説明

ウイルス、フルオロピリミジンおよびカンプトテシンを使用した癌の処置

新生物を有する哺乳動物被験体が、ウイルス、フルオロピリミジン(例えば、5−フルオロウラシル)およびカンプトテシン化合物で処置される。このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される。本発明はまた、新生物を有する被験体を、上記他の成分との併用で処置するための医薬の製造における、ウイルスおよび/またはフルオロピリミジンおよび/またはカンプトテシン化合物の使用を提供する。ここで、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される。上記医薬は、列挙された成分のうちの1種類、2種類あるいは3種類の全てを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
癌を処置するための5−フルオロウラシルとある種とのウイルスとの同時投与は、特許文献1(12ページ)において開示されている。
【0002】
カンプトテシンと腫瘍崩壊性ウイルスの同時投与は、特許文献2(Wellstat Biologics Corp.)において開示されている。イリノテカンおよびトポテカンを包含する多くの抗癌剤のいずれかとの併用における、ある種の変異型ヘルペスウイルスを使用する癌の処置は、特許文献3(Fong,et al.)の7節および40節において開示されている。イリノテカンあるいはトポテカンを包含する抗腫瘍性薬剤との併用における、標的細胞特異的アデノウイルスを使用する新形成を処置する方法は、特許文献4(Yu,et al.)の13ページにおいて開示されている。以下も参照:非特許文献1および非特許文献2。
【0003】
イリノテカン、5−フルオロウラシル(5−FU)およびロイコボリン(LV)の同時投与は、以下に開示されている:非特許文献3、非特許文献4、非特許文献5、非特許文献6、非特許文献7、非特許文献8、非特許文献9、非特許文献10、非特許文献11。イリノテカンおよび5−FUのさらなる併用は、非特許文献12の表3および非特許文献13に記載されている。
【特許文献1】国際公開第94/25627号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2005/113018号パンフレット
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0071832号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0068307号明細書
【非特許文献1】Nemunaitis,et al.,Cancer Gene Ther.(2003)10(5):341〜352
【非特許文献2】Meck,et al.,Cancer Res.(2001)61(13):5083〜5089
【非特許文献3】Teufel et al.,2004(BMC Cancer 4:38)
【非特許文献4】Tournigand et al.,2004(J Clin Oncol 2:229〜237)
【非特許文献5】Andre et al.,1999(Eur J Cancer 35:1343〜7)
【非特許文献6】Colucci et al.,2005(J Clin Oncol 22)
【非特許文献7】Bouche et al.,2004(J Clin Oncol 22:4319〜4328)
【非特許文献8】Ducreux et al,1999(J Clin Oncol 17:2901〜8)
【非特許文献9】Kohne et al.,2005(J Clin Oncol 23)
【非特許文献10】Saltz et al.,1996(J Clin Oncol 14:2959〜67)
【非特許文献11】Goto et al.,2004(Int J Clin Oncol 9:354〜8)
【非特許文献12】Vanhoefer et al.,2001(J Clin Oncol 19:1501〜18)
【非特許文献13】Sastre et al.,2005(Cancer Chemother Pharmacol 55:453〜60)
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、新生物を有する哺乳動物被験体を処置する方法を提供する。この方法は、この被験体を処置するための効果的な併用量でウイルス、フルオロピリジン化合物およびカンプトテシン化合物を被験体に投与することを包含する。ここで、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される。
【0005】
本発明は、新生物を有する被験体を、上記他の成分との併用で処置するための医薬の製造における、ウイルスおよび/またはフルオロピリミジンおよび/またはカンプトテシン化合物の使用を提供する。ここで、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される。上記医薬は、列挙された成分のうちの1種類、2種類あるいは3種類の全てを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
(発明の詳細な説明)
本明細書中で使用される場合、転換用語「包含する」は、制限の無いものである。本用語を利用する請求項は、その請求項の中に記載された要素に加えて、要素を含み得る。従って、例えば処置レジメンについて、その請求項は、記載された要素あるいはそれらの等価物が存在する限り、本明細書中で具体的には記載されていない他の治療薬剤あるいは他の治療ウイルスもまた含むと読むことができる。
【0007】
本明細書中で使用される場合、「NDV」は、ニューカッスル病ウイルスの略語である。本明細書中で使用される場合、「DLT」は、投与量規制毒性の略語である。本明細書中で使用される場合、用語「プラーク形成単位(PFU)」は、感染性ウイルス粒子を意味する。本明細書中で使用される場合、「BPFU」は、10億PFUを意味する。本明細書中で使用される場合、「PP」は、精製された粒子を意味する。例えば、PPMK107は、ニューカッスル病ウイルスMK107株の精製された粒子を意味する。本明細書中で使用される場合、投与量を表現するための標準的単位である「PFU/m」は、患者体表面積あたりのPFUを意味する。本明細書中で使用される場合、用語「複製能力を有する」ウイルスとは、癌細胞中で感染性子孫を産生するウイルスをいう。
【0008】
本発明の実施形態において、ウイルスは、複製能力を有するものである。
【0009】
本発明に従って、ウイルスがニューカッスル病ウイルスである場合、そのウイルスは、低い毒性(弱毒)、中程度の毒性(中間毒)あるいは高い毒性(強毒)であり得る。毒性の程度は、卵試験での平均死亡時間(MDT)に従い、測定される(Alexander,”Chapter 27:Newcastle Disease”in Laboratory Manual for the Isolation and Identification of Avian Pathogens,3rd ed.,Purchase,et al.eds.(Kendall/Hunt,Iowa),page117)。ウイルスは、MDT試験により、弱毒(MDT>90時間)、中間毒(MDT:60時間から90時間)および強毒(MDT<60時間)として分類される。中間毒NDVが、一般的に好ましい。
【0010】
本発明に従い、ウイルスを被験体に投与するための任意の慣習的な経路あるいは技術が利用され得る。投与経路の例としては、WO00/62735を参照のこと。本発明の1つの実施形態において、上記ウイルスは、例えば静脈内に全身投与される。本発明に従う治療ウイルスの静脈内投与のためには、好ましくは、このウイルスは、ニューカッスル病ウイルスの中間毒株である。本発明の好ましい実施形態において、ニューカッスル病ウイルスの中間毒株の1投与量当たり12×10PFU/m〜1投与量当たり120×10PFU/mが、ヒト被験体に静脈内投与される、さらに好ましくは、1投与量当たり12×10PFU/m〜1投与量当たり48×10PFU/mが投与される。本明細書中で使用される場合、「mg/m」は、患者体表面積のmあたりのミリグラムを意味する。
【0011】
本発明の実施形態において、上記ピコルナウイルスは、ポリオウイルス、ECHOウイルスあるいはコクサッキーウイルスである。本発明に従う、適切なコクサッキーウイルスの例としては、以下の型:A21、A13、A15およびA18、が挙げられる。適切なECHOウイルスの例としては、ECHOウイルス1型が挙げられる。
【0012】
抗癌剤としてのフルオロピリミジンの使用は、Petty & Cassidy(2004)Cuur,Cancer Drug Targets,4:191〜204;ならびにLamontおよびSchilsky(1999)Clin.Cancer Res.5:2289〜2296において総説されている。これら薬剤は、RNA合成阻害およびRNA機能阻害、チミジル酸シンターゼ活性阻害およびDNAへの取込み阻害を含むいくつかの機構による抗腫瘍活性を有する、フッ素化ピリミジンである。
【0013】
本明細書中で使用される場合、用語「フルオロピリミジン」あるいは「フルオロピリミジン化合物」は、以下の1種類以上のものを意味する:5−フルオロウラシル(5−FU);カペシタビン;5−フルオロ−2’−デオキシウリジン(FudR);フトラフール;エミテフール(emitefur);エニルウラシル/5−FU;S−1(5−FUプロドラッグフトラフールと5−FU調節因子と称される2種類(5−クロロ−2,4−ジヒドロキシプリジンおよびオキソン酸(oxonic acid)との、モル比1:0.4:1における併用);ならびにUFT(フトラフールとウラシルとの、モル比1:4における併用)(LamontおよびSchilsky、1999)。5−FUは、5−FUの細胞毒性効果を高めるために、しばしば薬物ロイコボリンとともに投与される(例えば、Jolivet,1995,Eur J Cancer 31A:1311−1315およびRustum et al.,1998;Cancer J Sci Am 4:12−18を参照のこと)。フルオロピリジンおよびロイコボリンのための用量、投与技術および計画は、当該分野で周知であり(例えば、Vincent et al.,1999(Anticancer Drugs 10:337−54);Jolivet,1995を参照のこと)、そして、具体的な患者のためのこれらの最適化は、当該分野の臨床医の能力の範囲内にある。5−FUを用いたボーラス投与は、通常4〜5週間ごとに5日間、1日に370mg/m〜500mg/mの投薬量において、あるいはさらに好ましくは、毎週500mg/mで、ヒト患者に投与される。本発明の実施形態において、5−フルオロウラシルの1またはそれより多い投与量は、1投与量あたり少なくとも22時間の期間にわたる連続注入により与えられる。5−FUでの連続注入は、400mg/mの静脈内ボーラス投与と、ついで22時間にわたる600mg/mとを含む。別の実施形態においては、400mg/mのボーラス投与の後に、46時間にわたり投与される2400mg/mの投薬が続く。ロイコボリンは、5−FU投薬直前にあるいは5−FU投薬中に投与される、200mg/m〜500mg/mの投薬量で、通常ヒト患者に投与される。
【0014】
抗癌剤としてのカンプトテシンの使用は、Garcia−Carbonero,et al.,Clin.Cancer Res.(March 2002)8:641−661;ならびにPizzolato JFおよびSaltz LB,The camptothecins.Lancet 2003 361:2235−42において総説されている。カンプトテシンは、DNA複製時のねじり応力を減少し、かつDNA複製において重要な役割を有する細胞核酵素であるトポイソメラーゼIへの結合ならびに阻害に基づく抗腫瘍活性を有している。トポテカンおよびイリノテカンは、米国食品医薬品局(FDA)により臨床上の使用を承認されている。他のカンプトテシンは、癌治療剤として開発の途中にある(UlukanおよびSwaan,(Campothecins:a review of their chemotherapeutic potential.Drugs,2002,62:2039−57);ならびにGarcia−CarboneroおよびSupko,2002)。
【0015】
本明細書中で使用される場合、用語「カンプトテシン化合物」は、カンプトテシン、カンプトテシンアナログ、カンプトテシン誘導体、あるいはカンプトテシン結合体であるとみなされる化合物のクラスを意味する。これら化合物は、カンプトテシンの特徴的な5員環骨格に基づいている。
【0016】
【化1】

本発明に従って、任意のカンプトテシン化合物が利用され得る。カンプトテシン化合物の例としては、イリノテカン(CAMPTOSER;7−エチル−10−[4−(1−ピペリジノ)−1−ピペリジノ]−カルボニルオキシカンプトテシン)/トポテカン(HYCAMPTIN;(S)−9−N,N−ジメチルアミノエチル−10−ヒドロキシカンプトテシン)、9−アミノカンプトテシン(9−アミノ−20(S)−カンプトテシン)/9−ニトロカンプトテシン(ルビテカンとも呼ばれる)/ルウトテカン(lurtotecan)(7−(4−メチルピペラジノメチレン)−10,11−エチレンジオキシー20(S)−カンプトテシン)、エキサテカン(exatecan)、カレニテシン(karenitecin)、およびホモカンプトテシンが挙げられる。いくつかのカンプトテシン化合物についての構造上および臨床上の情報は、Garcia−Carbonero,et al.,Clin.Cancer Res.(March 2002)8:641−661において見出され得る。カンプトテシン化合物の例はまた、米国特許第4,604,463号,同第6,403,569号,および同第5,004,758号、ならびにWO 2004/012661,WO 2003/101998,WO 2003/101996,WO 2003/101406,WO 2003/093274,WO 2003/086471,WO 01/76597,WO 01/64194,WO 00/70275,WO 00/53607,WO 99/17805,WO 99/17804,WO 99/05103,WO 98/35969,WO 97/28164,WO 97/25332,WO 97/16454においても見出され得る。これらの全ての内容は、本明細書中で参考として援用される。
【0017】
本発明の併用治療に従って、上記カンプトテシン化合物は、上記ウイルスの投与の1ヶ月前から、このウイルスの投与の1ヵ月後に投与され得る。さらに具体的な実施形態において、カンプトテシン化合物およびウイルスは、被験体に単一の24時間の期間内に投与されるか;あるいはカンプトテシン化合物が、ウイルスの投与の24時間前〜1ヵ月前に、好ましくは、24時間前〜1週間前に投与されるか;あるいはカンプトテシン化合物が、ウイルスの投与の24時間後〜1ヵ月後に、好ましくは24時間後〜1週間後に投与される。
【0018】
「化学療法は、サイクルと称される定期的な間隔で一般的に与えられる。サイクルは、1回の投薬と、ついで処置のない数日あるいは数週間を含み得る。これは、身体中の正常細胞に、薬物の副作用から回復するための時間を与えている。あるいは、投薬は、数日連続または数日間隔日に与えられ、ついで、休止期間が与えられ得る。サイクル数は、処置を開始する前に確定され得るか、...あるいはその処置がどのように癌に作用するかを考慮するために変更のきくものであり得る。」(「Planning Drug Doses and Schedules」から、2005年5月23日に訪れたAmerican Cancer Societyのウェブサイトにおいて)。本発明の実施形態において、上記ウイルス、フルオロピリミジンおよびカンプトテシン化合物は、1またはそれより多いサイクルで、さらに好ましくは、2またはそれより多いサイクルで投与される。単一サイクルが、例えば8週間、6週間、30日間あるいは3週間続き得る。
【0019】
下記、表3〜表6は、実施例において示されるのと同じあるいは異なる投与量についての代表的な投与計画を示している。これら投与計画は、例示された以外のウイルス、フルオロピリミジンおよびカンプトテシンに関してもまた、適切である。よって、本発明のさらなる実施形態において、このウイルス、フルオロピリミジン、およびカンプトテシン化合物は、表3〜表6のいずれかにおいて示される計画と一致したサイクルで投与される。
【0020】
カンプトテシンおよび抗癌ウイルスについての用量および投与技術および計画は、当該分野で公知であり(例えば、Garcia−Carbonero,et al.;WO 00/62735;WO 2004/000209;およびPecora,et al.,J.Clin.Oncol.(2002)20(9):2251−2266を参照のこと)、そして具体的な患者のためのこれらの最適化は、当該分野の臨床医の能力の範囲内にある。イリノテカンは、週に4回、62.5mg/m〜125mg/mの投薬量において、もしくはさらに好ましくは週に4回、80mg/m〜125mg/mの投薬量で;あるいは3週間毎に1回、300mg/m〜350mg/mの投薬量において、もしくはさらに好ましくは3週間毎に1回、300mg/m〜350mg/mの投薬量で、通常、患者に投与される。
【0021】
本発明に従って処置される被験体は、ヒト被験体あるいはヒト以外の哺乳動物被験体のいずれかであり得る。本発明に従って、任意の新生物が、処置され得る。この新生物としては、:直腸癌、骨盤の癌、結腸癌、肺癌、乳癌、前立腺癌、グリア芽腫、腎臓癌、膵臓癌、頭頚部癌、子宮癌、神経芽腫、カルチノイド、メラノーマ、卵巣癌、肉腫、胃と食道の連結部の癌、胃癌、食道癌、肝臓癌および頸部癌が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
処置をモニタリングすることが、本発明の本質的な態様ではないが、処置の治療効果を測定するための技術が存在する。これら技術は、上記ウイルスの投与後、腫瘍の大きさを測定することを含み、そして腫瘍の大きさにおける減少が、ポジティブな結果となる。
【0023】
本発明は、以下の実施例を参照することによってより良く理解される。これら実施例は、明細書中に記載された本発明を例示しているが制限するものではない。以下の実施例において、上記NDVは、3倍量のプラークを精製したMK107である。これは、ニューカッスル病ウイルスの弱毒化させたバージョン(中間毒)であり、国際特許公開公報WO 00/62735(2000年10月26日公開、ProVirus,Inc.)においてより十分に記載されている。WO 00/62735および米国仮特許出願第60/565,631号(2004年4月27日出願)の全ての内容は、この内容によって本明細書中で参考として援用する。
【実施例】
【0024】
(実施例1.5−フルオロウラシル(5−FU)との併用におけるNDV)
無胸腺マウスに、1千万のヒトHT1080線維肉腫細胞を皮下注射した。腫瘍が、約120〜150mmの大きさになった7日後、動物を、無作為化し、10個の異なる処置レジメン(詳細に関しては、表1参照)の一つで処置した。その処置レジメンは、静脈内のNDVの最適以下の投与量(2×10あるいは10PFU)、5−フルオロウラシル(5−FU)100mg/kgの腹腔内ボーラス投与、および5mgの5−FU(カタログ#Z−190、Innovative Reserch of America;Sarasota,Florida)を含有するペレットあるいはプラシーボペレット(カタログ#C−111,Innovative Reserch of America;Sarasota,Florida)、および他のビヒクルコントロールの皮下移植を含んだ。ペレットを移植する場合、これらは、皮下腫瘍と遠く離れた部位で行った。下記表1において、最初の処置の日を0日目として示す。5−FUペレットを、ボーラス投与よりも5−FUの緩やかな放出を提供するため使用した。これら5−FUペレットを、5−FUの連続注入あるいは5−FU類似物質(例えば、カペシタビン)の数日間にわたる経口投与の効果を概算するために使用した。
【0025】
【表1】

完全な腫瘍退縮の(CR、100%腫瘍縮小)の発生数は、5−FU単独あるいはNDV単独のいずれかよりも、NDVおよび5−FUの両方を受容するグループにおいて(ボーラス注入またはペレットのいずれによろうとも)、より大きな高い値を示した(表2a〜c参照)。
【0026】
【表2a】

【0027】
【表2b】

【0028】
【表2c】

(実施例2.イリノテカン、5−フルオロウラシル(5−FU)およびロイコボリンとの併用におけるNDV)
癌患者を、NDVで処置し、ついでイリノテカン、ロイコボリンおよび5−フルオロウラシルで処置する。それぞれ6週間のサイクルにおいて、NDV処置は、5週にわたり、ついで1週の休止期間により投与される総計9〜12回の静脈内処置よりなる(下記表3参照)。それぞれのサイクルの最初の投与量は、120億〜240億PFU/m(コース1については3時間にわたって投与し、他の全てのコースについては1時間にわたって投与する)と、その後の240億PFU/mと480億PFU/mとの間(それぞれの用量は1時間にわたって投与する)の追加投与量よりなる。イリノテカン(静脈内に180mg/mを90分間にわたって)を、サイクル1の週3の間から、隔週で与える。ロイコボリン(静脈内に、400mg/mを120分にわたって)を、イリノテカンの個々の投与と同時に与え、次いでその後直ちに5−FU(400mg/m)を、静脈内ボーラス投与により行い、それから静脈ポンプを利用して5−FU(2400mg/m)の連続静脈内注入を、46時間にわたって行う。NDV、イリノテカン、5FUおよびロイコボリンのさらなる6週間コース(サイクルともまた称される)を、上記患者に投与する。
【0029】
【表3】

(実施例3.イリノテカン、5−フルオロウラシル(5−FU)およびロイコボリンとの併用でのNDV)
結腸直腸癌患者を、下記表4〜6と同じ所定のスケジュールにより、NDV、イリノテカン、ロイコボリン、および5−フルオロウラシルで、実施例2と同様に処置する。それぞれ6週間のサイクルにおいて、NDV処置は、5週にわたり、ついで1週の休止期間により投与される、総計10回の静脈内処置よりなる(下記表4〜6参照)。それぞれのサイクルの最初の投与量は、120億〜240億PFU/m(コース1については3時間にわたって投与し、他の全てのコースについては1時間にわたって投与する)と、その後の240億PFU/mと480億PFU/mとの間(それぞれの用量は1時間にわたって投与する)の追加投与量よりなる。イリノテカン(静脈内に180mg/mを90分間にわたって)を、サイクル1の週3の間から、隔週で与える。ロイコボリン(静脈内に、400mg/mを120分にわたって)を、イリノテカンの個々の投与と同時に与え、次いでその後直ちに5−FU(400mg/m)を、静脈内ボーラス投与により行い、それから静脈ポンプを利用して5−FU(2400mg/m)の連続静脈内注入を、46時間にわたって行う。NDV、イリノテカン、5FUおよびロイコボリンのさらなる6週間コース(サイクルともまた称される)を、上記患者に投与する。
【0030】
【表4】

【0031】
【表5】

【0032】
【表6】

(実施例4)
無胸腺マウスに、1千万のヒトSW620結腸カルシノーマ細胞を皮下注射した(American Type Culture Collection、から入手した。Manassas,VA)。皮下腫瘍が約85mmの大きさになった5日後(以下、0日目と称す)、11〜12匹の動物からなるグループを、8処置グループに無作為化した。
・NDV+イリノテカン
・NDV+5−FU
・NDV+イリノテカン+5−FU
・イリノテカン
・5−FU
・イリノテカン+5−FU
・ビヒクルのみ
0日目中に、全てのマウスに、上に提供された処置の項目(key)に従い、静脈内経路によってNDV(1×10PFU)あるいはビヒクルのいずれかを与えた。2日後となる2日目、全てのマウスに、上に提供された処置の項目に従い、イリノテカン(25mg/kg)あるいはビヒクルいずれかの最初の腹腔内注射をし、それから1時間後、5−FU(25mg/kg)あるいはビヒクルいずれかの2回目の腹腔内注射をした。NDVの代わりのビヒクルは、5%マンニトール/1%リシンの水溶液だった。イリノテカンの代わりのビヒクルは、生理食塩水だった。5−FUの代わりのビヒクルは、注射用水だった。腫瘍の大きさを、カリバスを用いて全てのマウスに対して定期的に測定した。
【0033】
図1で示したように、NDV+イリノテカン+5−FUの併用は、薬剤単独あるいはコントロールビヒクルのいずれよりも、抗腫瘍活性に関して顕著に優れていた。図2で示したように、NDV+イリノテカン+5−FUの併用は、一対の処置(NDV+イリノテカン;イリノテカン+5−FU;NDV+5−FU)のいずれよりも、抗腫瘍活性に関して優れていた。
【0034】
(実施例5)
本実験は、以下を除いて、実施例4と同様に実施した:(1)処置を、上記SW620腫瘍細胞の皮下接種の7日後に開始した、(2)皮下腫瘍は、約100mmの大きさだった、(3)1処置グループあたり13匹のマウスだった、(4)イリノテカン投与量として25mg/kgの代わりに15mg/kg;および(5)5−FUの投与量として、25mg/kgの代わりに100mg/kg。上述のとおり、動物は、8処置グループに無作為化した。
・NDV
・NDV+イリノテカン
・NDV+5−FU
・NDV+イリノテカン+5−FU
・イリノテカン
・5−FU
・イリノテカン+5−FU
・ビヒクルのみ
上述のとおり、0日目中に、全てのマウスに、上に提供された処置の項目に従い、静脈内経路によってNDV(1×10PFU)あるいはビヒクルのいずれかを与えた。2日後となる2日目、全てのマウスに、上に提供された処置の項目に従い、イリノテカン(15mg/kg)あるいはビヒクルいずれかの最初の腹腔内注射をし、それから1時間後、5−FU(100mg/kg)あるいはビヒクルいずれかの2回目の腹腔内注射をした。腫瘍の大きさを、カリバスを用いて全てのマウスに対して定期的に測定した。
【0035】
図3で示したように、NDV+イリノテカン+5−FUの併用は、薬剤単独あるいはコントロールビヒクルのいずれよりも、抗腫瘍活性に関して再び顕著に優れていた。図4で示したように、NDV+イリノテカン+5−FUの併用は、一対の処置(NDV+イリノテカン;イリノテカン+5−FU;NDV+5−FU)のいずれよりも、抗腫瘍活性に関して再び優れていた。さらに、持続的腫瘍退縮を引き起こすことに関して、3種類の全ての薬剤を使用することによる、相乗作用的抗腫瘍効果についての証拠が存在した。表7で示したように、いずれの一対の処置(NDV+イリノテカン;イリノテカン+5−FU;NDV+5−FU)およびそれぞれの薬剤単独を包含する、他のいずれの処置グループにおいてよりも、NDV+イリノテカン+5−FUの3種併用を使用するほうが、より持続的な(すなわち、90日まで延長する)完全腫瘍退縮(CR)があった。
【0036】
【表7】

【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】処置開始後の時間の関数としてのSW620結腸カルシノーマ異種移植物の平均腫瘍体積のグラフである。このグラフは、薬剤単独あるいはビヒクル単独のいずれかの活性に対するNDV(1×10PFU)+イリノテカン(25mg/kg)+5−FU(25mg/kg)の3種併用の活性を比較する。
【図2】処置開始後の時間の関数としてのSW620結腸カルシノーマ異種移植物の平均腫瘍体積のグラフである。このグラフは、それぞれの一対(NDV+イリノテカン、イリノテカン+5−FU、NDV+5−FU)の活性あるいはビヒクル単独の活性に対するNDV(1×10PFU)+イリノテカン(25mg/kg)+5−FU(25mg/kg)の3種併用の活性を比較する。
【図3】処置開始後の時間の関数としてのSW620結腸カルシノーマ異種移植物の平均腫瘍体積のグラフである。このグラフは、薬剤単独あるいはビヒクル単独いずれかの活性に対するNDV(1×10PFU)+イリノテカン(15mg/kg)+5−FU(100mg/kg)の3種併用の活性を比較する。
【図4】処置開始後の時間の関数としてのSW620結腸カルシノーマ異種移植物の平均腫瘍体積のグラフである。このグラフは、それぞれの一対(NDV+イリノテカン、イリノテカン+5−FU、NDV+5−FU)の活性あるいはビヒクル単独の活性に対するNDV(1×10PFU)+イリノテカン(15mg/kg)+5−FU(100mg/kg)の3種併用の活性を比較する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
新生物を有する哺乳動物被験体を処置する方法であって、該被験体を処置するために効果的な併用量において、1またはそれより多いサイクル数で、ウイルス、フルオロピリミジン、およびカンプトテシン化合物を該被験体に投与する工程を包含し;ここで、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される、方法。
【請求項2】
新生物を有する被験体を、フルオロピリミジンおよびカンプトテシン化合物と併用して処置するための医薬の製造における、ウイルスの使用であって、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される、使用。
【請求項3】
新生物を有する被験体を、ウイルスおよびカンプトテシン化合物と併用して処置するための医薬の製造における、フルオロピリミジンの使用であって、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される、使用。
【請求項4】
新生物を有する被験体を、ウイルスおよびフルオロピリミジン化合物と併用して処置するための医薬の製造における、カンプトテシン化合物の使用であって、該ウイルスは、ニューカッスル病ウイルス、麻疹ウイルス、水疱性口炎ウイルス、インフルエンザウイルス、シンドビスウイルス、ピコルナウイルス、および粘液腫症ウイルスよりなる群から選択される、使用。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記ウイルスが、複製能力を有するものである、方法あるいは使用。
【請求項6】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記ウイルスが、ニューカッスル病ウイルスである、方法あるいは使用。
【請求項7】
請求項6に記載の方法あるいは使用であって、前記ウイルスが、ニューカッスル病ウイルスの中間毒株である、方法あるいは使用。
【請求項8】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記ウイルスが、静脈内投与される、方法あるいは使用。
【請求項9】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記フルオロピリミジン化合物が、5−フルオロウラシルである、方法あるいは使用。
【請求項10】
請求項9に記載の方法であって、ロイコボリンを上記被験体に投与する工程をさらに包含する、方法。
【請求項11】
請求項9に記載の方法であって、前記5−フルオロウラシルが、1投与量当たり、少なくとも22時間の期間にわたる連続注入により投与される、方法。
【請求項12】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記カンプトテシン化合物が、イリノテカン、トポテカン、9−アミノカンプトテシン、エキサテカン、カレニテシン、ルビテカン、ルウトテカンおよびホモカンプトテシンよりなる群から選択される、方法あるいは使用。
【請求項13】
請求項12に記載の方法あるいは使用であって、前記カンプトテシン化合物が、イリノテカンである、方法あるいは使用。
【請求項14】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記ウイルスが、ニューカッスル病ウイルスの中間毒株であり、前記フルオロピリミジンが、5−フルオロウラシルであり、そして前記カンプトテシン化合物が、イリノテカンである、方法あるいは使用。
【請求項15】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記ウイルス、前記フルオロピリミジン、および前記カンプトテシン化合物が、2またはそれより多いサイクルで投与される、方法あるいは使用。
【請求項16】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記カンプトテシン化合物が、前記ウイルスの投与の24時間前〜1ヶ月前に、前記被験体に投与される、方法あるいは使用。
【請求項17】
請求項16に記載の方法あるいは使用であって、前記カンプトテシン化合物が、前記ウイルスの投与の24時間前〜1週間前に、前記被験体に投与される、方法あるいは使用。
【請求項18】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の方法あるいは使用であって、前記カンプトテシン化合物が、前記ウイルスの投与の24時間後〜1ヶ月後に、前記被験体に投与される、方法あるいは使用。
【請求項19】
請求項18に記載の方法あるいは使用であって、前記カンプトテシン化合物が、前記ウイルスの投与の24時間後〜1週間後に、前記被験体に投与される、方法あるいは使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−501230(P2009−501230A)
【公表日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−521556(P2008−521556)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【国際出願番号】PCT/US2006/027018
【国際公開番号】WO2007/011601
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(504397480)ウェルスタット バイオロジクス コーポレイション (13)
【Fターム(参考)】