説明

ウェットエッチング装置

【課題】ウェットエッチング処理中において、ウェーハの厚み及び形状を監視し、ウェーハが所望の状態と異なる場合には、直ちにウェーハに対し修正を施す。
【解決手段】ウェットエッチング装置1は、回転テーブル2に保持されたウェーハ6の中心上方で供給ノズル3からエッチング液3bを滴下させるとともに回転テーブル2を所定の回転数で回転させエッチング液3bをウェーハ6の一方の面全体に広げ、厚み測定器4でウェーハ厚みを測定し、測定結果に基づきエッチング液3bの滴下量を制御する。そして、ウェットエッチング処理中にウェーハ6の厚み及び形状が所望の状態と異なる場合は、直ちに修正することができる。したがって、エッチング不足の修正のために再度エッチングを施したりエッチング過多によってウェーハを廃棄したりすることを防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被加工物の面にウェットエッチングを施すエッチング装置に関する。
【0002】
半導体デバイスの製造工程においては、ウェーハの表面に格子状の分割予定ラインによって区画されたICやLSI等の複数のデバイスを形成した後、ウェーハの裏面を研削して所望の厚さに加工してから、分割予定ラインに沿って切断して個々の半導体チップを製造する。ところで、裏面研削工程を経たウェーハの裏面には研削によって凹凸部分が形成され、この凹凸部分が残存したままではデバイスの抗折強度を低下させる要因となる。そこで、凹凸部分を除去するために、ウェーハにウェットエッチングを施すウェットエッチング装置が用いられている。
【0003】
このようなウェットエッチング装置では、エッチングが終了したウェーハに関し、ウェーハの厚み及びウェーハの平坦度や厚さのバラつきなどの形状を測定する。そして、後続してウェットエッチング装置に投入されるウェーハについて、測定結果に基づきその厚み及び形状が所望の値に達するように補正をしている(例えば、下記の特許文献1及び2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3620528号公報
【特許文献2】特開2007−208074号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなウェットエッチング装置では、ウェットエッチング処理中にウェーハの厚み及び形状の修正をすることができないため、エッチング不足を修正するために再度ウェーハに対しエッチングを施したり、もしくはエッチング過多によりウェーハを廃棄する結果となるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたものであり、ウェットエッチング処理中において、ウェーハの厚み及び形状を監視し、ウェーハが所望の状態と異なる場合には、直ちにウェーハに対し修正を施すことを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、エッチング液を滴下するノズルと、ウェーハを保持し回転可能なテーブルと、加工中のウェーハ厚みを測定可能な厚み測定器と、を少なくとも備えるスピン式のウェットエッチング装置において、テーブルに保持されたウェーハの中心上方で該ノズルからエッチング液をウェーハの一方の面に滴下させるとともに該テーブルを所定の回転数で回転させエッチング液をウェーハの一方の面全体に広げウェットエッチングを行いながら、ウェーハの厚みを測定しエッチング液の滴下量を制御する。
【0008】
また、厚み測定器は、ウェーハの中心と外周部との間で放射状方向に往復動作可能とし、該厚み測定器で測定したウェーハの厚みからウェーハの形状を認識するウェーハ形状認識部と、該ウェーハ形状認識部がとらえたウェーハの厚さを基にエッチング液を滴下する位置と、エッチング液の滴下量と、を制御する制御部とを備え、該制御部は、ウェーハの形状を監視し該形状に応じてウェットエッチング処理制御を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明では、厚み測定器がウェーハ中心から外周部にかけて放射状方向に往復動作可能であり、厚み測定器が測定したウェーハの厚みからウェーハ形状を認識するウェーハ形状認識部と、ウェーハ形状認識部がとらえたウェーハの厚さを基にエッチング液を滴下する位置とエッチング液の滴下量とを制御する制御部とを備えているため、ウェットエッチング処理中にウェーハの厚み及び形状が所望の状態と異なる場合には、直ちに修正をすることができる。したがって、エッチング不足を修正するために再度ウェーハに対しエッチングを施すこと、もしくはエッチング過多によってウェーハを廃棄しなければならなくなることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】ウェットエッチング装置の斜視図である。
【図2】ウェットエッチング装置の動作例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すウェットエッチング装置1は、被加工物を回転可能なテーブルに保持し、回転中の被加工物にエッチング液を滴下してエッチングを施すスピン式のエッチング装置の一例である。ウェットエッチング装置1は、エッチング液を滴下する供給ノズル3と、被加工物を保持し回転可能な回転テーブル2と、加工中の被加工物の厚みを測定する厚み測定器4と、を少なくとも備えている。
【0012】
図1に示す回転テーブル2は、円盤形状となっており、図2に示す支持部21によって支持されている。図2に示すように、回転テーブル2の上面は、被加工物を保持する保持部20が設けられている。回転テーブル2は、支持部21を介してモータ5に連結した回転軸22に接続され、モータ5は、回転テーブル2の下方に位置するモータハウジング50内に配設され、モータ5が駆動することにより回転軸22を回転させ、併せて回転テーブル2を回転させる。
【0013】
図1に示す供給ノズル3は、被加工物に対しエッチング液を滴下するために矢印A1及びA2方向に旋回動可能なアーム30の一端に装着され回転テーブル2の近傍に配設されている。アーム30の他端には、回転テーブル2の近傍に立設している回転軸31が連結されている。供給ノズル3は、回転軸31の回転によりアーム30が揺動し矢印A1及びA2に示す方向にスイングすることができる。すなわち、供給ノズル3は、被加工物の中心と被加工物の外周部との間を放射状方向に往復動作が可能となっている。
【0014】
図2に示すように、供給ノズル3は、エッチング液の滴下位置および滴下量を調整するバルブからなる調節部32を介して薬液源33と接続され、薬液源33から送られてくるエッチング液3bを供給口3aから滴下できるように構成されている。
【0015】
図1に示す厚み測定器4は、被加工物の厚みを検査するために矢印B1及びB2方向に旋回動可能なアーム40の一端に装着され回転テーブル2の近傍に配設されている。アーム40の他端には、回転テーブル2の近傍に立設している回転軸41が連結されている。厚み測定器4は、回転軸41の回転によりアーム40が揺動し矢印B1及びB2に示す方向にスイングすることができる。すなわち、厚み測定器4も供給ノズル3と同様に被加工物の中心と外周部との間を放射状方向に往復動作が可能となっている。これにより、ウェットエッチング処理中のウェーハ6の厚みを監視することが可能となる。
【0016】
厚み測定器4は、下方に所定周波数のレーザ光を照射し、被加工物の表面における反射光と裏面における反射光との干渉波の波形から被加工物の厚みを求める機能を有している。厚み測定器4の下端にはレンズ4aを備え、その上方には図示しないレーザ光源を備えている。また、図1に示すように、厚み測定器4には、被加工物の厚み及び形状を認識する形状認識部42が備えてある。図1に示す制御部43は、本実施形態にかかるウェットエッチング装置1の動作を制御するために備えられており、形状認識部42から送信されてくる測定結果を記憶するメモリ及びCPUが内蔵されており、予めウェーハWの厚みのしきい値が設定されている。エッチング液の滴下量を調節する調節部32に接続されている。
【0017】
形状認識部42は、被加工物の厚みを測定後、制御部43に測定結果を送信し、制御部43がその測定結果を基に被加工物の裏面に必要なエッチング液を滴下する位置と、エッチング液の滴下量とを制御する。このようにして、厚み測定器4は、被加工物のエッチング処理中に被加工物の厚み、被加工物の裏面の平坦度や厚みのバラつき(凹凸部分)などの形状変化を監視できる。
【0018】
以下においては、上記のように構成されるウェットエッチング装置1の動作例について説明する。なお、図1に示すウェーハ6は、ウェットエッチングの対象となる被加工物の一例である。
【0019】
まず、図2に示すように、ウェットエッチングの被加工面となるウェーハ6の裏面6Aを上向きにして表面6Bを回転テーブル2の保持部20の上面に保持する。ウェーハ6が保持部20の上面に保持された後、モータ5が駆動を開始し、回転軸22を回転させるとともに回転テーブル2を所定の回転数で回転させる。そして、図2に示すように、供給ノズル3がアーム30のスイングによりウェーハ6の中心付近上方に位置づけられ、薬液源33から供給されるエッチング液3bを回転中のウェーハ6の裏面6Aに滴下する。
【0020】
エッチング液3bは、回転中のウェーハ6に発生する遠心力によりウェーハ6の外周部に向けて広がっていき、ウェーハ6の裏面6A全体に行き渡る。エッチング液3bをウェーハ6に滴下した後、供給ノズル3は、アーム30が矢印A1またはA2方向にスイングし、ウェーハ6の中心付近から退避する。
【0021】
また、ウェットエッチング加工中に、厚み測定器4によるウェーハ6の厚み測定がなされる。具体的には、図1に示す回転軸41が回転を開始し、アーム40を矢印B1及びB2方向にスイングさせ、厚み測定器4から厚みを検出するためのレーザ光がウェーハ6に向けて照射される。このとき、厚み測定器4をウェーハ6から上方に10cm程度離れた位置に位置させる。また、エッチング液3bの飛沫でレンズ4aが汚れるのを防止するために、厚み測定中はレンズ4aに対して所定量のNガス(窒素ガス)を吹きつける。
【0022】
回転中のウェーハ6にレーザ光が照射されると、裏面6A及び表面6Bにおいて反射光となって厚み検出器4に戻ってくる。厚み検出器4は、2つの干渉波に基づき、ウェーハ6の厚みを求める。また、上述のとおり、裏面6Aには、凹凸形状によりウェーハ6の厚みにはバラつきが発生している可能性があるので、厚み検出器4はウェーハ6の上方をスイングしながら複数箇所をスキャンする。これにより、座標上の位置毎にウェーハ6の厚みのバラつきを認識することができ、エッチング液の滴下位置および滴下量を調整するための情報が得られる。
【0023】
図1に示す形状認識部6は、ウェーハ6の厚み情報を取得後、制御部43に当該情報を送信する。制御部43は、ウェーハ6の厚みが所望の値でない場合には、直ちに予め設定されたウェーハ6の所望の厚みに補正をするために、厚み検出器4から送られてきたウェーハ6の厚さに基づき、エッチング液3bの滴下量を制御するための信号を調節部32に送信する。その後、厚み検出器4は、アーム40が矢印B1またはB2方向にスイングしてウェーハ6の上方から退避する。
【0024】
調節部32に信号が送信されると、図1に示すアーム30がスイングし、供給ノズル3がウェーハ6に対する滴下位置に移動する。ここで、調節部32は、制御部43からの信号を基にエッチング液3bの滴下量を調節して供給ノズル3に送り込み、供給ノズル3はウェーハ6の滴下位置にエッチング液3bを滴下する。なお、制御部43は、例えば座標情報によってエッチング液3bの滴下位置を制御する。
【0025】
全ての滴下位置にエッチング液3bが滴下されると、供給ノズル3をウェーハ6の上方から外周側へ退避させて、再度、厚み検出器4でウェーハ6の厚みを検出する。そして、ウェーハ6の厚みが所望の値に達するまで、厚み検出器4による検査および供給ノズル3によるエッチング液3bの滴下を繰り返す。このようにして、ウェーハ6の厚みが所望の値に達したら、ウェットエッチング装置1の一連の動作は終了する。
【0026】
このように、ウェットエッチング装置1では、厚み測定器4がウェーハの厚みを測定し、その測定結果に基づき、エッチング液の滴下量を制御することができるため、ウェットエッチング処理中にウェーハの厚み及び形状が所望の状態と異なる場合には、直ちに修正をすることができる。したがって、エッチング不足を修正するために再度ウェーハに対しエッチングを施したり、エッチング過多によってウェーハを廃棄したりするのを防止することができる。
【0027】
なお、本実施形態に係るウェットエッチング装置1で使用されるエッチング液は、特定の薬液に限定されるものではない。
【0028】
また、厚み検出器がスイングしない構成の場合には、例えば一度のスキャンでウェーハの裏面を捉えられるように、厚み検出器がウェーハ全面の厚みを測定できるように構成してもよい。
【符号の説明】
【0029】
1:ウェットエッチング装置
2:回転テーブル
20:保持部 21:支持部 22:回転軸
3:供給ノズル 3a:供給口 3b:エッチング液
30:アーム 31:回転軸 32:調節部 33:薬液源
4:厚み測定器 4a:レンズ
40:アーム 41:回転軸 42:形状認識部 43:制御部
5:モータ 50:モータハウジング
6:ウェーハ 6A:裏面 6B:表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング液を滴下するノズルと、ウェーハを保持し回転可能なテーブルと、加工中のウェーハ厚みを測定可能な厚み測定器と、を少なくとも備えるスピン式のウェットエッチング装置において、
テーブルに保持されたウェーハの中心上方で該ノズルからエッチング液をウェーハの一方の面に滴下させるとともに該テーブルを所定の回転数で回転させエッチング液をウェーハの一方の面全体に広げウェットエッチングを行いながら、ウェーハの厚みを測定しエッチング液の滴下量を制御するウェットエッチング装置。
【請求項2】
前記厚み測定器は、ウェーハの中心と外周部との間で放射状方向に往復動作可能とし、
該厚み測定器で測定したウェーハの厚みからウェーハの形状を認識するウェーハ形状認識部と、
該ウェーハ形状認識部がとらえたウェーハの厚さを基にエッチング液を滴下する位置と、エッチング液の滴下量と、を制御する制御部とを備え、
該制御部は、ウェーハの形状を監視し該形状に応じてウェットエッチング処理制御を行う請求項1記載のウェットエッチング装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−69842(P2013−69842A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207059(P2011−207059)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】