説明

ウエハ製造方法及びウエハ製造装置

【課題】ウエハのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制する。
【解決手段】四角柱状に形成される複数のインゴット1の平坦な4つの側面1a同士を、それらの間に中間板材2が挟まれるように接着剤3で隙間なく接着して、インゴット連結体Bが形成され、このインゴット連結体Bと切断機Sを相対的にインゴット1の長手方向と交差する方向に移動させて、インゴット連結体Bの全体をスライスすることにより、複数の連結片B1としてインゴット1から切り出されるウエハWと、中間板材2から切り出される中間断片Mとが互いに接着された状態で切り出されるため、切断機Sからの振動が各ウエハWの角部や端部に伝わり難く、その後、連結片B1における接着剤3の接着力を低下させることにより、ウエハWと中間断片Mとに分離される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば太陽電池に用いられるウエハ製造方法と、その方法の実施に直接使用するウエハ製造装置に関する。
詳しくは、四角柱状のインゴットを切断機により複数のウエハにスライスするウエハ製造方法及びウエハ製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のウエハ製造方法及びウエハ製造装置として、多結晶シリコンのインゴットをバンドソー型切断機などで直方体形状の半導体ブロックへと切断し、この半導体ブロックが接着剤などによりスライスベースの一面に接着され、ワイヤーソー装置のワイヤーと対向するように複数の半導体ブロックを配置し、これら半導体ブロックを徐々に下降させてワイヤーに押しつけることにより、各半導体ブロックが同時に切断されて複数の半導体ウエハを得るものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−278701号公報(図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このような従来のウエハ製造方法及びウエハ製造装置では、直方体形状のインゴットを個別にワイヤーソーでウエハの厚みが例えば300μm以下にスライスするため、このスライス時の振動などにより特にウエハの角部や端部においてチッピングや割れ・欠けなどが発生し易く、その分だけ歩留まりが低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に対処することを課題とするものであり、ウエハのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制すること、ウエハの分離時におけるチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制すること、ウエハ同士の分離が容易でありながらウエハの分離時におけるチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を更に抑制すること、などを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的を達成するために本発明によるウエハ製造方法は、四角柱状に形成される複数のインゴットの平坦な4つの側面同士を、それらの間に中間板材が挟まれるように接着剤で隙間なく接着して、インゴット連結体を形成するインゴット接着工程と、前記インゴット連結体と切断機を相対的に前記インゴットの長手方向と交差する方向へ移動させることで、前記インゴット連結体の全体をスライスして複数の連結片を切り出すスライス工程と、前記連結片における前記接着剤の接着力を低下させることで、前記インゴットから切り出されるウエハと、前記中間板材から切り出される中間断片とに分離するウエハ分離工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
前述した特徴に加えて、前記中間板材の表面を、それぞれの表面粗さが前記インゴットの前記側面の表面粗さよりも小さくなるように形成したことを特徴とする。
【0008】
さらに前述した特徴に加えて、前記中間板材を前記インゴットと熱膨張率が異なる材料で構成し、前記接着剤として温度変化で接着強度が低下するものを用いたことを特徴とする。
【0009】
また本発明によるウエハ製造装置は、四角柱状に形成されて4つの平坦な側面を有する複数のインゴットと、前記インゴットの前記側面の間に挟まれるように設けられる中間板材と、複数の前記インゴットの前記側面と複数の前記中間板材の表面を隙間なく相互に接合するように連結してインゴット連結体を形成する接着剤と、前記インゴット連結体と相対的に前記インゴットの長手方向と交差する方向へ移動するように設けられ、前記インゴット連結体の全体をスライスして複数の連結片を切り出す切断機とを備え、前記切断機は、前記連結片として、前記インゴットから切り出されるウエハと、前記中間板材から切り出される中間断片とが前記接着剤で互いに接着された状態で切り出すことを特徴とする。
【0010】
さらに前述した特徴に加えて、前記中間板材を前記インゴットの硬度とほぼ同じ又はそれに近い材料で構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
前述した特徴を有する本発明によるウエハ製造方法は、四角柱状に形成される複数のインゴットの平坦な4つの側面同士を、それらの間に中間板材が挟まれるように接着剤で隙間なく接着して、インゴット連結体が形成され、このインゴット連結体と切断機を相対的にインゴットの長手方向と交差する方向に移動させて、インゴット連結体の全体をスライスすることにより、複数の連結片としてインゴットから切り出されるウエハと、中間板材から切り出される中間断片が互いに接着された状態で切り出されるため、切断機からの振動が各ウエハの角部や端部に伝わり難く、その後、連結片における接着剤の接着力を低下させることにより、ウエハと中間断片とに分離されるので、ウエハのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制することができる。
その結果、直方体形状のインゴットを個別にスライスする従来のウエハ製造方法に比べ、チッピングや割れ・欠けなどの不良が無い高品質なウエハを大量に安価で得ることができ、歩留まりを向上させることができる。それにより、高い品質と低コストが要求される太陽電池素子の作製などに対して極めて適している。
【0012】
さらに、前記中間板材の表面を、それぞれの表面粗さが前記インゴットの前記側面の表面粗さよりも小さくなるように形成した場合には、インゴットの側面と接着剤との接着強度よりも中間板材の表面と接着剤との接着強度が低いため、スライスされたウエハと中間断片を分離する時に、中間断片の表面から接着剤が剥がれて、各ウエハの角部や端部に無理な力が掛からずに分離可能となるので、ウエハの分離時におけるチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制することができる。
その結果、生産性に優れ、歩留まりを更に向上させることができる。
【0013】
さらに、前記中間板材を前記インゴットと熱膨張率が異なる材料で構成し、前記接着剤として温度変化で接着強度が低下するものを用いた場合には、スライスされた連結片を温度変化させることにより、接着剤の接着強度が低下すると同時に、温度変化に伴うウエハ及び中間断片の熱膨張率の違いによる変形で、ウエハと中間断片がスムーズに剥がれるので、ウエハ同士の分離が容易でありながらウエハの分離時におけるチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を更に抑制することができる。
その結果、生産性に優れ、歩留まりを更に向上させることができる。
さらに、シリコンのインゴットに対しガラス製の中間板材を用いた場合には、中間板材を安価に製作できるため、切断コストの安く抑えることができる。
【0014】
また、本発明によるウエハ製造装置は、四角柱状に形成される複数のインゴットの平坦な4つの側面同士を、それらの間に中間板材が挟まれるように接着剤で隙間なく接着して、インゴット連結体が形成され、このインゴット連結体と切断機を相対的にインゴットの長手方向と交差する方向に移動させて、インゴット連結体の全体をスライスすることにより、複数の連結片としてインゴットから切り出されるウエハと、中間板材から切り出される中間断片とが互いに接着された状態で切り出されるため、切断機からの振動が各ウエハの角部や端部に伝わり難いので、スライス時におけるウエハのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制することができる。
その結果、直方体形状のインゴットを個別にスライスする従来のウエハ製造装置に比べ、チッピングや割れ・欠けなどの不良が無い高品質なウエハを大量に安価で得ることができ、歩留まりを向上させることができる。それにより、高い品質と低コストが要求される太陽電池素子の作製などに対して極めて適している。
【0015】
さらに、前記中間板材を前記インゴットの硬度とほぼ同じ又はそれに近い材料で構成した場合には、インゴットと中間板材及び接着剤を切断機でスライスする時に、インゴット及び中間板材の切断抵抗が小さいので、スライス時におけるウエハのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を更に抑制することができる。
その結果、生産性に優れ、歩留まりを更に向上させることができる。
さらに、シリコンのインゴットに対しガラス製の中間板材を用いた場合には、中間板材を安価に製作できるため、切断コストの安く抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るウエハ製造方法においてインゴット接着工程を示す説明図であり、(a)〜(i)に工程順に示している。
【図2】スライス工程及びウエハ製造装置の全体構成を示す斜視図である。
【図3】ウエハ分離工程を示す説明図であり、(a)がウエハ分離前を示し、(b)がウエハ分離後を示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係るウエハ製造方法は、図1〜図3に示すように、四角柱状に形成される複数のインゴット1の平坦な4つの側面1a同士を、それらの間に中間板材2が挟まれるように接着剤3で隙間なく接着して、インゴット連結体Bを形成するインゴット接着工程と、インゴット連結体Bと切断機Sを相対的にインゴット1の長手方向と交差する方向へ移動させることで、インゴット連結体Bの全体を一緒にスライスして複数の連結片B1を切り出すスライス工程と、連結片B1における接着剤3の接着力を低下させることで、インゴット1から切り出されるウエハWと、中間板材2から切り出される中間断片Mとに分離するウエハ分離工程とを含んでいる。
【0018】
このようなウエハ製造方法の実施に直接使用するウエハ製造装置Aは、図2に示すように、四角柱状に形成されて4つの平坦な側面1aを有する複数のインゴット1と、インゴット1の側面1aの間に挟まれるように設けられる中間板材2と、複数のインゴット1の側面1aと複数の中間板材2の表面2aを隙間なく相互に接合するように連結してインゴット連結体Bを形成する接着剤3と、インゴット連結体Bと相対的にインゴット1の長手方向と交差する方向へ移動するように設けられ、インゴット連結体Bの全体を一緒にスライスして複数の連結片B1を切り出す切断機Sとを備えている。
【0019】
インゴット1は、例えば太陽電池などを製造するために適した材料、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン、微結晶シリコン、アモルファスシリコンやその他の材料などで四角柱状に形成され、その外周に4つの平坦な側面1aをそれぞれ平行に配置形成している。
インゴット接着工程では、複数のインゴット1を例えば図1(a)〜(i)に示すように、各インゴット1の側面1aが、それぞれ隣り合うインゴット1の側面1aと隙間なく相互に接合するように、横方向(X方向)と縦方向(Y方向)へそれぞれの長手方向(軸方向)が平行となるように並べられ、多層状に積み上げている。
【0020】
中間板材2は、インゴット1の硬度とほぼ同じ又はそれに近い材料で構成することが好ましい。
さらに、中間板材2は、その表裏両表面2aをインゴット1の側面1aの表面粗さよりも表面粗さが小さくて滑らかに形成することによって、中間板材2の表面2aと後述する接着剤3との接着強度をインゴット1の側面1aと接着剤3との接着強度よりも低くすることが好ましい。
また、中間板材2は、インゴット1の材料と熱膨張率が異なる材料により形成して、インゴット1と中間板材2が貼り合わされた状態で温度変化(加熱又は冷却)させることにより、インゴット1及び中間板材2の変形量の違いで両者間に剥離力が発生するように構成することが好ましい。
中間板材2の具体例としては、インゴット1がシリコンで形成される場合には、中間板材2としてガラス板、特にシリコンとの識別が容易な青板ガラスを用いることが好ましい。
【0021】
接着剤3は、後述する切断機Sによるスライス時にはある程度の接着強度を有し、スライス後には温度変化(加熱又は冷却)により軟化して接着力が低下するものを用いることが好ましい。
その具体例としては、エポキシ樹脂系二液混合型接着剤やその他の接着剤が用いられ、横方向と縦方向へ複数並べられた各インゴット1の側面1aと、側面1aの間に挟まれる中間板材2の表裏両表面2aとをそれぞれ接着することにより、複数のインゴット1を1つのブロック状に連結してインゴット連結体Bが形成される。
【0022】
インゴット連結体Bの後述する切断機Sと対向する一端面には、切断機Sによる切り始め部分の欠損を防ぐための固定板4が接着剤3で接着され、他端面には、切り終わり部分の欠損を防ぐための当て板(スライスベース)5が接着剤3で接着され、これら固定板4及び当て板5でインゴット連結体Bを挟み込むことが好ましい。
固定板4及び当て板5も、中間板材3と同様に、例えばガラス板などで形成することが好ましい。
さらに、少なくとも当て板5において、インゴット連結体Bの端面と対向する接着面5aには、例えばサンドブラストなどの粗面加工を行うなどして、その表面粗さを大きくすることにより、中間板材2との接着強度よりも接着強度が高くなって剥がれ難くすることが好ましい。
【0023】
切断機Sは、スライス工程において例えば図2に示すように、インゴット連結体Bと相対的にインゴット1の長手方向(軸方向)と交差する幅方向へ移動することにより、インゴット連結体Bの全体、すなわちインゴット1、中間板材2及び接着剤3を一緒にスライスするスライスマシンである。
切断機Sによりインゴット連結体Bの全体を一緒にスライスすることで、複数の連結片B1が切り出され、これら連結片B1は、各インゴット1から切り出される複数のウエハWと、中間板材2から切り出される複数の中間断片Mとを接着剤3で接着している。
切断機Sの具体例としては、マルチワイヤーソー、マルチバンドソー、内周刃式切断機などが用いられる。
各インゴット1から肉薄のウエハが多数切り出せるようにマルチワイヤーソーを用いることが好ましい。
【0024】
ウエハ分離工程では、例えば図3(a)(b)に示すように、切断機Sによってスライスされた連結片B1を温度変化(加熱又は冷却)させることにより、接着剤3が軟化して接着力を低下させるとともに、熱膨張率が異なる材料からなる各ウエハWと各中間断片Mとの間に剥離力を発生させて、各ウエハWと接着剤3の接着強度よりも低い各中間断片Mの表面と接着剤3との間から分離することが好ましい。
【0025】
また必要に応じ、ウエハ分離工程の後工程として接着剤剥離工程を含むことが好ましい。
接着剤剥離工程とは、各ウエハWと各中間断片Mが分離された後に、各ウエハWの外周に付着し残留する接着剤3を剥離して除去する工程であり、その具体例としては、例えば高温水などを使用した処理やその他の化学的な処理が考えられる。
【0026】
このようなウエハ製造方法及びウエハ製造装置Aによると、インゴット連結体BからウエハWを切り出す際に、各ウエハWの角部や端部が中間断片Mと接着された状態で一緒にスライスされるため、切断機Sからの振動が各ウエハWの角部や端部に伝わり難くなり、それによって、スライス時におけるウエハWのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制できる。
【0027】
特に、中間板材2をインゴット1の硬度とほぼ同じ又はそれに近い材料で構成すると、インゴット1と中間板材2及び接着剤3を切断機Sで一緒にスライスする時に、インゴット1及び中間板材2の切断抵抗が小さい。
それにより、スライス時におけるウエハWのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を更に抑制することができる。
【0028】
さらに、隣り合うインゴット1の側面1aの間に、インゴット1の側面1aの表面粗さよりも表面粗さが小さくて、且つインゴット1の材料と熱膨張率が異なる材料により形成した中間板材2を接着剤3で接着すると、下記の理由でウエハW同士の分離が容易になるとともに、分離時におけるウエハWのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制できる。
すなわち、中間板材2を挟まずに接着剤3のみで各インゴット1の側面1a同士を直接的に接着すると、各インゴット1の側面1aと接着剤3との接着強度が高くなるため、スライスされたウエハW同士を分離する時に、各ウエハWの角部や端部に無理な力が掛かって、チッピングや割れ・欠けなどが発生し易くなる。
これに対し、本発明の実施形態では、各インゴット1の側面1aと接着剤3との接着強度よりも各中間板材2の表面2aと接着剤3との接着強度が低いため、スライスされたウエハWと中間断片Mを分離する時に、中間断片Mの表面2aから接着剤3が剥がれて、各ウエハWの角部や端部に無理な力が掛からずに分離可能となり、それによって、ウエハW同士の分離が容易で、分離時におけるウエハWのチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を抑制できる。
次に、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0029】
この実施例は、図1、図2及び図3(a)(b)に示すように、インゴット接着工程ではインゴット連結体Bの両端に固定板4と当て板5が接着され、スライス工程では切断機Sとしてマルチワイヤーソーとインゴット連結体Bとを相対的に移動させることにより、インゴット連結体Bの全体を一緒にスライスして、ウエハWと中間断片Mとが接着剤3で接着された連結片B1を切り出し、ウエハ分離工程では液槽C内の流体Fに連結片B1を浸漬させて加熱するものである。
【0030】
図1(a)〜(i)に示される例では、当て板5の接着面5a上にインゴット1が先ず横方向へ一列並べられ、それらの間に短尺の中間板材2が挟み込まれ、その後、縦方向へ長尺の中間板材2を挟み込んで複数列並べられている。
図示例では、インゴット1を横方向と縦方向へそれぞれ4列ずつ並べている。
また、その他の例として図示しないが、インゴット1を横方向と縦方向へそれぞれ3列以下又は5列以上並べたり、横方向と縦方向へ異なる列並べることも可能である。
【0031】
図2に示される例では、切断機SとなるマルチワイヤーソーのワイヤーS1に対してインゴット連結体Bを上下移動させることにより、固定板4側からスライスが開始され、その後、当て板5の接着面5aを越えるように一部切断したところでインゴット連結体Bのスライスを終了するように制御している。
さらに、切断機Sとなるマルチワイヤーソーでインゴット連結体Bのスライスが終了した後は、スライスされたインゴット連結体Bから当て板5を剥離して取り外すことにより、スライスした連結片B1の全てが分離される。
また、その他の例として図示しないが、切断機SとなるマルチワイヤーソーのワイヤーS1をインゴット連結体Bに対して上下移動させることも可能である。
【0032】
図3(a)(b)に示される例では、図3(a)に示されるように、スライスされた連結片B1を、液槽C内に貯留された流体Fとして例えば所定温度の高温水などに浸漬させ、連結片B1が所定温度となるまで加熱されると、各ウエハWと各中間断片Mの間に介在する接着剤3が軟化して接着強度が低下し、それにより、図3(b)に示されるように、各ウエハWと各中間断片Mが分離される。
また、その他の例として図示しないが、液槽C内に貯留された流体Fで連結片B1を加熱することにより、接着剤3の接着強度を低下させることも可能である。
【0033】
このような本発明の実施例に係るウエハ製造方法及びウエハ製造装置Aによると、スライスされた連結片B1を液槽C内の流体Fに浸漬させて加熱するだけで、接着剤3の接着強度が低下すると同時に、温度変化に伴うウエハW及び中間断片Mの熱膨張率の違いによる変形で、ウエハWと中間断片Mがスムーズに剥がれる。
それにより、ウエハW同士の分離が更に容易になるとともに、ウエハの分離時におけるチッピングや割れ・欠けなどの不良発生を更に抑制することができるという利点がある。
【0034】
また、切断機Sでインゴット連結体Bの切り始めに固定板5をスライスするため、切断抵抗や切断位置が安定化して各インゴット1がそれぞれスムーズに切断される。
それにより、切り出された各ウエハWの反りや厚さ寸法のバラツキを防止することができるという利点がある。
【0035】
さらに、中間板材2として、その表裏両表面2aがインゴット1の側面1aの表面粗さよりも表面粗さが小さくて滑らかなものを用いた場合には、ウエハ分離工程において、各中間断片Mの表面2aから接着剤3が剥がれるものの、各ウエハWの外周には接着剤3が付着し続けて残留する可能性がある。
この場合には、ウエハ分離工程の後工程となる接着剤剥離工程において、各ウエハWの外周に付着し残留する接着剤3が、高温水や化学的な処理などにより剥離して除去される。
【0036】
なお、前示実施例では、両端に固定板4と当て板5が接着されたインゴット連結体Bと、切断機Sとしてマルチワイヤーソーを相対的に移動させたが、これに限定されず、インゴット連結体Bに固定板4及び当て板5のいずれか一方又は両方を接着しなくとも良く、また切断機Sとしてマルチバンドソーや内周刃式切断機などを用いても良い。
さらに、液槽C内の流体Fに連結片B1を浸漬させて加熱したが、これに限定されず、他の手法で接着剤3の接着強度を低下させても良い。
【符号の説明】
【0037】
1 インゴット 1a 側面
2 中間板材 2a 表面
3 接着剤 B インゴット連結体
B1 連結片 M 中間断片
S 切断機 W ウエハ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
四角柱状に形成される複数のインゴット(1)の平坦な4つの側面(1a)同士を、それらの間に中間板材(2)が挟まれるように接着剤(3)で隙間なく接着して、インゴット連結体(B)を形成するインゴット接着工程と、
前記インゴット連結体(B)と切断機(S)を相対的に前記インゴット(1)の長手方向と交差する方向へ移動させることで、前記インゴット連結体(B)の全体をスライスして複数の連結片(B1)を切り出すスライス工程と、
前記連結片(B1)における前記接着剤(3)の接着力を低下させることで、前記インゴット(1)から切り出されるウエハ(W)と、前記中間板材(2)から切り出される中間断片(M)とに分離するウエハ分離工程とを含むことを特徴とするウエハ製造方法。
【請求項2】
前記中間板材(2)の表面(2a)を、それぞれの表面粗さが前記インゴット(1)の前記側面(1a)の表面粗さよりも小さくなるように形成したことを特徴とする請求項1記載のウエハ製造方法。
【請求項3】
前記中間板材(2)を前記インゴット(1)と熱膨張率が異なる材料で構成し、前記接着剤(3)として温度変化で接着強度が低下するものを用いたことを特徴とする請求項1又は2記載のウエハ製造方法。
【請求項4】
四角柱状に形成されて4つの平坦な側面(1a)を有する複数のインゴット(1)と、 前記インゴット(1)の前記側面(1a)の間に挟まれるように設けられる中間板材(2)と、
複数の前記インゴット(1)の前記側面(1a)と複数の前記中間板材(2)の表面(2a)を隙間なく相互に接合するように連結してインゴット連結体(B)を形成する接着剤(3)と、
前記インゴット連結体(B)と相対的に前記インゴット(1)の長手方向と交差する方向へ移動するように設けられ、前記インゴット連結体(B)の全体をスライスして複数の連結片(B1)を切り出す切断機(S)とを備え、
前記切断機(S)は、前記連結片(B1)として、前記インゴット(1)から切り出されるウエハ(W)と、前記中間板材(3)から切り出される中間断片(M)とが前記接着剤(3)で互いに接着された状態で切り出すことを特徴とするウエハ製造装置。
【請求項5】
前記中間板材(2)を前記インゴット(1)の硬度とほぼ同じ又はそれに近い材料で構成したことを特徴とする請求項4記載のウエハ製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2011−249523(P2011−249523A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120562(P2010−120562)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(000214928)直江津電子工業株式会社 (37)
【Fターム(参考)】