説明

インモールドラベル、インモールド成形品、及びインモールドラベルの製造方法

【課題】 本発明は、部分的に非接着部分を基材に形成することによって凹凸模様が現出し得るラベルにおいて、凹凸模様と基材の意匠が整合したインモールドラベルを提供する。
【解決手段】 本発明のインモールドラベル1は、意匠印刷層4が設けられた第1基材21と、第2基材22と、前記第1基材21と第2基材22の間に設けられ且つ前記両基材21,22を接着させる接着剤3と、を有し、前記第1基材21の内面の所定部分に、前記接着剤3が実質的に付着しない接着防止部5が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹凸模様が現出し得るインモールドラベル、及びそのラベルがインモールド成形によって樹脂成形体に積層されたインモールド成形品、及びそのラベルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、シャンプー収容容器、食品収納用の容器、飲料などを入れるカップ状容器などの様々な合成樹脂製成形品として、インモールド成形品が用いられている。
また、ラベル表面に凹凸を現出させたインモールド成形品も知られている。
例えば、特許文献1には、合成樹脂製の基材フィルムと、この基材フィルム上に所定のパターンで形成された接着剤層と、この上に積層された加飾層と、を有するラベルを用い、前記加飾層が、前記接着剤層の形成パターンに沿って基材フィルムに接着固定される接着部と隣接する接着部間に位置する非接着部とを有し、インモールド成形時の基材フィルムと加飾層の成形収縮の差により、非接着部に弛みが発生してラベル表面に凹凸が現出したラベル付き合成樹脂成形品が開示されている。前記ラベルを構成する基材フィルムには、所望の意匠(文字、絵柄、バーコードなど)が印刷によって表されている。
【0003】
上記特許文献1のラベル付き合成樹脂成形品は、ラベル表面の凹凸模様によって、加飾性(立体的な外観、質感、風合いなど)と機能性(断熱機能及び滑り止め機能)を有する。
しかしながら、上記成形品のラベルにおいては、接着剤層が基材フィルム上に所定のパターンで形成されているため、基材フィルムに印刷された意匠と接着剤層の形成パターンとが精度良く整合し難いという問題点がある。
【0004】
具体的には、上記特許文献1のラベルにおいては、接着剤層に対応した接着部が凹み且つ接着剤層が形成されていない非接着部が凸状に突出することによって、凹凸模様が現れる。この凹凸模様は、基材フィルムの意匠に整合していることが望ましい。例えば、バーコードの印刷された領域内が凸状に突出していると、バーコードを正確に読めない。また、例えば、文字や絵柄の印刷された領域が、その輪郭に沿って突出していれば、更に加飾性に優れたラベルを提供できる。
さらに、上記特許文献1のラベルにおいては、非接着部がラベルの側部に配置されると、その側部が樹脂成形品と接着せずに捲れるという問題点もある。
【0005】
ところで、上記ラベルは、一般に、次のような各工程で作製される。
意匠印刷工程:長尺状の第1基材フィルムを長手方向に送り出し、そのフィルムに印刷ローラーを用いて意匠を印刷した後、ロールに巻き取る。
接着剤塗工工程:ロールから前記意匠印刷済み第1基材フィルムを引き出し、その内面に接着剤塗工ローラーを用いて所定の形成パターンで接着剤を塗工し、乾燥することによって、接着剤層を形成する。
貼り合わせ工程:次に、前記第1基材フィルムに形成された前記接着剤層上に長尺状の第2基材フィルムを重ね合わせ、第1基材フィルムと第2基材フィルムを接着した後、得られた積層フィルムをロールに巻き取る。
加工工程:ロールから前記積層フィルムを引き出し、所定形状に切断することにより、1つのラベルが得られる。
【0006】
なお、意匠印刷工程と接着剤塗工工程が別々に行われる理由は(印刷後の第1基材フィルムを一旦ロールに巻き取り、その後、接着剤を塗工する理由)、次の通りである。第1には、インキに比して接着剤の取扱いは面倒である。第2に、接着剤を塗工した後、乾燥する必要があるが、意匠印刷と接着剤塗工を同一ライン上で行うと、乾燥不良を生じるおそれがある。第3に、接着剤を塗工した後、すぐにフィルムを貼り合わせなければならず、従って、意匠印刷と接着剤塗工を同一ラインで行うためには、印刷機、接着剤のコーター、乾燥機、貼り合わせ機が1つのラインに組み込まれた設備を準備する必要があるが、かかる設備を組織するに多大なコストがかかる。第4に、意匠印刷と接着剤塗工を同一ラインで行うと、ラインスピードが落ちて生産効率が悪くなる。
【0007】
このように従来のラベルは、意匠印刷と接着剤塗工が別々に行われるが故に、上記意匠印刷済み第1基材フィルムに接着剤を塗工するとき、接着剤の形成パターンが、対応させるべき意匠から位置ずれする。つまり、意匠印刷済み第1基材フィルムをライン上で送り出している間に、第1基材フィルムが伸び又は若干横振れし、その結果、接着剤塗工ローラーの接着剤の形成パターンが第1基材フィルムの意匠と徐々にずれていく。この位置ずれを監視し且つ頻繁に修正しなければならないので、従来のラベルにおいては、基材フィルムの意匠と接着剤層の形成パターンとを精度良く整合させることが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−178985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、部分的に非接着部分を基材に形成することによって凹凸模様が現出し得るラベルにおいて、前記凹凸模様と基材の意匠が整合したインモールドラベルを提供することである。
本発明の他の目的は、凹凸模様と基材の意匠を確実に整合させることができるインモールドラベルの製造方法を提供することである。
また、本発明の他の目的は、凹凸模様と意匠が整合したインモールド成形品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のインモールドラベルは、意匠印刷層が設けられた第1基材と、第2基材と、前記第1基材と第2基材の間に設けられ且つ前記両基材を接着させる接着剤と、を有し、前記第1基材の内面の所定部分に、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止部が設けられている。
【0011】
本発明の好ましいインモールドラベルは、前記第2基材が不織布を有する。
本発明の他の好ましいインモールドラベルは、前記第1基材又は第2基材が、バリア層を有する。
【0012】
本発明の別の局面によれば、インモールド成形品が提供される。
このインモールド成形品は、意匠印刷層が設けられた第1基材とこの第1基材に接着剤を介して積層された第2基材とを有するインモールドラベルと、樹脂成形体と、を有し、前記第1基材を外側にして前記ラベルが前記樹脂成形体にインモールド成形によって積層されており、前記第1基材の内面の所定部分に、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止部が設けられている。
【0013】
本発明の別の局面によれば、インモールドラベルの製造方法が提供される。
このインモールドラベルの製造方法は、少なくとも2枚の基材が接着剤を介して積層されたラベルの製造方法であって、第1基材の一面に、意匠印刷層を印刷する工程と、前記第1基材の意匠印刷層の表面の所定部分又は前記第1基材の他面の所定部分に、印刷によって、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止剤を塗工する工程と、前記第1基材の前記接着防止剤塗工面側の全体又は第2基材の一面側の全体に、前記接着剤をベタ状に塗工する工程と、前記第1基材及び第2基材を貼り合わせる工程と、を含む。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係るインモールドラベルは、基材に印刷された意匠に整合して凹凸模様が生じ得る。従って、本発明のインモールドラベルは、より優れた装飾性を有する。
本発明のインモールドラベルの製造方法によれば、基材に印刷された意匠に整合して凹凸模様が生じ得るインモールドラベルを簡易に得ることができる。
また、本発明のインモールド成形品は、基材に印刷された意匠に整合した凹凸模様を有するように形成できる。従って、本発明によれば、より装飾性に優れたインモールド成形品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】1つの実施形態のインモールドラベルの正面図。
【図2】図1のII−II線拡大断面図。
【図3】他の実施形態のインモールドラベルの拡大断面図。
【図4】インモールド成形品の一実施形態を示す正面図。
【図5】図4のV−V線断面図。
【図6】図5の丸囲いVI部の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について、図面を参照しつつ説明する。
なお、基材の接頭語として、第1及び第2を付すが、該接頭語は、用語を区別するために付加されたものであり、その順序や優劣などを意味しない。また、第1基材(又は第2基材)の内面とは、第2基材(又は第1基材)が積層される側の面を指し、第1基材(又は第2基材)の外面とは、その反対面を指す。
【0017】
[インモールドラベルについて]
図1は、インモールドラベルの正面図を示す。図2は、図1のII−II線断面図を示す。
本発明のインモールドラベル1は、インモールド成形品の構成部材として使用できる。
本発明のインモールドラベル1は、これらの用途に応じて、略長方形状、略円形状、筒状などの各種の形状に形成される。
【0018】
図1のインモールドラベル形状は、インモールド成形品の構成部材として使用される場合の好ましい形態である。
具体的には、インモールドラベル1の平面視形状は、略扇面形状に形成されている。かかる形状のインモールドラベル1は、上方に向かうに従って徐々に拡径した形状のインモールド成形品の周面に巻き付けるために好適な形状である。
もっとも、上記インモールドラベル1の平面視形状は、インモールド成形品の形状やラベルの装着箇所に応じて適宜変更される。
【0019】
インモールドラベル1は、少なくとも2枚の基材(第1基材21及び第2基材22)が積層された積層体から構成されている。この2枚の基材は、接着剤からなる接着剤層3を介して積層接着されている。また、第1基材21には、意匠印刷層4が設けられている。さらに、第1基材21には、接着防止部5が設けられている。
1つの実施形態では、インモールドラベル1は、図2に示すように、意匠印刷層4を有する第1基材21と、第1基材21に設けられた接着防止部5と、第1基材21と第2基材22の間に設けられた接着剤層3と、第2基材22と、を有する。図2に示すインモールドラベル1においては、第1基材21の内面に意匠印刷層4が設けられている。さらに、第2基材22の内面にバリア層6が設けられている。もっとも、このバリア層6は第1基材21の内面又は外面に設けてもよい。図2のように、第1基材21の内面側に意匠印刷層4が設けられている場合、第1基材21としては、透明なものが用いられる。意匠印刷層4が第1基材21の外面側に設けられる場合には、第1基材21としては、不透明なものを用いてもよい。インモールドラベル1は、バリア層を有していなくてもよい。
【0020】
他の実施形態では、インモールドラベル1は、図3に示すように、意匠印刷層4を有する第1基材21と、第1基材21に設けられた接着防止部5と、第1基材21と第2基材22の間に設けられた接着剤層3と、第2基材22と、第2基材22の外面に設けられた粘着層7と、を有する。図3に示すインモールドラベル1においては、第2基材22の外面にバリア層6が設けられ、そのバリア層6の外面に粘着層7が設けられている。もっとも、前記バリア層6は、第2基材22の内面に設けられていてもよい。また、このバリア層6は第1基材21の内面又は外面に設けてもよい。また、インモールドラベル1は、バリア層を有していなくてもよい。
【0021】
意匠印刷層4は、第1基材21の面内に印刷によって設けられた、インキ固化層である。意匠印刷層4によって表される意匠は特に限定されず、文字、絵柄及び模様などのデザイン表示、商品の説明書きなどの固有表示、バーコードや2次元コードなどの機械的読取表示などが挙げられる。意匠印刷層4は、従来と同様に単色又は多色多層で構成されている。また、意匠印刷層4は、背景印刷を含んでいてもよい。
意匠印刷層4は、第1基材21の内面又は外面の何れか一方の面に設けられており、必要に応じて、その内面及び外面の双方に設けられていてもよい。本実施形態では、外部摩擦による擦傷を防止する観点から、意匠印刷層4は、第1基材21の内面に設けられている。
【0022】
さらに、第1基材21の内面の所定部分には、接着防止部5が設けられている。この接着防止部5は、接着防止剤の固化層であり、該接着防止部5は、第1基材21の内面の所定部分に、接着防止剤を塗工することによって形成できる。内面に意匠印刷層4が設けられている本実施形態では、接着防止部5は、意匠印刷層4上に設けられている。
接着防止部5は、接着剤が実質的に付着しない部分である。接着剤が実質的に付着しないとは、接着防止部5の表面に接着剤を塗っても該接着剤が表面から弾かれる状態や、接着防止部5の表面に接着剤が載っていても両者が物理的に結合していない状態(熱が加わったときに両者が物理的に結合しないことを含む)を意味する。
【0023】
従って、前記接着防止部5が設けられた領域において、第1基材21と第2基材22は接着しておらず、一方、接着防止部5が設けられていない領域において、第1基材21と第2基材22は接着剤を介して接着されている。つまり、接着防止部5が設けられている領域は、第1基材21と第2基材22が接着していない非接着部8aとされ、接着防止部5が設けられていない領域は、第1基材21と第2基材22が接着された接着部8bとされている。
インモールドラベル1の第1基材21は、第2基材22が収縮したとき、前記非接着部8aにおいて凸状に浮かび上がり、且つ前記接着部8bにおいて凹状となる。なお、凹状とは、前記凸状に対して相対的に凹んでいるという意味であり、凸状に浮かび上がらないということである。
【0024】
接着防止部5の形成パターン(平面視形状)は、適宜設定される。例えば、接着防止部5の形状としては、略円形状、略楕円形状、略多角形状などの点状;波線、直線などの線状;網目形状や格子形状;アルファベットや片仮名などの文字形状;その他任意の形状;及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。前記形成パターンの接着防止部5は、1箇所だけでもよいが、通常、複数形成される。
【0025】
好ましくは、図1に示すように、接着防止部5は、第1基材21の周縁部における所定幅(例えば3mm〜7mm程度)環帯状部分を除き、その環帯状部分で囲われる領域内に設けられる。つまり、第1基材21の周縁部における環帯状部分は、接着剤によって接着された接着部8bとされていることが好ましい。インモールドラベル1の縁部において、第1基材21が第2基材22から捲れることを防止するためである。前記環帯状部分で囲われる領域内に、接着防止部5は、複数の点状、網目形状、その他任意の形状に形成される。
【0026】
さらに、接着防止部5は、意匠の内容に応じて設けられていることが好ましい。例えば、文字及び/又は絵柄及び/又は模様に合わせて接着防止部5を設けることにより(図1では、意匠印刷としての文字「A」、「B」、「C」を象るように接着防止部5が設けられている)、前記文字等の部分が凸状となって浮き上がるので、印刷文字等と凹凸模様によって、より宣伝効果の高いインモールドラベル1を提供できる。また、文字や絵柄などのデザイン表示の縁に沿って接着防止部5(非接着部8a)を設けてもよい。このようにデザイン表示の縁に沿って接着防止部5を設けると、その部分が凸状に浮かび上がり且つその部分で囲われたデザイン表示が凹状になる。
【0027】
さらに、図1に示すように、機械的読取表示に対応する領域には、接着防止部5を設けないことが好ましい。つまり、機械的読取表示を印刷した領域は、接着部8bとされていることが好ましい。接着防止部5が設けられている領域(非接着部8a)は、第1基材21が凸状に浮かび上がるので、機械的読取表示をリーダー装置で正確に読み取れないおそれがあるためである。同様に、説明書きなどの固有表示は小さい文字で表されることが多いので、固有表示に対応する領域には接着防止部5を設けないことが好ましい(固有表示を印刷した領域は接着部8bとされていることが好ましい)。
【0028】
なお、図1は、インモールドラベル1の正面図であるから、この図では、本来、接着防止部5が外部から見えないが、便宜上、接着防止部5が設けられた領域(非接着部8a)を網掛けで表している。また、図1に、特に接着防止部5を設けないことが好ましい領域(接着部8bを形成することが好ましい領域)を、薄墨塗りで表している。
【0029】
次に、接着剤層3は、第1基材21と第2基材22の間に、ベタ状に設けられている。すなわち、接着剤層3は、第1基材21(又は第2基材22)の内面全体に、接着剤を略均一な厚さの膜状に塗工することにより形成されている。
図2及び図3においては、接着剤層3を略均一な層として表している。ただし、塗工時に、第1基材21(又は第2基材22)の内面全体に接着剤が存在していても、その後、接着防止部5の表面に面した接着剤の一部又は全部が、接着防止部5によって弾かれている場合もある。そのため、インモールドラベル1の状態においては、接着防止部5に対応して接着剤層3の一部が穴の開いたような状態になっている場合もあり、この点、図面と異なる場合があることに留意されたい。
【0030】
また、第2基材22に粘着層7が設けられる場合、この粘着層7は、第2基材22の外面全体に、粘着剤をベタ状(又は網目状若しくは無数の点状)に塗工することにより形成できる。
粘着剤としては、特に限定されず、例えば、感熱性粘着剤などが挙げられる。なお、感熱性粘着剤とは、室温で粘着性を示さず且つ加熱することで粘着力を生じる粘着剤である。
【0031】
上記第1基材21及び第2基材22は、それぞれ特に限定されず、合成樹脂フィルム、紙、合成紙、発泡樹脂シート、不織布などから選ばれるシートを用いることができる。さらに、前記合成樹脂フィルムなどのシートにバリア層(ガスバリア及び/又は遮光の層)が設けられたシート、蒸着、断熱、抗菌などの他の機能層が設けられたシート、及びこれらのシートが2種以上積層された積層体を用いてもよい。
【0032】
上記合成樹脂フィルム及び発泡樹脂シートの材質としては、ポリプロピレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、エチレン−環状オレフィン共重合体などのポリオレフィン系;ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸などのポリエステル系;ポリ塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル系;6,6ナイロンなどのポリアミド系;ポリスチレン、ABSなどのポリスチレン系などの熱可塑性樹脂の1種、及びこれらの混合物などを挙げることができる。合成樹脂フィルムの厚みは、特に限定されないが、例えば、10〜100μmが挙げられる。発泡樹脂シートの厚みは、特に限定されないが、例えば、80〜1000μmが挙げられる。
【0033】
不織布の繊維としては、ポリエステル、ポリプロピレン、ポリエチレン、レーヨン、ナイロンなどの熱可塑性樹脂繊維、キュプラ、天然繊維などが挙げられる。形成法による分類による不織布としては、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、サーマルボンド法、スパンレース法などによってシート状に作製されたものを用いることができる。エンボス加工が施されていない不織布(表面が略平坦な不織布)を用いることが好ましい。
第2基材22として不織布を用いる場合、その不織布は感熱接着性を有していてもよい。前記感熱接着性を有する不織布としては、インモールド成形時の熱によって溶融し得る熱可塑性樹脂製の繊維、又は/及び、前記熱によって溶融し得る熱可塑性樹脂が芯繊維の表面に設けられている複合繊維などから形成された不織布が挙げられる。特に、前記複合繊維から形成された不織布を用いることが好ましい。前記複合繊維の不織布を用いれば、インモールド成形時に、繊維が殆ど溶融することによって不織布がフィルム化する虞がないからである。
不織布の目付量は、特に限定されないが、例えば、10〜100g/mが挙げられる。
【0034】
バリア層6としては、アルミナなどの金属酸化物蒸着膜;シリカ蒸着膜;アルミニウムなどの金属蒸着膜;アモルファスカーボン薄膜;ナイロンMXD−6などのポリアミド系、ポリ塩化ビニリデン、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)などの樹脂層(フィルムを含む);これらの積層体などが挙げられる。バリア層6の厚みは、特に限定されないが、バリア層6が樹脂層である場合、その厚みは10μm〜30μm程度である。
【0035】
第1基材21は、比較的柔軟なシートを用いることが好ましい。第1基材21が凹凸状に変形し易くなるからである。かかる観点から、第1基材21は、厚み10〜50μmの合成樹脂フィルムが好ましく、さらに、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを主成分とする比較的柔軟な合成樹脂フィルム又はポリエステルを主成分とする厚み10〜30μmの合成樹脂フィルムがより好ましい。
また、第1基材21として合成樹脂フィルムが用いられる場合、第2基材22は、インモールドラベル1に断熱性を付与できることから、不織布又は発泡樹脂シートを有するシートを用いることが好ましく、さらに、凹凸模様をより明確に現出できることから、不織布を有するシートがより好ましい。
【0036】
また、第1基材21及び第2基材22は、比較的大きな熱収縮性を有していてもよいが、若干の熱収縮性を有するもの或いは実質的に熱収縮性を有さないものが好ましい。
例えば、第1基材21及び第2基材22は、それ自体熱が加わることによって若干熱収縮しうるもの(80℃温水中に10秒間浸漬したときの一方向における熱収縮率が1〜5%程度のもの)、或いは、それ自体は熱収縮性を有しないが、インモールド成形時に樹脂成形体の収縮に追従して収縮しうるものが好ましい。
このような第1基材21及び第2基材22を用いるおとにより、インモールド成形時、第2基材22が第1基材21よりも若干大きく収縮し、ラベルに凹凸模様が生じ得る。
【0037】
上記接着剤は、第1基材21と第2基材22を接着できるものであれば、特に限定されない。接着剤としては、例えば、従来公知のドライラミネート法又はウェットラミネート法で用いられている溶剤型接着剤及びエマルション型接着剤などが挙げられる。
具体的には、ニトリルゴム系溶剤型接着剤、ウレタン系接着剤、エチレン−酢酸ビニルなどのエチレン系接着剤、エポキシ系接着剤などが挙げられる。
【0038】
上記接着防止部5を形成する接着防止剤は、その固化層の表面と接着剤とが実質的に付着しないようなものが用いられる。従って、接着防止部5は、接着剤との関係で適宜決定される。
具体的には、接着防止剤としては、硝化綿とポリアミドを含む樹脂溶液、離型性の高いポリアミド系樹脂を含む溶液などが挙げられる。
【0039】
[インモールドラベルの製造方法について]
上記インモールドラベル1は、例えば、下記のようにして製造できる。
機械的製造においては、長尺状の第1基材21及び第2基材22が用いられる。長尺状の第1基材21及び第2基材22は、それぞれ別個のロールに巻き取られて供給される。長尺状とは、幅方向長さに対して縦方向長さが十分に長い形状を意味し、例えば、縦方向長さが100m以上の基材が用いられる。
【0040】
<意匠印刷工程>
長尺状の第1基材21を引き出し、意匠印刷ライン上に送り出す。この第1基材21の一面に意匠を印刷することにより、意匠印刷層4を形成する。意匠の印刷は、第1基材21の内面(第2基材22と積層する面)に行われることが好ましいが、第1基材21の外面でもよい。
この意匠印刷工程は、印刷ローラーを用いた従来公知の印刷法に準じて行われる。
【0041】
<接着防止剤塗工工程>
意匠印刷層4を形成した後の長尺状の第1基材21を、ロールに巻き取らず、そのまま意匠印刷ラインの下流側へ送る。
意匠印刷ラインの下流側において、第1基材21の意匠印刷層4の表面の所定部分又は前記第1基材21の他面の所定部分に接着防止剤を塗工することにより、第1基材21の所定部分に接着防止部5を形成する。接着防止剤の塗工は、ローラーを用いた印刷法に準じて行われる。
接着防止剤の種類及び接着防止剤の形成パターンは、上記インモールドラベルの欄で述べた通りである。
なお、意匠印刷工程において、第1基材21の内面に意匠印刷層4を設けた場合には、この意匠印刷層4上に接着防止剤を塗工し、一方、第1基材21の外面に意匠印刷層4を設けた場合には、その反対面(第1基材21の内面)に接着防止剤を塗工する。
【0042】
本発明のインモールドラベルの製法によれば、意匠印刷層4を形成した後、(第1基材21をロールに巻き取らず)続いて第1基材21に接着防止部5を設けるので、接着防止部5の形成パターンを意匠に沿って精度良く整合させることができる。
【0043】
<接着剤塗工工程>
次に、接着防止部5を形成した後の長尺状の第1基材21を、ロールに巻き取る。
ロールに巻かれた第1基材21を、(上記意匠印刷ラインとは異なる)接着ラインに移動させる。
ロールから第1基材21を引き出し、接着ライン上に送り出す。この第1基材21の接着防止剤塗工面側の全体に、接着剤をベタ状に塗工した後、乾燥する。
取扱いが面倒な接着剤であっても(特に、ドライラミネート法で用いられる溶剤型接着剤)、基材面全体にベタ状に塗工することは、簡便に行える。
【0044】
<積層工程>
接着剤を塗工した後の長尺状の第1基材21を、ロールに巻き取らず、そのまま接着ラインの下流側へ送る。
この第1基材21の接着剤塗工面側に、長尺状の第2基材22を重ね合わせていき、第1基材21と第2基材22を接着剤を介して貼り合わせる。
このとき、接着防止部5が形成された領域における第1基材21と第2基材22の界面間においては、接着剤が弾かれて殆ど存在しない又は接着剤が存在していてもそれが接着防止部5に付着しない。このため、第1基材21と第2基材22の界面のうち、接着防止部5が設けられている領域が非接着とされ且つ接着防止部5が設けられた領域が接着された積層体が得られる。
必要に応じて、第2基材22に粘着層7を設けた後、この積層体を所定形状に裁断することにより、本発明のインモールドラベル1が得られる。なお、第2基材22自体が感熱接着性を有する場合には、前記粘着剤層7の形成を省略できる。
【0045】
上記のように本発明の製法によれば、意匠と接着防止部5の形成パターンが整合したインモールドラベル1を簡単に製造できる。
【0046】
なお、上記接着剤塗工工程においては、接着防止部5が設けられた第1基材21上に接着剤をベタ状に塗工しているので、接着防止部5の表面上に塗工された接着剤が弾かれ易いという利点がある。もっとも、これに代えて、第2基材22の内面全体に接着剤をベタ状に塗工してもよい。第1基材21又は第2基材22の何れに接着剤を塗工しても、その後の積層工程において両者を貼り合わせることができる。もっとも、第1基材21又は第2基材22の何れか一方が不織布から形成されている場合には、不織布でない方の基材(例えば、合成樹脂フィルムなどからなる基材)に接着剤を塗工することが好ましい。不織布に接着剤を塗工すると、浸透によって多量の接着剤が必要となるからである。
【0047】
[インモールド成形品について]
図4は、インモールド成形品の正面図を示す。図5は、図4のV−V線断面図を示す。図6は、図5の丸囲いVI部の拡大図を示す。ただし、図4及び図5では、ラベル表面に現出された凹凸模様を図示していない。
【0048】
図4〜図6に於いて、10は、インモールド成形によって成形された樹脂成形体9と、インモールド成形によって樹脂成形体9の表面に積層されたインモールドラベル1と、を有するインモールド成形品を示す。
【0049】
樹脂成形体9を構成する樹脂材料は、熱可塑性樹脂であれば特に限定されず、公知の材料を適宜用いることができる。この樹脂材料としては、例えば、高密度ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリ塩化ビニル系、ポリカーボネート系などを例示できる。また、樹脂材料は、通常、非発泡であるが、場合によっては発泡させてもよい。中でも、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリスチレンなどが好ましい。樹脂成形体9そのものは、射出成形、ブロー成形、差圧成形、圧縮成形、発泡成形などの公知の成形法によって形成できる。中でも、射出成形やブロー成形によって樹脂成形体9を形成した場合、インモールドラベル1を樹脂成形体9に良好に一体化できるので好ましい。
樹脂成形体9の肉厚は、特に限定されないが、ある程度の剛性を有する成形体を得るために、0.5mm以上が好ましく、更に、0.8mm以上がより好ましい。特に、インモールドラベル1を積層した部分における樹脂成形品2の肉厚が、0.5mm以上であることが好ましい。
【0050】
本発明のインモールド成形品10の用途は、特に限定されず、飲料、食品、サニタリー品、薬品、サプリメント、化粧品、玩具などを収納する各種容器類(ボトル型容器、箱形容器、カップ状容器等)が代表的な用途であるが、容器の蓋に利用することもできる。また、本発明のインモールド成形品10は、容器関係以外の用途、例えば、装置部品などに適用することもできる。
インモールド成形品10の形状も特に限定されず、その用途に応じた適宜の形状に形成される。
図示したインモールド成形品10は、飲料等を入れるカップ状容器を例示している。カップ状容器の形状としては、上方に向かうに従い拡径する有底円筒状のものが例示される。なお、かかる用途のインモールド成形品10の上面開口部には、実用に際して、着脱自在な嵌合蓋や熱シールによるシート蓋などの各種蓋が取り付けられる(これら蓋は、図示せず)。
【0051】
樹脂成形体9に対するインモールドラベル1の固定位置は、特に限定されず、樹脂成形体9の胴部や底部などの任意の位置にインモールドラベル1を積層固着することができる。インモールド成形品10がカップ状容器などの容器として用いられる場合には、樹脂成形体9の胴部にインモールドラベル1を設けることが好ましい。上記インモールドラベル1は凹凸模様によって断熱性を有するから、成形体の胴部にインモールドラベル1を積層することにより、手で持ち易い断熱容器を提供できる。
【0052】
該インモールドラベル1の大きさも特に限定されず、適宜に設計できる。例えば、樹脂成形体9の胴部の周囲全体を覆うようにインモールドラベル1が積層されていてもよいし、該胴部の一部分にインモールドラベル1が積層されていてもよい。
図示した例では、インモールドラベル1は、樹脂成形体9の胴部の周囲略全体に積層されている。なお、図示した例では、樹脂成形体9の胴部周囲に積層した(巻付けた)インモールドラベル1の両側部が離れているが、この一方の側部が他方の側部の上に重なるようにインモールドラベル1を樹脂成形体9に配置してもよい。
なお、インモールドラベル1は、樹脂成形体9の胴部の主として手で持たれる部分、すなわち、樹脂成形体9の胴部の上下方向中途部であって該胴部の周囲を囲繞するように積層されていてもよい。
【0053】
本発明のインモールド成形品10に使用されるインモールドラベル1は、上記インモールドラベルの欄で述べたものを適宜用いることができる。
すなわち、インモールドラベル1は、意匠印刷層4が設けられた第1基材21と、第2基材22と、前記第1基材21と第2基材22の間に設けられ且つ前記両基材を接着させる接着剤と、を有し、前記第1基材21の内面の所定部分に、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止部5が設けられている。
インモールドラベル1は、その第2基材22側を樹脂成形体9の表面に向けて積層されている。従って、第1基材21を外側にして前記インモールドラベル1が樹脂成形体9に積層されている。
【0054】
本発明のインモールド成形品10に使用されるインモールドラベル1においては、第1基材21として、熱可塑性樹脂の合成樹脂フィルム、2種以上の合成樹脂フィルムの積層体、又は、合成樹脂フィルム又はその積層体にバリア層6が積層された積層体を用いることが好ましく、第2基材22としては、不織布、又は、不織布と合成樹脂フィルム及び/又はバリア層6とが積層された積層体を用いることが好ましい。特に、第1基材21は、インモールド成形に耐えうる耐熱性がある合成樹脂フィルム及びその積層体が好ましく、例えば、ポリプロピレン系フィルム及びその積層体などが挙げられる。
【0055】
また、インモールド成形品10においては、インモールド成形時に、インモールドラベル1を樹脂成形体9の表面に固着する必要がある。このため、図3に示すような、第2基材22の外面に粘着層7(好ましくは、感熱性粘着剤からなる粘着層7)が設けられているインモールドラベル1が用いられる。
また、図2に示すような、粘着層7を有しないインモールドラベル1の場合、第2基材22がインモールド成形時の熱によって溶融し、樹脂成形体9の表面に固着し得るインモールドラベル1が用いられる。このような第2基材22としては、例えば、感熱接着性を有する不織布が挙げられる。
なお、上記インモールド成形品10の成形方法は、例えば、特開2009−178985号に開示されたような従来公知の方法に準じて行われる。
【0056】
上記インモールド成形品10においては、非接着部8a(接着防止部5が設けられた領域)に対応する第1基材21が凸状に突出し、一方、接着部8bに対応する第1基材21が凹状(凸状に突出しない)となっている。
【0057】
本発明のインモールド成形品10のインモールドラベル1に前記凹凸模様が現れる原理は、明確には解明されていないが、下記のように推定される。
金型からインモールド成形品10を取り出した後、樹脂成形体9が収縮する。この収縮に追従して第2基材22が収縮するが、第2基材22よりも外側にある第1基材21(樹脂成形体9から離れている第1基材21)は、第2基材22よりも収縮し難い。かかる第1基材21及び第2基材22の収縮差によって、第1基材21が部分的に凸状に変化する。その結果、ラベル表面に凹凸模様が現れると推定される。
【0058】
上記インモールド成形品10は、インモールドラベル1の表面に凹凸模様が現れているので、加飾性(立体的な外観、質感、風合いなど)と機能性(断熱機能及び滑り止め機能)を有する。
特に、不織布を有する基材が用いられた場合には、さらに断熱性に優れ、バリア層6を有する基材が用いられた場合には、ガス及び/又は光に対するバリア性に優れたインモールド成形品10を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明のインモールドラベルは、樹脂製容器などの樹脂成形体と一体化する、成形品の構成部材として利用できる。
本発明のインモールド成形品は、シャンプー、リンス、食品、飲料、化粧品などを収納する容器などとして利用できる。
【符号の説明】
【0060】
1…インモールドラベル、21…第1基材、22…第2基材、3…接着剤層、4…意匠印刷層、5…接着防止部、6…バリア層、7…粘着層、8a…非接着部、8b…接着部、9…樹脂成形体、10…インモールド成形品

【特許請求の範囲】
【請求項1】
意匠印刷層が設けられた第1基材と、第2基材と、前記第1基材と第2基材の間に設けられ且つ前記両基材を接着させる接着剤と、を有し、
前記第1基材の内面の所定部分に、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止部が設けられている、インモールドラベル。
【請求項2】
前記第2基材が不織布を有する請求項1に記載のインモールドラベル。
【請求項3】
前記第1基材又は第2基材が、バリア層を有する請求項1又は2に記載のインモールドラベル。
【請求項4】
意匠印刷層が設けられた第1基材とこの第1基材に接着剤を介して積層された第2基材とを有するインモールドラベルと、樹脂成形体と、を有し、前記第1基材を外側にして前記インモールドラベルが前記樹脂成形体にインモールド成形によって積層されたインモールド成形品であって、
前記第1基材の内面の所定部分に、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止部が設けられている、インモールド成形品。
【請求項5】
少なくとも2枚の基材が接着剤を介して積層されたインモールドラベルの製造方法であって、
第1基材の一面に、意匠印刷層を印刷する工程、
前記第1基材の意匠印刷層の表面の所定部分又は前記第1基材の他面の所定部分に、印刷によって、前記接着剤が実質的に付着しない接着防止剤を塗工する工程、
前記第1基材の前記接着防止剤塗工面側の全体又は第2基材の一面側の全体に、前記接着剤をベタ状に塗工する工程、
前記第1基材及び第2基材を貼り合わせる工程、
を含むインモールドラベルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−18346(P2012−18346A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156599(P2010−156599)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】