説明

インプリントシステムおよびインプリントシステムのメンテナンス方法

【課題】インプリント装置の精度を向上させることができるインプリントシステムおよびインプリントシステムのメンテナンス方法を提供する。
【解決手段】機能性液体を吐出させるノズルが形成されたノズルプレート23Aを具備する液体吐出ヘッド24と、基板と液体吐出ヘッド24とを相対的に移動させる相対移動手段と、基板の機能性液体が着弾した面に対して、モールドの凹凸パターンを転写する転写手段と、モールドを機能性液体に接触した状態で、機能性液体を硬化させる硬化手段と、ノズルプレート23Aの温度を制御する第1の温度制御手段44、46と、液体吐出ヘッド24のノズルプレート23A以外の少なくとも一面の温度を制御する第2の温度制御手段42、48と、を備えることを特徴とするインプリントシステム、および、インプリントシステムのメンテナンス方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリントシステムおよびインプリントシステムのメンテナンス方法に係り、特に、インクジェット方式により基板などの媒体上に機能性を有する液体を付与する液体付与技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体集積回路の微細化、高集積化に伴い、基板上に微細構造を形成するための技術として、基板上に配置したレジスト(UV硬化性樹脂)に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールドを押し当てた状態で紫外線を照射してレジストを硬化させ、モールドを基板上のレジストから分離(離型)することで、モールドに形成された微細パターンを基板(レジスト)へ転写するナノインプリント方法が知られている。
【0003】
基板にインプリント材(レジスト液)を付与する形態として、インクジェット方式が適用されたシステムが提案されている。例えば、下記の特許文献1には、複数のノズルを有する印刷ヘッドを備え、該ノズルからインプリント可能な媒体を放出し、インプリントリソグラフィを行なう装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−183106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているような、インクジェット方式が適用されたシステムにおいては、インプリント可能な媒体をノズルから放出するため、インク粘度を調整し、液滴量の制御、吐出安定性を確保する必要があった。インク粘度の制御には、従来からヘッドの温度調節により行なわれていた。
【0006】
また、ナノインプリントでは、液滴を小さくして、基板上に密に液滴を配置することによりスループットが向上することが知られており、スループット向上のためにもヘッドを温調してインク粘度を調整することが重要であった。
【0007】
しかしながら、ヘッドの温度と周囲の温度に差が生じるとインプリントシステムでは、線膨張差により装置や基板にズレが生じて、モールドと基板との位置関係がズレて、インプリントの精度が低下するという問題があった。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、吐出の観点からヘッドの温度調節を行なうとともに、ヘッドと周囲との温度差を最小限にしてインプリント装置の精度を保つことができるインプリントシステムおよびインプリントシステムのメンテナンス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、機能性液体を基板上に吐出させるノズルが形成されたノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、前記基板の前記機能性液体が着弾した面に対して、所定の凹凸パターンが形成されたモールドの前記凹凸パターンを転写する転写手段と、前記モールドの前記凹凸パターンが形成された面全体を前記機能性液体に接触した状態で、前記機能性液体を硬化させる硬化手段と、前記ノズルプレートの温度を制御する第1の温度制御手段と、前記液体吐出ヘッドの前記ノズルプレート以外の少なくとも一面を覆うカバーを設け、前記カバーの温度を制御する第2の温度制御手段と、を備えることを特徴とするインプリントシステムを提供する。
【0010】
本発明によれば、ノズルプレートの温度を制御する第1の温度制御手段と、液体吐出ヘッドの少なくとも一面を覆うカバーの温度を制御する第2の温度制御手段を備えている。これにより、第1の温度制御手段でノズルプレートの温度を制御することで、吐出される機能性液体の温度を制御することができ、機能性液体を所望の粘度とすることができる。したがって、吐出精度の向上、微液滴吐出を可能とすることができる。
【0011】
また、第2の温度制御手段により液体吐出ヘッドのノズルプレート以外の少なくとも一面を覆うカバーの温度制御をしているので、第1の温度制御手段により機能性液体の温度を加熱するために、ノズルプレートおよび液体吐出ヘッドが温められても、第2の温度制御手段により所望の温度とすることができる。したがって、第1の温度制御手段により生じた熱が、液体吐出ヘッドを通じて他の装置に伝わることを防止することができ、基板の膨張、基板の反りが生じることなく、インプリントを行なうことができるので、インプリントの精度を向上させることができる。
【0012】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムは、前記第1の温度制御手段は、前記液体吐出ヘッドの側面の温度を制御する手段を備え、前記液体吐出ヘッド内の前記機能性液体の温度を制御することが好ましい。
【0013】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムによれば、第1の温度制御手段により液体吐出ヘッドの側面の温度を制御しているので、圧力室内部の機能性液体の温度を制御することができる。したがって、機能性液体を所望の温度とすることができるので、吐出精度の向上、微液滴吐出を可能とすることができる。
【0014】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムは、前記第2の温度制御手段は、前記液体吐出ヘッドのノズルプレート以外の面、および、第1の温度制御手段を覆い、温度制御用液体を流通させる流路を備える液体吐出ヘッドカバーであることが好ましい。
【0015】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムによれば、液体吐出ヘッドのノズルプレート以外の面を覆う液体吐出ヘッドカバーを備えているので、加熱された液体吐出ヘッドの熱が、他の装置に伝わることを防止することができる。また、第2の温度制御手段として、この液体吐出ヘッドカバー内に流路を設け、温度制御用の流体を流すことで、効果的に液体吐出ヘッドの熱が他の装置に伝わることを防止することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムは、前記ノズルがシリコンで形成されていることが好ましい。
【0017】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムによれば、ノズルがシリコンで形成されているので、放射熱を低くすることができ、機能性液滴を吐出する基板への温度変化を小さくすることができる。したがって、精度良く機能性液滴の吐出を行なうことができる。
【0018】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムは、前記ノズルプレートの前記ノズルが形成されていない部分を覆うノズルカバーを備えることが好ましい。
【0019】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムによれば、ノズルプレートのノズルが形成されていない部分を覆うノズルカバーを備えているので、ノズルプレートのノズル以外の部分からの対流、放熱により基板に熱が伝わることを防止することができる。したがって、基板の変形を防止することができ、インプリントの精度を向上させることができる。
【0020】
なお、本発明において、「ノズルが形成されていない部分」とは、ヘッドカバーで覆っても機能性液体の液滴の吐出を問題無く行なえる部分である。
【0021】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムは、前記ノズルカバーは、前記ノズルプレートより基板に近い位置に形成されていることが好ましい。
【0022】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムによれば、ノズルカバーはノズルプレートより基板に近い位置に形成されているので、ノズルプレートの熱が基板に伝わることを効率良く防止することができる。
【0023】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムは、前記ノズルプレートと前記基板との間が真空であることが好ましい。
【0024】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムによれば、ノズルプレートと基板との間を真空とすることにより、対流によりヘッドの熱が基板に移動することを防止することができる。したがって、基板が熱により変形することを防止することができるので、インプリントの精度を向上させることができる。
【0025】
本発明は、前記目的を達成するために、上記記載のインプリントシステムのメンテナンス方法であって、前記機能性液体をパージする機能性液体排出工程と、前記機能性液体排出工程により前記ノズルプレートに付着した前記機能性液体に、ブロット部材を接触させて、前記機能性液体を吸収する吸収工程と、を有し、前記ノズルプレートに付着した液滴は、高さが前記ノズルカバーの厚みより高く、前記ノズルカバーに接触しないように形成されていることを特徴とするインプリントシステムのメンテナンス方法を提供する。
【0026】
上記記載のインプリントシステムにおいては、ノズルプレートのノズルが形成されていない部分にノズルカバーを設けているため、ノズルプレートとノズルカバーとで、段差構造が形成されている。本発明によれば、メンテナンス時の機能性液体排出工程時に吐出した液滴の高さをノズルカバーの厚み以上とすることで、ブロット部材により液滴を吸収させることで液滴を容易に除去することができる。また、ノズルカバーと接触させない程度に排出を行なうことにより、液滴をノズルプレート上に留まらせ液滴がノズルカバーから溢れることを防止することができる。
【0027】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法は、前記ブロット部材を、前記機能性液体に接触させた後、前記ブロット部材と前記液滴吐出ヘッドとを相対的に移動させることが好ましい。
【0028】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法によれば、ブロット部材を機能性液体と接触させた後、相対的に移動させているため、効果的に液体の吸収を行なうことができる。
【0029】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法は、前記ブロット部材の温度を制御する第3の温度制御手段を備え、前記ブロット部材の温度を前記基板と略同一の温度まで制御することが好ましい。
【0030】
ノズルプレートに付着した液滴を吸収する際にノズルプレートの熱がブロット部材に伝わり、インプリントシステムの他の装置に対流、放熱により伝わる可能性がある。この場合、基板に伝わり基板が変形する場合があり、インプリントの精度が低下する。本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法によれば、ブロット部材の温度を制御する第3の制御手段を備え、ブロット部材の温度を基板と略同一の温度に制御しているので、ブロット部材の熱が基板に伝わり、基板が変形することを防止することができる。
【0031】
なお、「基板と略同一の温度」とは、基板との温度差が±0.1℃以内のことである。
【0032】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法は、前記液体吐出ヘッドの待機時に、前記ノズルに蓋をするキャッピング部材を備え、前記キャッピング部材は、前記ノズルカバーと接触させ、前記ノズルのキャッピングを行なうことが好ましい。
【0033】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法によれば、キャッピング部材をノズルカバーと接触させることで、ノズルプレートの熱がキャッピング部材に伝わり、キャッピング部材から他の装置、基板に熱が伝わることを防止することができる。
【0034】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法は、前記キャッピング部材には、前記キャッピング部材の温度を制御する第4の温度制御手段を備え、前記キャッピング部材の温度を前記基板と略同一の温度に制御することが好ましい。
【0035】
本発明の他の態様に係るインプリントシステムのメンテナンス方法によれば、キャッピング部材に第4の温度制御手段を備え、キャッピング部材と基板との温度を略同一にしているので、キャッピング部材の熱が基板に伝わり、基板が変形することを防止することができる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のインプリントシステム、インプリントシステムのメンテナンス方法によれば、第1の温度制御手段で機能性液体の温度を制御することで、吐出精度の向上、微液滴吐出を可能とすることができる。また、第2の温度制御手段で、第1の温度制御手段による熱が他の装置、基板に伝わることを防止することができるので、インプリントの精度を向上させることができる。また、メンテナンス時においても、熱が他の装置、基板に伝わることを防止することができるので、精度良く液滴の吐出を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明に係るナノインプリントシステムの各工程を説明する図である。
【図2】本発明に係るナノインプリントシステムの全体構成図である。
【図3】図2に示す光硬化性樹脂液体吐出部の概略構成を示す構成図である。
【図4】図3に示すインクジェットヘッドの構造例を示す平面図である。
【図5】図3に示すインクジェットヘッドの立体構造を示す断面図である。
【図6】インクジェットヘッドおよびヘッドカバーの斜視図(a)、および、断面図(b)である。
【図7】他の実施形態に係るインクジェットヘッドおよびヘッドカバーの斜視図(a)、および、断面図(b)である。
【図8】ノズルカバーを備えるインクジェットヘッドの断面図である。
【図9】他の実施形態に係るノズルカバーを備えるインクジェットヘッドの断面図である。
【図10】パージにより排出されたノズル面の液滴の断面図である。
【図11】図10に示す液滴が付着したノズル面に平面図である。
【図12】パージにより排出されたノズル面の液滴の他の実施形態の断面図である。
【図13】図12に示す液滴が付着したノズル面の平面図である。
【図14】ブロット部材が液滴を吸収する状態を説明する説明図である。
【図15】ブロット部材の斜視図である。
【図16】キャッピング部材の斜視図である。
【図17】キャッピング部材がノズルプレートに接した状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0039】
〔ナノインプリント方法の説明〕
まず、図1(a)〜(f)を用いて、本発明の実施形態に係るナノインプリント方法について、工程順を追って説明する。
【0040】
本例に示すナノインプリント方法は、モールド(型、例えば、Siモールド)に形成された凹凸パターンを、基板(石英基板等)上に形成された光硬化性樹脂液体(機能性液体、例えば、レジスト液)を硬化させた光硬化性樹脂層に転写し、該光硬化性樹脂層をマスクパターンとして基板上に微細パターンを形成するものである。
【0041】
まず、図1(a)に示す石英基板20(以下、単に「基板」ともいう)を準備する。図1(a)に示す基板20は、表側面20Aにハードマスク層21が形成されており、この表側面20Aに微細パターンが形成される。基板20は、紫外線などの光を透過させる所定の透過性を有し、厚みが0.3mm以上であればよい。光透過性を有することで基板20の裏側面20Bからの露光が可能となる。
【0042】
Siモールドを用いる場合に適用される基板20として、表面をシランカップリング剤で被覆したものCr、W、Ti、Ni、Ag、Pt、Auなどからなる金属層を積層したもの、CrO、WO、TiOなどからなる金属酸化膜層を積層したもの、これらの積層体の表面をシランカップリング剤で被覆したものなどが挙げられる。
【0043】
すなわち、図1(a)に図示したハードマスク層21は、上記の金属膜や金属酸化膜などの積層体(被覆材)が用いられる。積層体の厚みが30nmを越えると光透過性が低下してしまい、光硬化性樹脂の硬化不良が起こりやすいので、該積層体の厚みは30nm以下であり、好ましくは20nm以下である。
【0044】
「所定の透過性」とは、基板20の裏側面20Bから照射した光が表側面20Aから出射して、表面に形成される機能を有する液体(例えば、図1(b)に符号25を付して図示した光硬化性樹脂液体)を十分に硬化させることができればよく、例えば、裏側面から照射された波長200nm以上の光の透過率が5%以上であるとよい。
【0045】
また、基板20の構造は単層構造であってもよいし、積層構造であってもよい。基板20の材質は、石英以外にも、シリコン、ニッケル、アルミニウム、ガラス、樹脂、などを適宜用いることができる。これらの材料は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を適宜合成して使用してもよい。
【0046】
なお、基板20に石英以外の材料を用いるときは、モールド(同図に符号26を付して同図)の材料に石英を用いて、モールド側から露光がされる。
【0047】
基板20の厚みは0.05mm以上が好ましく、0.1mm以上がより好ましい。基板20の厚みが0.05mm未満であると、被パターン形成体とモールドとの密着時に基板側に撓みが発生し、均一な密着状態を確保できない可能性がある。また、ハンドリングやインプリント中の押圧による破損を避けることを考慮して、基板20の厚みを0.3mm以上とするとより好ましい。
【0048】
基板20の表側面20Aに対して、インクジェットヘッド24から光硬化性樹脂を含有する複数の光硬化性樹脂液体25を離散的に吐出させる(図1(b):吐出工程)。ここでいう「離散的に吐出させる液滴」とは、基板20上における隣接する着弾位置に着弾した他の液滴と接触せずに、所定の間隔を空けて着弾した複数の液滴を意味している。
【0049】
図1(b)に示す吐出工程では、インクジェットヘッド24に具備される圧力室(図5に符号32を付して図示)を膨張させた後に収縮させて圧力室内の光硬化性樹脂液体を吐出させている。
【0050】
また、光硬化性樹脂液体25の吐出量、配置密度は予め設定(調整)されている。例えば、吐出量および配置密度は、モールド(図1(c)に符号26を付して図示)の凹凸パターンの凹部の空間体積が大きい領域では相対的に大きくされ、凹部の空間体積が小さい領域や凹部がない領域では相対的に小さくされるように調整される。調整後、所定の配置パターンに従って、基板20上に光硬化性樹脂液体25が配置される。
【0051】
図1(b)に示す吐出工程の後に、凹凸パターンが形成されたモールド26の凹凸パターン面を基板20の表側面20Aに所定の押圧力によって押し付けて基板20上の光硬化性樹脂液体25を濡れ広がらせ、濡れ広がらせた複数の光硬化性樹脂液体25の結合からなる光硬化性樹脂層25’が形成される(図1(c):光硬化性樹脂層形成工程)。
【0052】
光硬化性樹脂層形成工程では、モールド26と基板20との間の雰囲気を減圧又は真空雰囲気にした後に、モールド26を基板20に押し付けることで残留気体を低減させることができる。
【0053】
但し、高真空雰囲気下では硬化前の光硬化性樹脂層25’が揮発してしまい、均一な膜厚を維持することが困難となる場合がある。そこで、モールド26と基板20との間の雰囲気を、ヘリウム(He)雰囲気又は減圧He雰囲気にすることで残留気体を低減することも可能である。Heは石英基板20を透過するため、取り込まれた残留気体(He)は徐々に減少する。Heの透過には時間を要すため減圧He雰囲気とすることがより好ましい。
【0054】
モールド26の押圧力は、100kPa以上10MPa以下の範囲とされる。押圧力が相対的に大きい方が樹脂の流動が促進され、また残留気体の圧縮、残留気体の光硬化性樹脂への溶解や、基板20中のHeの透過が促進され、タクトアップにつながる。
【0055】
しかし、押圧力が大きすぎるとモールド26が基板20に接触するときに異物を噛みこんでしまい、モールド26および基板20を破損してしまう可能性があるので、モールド26の押圧力は上記範囲とされる。
【0056】
モールド26の押圧力の範囲は、より好ましくは100kPa以上5MPa以下であり、さらに好ましくは100kPa以上1MPa以下である。100kPa以上としたのは、大気中でインプリントを行なう際、モールド26と基板20との間が光硬化性樹脂液体25で満たされているためであり、モールド26と基板20との間が大気圧(約101kPa)で加圧されているためである。
【0057】
その後、基板20の裏側面20Bから紫外線を照射して、光硬化性樹脂層25’に対する露光が行なわれ、光硬化性樹脂層25’を硬化させる(図1(c):光硬化性樹脂層硬化工程)。本例では、光(紫外線)によって光硬化性樹脂層25’を硬化させる光硬化方式を例示したが、熱硬化性樹脂を含有する液体を用いて熱硬化性樹脂液体の層を形成し、加熱によって熱硬化性樹脂液体の層を硬化させる熱硬化方式など、他の硬化方式を適用してもよい。
【0058】
光硬化性樹脂層25’が十分に硬化した後に、光硬化性樹脂層25’からモールド26を剥離させる(図1(d):剥離工程)。モールド26を剥離させる方法は、光硬化性樹脂層25’のパターンに欠損が生じにくい方法であればよく、基板20の縁部から徐々に剥離させる方法や、モールド26の側から加圧しながら剥離させ、モールド26が光硬化性樹脂層25’から剥離する境界線上での光硬化性樹脂層25’へかかる力を低減させて剥離する方法(加圧剥離法)などの方法を用いることができる。
【0059】
さらに、光硬化性樹脂層25’の近傍を加温し、モールド26と光硬化性樹脂層25’との界面での光硬化性樹脂層25’とモールド26の表面との付着力を低減させ、かつ、光硬化性樹脂層25’のヤング率を低下させて、脆性が良化させて変形による破断を抑制して剥離する方法(加熱アシスト剥離)を適用することも可能である。なお、上記の方法を適宜組み合わせた複合的手法を用いてもよい。
【0060】
図1(a)〜(d)に示す各工程を経て、基板20の表側面20Aに形成された光硬化性樹脂層25’にモールド26の凹凸パターンが転写される。基板20上に形成された光硬化性樹脂層25’は、モールド26の凹凸形状や光硬化樹脂を含有する液体の液物性に対応して、光硬化性樹脂層25’となる光硬化性樹脂液体25の吐出密度が最適化されているので、残渣厚が均一化され、欠損のない好ましい凹凸パターンが形成される。
【0061】
次に、光硬化性樹脂層25’をマスクとして基板20(又は基板20に被覆させた金属膜等)に微細パターンが形成される。
【0062】
基板20上の光硬化性樹脂層25’の凹凸パターンが転写されると、光硬化性樹脂層25’の凹部内の光硬化性樹脂が除去され、基板20の表側面20A、又は表側面20Aに形成される金属層等を露出させる(図1(e):アッシング工程)。
【0063】
さらに、光硬化性樹脂層25’をマスクとしてドライエッチングが行なわれ(図1(f):エッチング工程)、光硬化性樹脂層25’が除去されると、光硬化性樹脂層25’に形成された凹凸パターンに対応した微細パターンが基板20上に形成される。
【0064】
なお、基板20の表側面20Aに金属膜や金属酸化膜が形成される場合は、金属膜又は金属酸化膜に対して所定のパターンが形成される。
【0065】
ドライエッチングの具体例としては、光硬化性樹脂層25’をマスクとして用いることができればよく、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)、スパッタエッチング、などが挙げられる。これらの中でも、イオンミリング法、反応性イオンエッチング(RIE)が特に好ましい。
【0066】
イオンミリング法は、イオンビームエッチングとも言われ、イオン源にArなどの不活性ガスを導入し、イオンを生成する。これを、グリッドを通して加速させ、試料基板に衝突させてエッチングするものである。
【0067】
イオン源としては、カウフマン型、高周波型、電子衝撃型、デュオプラズマトロン型、フリーマン型、ECR(電子サイクロトロン共鳴)型などが挙げられる。イオンビームエ
ッチングでのプロセスガスとしては、Arガス、RIEのエッチャントとしては、フッ素系ガスや塩素系ガスを用いることができる。
【0068】
以上のように、本例に示すナノインプリント方法を用いた微細パターンの形成は、モールド26の凹凸パターンが転写された光硬化性樹脂層25’をマスクとして、残膜の厚みムラおよび残留気体による欠陥のない当該マスクを用いてドライエッチングを行っているので、高精度で歩留まりよく基板20に微細パターンを形成することが可能となる。
【0069】
〔ナノインプリントシステムの説明〕
次に、上述したナノインプリント方法を実現するためのナノインプリントシステム(ナノインプリント装置)について説明する。以下の説明では、先の説明と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略することとする。
【0070】
(全体構成)
図2は、本発明の実施形態に係るナノインプリントシステムの概略構成図である。同図に示すナノインプリントシステム10は、石英ガラスなどの光透過性を有する基板20上に光硬化性樹脂液体(レジスト液)を吐出させる光硬化性樹脂液体吐出部12と、基板20上に配置された光硬化性樹脂液体に所望のパターンを転写するパターン転写部14と、基板20を搬送する搬送部22と、を備えて構成される。
【0071】
光硬化性樹脂液体吐出部12は、複数のノズル(図2中不図示、図4に符号23を付して図示)が形成されるインクジェットヘッド24を備え、各ノズルから光硬化性樹脂液体25を吐出させ、基板20の表面(光硬化性樹脂液体着弾面)に光硬化性樹脂液体25を着弾させる。
【0072】
パターン転写部14は、基板20上の光硬化性樹脂液体25に転写すべき所望の凹凸パターンが形成されたモールド26と、紫外線を照射する紫外線照射装置28と、を備え、光硬化性樹脂液体25が着弾した基板20の表面にモールド26を押し当てた状態で、基板20の裏側(モールド26を押し当てた表面と反対側の面)から紫外線照射を行い、基板20上の光硬化性樹脂液体25を硬化させることにより、基板20上の光硬化性樹脂液体25(光硬化性樹脂層25’)に対してパターン転写を行なう。
【0073】
モールド26は、シリコンが適用される。また、基板20が紫外線照射装置28から照射される紫外線を透過可能な光透過性材料から構成されることにより、基板20の下方(モールド26とは反対側)に配置される紫外線照射装置28から紫外線照射が行なわれたとき、基板20で遮られることなく基板20上の光硬化性樹脂液体25に紫外線が照射され、該光硬化性樹脂液体25を硬化させることができる。
【0074】
光透過性材料としては、例えば、ガラス、石英などを使用することができる。
【0075】
モールド26は、図2の上下方向(両矢印線により図示した方向)に移動可能に構成されており、基板20の表面に対してモールド26のパターン形成面が略平行となる状態を維持しながら下方に移動して、基板20の表面全体に略同時に接触するように押し当てられ、パターン転写が行なわれる。
【0076】
なお、図示は省略するが、モールド26を光透過性材料により構成し、基板20の表側(モールド側)から紫外線を照射する形態も可能である。
【0077】
搬送部22は、例えば、搬送ステージなどの基板20を固定して搬送する搬送手段を含んで構成され、基板20を搬送手段の表面に保持しつつ、該基板20を光硬化性樹脂液体吐出部12からパターン転写部14に向かう方向(以下、「y方向」ということもある。)に搬送を行なう。
【0078】
該搬送手段の具体例として、リニアモータとエアスライダーの組み合わせや、リニアモータとLMガイドの組み合わせなどがあり得る。なお、基板20を移動させる代わりに、光硬化性樹脂液体吐出部12やパターン転写部14を移動させるように構成してもよいし、両者を移動させてもよい。
【0079】
(光硬化性樹脂液体吐出部の説明)
図3は、光硬化性樹脂液体吐出部12の概略構成を示す構成図である。同図に示す光硬化性樹脂液体吐出部12は、シリアル型のインクジェットヘッド24を具備し、インクジェットヘッド24は、x方向に沿って設けられたガイド27に沿って移動可能なキャリッジ29に搭載されている。
【0080】
図3に示す光硬化性樹脂液体吐出部12は、インクジェットヘッド24をx方向に走査させながらx方向への光硬化性樹脂液体25(図1参照)を吐出させ、x方向について一回の走査が終了すると基板20をy方向へ所定量移動させて、次の領域への光硬化性樹脂液体25を吐出させ、この動作を繰り返しながら基板20の全面にわたって光硬化性樹脂液体25を配置させるように構成されている。
【0081】
図4(a),(b)は、図3に示すシリアル型のインクジェットヘッド24のノズル配置例を示す平面図である。図4(a)に示すインクジェットヘッド24は、y方向に沿って複数のノズル23が並べられた構造を有している。また、図4(b)に示すように、複数のノズル23を千鳥状に配置して、y方向の実質的なノズルピッチを小さくすることも可能である。
【0082】
なお、本例ではシリアル方式のインクジェットヘッド24を例示したが、基板20の全幅に対応する長さにわたって、複数のノズルが並べられた構造を有するフルライン型のインクジェットヘッドを適用することも可能である。
【0083】
また、ノズル配置は、マトリクス配置を適用してもよいし、千鳥配置や一列配置を適用してもよい。
【0084】
(インクジェットヘッドの構造)
図5は、インクジェットヘッド24の一チャンネル分の液滴吐出素子の立体的構成を示す断面図である。同図に示すインクジェットヘッド24は、複数のノズル23の開口が形成されたノズルプレート23Aと、圧力室32や共通流路35等の流路が形成された流路板等を積層接合した構造から成る。
【0085】
ノズルプレート23Aは、インクジェットヘッド24のノズル面23Bを構成し、各圧力室32にそれぞれ連通する複数のノズル23が形成されている。なお、図5では、一チャンネル分の図示のため、ノズル23が一つだけ図示されている。
【0086】
流路板は、圧力室32の側壁部を構成するとともに、共通流路35から圧力室32にインクを導く個別供給路の絞り部(最狭窄部)としての供給口34を形成する流路形成部材である。
【0087】
なお、説明の便宜上、図5では簡略的に図示しているが、流路板は一枚又は複数の基板を積層した構造である。ノズルプレート23Aおよび流路板は、シリコンを材料として半導体製造プロセスによって所要の形状に加工することが可能である。
【0088】
共通流路35はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路35を介して各圧力室32に供給される。
【0089】
圧力室32の一部の面(図5において天面)を構成する振動板36には、上部(個別)電極37Aおよび下部(共通)電極37Bを備え、上部電極37Aと下部電極37Bとの間に圧電体38Aがはさまれた構造を有する圧電素子38が接合されている。
【0090】
振動板36を金属薄膜や金属酸化膜により構成すると、圧電素子38の下部電極37Bに相当する共通電極として機能する。なお、樹脂などの非導電性材料によって振動板を形成する態様では、振動板部材の表面に金属などの導電材料による下部電極層が形成される。
【0091】
上部電極37Aに駆動電圧を印加することによって圧電素子38が変形して圧力室32の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル23からインクが吐出される。インク吐出後、圧電素子38が元の状態に戻る際、共通流路35から供給口34を通って新しいインクが圧力室32に再充填される。
【0092】
(インクジェットヘッドおよびヘッドカバーの構造)
本実施形態においては、光硬化性樹脂液体の吐出安定性、微液滴吐出のために、インクジェットヘッド24のノズルプレート23Aの温度調節(特に加温)を行なうことで、光硬化性樹脂液体の粘度を低くしている。また、ノズルプレート23Aを温度調節することにより生じた熱が、光硬化性樹脂液体が付与される基板20に熱が伝わることを防止するため、ヘッドカバー42を設け、ヘッドカバー42の温度調節を行なっている。
【0093】
図6(a)は、インクジェットヘッド24およびヘッドカバー42の斜視図、図6(b)は図6(a)の断面図である。
【0094】
図6に示すように、本実施形態においては、ノズルプレート23Aの側面にヒータ44およびサーミスタ46を備える。ヒータ44によりノズルプレート23Aから吐出される光硬化性樹脂液体の温度を温めることができ、光硬化性樹脂液体の粘性を制御し、吐出安定性、液滴量の制御を行なうことができる。また、液滴を小さくすることで、基板上に密に機能性材料の液滴を配置することができ、スループットを向上させることができる。
【0095】
ヒータ44の温度は、ノズルプレート23Aの側部に設けられたサーミスタ46により抵抗値を測定することで、温度に換算し、ヒータ44の温度、光硬化性樹脂液体の温度を制御している。本実施形態においては、ヒータ44およびサーミスタ46が第1の温度制御手段となる。
【0096】
インクジェットヘッド24の周りには、インクジェットヘッド24全体を覆う、ヘッドカバー42が設けられている。インクジェットヘッド24を加熱することによって生じた熱により、光硬化性樹脂液体が付与される基板が加熱され、線膨張差により装置や基板のズレが生じるため、インプリントの精度に影響が生じる。このヘッドカバー42によりインクジェットヘッド24を覆うことで、インクジェットヘッド24の周囲温度と基板20とに温度差が生じることを防止することができるので、基板20の温度変化を防止し、精度良くインプリントすることができる。本実施形態においては、ノズルプレート23Aのみを加熱しているので、第1の温度制御手段による熱が基板20、又は、他の装置へ伝わることを防止することができる。
【0097】
なお、図6においては、ヒータ44とサーミスタ46を用いて温度調節を行なう態様で説明したが、その他の態様としてヒータと熱電対、ペルチェ素子により温度を制御することも可能である。
【0098】
ヘッドカバー42内には、ノズルプレート23Aを加熱するヒータ44に生じた熱によりインクジェットヘッド24の周囲温度が加熱されるのを防止するため、温調水用流路48を設け、ヘッドカバー42を温度調節(特に冷却)することにより、ヒータ44の熱により周囲温度が上昇することを防止することができる。
【0099】
ヘッドカバー42を冷却する方法としては、図6に示すように、温調水用流路48を設け、流路に所望の温度の水を循環させることでヘッドカバー42を冷却させることができる。温調水用流路48には、図示しない循環ポンプが設けられているとともに、ラジエーターを備え、ヘッドカバー42内で得た熱を放熱し、循環させることで、冷却を行っている。また、温調水用流路48内を流す水の温度は、インクジェットヘッド24の外部の温度に従って制御される。
【0100】
ヘッドカバー42は、空冷により冷やすことができ、ヘッドカバー42に直接空気をあてて冷却することも可能である。本実施形態においては、水冷、空冷によりヘッドカバー42を冷却する手段を含めたヘッドカバー42が第2の温度制御手段となる。
【0101】
ヘッドカバー42としては、ヒートシンクを用いることができる。ヒートシンクを用いることにより、熱の放熱により温度を下げることができる。ヘッドカバー42の材料としては、熱が伝導しやすいアルミニウム、銅などの金属を用いることができる。
【0102】
なお、図6においては、ヘッドカバーをインクジェットヘッド24のノズルプレート23A側以外の面を覆う構成で記載したが、ヒータ44の熱が他の装置、基板に伝わらないようにすることができれば、全面でなくともいずれか一面の温度制御をする態様とすることもできる。
【0103】
図7は、別の実施形態にかかるインクジェットヘッドおよびインクジェットカバーの図であり、図7(a)が斜視図、図7(b)は図7(a)の断面図である。
【0104】
図7は、ノズルプレート23Aを加熱するヒータ44のとは別に、インクジェットヘッド24を加熱するヒータ50を備えている点が上記実施形態と異なっている。インクジェットヘッド24を加熱するヒータ50を備えることにより、圧力室32内の光硬化性樹脂液体の温度を調節することができるので、より効率的に吐出される光硬化性樹脂液体の温度を制御することができる。
【0105】
なお、インクジェットヘッド24を温調する手段ヒータ50、および、ヘッドカバー42を冷却する手段については、上記実施形態と同様の構成とすることができる。
【0106】
次に、図8、図9を用いて、インクジェットヘッド24のノズル面23Bの熱が基板に伝わらないようにするノズルカバー52の構成について説明する。
【0107】
図8は、ノズル面23Bの一部を覆うノズルカバー52を備えるインクジェットヘッド24の断面図である。図8に示すように、インクジェットヘッド24のノズル面23Bの熱が、基板に伝わることを防止するために、ノズル面23Bのノズル23以外の部分を覆うノズルカバー52を設けることができる。ノズル面23Bを覆うことで、ノズル面23Bを加熱することにより生じた熱が基板20に伝わることを防止することができる。
【0108】
ノズル面23Bを覆うノズルカバー52としては、図8に示すように、ヘッドカバー42と一体のものを使用することができる。また、ノズルカバー52として、ヘッドカバー42と別の部材として設けることもできる。
【0109】
また、ノズルカバー52とヘッドカバー42を一体とすることで、ヘッドカバー42に設けられた温調水用流路48によりノズルカバー52の温度調節を行なうことができる。また、ノズルカバー52とヘッドカバー42と別部材とする場合は、ノズルカバー52に温度制御手段を設けることもできる。温度制御手段としては、ヘッドカバー42と同様の構成とすることができる。
【0110】
ノズルカバー52としては、ヘッドカバー42と同様にヒートシンクを用いることができる。ヒートシンクを用いることにより、熱の放熱により温度を下げることができる。ノズルカバー52の材料としては、熱が伝導しやすいアルミニウム、銅などの金属を用いることができる。
【0111】
図9は、ノズル面23Bの一部を覆うノズルカバー52の他の実施形態を示す断面図である。図9に示すノズルカバー52は、ノズルカバー52が、ノズル面23Bと接触していない点が上記実施形態と異なっている。
【0112】
図9に示すように、ノズル面23Bとノズルカバー52とを非接触とすることにより、ノズル面23Bとノズルカバー52との間に空気の断熱層53を設けることができるので、より断熱効果を発揮することができる。
【0113】
なお、本発明においては、ノズルカバー52は設けても設けなくてもよいが、ノズルカバー52を設けることで、ノズルプレート23Aから基板20への伝熱を防止することができるので、ノズルカバー52を設けることが好ましい。
【0114】
なお、図6〜図9の実施形態において、温度差による結露を防止するため、ヘッドカバー42、ノズルカバー52は撥水処理されていることが好ましい。撥水処理は従来と同様の方法により行なうことができる。
【0115】
次に、ノズル面23Bのメンテナンス方法について説明する。上述したように、本発明においては、液体を吐出するノズル23を有するノズルプレート23Aと、ノズル面23Bをカバーするノズルカバー52とで段差が設けられている。そして、パージにより吐出された液体を所定の液量とすることにより、ノズル面23Bを傷つけることなく、パージされた液体を吸収することができる。
【0116】
図10はパージにより排出されたノズル面23Bの液滴54の断面図であり、図11は図10における液滴が吐出されたノズル面の平面図である。また、図12は、他の実施形態におけるノズル面23Bの液滴54’の断面図である、図13は図12における液滴54’がパージされたノズル面の平面図である。
【0117】
図10、12に示すように、本発明は、ノズルプレート23Aと、ノズルカバー52とで、段差が設けられている。パージした液滴54の高さを、ノズル面23Bとノズルカバー52との段差より高くすることにより、ブロット部材を接触させることで、ブロット部材によりパージした液滴を吸収させることができる。
【0118】
また、図12に示すように、パージした機能性インクの液滴は、ノズルカバー52の側面にかからないように、ノズルプレート23A上にインクが留まることが好ましい。ノズルカバー52に液滴がかかるまでパージを行なうと液滴がノズル面に留まらず吐出されてしまうので好ましくない。具体的には、次の条件を満たすように液滴の量を決定すること
が好ましい。
【0119】
液的の高さをh、半径をr、ノズル面との接触角をθ、液滴の体積をVとすると次の式で関係づけられる。
【0120】
【数1】

【0121】
【数2】

【0122】
図11(a)、図13(a)のように、パージによりノズルから排出した液滴が独立している場合、ノズル間隔をd、ノズルカバーの幅をwとすると、2r<d、2r<wを満たす液滴量で、液滴の高さがノズル面とノズルカバーの段差より高くなるように調節する。
【0123】
また、図11(b)、図13(b)にように、パージによりノズルから排出した液滴が隣り合うノズルから排出した液滴とつながる場合は、断面積Sは次の式で関係づけられる。
【0124】
【数3】

【0125】
排出された液体の長さをlとすると、V=S・lで与えられる。したがって、2r<wを満たす液滴量で、式(1)で与えられる液滴の高さhが、ノズル面とノズルカバーの段差より高くなるように調節する。
【0126】
図11(a)、(b)、図13(a)、(b)は、ノズルからパージされた液滴を有するノズル面の平面図である。図11(a)、図13(a)は、パージした液体の各液滴54、54’が孤立している状態を示す図であり、図11(b)、図13(b)は、隣り合うノズル23からパージされた液滴54、54’が接触し、液滴の列として形成された図である。本実施形態においては、いずれの場合においても、ブロット部材を接触させることで、液滴の吸収を行なうことができる。なお、パージされた液滴54のサイズは、液滴54をノズルプレート23Aで保持することができ、液滴54の高さが、ノズル面23Bとノズルカバー52との段差より高くすることができれば良い。具体的には、ノズルカバー52の厚さ、ノズルプレート23Aのノズルカバー52で覆われていない部分の幅、ノズルピッチ、ノズルプレート23Aの接触角により液滴のパージ量を決定することができる。
【0127】
次に図14、図15を用いて、パージした液滴54をブロット部材56に吸収する方法について説明する。
【0128】
図15に示すように、ブロット部材は、円柱形のローラ58にクリーニングパッド60を設けて形成されている。このクリーニングパッド60を図14(a)に示すように、ノズルプレート23Aおよびノズルカバー52の段差構造に接触させることにより、液滴がクリーニングパッド60に吸収され、液滴の除去を行なうことができる(図14(b))。
【0129】
ブロット部材56は円柱形のローラ58にクリーニングパッド60を設け、図14(a)に示すように、ノズルプレート23Aとノズルカバー52との段差構造と接触させることで、段差構造の凹部内部にブロット部材56を入れることができるので、容易にパージした液滴を吸収させることができる。ブロット部材は、ノズル面に対して、対向する方向からノズル面に接触するように垂直に移動させることで、クリーニングパッド60に液滴を吸収させることができる。
【0130】
また、ブロット部材56のクリーニングパッド60をノズル面23Bと相対的に移動させることで、クリーニング性を向上させることも可能である。クリーニングパッド60を移動させる方法としては、図15に示すように、クリーニングパッド60を供給ローラ62から供給し、ローラ58を介して、巻取りローラ64で巻き取ることによりクリーニングパッド60を移動させてクリーニングすることも可能である。
【0131】
クリーニングパッド60としては、トレシー(東レ株式会社)などを用いることができる。
【0132】
なお、図14、15においては、クリーニングパッド60を接触させる部材として円柱形のローラ58を用いているが、本発明においてはこれに限定されず、他の形状のものを用いても良い。上述したようにパージした液滴54は、段差構造の凹部から出るように液滴54が形成されているので、ブロット部材56が段差構造の凹部内に入り込まなくても液滴の吸収を行なうことができる。但し、ブロット部材56を凹部内部に入り込ませる、クリーニングパットを移動させるためには、円柱形状のロールを用いることが好ましい。
【0133】
また、ブロット部材56は、光硬化性樹脂液体を吐出する際にノズルプレート23Aを加熱した熱が、パージした光硬化性樹脂液体を拭き取るブロット部材56に伝わり、その熱により、インプリントシステムに対流、放熱で伝わることを防止するため、温度調節が行なわれることが好ましい。
【0134】
ブロット部材56を温度調節する方法としては、図15に示すように、ローラ58に温調水用流路66を設け、所定の温度の液体を流すことで温度調節を行なうことができる。ブロット部材56の温度調節を行なうことで、ノズルプレートの加熱に用いられた熱を冷やすことができ、他の装置に伝わることを防止することができる。ブロット部材56に温度調節用の液体を供給する方法としては、ヘッドカバー42の温度調節を行なう方法と同様の方法により行なうことができる。本実施形態においては、ブロット部材56の温度調節を行なう温調水用流路66が第3の温度制御手段となる。
【0135】
図16は、インクジェットヘッド24の保存時に用いられるキャッピング部材68の斜視図である。インクジェットヘッド24には、ノズル23の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてキャッピング部材68が設けられている。
【0136】
キャッピング部材68は、不図示の移動機構によって、インクジェットヘッド24に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置からインクジェットヘッド24下方のメンテナンス位置に移動される。
【0137】
キャッピング部材68は、図示せぬ昇降機構によってインクジェットヘッド24に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップを所定の上昇位置まで上昇させ、インクジェットヘッド24に密着させることにより、ノズル面23Bをキャッピング部材68で覆う。
【0138】
印字中又は待機中において、特定のノズル23の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると圧電素子38が動作してもノズル23からインクを吐出できなくなる。
【0139】
このような状態になる前に、圧電素子38の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で圧電素子38を動作させ、粘度が上昇したノズル近傍の劣化インクを排出すべくキャッピング部材68に向って予備吐出が行なわれる。「予備吐出」には、スピット、空吐出、つば吐き、ダミー吐出などと呼ばれる処理が含まれる。
【0140】
また、インクジェットヘッド24内の液体や圧力室32の内部に気泡が混入した場合、圧電素子38が動作してもノズル23からインクを吐出させることができなくなる。このような場合にはインクジェットヘッド24にキャッピング部材68を当て、吸引ポンプ70で圧力室32内の気泡が混入したインクを吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク72へ送液する。吸引動作が終了したら、キャッピング部材68内の圧力を大気圧に戻すため、大気開放バルブ74を開放し、キャッピング部材68内の圧力を大気圧とする。
【0141】
この吸引動作は、初期の光硬化性樹脂液体のインクジェットヘッド24の充填時、あるいは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸出しが行なわれる。なお、吸引動作は、圧力室32内の光硬化性樹脂液体全体に対して行なわれるので、消費量が大きくなる。したがって、光硬化性樹脂液体の粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行なう態様が好ましい。
【0142】
本実施形態においては、上述したように、インクジェットヘッドから吐出される光硬化性樹脂液体の温度調節を行なうため、インクジェットヘッド24、又は、ノズルプレート23Aの温度調節を行なっている。したがって、ノズルプレート23Aの熱がキャッピング部材68に伝わり、その熱が他の装置に対流、放熱により伝わることを防止するため、キャッピング部材68の温度が一定になるように、温調水用流路76が設けられている。この温調水用流路76に所定の温度の液体を流すことで、キャッピング部材68の温度制御を行なうことができる。キャッピング部材68の温度制御をする方法としては、上述したヘッドカバー42、ブロット部材56と同様の方法により行なうことができる。本実施形態においては、温調水用流路76が第4の温度制御手段となる。
【0143】
また、ノズル23をキャッピング部材68でキャッピングする際、ノズルカバー52とキャッピング部材68を接触させてキャッピングすることが好ましい。キャッピング部材68とノズルカバー52とを接触させることで、ノズルプレート23Aの熱がキャッピング部材68に伝わることを防止することができ、基板、他の装置に熱が伝わることを防止することができる。
【0144】
〔光硬化性樹脂液体の説明〕
次に、本例に示すナノインプリントシステムに適用される光硬化性樹脂液体の一例として、レジスト組成物(以下、単に「レジスト」と記載することがある。)について詳細に説明する。
【0145】
レジスト組成物は、一種以上のフッ素を含む界面活性剤と重合性化合物と、光重合開始剤Iとを少なくとも含有するインプリント用硬化性組成物である。
【0146】
レジスト組成物には、機能として多官能重合性基を有することによる架橋性の発現を狙い、又は炭素密度を高める、又は結合エネルギーの総量を高める、又は硬化後の樹脂中に含まれるO、S、N、等の電気陰性度が高い部位の含有率を抑制する等によりエッチング耐性を向上させる目的で重合性官能基を有する1官能以上のモノマー成分を含んでもよく、さらに、必要に応じて、基板とのカップリング剤、揮発性溶剤、酸化防止剤等を含んでもよい。
【0147】
基板とのカップリング剤としては、前述の基板の密着処理剤と同様の材料を用いることができる。含有量としては、基板とレジスト層との界面に配置する程度に含有していれば良く、10質量%以下であれば良く、5質量%以下がより好ましく、2質量%以下が更により好ましく、0.5質量%以下であることが最も好ましい。
【0148】
レジスト組成物の粘度は、モールド26(図2参照)に形成されたパターンへのレジスト組成物中の固形分(揮発溶剤成分を除いた成分)の入り込みと、モールド26への濡れ広がり性の観点から、固形分の粘度は、1000mPa・s以下であることが好ましく、100mPa・s以下であることがより好ましく、20mPa・s以下であることが更により好ましい。しかしながら、インクジェット方式を利用する場合は、室温又はヘッドで吐出時に温度を制御することで、20mPa・s以下となることが好ましく、またレジスト組成物の表面張力が20ミリニュートン毎メートル(mN/m)以上40ミリニュートン毎メートル以下の範囲、さらにミリニュートン毎メートル以上、36ミリニュートン毎メートル以下となることが、インクジェットでの吐出安定性を確保する観点で好ましい。また、微液滴吐出のためには、粘度は10mPa・s以下であることが好ましく、さらに6mPa・s以下がより好ましい。
【0149】
(重合性化合物)
レジスト組成物の主成分となる重合性化合物としては、以下の〔数4〕で示される化合物中のフッ素含有率が5%以下であるか、又はフルオロアルキル基又はフルオロアルキルエーテル基を実質的に含まない重合性化合物であることとする。
【0150】
【数4】

【0151】
重合性化合物としては、硬化後のパターンの精度およびエッチング耐性等の品質の良好なものであることが好ましい。かかる重合性化合物としては、重合により架橋して三次元構造を有する重合体となる多官能単量体を含むことが好ましく、多官能単量体は、少なくとも1つの2価又は3価の芳香族基を有するものであることが好ましい。
【0152】
硬化(重合)後に三次元構造を有するレジストの場合は、硬化処理後の形状維持性が良く、モールド剥離時にモールドとレジストとの付着力によって、レジストにかかる応力がレジスト構造体の特定エリアに集中し、パターンが塑性変形することが抑制される。
【0153】
しかしながら、重合後に三次元構造を有する重合体となる多官能モノマーの比率や、重合後に三次元架橋を形成する部位の密度が上昇すると、硬化後のヤング率が大きくなって変形性が低下し、また膜の脆性が悪化するため、モールド剥離時に破断しやすくなってしまうことが懸念される。特にパターンサイズが30nm幅以下でパターンアスペクト比が2以上のパターンを残膜厚みが10nm以下となる態様では、ハードディスクパターンや半導体パターンなどの広エリアでの形成を試みた場合に、パターンの剥がれやもげが発生する確率が大きくなると考えられる。
【0154】
したがって、多官能単量体は、重合性化合物中に10質量%以上含有されることが好ましく、20質量%以上含有されることがより好ましく、30質量%以上含有されることがさらに好ましく、40質量%以上であることが最も好ましいことを見出した。
【0155】
また、次式〔数2〕で表される架橋密度が0.01個/nm以上10個/nm以下であることが好ましく、0.1個/nm以上6個/nm2以下であることがより好ましく、0.5個/nm以上5.0個/nm以下であることがもっとも好ましいことを見出した。組成物の架橋密度は、各分子の架橋密度を求め、さらに重量平均より求めるか、又は組成物の硬化後密度を測定し、Mw、および(Nf−1)についてそれぞれの値を重量平均した値と次式〔数5〕より求める。
【0156】
【数5】

【0157】
但し、Daは1分子の架橋密度、Dcは硬化後密度、Nfはモノマー1分子中に含まれるアクリレート官能基数、Naはアボガドロ定数、Mwは分子量である。
【0158】
重合性化合物の重合性官能基としては、特に制限されないが、反応性および安定性が良好であることから、メタクリレート基、アクリレート基が好ましく、アクリレート基がより好ましい。
【0159】
ドライエッチング耐性は、レジスト組成物の大西パラメータおよびリングパラメータにより評価することができる。大西パラメータが小さく、また、リングパラメータが大きいものほどドライエッチング耐性に優れる。本発明において、レジスト組成物は、大西パラメータが4.0以下、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下となるように、また、リングパラメータが0.1以上、好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上となるものを好適としている。
【0160】
上記各パラメータは、レジスト組成物を構成する揮発溶剤成分以外の構成物質について、構造式を元に後述の計算式を用いて算出された材料パラメータ値を、組成重量比を元に組成物全体で平均化した値として求める。したがって、レジスト組成物の主成分である重合性化合物についても、レジスト組成物中のその他の成分、および上記パラメータを考慮して選択することが好ましい。
【0161】
大西パラメータ=(化合物中の総原子数)/{(化合物中の炭素原子数)−(化合物中の酸素原子数)}
リングパラメータ=(環構造を形成する炭素質量)/(化合物の全質量)
重合性化合物としては、以下に示す重合性単量体、およびかかる重合性単量体が数単位重合したオリゴマー等が挙げられる。パターン形成性とエッチング耐性の観点から、重合性単量体(Ax)、および特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物のうちの少なくとも1種類以上を含むことが好ましい。
【0162】
(重合性単量体(Ax))
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化1〕に示す一般式(I)で表される。
【0163】
【化1】

【0164】
なお、上記〔化1〕に示す一般式(I)中、Arは置換基を有していてもよい2価又は3価の芳香族基を表し、Xは単結合又は有機連結基を表し、R1は水素原子又は置換基を
有していてもよいアルキル基を表し、nは2又は3を表す。
【0165】
上記の一般式(I)中、Arとしては、n=2のときは2価の芳香族基(すなわちアリーレン基)を表し、n=3のときは3価の芳香族基を表す。アリーレン基としてはフェニレン基、ナフチレン基などの炭化水素系アリーレン基;インドール、カルバゾールなどが連結基となったヘテロアリーレン基などが挙げられ、好ましくは炭化水素系アリーレン基であり、さらに好ましくは粘度、エッチング耐性の観点からフェニレン基である。アリーレン基は置換基を有していてもよく、好ましい置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、水酸基、シアノ基、アルコキシカルボニル基、アミド基、スルホンアミド基が挙げられる。
【0166】
Xの有機連結基としては、鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよいアルキレン基、アリーレン基、アラルキレン基が挙げられる。その中でも、アルキレン基、オキシアルキレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。Xとしては、単結合又はアルキレン基であることが特に好ましい。
【0167】
1は、好ましくは水素原子又はメチル基であり、より好ましくは水素原子である。R1が置換基を有する場合、好ましい置換基としては、特に制限はないが、例えば水酸基、ハロゲン原子(フッ素を除く)、アルコキシ基、アシルオキシ基を挙げることができる。nは2又は3であり、好ましくは2である。
【0168】
重合性単量体(Ax)は、以下の〔化2〕に示す一般式(I−a)、又は一般式(I−b)で表される重合性単量体であることが、組成物粘度を低下させる観点から好ましい。
【0169】
【化2】

【0170】
なお、上記の一般式(I−a)、(I−b)中、X1、X2は、それぞれ独立に単結合又は炭素数1〜3の置換基を有していてもよいアルキレン基を表し、R1は水素原子又は置換基を有していてもよいアルキル基を表す。
【0171】
一般式(I−a)中、前記X1は、単結合又はメチレン基であることが好ましく、メチレン基であることが粘度低減の観点からより好ましい。X2の好ましい範囲は、前記X1の好ましい範囲と同様である。
【0172】
1は上記の一般式(I)におけるとR1と同義であり、好ましい範囲も同様である。重合性単量体(Ax)は25℃において液体であると、添加量を増やした際にも異物の発生が抑制でき好ましい。重合性単量体(Ax)は25℃における粘度が70mPa・s未満であることがパターン形成性の観点から好ましく、50mPa・s以下であることがより好ましく、30mPa・s以下であることが特に好ましい。
【0173】
以下の〔化3〕に好ましい重合性単量体(Ax)の具体例を示す。R1は一般式(I)におけるR1と同義である。R1としては硬化性の観点から、水素原子が好ましい。
【0174】
【化3】

【0175】
これらの中でも、以下の〔化4〕に示す化合物が25℃において液体であり、かつ、低粘度で、さらに良好な硬化性を示し、特に好ましい。
【0176】
【化4】

【0177】
レジスト組成物においては、組成物粘度、ドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良の観点から、必要に応じて重合性単量体(Ax)と、以下に説明する重合性単量体(Ax)とは異なる他の重合性単量体と、を併用することが好ましい。
【0178】
(他の重合性単量体)
他の重合性単量体としては、例えば、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体;オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物);ビニルエーテル化合物;スチレン誘導体;フッ素原子を有する化合物;プロペニルエーテル又はブテニルエーテル等を挙げることができ、硬化性の観点から、エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体が好ましい。
【0179】
これらの他の重合性単量体のうち、インプリント適性とドライエッチング耐性、硬化性、粘度等の観点から、特開2009−218550号公報明細書の段落〔0032〕〜〔0053〕に記載の化合物をより好ましく含むことができる。さらに他に含むことができる前記エチレン性不飽和結合含有基を1〜6個有する重合性不飽和単量体(1〜6官能の重合性不飽和単量体)について説明する。
【0180】
まず、エチレン性不飽和結合含有基を1個有する重合性不飽和単量体(1官能の重合性不飽和単量体)としては具体的に、2−アクリロイロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシ2−ヒドロキシエチルフタレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタレート、2−アクリロイロキシプロピルフタレート、2−エチル−2−ブチルプロパンジオールアクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、アクリル酸ダイマー、ベンジル(メタ)アクリレート、1−または2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性(以下「EO」という。)クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロヘンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下「ECH」という)変性フェノキシアクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、トリドデシル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル、が例示される。
【0181】
これらの中で特に、芳香族構造および/又は脂環炭化水素構造を有する単官能(メタ)アクリレートがドライエッチング耐性を改善する観点から好ましい。具体例ベンジル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレートが好ましく、ベンジル(メタ)アクリレート、が特に好ましい。
【0182】
他の重合性単量体として、エチレン性不飽和結合含有基を2個有する多官能重合性不飽和単量体を用いることも好ましい。好ましく用いることのできるエチレン性不飽和結合含有基を2個有する2官能重合性不飽和単量体の例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタンジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル化イソシアヌレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコールアクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、プロピレンオキシド(以後「PO」という。)変性ネオペンチルグリコールジアクリレート、カプロラクトン変性ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコール、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、ポリエステル(ジ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルエチレン尿素、ジビニルプロピレン尿素が例示される。
【0183】
これらの中で特に、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0184】
エチレン性不飽和結合含有基を3個以上有する多官能重合性不飽和単量体の例としては、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、EO変性リン酸トリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールポリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0185】
これらの中で特に、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等が本発明に好適に用いられる。
【0186】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)としては、例えば、多塩基酸のポリグリシジルエステル類、多価アルコールのポリグリシジルエーテル類、ポリオキシアルキレングリコールのポリグリシジルエーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエテーテル類、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテル類の水素添加化合物類、ウレタンポリエポキシ化合物およびエポキシ化ポリブタジエン類等を挙げることができる。これらの化合物は、その一種を単独で使用することもできるし、また、その二種以上を混合して使用することもできる。
【0187】
オキシラン環を有する化合物(エポキシ化合物)の具体例として、例えばビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどの脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル類;脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル類;脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル類;フェノール、クレゾール、ブチルフェノール又はこれらにアルキレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルアルコールのモノグリシジルエーテル類;高級脂肪酸のグリシジルエステル類などが挙げられる。
【0188】
これらの中で特に、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルおよびポリプロピレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0189】
グリシジル基含有化合物として好適に使用できる市販品としては、UVR−6216(ユニオンカーバイド社製)、グリシドール、AOEX24、サイクロマーA200、(以上、ダイセル化学工業(株)製)、エピコート828、エピコート812、エピコート1031、エピコート872、エピコートCT508(以上、油化シェル(株)製)、KRM−2400、KRM−2410、KRM−2408、KRM−2490、KRM−2720、KRM−2750(以上、旭電化工業(株)製)などを挙げることができる。これらは、1種単独で、又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0190】
また、これらのオキシラン環を有する化合物はその製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed.by Alfred Hasfner,The chemistry ofheterocyclic compounds−Small RingHeterocycles part3 Oxiranes,John & Wiley and Sons,AnInterscience Publication,New York,1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号公報明細書、特許第2906245号公報明細書、特許第2926262号公報明細書などの文献を参考にして合成できる。
【0191】
本発明で用いる他の重合性単量体として、ビニルエーテル化合物を併用してもよい。ビニルエーテル化合物は公知のものを適宜選択することができ、例えば、2−エチルヘキシルビニルエーテル、ブタンジオール−1,4−ジビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,2−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−プロパンジオールジビニルエーテル、1,3−ブタンジオールジビニルエーテル、1,4−ブタンジオールジビニルエーテル、テトラメチレングリコールジビニルエーテル、ネオペンチルグリコールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、トリメチロールエタントリビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ソルビトールテトラビニルエーテル、ソルビトールペンタビニルエーテル、エチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、エチレングリコールジプロピレンビニルエーテル、トリエチレングリコールジエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパントリエチレンビニルエーテル、トリメチロールプロパンジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールジエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリエチレンビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラエチレンビニルエーテル、1,1,1−トリス〔4−(2−ビニロキシエトキシ)フェニル〕エタン、ビスフェノールAジビニロキシエチルエーテル等が挙げられる。
【0192】
これらのビニルエーテル化合物は、例えば、Stephen.C.Lapin,Polymers PaintColour Journal.179(4237)、321(1988)に記載されている方法、即ち多価アルコールもしくは多価フェノールとアセチレンとの反応、又は多価アルコールもしくは多価フェノールとハロゲン化アルキルビニルエーテルとの反応により合成することができ、これらは1種単独あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0193】
また、他の重合性単量体としては、スチレン誘導体も採用できる。スチレン誘導体としては、例えば、スチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、β−メチルスチレン、p−メチル−β−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メトキシ−β−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、等を挙げることができる。
【0194】
また、モールドとの剥離性や塗布性を向上させる目的で、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート、(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、パーフルオロブチル−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート等のフッ素原子を有する化合物も併用することができる。
【0195】
他の重合性単量体としては、プロペニルエーテルおよびブテニルエーテルを用いることもできる。前記プロペニルエーテル又はブテニルエーテルとしては、例えば1−ドデシル−1−プロペニルエーテル、1−ドデシル−1−ブテニルエーテル、1−ブテノキシメチル−2−ノルボルネン、1−4−ジ(1−ブテノキシ)ブタン、1,10−ジ(1−ブテノキシ)デカン、1,4−ジ(1−ブテノキシメチル)シクロヘキサン、ジエチレングリコールジ(1−ブテニル)エーテル、1,2,3−トリ(1−ブテノキシ)プロパン、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート等が好適に適用できる。
【0196】
(含フッ素界面活性剤)
本例に示すインプリントシステムでは、含フッ素界面活性剤は、レジストパターンの一部となるため、良好なパターン形成性、硬化後のモールド離型性およびエッチング耐性の良好なレジスト特性を有するものであることが好ましい。
【0197】
含フッ素界面活性剤の含有量は、レジスト組成物中、例えば、0.001質量%以上5質量%以下であり、好ましくは0.002質量%以上4質量%以下であり、さらに好ましくは、0.005質量%以上3質量%以下である。2種類以上の界面活性剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。界面活性剤が組成物中0.001質量%以上5質量%以下の範囲にあると、塗布の均一性の効果が良好であり、界面活性剤の過多によるモールド転写特性の悪化や、インプリント後のエッチング工程におけるエッチング適性の劣化を招きにくい。
【0198】
(重合開始剤I)
重合開始剤Iとしては、レジスト組成物を硬化させる際に用いる光L1により活性化してレジスト組成物に含まれる重合性化合物の重合を開始する活性種を発生するものであれば特に制限されない。重合開始剤Iとしては、ラジカル重合開始剤が好ましい。また、本発明において、重合開始剤Iは複数種を併用してもよい。
【0199】
重合開始剤Iとしては、アシルホスフィンオキシド系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましく、例えば、特開平2008−105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0200】
重合開始剤Iの含有量は、溶剤を除く全組成物中、例えば、0.01質量%以上15質量%以下であり、好ましくは0.1質量%以上12質量%以下であり、さらに好ましくは0.2質量%以上7質量%以下である。2種類以上の光重合開始剤を用いる場合は、その合計量が前記範囲となる。
【0201】
光重合開始剤の含有量が0.01質量%以上であると、感度(速硬化性)、解像性、ラインエッジラフネス性、塗膜強度が向上する傾向にあり好ましい。一方、光重合開始剤の含有量を15質量%以下とすると、光透過性、着色性、取り扱い性などが向上する傾向にあり、好ましい。
【0202】
これまで、染料および/又は顔料を含むインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物においては、好ましい光重合開始剤の添加量が種々検討されてきたが、インプリント用等の光インプリント用硬化性組成物についての好ましい光重合開始剤の添加量については報告されていない。すなわち、染料および/又は顔料を含む系では、開始剤がラジカルトラップ剤として働くことがあり、光重合性、感度に影響を及ぼす。その点を考慮して、これらの用途では、光重合開始剤の添加量が最適化される。一方で、レジスト組成物では、染料および/又は顔料は必須成分でなく、光重合開始剤の最適範囲がインクジェット用組成物や液晶ディスプレイカラーフィルタ用組成物等の分野のものとは異なる場合がある。
【0203】
本例に示すインプリントシステムに適用されるレジストに含有するラジカル光重合開始剤としては、アシルホスフィン系化合物、オキシムエステル系化合物が硬化感度、吸収特性の観点から好ましい。本発明で使用されるラジカル光重合開始剤は、例えば、市販されている開始剤を用いることができる。これらの例としては、例えば、特開平2008−105414号公報明細書の段落〔0091〕に記載のものを好ましく採用することができる。
【0204】
なお、光L1には、紫外、近紫外、遠紫外、可視、赤外等の領域の波長の光や、電磁波の他に、放射線も含まれる。前記放射線には、例えばマイクロ波、電子線、EUV、X線が含まれる。また248nmエキシマレーザー、193nmエキシマレーザー、172nmエキシマレーザーなどのレーザー光も用いることができる。これらの光は、光学フィルターを通したモノクロ光(単一波長光)を用いてもよいし、複数の波長の異なる光(複合光)でもよい。露光は、多重露光も可能であり、膜強度、エッチング耐性を高めるなどの目的でパターン形成した後、全面露光することも可能である。
【0205】
光重合開始剤Iは、使用する光源の波長に対して適時に選択する必要があるが、モールド加圧・露光中にガスを発生させないものが好ましい。ガスが発生すると、モールドが汚染されるため、頻繁にモールドを洗浄しなければならなくなったり、レジスト組成物がモールド内で変形し、転写パターン精度を劣化させてしまったりするなどの問題を生じる。
【0206】
レジスト組成物では、含まれる重合性単量体がラジカル重合性単量体であり、光重合開始剤Iが光照射によりラジカルを発生するラジカル重合開始剤であることが好ましい。
【0207】
(その他成分)
既に述べたように、本例に示すインプリントシステムに適用されるレジスト組成物は、上述の重合性化合物、含フッ素界面活性剤、および光重合開始剤Iの他に種々の目的に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、界面活性剤、酸化防止剤、溶剤、ポリマー成分等その他の成分を含んでいてもよい。以下にその他の成分について概要を説明する。
【0208】
(酸化防止剤)
レジスト組成物では、公知の酸化防止剤を含有することができる。酸化防止剤の含有量は、重合性単量体に対し、例えば、0.01質量%以上10質量%以下であり、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下である。2種類以上の酸化防止剤を用いる場合は、その合計量が上記範囲となる。
【0209】
前記酸化防止剤は、熱や光照射による退色およびオゾン、活性酸素、NO、SO(Xは整数)などの各種の酸化性ガスによる退色を抑制するものである。特に本発明では、酸化防止剤を添加することにより、硬化膜の着色を防止や、分解による膜厚減少を低減できるという利点がある。このような酸化防止剤としては、ヒドラジド類、ヒンダードアミン系酸化防止剤、含窒素複素環メルカプト系化合物、チオエーテル系酸化防止剤、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、アスコルビン酸類、硫酸亜鉛、チオシアン酸塩類、チオ尿素誘導体、糖類、亜硝酸塩、亜硫酸塩、チオ硫酸塩、ヒドロキシルアミン誘導体などを挙げることができる。この中でも、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤、チオエーテル系酸化防止剤が硬化膜の着色、膜厚減少の観点で好ましい。
【0210】
前記酸化防止剤の市販品としては、商品名Irganox1010、1035、1076、1222(以上、チバガイギー(株)製)、商品名 Antigene P、3C、FR、スミライザーS、スミライザーGA80(住友化学工業(株)製)、商品名アデカスタブAO70、AO80、AO503((株)ADEKA製)等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0211】
(重合禁止剤)
レジスト組成物は、重合禁止剤を少量含有することが好ましい。重合禁止剤の含有量としては、全重合性単量体に対し、0.001質量%以上1質量%以下であり、より好ましくは0.005質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.008質量%以上0.05質量%以下である、重合禁止剤を適切な量配合することで高い硬化感度を維持しつつ経時による粘度変化が抑制できる。
【0212】
(溶剤)
レジスト組成物は、必要に応じて、種々の溶剤を含むことができる。好ましい溶剤としては常圧における沸点が80〜280℃の溶剤である。溶剤の種類としては組成物を溶解可能な溶剤であればいずれも用いることができるが、好ましくはエステル構造、ケトン構造、水酸基、エーテル構造のいずれか1つ以上を有する溶剤である。具体的に、好ましい溶剤としてはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、ガンマブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、乳酸エチルから選ばれる単独あるいは混合溶剤であり、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートを含有する溶剤が塗布均一性の観点で最も好ましい。
【0213】
レジスト組成物中の溶剤の含有量は、溶剤を除く成分の粘度、塗布性、目的とする膜厚によって最適に調整されるが、塗布性改善の観点から、全組成物中0〜99質量%が好ましく、0〜97質量%がさらに好ましい。特に膜厚500nm以下のパターンを形成する際には20質量%以上99質量%以下が好ましく、40質量%以上9質量%以下がさらに好ましく、70質量%以上98質量%以下が特に好ましい。
【0214】
(ポリマー成分)
レジスト組成物では、架橋密度をさらに高める目的で、前記多官能の他の重合性単量体よりもさらに分子量の大きい多官能オリゴマーを、本発明の目的を達成する範囲で配合することもできる。光ラジカル重合性を有する多官能オリゴマーとしてはポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート等の各種アクリレートオリゴマーが挙げられる。オリゴマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは0〜5質量%である。
【0215】
レジスト組成物はドライエッチング耐性、インプリント適性、硬化性等の改良を観点から、ポリマー成分を含有していてもよい。かかるポリマー成分としては側鎖に重合性官能基を有するポリマーが好ましい。前記ポリマー成分の重量平均分子量としては、重合性単量体との相溶性の観点から、2000以上100000以下が好ましく、5000以上50000以下がさらに好ましい。
【0216】
ポリマー成分の添加量としては組成物の溶剤を除く成分に対し、0〜30質量%が好ましく、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%、最も好ましくは2質量%以下である。パターン形成性の観点から、レジスト組成物において、溶剤を除く成分中、分子量2000以上のポリマー成分の含有量が30質量%以下である方が好ましい。樹脂成分はできる限り少ない方が好ましく、界面活性剤や微量の添加剤を除き、樹脂成分を含まないことが好ましい。
【0217】
レジスト組成物には、上記した成分の他に必要に応じて離型剤、シランカップリング剤、紫外線吸収剤、光安定剤、老化防止剤、可塑剤、密着促進剤、熱重合開始剤、着色剤、エラストマー粒子、光酸増殖剤、光塩基発生剤、塩基性化合物、流動調整剤、消泡剤、分散剤等を添加してもよい。
【0218】
レジスト組成物は、上述の各成分を混合して調整することができる。また、各成分を混合した後、例えば、孔径0.003μm〜5.0μmのフィルターで濾過することによって溶液として調製することもできる。光インプリント用硬化性組成物の混合・溶解は、通常、0℃〜100℃の範囲で行なわれる。濾過は、多段階で行ってもよいし、多数回繰り返してもよい。また、濾過した液を再濾過することもできる。濾過に使用するフィルターの材質は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッソ樹脂、ナイロン樹脂などのものが使用できるが特に限定されるものではない。
【0219】
かかるレジスト組成物は、インクジェット方式による微小液滴化が可能な範囲の粘度に調整される。インクジェット方式による吐出可能な粘度の範囲は、4ミリパスカル秒から20ミリパスカル秒であり、好ましくは8ミリパスカル秒から15ミリパスカル秒である。このときの溶媒量は、10重量パーセント以下とされる。また、経時により溶媒が揮発した場合の粘度上昇は、10ミリパスカル秒以下とされる。
【0220】
上記のようにインクジェット方式に適した粘度に調整されたレジスト組成物の表面張力は、20ミリニュートン毎メートル以上40ミリニュートン毎メートル以下であり、好ましくは25ミリニュートン毎メートル以上35ミリニュートン毎メートル以下である。
【0221】
上記実施形態では、光硬化性樹脂液体吐出部12と、パターン転写部14と備えたナノインプリントシステム10を例示したが、光硬化性樹脂液体吐出部12およびパターン転写部14を個別の装置として構成する態様も可能である。
【0222】
すなわち、本発明に係るナノインプリントシステム(装置)10として、光硬化性樹脂液体吐出装置と、パターン転写装置と、を備える構成も可能である。
【0223】
本発明に係る機能性液体吐出装置およびインプリントシステム並びに機能性液体吐出方法は、以下のような製造の際に好適に用いることができる。
【0224】
第一の技術としては、成型した形状(パターン)そのものが機能を持ち、様々なナノテクノロジーの要素部品、あるいは構造部材として応用できる場合である。例としては、各種のマイクロ・ナノ光学要素や高密度の記録媒体、光学フィルム、フラットパネルディスプレイにおける構造部材などが挙げられる。
【0225】
第二の技術は、マイクロ構造とナノ構造との同時一体成型や、簡単な層間位置合わせにより積層構造を構築し、これをμ−TAS(Micro-Total Analysis System)やバイオチップの作製に応用しようとするものである。
【0226】
第三の技術としては、形成されたパターンをマスクとし、エッチング等の方法により基板を加工する用途に利用されるものである。かかる技術では高精度な位置合わせと高集積化とにより、従来のリソグラフィ技術に代わって高密度半導体集積回路の作製や、液晶ディスプレイのトランジスタへの作製、パターンドメディアと呼ばれる次世代ハードディスクの磁性体加工等に応用できる。
【0227】
さらに、マイクロ電気機械システム(MEMS)、センサ素子、回折格子やレリーフホログラム等の光学部品、ナノデバイス、光学デバイス、フラットパネルディスプレイ製作のための光学フィルムや偏光素子、液晶ディスプレイの薄膜トランジタ、有機トランジスタ、カラーフィルタ、オーバーコート層、柱材、液晶配向用のリブ材、マイクロレンズアレイ、免疫分析チップ、DNA分離チップ、マイクロリアクター、ナノバイオデバイス、光導波路、光学フィルター、フォトニック液晶、反射防止構造体(モスアイ)などの永久膜形成用途においても有用である。
【0228】
以上、本発明に係る液体吐出装置および液体吐出方法並びにナノインプリントシステムの具体例として、ナノインプリントシステム(装置)について詳細に説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよい。
【符号の説明】
【0229】
10…ナノインプリントシステム(装置)、12…光硬化性樹脂液体吐出部、14…パターン転写部、20…基板、22…搬送部、23…ノズル、23A…ノズルプレート、23B…ノズル面、24…インクジェットヘッド、25…光硬化性樹脂液体、26…モールド、28…紫外線照射装置、32…圧力室、38…圧電素子、42…ヘッドカバー、44、50…ヒータ、46…サーミスタ、48、66、76…温調水用流路、52…ノズルカバー、53…断熱層、54…液滴、56…ブロット部材、58…ローラ、60…クリーニングパッド、62…供給ローラ、64…巻取りローラ、68…キャッピング部材、70…吸引ポンプ、72…回収タンク、74…大気開放バルブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機能性液体を基板上に吐出させるノズルが形成されたノズルプレートを具備し、前記ノズルと連通される圧力室内部の前記機能性液体を加圧するための圧電素子が設けられた液体吐出ヘッドと、
前記基板と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させる相対移動手段と、
前記基板の前記機能性液体が着弾した面に対して、所定の凹凸パターンが形成されたモールドの前記凹凸パターンを転写する転写手段と、
前記モールドの前記凹凸パターンが形成された面全体を前記機能性液体に接触した状態で、前記機能性液体を硬化させる硬化手段と、
前記ノズルプレートの温度を制御する第1の温度制御手段と、
前記液体吐出ヘッドの前記ノズルプレート以外の少なくとも一面を覆うカバーを設け、前記カバーの温度を制御する第2の温度制御手段と、を備えることを特徴とするインプリントシステム。
【請求項2】
前記第1の温度制御手段は、前記液体吐出ヘッドの側面の温度を制御する手段を備え、前記液体吐出ヘッド内の前記機能性液体の温度を制御することを特徴とする請求項1に記載のインプリントシステム。
【請求項3】
前記第2の温度制御手段は、前記液体吐出ヘッドのノズルプレート以外の面、および、第1の温度制御手段を覆い、温度制御用液体を流通させる流路を備える液体吐出ヘッドカバーであることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリントシステム。
【請求項4】
前記ノズルがシリコンで形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項5】
前記ノズルプレートの前記ノズルが形成されていない部分を覆うノズルカバーを備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項6】
前記ノズルカバーは、前記ノズルプレートより基板に近い位置に形成されていることを特徴とする請求項5に記載のインプリントシステム。
【請求項7】
前記ノズルプレートと前記基板との間が真空であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインプリントシステム。
【請求項8】
請求項6又は7に記載のインプリントシステムのメンテナンス方法であって、
前記機能性液体をパージする機能性液体排出工程と、
前記機能性液体排出工程により前記ノズルプレートに付着した前記機能性液体に、ブロット部材を接触させて、前記機能性液体を吸収する吸収工程と、を有し、
前記ノズルプレートに付着した液滴は、高さが前記ノズルカバーの厚みより高く、前記ノズルカバーに接触しないように形成されていることを特徴とするインプリントシステムのメンテナンス方法。
【請求項9】
前記ブロット部材を、前記機能性液体に接触させた後、前記ブロット部材と前記液体吐出ヘッドとを相対的に移動させることを特徴とする請求項8に記載のインプリントシステムのメンテナンス方法。
【請求項10】
前記ブロット部材の温度を制御する第3の温度制御手段を備え、前記ブロット部材の温度を前記基板と略同一の温度まで制御することを特徴とする請求項8又は9に記載のインプリントシステムのメンテナンス方法。
【請求項11】
前記液体吐出ヘッドの待機時に、前記ノズルに蓋をするキャッピング部材を備え、前記キャッピング部材は、前記ノズルカバーと接触させ、前記ノズルのキャッピングを行うことを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載のインプリントシステムのメンテナンス方法。
【請求項12】
前記キャッピング部材には、前記キャッピング部材の温度を制御する第4の温度制御手段を備え、前記キャッピング部材の温度を前記基板と略同一の温度に制御することを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載のインプリントシステムのメンテナンス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−65813(P2013−65813A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−65610(P2012−65610)
【出願日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】