説明

ウォッシャノズル

【課題】外部から大きな衝撃が加えられた際に、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができるウォッシャノズルを提供する。
【解決手段】洗浄液Sを噴射させるノズル体12を保持したノズルハウジング11の下部11dを、車体パネル20に形成した取付孔20aに係止、離脱自在に設けると共に、該ノズルハウジング11の外周面11eの一部に形成された雄ねじ部11fにナット18の雌ねじ部18eを螺合して係止の状態を固定するようにしたウォッシャノズル10において、ナット18を厚肉のナット本体18aと該ナット本体18aより下方に延びる薄肉円筒部18cとで形成し、この薄肉円筒部18cの内周面18dの上部に雌ねじ部18eを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のウインドシールドガラス等に付着する雨水,泥土,塵埃等の汚れを洗浄液で洗浄する際に用いて好適なウォッシャノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のウォッシャノズルとして、図11に示すものがある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このウォッシャノズル1は、図11に示すように、液体噴射口2aから洗浄液を噴射させるノズルハウジング2を有している。このノズルハウジング2の基端部2bを車体パネル8の取付孔9より裏側に突出させており、該基端部2bに形成された係止溝2cに車体パネル8の裏面8bに当接するリテーナ3を係止してある。
【0004】
そして、ノズルハウジング2の基部の外周面に形成された雄ねじ部2dにナット4を螺合することにより、車体パネル8の表面8aにパッキン5を介してノズルハウジング2を取り付けてある。
【0005】
【特許文献1】実開昭63−4866号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記従来のウォッシャノズル1では、走行中にウォッシャノズル1が外れないようにノズルハウジング2とナット4の螺合が強固になっていた。そのために、車体パネル8の外側にノズルハウジング2が突出しているので、ノズルハウジング2の軸方向に外部から大きな衝撃を受けても、ノズルハウジング2がナット4に保持固定されて該ノズルハウジング2に掛かる大きな衝撃力を緩和することができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、ノズルハウジングの軸方向に外部から大きな衝撃が加えられた際に、ノズルハウジングがナットから外れてその衝撃エネルギーを確実に吸収することができるウォッシャノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1の発明は、ノズルハウジングと、車体パネルを介在してノズルハウジングを固定するためのナット本体とからなるウォッシャノズルにおいて、前記ナット本体より延びる小径の薄肉円筒部と、前記薄肉円筒部に形成された雌ねじ部と、前記ノズルハウジングの前記雌ねじ部の対向する位置に形成された前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部とが形成されたことを特徴とする。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1に記載のウォッシャノズルにおいて、前記薄肉円筒部は、前記ノズルハウジングの雄ねじ部より大きい内径の内周面を有することを特徴とする。
【0010】
請求項3の発明は、請求項1ないし2に記載のウォッシャノズルにおいて、前記ノズルハウジングの雄ねじ部と前記薄肉円筒部の雌ねじ部とは、その噛み合いが容易に外れるように螺合していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
以上説明したように、請求項1の発明によれば、ナットを厚肉のナット本体と該ナット本体より延びる小径の薄肉円筒部とで形成し、この薄肉円筒部の内周面に雌ねじ部を形成したことにより、ノズルハウジングの軸方向に外部から大きな衝撃が加わった時に、薄肉円筒部は、ナット本体に比べて剛性が弱く、雌ねじ部が外側に広がりやすいため、ナットの雌ねじ部とノズルハウジングの雄ねじ部との噛み合いが外れてノズルハウジングを車体パネルの下方側に変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、薄肉円筒部がノズルハウジングの雄ねじ部の外径より大きい内径の内周面を有することにより、ノズルハウジングに形成された雄ねじ部が小径の薄肉円筒部に引っ掛からないため、ノズルハウジングを車体パネルの下方側に変位し易くなる。
【0013】
請求項3の発明によれば、ノズルハウジングの雄ねじ部と薄肉円筒部の雌ねじ部とは、その噛み合いが容易に外れるように螺合していることにより、ノズルハウジングの軸方向に外部から大きな衝撃が加わった時に、ねじ部に軸方向に力が加わり、ノズルハウジングの雄ねじとナットの雌ねじ部との噛み合いが容易に外れてノズルハウジングを車体パネルの下方側に変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1は本発明の一実施形態のウォッシャノズルの取付状態を示す正面図、図2は同ウォッシャノズルの取付状態を示す断面図、図3は同ウォッシャノズルのノズルハウジングの正面図、図4は同ノズルハウジングの側面図、図5は同ノズルハウジングの平面図、図6は同ノズルハウジングの雄ねじ部と該雄ねじ部に螺合されるナットの雌ねじ部のねじ山の関係を示す部分拡大説明図、図7(a)は同ノズルハウジングの底面図、図7(b)は同ノズルハウジングの下部が係止される車体パネルの取付孔を示す部分平面図、図8は同ノズルハウジングの要部の拡大断面図、図9は同ナットの断面図、図10は同ウォッシャノズルが外部からの大きな衝撃でナットから外れた状態を示す説明図である。
【0016】
図1,図2,図10に示すように、ウォッシャノズル10は、合成樹脂製で柱状のノズルハウジング11を備えている。このノズルハウジング11は液体噴射口11aに球面状凹部11bを形成してあり、この球面状凹部11bに洗浄液Sを噴射させる合成樹脂製のノズル体12を摺動自在に保持してある。さらに、図1,図8に示すように、ノズルハウジング11の液体噴射口11aとノズル体12の一対の液体用流路12a,12a及び液体供給口11cに嵌め込まれた略円筒状のニップル15とは液体供給流路13でそれぞれ連通されている。尚、ノズルハウジング11に対するノズル体12の液体用流路12aの傾き、即ち、ノズル体12の液体用流路12aから噴射される洗浄液Sの噴射方向は調整できるようになっている。
【0017】
図1〜図4及び図7(a)に示すように、ノズルハウジング11の下部11dには、複数(この実施形態では4箇所)のL字状の係止爪(係止部)14を等間隔毎にそれぞれ一体突出形成してある。このノズルハウジング11の下部11dの各係止爪14は、図7(b)に示すインナパネル(車体パネル)20の円形の取付孔20a内に挿入され、該係止爪14の自由端14aは、該取付孔20aの周りに突き出し形成された各係止凸部20bに係止、離脱自在になっている。即ち、図2に示すように、ノズルハウジング11の下部11dはアウタパネル(車体パネル)21の円形の取付孔21a内を挿通して、インナパネル20の円形の取付孔20aの各係止凸部20bに係止、離脱されるようになっている。尚、アウタパネル21の取付孔21aはインナパネル20の取付孔20aより大径に形成してある。
【0018】
また、図2〜図5に示すように、ノズルハウジング11の外周面11eの一部(中央より下側)には雄ねじ部11fを形成してある。このノズルハウジング11の雄ねじ部11fのねじ山の歯高(とがり山の高さ)H′は、図6に示すように、後述するナット18の雌ねじ部18eのねじ山の歯高(とがり山の高さ)Hよりも低く設定してある(H′<H)。さらに、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fには、フラット面(ねじ部を形成しない部分)11gを複数箇所(この実施形態では4箇所)形成してある。このことにより、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fとナット18の雌ねじ部18eとの噛み合いを容易に外すように構成されている。さらに、図3〜図5及び図10に示すように、ノズルハウジング11の下部11dには、ゴム製で円環状のシールパッキン(シール部材)17の基端17aを嵌め込んである。このゴム製で円環状のシールパッキン17の先端17bは、インナパネル20に圧接して該インナパネル20の取付孔20aの周りをシールするようになっている。
【0019】
図2,図9に示すように、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fに螺合される合成樹脂製のナット18は、インナパネル20に係止されたノズルハウジング11をアウタパネル21を挟んで固定するためのアウタパネル21の取付孔21aの内径より大きい略円環状のナット本体18aと、このナット本体18aより取付孔20aを通って下方に延びる小径の薄肉円筒部18cとを備えている。この小径の薄肉円筒部18cには雌ねじ部18eを形成してある。そして、雌ねじ部18eの下方のインナパネル20側には雌ねじ部18eの外径よりも内径の大きい内周面18dを形成してある。また、ナット18のナット本体18aには環状の凹部18bが形成され、この凹部18bには、ゴム製で円錐環状のシールパッキン(シール部材)19の基端19aを嵌め込んである。このゴム製で円錐環状のシールパッキン19の先端19bは、アウタパネル21に圧接して該アウタパネル21の取付孔21aの周りをシールするようになっている。
【0020】
尚、図2に示すように、ノズルハウジング11の液体供給口11c内には略円筒状のニップル15の鍔状の基端部15aを嵌合してある。このニップル15の先端部15bには供給チューブ16を連結してある。この供給チューブ16は図示しない供給ポンプの吐出側に接続されていて、該供給ポンプの作動により洗浄液タンクからの洗浄液Sを供給チューブ16及びニップル15を介してノズルハウジング11の液体供給流路13に圧送するようになっている。
【0021】
以上実施形態のウォッシャノズル10によれば、図2に示すように、ノズルハウジング11の下部11dの各係止爪14のインナパネル20の円形の取付孔20aの各係止凹部20bの縁部への係止状態は、ナット18の薄肉円筒部18cの下端18fがインナパネル20の表面20cに当接するまで、該ノズルハウジング11の雄ねじ部11fに該ナット18の雌ねじ部18eを螺合することにより締結固定される。これにより、ノズルハウジング11及びナット18のナット本体18aはアウタパネル21の外側に該アウタパネル21に対して略直角に突出する。
【0022】
この状態より、万が一に、ノズルハウジング11の軸方向に外部から予め定められた値を越える大きな衝撃が加わると図10に示すように、ナット18の下端18fがインナパネル20に突き当てられていることから、その際の衝撃力Fによりねじ部に力が作用し、ナット18の雌ねじ部18eからノズルハウジング11の雄ねじ部11fが外れて、ノズルハウジング11がインナパネル20の下方に変位する。このとき、ノズルハウジング11の外周面11eが、インナパネル20の各係止凸部20bを変形させて下方に変位することになる。即ち、ノズルハウジング11がインナパネル20の内側に入り込み、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。その結果、ノズルハウジング11及びナット18の破損を防止することができる。
【0023】
このウォッシャノズル10によれば、ナット18を厚肉のナット本体18aと該ナット本体18aより延びる小径の薄肉円筒部18cとで形成し、この薄肉円筒部18cの内周面18dに雌ねじ部18eを形成したことにより、ノズルハウジング11の軸方向に外部から大きな衝撃力Fが加わった時に、薄肉円筒部18cは、ナット本体18aに比べて剛性が弱く、雌ねじ部18eが外側に広がりやすいため、ナット18の雌ねじ部18eとノズルハウジング11の雄ねじ部11fとの噛み合いが外れてノズルハウジング11をインナパネル20の下方側に変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0024】
また、薄肉円筒部18cはノズルハウジング11の雄ねじ部11fの外径より大きい内径の内周面18dを有することにより、ノズルハウジング11の軸方向に外部から大きな衝撃力Fが加わった時に、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fとナット18の雌ねじ部18eの噛み合いが外れてノズルハウジング11がインナパネル20の下方側に変位する際に、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fが薄肉円筒部18dに引っ掛からないため、ノズルハウジング11がよりインナパネル20の下方側に変位し易くなる。
【0025】
さらに、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fと薄肉円筒部18cの雌ねじ部18eとは、その噛み合いが容易に外れるように、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fの歯高をナット18の雌ねじ部18eの歯高より低くしたり、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fに、フラット面11gを形成して螺合していることにより、ノズルハウジング11の軸方向に外部から大きな衝撃が加わった時に、ねじ部に軸方向に力が加わり、ノズルハウジング11の雄ねじ部11fとナット18の雌ねじ部18eとの噛み合いが容易に外れてノズルハウジング11をインナパネル20の下方側に変位させることができ、その衝撃エネルギーを確実に吸収することができる。
【0026】
尚、前記実施形態によれば、ウォッシャノズルを自動車のアウタパネルとインナパネルの二重構造の車体パネルに取り付ける場合について説明したが、アウタパネルだけの一重構造の車体パネル等の他の被取付体にウォッシャノズルを取り付けるようにしても良い。
【0027】
また、前記実施形態によれば、ノズルハウジングがインナパネルの各係止凸部を変形させるようにして下方に変位したが、ノズルハウジングの下部や係止爪の径を大きくして、ノズルハウジングの外周面がインナパネルに触れることなく、ノズルハウジングを下方に変位させることも可能である。この場合、ノズルハウジングが下方に変位するための衝撃力は前記実施形態に比べて小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施形態のウォッシャノズルの取付状態を示す正面図である。
【図2】上記ウォッシャノズルの取付状態を示す断面図である。
【図3】上記ウォッシャノズルのノズルハウジングの正面図である。
【図4】上記ノズルハウジングの側面図である。
【図5】上記ノズルハウジングの平面図である。
【図6】上記ノズルハウジングの雄ねじ部と該雄ねじ部に螺合されるナットの雌ねじ部のねじ山の関係を示す部分拡大説明図である。
【図7】(a)は上記ノズルハウジングの底面図、(b)は同ノズルハウジングの下部が係止される車体パネルの取付孔を示す部分平面図である。
【図8】上記ノズルハウジングの要部の拡大断面図である。
【図9】上記ナットの断面図である。
【図10】上記ウォッシャノズルが外部からの大きな衝撃でナットから外れた状態を示す説明図である。
【図11】従来のウォッシャノズルの取付状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0029】
10 ウォッシャノズル
11 ノズルハウジング
11f 雄ねじ部
18 ナット
18a ナット本体
18c 薄肉円筒部
18d 内周面
18e 雌ねじ部
20 インナパネル(車体パネル)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルハウジングと、車体パネルを介在してノズルハウジングを固定するためのナット本体とからなるウォッシャノズルにおいて、
前記ナット本体より延びる小径の薄肉円筒部と、前記薄肉円筒部に形成された雌ねじ部と、前記ノズルハウジングの前記雌ねじ部の対向する位置に形成された前記雌ねじ部と螺合する雄ねじ部とからなることを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項2】
請求項1に記載のウォッシャノズルにおいて、
前記薄肉円筒部は、前記ノズルハウジングの雄ねじ部の外径より大きい内径の内周面を有することを特徴とするウォッシャノズル。
【請求項3】
請求項1ないし2に記載のウォッシャノズルにおいて、
前記ノズルハウジングの雄ねじ部と前記薄肉円筒部の雌ねじ部とは、その噛み合いが容易に外れるように螺合していることを特徴とするウォッシャノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−245903(P2007−245903A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−71493(P2006−71493)
【出願日】平成18年3月15日(2006.3.15)
【出願人】(000144027)株式会社ミツバ (2,083)
【Fターム(参考)】