説明

インプリント装置及びこれに用いるアライメント機構又は着脱機構

【課題】 簡単な構造で容易に位置調節を行うことができるインプリント装置及びこれに用いるアライメント機構又は着脱機構を提供すること。
【解決手段】 移動体2とベース部材1との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材3と、移動体2又はベース部材1に設けられ、シール部材3を収納するための収納溝4と、シール部材3を収納溝4内で移動させるためのシール部材移動手段5と、移動体2、ベース部材1及びシール部材3の間に形成された空間の流体を排出する流体排出手段6と、を具備する着脱手段。また、当該着脱手段と共に、移動体2をベース部材1に対して浮揚させるために、移動体2とベース部材1の間に流体を供給する浮揚流体供給手段8と、移動体2の位置を変えるための変位手段9とを備えるアライメント機構。当該アライメント機構を用いたインプリント装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置及びこれに用いるアライメント機構又は着脱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント技術によって所定のパターンを形成する場合、アプリケーションによっては、パターンを転写する位置をX−Y−θ方向に微調整する必要がある。当該位置合わせは、従来、ピエゾ素子やリニアガイドなどを用いて行っていた(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許公開2009−302088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、被成形物への転写面積が大型化すると、ピエゾ素子による移動量が小さいため、ピエゾ素子による微動機構とは別に、粗動機構も必要となり、装置が複雑になるという問題があった。
【0005】
そこで本発明では、簡単な構造で容易に位置調節を行うことができるインプリント装置及びこれに用いるアライメント機構又は着脱機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のインプリント装置は、型のパターンを被成型物に転写するためのものであって、前記型又は前記被成形物を保持する移動体と、前記移動体を載置するベース部材と、前記移動体を前記ベース部材に対して浮揚させるために、前記移動体と前記ベース部材の間に流体を供給する浮揚流体供給手段と、前記移動体の位置を変えるための変位手段と、前記移動体を前記ベース部材に吸着固定するための着脱機構と、を具備する。また、当該着脱機構は、前記移動体と前記ベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、前記移動体又は前記ベース部材に設けられ、前記シール部材を収納するための収納溝と、前記シール部材を前記収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、前記移動体、前記ベース部材及び前記シール部材の間に形成された前記空間の流体を排出する流体排出手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
ここで、前記型及び前記被成形物を内包すると共に前記移動体上に形成される減圧室用筐体と、当該減圧室用筐体内の減圧室を外部の雰囲気の圧力以下に減圧する減圧手段とを有する場合には、前記着脱機構による前記移動体と前記ベース部材との間の吸着力および前記移動体の自重による力の和が、前記減圧室による移動体の吸着力よりも大きくなるように形成される。
【0008】
また、前記浮揚流体供給手段と前記流体排出手段は、流体の供給又は排出を行う共通の流体給排口を有しても良い。
【0009】
また、本発明のアライメント機構は、ベース部材に対する移動体の位置を調節するためのものであって、前記移動体を前記ベース部材に対して浮揚させるために、前記移動体と前記ベース部材の間に流体を供給する浮揚流体供給手段と、前記移動体の位置を変えるための変位手段と、前記移動体を前記ベース部材に吸着固定するための着脱機構と、を具備する。また、当該着脱機構は、前記移動体と前記ベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、前記移動体又は前記ベース部材に設けられ、前記シール部材を収納するための収納溝と、前記シール部材を前記収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、前記移動体、前記ベース部材及び前記シール部材の間に形成された前記空間の流体を排出する流体排出手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
この場合、前記浮揚流体供給手段と前記流体排出手段は、流体の供給又は排出を行う共通の流体給排口を有しても良い。
【0011】
また、本発明の着脱機構は、移動体をベース部材に吸着固定するための着脱機構であって、前記移動体と前記ベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、前記移動体又は前記ベース部材に設けられ、前記シール部材を収納するための収納溝と、前記シール部材を前記収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、前記移動体、前記ベース部材及び前記シール部材の間に形成された前記空間内の流体を排出する流体排出手段と、を具備することを特徴とする。
【0012】
この場合、前記空間内に流体を供給する流体供給手段を具備しても良い。
【発明の効果】
【0013】
本発明の着脱機構は、流体排出手段による吸引力と押圧手段による押圧力によって、シール部材を移動体とベース部材との間に密着させることができるので、移動体とベース部材の間を確実にシールして吸着固定することができる。また、吸着固定をしていない時には、シール部材が収納溝内に収納されるため、エアベアリングと共に用いても、ベース部材に対する移動体の移動を円滑に行うことができる。したがって、この着脱機構をインプリント装置等のアライメント機構に用いることにより、位置合わせと固定を非常に簡単に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の着脱機構の吸着時の状態を示す概略断面図である。
【図2】本発明の着脱機構の吸着解除時の状態を示す概略断面図である。
【図3】本発明の別の着脱機構を示す概略断面図である。
【図4】本発明のアライメント機構を示す概略断面図である。
【図5】本発明のインプリント装置を示す概略断面図である。
【図6】移動用定盤を示す概略平面図である。
【図7】X−Y方向移動体を示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の着脱機構は、図1に示すように、移動体2をベース部材1に吸着固定するためのものであって、移動体2とベース部材1との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材3と、移動体2又はベース部材1に設けられ、シール部材3を収納するための収納溝4と、シール部材3を収納溝4内で移動させるためのシール部材移動手段5と、移動体2、ベース部材1及びシール部材3の間に形成された空間内の流体を排出する流体排出手段6と、で主に構成される。
【0016】
ここで移動体2とは、ベース部材1に対して移動可能なものを指し、ベース部材1は、移動体2を固定するものを指す。例えば、アライメント機構であれば、位置の調節時にベース部材1に対して移動体2を移動して位置を変え、位置を決定した時には、ベース部材1に対し移動体2を固定することになる。
【0017】
シール部材3は、移動体2とベース部材1との間をシールし閉じた空間を形成できるものであればどのようなものでも良く、例えば、弾性力のあるOリングを環状にしたものを用いれば良い。また、着脱機構が移動体2を固定する吸着力は、Oリングで囲まれた環の大きさ(面積)によって決まるため、当該Oリングの環の大きさ(面積)は、着脱機構が移動体2を固定する際に必要な吸着力に応じて適宜決定すれば良い。
【0018】
収納溝4は、シール部材3を収納できると共に、シール部材移動手段5によってシール部材3を開口部41側に移動できる大きさに形成されればどのような形状でも良く、例えば、断面矩形状やU字状に形成される。また、シール部材3と同様に、ベース部材1又は移動体2に環状に形成される。なお、収納溝4は、図1に示すようにベース部材1側に設けても良いし、図3に示すように移動体2側に設けても良い。
【0019】
シール部材移動手段5は、収納溝4内に配置されたシール部材3を収納溝4内の開口部41側と底部42側との間で移動させ、移動体2とベース部材1との間を密閉したり開放したりするためのものである。シール部材移動手段5としては、例えば、収納溝4内に流体圧を負荷することによりシール部材3を収納溝4の開口部41側と底部42側との間で移動させる流体圧負荷手段や、電磁石等の磁力によりシール部材3を収納溝4の開口部41側と底部42側との間で移動させる磁力負荷手段等を用いることができる。もちろん、シール部材移動手段5は、収納溝4内に配置されたシール部材3を収納溝4内の開口部41側と底部42側との間で移動させることができれば、これ以外のものを用いることも可能である。
【0020】
流体圧負荷手段を用いる場合には、例えば、収納溝4の底部42に収納溝4内へ気体を供給する収納溝部気体供給口を設け、当該収納溝部気体供給口に接続されたエアコンプレッサーや圧縮ボンベ等の収納溝部給気手段51を調節して空気等の気体を供給する。これにより、収納溝4とシール部材3との間が加圧され、シール部材3を開口部41側に移動することができる。また、収納溝4の底部42に収納溝4内の気体を排気する収納溝部気体排気口を設け、当該収納溝部気体排気口に接続された真空ポンプ等の収納溝部排気手段52を調節して空気等の気体を排気する。これにより、収納溝4とシール部材3との間が減圧され、シール部材3を底部42側に移動することができる。収納溝4とシール部材3の大きさは、収納溝4内をシール部材3が移動でき、かつ収納溝4内で気体の供給又は排気を行った際に、気体が漏れない大きさが望ましい。なお、収納溝部気体供給口と収納溝部気体排気口は、それぞれ独立して設けても良いが、図1に示すように、気体の供給又は排出を行う共通の収納溝部気体給排口53を設けても良い。
【0021】
また、磁力負荷手段を用いる場合には、図示しないが、例えば、シール部材3に固定された永久磁石と、収納溝4の底部42側に配置され、当該永久磁石を引力又は斥力によって移動させる電磁石を用いれば良い。これにより、永久磁石と電磁石を反発させればシール部材3が収納溝4内を開口部41側に移動して、ベース部材1と移動体2の間を密閉することができる。また、電磁石で永久磁石を引き寄せ、シール部材3が収納溝4内を底部42側に移動すれば、ベース部材1と移動体2の間が開放される。
【0022】
流体排出手段6は、ベース部材1、移動体2及びシール部材3の間に形成された空間内の流体を排出することにより、移動体2をベース部材1に吸着固定するためのものである。例えば、空間内の空気を排出するには、移動体2又はベース部材1のシール部材3で囲まれている部分に排気口を形成し、当該排気口に接続された真空ポンプ等の排気手段を用いて減圧すれば良い。また、流体排出手段6は、図1に示すようにベース部材1側に設けても良いし、図3に示すように移動体2側に設けても良い。
【0023】
なお、ベース部材1に固定した移動体2を簡単に脱離させるために、空間内に流体を供給する脱離用流体供給手段7を設けるようにしても良い。例えば移動体2又はベース部材1のシール部材3で囲まれる面に脱離用気体供給口を設け、当該脱離用気体供給口に接続されたエアコンプレッサーや圧縮ボンベ等を調節して空気等の気体を供給するものを用いることができる。また、流体排出手段6の排気口と流体供給手段7の脱離用気体供給口は、それぞれ独立して設けても良いが、流体の供給又は排出を行う共通の流体給排口61を設けても良い。例えば、気体の供給を行う脱離用気体供給口と、気体の排出を行う排気口とを共通にした気体給排口61を設け、これに給気手段と排気手段とを接続すれば良い。
【0024】
このように構成された着脱機構は、ベース部材1に対して移動体2を固定する場合には、まず、流体排出手段6を作動させて、ベース部材1と移動体2の間に存在する空気等の気体を排気する。次に、収納溝部給気手段51を調節して空気等の気体を収納溝4に供給すると、シール部材3が収納溝4内を底部42側から開口部41側に移動する。すると、シール部材3は、収納溝4内の加圧力と流体排出手段6の吸引力によって、ベース部材1と移動体2の間を密閉し、ベース部材1及び移動体2の間に形成された空間内の流体が排出される。これにより、移動体2は、ベース部材1に確実に固定される(図1参照)。
【0025】
また、ベース部材1と移動体2を脱離する場合には、流体排出手段6を停止し、収納溝部排気手段52を調節して空気等の気体を収納溝4内から排気すると、シール部材3が収納溝4内を開口部41側から底部42側に移動する。すると、ベース部材1及び移動体2の間に形成された空間内に気体が侵入し、吸着力が解除される。(図2参照)。なお、この際、脱離用流体供給手段7を用いて、空間内に流体を供給するようにしても良い。
【0026】
次に、図4を用いて、本発明のアライメント機構について説明する。本発明のアライメント機構は、移動体2とベース部材1の位置を調節するためのものであって、移動体2をベース部材1に対して浮揚させるために、移動体2とベース部材1の間に流体を供給する浮揚流体供給手段8と、移動体2の位置を変えるための変位手段9と、移動体2をベース部材1に吸着固定するための着脱機構と、で主に構成される。また、着脱機構は、移動体2をベース部材1に吸着固定するためのものであって、移動体2とベース部材1との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材3と、移動体2又はベース部材1に設けられ、シール部材3を収納するための収納溝4と、シール部材3を収納溝4内で移動させるためのシール部材移動手段5と、移動体2、ベース部材1及びシール部材3の間に形成された空間内の流体を排出する流体排出手段6と、で主に構成される。ここで、着脱機構については、上述した本発明の着脱機構と同様の構成であるので、同一の部分には同一符号を付して説明は省略する。
【0027】
浮揚流体供給手段8は、移動体2をベース部材1に対して浮揚させ、移動体2をベース部材1に対してスムーズに移動させることができるものであればどのようなものでも良く、例えばエアベアリングのように移動体2又はベース部材1のいずれか一方又は両方に1以上の浮揚気体供給口を設け、当該浮揚気体供給口に接続されたエアコンプレッサーや圧縮ボンベ等を調節して空気等の気体を供給するものを用いることができる。この浮揚流体供給手段8は、浮揚気体供給口を移動体2又はベース部材1のシール部材3で囲まれる面に設ければ、ベース部材1に固定した移動体2を脱離させるために用いることも可能である。
【0028】
また、流体排出手段6と浮揚流体供給手段8は、それぞれ独立して設けても良いが、流体の供給又は排出を行う共通の流体給排口を設けても良い。例えば、流体の供給を行う浮揚気体供給口と、流体の排出を行う排気口とを共通にした気体給排口81を設け、これに給気手段と排気手段とを接続すれば良い。
【0029】
変位手段9は、流体供給手段8によって浮揚させた移動体2の位置を変えるためのもので、例えば、精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に応じた直線方向の変位を調節することができるマイクロメーター98と、マイクロメーター98が移動体2を押す方向と対向する方向(図4では、ばねの引張方向)に弾性力を付勢するばね99を用いることができる。これにより、マイクロメーター98を調節することで、移動体2を一定方向に変位させることができる。この場合、移動体2を一定方向に案内するリニアガイド等の移動方向案内手段を用いれば、より正確に一定方向に変位させることができる。また、このマイクロメーターとばねの組み合わせを2組用いることにより、移動体2を平面方向に自由に変位させることができる。また、ベース部材1の中央部に回転軸となるピボットを設け、対向する移動体2に当該ピボットと係合する穴を形成し、マイクロメーターとばねを用いて回転させても良い。これにより移動体2をベース部材1に対して回転方向に変位させることもできる。もちろん、移動体2側にピボットを設けベース部材1側に穴を設けることも可能である。
【0030】
また、移動体をベース部材として更にその上に別の移動体を設けることも可能である。例えば、ベース部材上にX-Y方向移動体を設けて、X-Y方向移動体をベース部材に対して平面方向に変位させることができるアライメント機構を形成する。そして、更にθ方向移動体をX-Y方向移動体上に配置して、θ方向移動体をX-Y方向移動体に対して回転方向に変位させることができるアライメント機構を形成する。これにより、複数方向への変位を可能とすることができる。また、第1の移動体で粗い位置調整を行い、第2の移動体で微細な位置調整を行うようにしても良い。
【0031】
このように構成されたアライメント機構において位置を調節する場合には、着脱機構の収納溝部排気手段52を調節して空気等の気体を収納溝4内から排気する。すると、シール部材3が収納溝4内を開口部41側から底部42側に移動する。次に、浮揚流体供給手段8を作動させて、流体給排口81から気体を供給し、移動体2をベース部材1に対して浮揚させる。その後、マイクロメーター98を調節することにより、移動体2をマイクロメーター98の押圧方向又はばね99の引張方向に変位させればよい。また、位置を決定したい場合には、浮揚流体供給手段8を停止し、流体排出手段6を作動させて、ベース部材1と移動体2の間に存在する空気等の気体を排気する。次に、収納溝部給気手段51を調節して空気等の気体を収納溝4に供給すると、シール部材3が収納溝4内を底部42側から開口部41側に移動する。すると、シール部材3は、収納溝4内の加圧力と流体排出手段6の吸引力によって、ベース部材1と移動体2の間を密閉し、ベース部材1及び移動体2の間に形成された空間内の気体が排出される。これにより、移動体2は、ベース部材1に固定され、位置決めが完了する(図4参照)。
【0032】
次に、本発明のインプリント装置について説明する。本発明のインプリント装置は、型のパターンを被成型物に転写するためのものであって、型又は被成形物を保持するための移動体と、前記移動体を載置するベース部材と、移動体をベース部材に対して浮揚させるために、移動体とベース部材の間に流体を供給する浮揚流体供給手段と、移動体をベース部材に吸着固定するための着脱機構と、で主に構成される。また、着脱機構は、移動体をベース部材に吸着固定するためのものであって、移動体とベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、移動体又はベース部材に設けられ、シール部材を収納するための収納溝と、シール部材を収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、移動体、ベース部材及びシール部材の間に形成された空間内の流体を排出する流体排出手段と、で主に構成される。
【0033】
まず、一般的なインプリント装置について説明する。インプリント装置には、熱エネルギーを利用して、型のパターンを少なくとも転写面が熱可塑性樹脂からなる被成形物に転写する熱インプリント装置と、光エネルギーを利用して、型のパターンを少なくとも転写面が光硬化性樹脂からなる被成形物に転写する光インプリント装置とがある。
【0034】
熱インプリント装置は、型を保持する型保持部と、被成形物を保持する被成形物保持部と、型又は被成形物を加熱する加熱手段と、型と被成形物を加圧する加圧手段と、で主に構成される。また、これに型又は被成形物を冷却する冷却手段や、型と被成形物を離型する離型手段を有するものもある。
【0035】
光インプリント装置は、型を保持する型保持部と、被成形物を保持する被成形物保持部と、被成形物に光を照射する光照射手段と、型と被成形物を加圧する加圧手段と、で主に構成される。また、これに型又は被成形物を加熱する加熱手段や、型と被成形物を離型する離型手段を有するものもある。
【0036】
このようなインプリント装置においては、アライメント機構を用いて、被成形物に対し、型のパターンを転写する位置を調節する場合がある。その場合には、少なくとも上述した型保持部と被成形物保持部のいずれか一方を載置する移動体をベース部材に対して変位させる本発明のアライメント機構を適用すれば良い。
【0037】
以下に、本発明のアライメント機構を二つ適用し、X,Y,θ方向の位置を調節するインプリント装置について、図5〜図7を用いて具体的に説明する。
【0038】
ベース部材11は、図5に示すように、平面状の第1ベース部材11Aと、第1のベース部材よりも平面方向の大きさが小さい正方形状に形成された第2ベース部材11Bとで構成されており、その上面側に第2ベース部材11Bよりも平面方向の大きさが大きい略八角形状のX-Y方向移動体21が配置される。また、ベース部材11の上面には、X-Y方向移動体21とベース部材11との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材3Aと、シール部材3Aを収納するための収納溝4Aと、X-Y方向移動体21とベース部材11の間に気体を供給したり、X-Y方向移動体21とベース部材11の間の気体を排気する気体給排口81Aが設けられている。
【0039】
また、ベース部材11には、シール部材3Aを収納溝4A内で移動させるための第1流体圧負荷手段(シール部材移動手段)が設けられている。第1流体圧負荷手段は、収納溝4Aの底部に収納溝4A内の気体を供給又は排気する収納溝部気体給排口を設け、当該収納溝部気体給排口に接続されたエアコンプレッサー(収納溝部給気手段)を調節して空気等の気体を供給したり、真空ポンプ等の収納溝部排気手段を調節して気体を排気する。これにより、収納溝4Aとシール部材3Aとの間が加圧又は減圧され、シール部材3Aを開口部側と底部側との間で移動させることができる。
【0040】
また、気体給排口81Aは、X-Y方向移動体21をベース部材11に対して浮揚させるために、X-Y方向移動体21とベース部材11の間に流体を供給する第1浮揚流体供給手段(図示せず)と、X-Y方向移動体21、ベース部材11及びシール部材3Aの間に形成された空間内の気体を排気する第1の流体排出手段(図示せず)に接続されている。
【0041】
また、第1ベース部材11AとX-Y方向移動体21の間には、ベース部材11に対してX-Y方向移動体21を図6のX方向及びY方向に任意の距離移動させるための第1の変位手段が配置される。第1の変位手段は、移動用定盤20と、X方向リニアガイド91と、X方向マイクロメーター92と、X方向ばね93と、Y方向リニアガイド94と、Y方向マイクロメーター95と、Y方向ばね(図示せず)と、で主に構成される。
【0042】
移動用定盤20は、外形がX-Y方向移動体21と略同形で、中央部に第2ベース部材11Bを挿入可能な穴を有する。また、移動用定盤20は、第1ベース部材11Aに固定されたX方向リニアガイド91と下面側で連結されており、図6のX方向にのみ移動可能である。また、第1ベース部材11Aに固定され、精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に応じたX方向の変位を移動用定盤20に与えることができるX方向マイクロメーター92と、X方向マイクロメーター92が移動用定盤20を押す方向と対向する方向に弾性力を付勢するX方向ばね93とによって、移動用定盤20及びこれに連結されたX-Y方向移動体21を精密にX方向に変位させることができる。
【0043】
また、移動用定盤20は、Y方向リニアガイド94が上面側に固定されており、当該Y方向リニアガイド94上には、X-Y方向移動体21が連結されている。これにより、X-Y方向移動体21は、移動用定盤20に対して図6のY方向にのみ移動する。また、移動用定盤20に固定され、精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に応じたY方向の変位をX-Y方向移動体21に固定された当接ブロック96を介してX-Y方向移動体21に与えることができるY方向マイクロメーター95と、Y方向マイクロメーター95がX-Y方向移動体21を押す方向と対向する方向に弾性力を付勢するY方向ばね(図示せず)とによって、X-Y方向移動体21を精密にY方向に変位させることができる。
【0044】
X-Y方向移動体21の上面には、X-Y方向移動体21とθ方向移動体22との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材3Bと、シール部材3Bを収納するための収納溝4Bと、X-Y方向移動体21とθ方向移動体22の間に気体を供給したり、X-Y方向移動体21とθ方向移動体22の間の気体を排気する気体給排溝81Bが設けられている。
【0045】
また、X-Y方向移動体21には、シール部材3Bを収納溝4B内で移動させるための第2流体圧負荷手段(シール部材移動手段)が設けられている。第2流体圧負荷手段は、収納溝4Bの底部に収納溝4B内の気体を供給又は排気する収納溝部気体給排口を設け、当該収納溝部気体給排口に接続されたエアコンプレッサー(収納溝部給気手段)を調節して空気等の気体を供給したり、真空ポンプ等の収納溝部排気手段を調節して気体を排気する。これにより、収納溝4Bとシール部材3Bとの間が加圧又は減圧され、シール部材3Bを開口部側と底部側との間で移動させることができる。
【0046】
また、気体給排溝81Bは、θ方向移動体22をX-Y方向移動体21に対して浮揚させるために、θ方向移動体22とX-Y方向移動体21の間に流体を供給する第2浮揚流体供給手段(図示せず)と、θ方向移動体22、X-Y方向移動体21及びシール部材3Bの間に形成された空間内の気体を排気する第2の流体排出手段(図示せず)に接続されている。
【0047】
また、X-Y方向移動体21の上面側中央部にはピボット110が形成され、θ方向移動体22の下面側中央部には、当該ピボット110と係合する穴が形成される。これにより、θ方向移動体22は、ピボット110を回転軸として、図7のθ方向に回転することができる。
【0048】
また、X-Y方向移動体21とθ方向移動体22の間には、X-Y方向移動体21に対してθ方向移動体22を図7のθ方向に任意の角度回転させるための変位手段が配置される。第2の変位手段は、θ方向マイクロメーター112とθ方向ばね113とで主に構成される。θ方向マイクロメーター112は、X-Y方向移動体21に固定され、精密なねじ機構を使って、ねじの回転角に応じたθ方向の変位をθ方向移動体22に固定された当接ブロック111を介してθ方向移動体22に与えることができる。また、θ方向ばね113は、θ方向マイクロメーター112がθ方向移動体22を回転させる方向と逆方向に弾性力を付勢する。これにより、θ方向移動体22を精密にθ方向に変位させることができる。
【0049】
このθ方向移動体22の上部には、被成形物200を保持するための被成形物保持手段201が固定されている。また、型100を保持する型保持手段101は、図示しないがベース部材11に対してX方向、Y方向、θ方向の位置が固定可能に形成されている。したがって、X方向マイクロメーター92、Y方向マイクロメーター95、θ方向マイクロメーター112を調節することによって、被成形物保持手段201に保持された被成形物200と、型保持手段101に保持された型100の位置合わせを正確に行うことができる。
【0050】
なお、インプリント装置によっては、型100又は被成形物200の周囲の雰囲気を制御するために、型100及び被成形物200を内包すると共にθ方向移動体22上に形成される減圧用筐体300と、減圧用筐体300内の減圧室を外部の雰囲気の圧力以下に減圧するための減圧手段とを具備する場合がある。この場合には、減圧用筐体300がθ方向移動体22、更には当該θ方向移動体22と固定されているX−Y方向移動体21を吸着してしまい、位置ずれを生じるおそれがある。そこで、減圧用筐体300がθ方向移動体22を吸着する力より、θ方向移動体22とX−Y方向移動体21の間に働く吸着力及びX−Y方向移動体21の上面に加わる重力の和が大きくなるように形成する必要がある。同様に、減圧用筐体300がθ方向移動体22を吸着する力より、X−Y方向移動体21と第2ベース部材11Bの間に働く吸着力及び第2のベース部材11Bの上面に加わる重力の和が大きくなるように形成する必要がある。
【0051】
次に上述したインプリント装置のアライメント方法について説明する。
【0052】
位置を調節する前には、第1の流体排出手段の作動によって第2ベース部材11BとX−Y方向移動体21の間の気体が気体給排口81Aから排気されている。また、第1流体圧負荷手段の作動により、収納溝4A内に気体が供給されて加圧され、シール部材3AがX−Y方向移動体21側に押圧されている。これにより、X−Y方向移動体21は第2ベース部材11Bに吸着固定されている。
【0053】
また、第2の流体排出手段の作動によってX−Y方向移動体21とθ方向移動体22の間の気体が気体給排溝81Bから排気されている。また、第2流体圧負荷手段の作動により、収納溝4B内に気体が供給されて加圧され、シール部材3Bがθ方向移動体22側に押圧されている。これにより、θ方向移動体22はX−Y方向移動体21に吸着固定されている。
【0054】
X−Y方向の位置を調節する際には、第1流体圧負荷手段の作動により、収納溝4A内の気体を排気して減圧し、シール部材3Aを収納溝4A内に収納する。次に、第1浮揚流体供給手段の作動によって第2ベース部材11BとX−Y方向移動体21の間に空気等の気体が気体給排口81Aから供給され、第2ベース部材11Bに対しX−Y方向移動体21が浮揚する。ここで、X方向マイクロメーター92及びY方向マイクロメーター95を調節すると、X−Y方向移動体21及びその上に固定されているθ方向移動体22及び被成形物保持手段210がX方向又はY方向に移動し、型100に対する被成形物200のX−Y方向の位置を調節することができる。
【0055】
X−Y方向の位置を調節したら、第1浮揚流体供給手段の作動を停止し、第1の流体排出手段を作動させ、第2ベース部材11BとX−Y方向移動体21の間の気体を気体給排口81Aから排気する。また、第1流体圧負荷手段が作動し、収納溝4A内に気体が供給されて加圧され、シール部材3AがX−Y方向移動体21側に押圧される。これにより、X−Y方向移動体21は第2ベース部材11Bに吸着固定されX−Y方向の位置が固定される。
【0056】
θ方向の位置を調節する際には、第2流体圧負荷手段の作動により、収納溝4B内の気体を排気して減圧し、シール部材3Bを収納溝4B内に収納する。次に、第2浮揚流体供給手段の作動によってX−Y方向移動体21とθ方向移動体22の間に空気等の気体が気体給排溝81Bから供給され、X−Y方向移動体21に対しθ方向移動体22が浮揚する。ここで、θ方向マイクロメーター112を調節すると、θ方向移動体22及びその上に固定されている被成形物保持手段210がθ方向に回転し、型100に対する被成形物200のθ方向(ピボット110を軸とする回転方向)の位置を調節することができる。
【0057】
θ方向の位置を調節したら、第2浮揚流体供給手段の作動を停止し、第2流体排出手段を作動させ、X−Y方向移動体21とθ方向移動体22の間の気体を気体給排溝81Bから排気する。また、第2流体圧負荷手段が作動し、収納溝4B内に気体が供給されて加圧され、シール部材3Bがθ方向移動体22側に押圧される。これにより、θ方向移動体22はX−Y方向移動体21に吸着固定されθ方向の位置が固定される。
【符号の説明】
【0058】
1 ベース部材
2 移動体
3 シール部材
4 収納溝
5 シール部材移動手段
6 流体排出手段
7 脱離用流体供給手段
8 浮揚流体供給手段
9 変位手段
61 流体給排口
81 流体給排口
100 型
200 被成形物
300 減圧用筐体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型のパターンを被成型物に転写するためのインプリント装置であって、
前記型又は前記被成形物を保持する移動体と、
前記移動体を載置するベース部材と、
前記移動体を前記ベース部材に対して浮揚させるために、前記移動体と前記ベース部材の間に流体を供給する浮揚流体供給手段と、
前記移動体の位置を変えるための変位手段と、
前記移動体と前記ベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、前記移動体又は前記ベース部材に設けられ、前記シール部材を収納するための収納溝と、前記シール部材を前記収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、前記移動体、前記ベース部材及び前記シール部材の間に形成された前記空間の流体を排出する流体排出手段と、を有し、前記移動体を前記ベース部材に吸着固定するための着脱機構と、
を具備することを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記型及び前記被成形物を内包すると共に前記移動体上に形成される減圧室用筐体と、当該減圧室用筐体内の減圧室を外部の雰囲気の圧力以下に減圧する減圧手段とを有し、前記着脱機構による前記移動体と前記ベース部材との間の吸着力および前記移動体の自重による力の和が、前記減圧室による移動体の吸着力よりも大きく形成されることを特徴とする請求項1記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記浮揚流体供給手段と前記流体排出手段は、流体の供給又は排出を行う共通の流体給排口を有することを特徴とする請求項1又は2記載のインプリント装置。
【請求項4】
ベース部材に対する移動体の位置を調節するためのアライメント機構であって、
前記移動体を前記ベース部材に対して浮揚させるために、前記移動体と前記ベース部材の間に流体を供給する浮揚流体供給手段と、
前記移動体の位置を変えるための変位手段と、
前記移動体と前記ベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、前記移動体又は前記ベース部材に設けられ、前記シール部材を収納するための収納溝と、前記シール部材を前記収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、前記移動体、前記ベース部材及び前記シール部材の間に形成された前記空間の流体を排出する流体排出手段と、を有し、前記移動体を前記ベース部材に吸着固定するための着脱機構と、
を具備することを特徴とするアライメント機構。
【請求項5】
前記浮揚流体供給手段と前記流体排出手段は、流体の供給又は排出を行う共通の流体給排口を有することを特徴とする請求項4記載のアライメント機構。
【請求項6】
移動体をベース部材に吸着固定するための着脱機構であって、
前記移動体と前記ベース部材との間をシールし閉じた空間を形成するためのシール部材と、
前記移動体又は前記ベース部材に設けられ、前記シール部材を収納するための収納溝と、
前記シール部材を前記収納溝内で移動させるためのシール部材移動手段と、
前記移動体、前記ベース部材及び前記シール部材の間に形成された前記空間内の流体を排出する流体排出手段と、
を具備することを特徴とする着脱機構。
【請求項7】
前記空間内に流体を供給する脱離用流体供給手段を具備することを特徴とする請求項6記載の着脱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−59850(P2012−59850A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200477(P2010−200477)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(504097823)SCIVAX株式会社 (31)
【出願人】(394026150)日研プラント株式会社 (2)
【Fターム(参考)】