説明

インプリント用モールド及びその製造方法

【課題】基体からの剥離のおそれがほとんどない、高い精度の凹凸パターンを有するインプリント用モールド及びその製造方法を提供する。
【解決手段】平坦化剤の塗布により基体主表面の凸凹4を埋めた上で、最表面には所望の凹凸パターン6’が形成されている平坦化剤層6を有することを特徴とするインプリント用モールド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント用モールド及びその製造方法に関し、特に、凹凸パターンが形成されたインプリント用モールド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、機械加工の分野や電子回路の分野では、ミクロンオーダーの加工がなされているが、従来はその加工の制御等の際に可視光を用いるのが一般的であった。しかし可視光では、ミクロンオーダーの制御しかできないという限界があった。
【0003】
これに対し、ステッパと呼ばれる装置において、紫外線レーザーや極紫外線光源可視光より短い波長の光や電子線を用いることにより、ミクロンオーダーから数10nmのナノオーダーの加工が可能になった。
【0004】
その一方で、ミクロンオーダーの加工ですら、パターンを形成するのに相当の時間を要する。そのため、ナノオーダーの微細加工では更に要する時間が増加する。しかも、紫外線レーザーや極紫外線光源を用いる場合、装置も大掛かりになり、コストも増大する。また、電子線で露光・現像して微細加工を行う手法は逐次加工であり、作業効率が下がってしまう。
【0005】
他方、通常の微細なパターン転写として、通常光を用いてガラス板上に形成されたマスクパターンを露光により転写する手法、即ちフォトリソグラフィー法が従来の手法として存在する。しかしながら、フォトリソグラフィーを用いても、光の解像度に依存することになり、ナノオーダーの微細パターンを形成する際には限界がある。
【0006】
この問題に対し、近年、凹凸からなる微細パターンが形成されたモールドを用いて、被転写材に微細パターンを判子のように転写する方法であるナノインプリント技術に注目が集まっている。このナノインプリント技術により、数10nmレベルという微細構造を安価に再現性良くしかも大量に作製できる。
【0007】
なお、インプリント技術は大きく分けて2種類あり、熱インプリントと光インプリントとがある。熱インプリントは、微細パターンが形成されたモールドを被成形材料である熱可塑性樹脂に加熱しながら押し付け、その後で被成形材料を冷却・離型し、微細パターンを転写する方法である。また、光インプリントは、微細パターンが形成されたモールドを被成形材料である光硬化性樹脂に押し付けて紫外光を照射し、その後で被成形材料を離型し、微細パターンを転写する方法である。
【0008】
どちらのインプリント法を用いるにしても、より細かいパターンを、より大きな被成形材料上に転写することが必要となる。これを行うために用いられる方式としては、モールドと被成形材料とを一度にプレスする一括転写方式や、平板モールドを使用して上記のインプリント法を繰り返し行って最終的に大面積の基板に微細パターンを転写するステップ&リピート方式、ローラー方式などが挙げられる(例えば特許文献1及び2参照)。このローラー方式を採用した円筒型基板の主表面に対し、金属層をメッキし、この金属層に微細パターンを形成する技術もある(例えば特許文献3参照)。
【0009】
ところで、微細パターン転写のためには、元型となるインプリント用モールドに微細パターンが設けられている必要がある。この微細パターン形成には、青色レーザーや電子ビーム(EB)などによる微細パターン形成用層への直接描画や、レジストに対する微細パターンの描画・現像後に微細パターン形成用層へのエッチング処理を行う等の手段が用いられている。
【0010】
この微細パターンの描画を行う際には、通常、基板主表面に焦点を合わせた後にレーザー照射を行う。ところが、基板主表面に凸凹(でこぼこ)(傷が無い部分とある部分)が存在する場合(即ち基板主表面の平坦度が低い場合)、平坦でない基板主表面にレーザー照射の焦点を合わせることになる。そうなると、微細パターンの描画を行う際に、微細パターンの形状再現性が低下するおそれがある。このおそれを解消すべく、基板上に平坦化層を設け、その上に微細パターンを設けるという技術が本出願人により開示されている(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−5284号公報
【特許文献2】特開2008−73902号公報
【特許文献3】特開2004−306554号公報
【特許文献4】WO2011/093357号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献4の場合、平坦化層の上に、アモルファスカーボンからなる微細パターンが形成されている例が挙げられている。ただ、この場合、微細パターンを形成するためのエッチングの際に、微細パターンの凸部を形成するアモルファスカーボン膜が平坦化層から剥離してしまうおそれもある。
【0013】
ただ、特許文献4の場合、アモルファスカーボン膜が平坦化層から剥離したとしても、残りのアモルファスカーボン膜を剥がした上で、再度、新たなアモルファスカーボン膜を形成し、パターニングを行うことも可能である。つまり、特許文献4の場合、アモルファスカーボン膜を微細パターンの基として使用しているためエッチングが比較的容易であり、更には、微細パターンを上記の手法で容易に再生できる。
【0014】
とはいえ、微細パターンが平坦化層から剥離するたびに上記の再生処理を行っていたのでは、微細パターンの転写を中断せざるを得なくなってしまう。その結果、ナノインプリント技術の利点である「微細構造を安価に大量に作製」という利点が損なわれてしまうおそれがある。
【0015】
その一方、特許文献3のように、円筒型基板の主表面に銅を直接メッキする技術においては、円筒型基板の種類によっては銅をメッキさせることができない。また、幅は小さいけれど深い傷が円筒型基板の主表面に存在する場合、メッキ処理後、傷の部分が空洞となり、銅が円筒型基板の主表面から剥離しやすくなるおそれも考えられる。また、傷が大きい場合、その傷の形状に沿って銅が堆積されることになり、相当の厚みの銅膜を形成しないと、銅膜に微細パターンを形成したとしても、微細パターンの形状が傷の形状の影響を受けてしまうおそれも考えられる。
【0016】
本発明の目的は、基体からの剥離のおそれがほとんどない、高い精度の凹凸パターンを有するインプリント用モールド及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上述した目的達成のために本発明者は、自らが開発した技術(特許文献4)を再検討した。先にも述べたように、特許文献4においては、基体に対して平坦化層を設け、その上にパターン層を設けている。そしてこのパターン層が平坦化層から剥離してしまうことにより、上記の課題が生じている。
【0018】
この再検討の結果、基体からの剥離のおそれを解消するためには、そもそもパターン層を別途設けないようにすれば良いのではないかと考えた。つまり、平坦化層自体にパターンを形成してしまえば、そもそも剥離のおそれ自体が解消されるのでは、と考えた。詳しく言うと、平坦化層に対して2つの機能、即ち、
(機能1)平坦化層が基体と接触する部分においては、基体主表面にある傷などの凸凹(でこぼこ)を埋めて基体を平坦な状態に変える。
(機能2)平坦化層が基体と接触する部分と対向する部分(雰囲気と接触する部分、即ち最表面)においては、被転写体に転写されるべき凹凸パターンを形成する。
という機能を兼ね備えさせるという知見を得た。
【0019】
本発明は、上述した本願発明者による新たな知見に基づいてなされたものである。
本発明の第1の態様は、
平坦化剤の塗布により基体主表面の凸凹(でこぼこ)を埋めた上で、最表面には所望の凹凸パターンが形成されている平坦化剤層を有することを特徴とするインプリント用モールドである。
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の発明において、
前記基体は円筒型基板であることを特徴とする。
本発明の第3の態様は、第1又は第2の態様に記載の発明において、
前記平坦化剤層はポリシラザンからなることを特徴とする。
本発明の第4の態様は、
平坦化剤の塗布により基体主表面の凸凹(でこぼこ)を埋めて前記基体を平坦化する平坦化剤層を前記基体上に形成する平坦化剤層形成工程と、
前記平坦化剤層自体の主表面に所望の凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
を有することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法である。
本発明の第5の態様は、第4の態様に記載の発明において、
前記基体は円筒型基板であることを特徴とする。
本発明の第6の態様は、第4又は第5の態様に記載の発明において、
前記平坦化剤層はポリシラザンからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、基体からの剥離のおそれがほとんどない、高い精度の凹凸パターンを有するインプリント用モールド及びその製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本実施形態におけるインプリント用モールドの製造工程を概略的に示す断面図である。
【図2】本実施形態におけるインプリント用モールドの平坦化剤層の機能を説明するための概略的な断面拡大図である。
【図3】本実施形態におけるインプリント用モールドの概略図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(b)は(b)のA−A’部分の断面図である。
【図4】パターン描画の際のフォーカス合わせについて説明した概略図であり、(a)は本実施形態、(b)は従来例における概略図である。
【図5】(a)実施例1において、平坦化剤層の上にマスク層、無機レジスト層を順次形成した状態の基板(未パターニング)の主表面の外観写真である。(b)実施例1において、平坦化剤層の上にマスク層、無機レジスト層を順次形成した状態の基板(未パターニング)の主表面の光学顕微鏡写真である。
【図6】(a)比較例1における、平坦化剤層、マスク層、無機レジスト層のいずれも形成していない状態の基板(未パターニング)の主表面の外観写真である。(b)比較例1における、平坦化剤層、マスク層、無機レジスト層のいずれも形成していない状態の基板(未パターニング)の主表面の光学顕微鏡写真である。
【図7】本実施例のモールドの主表面に対する走査型電子顕微鏡による観察結果を示す平面視の写真であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3、(d)は実施例4、(e)は実施例5に対応する。
【図8】本実施例のモールドの主表面に対する走査型電子顕微鏡による観察結果を示す断面視の写真であり、(a)は実施例1、(b)は実施例2、(c)は実施例3、(d)は実施例4、(e)は実施例5に対応する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態を説明する。なお、<実施の形態1>においては、以下の順番で説明する。
1.インプリント用モールド及びその製造方法
A)基板の準備
B)平坦化剤の塗布(平坦化剤層形成工程)
C)凹凸パターンの形成(凹凸パターン形成工程)
a)マスク層の形成
b)レジスト層の形成
c)パターン露光
d)現像(レジストパターンの形成)
e)リンス処理・乾燥
f)マスクパターンの形成
g)平坦化剤層への凹凸パターンの形成
h)マスクパターン及びレジストパターンの除去
i)洗浄等
2.実施の形態による効果
【0023】
なお、<実施の形態1>においては、平坦化剤層の上にマスク層、レジスト層を順に設ける場合について説明する。
また、<実施の形態2>においては、平坦化剤層上にマスク層を設けない場合について説明する。
また、<実施の形態3>においては、上記の実施の形態で述べた以外の変形例について説明する。
【0024】
なお、本実施形態において「平坦」とは基体の表面粗さを示すものであり、キズ等がないはずの部分の表面の幾何学的平面からのずれの大きさを示すものである。「平坦」を示す指標としては「平坦度(真円度又は平面度)」があり、これはJIS B 0182にて定義される指標である。
また、本実施形態においては、本来は平坦化層として用いられていたものに凹凸パターンを形成している。故に、本来は平坦化層として用いられていたものは、少なくとも最表面においては平坦となっていない。そのため、本実施形態においては、基体の主表面に対する平坦化機能を有し且つ凹凸パターンを主表面に形成されている層のことを「平坦化剤層」と言う。
また、基体主表面の平坦化を阻害する要因(例えばキズや凹みによって主表面に生ずる段差)を、凸凹(でこぼこ)と言う。これは、将来的に平坦化剤層の主表面に形成される所望の凹凸パターンとは異なるものである。
【0025】
<実施の形態1>
(1.インプリント用モールド及びその製造方法)
以下、本実施形態について、図1を用いて説明する。図1は、本実施形態におけるインプリント用モールド1(以降、単にモールド1とも言う。)の製造工程を概略的に示す図である。図1(a)はモールド1の基となる基体(本実施形態においてはモールド基板2(以降、単に基板2とも言う。))を示し、図1(b)は基板2に平坦化剤よりなる平坦化剤層6を設けた様子を示す。更に、図1(c)はその平坦化剤層6の上にマスク層8、レジスト層9を順に形成した様子を示し、図1(d)はこのレジスト層9に対して所望のパターンを描画・現像してレジストパターン9’を形成した様子を示す。そして図1(e)はマスク層8に対してエッチングを行ってマスクパターン8’を形成した様子を示し、図1(f)は平坦化剤層6に対してエッチングを行って凹凸パターン6’を形成した様子を示す。そして、図1(g)は、エッチング後に洗浄を行い、マスクパターン8’及びレジストパターン9’を除去し、モールド1を完成させた様子を示す図である。
【0026】
本実施形態におけるモールド1の断面概略図であって、図1(g)を拡大した図である図2に示すように、基板2上に平坦化剤層6が設けられ、平坦化剤層6自体の主表面に所望の凹凸パターン6’が設けられたモールド1が得られる。本実施形態におけるモールド1は、平坦化剤層6が単層でありながら、平坦化剤層6が基板2と接触する部分においては、基板2の主表面にある傷などの凸凹(でこぼこ)4を埋めて基板2を平坦な状態に変えている。その上で、平坦化層が基板2と接触する部分と対向する部分(雰囲気と接触する部分、即ち最表面)においては、凹凸パターン6’が形成されている。このモールド1を元型モールドとして被転写体に凹凸パターン6’を転写する際、平坦化剤層6の最表面が被転写体との接触部分となる。
【0027】
このモールド1を元型モールドとして使用する際の概観図を、図3に示す。図3は本実施形態におけるモールド1の概略図であり、(a)は斜視図、(b)は正面図、(c)は(b)のA−A’部分の断面図である。以下、図1〜図3に基づいて、本実施形態に係るインプリント用モールド及びその製造方法について詳述する。
【0028】
A)基体の準備
まず図1(a)に示すように、モールド1のための基体である基板2を用意する。なお、本実施形態における「基体」とは、本明細書に示すような基板、その基板の上にハードマスクが設けられたものを含む。まとめると、基板を含む物質であって、平坦化剤層6が設けられるべき対象となる物質そのものを指すものとする。
【0029】
この基体は、モールド1として用いることができるのならばどのような組成のものでも良い。工業用としての耐久性を考慮すると、金属又はステンレス鋼のような合金製基板が挙げられる。この他にも、石英基板などのガラス基板、SiC基板、シリコンウエハ基板、更にはシリコンウエハ基板上にSiO層を設けたもの、グラファイト基板、グラッシーカーボン基板、カーボンファイバー強化プラスチック(CFRP)のカーボン系基板等が挙げられる。
【0030】
また、基板2の形状についてであるが、モールド1として用いることができるのならば形状は制限されない。例えば、基板2の形状として、円盤形状や、円筒型状などが挙げられる。円盤形状であれば、平坦化剤等を塗布する際、円盤基板2を回転させながら平坦化剤等を均一に塗布することができる。また、円筒型状であれば、ローラー方式でのインプリントが可能となることから、大量生産に適している。
【0031】
なお、基板2の型状は円盤形状以外であっても良く、矩形、多角形、半円形状であっても良い。また、円筒型状以外には、基板2の型状として、円柱や三角柱や四角柱のような多角形形状が挙げられるが、円柱又は円筒型の方が連続的かつ均一に被転写材に凹凸パターンを転写できるため、より好ましい。なお、本実施形態においては、基板2がどのような型状であっても、インプリント用モールド製造の基礎として用いられる基体を「基板」とも言うこととする。
【0032】
本実施形態においては、中心部分が空洞である円筒型状のステンレス鋼基板2を用いて説明する。図3に示すように、この基板2は左右両側モールド端面、モールド外周面20、物質的には形成されていない回転軸3を有している。
【0033】
B)平坦化剤の塗布(平坦化剤層形成工程)
上述の通り、モールド1に用いられる基板にはミクロンオーダーの傷が存在するおそれがあり、このミクロンオーダーの傷が凹凸パターンの再現性に大きな影響を与えるおそれがある。
そのため、本実施形態においては、従来のように基板2の主表面に直接に凹凸パターンを形成したり、凹凸パターンを有する層を別途設けたりするのではなく、平坦化剤により基板主表面が平坦化された平坦化剤からなる層(以降、平坦化剤層6とも言う。)を基板2上に形成する。以下、この「平坦化剤層形成工程」について詳述する。
【0034】
まず、平坦化剤の選定を行う。本実施形態における「平坦化剤」は、基体の主表面に対して塗布できるものであり、基体の主表面に存在する平坦化阻害要因(凸凹(でこぼこ))を解消することができるものならば良い。
【0035】
この平坦化剤の具体例としては、従来使用される液体状の平坦化膜化剤が挙げられるが、具体的にはポリシラザン、メチルシロキサン、金属アルコキシドなどが挙げられる。凹凸パターンを形成する際の容易性や、平坦化剤層6の凹凸パターン6’が毀れた際に平坦化剤層を除去して新たな平坦化剤層6を形成する際の容易性を考えると、ポリシラザンが好ましい。ただ、上記以外の物質、例えば置換ナフトキノンジアジドとノボラック樹脂からなるポジ型レジスト、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルフェノール、ノボラック樹脂、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル及びポリビニルブチラール等を用いても良い。また、良好な平坦性を維持できるのならば、平坦化剤層6を構成する物質として上記の物質のみを用いても良いし、上記に例示した物質を混合したものを用いても構わない。
【0036】
次に、回転軸3を水平にした状態で基板2を保持し、基板2下方に平坦化剤入り容器を用意する。その後、基板2を下方に降ろし、基板2の外周面の一部と平坦化剤とを接触させる。そして、基板2の一部を平坦化剤に浸漬させる。
【0037】
ここでは、平坦化剤に対して、基板2を回転軸方向に対して平行に接触させるのが好ましい。平行に接触させることにより、基板2における浸漬部分において、左右両側モールド端面の間で塗布の程度に差異が生じることを防止することができる。その結果、平坦化剤の塗布にムラを生じさせないことになる。
【0038】
このように、平坦化剤と基板2とを回転軸方向に対して平行に接触させた状態で、基板2を複数のローラー107により回転させて、モールド外周面20に平坦化剤を塗布する(図1(b))。なお、図3(a)に示すように、基板2をローラー107により回転させるための部分を、基板2に別途設けても良い。
このときの回転速度及び回転数は、平坦化剤を基板2に十分塗布することができるように設定する。
【0039】
上記のような手法を行い、基板2に対して平坦化剤を塗布する。こうすることにより、基板2の主表面上を平坦にすることができる。なお、この平坦化は、図2に示すように、平坦化剤の塗布により基体主表面の凸凹(でこぼこ)4を埋めて基板2を平坦化している。この「凸凹(でこぼこ)を埋めて」というのは、最低でも凹(ぼこ)を埋めている状態のことを言う。その一方、キズや凹みを埋めるのみならず、凸(でこ)となっている部分、更には、キズや凹みが元々存在していなかった部分も平坦化剤層によって埋められている状態のことも含み、好ましくはこの状態である。
【0040】
C)凹凸パターンの形成(凹凸パターン形成工程)
本実施形態においては、上述のように塗布された平坦化剤からなる平坦化剤層6自体に凹凸パターンを形成することになる。以下、本実施形態においては、凹凸パターンを形成する一例について述べる。
【0041】
a)マスク層の形成
凹凸パターンを形成するため、平坦化剤層6の上に、マスク層8を積層する。その後、マスク層8の上に、レジスト層9を積層する(図1(c))。
【0042】
このマスク層8としては、ハードマスクとしての機能を有するものであればどのようなものを用いても構わない。なお、本実施形態における「ハードマスク」は、単一又は複数の層からなり、基板上へのエッチングに用いられる層状のもののことを指すものとする。
【0043】
マスク層8を構成する物質としては、ハードマスクとしての機能を発揮可能な物質であればどのようなものを用いても構わないが、マスク層8は不透明層であることが好ましい。
更に、マスク層8の波長405nmにおける透過率は適度な範囲内にあるのが好ましい。そうすることにより、図4(a)に示すように、マスク層8が積層された基板2の上部からレーザー光109を照射する際、パターン描画の際のレーザー光109のフォーカスをこのマスク層8上に確実に合わせることができる。より詳しく言うと、図4(b)に示すような事態を抑制、即ち、平坦化剤層6により折角基板2を平坦化したにも拘わらず、凹凸パターン描画の際のレーザー光109のフォーカスが、平坦化剤層6を通り越して粗表面基板上の傷108の部分に合わせられるのを抑制できる。
【0044】
なお、本実施形態における「不透明層」とは、マスク層8が積層された基板2上からパターン描画のフォーカス合わせを行ったときに、このマスク層8上でフォーカス合わせが行われる程度に不透明である層のことをいう。もちろん、マスク層8そのものが不透明層であっても良いし、不透明層を基板2上に別途設けても良い。
【0045】
ここで挙げたマスク層8の一例としては、酸化クロム層(CrOx)、窒化クロム層(CrNx)、酸化窒化クロム層(CrOxNy)、クロム及びその化合物に炭素が含まれるもの(CrOxNyCz)、アモルファスカーボン、アモルファスカーボンナイトライドなど又はそれらの組み合わせが具体的に挙げられる。
【0046】
ここで、マスク層8が酸化クロム層を含む場合、酸化クロム層の厚さは100nmより大きくし、かつ、マスク層8全体の厚さは100nmより大きく1μm以下であれば、なお好ましい。100nm以上ならば、酸化クロム層上にて十分フォーカスあわせを行うことができる。1μm以上ならば、パターン転写の際の実用に堪えることができる。
【0047】
また、マスク層8が窒化クロム層を含む場合、窒化クロム層の厚さは20nm以上であり、かつ、マスク層8全体の厚さは20nm以上であり1μm以下であるのが好ましい。なお、窒化クロム層の厚さは30nm以上であるのがより好ましい。
【0048】
更に、マスク層8が酸化クロム層及び窒化クロム層からなる場合、窒化クロム層の厚さは20nm以上であり、マスク層8全体の厚さは20nm以上であり1μm以下であるのが好ましい。
【0049】
なお、酸化クロム層及び窒化クロム層以外にも、アモルファスカーボンを用いても良い。アモルファスカーボンだと、酸化クロム層ほど高い透明性を有さないが故に、凹凸パターン描画の際に、基板2に焦点が合ってしまうということを防止することができる。アモルファスカーボンの場合、アモルファスカーボンの厚さは50nmより大きくし、かつ、マスク層8全体の厚さは50nmより大きく1μm以下であるのが好ましい。
【0050】
ここで挙げた各物質からなる層の厚さが上記範囲にあれば、平坦化剤層6表面に形成されたマスク層8に、確実にレーザー光109のフォーカスを合わせることができる。また、マスク層8全体の厚さが上記範囲にあれば、マスク層8に確実にフォーカスを合わせることができるとともに、適切なアスペクト比を有する凹凸パターンを形成することができる。
【0051】
なお、マスク層8の製法としては、スパッタリング法など、公知の方法を用いれば良い。
【0052】
b)レジスト層の形成
次に、マスク層8の主表面に対してレジストを塗布する。塗布方法としては、本実施形態においては所定の回転数にて回転させつつ基板2の上方からレジストを塗布するスピンコート法を用いる。このようにレジストを塗布した後、ベークを行うことにより、レジスト層9をマスク層8上に形成する。
【0053】
なお、レジストの種類としては、公知のもので良いし、化学増幅レジストであっても良い。エネルギビームを照射したときに反応性を有するものであれば良い。具体的には、現像処理を行う必要のあるレジストであれば良い。本実施形態においては、電子線描画によるパターン露光が行われる際に用いるポジ型レジストを用いる場合について述べる。なお、酸化タングステン(WOx)を用いる場合は、レーザー描画を行えば良い。
【0054】
なお、レジスト層9がポジ型レジストからなるものであるならば、後述する電子線による描画にてパターン露光を行った箇所の現像剤に対する溶解度が向上し、現像処理後に形成される凹凸からなるレジストパターン9’の凹部となり、ひいてはその箇所が平坦化剤層6に形成される凹凸パターン6’における凹の位置に対応する。一方、レジスト層9がネガ型レジストからなるものであるならば、パターン露光を行った箇所が硬化し、現像剤に対する溶解度が減少する。その結果、ポジ型レジストの凹凸関係とは逆の対応関係のパターンが形成される。
【0055】
なお、平坦化剤層6とマスク層8の間、及びマスク層8とレジスト層9の間、又はそのいずれかに密着層7を設けても良い。密着層7として用いられるものとしては、アモルファスシリコンが挙げられる。もちろん、平坦化剤層6、マスク層8及びレジスト層9を形成する際に良好に接着することができるならば、密着層7を設けなくとも良い。
【0056】
c)パターン露光
本実施形態におけるパターン露光は、電子線描画やリソグラフィー等、公知のパターン露光であれば良い。また、パターンの形状についても限定はなく、線状・点状(ドットパターン)・それらの混合等形状等であっても良い。一例を挙げるとすれば、電子線描画機を用いて、レジスト層9に対して、ビットパターンドメディア(BPM)製造用の所望の微細パターンを描画することが挙げられる。この微細パターンはミクロンオーダーであっても良いが、近年の電子機器の性能という観点からはナノオーダーであっても良いし、パターン付き基体などにより作製される最終製品の性能を考えると、その方が好ましい。
【0057】
d)現像(レジストパターンの形成)
描画済みのレジスト層9を有する基板2に対して現像を行うことにより、図1(d)に示すように、所望の凹凸からなるレジストパターン9’が得られる。なお、本実施形態における現像処理についても、公知のやり方であれば良い。
【0058】
なおその際、b)レジスト層の形成にて述べた通り、マスク層8上に青色レーザー描画用のレジスト層9を成膜していても良い。青色レーザー描画用のレジスト層9としては、熱変化によって状態変化する感熱材料であって、その後のエッチング工程に適するものであっても良い。また、感光材料であっても良い。このとき、組成傾斜させた酸化タングステン(WOx)からなる無機レジスト層であれば、解像度向上という点から尚好ましい。
【0059】
e)リンス処理・乾燥
レジストパターン9’を有する基板2に対し、必要に応じてリンス処理を行った後、乾燥処理(ベーク)等を行う。
【0060】
f)マスクパターンの形成
その後、レジストパターン9’が存在する状況でマスク層8をエッチングし、マスクパターン8’を形成する(図1(e))。なお、このエッチングの方法においては、マスク層8の物質に応じて決定すれば良く、ドライエッチングやウェットエッチング等をマスク層8の種類に応じて使用すれば良い。例えば、マスク層にアモルファスカーボンを用いた場合は、Oガスを用いたドライエッチングを行えば良い。また、必要に応じて密着層7に対してもエッチングを行う。
【0061】
g)平坦化剤層への凹凸パターンの形成
そして、マスクパターン8’ が存在する状況で平坦化剤層6をエッチングする。その結果、所望の凹凸パターン6’を平坦化剤層6に形成することができる(図1(f))。なお、このエッチング方法としては、平坦化剤の種類に応じて決定すれば良い。例えば平坦化剤としてポリシラザンを用いた場合は、一例として挙げるとすると、Ar及びCHFガスにてドライエッチングを行えば良い。なお、ウェットエッチングを行う場合は、バッファードフッ酸を用いることも考えられる。
【0062】
なお、所望の凹凸パターン(微細パターン)とは、ナノオーダーからマイクロオーダーまでの範囲のパターンであっても良いが、数nm〜数100nmのナノオーダーの周期構造であれば、なお良い。具体的に一例を挙げるとすれば、複数の微細な凹凸からなっている微細突起構造である。その断面形状としては、1次元周期構造の場合、三角、台形、四角等が挙げられる。2次元周期構造の場合、微細突起の形状は、正確な円錐(母線が直線)や角錐(稜線が直線)のみならず、インプリント後の抜き取りを考慮して先細りとなっている限り、母線や稜線形状が曲線をなし、側面が外側に膨らんだ曲面であるものであっても良い。具体的な形状としては、釣り鐘、円錐、円錐台、円柱等が挙げられる。
更には、成形性や耐破損性を考慮して、先端部を平坦にしたり、丸みをつけたりしても良い。更に、この微細突起は一方向に対して連続的な微細突起を作製しても良い。
【0063】
h)マスクパターン及びレジストパターンの除去
その後、残存したレジストパターン9’を除去する。同様に、マスク層の物質に応じた手法を用い、残存したマスクパターン8’を除去する。なお、本実施形態のようにレジストパターン9’がWOxからなる場合、ポリシラザンに対する上記のドライエッチングの際に、レジストパターン9’を除去する。また、マスクパターン8’については、マスクパターン8’に対するドライエッチングと同様、Oガスを用い、マスクパターン8’を除去する。
【0064】
i)洗浄等
以上の工程を経た後、必要があれば基板2の洗浄等を行う。このようにして、凹凸パターンを主表面に有する平坦化剤層6を形成し、モールド1を完成させる(図1(g))。
【0065】
(2.実施の形態による効果)
以上のように、本実施形態に係るインプリント用モールドが構成される。実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
【0066】
即ち、凹凸からなる微細なパターンの層を平坦化層の上に別途設けるのではなく、平坦化層自体にパターンを形成することにより、そもそも凹凸パターンの剥離のおそれ自体が発生しないようにしている。
【0067】
そして、別途設けていた凹凸パターンを省略する代わりに、平坦化剤層に対して以下の2つの機能を兼務させている。
(機能1)平坦化剤層が基体と接触する部分においては、基体主表面にある傷などの凸凹(でこぼこ)を埋めて基体を平坦な状態に変える。
(機能2)平坦化剤層の最表面(平坦化剤層が基体と接触する部分と対向する面)においては、被転写体に転写されるべき凹凸パターンを形成する。
【0068】
こうすることにより、凹凸パターンが平坦化層から剥離するおそれがそもそも存在しなくなるため、凹凸パターンが剥離するたびに行われていた凹凸パターンの再生処理が不要となる。そうなると、インプリント用モールドのパターンの転写を中断する必要がなくなる。その結果、転写作業をスムーズに行うことが可能となり、ナノインプリント技術の利点である「微細構造を安価に大量に作製」という利点を充分に活かすことができる。
【0069】
更に、当初の目的通り、基体の主表面の平坦化阻害要因である凸凹(でこぼこ)を平坦化剤の塗布により埋めることができ、基体の主表面の上部をひとまず平坦な状態とすることができる。そうすることにより、基体の主表面に凸凹(でこぼこ)(傷が無い部分とある部分)が平坦化剤層により埋められることになり、青色レーザーや電子ビーム(EB)などの電子線描画を行う際に、平坦な部分に焦点を合わせやすくなる。その結果、基体の凸凹(でこぼこ)の影響を受けずに、所望の凹凸パターンを形成することができる。
【0070】
以上の結果より、本実施形態によれば、基体からの剥離のおそれがほとんどない、高い精度の凹凸パターンを有するインプリント用モールド及びその製造方法を提供することができる。
【0071】
<実施の形態2>
実施の形態1においては、マスク層8を設けた場合について述べた。本実施形態においては、マスク層8を設けずに、平坦化剤層6の上に直接(又は密着層7の上に)レジスト層9を設ける場合について述べる。
【0072】
先に述べたように、実施の形態1におけるマスク層8は、レジストパターン9’を平坦化剤層6にパターン転写する役割を担っているが、パターン描画の際のフォーカス合わせの不透明層としての役割も担っている。そこで、本実施形態においては、平坦化剤として不透明性を有する物質を用いる。こうすることにより、マスク層8(不透明層)を用いなくとも、パターン描画のフォーカスが粗表面の基板上に合うことを抑制することができる。即ち、平坦化剤そのものが不透明であることから、平坦化されている平坦化剤層6の表面に、確実にパターン描画のフォーカスを合わせることができる。不透明性を有する平坦化剤としては、例えば色素添加剤を加えた平坦化剤が挙げられる。
【0073】
<実施の形態3>
実施の形態1においては、平坦化剤層6及びマスク層8を形成した後、レジスト層9を形成しこれを利用することによりモールド1を作製する場合について述べた。本実施形態においては、マスク層8にアモルファスカーボンを用いた場合、マスク層8に対して直接描画を行い、マスクパターン8’を得ても良い。
更に、平坦化剤層6に対し、電子線等による直接描画により、マスク層8やレジスト層9を介さずに、凹凸パターンを直接形成しても良い。
【0074】
また、実施の形態1においては、円筒型の基板2の主表面全体に平坦化剤を塗布し、平坦化剤層6を形成する場合について述べた。その一方、基板2の主表面全体でなくとも、平坦化剤を部分的に塗布し、基板2の主表面に対し、平坦化剤層6を部分的に形成しても良い。また、その際、基板2の主表面上に平坦化剤層6を複数形成しても良い。
【0075】
以上、本発明に係る実施の形態を挙げたが、上記の開示内容は、本発明の例示的な実施形態を示すものである。本発明の範囲は、上記の例示的な実施形態に限定されるものではない。本明細書中に明示的に記載されている又は示唆されているか否かに関わらず、当業者であれば、本明細書の開示内容に基づいて本発明の実施形態に種々の改変を加えて実施し得る。
【実施例】
【0076】
<実施例1>
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。
ステンレス製の円筒型の中空基板2(SUS304、直径100mm即ち半径50mm、そのうち中空部分の直径84mm、モールド端面間距離300mm)を用意した。
【0077】
次に、平坦化剤を用意した。平坦化剤には、ジブチルエーテル中にポリシラザンを20%溶解した溶液を用いた。このポリシラザン溶液が入った平坦化剤容器を基板2下方に配置した。
【0078】
その後、基板2をポリシラザン溶液に接触させた。このとき、平坦化剤の液面から0.3mm以下の距離の深さで、モールド外周面20の一部を平坦化剤に浸漬させた。
【0079】
その状態で、別途設けられた回転軸3によりモールドを回転速度32回転/分で3回転させ、モールド外周面20全面にポリシラザン溶液を塗布した。この際、平坦化剤層6が1.5μmの厚さになるようにポリシラザン溶液を円筒型の基板2上に塗布した。
その後、円筒型の基板2と平坦化剤とを引き離し、基板2を回転させながら乾燥させた。
【0080】
次に、塗布された平坦化剤層6の上に、マスク層8、無機レジスト層9をこの順に積層した。なお、本実施例においては、密着層7は設けなかった。
マスク層8としてはアモルファスカーボンを200nmの厚さで成膜した。無機レジスト層9としては酸化タングステン(WOx)層をスパッタ法により、20nmの厚さで成膜した。なお、無機レジスト層9の深さ方向への組成変化については、基板側x=0.95、レジスト最表面側x=1.60の傾斜組成とした。この無機レジスト層9の形成には、イオンビームスパッタ法を用いてAr:Oの流量比を連続的に変化させて無機レジスト層9中の酸素濃度を傾斜させた。また、無機レジスト層9中の組成分析にはラザフォード後方散乱分光法(Rutherford Back Scattering Spectroscopy:RBS)を使用した。
【0081】
この無機レジスト層9に対し、青色レーザー描画装置(波長405nm)を用い、周期180nmのラインアンドスペース(ライン:スペース=1:1)のパターンを出力11.8mWにて描画し、現像処理を行い、レジストパターン9’を得た。その後、マスク層8に対してOガスにてドライエッチングを行い、マスクパターン8’を得た。その後、ポリシラザンからなる平坦化剤層6に対してAr及びCHFガスにてドライエッチングを行い、凹凸パターン6’を得た。なお、マスクパターン8’の除去にもOガスにてドライエッチングを用いた。その後、洗浄処理を行い、モールド1を作製した。この際、凹凸パターン6’のエッチング深さは150nmとした。
【0082】
<実施例2〜5>
実施例1と同様の手法を用い、青色レーザーを描画する際のパターンの周期及び描画出力を変えたモールド1を各々の実施例にて作製した。具体的に言うと、実施例2では周期160nm及び出力11.6mWとし、実施例3では周期140nm及び出力11.4mWとし、実施例4では周期120nm及び出力11.4mWとし、実施例5では周期100nm及び出力11.3mWとした。
【0083】
<比較例1>
比較例1においては、基板2に対し、平坦化剤層を設けなかった。つまり、実施例1と同様のステンレス製の円筒型の中空基板2(SUS304、直径100mm即ち半径50mm、そのうち中空部分の直径84mm、モールド端面間距離300mm)を用意し、その上にマスク層8、無機レジスト層9をこの順に積層した。それ以外は実施例1と同様とし、モールド1を作製した。
【0084】
<結果>
実施例1及び比較例1における未パターニングの基板(実施例1は密着層7抜きの図1(c)の状態、即ち平坦化剤層6の上にマスク層8、無機レジスト層9を順次形成した状態である一方、比較例1は平坦化剤層6、マスク層8、無機レジスト層9のいずれも形成していない状態)の主表面に対し、外観写真及び光学顕微鏡写真(倍率50倍)を撮影した。実施例1における平坦化剤塗布後の基板の外観写真を図5(a)、光学顕微鏡写真を図5(b)に示す。また、比較例1における基板の外観写真を図6(a)、光学顕微鏡写真を図6(b)に示す。この結果を見比べると、外観写真及び光学顕微鏡写真というレベルのスケールにおいても、実施例1の方が、充分な平坦化が実現できていることがわかる。
【0085】
また、実施例1〜5について、走査型電子顕微鏡による観察(倍率50,000倍)を行った。実施例1〜5について各々、図7(a)〜(e)には平面視の写真を示し、図8(a)〜(e)には断面視の写真を示す。なお、実施例1のスペース部分におけるCD(Critical Dimension)は99nm、実施例2のCDは86nm、実施例2のCDは66nm、実施例4のCDは62nmであった。
その結果、いずれの実施例においても、モールド1の主表面においては精度の高い凹凸パターンが形成されており、フォーカス異常は生じていないことが確認できた。
【符号の説明】
【0086】
1 インプリント用モールド(モールド)
2 モールド基板(基板)
20 モールド外周面
3 回転軸
4 凸凹(でこぼこ)
6 平坦化剤層
6’ 凹凸パターン
7 密着層
8 マスク層
8’ マスクパターン
9 レジスト層
9’ レジストパターン
107 ローラー
108 基板主表面の傷
109 レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平坦化剤の塗布により基体主表面の凸凹(でこぼこ)を埋めた上で、最表面には所望の凹凸パターンが形成されている平坦化剤層を有することを特徴とするインプリント用モールド。
【請求項2】
前記基体は円筒型基板であることを特徴とする請求項1に記載のインプリント用モールド。
【請求項3】
前記平坦化剤層はポリシラザンからなることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント用モールド。
【請求項4】
平坦化剤の塗布により基体主表面の凸凹(でこぼこ)を埋めて前記基体を平坦化する平坦化剤層を前記基体上に形成する平坦化剤層形成工程と、
前記平坦化剤層自体の主表面に所望の凹凸パターンを形成するパターン形成工程と、
を有することを特徴とするインプリント用モールドの製造方法。
【請求項5】
前記基体は円筒型基板であることを特徴とする請求項4に記載のインプリント用モールドの製造方法。
【請求項6】
前記平坦化剤層はポリシラザンからなることを特徴とする請求項4又は5に記載のインプリント用モールドの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−111763(P2013−111763A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−257100(P2011−257100)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】