説明

インプリント装置及び方法

【課題】被転写基板からテンプレートを離型する際の被転写基板の脱離を抑制することが可能なインプリント装置及び方法を提供する。
【解決手段】インプリント装置は、インプリント用のテンプレート101を保持するテンプレート保持部と、前記テンプレートを、被転写基板201上の光硬化樹脂202に押印するよう移動させる、又は前記光硬化樹脂から離型するよう移動させるテンプレート移動部を備える。更に、前記装置は、前記光硬化樹脂に光を照射して、前記光硬化樹脂を硬化する光源114を備える。更に、前記装置は、前記テンプレートを前記光硬化樹脂から離型する際に、前記テンプレートの離型速度又は離型角度を、前記テンプレートが離型されるショット領域の位置に基づいて制御する離型制御部を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、インプリント装置及び方法に関し、例えば、ステップ・アンド・リピート方式のインプリント装置及び方法に適用されるものである。
【背景技術】
【0002】
ナノインプリント方法では、所望のパターンを持つテンプレートを用意し、ウェハ(被転写基板)上に形成されたインプリント材にテンプレートを押印する。そして、インプリント材にテンプレートを押印した状態でインプリント材を露光により硬化することで、インプリント材にパターンを転写する。
【0003】
この方法では、ウェハとテンプレートがインプリント材を介して接着されるため、テンプレートをウェハから引き剥がす(離型する)のに、強い力が必要となる。一方、ステップ・アンド・リピート方式でウェハ全面にインプリントするインプリント装置では、ウェハの外周付近でのウェハチャック力が、ウェハの中心付近でのウェハチャック力よりも弱くなっている。
【0004】
そのため、ウェハの外周付近からテンプレートを引き剥がす際、テンプレートを引き剥がすための強い力により、ウェハがウェハチャックから脱離してしまうことがある。これは、ナノインプリント方法を量産に適用する上で問題となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報US2009/0045539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、被転写基板からテンプレートを離型する際の被転写基板の脱離を抑制することが可能なインプリント装置及び方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様のインプリント装置は、例えば、インプリント用のテンプレートを保持するテンプレート保持部と、前記テンプレートを、被転写基板上の光硬化樹脂に押印するよう移動させる、又は前記光硬化樹脂から離型するよう移動させるテンプレート移動部を備える。更に、前記装置は、前記光硬化樹脂に光を照射して、前記光硬化樹脂を硬化する光源を備える。更に、前記装置は、前記テンプレートを前記光硬化樹脂から離型する際に、前記テンプレートの離型速度又は離型角度を、前記テンプレートが離型されるショット領域の位置に基づいて制御する離型制御部を備える。
【0008】
また、本発明の別の態様のインプリント方法では、インプリント用のテンプレートを、被転写基板上の光硬化樹脂に押印し、次に、前記テンプレートを前記光硬化樹脂に押印した状態で前記光硬化樹脂に光を照射して、前記光硬化樹脂を硬化する。更に、前記方法では、前記テンプレートの離型速度又は離型角度を、前記テンプレートが離型されるショット領域の位置に基づいて制御しつつ、前記テンプレートを前記光硬化樹脂から離型する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態のナノインプリント装置の構成を示す側方断面図である。
【図2】第1実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【図3】第2実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【図4】第2実施形態におけるナノインプリント方法について説明するためのフローチャートである。
【図5】第3実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【図6】テンプレートの離型角度について説明するための側方断面図である。
【図7】第4実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【図8】第5実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【図9】第6実施形態におけるナノインプリント方法について説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態のナノインプリント装置の構成を示す側方断面図である。
【0012】
図1のナノインプリント装置は、テンプレートステージ111と、ベース112と、アライメントセンサ113と、UV(ultraviolet)光源114と、CCD(charge coupled device)カメラ115と、レジスト滴下装置116と、試料ステージ211と、試料チャック212とを備える。
【0013】
試料ステージ211は、被転写基板であるウェハ201をセットするためのステージである。ウェハ201は、真空チャック等の試料チャック212によりチャックされることで、試料ステージ211上に固定される。図1では、ウェハ201上に、光硬化樹脂であるレジスト材202が形成されている。ナノインプリント用のレジスト材202は、インプリント材とも呼ばれる。
【0014】
テンプレートステージ111は、ナノインプリント用のテンプレート101を保持するためのステージである。図1のナノインプリント装置は、テンプレートステージ111を上下移動させることで、テンプレート101を、レジスト材202に押印することや、レジスト材202から離型することが可能である。テンプレートステージ111は、本開示のテンプレート保持部及びテンプレート移動部の例である。テンプレートステージ111は、その上方に位置するベース112に取り付けられている。
【0015】
図1では、テンプレート101に設けられた凹凸パターンが、Pで示されている。テンプレート101は、凹凸パターンPが設けられた面が下面、その逆面が上面となるよう、テンプレートステージ111にセットされる。
【0016】
アライメントセンサ113は、テンプレート101上のアライメントマークや、ウェハ201上のアライメントマークを検出するためのセンサである。
【0017】
UV光源114は、レジスト材202にUV光を照射して、レジスト材202を硬化するための光源である。図1のナノインプリント装置では、テンプレート101をレジスト材202に押印した状態でレジスト材202にUV光を照射して、レジスト材202を硬化することで、ウェハ201上にレジストパターンを形成する。その後、図1のナノインプリント装置では、テンプレート101がレジスト材202から離型される。
【0018】
本実施形態で使用する光源は、レジスト材202を硬化することが可能な光を発生する光源であれば、UV光源以外の光源であっても構わない。
【0019】
また、CCDカメラ115は、テンプレート101をモニタリングするためのカメラである。また、レジスト滴下装置116は、ウェハ201上にレジストを滴下するための装置である。
【0020】
なお、本実施形態のテンプレート101は、アライメントマークの検出、ウェハ201へのUV光の照射、及びテンプレート101のモニタリングを可能とするため、石英等の透明部材で形成されている。
【0021】
図1のナノインプリント装置は更に、離型制御機構121と、離型制御用演算装置122と、ショット順設定部131とを備える。
【0022】
離型制御機構121は、テンプレートステージ111による離型動作を制御する機構であり、レジスト材202からテンプレート101を離型する際に、テンプレート101の離型速度や離型角度を制御する。離型制御用演算装置122は、これら離型速度や離型角度を演算する装置である。離型制御機構121及び離型制御用演算装置122は、本開示の離型制御部の例である。
【0023】
ショット順設定部131は、ウェハ201上の各ショット領域のショット順を設定するブロックである。図1のナノインプリント装置は、このショット順に従ってテンプレートステージ111を移動させ、各ショット領域へのインプリントを行う。ショット順設定部131の詳細は、後述する第6実施形態にて説明する。
【0024】
以下、第1実施形態においてテンプレートステージ111、離型制御機構121、及び離型制御用演算装置122により行われる離型動作について詳細に説明する。
【0025】
図2は、第1実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【0026】
図2には、ウェハ201を上方から見た様子が示されている。図2では、ウェハ201上の中心点がCで示され、ウェハ201のエッジがEで示されている。ウェハ201は、おおむね円形の平面形状を有しており、中心点Cは円の中心、エッジEは円の円周に相当する。
【0027】
図2では更に、ウェハ201上のショット領域がRで示されている。本実施形態のナノインプリント装置は、ウェハ201上へのパターン形成を、ショット領域Rを単位として行う。図2には、一例として、32個のショット領域Rが図示されている。
【0028】
本実施形態の離型制御用演算装置122は、レジスト材202からテンプレート101を離型する際に、テンプレート101の離型速度又は離型角度を、テンプレート101が離型されるショット領域Rの位置に基づいて決定する。例えば、点P1に位置するショット領域Rに関しては、離型速度をV1に設定し、点P2に位置するショット領域Rに関しては、離型速度をV2に設定するといった具合である。
【0029】
そして、本実施形態の離型制御機構121は、テンプレート101の離型速度又は離型角度を、決定された離型速度又は離型角度に制御する。これにより、テンプレート101は、この離型速度又は離型角度のもとで、レジスト材202から離型される。
【0030】
ショット領域Rの位置は、例えば、ショット領域Rのインプリント座標により表すことが可能である。ショット領域Rのインプリント座標は、ウェハ201の面内方向におけるショット領域Rの座標に相当する。
【0031】
ここで、このような離型動作の効果について説明する。
【0032】
上述のように、ステップ・アンド・リピート方式のナノインプリント装置では、ウェハ201の外周付近でのウェハチャック力が、ウェハ201の中心付近でのウェハチャック力よりも弱くなっている。そのため、ウェハ201の外周付近からテンプレート101を離型する際、ウェハ201が試料チャック212から脱離してしまうことがある。
【0033】
このことは、ウェハ201の全面において、テンプレート101の離型速度を遅くすることで防止することが可能である。しかしながら、ウェハ201の全面で離型速度を遅くすると、パターン形成のスループットが低下してしまう。
【0034】
そこで、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、テンプレート101が離型されるショット領域Rの位置に基づいて制御する。これにより、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、各ショット領域Rごとに最適化することが可能となる。
【0035】
本実施形態では例えば、ウェハ201が脱離しやすい、ウェハ201の外周付近のショット領域Rにおける離型速度のみを、選択的に低下させることができる。これにより、パターン形成のスループットの低下を最小限に抑えつつ、ウェハ201の脱離を防止することが可能となる。
【0036】
なお、ウェハ201の脱離は、テンプレート101の離型角度の調整によっても防止することが可能である。離型角度の調整方法の具体例については、後述する第3実施形態で説明する。一方、離型速度の調整方法の具体例については、後述する第2実施形態等で詳細に説明する。
【0037】
以上のように、本実施形態では、テンプレート101の離型速度又は離型角度を、テンプレート101が離型されるショット領域Rの位置に基づいて制御する。これにより、本実施形態では、テンプレート101の離型速度又は離型速度を、各ショット領域Rごとに最適化することが可能となる。本実施形態によれば例えば、パターン形成のスループットの低下を抑制しつつ、ウェハ201の脱離を抑制することが可能となる。
【0038】
以下、第1実施形態の変形例である第2から第6実施形態について説明する。第2から第6実施形態については、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0039】
(第2実施形態)
図3は、第2実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【0040】
図3では、ウェハ201のエッジE上に位置するショット領域Rが、RE1で示され、エッジEの内側に位置するショット領域Rが、RE2で示されている。エッジE上に位置するショット領域RE1は、欠けショットと呼ばれる。
【0041】
ここで、欠けショットにおける離型動作について説明する。
【0042】
ウェハ201のエッジEは、ウェハ201とテンプレート101がレジスト材202で接着されている箇所と、接着されていない箇所の境界に位置する。よって、欠けショットにおける離型動作の際には、ウェハ201に掛かる力が不均等になり、ウェハ201が試料チャック212から浮きやすい。その結果、浮いた部分から真空が破れ、ウェハ201が脱離してしまう。
【0043】
そこで、本実施形態では、ウェハ201のエッジE上に位置するショット領域RE1における離型速度を、エッジEの内側に位置するショット領域RE2における離型速度よりも遅い速度に設定する。即ち、欠けショットにおける離型速度を、選択的に低下させる。
【0044】
これにより、本実施形態では、欠けショットにおける離型動作の際に、ウェハ201に掛かる力の偏りを減らすことができ、その結果、ウェハ201が試料チャック212から浮くことを防ぐことができる。これにより、本実施形態では、真空の破れの発生を防ぎ、ウェハ201の脱離を防止することが可能となる。
【0045】
図4は、第2実施形態におけるナノインプリント方法について説明するためのフローチャートである。図4の説明中で登場するナノインプリント装置の構成については、図1を適宜参照されたい。
【0046】
まず、テンプレート101を、テンプレートステージ111にロードする(ステップS1)。次に、ウェハ201を、試料テーブル211にロードする(ステップS2)。次に、アライメントセンサ113により、ウェハ201に関するアライメント処理を行う(ステップS3)。
【0047】
次に、レジスト滴下装置116がウェハ201の直上にくるよう、テンプレートステージ111を移動させる(ステップS4)。次に、レジスト滴下装置116により、ウェハ201上にレジストを滴下する(ステップS5)。これにより、ウェハ201上にレジスト材202が形成される。
【0048】
次に、テンプレートステージ111を、テンプレート101のアライメント処理用のポジションに移動させる(ステップS6)。次に、アライメントセンサ113により、テンプレート101に関するアライメント処理を行う(ステップS7)。
【0049】
次に、テンプレートステージ111を、インプリントを行うショット領域R上に移動させる(ステップS8)。次に、テンプレートステージ111等により、このショット領域Rへのインプリントを行う(ステップS9)。ステップS9では、テンプレート101をレジスト材202に押印し、その状態でレジスト材202にUV光を照射する。これにより、レジスト材202が硬化され、パターンが転写される。
【0050】
次に、離型制御用演算装置122は、上記のショット領域Rが、欠けショットであるか否かを判断する(ステップS10)。そして、ショット領域Rが欠けショットではない場合には、離型速度を、通常の速度Vに設定する(ステップS11)。一方、ショット領域Rが欠けショットの場合には、離型速度を、通常の速度Vよりも遅い速度V’に設定する(ステップS12)。
【0051】
次に、ナノインプリント装置は、離型制御機構121により離型速度をV又はV’に制御しつつ、テンプレート101をレジスト材202から離型する(ステップS13)。ステップS1〜S13の処理は、重複する処理を除き、ウェハ201上の各ショット領域Rに対し行われる。その後、ウェハ201を、試料テーブル211からアンロードする(ステップS14)。
【0052】
なお、欠けショットにおける離型速度V’は、ショット領域Rごとに異なる速度に設定しても構わない。例えば、欠けショットのウェハ201上の面積がより小さくなるのに応じて、離型速度V’をより遅くするようにしてもよい。また、テンプレート101の凹部面積と凸部面積との比率に応じて、離型速度V’を変化させるようにしてもよい。
【0053】
以上のように、本実施形態では、エッジE上に位置するショット領域RE1における離型速度を、エッジEの内側に位置するショット領域RE2における離型速度よりも遅い速度に設定する。これにより、本実施形態では、ウェハ201が脱離しやすい、欠けショットにおけるウェハ201の脱離を抑制することが可能となる。
【0054】
(第3実施形態)
図5は、第3実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【0055】
図5では、ウェハ201上の外周部分に位置するショット領域Rが、RX1で示され、外周部分の内側に位置するショット領域Rが、RX2で示されている。ウェハ201上の全ショット領域Rのうち、ショット領域RX1は外側に位置し、ショット領域RX2は内側に位置している。
【0056】
以下、ウェハ201上でショット領域RX2が占める部分を、外周部分に対し、中心部分と呼ぶことにする。
【0057】
ここで、外周部分及び中心部分における離型動作について説明する。
【0058】
試料チャック212は、通常、ウェハ201の裏面に面接触しており、ウェハ201を面で吸引している。また、試料チャック212は、通常、ウェハ201の裏面に作用する吸引力が、中心点Cに対し対称となるような構成となっている。
【0059】
しかしながら、ウェハ201のエッジEに近い外周部分からテンプレート101を離型しようとすると、離型のための強い力が中心点Cから離れた点に作用するため、ウェハ201に掛かる力の対称性は大きく崩れてしまう。そのため、外周部分からの離型動作の際には、ウェハ201に掛かる力が不均等になり、ウェハ201が試料チャック212から浮きやすい。その結果、浮いた部分から真空が破れ、ウェハ201が脱離してしまう。
【0060】
そこで、本実施形態では、外周部分に位置するショット領域RX1における離型動作の際には、テンプレート101の離型角度を、ウェハ201の主面に垂直な方向に対し、ウェハ201の浮きを抑える方向に傾ける。
【0061】
これにより、本実施形態では、外周部分における離型動作の際に、ウェハ201が試料チャック212から浮くことを防ぐことができる。これにより、本実施形態では、真空の破れの発生を防ぎ、ウェハ201の脱離を防止することが可能となる。
【0062】
図6は、テンプレート101の離型角度について説明するための側方断面図である。
【0063】
図6(A)は、ウェハ201上の中心部分に位置するショット領域RX2における離型動作を示している。図6(A)において、矢印Dは、ウェハ201の主面に垂直な方向を表し、符号Vは、テンプレート101の離型速度を表す。本実施形態では、中心部分からの離型動作の際には、図6(A)に示すように、テンプレート101の離型角度を、ウェハ201の主面に垂直な方向Dに対し平行に設定する。
【0064】
一方、図6(B)は、ウェハ201上の外周部分に位置するショット領域RX1における離型動作を示している。本実施形態では、外周部分からの離型動作の際には、図6(B)に示すように、テンプレート101の離型角度を、ウェハ201の主面に垂直な方向Dに対し、ウェハ201の浮きを抑える方向に傾ける。浮きを抑える方向とは、図6(B)に示すように、ウェハ201の外側を向く方向を意味する。図6(B)では、テンプレート101の離型角度が、符号θで示されている。
【0065】
以上のように、本実施形態では、外周部分に位置するショット領域RX1における離型角度を、ウェハ201の主面に垂直な方向に対し傾ける。これにより、本実施形態では、ウェハ201が脱離しやすい、外周部分におけるウェハ201の脱離を抑制することが可能となる。
【0066】
なお、第3実施形態では、第2実施形態と同様に、ウェハ201上の外周部分に位置するショット領域RX1における離型速度を、中心部分に位置するショット領域RX2における離型速度よりも遅い速度に設定するようにしてもよい。この手法でも、外周部分におけるウェハ201の脱離を抑制することは可能である。
【0067】
逆に、第2実施形態では、第3実施形態と同様に、欠けショットにおける離型角度を、ウェハ201の主面に垂直な方向に対し傾けるようにしてもよい。この手法でも、欠けショットにおけるウェハ201の脱離を抑制することは可能である。
【0068】
また、第3実施形態では、離型角度の調整を、離型速度の調整と併用するようにしても構わない。同様に、第2実施形態では、離型速度の調整を、離型角度の調整と併用するようにしても構わない。これは、上述の第1実施形態や、後述する第4及び第5実施形態でも同様である。
【0069】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【0070】
図7には、ウェハ201上のショット領域Rを、中心点Cからの距離に基づいて3種類に分類した様子が示されている。ショット領域R1,R2,R3はそれぞれ、中心点Cからの距離が短い領域、中程度の領域、長い領域である。
【0071】
中心点Cと各ショット領域Rとの距離については、符号d0で例示されている。符号d0は、R0で示すショット領域Rと中心点Cとの距離を表す。
【0072】
本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、中心点Cと各ショット領域Rとの距離に基づいて制御する。具体的には、中心点Cと各ショット領域Rとの距離が遠くなるほど離型速度を低下させるべく、ショット領域R1,R2,R3における離型速度をそれぞれ高速、中速、低速に設定する。
【0073】
ここで、本実施形態の離型動作の効果について説明する。
【0074】
第3実施形態で説明したように、試料チャック212は、通常、ウェハ201の裏面に作用する吸引力が、中心点Cに対し対称となるような構成となっている。
【0075】
よって、テンプレート101を離型する際、ショット領域Rが中心点Cから離れているほど、離型のための力により、ウェハ201に掛かる力の対称性は大きく崩れてしまう。そのため、ショット領域Rが中心点Cから離れているほど、ウェハ201に掛かる力が不均等になり、ウェハ201が試料チャック212から浮きやすい。その結果、浮いた部分から真空が破れ、ウェハ201が脱離してしまう。
【0076】
そこで、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、中心点Cとショット領域Rとの距離に応じて低下させる。これにより、本実施形態では、脱離の抑制効果を、中心点Cとショット領域Rとの距離が遠くなるほど高めることが可能となる。
【0077】
以上のように、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、ウェハ201上の中心点Cとショット領域Rとの距離に基づいて制御する。これにより、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、中心点Cからの距離に応じて各ショット領域Rごとに最適化することが可能となる。本実施形態によれば例えば、中心点Cとショット領域Rとの距離に応じて離型速度を低下させることで、中心点Cとショット領域Rとの距離が遠くなるほど、脱離の抑制効果を高めることが可能となる。
【0078】
(第5実施形態)
図8は、第5実施形態における離型動作について説明するための平面図である。
【0079】
図8に示す符号Aは、試料チャック212のチャックピンが、ウェハ201の裏面に接触している位置を示している。ウェハ201は、これらのチャックピンの位置で、試料チャック212により真空引きされている。
【0080】
試料チャック212の吸引力は、チャックピンの近くでは強いのに対し、チャックピンから離れると弱くなる。そのため、チャックピンから離れた地点からテンプレート101を離型する際には、ウェハ201が脱離しやすい。
【0081】
そこで、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、チャックピンの接触位置Aに基づいて制御するようにする。例えば、チャックピンの接触位置Aを含むショット領域RAにおいては、離型速度を高速にし、その他のショット領域Rにおいては、離型速度を低速にする。これにより、ウェハ201の脱離を低減することが可能となる。
【0082】
また、図8に示す符号Bは、ウェハ201の裏面におけるダストの位置を示している。このようなダストには、ウェハ201の裏面に付着したものと、試料チャック212の上面に付着したものとがある。ダストの存在は、ウェハ201や試料チャック212の検査により検出可能である。
【0083】
ダストの位置では、ウェハ201と試料チャック212との間が浮いているため、試料チャック212の吸引力が弱くなる。よって、ダストの位置付近からテンプレート101を離型する際には、ウェハ201が脱離しやすい。
【0084】
そこで、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、ダストの位置Bに基づいて制御するようにする。例えば、ダストの位置Bを含むショット領域RBにおいては、離型速度を低速にし、その他のショット領域Rにおいては、離型速度を高速にする。これにより、ウェハ201の脱離を低減することが可能となる。
【0085】
以上の2つの例は、組み合わせて適用してもよい。即ち、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、ウェハ201の裏面におけるチャックピンの接触位置A及びダストの位置Bに基づいて制御してもよい。これにより、ウェハ201の脱離を、より効果的に低減することが可能となる。
【0086】
また、これらのチャックピンやダストの効果は、ウェハ201の裏面の各領域における吸引力の差となって現れる。例えば、ある領域では吸引力が強くなり、別のある領域では吸引力が弱くなるといった具合である。
【0087】
そこで、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、ウェハ201の裏面を吸引する吸引力の分布に基づいて制御してもよい。これにより、チャックピンやダスト等、吸引力に影響する個々の要因ではなく、これらの全要因により決まるトータルな吸引力を考慮した離型速度制御が可能となり、ウェハ201の脱離を効果的に低減することが可能となる(逆に個々の要因を考慮したい場合には、上記の2つの例の手法が有用である)。
【0088】
吸引力の分布は、例えば、実際にテンプレート101によるインプリントを行うことで認識することが可能である。例えば、実際のインプリントにおいて、ウェハ201が脱離しやすいショット領域Rについては、吸引力が弱いと認定し、ウェハ201が脱離しにくいショット領域Rについては、吸引力が強いと認定することが可能である。吸引力をより定量的に認定するには、例えば、ショット領域Rごとに脱離回数や脱離率を調査し、これに基づいて吸引力の判断材料としてもよい。
【0089】
以上のように、本実施形態では、テンプレート101の離型速度を、ウェハ201の裏面におけるチャックピンの接触位置、ダストの位置、又は吸引力の分布に基づいて制御する。これにより、本実施形態では、吸引力の弱いショット領域Rにおけるウェハ201の脱離を抑制することが可能となる。
【0090】
(第6実施形態)
図9は、第6実施形態におけるナノインプリント方法について説明するための平面図である。図9では、図5と同様、ウェハ201上の外周部分、中心部分に位置するショット領域Rが、それぞれRX1,RX2で示されている。
【0091】
ウェハ201上の外周部分では、中心部分に比べ、レジストパターンに欠陥が発生する可能性が高い。欠陥の発生後にインプリント処理を継続すると、その後にパターニングされるショット領域Rにも、欠陥が繰り返し発生してしまう。
【0092】
そこで、本実施形態では、各ショット領域Rのショット順を、各ショット領域Rが外周部分に位置するか、中心部分に位置するかに基づいて設定する。具体的には、図9に示す全ショット領域Rのうち、中心部分に位置する全ショット領域RX2について、最初にインプリント処理を行い、その終了後に、外周部分に位置する全ショット領域RX1について、インプリント処理を行う。
【0093】
これにより、本実施形態では、欠陥の少ない中心部分からインプリント処理を行うことで、欠陥が多くのショット領域Rに繰り返されることを抑制することができる。また、中心部分は、外周部分に比べ、ウェハ201の脱離が起こりにくいため、中心部分からインプリント処理を行うことには、1箇所のショット領域Rでの脱離の影響を、他の多くのショット領域Rに及ぼすことを抑制できるという効果もある。
【0094】
なお、中心部分のショット領域RX2同士のショット順や、外周部分のショット領域RX1同士のショット順については、ランダムに決定してもよいし、何らかの方針に基づいて決定してもよい。
【0095】
例えば、中心部分のショット領域RX2がダストを含む場合には、そのショット領域RX2は、中心部分の最後にショットするようにしてもよい。同様に、外周部分のショット領域RX1がダストを含む場合には、そのショット領域RX1は、外周部分の最後にショットするようにしてもよい。
【0096】
また、ダストを含むショット領域Rについては、そのショット領域Rが中心部分に位置するか外周部分に位置するかを問わず、常に全ショット領域Rの最後にショットするようにしてもよい。
【0097】
以上のように、本実施形態では、各ショット領域Rのショット順を、各ショット領域Rが外周部分に位置するか、中心部分に位置するかに基づいて設定する。これにより、本実施形態では、欠陥や脱離等の好ましくない現象の影響が、多くのショット領域Rに及んでしまうことを抑制することが可能となる。
【0098】
以上、本発明の具体的な態様の例を、第1から第6実施形態により説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。また、第1から第6実施形態は、これらのうちの任意の2つ以上を組み合わせて適用しても構わない。
【符号の説明】
【0099】
101 テンプレート
111 テンプレートステージ
112 ベース
113 アライメントセンサ
114 UV光源
115 CCDカメラ
116 レジスト滴下装置
121 離型制御機構
122 離型制御用演算装置
131 ショット順設定部
201 ウェハ(被転写基板)
202 レジスト材(光硬化樹脂)
211 試料ステージ
212 試料チャック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インプリント用のテンプレートを保持するテンプレート保持部と、
前記テンプレートを、被転写基板上の光硬化樹脂に押印するよう移動させる、又は前記光硬化樹脂から離型するよう移動させるテンプレート移動部と、
前記光硬化樹脂に光を照射して、前記光硬化樹脂を硬化する光源と、
前記テンプレートを前記光硬化樹脂から離型する際に、前記テンプレートの離型速度又は離型角度を、前記テンプレートが離型されるショット領域の位置に基づいて制御する離型制御部と、
を備えることを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記離型制御部は、前記被転写基板のエッジ上に位置するショット領域における前記離型速度を、前記エッジの内側に位置するショット領域における前記離型速度よりも遅い速度に設定することを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記離型制御部は、前記被転写基板上の外周部分に位置するショット領域における前記離型角度を、前記被転写基板の主面に垂直な方向に対し傾けることを特徴とする請求項1又は2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記離型制御部は、前記離型速度を、前記被転写基板上の中心点と前記ショット領域との距離に基づいて制御することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記離型制御部は、前記離型速度を、前記被転写基板の裏面を吸引する吸引力の分布に基づいて制御することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項6】
前記離型制御部は、前記離型速度を、前記被転写基板の裏面におけるチャックピンの接触位置、又は前記被転写基板の裏面におけるダストの位置に基づいて制御することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項7】
更に、前記被転写基板上の各ショット領域のショット順を設定するショット順設定部を備え、
前記ショット順設定部は、前記ショット順を、各ショット領域が前記被転写基板上の外周部分に位置するか、外周部分の内側に位置するかに基づいて設定することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載のインプリント装置。
【請求項8】
インプリント用のテンプレートを、被転写基板上の光硬化樹脂に押印し、
前記テンプレートを前記光硬化樹脂に押印した状態で前記光硬化樹脂に光を照射して、前記光硬化樹脂を硬化し、
前記テンプレートの離型速度又は離型角度を、前記テンプレートが離型されるショット領域の位置に基づいて制御しつつ、前記テンプレートを前記光硬化樹脂から離型する、
ことを特徴とするインプリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60074(P2012−60074A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−204608(P2010−204608)
【出願日】平成22年9月13日(2010.9.13)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】