説明

インプリント用モールドの製造方法

【課題】ハードマスク層に対するドライエッチングの進行をスムーズに行うことができ、高いパターン精度で微細パターンを形成するインプリント用モールドの製造方法を提供する。
【解決手段】基板1への溝形成部分以外の部分のハードマスク層を除去する残存ハードマスク層除去工程を有し、前記残存ハードマスク層除去工程は、基板の一部に一次レジスト層51を形成する工程と、前記一次レジスト層形成部分以外の部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行い除去する工程と、前記一次レジスト層を除去する工程と、前記基板上における、前記一次レジスト層が形成されていた部分以外の少なくとも一部に二次レジスト層52を形成する工程と、前記一次レジスト層が形成されていた部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行い除去する工程と、前記二次レジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインプリント用モールドの製造方法に関し、特に、微細パターンを有するハードマスク層を基板上に施した残存ハードマスク層除去前モールドからインプリント用モールドを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハードディスク等で用いられる磁気ディスクにおいては、磁気ヘッド幅を極小化し、情報が記録されるデータトラック間を狭めて高密度化を図るという手法が用いられてきた。その一方で、この磁気ディスクは高密度化がますます進み、隣接トラック間の磁気的影響が無視できなくなっている。そのため、従来手法だと高密度化に限界がきている。
【0003】
最近、磁気ディスクのデータトラックを磁気的に分離して形成するディスクリートトラック型メディア(Discrete Track Recording Medium;以
下、DTRメディアという。)という、新しいタイプのメディアが提案されている。
【0004】
DTRメディアとは、記録に不要な部分の磁性材料を除去(溝加工)して信号品質を改善しようとするものである。具体的には、溝加工した後に、その溝を非磁性材料で充填して、磁気ディスクドライブに要求されるオングストロームレベルの表面平坦性を実現したものである。そして、この微細な幅の溝加工を行う手法の1つとしてインプリント技術が用いられている。なお、このDTRメディアをさらに高密度化して発展させた、ビットパターンドメディア(信号をビットパターン(ドットパターン)として記録するメディア)という新しいタイプのメディアも提唱されてきており、このパターンドメディアのパターン形成においてもインプリント技術が有望視されている。
【0005】
なお、このインプリント技術は大きく分けて2種類あり、熱インプリントと光インプリントとがある。熱インプリントは、微細パターンが形成されたモールドを被成形材料である熱硬化性樹脂に加熱しながら押し付け、その後で被成形材料を冷却・離型し、微細パターンを転写する方法である。また、光インプリントは、微細パターンが形成されたモールドを被成形材料である光硬化性樹脂に押し付けて紫外光を照射し、その後で被成形材料を離型し、微細パターンを転写する方法である。
【0006】
ここで挙げた光インプリント用モールドの作製においては、石英ガラスなどの透光性基板上にクロム等を含む膜を形成したマスクブランクスが用いられる。このマスクブランクス上にレジストを塗布した後、電子線露光などを用いてレジストパターンを形成する。そして、このレジストパターンをマスクとして前記膜をエッチング加工することにより微細パターンを形成している。その後、前記膜における微細パターンをマスクとして透光性基板に上述のような溝加工がなされている。
【0007】
しかしながら、上述のような膜に対するエッチング加工の際、酸素ガスおよび塩素ガスを用いて溝加工を施すと、以下のような不具合が生じるおそれがある。
【0008】
例えばエッチングを行う際に、溝以外の凸部分が、100nm以下の細い幅と1μm以上の太い幅とを同時に有している場合、エッチングによって細い幅の部分が相対的に狭くなってしまうというマイクロローディング効果が発生してしまう。
【0009】
また、酸素ガスおよび塩素ガスを用いた場合、レジスト厚み方向のみでなくレジスト断面横方向にもエッチングが進行する。そのため、クロム膜をドライエッチングする間にレ
ジストの幅が変化し、結果的にクロムパターンの幅もエッチング前のレジスト幅に対して変化してしまう。それに加え、さらにクロムパターン自身も徐々に断面横方向にエッチングされるため、クロムパターンの幅は望ましい寸法より細くなり、幅の細いパターン自体が消失してしまう場合も生じる。
【0010】
また、パターンの寸法が微細化した場合には、クロム膜のエッチングバイアスの問題の他、レジスト膜厚にも制約が生じ、レジストの膜厚がおおむねパターン幅の3倍以上になると、レジスト露光時の解像性低下やレジストパターン形成後のパターン倒壊といった問題が生じるおそれもある。
【0011】
上記の問題を解決するために、下層を導電層(TaHf層)そして上層を導電層用の酸化防止層(CrO層)としたハードマスク層を透光性基板上に設け、実質的に酸素を含まないガスを用いてドライエッチングを行う技術が本出願人により開示されている(特許文献1参照)。さらには、同じく本出願人により、この特許文献1におけるハードマスク層上層の酸化クロム層(CrO層)を窒化クロム層(CrN層)に変更することによりCrN成膜工程において酸素を使用しない技術について開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−80421号公報
【特許文献2】特開2009−98689号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述の通り、特許文献1および2に開示された技術においては、微細パターンを有するハードマスク層(導電層と酸化防止層)を透光性基板上に設け、パターンに対応する溝をこの透光性基板に設けた残存ハードマスク層除去前モールドが開示されている。そして、この残存ハードマスク層除去前モールドにおけるハードマスク層を除去して、インプリント用モールドが作製される。
【0014】
確かに特許文献1および2においては、酸素を実質的に含まない雰囲気下でドライエッチングを行い、上述のような不具合を解消している。しかしながら、それでもなおエッチング装置内に酸素が残存または工程中に発生している場合がある。この残存酸素により、ドライエッチングの進行が抑制されるおそれがある。
【0015】
この残存酸素の発生源としては、そもそもエッチング装置内に残留している酸素、エッチング装置を構成する部材から発生する酸素、基板に石英を用いている場合はドライエッチングにより基板から発生する酸素などが挙げられる。
【0016】
その結果、エッチング装置内に存在する残存酸素により、ハードマスク層除去の際のドライエッチングに影響を与えるおそれがある。すなわち、折角CrN層などで酸化防止していたはずのTaHf層がエッチングの最中にこの残存酸素により酸化して、その表面に酸化被膜が形成されてしまう。そして、この酸化被膜によりエッチングの進行が抑制されてしまうおそれがある。
【0017】
なおこの際、化学的なエッチングの進行が酸化被膜により抑制されるとしても、エッチング装置の出力を大きくすることによって物理的なエッチングを行うことも考えられる。しかしこれを行うことにより、今度はハードマスク層と基板との間で所望のエッチング選択比を設定することが難しくなり、基板表面の荒れや微細パターンの寸法変化等に繋がるおそれがある。さらには基板に石英を用いている場合は、物理的エッチングにより基板か
ら酸素が発生し、それによってTaHf層表面に酸化被膜が形成されるおそれがある。
【0018】
本発明の目的は、上述の事情を考慮してなされたものであり、ハードマスク層に対するドライエッチングの進行をスムーズに行うことができ、高いパターン精度で微細パターンを形成するインプリント用モールドの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第一の態様は、溝により形成されるパターンを有する基板上の少なくとも一部に、Taを主成分とする化合物またはHfとZrの少なくとも一方の元素もしくはその化合物を含む材料からなる導電層と、前記導電層の上部に設けられた導電層用の酸化防止層と、を含むハードマスク層が形成された残存ハードマスク層除去前モールドからインプリント用モールドを製造するために前記ハードマスク層を除去する工程が、前記基板の一部に一次レジスト層を形成する工程と、前記一次レジスト層形成部分以外の部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、前記一次レジスト層を除去する工程と、前記基板上における、前記一次レジスト層が形成されていた部分以外の少なくとも一部に二次レジスト層を形成する工程と、前記一次レジスト層が形成されていた部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、前記二次レジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする。ただし、前記ドライエッチングは、エッチング装置内の酸素含有量が5%以下となる程度に酸素を含まないエッチングガスを用いた処理である。
本発明の第二の態様は、第一の態様に記載の発明において、前記基板は円盤形状の透光性石英基板であり、前記一次レジスト層が形成される基板の一部は、円盤形状の前記透光性石英基板の外周部であることを特徴とする。
本発明の第三の態様は、第二の態様に記載の発明において、前記外周部の面積は、前記透光性石英基板上面の少なくとも25%を占めていることを特徴とする。
本発明の第四の態様は、第二または第三の態様に記載の発明において、一次レジスト層を形成する工程において、透光性基板の最外周と中心との間からレジストの塗布を開始し、外周方向に向けて塗布を行って外周部にレジスト層を形成し、さらに、二次レジスト層を形成する工程において、透光性基板の中心からレジストの塗布を開始し、外周方向に向けて塗布を行って前記外周部以外の部分の透光性基板上にレジスト層を形成することを特徴とする。
本発明の第五の態様は、基板上に、Taを主成分とする化合物またはHfとZrの少なくとも一方の元素もしくはその化合物を含む材料からなる導電層と、前記導電層の上部に設けられた導電層用の酸化防止層と、を有するハードマスク層を形成し、前記ハードマスク層上にパターン形成用レジスト層を形成する工程と、前記基板に溝を形成するためのパターンが描画された前記レジスト層を現像して溝を形成する部分のレジスト層およびハードマスク層を除去し、前記基板において溝を形成する部分に対してドライエッチングを行った後、溝形成部分以外の部分のレジスト層を除去する工程と、前記溝形成部分以外の部分のハードマスク層を除去する残存ハードマスク層除去工程と、を有し、前記残存ハードマスク層除去工程は、前記基板の一部に一次レジスト層を形成する工程と、前記一次レジスト層形成部分以外の部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、前記一次レジスト層を除去する工程と、前記基板上における、前記一次レジスト層が形成されていた部分以外の少なくとも一部に二次レジスト層を形成する工程と、前記一次レジスト層が形成されていた部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、前記二次レジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第六の態様は、溝により形成されるパターンを有する基板上に、Taを主成分とする化合物またはHfとZrの少なくとも一方の元素もしくはその化合物を含む材料からなる導電層と、前記導電層の上部に設けられた導電層用の酸化防止層と、を含むハードマスク層が形成された残存ハードマスク層除去前モールドからインプリント用モールドを製造するために前記ハードマスク層を除去する工程が、前記基板においてハードマスク層が形成されていない部分にレジスト層を形成する工程と、前記基板におけるハードマスク
層に対してドライエッチングを行う工程と、前記レジスト層を除去する工程と、を有することを特徴とする。
本発明の第七の態様は、第一ないし第六の態様のいずれかに記載の発明において、前記導電層用酸化防止層は窒化クロムからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、ハードマスク層に対するドライエッチングの進行をスムーズに行うことができ、高いパターン精度で微細パターンを形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態に係るインプリント用モールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
【図2】別の実施形態に係る台座構造を有するインプリント用モールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
【図3】別の実施形態に係るインプリント用モールドの製造工程を説明するための概略図であり、(a)は断面図、(b)は平面図である。
【図4】別の実施形態に係るインプリント用モールドの製造工程を説明するための断面概略図である。
【図5】実施例および比較例により得られたインプリント用モールドについて、走査型電子顕微鏡を用いて観察した結果を示す図であり、(a)は実施例、(b)は比較例におけるインプリント用モールドの表面を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明者らは、エッチング装置内の残存酸素によるハードマスク層の酸化、より正確にはハードマスク層内の導電層の酸化を抑制するための手段について種々検討した。
その結果、本発明者らは、残存ハードマスク層除去前モールドからインプリント用モールドを製造する際にハードマスク層を除去する工程において、エッチング装置内に存在する残存酸素を捕集するために、ハードマスク層上にレジストを塗布しておくことを想到した。さらにこのレジストの塗布において、まず外周部に塗布し、次に外周部以外の部分に塗布するという二段階塗布を行うことについて着目した。その結果、ハードマスク層に対するドライエッチングが酸素により阻害されることを抑制できることを見出した。
【0023】
(実施の形態1)
以下、本発明の知見を基に、本発明を実施するための最良の形態を、本実施形態に係るインプリント用モールド20の製造方法を示す図である図1に基づき説明する。
【0024】
まず図1(a)に示すように、インプリント用モールド20のための基板1を用意する。
この基板1は、インプリント用モールド20として用いることができるのならば従来のものでも良いが、光インプリントを行う場合は被転写材への光照射の観点から透過性基板であることが好ましい。この透過性基板1としては、石英基板などのガラス基板が挙げられる。また、熱インプリントを行う場合は、後述するハードマスク層に対するドライエッチングに用いられる塩素ガスに耐性があるSiC基板が挙げられる。
【0025】
なお、熱インプリントを行う場合の基板1について、塩素系ガスに対して耐性を有する基板であるSiC基板を挙げたが、以下のような工夫を施すことにより塩素系ガスへの耐性が比較的弱いシリコンウエハ基板を使用することもできる。すなわち、シリコンウエハ基板1上に導電層2を設けるのではなく、SiO層を設ける。このSiO層の上に導電層2、酸化防止層3を設けることにより、導電層2および酸化防止層3が塩素ガスで除去されたとしても、SiO層がシリコンウエハ基板1を塩素ガスから保護することにな
る。そして、バッファードフッ酸(以降、BHFともいう)すなわちフッ化アンモニウム及びフッ酸からなる混酸により、SiO層を除去する。こうすることにより、熱インプリント用モールドを作製するために、シリコンウエハ基板を使用することもできる。また、シリコンウエハ基板上に加工層としてSiO層を設けたものを基板として使用することもできる。このときには加工層であるSiO層に溝を設けることになるため、シリコンウエハ基板1を用いる場合に比べてSiO層を厚くすることが好ましい。
【0026】
また、基板1の形状についてであるが、円盤形状であるのが好ましい。後述する残存ハードマスク層除去工程において一次・二次レジスト51,52を塗布する際、円盤基板1を回転させながらレジストを均一に塗布することができるためである。なお、円盤形状以外であっても良く、矩形、多角形、半円形状であってもよい。
本実施形態においては、円盤形状の石英基板1を用いて説明する。
【0027】
次に、図1(b)に示すように、前記石英基板1をスパッタリング装置に導入する。そして本実施形態においては、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)の合金からなるターゲットをアルゴンガスでスパッタリングし、タンタル−ハフニウム合金からなる導電層2を成膜し、基板1上に形成される溝に対応する微細パターンを有するハードマスク層7の内の下層(導電層2)とするのが好ましい。タンタル−ハフニウム合金が好ましい理由としては、塩素系ガスを用いたドライエッチング処理によりエッチング加工が可能な材料であること、マスク製造の際の電子線描画時にチャージアップを防止するために必要な導電性を持たせることができること、そしてそれによってアライメント時のコントラストを大きくとることができることが挙げられる。
【0028】
なお、導電層2の材料としては、Taを主成分とする化合物の場合、TaHf、TaZr、TaHfZrなどのTa化合物やその合金が好適である。一方、ハフニウム(Hf)とジルコニウム(Zr)の少なくとも一方の元素又はその化合物(例えばHfZrなど)を選択することもでき、さらにこれらの材料をベース材料として、例えばB、Ge、Nb、Si、C、N等の副材料を加えた材料を選択することもできる。本実施形態においては、タンタル−ハフニウム(TaHf)合金からなる導電層2について説明する。
【0029】
次に、本実施形態においては、酸化防止の観点から前記導電層2に対して大気暴露は行わず、クロムターゲットをアルゴンと窒素の混合ガスでスパッタリングして窒化クロム層3を成膜し、微細パターンを有するハードマスク層7の内の上層(導電層用酸化防止層3)とするのが好ましい。この理由は以下の通りである。
【0030】
窒化クロム層3が導電層2上面に形成されることにより、下層である導電層2の酸化を防止することができる。具体的には、ハードマスク層7形成後に大気暴露される際、およびレジスト塗布工程におけるベーク処理の際に、タンタル−ハフニウム合金からなる導電層2の代わりに前記窒化クロム層3表面が主に酸化される。窒化クロム層3表面が酸化されている状態にて塩素系ガスでドライエッチングを行うと、導電層2の表面が酸化している場合に比べてはるかに大きなエッチング速度が得られる。しかも、マスク残存ハードマスク層除去前モールド10からインプリント用モールド20を作製する工程において、レジスト層4の除去で用いられるアンモニア水や過水硫酸などを用いて洗浄を行ったとしても、窒化クロム層3は十分な耐性を有する。また、酸化防止層3を窒化クロムとすることで、窒化クロム層をスパッタリングする際に酸素ガスを用いなくとも良くなり、残存酸素を減らすという点からも良い影響を与える。
【0031】
なお、酸化防止層3の材料としては、成膜の際のスパッタリングにおいて酸素を用いなくて済む点からも窒化クロム(CrN)が好ましいが、それ以外でも酸化防止層として使用できる化合物であればよい。例えばモリブデン化合物、酸化クロム(CrO)、SiC
、アモルファスカーボン、Alを用いてもよい。本実施形態においては、窒化クロム(CrN)からなる酸化防止層3について説明する。
【0032】
こうして図1(b)に示すように、タンタル−ハフニウム合金層2を下層とし、窒化クロム層3を上層としたハードマスク層7を、石英基板1上に形成する。なお、本実施形態における「ハードマスク層」は、パターンに対応する溝が形成される部分を保護することができる層状のもののことを指すものとする。
【0033】
次に、図1(c)に示すように、前記ハードマスク層7に対して電子線描画用のレジストを塗布し、レジスト層4を形成して本実施形態におけるインプリント用モールドの製造に用いられるマスクブランクスを作製する。電子線描画用のレジストとしては、その後のエッチング工程に適するものであればよい。
【0034】
なお、レジスト層4がポジ型レジストであるならば、電子線描画した箇所が基板1上の溝の位置に対応し、レジスト層がネガ型レジストであるならば、その逆の位置となる。本実施形態においてはポジ型レジストを用いた場合、すなわちレジスト層4の上に描画している部分が、基板1における溝の位置に対応する場合について説明する。
【0035】
また、この時のレジスト層4の厚さは、ハードマスク層7のエッチングが完了するまで残存する程度の厚さであることが好ましい。描画パターン部分のハードマスク層7すなわち導電層2および酸化防止層3を除去する際、この部分のハードマスク層7のみならずレジスト層4も少なからず除去されていくためである。
【0036】
次に、電子線描画機を用いて、前記マスクブランクスのレジスト層4に微細パターンを描画する。この微細パターンはミクロンオーダーであってもよいが、近年の電子機器の性能という観点からはナノオーダーであってもよいし、最終製品の性能を考えると、その方が好ましい。
【0037】
微細パターン描画後、図1(d)に示すように、レジスト層4を現像し、レジストにおける電子線描画した部分を除去し、所望の微細パターンに対応するレジストパターンを形成する。この描画された微細パターンの位置は、最終的に基板1に加工される溝の位置に対応している。
【0038】
次に、基板上にレジストパターンが形成された基板1を、ドライエッチング装置に導入する。そして、実質的に酸素を含まない雰囲気下で第1のドライエッチングを行い、レジスト層4が除去された部分の導電層2および酸化防止層3を除去する。この際、ハードマスク層7を除去するためのガスとして塩素系ガスを用いても良いし、ハードマスク層除去に適するその他のハロゲン化物系ガスを用いても良い。ここで用いられる塩素系ガスとしては、Cl、BCl、HCl、これらの混合ガス又はこれらに添加ガスとして希ガス(He、Ar、Xeなど)を含むもの等が挙げられる。また、このドライエッチングにおいて酸素を含まない塩素ガスを用いることにより、導電層2であるTaHfの不要な酸化を抑制できる。そうすることで、ハードマスク層7全体のエッチングをスムーズに行うことができる。
本実施形態においては、塩素ガスを用いた場合について説明する。
【0039】
これにより、図1(e)に示すように、微細パターンを有するハードマスク層7を形成する。なお、この時のエッチング終点は、反射光学式の終点検出器を用いることで判別する。
なお、「実質的に酸素を含まない」とは「エッチング装置内の酸素含有量が5%以下となる程度に酸素を含まない」ことを指すものとする。また、実質的に酸素を含まないガス
を用いてドライエッチングを行うことを、単にドライエッチングともいう。
【0040】
続いて、ハードマスク層7に対するドライエッチングで用いられたガスを真空排気した後、同じドライエッチング装置内で、フッ素系ガスを用いたドライエッチングを、石英基板1に対して行う。この際、前記ハードマスク層7をマスクとして石英基板1をエッチング加工し、図1(f)に示す微細パターンに対応した溝を基板に施す。その後、アルカリ溶液や酸溶液にてレジストを除去する。
【0041】
ここで用いられるフッ素系ガスとしては、C(例えば、CF、C、C)、CHF3、これらの混合ガス又はこれらに添加ガスとして希ガス(He、Ar、
Xeなど)を含むもの等が挙げられる。
【0042】
こうして図1(f)に示すように、微細パターンに対応する溝加工が石英基板1に施され、微細パターンを有するハードマスク層7が石英基板1の溝以外の部分上に形成され、インプリント用モールド20のための残存ハードマスク層除去前モールド10が作製される。
【0043】
このように作製された残存ハードマスク層除去前モールド10に対し、従来ならば、引き続いて残存ハードマスク層除去前モールド10上に残存しているハードマスク層7をドライエッチングにて除去する工程(残存ハードマスク層除去工程)が行われ、それによりインプリント用モールド20が作製される。
【0044】
しかしながらこのままだと先述のように、エッチング装置内の残存酸素により、窒化クロム層3(CrN層)などで酸化防止されていたはずの導電層2(TaHf層)がドライエッチングの最中に酸化するおそれがある。その結果、導電層2の表面に酸化被膜が形成され、エッチングの進行が妨げられてしまうおそれがある。
【0045】
そこで本実施形態の残存ハードマスク層除去工程においては、エッチング装置内に存在する残存酸素を捕集するために、レジストをハードマスク層7上に塗布してからドライエッチングを行う。さらに詳しくは、このレジストの塗布において、まず基板1の外周部に一次レジスト51を塗布してハードマスク層除去を行った後、次に外周部以外の部分に二次レジスト52を塗布するという二段階塗布を行う。以下、このレジストの二段階塗布について詳述する。
【0046】
始めに、図1(g)に示すように、先のドライエッチングで用いられたフッ素系ガス等を真空排気した後、円盤石英基板1の外周部のみに一次レジスト51を塗布する。この一次レジスト51の塗布は、円盤石英基板1を回転させながら、外周部直上からレジスト液を滴下することによって行われるのが好ましい。基板1形状が円盤であるため、基板1を回転させながら塗布を行うことによりレジストに遠心力が加わって余分なレジストが基板外周部からはじき飛ばされる結果、レジスト溜まりが形成されることなく基板外周部に均一にレジスト塗布を行うことができるためである。もちろん、レジスト液の滴下やスピンコートという塗布方法以外にも、はけ等でレジストを塗布しても良い。
【0047】
本実施形態においては、基板1の外周部直上からレジスト液を滴下する方法について説明する。
この外周部の範囲についてであるが、前記外周部の面積は、前記透光性石英基板1上面の少なくとも25%を占めていることが好ましい。外周部がこの範囲ならば、基板1の回転による遠心力でムラ無くレジストを容易に塗布できるためである。さらには、一次レジスト塗布領域が基板1上面の少なくとも25%を占めていると、後述するように、レジストが塗布されていない部分のハードマスク層を除去する際にレジストの量が十分に存在す
ることになり、残存酸素を十分に捕集することができる。
【0048】
なお、本実施形態で用いられる一次および二次レジスト51,52としては、残存ハードマスク層除去前モールド10の製造までの工程で述べたのと同様に、エッチング工程に適するものであればよい。
【0049】
こうしてレジストが塗布・ベーク処理され、基板外周部におけるハードマスク層7上に一次レジスト層51が形成される。その後、図1(h)に示すように、前記一次レジスト層51形成部分以外の部分すなわち基板中央部のハードマスク層7に対して実質的に酸素を含まない塩素系ガスによるドライエッチングを行い、この部分のハードマスク層7すなわち導電層2および酸化防止層3を除去する。
【0050】
従来ならばこの工程の最中、残存酸素により導電層2であるタンタル−ハフニウム合金層の表面が酸化されてしまい、エッチングの進行が抑制されるおそれがある。ひいては不均一なエッチングを引き起こし、ある部分ではハードマスク層7のエッチングが完了していない一方で、ある部分ではハードマスク層7が全て除去されてしまい石英基板1表面が露出してしまう。その結果、石英基板1に含まれていた酸素が放出されてしまう可能性もある。
【0051】
しかしながら本実施形態においては、この工程の最中にレジストが設けられていることにより、残存酸素をレジストにより消費する。具体的に言うと、ハードマスク層7のエッチングによりレジストがエッチングされる際に発生するレジスト中の炭化水素が酸素を捕集する。これにより、タンタル−ハフニウム合金層2の酸化を起こす残存酸素をエッチング装置内から相当量減らすことができ、ひいてはエッチングの進行をスムーズに行うことができる。
【0052】
なお、一次レジスト層51の厚さは、一次レジスト層51が形成されていない部分のハードマスク層7の除去量(すなわち捕捉すべき酸素量)を考慮して一次レジスト層52の厚さを決定しても良い。これと同様に二次レジスト層52の厚さを設定してもよい。
この時、前記一次レジスト層51の厚さは、上述のレジスト層4の場合と同様、ハードマスク層7のエッチングが完了するまで残存する程度の厚さであることが好ましい。
【0053】
上述のように基板中央部のハードマスク層7を除去した後、図1(i)に示すように一次レジスト51を除去する。この際にも、先に述べたアンモニア水などのアルカリ溶液や過水硫酸などを用いて洗浄を行えばよい。
【0054】
さらに本実施形態においては、図1(j)に示すように、円盤石英基板1の中央部、より正確に言うと、基板1において一次レジスト層51が設けられていなかった部分であり、先ほどの工程でハードマスク層7が除去された部分にレジストを塗布し、二次レジスト層52を形成する。なお、二次レジスト層52を設ける箇所は、一次レジスト層51が設けられていなかった部分全体でなくともよく、少なくともその一部であればよい。
【0055】
また、このレジスト塗布は、円盤石英基板1を回転させながら、円盤中心直上からレジスト液を滴下することによって行われるのが好ましい。一次レジスト層51の時と同様、レジストに遠心力が加わり、基板中央部に均一にレジスト塗布を行うことができるためである。
【0056】
こうして基板中央部にレジストを塗布・ベーク処理して二次レジスト層52を形成した後、図1(k)に示すように、外周部におけるハードマスク層7をドライエッチングにて除去する。一次レジスト51と同様に、残存ハードマスク層除去工程の最中に二次レジス
ト層52が設けられていることにより、残存酸素をレジストで捕集し、残存酸素を相当量減らすことができる。
【0057】
なお、二次レジスト層51の厚さは、一次レジスト層51と同様にハードマスク層7の除去量(すなわち捕捉すべき酸素量)を考慮して決定しても良く、ハードマスク層7のエッチングが完了するまで残存する程度の厚さであることが好ましい。
【0058】
最後に二次レジスト層52を除去し、必要があれば基板1に対して洗浄等を行う。このようにしてインプリント用モールド20を完成させる。
【0059】
なお、図2に示すように、インプリント用モールド20を台座構造にするのならば、以下の工程を残存ハードマスク層除去前モールド10形成後、残存ハードマスク層除去工程前に行ってもよい。
すなわち、上記石英に溝加工を施した残存ハードマスク層除去前モールド10上に台座構造用レジスト6を塗布し、紫外光による露光と現像を行う(図2(a))。そして、上記レジストパターンを形成した残存ハードマスク層除去前モールド10について、フッ化水素酸とフッ化アンモニウムの混合液にてウェットエッチングを行い、さらに所定の酸洗浄によりレジストを除去する(図2(b))。こうして、台座構造を有する残存ハードマスク層除去前モールド10を作製し(図2(c))、上述の二段階レジスト塗布を経てインプリント用モールド20を作製してもよい。
【0060】
以上のような本実施形態に係るインプリント用モールド20の製造方法においては、以下の効果を得ることができる。
まず、ハードマスク層7および基板1に対するドライエッチングにおいて実質的に酸素を含まないガスを用いることにより、エッチング装置内の酸素を相当量少なくする。その上で残存酸素に対してはさらに、レジスト層51または52が設けられている状態で、ハードマスク層7に対するドライエッチングを行う。これにより、ドライエッチング中に導電層2の表面を酸化する原因となる残存酸素をレジストにて捕集することができ、ハードマスク層7に対するドライエッチングをスムーズに行うことができる。その結果、高いパターン精度で微細パターンに対応する溝を基板1に形成することができ、品質の良いインプリント用モールド20を提供することができる。
【0061】
このようなインプリント用モールド20は熱インプリントにも光インプリントにも用いることができ、さらにはナノインプリント技術にも応用することができる。特に、インプリント技術を用いて作製されるDTRメディアに本実施形態を好適に応用することができる。
【0062】
(実施の形態2)
実施の形態1の二段階レジスト塗布における一次レジスト層51は、円盤基板1の外周部直上に固定してレジスト液を滴下するという形で設けられている。
その一方、本実施形態の一次レジスト層51については、基板1の最外周と中心との間からレジストの塗布を開始し、外周方向に向けて塗布を行って外周部に一次レジスト層51を形成する。この塗布開始地点は、二段階除去の内、各段階で除去されるハードマスク層7の量を同等にできる場所であればよく、半径に2(−0.5)を乗じた距離だけ基板1の中心点から離れた地点とすることにより、各段階においてレジストが塗布される円盤表面の面積を同等とすることができる。こうすることにより、ハードマスク層7の除去量を考慮して一次および二次レジスト層51,52の厚さに違いを設ける必要が無くなる。
【0063】
さらに本実施形態の一次レジスト51の塗布においては、前記塗布開始地点から外周方向に向けてレジストを塗布する。具体的には、前記塗布開始地点からレジスト液ノズル(
図示せず)によりレジスト液を滴下し、そしてそのノズルを外周方向に向けて移動させる。こうすることにより、遠心力が比較的小さい部分を最初にレジスト塗布することにより、基板1の外周方向にレジストを均一に塗布することができる。さらに、滴下箇所を最外周方向に移動させながらレジストを塗布することにより、最も遠心力が加わる最外周部分と、比較的遠心力が小さい塗布開始地点とのレジスト塗布の度合いを均一にすることができる。
【0064】
二次レジスト52の塗布についても、ここで述べた一次レジスト51の塗布と同様の手法を用いても良い。すなわち、二次レジスト層52を形成する工程において、基板1の中心からレジストの塗布を開始し、外周方向に向けて塗布を行って、一次レジスト層51が形成されていた部分以外の部分の基板1上に二次レジスト層52を形成してもよい。
【0065】
(実施の形態3)
実施の形態1の二段階レジスト塗布における一次レジスト層51は、円盤基板1の外周部にのみに設けられている。
その一方、本実施形態の一次レジスト層51については、基板外周部に加えて、その他の部分にも一次レジスト層51を設ける。このその他の部分は基板外周部以外であればどこでも良いが、図3(a)の基板断面概略図及び(b)の基板平面概略図に示すように、好ましくは基板1の中心点付近が挙げられる。図3(a)(b)に示すように、このように一次レジスト層51を基板1の中心点付近に設けて一次レジスト層51が占める基板上面積を調節することができる。これにより、先に述べたように、二段階除去の内、各段階で除去されるハードマスク層7の量を同等に調節できる。
【0066】
(実施の形態4)
実施の形態1の二段階レジスト塗布は、基板外周部に一次レジスト51を塗布し、その後で基板中央部に二次レジスト52を塗布している。
その一方、本実施形態においてはこの逆の順番に一次・二次レジスト51,52の塗布を行っている。すなわち、残存ハードマスク層除去前モールド10を作製した後、基板中央部に一次レジスト51を塗布し(図4(a))、外周部のハードマスク層7をまず除去する(図4(b))。その後、基板中央部の一次レジスト51を除去し(図4(c))、今度は外周部に二次レジスト52を塗布する(図4(d))。そして、中央部のハードマスク層7を除去し(図4(e))、最後に基板外周部の二次レジスト層52を除去する(図4(f))。
【0067】
(実施の形態5)
実施の形態1の二段階レジスト塗布は、基板外周部および基板中央部の2箇所にレジストを塗布している。
その一方、本実施形態においては、一次レジスト層51のみを設ければ済む工夫を行っている。具体的には、基板1に予め一次レジストを塗布することを主目的とする領域を設けている。この領域に一次レジスト層51を形成し、この一次レジスト層51が酸素を捕集している間、基板1のハードマスク層7全てを除去している。こうすることにより、1回のレジスト塗布のみでハードマスク層7を除去することができ、しかも残存酸素の影響を小さくすることができる。
【0068】
以上、本発明に係る実施の形態を挙げたが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。本発明の範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。本明細書中に明示的に記載されている又は示唆されているか否かに関わらず、当業者であれば、本明細書の開示内容に基づいて本発明の実施形態に種々の改変を加えて実施し得る。
【実施例】
【0069】
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろんこの発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0070】
(実施例)
本実施例においては、基板1として円盤状合成石英基板(外径150mm、厚み0.7mm)を用いた(図1(a))。この石英基板1をスパッタリング装置に導入した。そして、タンタル(Ta)とハフニウム(Hf)の合金(Ta:Hf=80:20原子比)からなるターゲットをアルゴンガスでスパッタリングし、7nmの厚みのタンタル−ハフニウム合金からなる導電層2を成膜した(図1(b))。
【0071】
その後、大気暴露は行わず、クロムターゲットをアルゴンと窒素の混合ガスでスパッタリングし、窒化クロム層3(クロム:窒素=35:65原子比)を2.5nmの厚みで成膜した。こうしてタンタル−ハフニウム合金層2と窒化クロム層3とを有するハードマスク層7を形成した石英基板1上に、電子線描画用のレジスト膜4(日本ゼオン社製ZEP520A)をスピンコートにより45nmの厚みに塗布し、ベーク処理を行った(図1(c))。
【0072】
次に、電子線描画機(加圧電圧100kV)を用いて、前記マスクブランクスのレジスト膜4にライン90nmかつスペース30nmの周期構造のラインアンドスペースパターンを描画した後、レジスト膜4を現像して微細パターンを形成した(図1(d))。
【0073】
次に、レジストパターンを有するハードマスク層7が形成された基板1をドライエッチング装置に導入し、塩素ガスのみによるエッチングを行った。そして、タンタル−ハフニウム合金膜(導電層2)と窒化クロム層3の積層からなる微細パターンを有するハードマスク層7を形成した(図1(e))。
【0074】
続いて、ハードマスク層7に対するドライエッチングで用いられたガスを真空排気した後、同じドライエッチング装置内で、フッ素系ガスを用いたドライエッチング(CHF:Ar=1:9体積比)を、石英基板1に対して行った。この際、前記ハードマスク層7をマスクとして石英基板1をエッチング加工し、図1(f)に示すように、微細パターンに対応した溝を基板に施した。
【0075】
この時、基板1の溝の深さが70nmになるようエッチング時間を調整した。具体的には、230秒、エッチングを行った。ここでパターンの断面形状を確認するため、上記と同様に作製した評価用のブランクスを破断し、走査型電子顕微鏡によるパターン断面の観察を行ったところ、レジストパターンが消失し窒化クロム層3の表面が露出していた。窒化クロム層3の膜厚は、エッチング前の2.5nmに対して、約1nmに減少していたが、石英基板1の溝の幅が、上記タンタル−ハフニウム合金層2と窒化クロム層3とを有するハードマスク層7からなる微細パターンの幅とほとんど同じであること、および石英基板1の溝の深さが均一であることを確認した。
【0076】
そして、濃硫酸と過酸化水素水からなる過水硫酸(濃硫酸:過酸化水素水=2:1体積比)を用いてレジスト層4を除去し、本実施例におけるインプリント用モールド20の製造のための残存ハードマスク層除去前モールド10を得た(図1(f))。
【0077】
その後、円盤石英基板1の外周部(最外周から20mmの領域)の直上にレジスト液ノズルをセットし、レジスト液(東京応化製 iP3500)を1100rpmにてスピンコートし、一次レジスト51を塗布した。この一次レジスト51を100℃、20分にてベーク処理し、一次レジスト層51を基板外周部に形成した(図1(g))。このとき、
一次レジスト層51はスピンコートにより2μmの厚みに塗布した。
【0078】
続いて、一次レジスト層51が形成された基板1をドライエッチング装置に導入し、真空排気した後、塩素ガスのみによるエッチングを行った。そして、基板中央部のハードマスク層7を除去した(図1(h))。その後、同じく過水硫酸を用いて一次レジスト層51を除去した(図1(i))。
【0079】
次に、円盤石英基板1の中心点の直上にレジスト液ノズルをセットし、一次レジスト51と同条件でレジスト液をスピンコートし、二次レジスト52を塗布した。この二次レジスト52を100℃、20分にてベーク処理し、二次レジスト層52を基板中央部に形成した(図1(j))。このとき、一次レジスト層52はスピンコートにより2μmの厚みに塗布した。
【0080】
続いて、二次レジスト層52が設けられた基板1に対して、真空排気した後、塩素ガスのみによるエッチングを行った。そして、基板中央部のハードマスク層7を除去した(図1(k))。その後、同じく過水硫酸を用いて二次レジスト層52を除去し、本実施例におけるインプリント用モールド20を作製した(図1(l))。
【0081】
(比較例)
上述の実施例と比較するために、比較例において、一次レジストおよび二次レジストを設けることなく、ハードマスク層を除去した。それ以外は実施例と同様に比較例の試料を作成した。
【0082】
(評価)
実施例および比較例により得られたインプリント用モールドについて、走査型電子顕微鏡を用いて観察した。その結果を図5に示す。図5(a)は実施例、(b)は比較例におけるインプリント用モールドの表面を示す写真である。
【0083】
実施例においては、図5(a)より、ハードマスク層除去の際に酸化被膜が発生しておらず、均一にエッチングが行われていることがわかった。
その一方、比較例においては、図5(b)より、基板上に無数の酸化被膜が発生しており、均一にエッチングが行われていないことがわかった。
【符号の説明】
【0084】
1 基板
2 導電層
3 酸化防止層
4 微細パターン形成用レジスト層
10 残存ハードマスク層除去前モールド
20 インプリント用モールド
51 第1レジスト(第1レジスト層)
52 第2レジスト(第2レジスト層)
6 台座構造用レジスト層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝により形成されるパターンを有する基板上の少なくとも一部に、Taを主成分とする化合物またはHfとZrの少なくとも一方の元素もしくはその化合物を含む材料からなる導電層と、前記導電層の上部に設けられた導電層用の酸化防止層と、を含むハードマスク層が形成された残存ハードマスク層除去前モールドからインプリント用モールドを製造するために前記ハードマスク層を除去する工程が、
前記基板の一部に一次レジスト層を形成する工程と、
前記一次レジスト層形成部分以外の部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、
前記一次レジスト層を除去する工程と、
前記基板上における、前記一次レジスト層が形成されていた部分以外の少なくとも一部に二次レジスト層を形成する工程と、
前記一次レジスト層が形成されていた部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、
前記二次レジスト層を除去する工程と、
を有することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法。
ただし、前記ドライエッチングは、エッチング装置内の酸素含有量が5%以下となる程度に酸素を含まないエッチングガスを用いた処理である。
【請求項2】
前記基板は円盤形状の透光性石英基板であり、前記一次レジスト層が形成される基板の一部は、円盤形状の前記透光性石英基板の外周部であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用モールドの製造方法。
【請求項3】
前記外周部の面積は、前記透光性石英基板上面の少なくとも25%を占めていることを特徴とする請求項2に記載のインプリント用モールドの製造方法。
【請求項4】
一次レジスト層を形成する工程において、透光性基板の最外周と中心との間からレジストの塗布を開始し、外周方向に向けて塗布を行って外周部にレジスト層を形成し、
さらに、二次レジスト層を形成する工程において、透光性基板の中心からレジストの塗布を開始し、外周方向に向けて塗布を行って前記外周部以外の部分の透光性基板上にレジスト層を形成することを特徴とする請求項2または3に記載のインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
基板上に、Taを主成分とする化合物またはHfとZrの少なくとも一方の元素もしくはその化合物を含む材料からなる導電層と、前記導電層の上部に設けられた導電層用の酸化防止層と、を有するハードマスク層を形成し、前記ハードマスク層上にパターン形成用レジスト層を形成する工程と、
前記基板に溝を形成するためのパターンが描画された前記レジスト層を現像して溝を形成する部分のレジスト層およびハードマスク層を除去し、前記基板において溝を形成する部分に対してドライエッチングを行った後、溝形成部分以外の部分のレジスト層を除去する工程と、
前記溝形成部分以外の部分のハードマスク層を除去する残存ハードマスク層除去工程と、
を有し、
前記残存ハードマスク層除去工程は、
前記基板の一部に一次レジスト層を形成する工程と、
前記一次レジスト層形成部分以外の部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、
前記一次レジスト層を除去する工程と、
前記基板上における、前記一次レジスト層が形成されていた部分以外の少なくとも一部に二次レジスト層を形成する工程と、
前記一次レジスト層が形成されていた部分のハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、
前記二次レジスト層を除去する工程と、
を有することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法。
ただし、前記ドライエッチングは、エッチング装置内の酸素含有量が5%以下となる程度に酸素を含まないエッチングガスを用いた処理である。
【請求項6】
溝により形成されるパターンを有する基板上に、Taを主成分とする化合物またはHfとZrの少なくとも一方の元素もしくはその化合物を含む材料からなる導電層と、前記導電層の上部に設けられた導電層用の酸化防止層と、を含むハードマスク層が形成された残存ハードマスク層除去前モールドからインプリント用モールドを製造するために前記ハードマスク層を除去する工程が、
前記基板においてハードマスク層が形成されていない部分にレジスト層を形成する工程と、
前記基板におけるハードマスク層に対してドライエッチングを行う工程と、
前記レジスト層を除去する工程と、
を有することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法。
ただし、前記ドライエッチングは、エッチング装置内の酸素含有量が5%以下となる程度に酸素を含まないエッチングガスを用いた処理である。
【請求項7】
前記導電層用酸化防止層は窒化クロムからなることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のインプリント用モールドの製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−73304(P2011−73304A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227657(P2009−227657)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】