説明

ウエザストリップの製造方法

【課題】さほどの困難を伴うことなく、かつ、製造効率の低下等を招くことなく、加硫工程におけるシール部の変形を防止することのできるウエザストリップの製造方法を提供する。
【解決手段】ウエザストリップ5は、断面略U字状をなし、長手方向に沿ってインサート17が埋設されたトリム部11と、スポンジゴムにより構成され、中空部を有するシール部15と、前記中空部を第1中空部15aと第2中空部15bとに分けるブリッジ25とを備えている。また、ウエザストリップ5の一方の端末部(一端部5a)には、シール部15及びブリッジ25に連通孔28、29が形成されている。当該連通孔28、29は、押出工程の後段階かつ加硫工程の前段階において、ウエザストリップ5の一端部5aとなる部位のシール部15及びブリッジ25に対し、シール部15側から孔開け部材を突き通すことで形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のドア開口周縁に取着されるウエザストリップの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車等の自動車ボディに形成されたドア用開口部周縁にはウエザストリップ(オープニングトリム)が設けられる。ウエザストリップは、ドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車内側側壁部と、車外側側壁部と、両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、車外側側壁部から車外側に突出し、中空部を有するシール部とを備えている。そして、ドアを閉めたときに、シール部がドアの周縁部に圧接されることによって、自動車ボディとドアとの間がシールされるようになっている。
【0003】
また、ウエザストリップは、一般に、EPDM(エチレン−ジエン−プロピレン共重合ゴム)により構成され、特に、シール部に関しては、シール性を向上させるべく発泡EPDMにより構成されている。さらに、ウエザストリップは、長手方向全域又は大部分が押出成形によって形成され、トリム部には長手方向に沿って金属製のインサートが埋設されている。
【0004】
ところで、ウエザストリップの製造工程において、押出成形された未加硫のゴム成形体を加硫する際に、シール部の発泡に伴って、シール部の内側に形成された中空部の気圧が変化し、これに起因してシール部が変形してしまうおそれがある。このため、従来、押出成形機に対して前記中空部と連通するパイプが設けられ、当該パイプを介して中空部内の気圧調整が行われていた。
【0005】
しかしながら、シール部の内側において、中空部を第1の中空部と第2の中空部とに分けるブリッジが設けられる場合には、中空領域が狭くなるため各中空部に対応して前記パイプを設けたとしても、前記気圧調整が困難となるおそれがある。また、中空部の内径が小さい場合には、パイプを設けること自体が困難となるおそれがある。
【0006】
これに対し、押出工程の後段階、かつ、加硫工程の前段階において、トリム部の車外側側壁部及びブリッジに対して連通孔を形成し、シール部内の各中空部と大気とを連通させることによって、各中空部内の気圧調整を行うといった技術がある(例えば、特許文献1参照)。当該特許文献1では、トリム部に対して連通孔を形成するために、連通孔形成部位においてトリム部に埋設されるインサートを一部切欠いている。
【特許文献1】特開2002−154149号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1においては、連通孔を形成する際に、針状の孔開け部材をトリム部側からトリム部及びブリッジに突き通すこととなる。しかしながら、当該連通孔の形成に際し、連通孔形成部位において、未加硫状態にあるゴム成形体(ウエザストリップ)のシール部やインサートの切欠かれた車外側側壁部によってブリッジを支持する(ブリッジの変形を抑止する)ことは難しく、事実上ブリッジへの連通孔の形成は著しく困難なものとなる。
【0008】
また、上記特許文献1においては、連通孔形成部位に対応してインサートを一部切欠くための工程が別途必要になる上、インサートが切欠かれた部位が孔開け部材の設置位置に搬送されるタイミングと、孔開け部材をトリム部に突き通すタイミングとを同調させる必要が生じ、製造効率の低下や製造装置にかかるコストの増加等を招いてしまうおそれがある。
【0009】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、さほどの困難を伴うことなく、かつ、製造効率の低下等を招くことなく、加硫工程におけるシール部の変形を防止することのできるウエザストリップの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下、上記目的等を解決するのに適した各手段につき項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する手段に特有の作用効果等を付記する。
【0011】
手段1.車両本体のドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車外側側壁部と車内側側壁部と両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側に突出して設けられ、前記ドア用開口部を開閉するドアの閉鎖時に前記ドアの周縁部に圧接される中空状のシール部と、
前記シール部の内側に形成される中空部内において、前記車外側側壁部と前記シール部とを連結し、前記中空部をドア用開口部内周側の第1中空部と、ドア用開口部外周側の第2中空部とに分けるブリッジとを備え、
前記シール部はスポンジゴムにより構成されるとともに、前記トリム部は前記シール部よりも剛性の高いゴム材料により構成され、
前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設されたウエザストリップの製造方法であって、
未加硫ゴムを押出成形することで所定断面形状のゴム成形体を形成する押出工程と、
前記押出成形された未加硫状態のゴム成形体を加硫する加硫工程と、
前記加硫工程を経たゴム成形体を所定長に裁断する裁断工程とを備えるとともに、
前記押出成形の後段階、かつ、前記加硫工程の前段階において、前記押出成形された未加硫状態のゴム成形体のうち、前記裁断工程において所定長に裁断されるゴム成形体の端末部となる部位において、前記シール部及び前記ブリッジに対し、前記シール部側から孔開け部材を突き通し、前記シール部及び前記ブリッジに連通孔を形成する孔形成工程を備えていることを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【0012】
手段1によれば、押出工程の後段階、かつ、加硫工程の前段階において、シール部及びブリッジに対して連通孔が形成される。つまり、加硫工程よりも前の段階で、シール部の内側に形成された第1中空部及び第2中空部と大気とが連通孔を介して連通することとなる。このため、加硫工程においてシール部が発泡したとしても、連通孔を通じて各中空部内の気圧の調整が自然となされる。従って、中空部内の気圧変化に起因するシール部の変形を防止することができ、結果として、シール部の変形による意匠性の低下を防止することができる。
【0013】
さらに、連通孔は裁断工程において所定長に裁断されるゴム成形体の端末部(ウエザストリップの長手方向全域が押出成形により形成される場合にはウエザストリップ自体の端末部)に形成される。このため、例えば、前記端末部がドア用開口部の下縁部に位置するようにしてウエザストリップを取付ける場合には、連通孔をスカッフプレート等によって覆うことができる。また、例えば、前記端末部に対して型成形部を接続成形する場合には、型成形部の成形材料によって連通孔を埋める(塞ぐ、覆う)ことができる。従って、連通孔が視認されることに起因して、意匠性の低下を招いてしまうといった事態を防止することができる。
【0014】
また、孔形成工程においては、シール部側から孔開け部材がシール部及びブリッジに突き通される。従って、孔開け部材をシール部及びブリッジに突き通す際に、当該シール部及びブリッジは、インサートが埋設されたトリム部によって支持される(変形が制限される)。このため、確実に孔開け部材をシール部及びブリッジに突き通し、連通孔を確実に形成することができる。
【0015】
さらに、シール部側から孔開け部材がシール部及びブリッジに突き通されるため、トリム部に埋設されたインサートに阻害されることなく、シール部及びブリッジに対して連通孔を形成することができる。また、トリム部側から孔開け部材をトリム部及びブリッジに突き通して、トリム部及びブリッジに連通孔を形成する場合のように、インサートを一部切欠く必要がなく、製造効率の低下等を防止することができる。さらに、インサートが切欠かれた部位が孔開け部材の設置位置に搬送されるタイミングと、孔開け部材をトリム部に突き通すタイミングとを同調させるといった必要もなく、これによって製造効率の低下や製造装置にかかるコストの増加等を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0016】
手段2.前記孔形成工程において、前記連通孔は、前記裁断工程において所定長に裁断されるゴム成形体の全長と同じピッチで形成されることを特徴とする手段1に記載のウエザストリップの製造方法。
【0017】
手段2によれば、例えば、長手方向全域が押出成形により形成されるウエザストリップの両方の端末部に対応して、ウエザストリップの端縁よりも内側にそれぞれ連通孔を形成する場合、つまり、一本のウエザストリップに略環状の連通孔が2箇所に形成される場合に比べ、孔形成工程に際して用いられる孔形成装置の簡素化等を図ることができる。
【0018】
尚、例えば、長手方向全域が押出成形により形成されるウエザストリップの一方の端末部にのみ連通孔を形成する場合であっても、製造工程において、他方の端末部は、別のウエザストリップの一方の端末部に隣接しているため、ウエザストリップの両方の端末部に連通孔を形成しなくても、上記作用効果が十分に奏される。
【0019】
また、裁断工程に際し、連通孔から外れた位置においてゴム成形体を裁断してもよいし、連通孔を通るように、つまり、連通孔が分断されるようにゴム成形体を裁断してもよい。前者の構成を採用する場合、裁断工程において所定長に裁断されたゴム成形体一本につき1箇所に(シール部及びブリッジにおいてそれぞれ1つずつ)連通孔が形成され、後者の構成を採用する場合、裁断工程において所定長に裁断されたゴム成形体の両端末部の端縁に略半円形状の連通孔の跡がそれぞれ形成されることとなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、一実施形態について図面を参照して説明する。図1に示すように、車両としての自動車1には、自動車ドア(図ではフロントドア:以下、単に「ドア2」という)が開閉可能に設けられている。また、ドア2に対応する自動車ボディ3(車両本体)のドア用開口部4の周縁部には、ドア2の閉鎖時においてドア用開口部4の周縁部とドア2との間をシールするウエザストリップ5が設けられている。
【0021】
図2に示すように、ウエザストリップ5は、長手方向全域が押出成形によって形成されており、ドア用開口部4の内周に沿って形成されたフランジ部33(図3参照)に対し、長手方向における一方の端末部(一端部5a)と他方の端末部(他端部5b)とがドア用開口部4の下縁部に位置するようにして取付けられている。尚、本実施形態で言う一端部5a及び他端部5bは、ウエザストリップ5の長手方向における端縁だけではなく、その近傍部位(ドア用開口部4の下縁部に対応して設けられ、後述するスカッフプレート41によって覆われる部位)を含む趣旨である。
【0022】
図3に示すように、ウエザストリップ5は、車内側側壁部12と、車外側側壁部13と、両側壁部12、13を連結する連結部14とを具備して断面略U字状をなすトリム部11と、車外側側壁部13から車外側に突出して設けられ、内部に中空部を有してなるシール部15とを備えている。また、トリム部11には、その長手方向に沿って金属製のインサート17が埋設されている。本実施形態のインサート17は、トリム部11の長手方向に沿って所定間隔毎に埋設された断面略U字状の骨片部17aと、各骨片部17aの略中央部同士を連結するセンターボンド部(図示略)とを備える所謂センターボンドタイプ(魚骨タイプ)のインサートである。
【0023】
また、フランジ部33は、自動車ボディ3を構成するインナパネル31及びアウタパネル32が接合されることにより形成されている。尚、部位によっては、さらに補強板(図示略)も接合されてフランジ部33が形成されている。そして、トリム部11の内側にフランジ部33を相対的に嵌め込むことで、ウエザストリップ5がドア用開口部4の周縁部に取付けられている。また、ドア2の閉鎖時においては、シール部15がドア2の周縁部に圧接して潰れ変形し、これによりドア2と自動車ボディ3との間がシールされるようになっている。
【0024】
さらに、ウエザストリップ5は、車内側側壁部12から車外側かつ連結部14側に向けて延びる一本の車内側保持リップ21と、車外側側壁部13から車内側かつ連結部14側に向けて延びる複数本の車外側保持リップ22とを備えている。複数本の車外側保持リップ22は、トリム部11のフランジ部33への取付方向において互いに所定距離を隔てて設けられている。また、車内側保持リップ21は、車外側保持リップ22よりも太くかつ長く構成されている。そして、トリム部11の断面略U字状の内側にフランジ部33を相対的に嵌め込むことで、車内側保持リップ21及び全ての車外側保持リップ22がフランジ部33の側面に圧接するとともに、保持リップ21、22による弾性力等に基づいてウエザストリップ5の取付状態が保持されるようになっている。また、トリム部11のフランジ部33への取付状態においては、車内側保持リップ21により、車外側保持リップ22がフランジ部33に押付けられ、車外側側壁部13がフランジ部33に沿って(略平行して)延在することとなる。
【0025】
本実施形態では、トリム部11及び保持リップ21、22はソリッドEPDM(エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム)により構成され、シール部15はスポンジEPDMにより構成されている。
【0026】
また、本実施形態では、トリム部11とシール部15とが第1延出部23及び第2延出部24を介して連結されている。第1延出部23は、車外側側壁部13の連結部14との境界部近傍からドア用開口部4の内周側(図3では下側)に傾斜しつつ車外側(図3では左側)に延出している。第2延出部24は、車外側側壁部13の先端部から車外側側壁部13とほぼ直交して車外側に延出している。そして、シール部15は、第1延出部23の先端部と第2延出部24の先端部とにかけて、車外側に凸となるように湾曲形成されている。また、第1延出部23及び第2延出部24はソリッドEPDMにより構成されている。
【0027】
さらに、シール部15の内側には、車外側側壁部13からシール部15へと架け渡されるブリッジ25が設けられており、該ブリッジ25により、シール部15の内側に形成される中空部が、ドア用開口部4内周側の第1中空部15aと、外周側の第2中空部15bとに分けられている。ブリッジ25はスポンジEPDMにより構成されている。
【0028】
また、ブリッジ25はドア2の開閉方向(図3では左右方向)に対して斜めに交わる方向にほぼ直線状に延びている。より詳しくは、ブリッジ25の車外側側壁部13との連接部25aの位置は、車外側側壁部13の第1延出部23との境界部付近に設定されている。また、ブリッジ25のシール部15との連接部25bの位置は、第2延出部24の先端部から当該連接部25bにかけてのシール部15の周長「L1」を、シール部15の全周長「L2」で除算したときの値「L1/L2」が「0.20」以上かつ「0.35」以下となる範囲内(例えば「0.25」程度)で設定されている。本実施形態では、ドア2の閉鎖時には、シール部15のうち第1中空部15aを形成する部位がドア2の周縁部と当接し、基本的にシール部15のうち第2中空部15bを形成する部位はドア2と当接しない構成となっている。尚、ブリッジ25は、ウエザストリップ5をドア用開口部4のコーナー部に沿って湾曲させて装着したときの中空部(15a、15b)の潰れ変形を防止するために設けられている。
【0029】
また、ウエザストリップ5は、シール部15と第1延出部23との境界部から、シール部15を車内側かつドア用開口部4内周側に延長させるようにして形成されたカバーリップ26を備えている。当該カバーリップ26により、ガーニッシュ等の内装部材35の端部がドア用開口部4の内周側から覆われている。また、カバーリップ26はスポンジEPDMにより構成されている。
【0030】
加えて、シール部15、カバーリップ26、及び第2延出部24の外表面には、ソリッドEPDMよりなる被覆層27が形成されている。また、被覆層27の厚みはほぼ均一となっている。尚、被覆層27は押出成形時にシール部15等と同時に成形される。
【0031】
さて、図4に示すように、本実施形態では、ウエザストリップ5の端末部のうち一方(本例では前記一端部5a)において、シール部15に対して第1連通孔28が形成され、ブリッジ25に対して第2連通孔29が形成されている。また、図1に示すように、ドア用開口部4の下縁部にはスカッフプレート41が取付けられている。本実施形態では、スカッフプレート41により、ウエザストリップ5のうちドア用開口部4の下縁部に対応して設けられる部位のトリム部11及びシール部15が覆われている。このように、スカッフプレート41によってシール部15が覆われることで、ウエザストリップ5の一端部5aにおいてシール部15に形成された第1連通孔28についても覆われることとなり、当該第1連通孔28は外部から視認できないようになっている。
【0032】
次に、上記ウエザストリップ5の製造方法について説明する。図5はウエザストリップ5の製造ラインの一部を示す模式図であり、同図中においてウエザストリップ5(ゴム成形体50)は左側から右方向に進みながら製造される。
【0033】
まず、押出工程においては、押出成形機51に対し、EPDM未加硫ゴムとともにインサート17が連続的に供給される。そして、EPDM未加硫ゴムによってインサート17が被覆された状態で、押出成形機51のダイスから所定の断面形状をなすゴム成形体50(中間成形体)が押出成形される。この段階では、トリム部11に相当するインサート17を埋設した部位は、図5の破線で示すように車内側側壁部12及び車外側側壁部13が大きく開いた状態で略平板状に押出される。
【0034】
続いて、孔形成工程では、押出成形された未加硫状態のゴム成形体50のうちウエザストリップ5の一端部5aとなる部位において、シール部15及びブリッジ25に対し、シール部15側から針状の孔開け部材53(錐或いはドリル等)を突き通す。これにより、シール部15及びブリッジ25に第1及び第2連通孔28、29が形成される。
【0035】
尚、孔開け部材53を具備する孔形成装置は、連通孔28、29の形成に際し、図5の二点鎖線で示すように、孔開け部材53をゴム成形体50の搬送方向においてゴム成形体50の搬送速度と同調させて移動させつつ、ゴム成形体50に対して孔開け部材53を突き刺したり抜き取ったりしている。これにより、連通孔28、29がゴム成形体50の搬送方向において大きく広がってしまうといった事態を防止することができる。また、本実施形態では、ウエザストリップ5の全長(長手方向における長さ)と同じピッチでゴム成形体50に対し連通孔28、29が形成される。さらに、本実施形態では、ウエザストリップ5の端縁ではなく、端縁から長手方向において所定距離離れた位置に連通孔28、29が形成される(図2参照)。このため、一本のウエザストリップ5につき1箇所に(シール部15及びブリッジ25においてそれぞれ1つずつ)連通孔28、29が形成されることとなる。
【0036】
続く加硫工程では、連通孔28、29が形成された未加硫状態のゴム成形体50が加硫装置55に案内され、加硫が施される。このとき、シール部15の発泡に応じて、連通孔28、29を介して大気と連通した各中空部15a、15b内の気圧が自然と調整される(大気圧と同等になる)。
【0037】
加硫工程を経たゴム成形体50は、曲げ工程においてトリム部11に相当する部位が断面略U字状に曲げ加工される。その後、裁断工程において、図示しない裁断装置によりゴム成形体50が所定長に裁断される。以上のようにして、図3に示す断面形状を有し、一端部5aにおいてシール部15及びブリッジ25に対し連通孔28、29が形成されたウエザストリップ5が得られる。
【0038】
以上詳述したように、本実施形態によれば、押出工程の後段階、かつ、加硫工程の前段階において、シール部15及びブリッジ25に対して第1及び第2連通孔28、29が形成される。つまり、加硫工程の前段階で、シール部15の内側に形成された第1中空部15a及び第2中空部15bと大気とが連通孔28、29を介して連通することとなる。このため、加硫工程においてシール部15が発泡したとしても、連通孔28、29を通じて各中空部15a、15b内の気圧の調整が自然となされる。従って、中空部15a、15b内の気圧変化に起因するシール部15の変形を防止することができる。結果として、シール部15の変形による意匠性の低下を防止することができる。
【0039】
さらに、連通孔28、29はウエザストリップ5の端末部(一端部5a)に形成されるため、シール部15に形成された第1連通孔28をスカッフプレート41によって覆うことができる。従って、第1連通孔28が視認されることに起因して、意匠性の低下を招いてしまうといった事態を防止することができる。
【0040】
また、孔形成工程においては、シール部15側から孔開け部材53がシール部15及びブリッジ25に突き通される。従って、孔開け部材53をシール部15及びブリッジ25に突き通す際に、当該シール部15及びブリッジ25は、インサート17が埋設されたトリム部11によって支持される(変形が制限される)。このため、確実に孔開け部材53をシール部15及びブリッジ25に突き通し、連通孔28、29を確実に形成することができる。
【0041】
さらに、シール部15側から孔開け部材53がシール部15及びブリッジ25に突き通されるため、トリム部11に埋設されたインサート17に阻害されることなく、シール部15及びブリッジ25に対して連通孔28、29を形成することができる。また、トリム部11側から孔開け部材53をトリム部11及びブリッジ25に突き通して、トリム部11及びブリッジ25に連通孔を形成する場合のように、インサート17を一部切欠く必要がなく、製造効率の低下等を防止することができる。さらに、インサート17が切欠かれた部位が孔開け部材53の設置位置に搬送されるタイミングと、孔開け部材53をトリム部11に突き通すタイミングとを同調させるといった必要もなく、これによって製造効率の低下や製造装置にかかるコストの増加等を招いてしまうといった事態を回避することができる。
【0042】
また、孔形成工程において、連通孔28、29はウエザストリップ5の全長と同じピッチで形成される。このため、例えば、ウエザストリップ5の両方の端末部に対応して、ウエザストリップ5の端縁よりも内側にそれぞれ連通孔28、29を形成する場合、つまり、一本のウエザストリップ5に略環状の連通孔28、29が2箇所に形成される場合に比べ、孔形成工程に際して用いられる孔形成装置の簡素化等を図ることができる。
【0043】
尚、例えば、ウエザストリップ5の一方の端末部(一端部5a)にのみ連通孔28、29を形成する場合であっても、製造工程において、他方の端末部(他端部5b)は、別のウエザストリップ5の一方の端末部(一端部5a)に隣接しているため、ウエザストリップ5の両方の端末部に連通孔28、29を形成しなくても、上記作用効果が十分に奏される。
【0044】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0045】
(a)上記実施形態では、フロントドア2に対応する自動車ボディ3のドア用開口部4の周縁部に設けられるウエザストリップ5について具体化しているが、リヤドア等の他のドアの周縁部に圧接されるウエザストリップについて適用することも可能である。また、カバーリップ26が省略されたウエザストリップや、カバーリップ26が連結部14から車内側に延出したウエザストリップに適用することも可能である。
【0046】
(b)上記実施形態ではトリム部11がソリッドEPDMにより構成されているが、トリム部11がシール部15よりも剛性の高いスポンジEPDMにより構成されることとしてもよい。この場合、ウエザストリップ5の軽量化を図ることができる。
【0047】
(c)上記実施形態において、ウエザストリップ5の一端部5aと他端部5bとを型成形部により接続することとしてもよい。また、当該構成を採用する場合、少なくとも第1連通孔28を型成形部の成形材料によって埋める(塞ぐ、覆う)こととしてもよい。この場合、スカッフプレート41によりウエザストリップ5のシール部15を覆わなくても、開口した第1連通孔28が視認されることに起因して意匠性が低下してしまうといった事態を防止することができる。また、当該構成を採用する場合、シール部15の車外側の部位をスカッフプレート41よりも車外側に突出させ、ドア用開口部4の下縁部においても、ドア2の閉鎖時において、シール部15がドア2の周縁部に圧接されるように構成してもよい。
【0048】
尚、上記実施形態においても、スカッフプレート41によって、シール部15に形成された第1連通孔28が覆われる(隠される)ように構成されていればよく、シール部15のうち第1連通孔28よりも車外側の部位をスカッフプレート41から車外側に突出させ、当該シール部15がドア2の閉鎖時においてドア2の周縁部に圧接されるように構成してもよい。
【0049】
(d)上記実施形態では、連通孔28、29は、ウエザストリップ5の端縁よりも内側(端縁から外れた位置)に形成されているが、図6に示すように、ウエザストリップ5の端縁に連通孔28、29を形成してもよい。すなわち、孔形成工程において、ウエザストリップ5の端縁となる部位(所定のウエザストリップ5となる部位と、これに隣接する別のウエザストリップ5となる部位との境界部)において連通孔28、29を形成し、裁断工程において、連通孔28、29を分断するようにして、ゴム成形体50を裁断する。これにより、長手方向両端縁において、それぞれ略半円形状の連通孔28、29の跡が形成されたウエザストリップ5が形成される。尚、上記(c)に記載のように、ウエザストリップ5の両端末部5a、5bを型成形部により接続する場合には、当該(d)の構成を作用することで、第1連通孔28を型成形部で比較的容易に埋めることができる。
【0050】
(e)上記実施形態では特に言及していないが、連通孔28、29の径は、ウエザストリップ5の寸法(長手方向における長さ)に応じて設定されることとする。すなわち、例えば、ウエザストリップ5の全長が2mの場合には連通孔28、29の径が2mm、ウエザストリップ5の全長が3mの場合には連通孔28、29の径が3mm、ウエザストリップ5の全長が4mの場合には連通孔28、29の径が4mm、ウエザストリップ5の全長が5mの場合には連通孔28、29の径が5mmといった具合に、ウエザストリップ5が長くなるほど連通孔28、29の径も大きく形成される。
【0051】
(f)上記実施形態では特に言及していないが、押出成形機51から加硫装置55に搬送される間のゴム成形体50は、トリム部11のインサート17が所定の張力を受けることで緊張状態とされて搬送される構成である。そのため、孔開け部材53を上方からシール部15及びブリッジ25に対して進入させるときに、トリム部11によってシール部15及びブリッジ25を支持することができる。さらに、ゴム成形体50の下面(トリム部11の内側面に相当する部位)を支持する搬送手段(コンベアやローラ等)に載置されて搬送される構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】フロントドアが開状態にある自動車の斜視図である。
【図2】ウエザストリップの正面図である。
【図3】ウエザストリップを示す図2のJ−J線断面図である。
【図4】フランジ部への取付前の状態にあるウエザストリップの一端部を示す図2のK−K線断面図である。
【図5】ウエザストリップの製造工程を示す説明図である。
【図6】別の実施形態におけるウエザストリップを示す模式斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1…自動車、2…ドア、3…自動車ボディ、4…ドア用開口部、5…ウエザストリップ、11…トリム部、12…車内側側壁部、13…車外側側壁部、14…連結部、15…シール部、15a…第1中空部、15b…第2中空部、17…インサート、25…ブリッジ、28…第1連通孔、29…第2連通孔、33…フランジ部、41…スカッフプレート、50…ゴム成形体、51…押出成形機、53…孔開け部材、55…加硫装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両本体のドア用開口部周縁に沿って設けられたフランジ部に取付けられ、車外側側壁部と車内側側壁部と両側壁部を連結する連結部とを具備する断面略U字状のトリム部と、
前記車外側側壁部から車外側に突出して設けられ、前記ドア用開口部を開閉するドアの閉鎖時に前記ドアの周縁部に圧接される中空状のシール部と、
前記シール部の内側に形成される中空部内において、前記車外側側壁部と前記シール部とを連結し、前記中空部をドア用開口部内周側の第1中空部と、ドア用開口部外周側の第2中空部とに分けるブリッジとを備え、
前記シール部はスポンジゴムにより構成されるとともに、前記トリム部は前記シール部よりも剛性の高いゴム材料により構成され、
前記トリム部には、その長手方向に沿って金属製のインサートが埋設されたウエザストリップの製造方法であって、
未加硫ゴムを押出成形することで所定断面形状のゴム成形体を形成する押出工程と、
前記押出成形された未加硫状態のゴム成形体を加硫する加硫工程と、
前記加硫工程を経たゴム成形体を所定長に裁断する裁断工程とを備えるとともに、
前記押出成形の後段階、かつ、前記加硫工程の前段階において、前記押出成形された未加硫状態のゴム成形体のうち、前記裁断工程において所定長に裁断されるゴム成形体の端末部となる部位において、前記シール部及び前記ブリッジに対し、前記シール部側から孔開け部材を突き通し、前記シール部及び前記ブリッジに連通孔を形成する孔形成工程を備えていることを特徴とするウエザストリップの製造方法。
【請求項2】
前記孔形成工程において、前記連通孔は、前記裁断工程において所定長に裁断されるゴム成形体の全長と同じピッチで形成されることを特徴とする請求項1に記載のウエザストリップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−126040(P2010−126040A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−304083(P2008−304083)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】