説明

ウエーハの加工方法

【課題】ウエーハをサークルカットした際にウエーハの強度低下を低減可能なウエーハの加工方法を提供する。
【解決手段】ウエーハ11の外周部分15に切削ブレードを切り込ませつつウエーハを回転させることでウエーハの外周部分を円形に切削加工するウエーハの加工方法であって、第1切削ブレード20をウエーハに切り込ませつつ、ウエーハを回転させてウエーハの外周部分に円形外周壁を形成する第1切削ステップと、該第1切削ステップを実施した後、該第1切削ブレードより細かい砥粒を含む第2切削ブレード20Aで該該円形外周壁を研磨して、該第1切削ステップで該円形外周壁に形成された切削歪を除去する第2切削ステップと、を具備したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハの外周部分に切削ブレードを切り込ませつつ、ウエーハを回転させることでウエーハの外周部分を円形に切削加工するウエーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエーハやガラスウエーハ、サファイアウエーハ等のウエーハを小径にする方法として、特開平11−54461号公報では、切削ブレードを備えたダイシング装置を用いた方法が提案されている。
【0003】
具体的には、裏面が粘着テープに貼着されたウエーハの中心から所望直径の1/2離れた位置で、切削ブレードをウエーハ表面から粘着テープに達する深さまで切り込ませ、チャックテーブルに保持されたウエーハを360度以上回転させることで小径のウエーハを形成している。
【0004】
特開2000−173961号公報には、ウエーハの裏面を研削してウエーハを薄くするとウエーハ外周の面取り部分がシャープエッジ(ひさし状)形状となり、破損が生じやすくなることを防止するために、予めウエーハ外周部分に切削溝を形成するとともに円形外周壁を形成する方法が開示されている。
【0005】
また、特開平8−107092号公報では、貼り合わせウエーハ(SOI(Silicon on Insulator)ウエーハ)の外周部に位置付けた切削ブレードを、一方のウエーハへ切り込ませ、貼り合わせウエーハを回転させることで外周の未接着領域を取り除く方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−54461号公報
【特許文献2】特開2000−173961号公報
【特許文献3】特開平8−107092号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、これらの特許文献に記載されるような円形加工を切削ブレードで行う際には、通常の直線加工に比べて加工負荷が非常に大きくなる。従って、このような円形加工を施す場合には、切削性を向上させるためにも、直線加工を施す場合に比べて比較的粗い砥粒を含有する切削ブレードが用いられる。
【0008】
しかし、比較的粗い砥粒を含有する切削ブレードでウエーハに円形加工を施すと、形成された円形外周壁には切削歪が形成され、ウエーハの強度を低下させてしまうという問題がある。
【0009】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ウエーハの外周部に円形加工を施してもウエーハの強度低下を低減可能なウエーハの加工方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、ウエーハの外周部分に切削ブレードを切り込ませつつウエーハを回転させることでウエーハの外周部分を円形に切削加工するウエーハの加工方法であって、第1切削ブレードをウエーハに切り込ませつつ、ウエーハを回転させてウエーハの外周部分に円形外周壁を形成する第1切削ステップと、該第1切削ステップを実施した後、該第1切削ブレードより細かい砥粒を含む第2切削ブレードで該該円形外周壁を研磨して、該第1切削ステップで該円形外周壁に形成された切削歪を除去する第2切削ステップと、を具備したことを特徴とするウエーハの加工方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によると、第1切削ブレードによる切削でウエーハに円形外周壁を形成した後、第1切削ブレードよりより細かい砥粒を有する第2切削ブレードでこの円形外周壁を研磨するため、第1切削ブレードによる切削により円形外周壁に形成された切削歪を除去することができ、ウエーハの強度低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は外周トリミングの第1切削ステップを示す側面図、図1(B)は第1切削ステップにより円形外周壁が形成された状態の側面図である。
【図2】スピンドルと、スピンドルに固定されるべき固定フランジとの関係を示す分解斜視図である。
【図3】スピンドルに固定された固定フランジと、固定フランジに装着されるべき切削ブレードとの関係を示す分解斜視図である。
【図4】第2切削ステップを示す側面図である。
【図5】粘着テープを介して環状フレームに支持されたウエーハの表面側斜視図である。
【図6】図6(A)は粘着テープを介してウエーハがチャックテーブルに吸引保持された状態の断面図、図6(B)はフルカットの第1切削ステップを示す断面図である。
【図7】図7(A)はフルカット終了後のウエーハの断面図、図7(B)は第2切削ステップを説明する断面図である。
【図8】図8(A)は第2切削ブレードの厚みが第1切削ブレードより厚い場合の第2切削ステップを示す断面図、図8(B)は第2切削ブレードの厚みが第1切削ブレードより薄い場合の第2切削ステップを示す断面図である。
【図9】ウエーハの外周エッジにかかる円形切削溝を形成する場合の、所定枚数のウエーハの切削加工毎に切削位置の変更を説明する側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して詳細に説明する。図1(A)を参照すると、第1切削ブレード20による切削でウエーハ11の外周部にトリミングを施している状態の側面図が示されている。
【0014】
ウエーハ11の表面11aには、よく知られているように格子状に形成された複数のストリートにより区画された各領域にデバイスが形成されている。ウエーハ11の外周部には面取り部13が形成されている。
【0015】
外周トリミングのための第1切削ステップにおいては、切削装置のチャックテーブル10でウエーハ11の裏面11b側を吸引保持する。そして、切削ユニット12の第1切削ブレード20をウエーハ11の外周部に切り込ませ、チャックテーブル10を少なくとも360度回転させることにより、第1切削ブレード20でウエーハを切削して円形加工を実施する。
【0016】
切削ユニット12は、スピンドルハウジング14中に収容されたスピンドル16の先端部に装着された固定フランジ18と着脱フランジ34で第1切削ブレード20を挟持して、固定ナット36を固定フランジ18に締結することにより構成されている。
【0017】
より詳細には、図2に示すように、切削ユニット12のスピンドルハウジング14中には、図示しないモータにより回転駆動されるスピンドル16が回転可能に収容されている。スピンドル16はテーパ部16a及び先端小径部16bを有しており、先端小径部16bには雄ねじ17が形成されている。
【0018】
18はボス部(凸部)22とボス部22と一体的に形成されたブレード固定部24とから構成される固定フランジであり、ボス部22には雄ねじ26が形成されている。更に、固定フランジ18は装着穴27を有している。
【0019】
固定フランジ18は、装着穴27をスピンドル16の先端小径部16b及びテーパ部16aに挿入して、ナット28を雄ねじ17に螺合して締め付けることにより、図3に示すようにスピンドル16の先端部に取り付けられる。
【0020】
図3に示すように、リング状又はワッシャー状の第1切削ブレード20を固定フランジ18のボス部22に挿入し、更に着脱フランジ34をボス部22に挿入して、固定ナット36を雄ねじ26に螺合して締め付けることにより、第1切削ブレード20は固定フランジ18のブレード固定部24と着脱フランジ34により両側から挟まれてスピンドル16に取り付けられる。
【0021】
第1切削ブレード20でウエーハ11の外周部にサークルカットを施すと、第1切削ブレード20には大きな加工負荷がかかるため、第1切削ブレード20としては比較的粗い砥粒を含有する切削ブレードが望ましく、その厚さも1mm程度と厚いものを使用するのが好ましい。
【0022】
このように比較的粗い砥粒を含有する第1切削ブレード20でウエーハ11に円形加工を施すと、円形加工により形成された円形外周壁15には切削歪が形成される。この切削歪はウエーハ11の強度を低下させる原因となるため、本発明の加工方法では、図4に示すように、円形外周壁15に第2切削ブレード20Aで研磨加工を施して、切削歪を除去する。
【0023】
第2切削ブレード20Aは第1切削ブレード20より細かい砥粒を含有しており、このように細かい砥粒を含有する第2切削ブレード20Aで円形外周壁15を切削すると、円形外周壁15を実質上研磨することができ、第1切削ブレード20で形成された切削歪を除去することができる。
【0024】
第1切削ブレード20による第1切削ステップと、第2切削ブレード20Aによる第2切削ステップは同一の切削装置で実施してもよいし、別の切削装置で実施するようにしてもよい。また、2スピンドルタイプの切削装置で第1及び第2切削ステップを実施することにより、生産性を向上することができる。
【0025】
本実施形態では、外周トリミングにより円形外周壁15が形成されて面取り部分13が除去されているため、ウエーハ11の裏面を研削してウエーハ11を薄化しても、ウエーハ11の外周壁15にシャープエッジが形成されることはない。
【0026】
次に、ウエーハ11の外周部をフルカットする実施形態について図5乃至図9を参照して説明する。このようにウエーハ11をフルカットする場合には、図5に示すように、外周部が環状フレームFに貼着された粘着テープTにウエーハ11を貼着する。これにより、ウエーハ11は粘着テープTを介して環状フレームFに支持された状態となる。
【0027】
ウエーハ11の表面11aにおいては、第1のストリートS1と第2のストリートS2とが直交して形成されており、第1のストリートS1と第2のストリートS2とによって区画された各領域にそれぞれデバイスDが形成されている。
【0028】
本実施形態の加工方法では、まず図6(A)に示すように、切削装置のチャックテーブル10で粘着テープTを介してウエーハ11を吸引保持し、図示しないクランプで環状フレームFをクランプして固定する。
【0029】
次いで、図6(B)に示すように、第1切削ブレード20を高速回転させて第1切削ブレード20の先端が粘着テープTに達するまで切り込ませ、この状態でチャックテーブル10をゆっくりと回転しながらウエーハ11の外周部を円形に切削する(サークルカットする)。
【0030】
第1切削ブレード20は、図1(A)に示した第1切削ブレード20と同様に、比較的粗い砥粒を含有した幅が1mm程度の切削ブレードである。サークルカットの終了した状態が、図7(A)に示されている。サークルカットにより円形切削溝17が形成され、円形切削溝17より内側のウエーハ11の円形外周壁15´には切削歪が形成される。
【0031】
この切削歪を除去するために、図7(B)に示すように、第1切削ブレード20より細かい砥粒を含有する第2切削ブレード20Aで円形切削溝17に沿ってウエーハ11のサークルカットを実施する(第2切削ステップ)。
【0032】
第2切削ブレード20Aは第1切削ブレード20より細かい砥粒を含有しているため、この第2切削ステップにより円形外周壁15´は実質上研磨され、これに伴い切削溝も除去される。
【0033】
尚、第2切削ブレード20Aが第1切削ブレード20よりも厚い場合には、図8(A)に示すように、円形切削溝17の中央に第2切削ブレード20Aの厚み方向の中心を位置づけて第2切削ステップを実施するのが好ましい。
【0034】
一方、第2切削ブレード20Aの厚みが第1切削ブレード20より薄い場合は、図8(B)に示すように、円形切削溝17の円形外周壁15´に第2切削ブレード20Bがかかるように位置づけて、第2切削ステップを実施するのが好ましい。
【0035】
尚、第1切削ブレード20でウエーハ11の外周エッジにかかる円形切削溝を形成する場合には、第1切削ブレード20の片側のみが磨耗するため、図9に示すように、まず矢印Aで示す第1切削位置で所定枚数のウエーハの切削加工を実施した後、第1切削ブレード20を矢印Yで示すように第2切削位置Bまで移動して、この位置で所定枚数のウエーハの切削加工を実施するようにするのが好ましい。
【0036】
第1切削位置Aでは、第1切削ブレード20の表面20aが磨耗し、第2切削位置Bでは、第1切削ブレード20の裏面20bが磨耗するため、このように切削位置を所定枚数毎に変更することにより、第1切削ブレード20の片側偏磨耗を防止することができる。第2切削ブレード20A,20Bでも同様である。
【0037】
尚、上述した実施形態では、表面にストリートとデバイスを有するパターン付ウエーハに本発明を適用した例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、パターンが形成される前のウエーハ、即ちインゴットからスライスされたウエーハやガラス、サファイア等にも同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0038】
10 チャックテーブル
11 半導体ウエーハ
12 切削ユニット
13 面取り部
15,15´ 円形外周壁
20 第1切削ブレード
20A,20B 第2切削ブレード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエーハの外周部分に切削ブレードを切り込ませつつウエーハを回転させることでウエーハの外周部分を円形に切削加工するウエーハの加工方法であって、
第1切削ブレードをウエーハに切り込ませつつ、ウエーハを回転させてウエーハの外周部分に円形外周壁を形成する第1切削ステップと、
該第1切削ステップを実施した後、該第1切削ブレードより細かい砥粒を含む第2切削ブレードで該該円形外周壁を研磨して、該第1切削ステップで該円形外周壁に形成された切削歪を除去する第2切削ステップと、
を具備したことを特徴とするウエーハの加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−19126(P2012−19126A)
【公開日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−156555(P2010−156555)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】