項6】
前記加熱装置は挿入体として与えられ、
該挿入体は、加熱ワイヤに近接する可溶解性材料を有し、
該挿入体は更に、溶解された材料が該挿入体を出て前記ピンの前記流路の前記遠位開口に向かって押圧されるよう適合される圧縮配置を有する、
請求項1乃至5のうちいずれか一項記載のインプラントピンキット。
【請求項7】
請求項1乃至6のうちいずれか一項記載のインプラントピンキットを使用してインプラントピンを埋め込むための方法であって、
前記インプラントピンを標的構造へと挿入する段階と、
加熱装置を前記ピンの流路内において収容する段階と、
前記加熱装置を使用して前記ピンの前記流路に近接する材料を加熱する段階と、
前記加熱装置を使用して前記ピン内における可溶解性材料を溶解する段階と、
前記ピンの前記流路の遠位開口から溶解された材料を押し出す段階と、
を有する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2012−504479(P2012−504479A)
【公表日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−530425(P2011−530425)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【国際出願番号】PCT/EP2009/055029
【国際公開番号】WO2010/040573
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(507015952)ストライカー トラウマ ゲーエムベーハー (13)
【Fターム(参考)】