説明

ウォーキングビーム式加熱炉の改修方法及び製造方法

【課題】 ウォーキングビーム式加熱炉において、固定ビームが複数設けられた炉床と駆動ビームが複数設けられた移動フレームとを炉内から取り出したり、炉内にセットしたりする作業が簡単に行えるようにする。
【解決手段】 ウォーキングビーム式加熱炉において、炉1内から固定ビーム12が設けられた炉床10と駆動ビーム22が設けられた移動フレーム20とを取り出すにあたり、炉床と移動フレームとを一体化させると共に炉床を炉から分離させ、一体化された炉床と移動フレームを所定の長さに切断して取出し位置から取り出すと共に、移動フレームを保持するウォーキングビーム駆動手段30の回転体31を回転させながら、一体化された炉床と移動フレームを取り出し位置に移動させるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームが複数設けられると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームが複数設けられ、上記の移動フレームがウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持され、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームがウォーキング動作を行うウォーキングビーム式加熱炉の改修方法及び製造方法に関するものである。特に、固定ビームが複数設けられた炉床と駆動ビームが複数設けられた移動フレームとを炉内から取り出したり、炉内にセットしたりする作業が簡単に行えて、作業時間を大幅に短縮できると共に、コストも低減できるようにした点に特徴を有するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、鋼片、鋼板等の被処理材を炉内において順々に移動させて連続的に加熱処理する加熱炉として、プッシャー式加熱炉やウォーキングビーム式加熱炉が使用されている。
【0003】
ここで、ウォーキングビーム式加熱炉においては、一般に、炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームを複数設けると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームを複数設け、上記の移動フレームをウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持させ、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームをウォーキング動作をさせて、被処理材を炉内において順々に移動させるようになっている。
【0004】
また、そのような加熱炉においては、既設のプッシャー式加熱炉をウォーキングビーム式加熱炉に変更させたり、ウォーキングビーム式加熱炉の内部を新しく交換させたりすることが行われる。
【0005】
ここで、既設のプッシャー式加熱炉をウォーキングビーム式加熱炉に変更させるにあたり、特許文献1に示されるものにおいては、炉内の適当な高さの位置に炉長方向に伸びたレールを設置すると共に、吊上げ装置を備えた移動台車をこのレールにセットし、この移動台車に設けられた吊上げ装置によりプッシャー式加熱炉内で解体した炉床等を吊上げて移動台車により移動させ、炉の天井部に設けられた出入口を通して炉外に排出させるようにしている。次いで、炉の天井部に設けられた出入口を通してウォーキングビーム式加熱炉に用いる上記の移動フレームや駆動ビームや炉床等の各種の構築材料をクレーンにより炉内に搬入し、このように搬入された各種の構築材料を上記の吊上げ装置により吊上げて移動台車によって所定の位置に搬送させ、このように搬送された構築材料を順々に組み立ててウォーキングビーム式加熱炉を構築した後、上記のレールや移動台車を炉外に搬出させるようにしている。
【0006】
しかし、上記のように炉内の適当な高さの位置に炉長方向に伸びたレールを設置する作業は非常に面倒であると共に、構築材料を移動台車に設けられた吊上げ装置により吊り下げて、この移動台車を何度も往復移動させて構築材料を搬送させるため、ウォーキングビーム式加熱炉を構築する作業時間が非常に長くなると共にコストも高くつき、またウォーキングビーム式加熱炉を構築した後、上記のレールや移動台車を炉外に搬出させる作業も面倒で、さらに作業時間が長くなるという問題があった。
【0007】
また、特許文献2に示されるものにおいては、炉内からプッシャー式加熱炉における構築材料を取り出した後、炉内にウォーキングビーム式加熱炉に用いる移動フレームや駆動ビームや炉床等の各種の構築材料を炉内に搬入させるにあたり、構築材料を予め炉外で複数のブロックに分割させて組み立てると共に、炉の底部にレールを敷設し、このレールに沿って走行するジャッキ付走行台車を配置させるようにしている。そして、上記のように組み立てた各ブロックを、炉の天井部に設けられた出入口を通してクレーン等により炉内に搬入させると共に、このブロックをジャッキ付走行台車に設けられたジャッキ部に支持させて、このジャッキ付走行台車により所定の位置に順々に搬送させ、このように搬送された各ブロックを連結させてウォーキングビーム式加熱炉を構築した後、上記のレールやジャッキ付走行台車を炉外に搬出させるようにしている。
【0008】
しかし、この特許文献2に示されるものにおいても、炉の底部にレールを敷設する作業が必要になると共に、炉の底部にレールを敷設するためには、炉の底部における障害物を十分に撤去させることが必要になり、またブロックをジャッキ部に支持させてジャッキ付走行台車を何度も往復移動させて各ブロックを搬送させるため、ウォーキングビーム式加熱炉を構築する作業時間が非常に長くなると共にコストも高くつき、さらにウォーキングビーム式加熱炉を構築した後、上記のレールやジャッキ付走行台車を炉外に搬出させる作業も面倒で、さらに作業時間が長くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特公平7−52067号公報
【特許文献2】特開2002−180125号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記のようなウォーキングビーム式加熱炉を改修したり、製造したりする場合における上記のような様々な問題を解決することを課題とするものであり、固定ビームが複数設けられた炉床と駆動ビームが複数設けられた移動フレームとを炉内から取り出したり、炉内にセットしたりする作業が簡単に行えて、作業時間を大幅に短縮できると共に、コストも低減できるようにすることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るウォーキングビーム式加熱炉の改修方法においては、炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームが複数設けられると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームが複数設けられ、上記の移動フレームがウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持され、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームがウォーキング動作を行うウォーキングビーム式加熱炉の改修方法において、上記の炉内から固定ビームが設けられた炉床と駆動ビームが設けられた移動フレームとを取り出すにあたり、上記の炉床と移動フレームとを連結させて一体化させると共に炉床を炉から分離させ、一体化された炉床と移動フレームとを所定の長さに切断して取出し位置から取り出すと共に、一体化された炉床と移動フレームを上記の回転体を回転させながら順々に取出し位置に導くようにした。
【0012】
ここで、上記のように一体化された炉床と移動フレームとを所定の長さに切断した場合において、所定の長さに切断された炉床と移動フレームとが2つの回転体に支持されない場合には、回転体に支持される移動フレームに延長フレームを取り付けて、所定の長さに切断された炉床と移動フレームとが2つ以上の回転体に支持されるようにすることができる。
【0013】
また、上記のように回転体に支持される移動フレームの支持部分に凹凸がある場合に、この移動フレームの支持部分が平坦になるようにその凹部に補助部材を取り付けると、上記のように一体化された炉床と移動フレームを、回転体を回転させながら順々に取出し位置に移動させる際に、一体化された炉床と移動フレームががたつくことなく、回転体の回転により適切に移動されるようになる。
【0014】
また、一体化されて所定長さに切断された炉床と移動フレームとを取出し位置から取り出すにあたっては、炉の天井部に出入口を開口させ、上記のように一体化されて所定長さに切断された炉床と移動フレームを、この出入口を通して昇降装置により吊り上げて炉内から取り出すようにすることができる。
【0015】
また、本発明に係るウォーキングビーム式加熱炉の製造方法においては、炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームが複数設けられると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームが複数設けられ、上記の移動フレームがウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持され、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームがウォーキング動作を行うウォーキングビーム式加熱炉の製造方法において、所定長さになった炉床と移動フレームとを連結させて一体化し、一体化された所定長さの炉床と移動フレームとを炉に設けられた出入口を通して炉内に導入させて、上記の移動フレームをウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持させ、この回転体を回転させながら、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを順々に炉内において移動させるようにした。
【0016】
ここで、上記のように一体化された所定長さになった炉床と移動フレームが2つの回転体に支持されない場合には、回転体に支持される移動フレームに延長フレームを取り付けて、一体化された炉床と移動フレームとが2つ以上の回転体に支持されるようにすることができる。
【0017】
また、回転体に支持される移動フレームの支持部分に凹凸がある場合に、この移動フレームの支持部分が平坦になるように補助部材を取り付けると、上記のように一体化された炉床と移動フレームを、回転体を回転させながら移動させる際に、一体化された炉床と移動フレームががたつくことなく、回転体の回転により適切に移動されるようになる。
【0018】
また、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを、炉に設けられた出入口を通して炉内に導入させるにあたっては、炉の天井部に出入口を開口させ、上記のように一体化された炉床と移動フレームを、この出入口を通して昇降装置により吊り下げて炉内に導入させるようにすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明におけるウォーキングビーム式加熱炉の改修方法においては、炉内から固定ビームが設けられた炉床と駆動ビームが設けられた移動フレームとを取り出すにあたり、一体化された炉床と移動フレームを、移動フレームを支持している回転体を回転させながら取出し位置に移動させるようにしたため、従来のように炉内や炉底部にレールを敷設したり、移動台車に設けられた吊上げ装置や走行台車に設けられたジャッキ部により、一体化された炉床と移動フレームとを保持させ、上記のレールに沿って移動台車や走行台車を何度も往復移動させたりする必要がなくなり、固定ビームが複数設けられた炉床と駆動ビームが複数設けられた移動フレームとを炉内から取り出す作業が簡単に行えて、作業時間を大幅に短縮できると共に、コストも低減できるようになる。
【0020】
また、本発明におけるウォーキングビーム式加熱炉の製造方法においては、所定長さになった炉床と移動フレームとを連結させて一体化させ、この一体化された所定長さの炉床と移動フレームとを炉に設けられた出入口を通して炉内に導入させて、上記の移動フレームをウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持させ、この回転体を回転させながら、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを順々に炉内において移動させるようにしたため、この場合にも、従来のように炉内や炉底部にレールを敷設したり、移動台車に設けられた吊上げ装置や走行台車に設けられたジャッキ部により、一体化された炉床と移動フレームを保持させ、上記のレールに沿って移動台車や走行台車を何度も往復移動させたりする必要がなくなり、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを順々に炉内において移動させる作業が簡単に行えるようになり、ウォーキングビーム式加熱炉を製造する作業時間を大幅に短縮できると共に、コストも低減できるようになる。
【0021】
また、本発明におけるウォーキングビーム式加熱炉の改修方法及びウォーキングビーム式加熱炉の製造方法においては、上記のように炉内や炉底部にレールを敷設したり、吊上げ装置が設けられた移動台車やジャッキ付走行台車をレールにセットして移動させたりしないため、炉内から固定ビームが設けられた炉床と駆動ビームが設けられた移動フレームとを取り出した後や、炉内に固定ビームが設けられた炉床と駆動ビームが設けられた移動フレームとをセットしてウォーキングビーム式加熱炉を製造した後において、敷設されたレールや、上記の吊上げ装置が設けられた移動台車や、ジャッキ付走行台車を炉外に搬出させる作業も必要なくなり、さらに作業時間が短縮されるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るウォーキングビーム式加熱炉の一部を示した概略横断面説明図である。
【図2】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉の概略縦断面説明図である。
【図3】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、連結部材によって連結された炉床と移動フレームとを所定の長さになるように切断させた状態を示した概略横断面説明図である。
【図4】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、連結部材によって移動フレームと連結された炉床を炉から切断させて分離させた状態を示した概略縦断面説明図である。
【図5】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、炉床と移動フレームとが一体化されて所定の長さになったブロックを、炉の天井部に設けられた出入口から取り出す状態を示した概略横断面説明図である。
【図6】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、炉床と移動フレームとが一体化されて所定の長さになったブロックを、炉の天井部に設けられた出入口から取り出すにあたり、一体化された所定長さになった炉床と移動フレームが2つの回転体に支持されない場合に、回転体に支持される補助部材或いは移動フレームに延長フレームを取り付けた状態を示した概略横断面説明図である。
【図7】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、炉床と移動フレームとが一体化されて所定の長さになったブロックを、炉の天井部に設けられた出入口から炉内に導入させる状態を示した概略横断面説明図である。
【図8】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、ウォーキングビーム駆動手段により、移動フレームを上下方向に往復移動させる場合の第1の変更例を示した概略部分説明図である。
【図9】上記の実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉において、ウォーキングビーム駆動手段により、移動フレームを上下方向に往復移動させる場合の第2の変更例を示した概略部分説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、この発明の実施形態に係るウォーキングビーム式加熱炉の改修方法及び製造方法を添付図面に基づいて具体的に説明する。なお、この発明に係るウォーキングビーム式加熱炉の改修方法及び製造方法は下記の実施形態に示したものに限定されず、発明の要旨を変更しない範囲において、適宜変更して実施できるものである。
【0024】
この実施形態におけるウォーキングビーム式加熱炉においては、図1及び図2に示すように、炉1内に設けられた炉床10に、炉長方向及び炉1の幅方向にそれぞれ所要間隔を介して複数の支持部材11を立設させ、炉長方向に沿うようにして固定ビーム12を炉長方向に沿った各支持部材11の上に取り付け、このように炉長方向に沿った固定ビーム12を炉1の幅方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0025】
また、上記の炉床10の下方に移動フレーム20を設け、この移動フレーム20から炉床10に設けられた各貫通部13を通して炉床10の上方に突出するようにして、複数の支持部材21を、炉長方向及び炉1の幅方向にそれぞれ所要間隔を介して設け、炉長方向に沿うようにして駆動ビーム22を炉長方向に沿った各支持部材21の上に取り付け、このように炉長方向に沿った駆動ビーム22を、上記の固定ビーム12の間において炉1の幅方向に所要間隔を介して複数設けている。
【0026】
また、上記の移動フレーム20の下部に突出するようにして、ウォーキングビーム駆動手段30に設けられた回転体31に支持される補強用の支持部23を炉長方向に所要間隔を介して複数設け、この各支持部23において移動フレーム20をウォーキングビーム駆動手段30における各回転体31に支持させるようにしている。
【0027】
そして、ウォーキングビーム駆動手段30により、移動フレーム20を上下方向に往復移動させると共に炉長方向に往復移動させて、この移動フレーム20に設けられた駆動ビーム22をウォーキング動作させ、炉1内に導入された被処理物Wを炉長方向に順々に移動させて加熱処理し、炉1の取出し口2に設けた扉3を開けて、このように加熱処理された被処理物Wを取出し口2から取り出すようにしている。
【0028】
ここで、上記のウォーキングビーム駆動手段30において、移動フレーム20を上下方向に往復移動させるにあたっては、回転装置32によって回転される偏心カム33を設けると共に、上記の回転体31として、この偏心カム33の外周に回転リング31を回転自在に装着させ、この回転リング31の上に移動フレーム20に設けられた支持部23を支持させ、上記の回転装置32によって回転される偏心カム33により回転リング31を介して移動フレーム20を上下方向に往復移動させるようにしている。
【0029】
また、上記のウォーキングビーム駆動手段30において、移動フレーム20を炉長方向に往復移動させるにあたっては、上記の移動フレーム20の炉長方向の端部に前後移動用シリンダ34を接続し、この前後移動用シリンダ34により移動フレーム20を炉長方向に往復移動させるようにしている。
【0030】
そして、上記のように回転装置32により偏心カム33を回転させ、この偏心カム33の外周に装着された回転リング31を介して移動フレーム20を上下方向に往復移動させる共に、上記の前後移動用シリンダ34により移動フレーム20を炉長方向に往復移動させ、偏心カム33によって移動フレーム20を上方に持ち上げるのと合わせて、前後移動用シリンダ34により移動フレーム20を被処理物Wの送り方向に移動させて、移動フレーム20に設けられた駆動ビーム22をウォーキング動作させ、被処理物Wを順々に送るようにしている。
【0031】
ここで、上記のウォーキングビーム式加熱炉において、上記のように固定ビーム12が設けられた炉床10と、駆動ビーム22が設けられた移動フレーム20とを新しいものに交換するにあたっては、図3及び図4に示すように、上記の炉床10を連結部材14によって移動フレーム20と適当な位置において連結すると共に、移動フレーム20の下部に突出して設けられた支持部23間における凹部23aに補助部材24を取り付けて、上記の回転リング31によって支持される移動フレーム20の下端が平坦になるようにする。なお、支持部23間における凹部23aに補助部材24を取り付けるにあたっては、支持部23間に補助部材24を溶接させたり、ボルトなどで取り付けたりすることができる。
【0032】
そして、炉1の幅方向両端部において、上記の炉床10を炉1から切断して分離させると共に、上記のように連結部材14によって連結された炉床10と移動フレーム20とが所定の長さになるようにして適当な位置において切断し、連結部材14によって連結された炉床10と移動フレーム20とを所定の長さになったブロックBに分離させ、また上記の前後移動用シリンダ34を移動フレーム20から分離させる。
【0033】
次いで、図5に示すように、上記の炉1の天井部4に、上記のブロックBを取り出す適当な大きさの出入口5を開口させ、上記のように炉床10と移動フレーム20とが一体化されて所定の長さになったブロックBを、炉1の上方に設けられたクレーン等の昇降装置40により吊り上げて、上記の出入口5を通して炉1の内部から外部に取り出すようにする。
【0034】
また、連結部材14によって連結されて一体化された炉床10と移動フレーム20とをウインチ41により引っ張り、上記のように補助部材24が取り付けられて平坦になった移動フレーム20の下端を支持する上記の回転リング31を回転させながら、天井部4に開口された出入口5の下の取出し位置に導くようにする。
【0035】
また、このように取出し位置に導かれた連結部材14により一体化された炉床10と移動フレーム20を適当な位置において切断し、炉床10と移動フレーム20とが一体化されて所定の長さになったブロックBに分離させ、上記のようにこのブロックBを炉1の上方に設けられたクレーン等の昇降装置40により吊り上げて、上記の出入口5を通して炉1の内部から外部に取り出すようにする。
【0036】
そして、このような操作を繰り返して行い、連結部材14によって連結されて一体化された炉床10と移動フレーム20を全てブロックBにして炉1内から取り出すようにする。
【0037】
このようにすると、連結部材14により連結されて一体化された炉床10と移動フレーム20とが、回転する回転リング31によって出入口5の下の取出し位置に簡単に導かれるようになり、従来のように炉内や炉底部にレールを敷設し、移動台車に設けられた吊上げ装置や走行台車に設けられたジャッキ部により、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを保持させ、上記のレールに沿って移動台車や走行台車を何度も往復移動させる必要がなくなる。
【0038】
なお、上記のように連結部材14によって連結されて一体化された炉床10と移動フレーム20を全てブロックBにして炉1内から取り出すにあたり、一体化されて切断された炉床10と移動フレーム20が、上記の2つの回転リング31に支持されない場合には、図6に示すように、上記の補助部材24或いは移動フレーム20に延長フレーム25を取り付け、上記の一体化された炉床10と移動フレーム20が2つ以上の回転リング31によって安定して支持されるようにすることができる。
【0039】
また、上記のようにして炉1内から全ての炉床10と移動フレーム20とを取り出した後、炉1内に新しい炉床10と移動フレーム20とを設けるにあたっては、上記のように支持部材11の上に固定ビーム12が取り付けられた所定長さの炉床10に対して、この炉床10に対応した長さになった移動フレーム20における支持部材21を炉床10の貫通部13を通して炉床10の上方に突出させ、この支持部材21の上に駆動ビーム22を取り付けた後、所定の長さになった炉床10と移動フレーム20とを連結部材14により連結して、炉床10と移動フレーム20とが一体化されて所定の長さになったブロックBを得ると共に、上記の移動フレーム20の下部に突出して設けられた支持部23に補助部材24を取り付けて、移動フレーム20の下端が平坦になるようにする。
【0040】
そして、図7に示すように、炉床10と移動フレーム20とが一体化されて所定の長さになったブロックBを、炉1の上方に設けられたクレーン等の昇降装置40により上記の出入口5を通して炉1の内部に導き、上記のように支持部23に補助部材24が取り付けられて平坦になった移動フレーム20の下端を、偏心カム33の外周に回転自在に装着された回転リング31の上に載置させるようにする。
【0041】
その後、このブロックBを昇降装置40から取り外し、このブロックBをウインチ(図示せず)等により取り出し時とは逆方向に引っ張り、平坦になった移動フレーム20の下端を支持する上記の回転リング31を回転させながら、このブロックBを炉1内において出入口5と反対方向に移動させ、このような操作を繰り返して、炉床10と移動フレーム20とが一体化されて所定の長さになったブロックBを順々に炉1内に導入させる。
【0042】
そして、このように炉1内に導入された各ブロックBにおける炉床10相互および移動フレーム20相互を連結させると共に、各ブロックBにおける炉床10を炉1に取り付けて、炉1内に連続した炉床10と移動フレーム20とをセットする一方、炉床10と移動フレーム20とを連結している上記の連結部材14を取り外して、炉床10と移動フレーム20とを分離させると共に、支持部23に取り付けられた補助部材24を取り外すようにする。なお、炉1内に導入されたそれぞれのブロックBにおける炉床10相互及び移動フレーム20相互を連結させる操作は、全てのブロックBを炉1内に導入させた後にまとめて行っても、ブロックBを導入させる毎に行ってもよい。
【0043】
また、上記のように連結部材14によって連結されて一体化された炉床10と移動フレーム20を炉1内に導入させるにあたり、一体化された炉床10と移動フレーム20が上記の2つの回転リング31に支持されない場合には、前記の図6に示したように、上記の補助部材24或いは移動フレーム20に延長フレーム25を取り付け、上記の一体化された炉床10と移動フレーム20が2つ以上の回転リング31によって安定して支持されるようにすることができる。
【0044】
その後、上記のように連結された移動フレーム20に前後移動用シリンダ34を取り付けると共に、炉1の天井部4に設けた出入口5を閉塞させる。
【0045】
このようにすると、連結部材14により連結されて一体化された炉床10と移動フレーム20とを、炉1内において回転する回転リング31により簡単に移動させることができ、従来のように炉内や炉底部にレールを敷設し、移動台車に設けられた吊上げ装置や走行台車に設けられたジャッキ部により、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを保持させ、上記のレールに沿って移動台車や走行台車を何度も往復移動させる必要がなくなる。
【0046】
なお、この実施形態においては、移動フレーム20の下部に突出するようにして補強用の支持部23を設けたため、この支持部23に補助部材24を取り付けて移動フレーム20の下端が平坦になるようにしたが、移動フレーム20が十分な強度を有しており、補強用の支持部23を設けない場合には、移動フレーム20の下端が平坦になっているため、補助部材24を取り付ける必要はない。
【0047】
また、この実施形態においては、ウォーキングビーム駆動手段30において、移動フレーム20を上下方向に往復移動させるにあたり、回転装置32によって回転される偏心カム33を設け、この偏心カム33の外周に回転体31となる回転リング31を回転自在に装着させるようにしたが、移動フレーム20を上下方向に往復移動させる手段はこのようなものに限定されず、従来から用いられている公知の手段を用いることができる。
【0048】
例えば、図8(A),(B)に示すように、往復移動用シリンダ(図示せず)等によって往復移動される作動フレーム35の上、下に、上ローラ35aと下ローラ35bとを取り付け、この上ローラ35aの上に移動フレーム20を支持させる一方、下ローラ35bが接触する床Gに傾斜案内部36を設けるようにすることができる。そして、上記の作動フレーム35を往復移動させると、作動フレーム35の下に取り付けられた下ローラ35bが傾斜案内部36に沿って移動し、これに伴って、この作動フレーム35の上に取り付けられた上ローラ35aによって移動フレーム20が上下方向に往復移動されるようになる。なお、この場合には、移動フレーム20を支持する上記の上ローラ35aが、移動フレーム20を支持して回転する回転体として作用する。
【0049】
また、図9(A),(B)に示すように、支点37aを中心に回動する回動アーム37の上部側の端部に回転ローラ38を回転可能に設け、この回転ローラ38に上記の移動フレーム20を支持させる一方、この回動アーム37の下部側の端部に、この回動アーム37を回動させる回動用シリンダ39を取り付けるようにすることができる。そして、この回動用シリンダ39により回動アーム37を回動させると、これに伴って回動アーム37の上部側の端部に設けられた回転ローラ38が上下方向に回動し、この回転ローラ38により移動フレーム20が上下方向に往復移動されるようになる。なお、この場合には、移動フレーム20を支持する上記の回転ローラ38が、移動フレーム20を支持して回転する回転体として作用する。
【符号の説明】
【0050】
1 炉
2 取出し口
3 扉
4 天井部
5 出入口
10 炉床
11 支持部材
12 固定ビーム
13 貫通部
14 連結部材
20 移動フレーム
21 支持部材
22 駆動ビーム
23 支持部
23a 凹部
24 補助部材
25 延長フレーム
30 ウォーキングビーム駆動手段
31 回転リング(回転体)
32 回転装置
33 偏心カム
34 前後移動用シリンダ
35 作動フレーム
35a 上ローラ(回転体)
35b 下ローラ
36 傾斜案内部
37 回動アーム
37a 支点
38 回転ローラ(回転体)
39 回動用シリンダ
40 昇降装置
41 ウインチ
B ブロック
G 床
W 被処理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームが複数設けられると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームが複数設けられ、上記の移動フレームがウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持され、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームがウォーキング動作を行うウォーキングビーム式加熱炉の改修方法において、上記の炉内から固定ビームが設けられた炉床と駆動ビームが設けられた移動フレームとを取り出すにあたり、上記の炉床と移動フレームとを連結させて一体化させると共に炉床を炉から分離させ、一体化された炉床と移動フレームとを所定の長さに切断して取出し位置から取り出すと共に、一体化された炉床と移動フレームを上記の回転体を回転させながら順々に取出し位置に導くことを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の改修方法。
【請求項2】
請求項1に記載のウォーキングビーム式加熱炉の改修方法において、一体化された炉床と移動フレームとを所定の長さに切断した場合に、所定の長さに切断された炉床と移動フレームとが2つの回転体に支持されない場合に、回転体に支持される移動フレームに延長フレームを取り付けて、所定の長さに切断された炉床と移動フレームとが2つ以上の回転体に支持されるようにしたことを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の改修方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のウォーキングビーム式加熱炉の改修方法において、上記の回転体に支持される移動フレームの支持部分に凹凸がある場合に、この移動フレームの支持部分が平坦になるようにその凹部に補助部材を取り付けることを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の改修方法。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1項に記載のウォーキングビーム式加熱炉の改修方法において、上記の炉の天井部に出入口を開口させ、上記のように一体化されて所定長さに切断された炉床と移動フレームを、この出入口を通して昇降装置により吊り上げて炉内から取り出すことを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の改修方法。
【請求項5】
炉内に設けられた炉床に立設された各支持部材の上に炉長方向に沿った固定ビームが複数設けられると共に、上記の炉床の下方に設けられた移動フレームから炉床に設けられた貫通部を通して炉床の上方に突出された各支持部材の上に炉長方向に沿った駆動ビームが複数設けられ、上記の移動フレームがウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持され、この回転体を介してウォーキングビーム駆動手段により、上記の移動フレームに設けられた駆動ビームがウォーキング動作を行うウォーキングビーム式加熱炉の製造方法において、所定長さになった炉床と移動フレームとを連結させて一体化し、一体化された所定長さの炉床と移動フレームとを炉に設けられた出入口を通して炉内に導入させて、上記の移動フレームをウォーキングビーム駆動手段に設けられた回転体に支持させ、この回転体を回転させながら、一体化された所定長さの炉床と移動フレームを順々に炉内において移動させることを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のウォーキングビーム式加熱炉の製造方法において、一体化された所定長さになった炉床と移動フレームが2つの回転体に支持されない場合に、回転体に支持される移動フレームに延長フレームを取り付けて、一体化された炉床と移動フレームとが2つ以上の回転体に支持されるようにしたことを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の製造方法。
【請求項7】
請求項5又は請求項6に記載のウォーキングビーム式加熱炉の製造方法において、上記の回転体に支持される移動フレームの支持部分に凹凸がある場合に、この移動フレームの支持部分が平坦になるように補助部材を取り付けることを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の製造方法。
【請求項8】
請求項5〜請求項7の何れか1項に記載のウォーキングビーム式加熱炉の製造方法において、上記の炉の天井部に出入口を開口させ、上記のように一体化されて所定長さに切断された炉床と移動フレームを、この出入口を通して昇降装置により吊り下げて炉内に導入させることを特徴とするウォーキングビーム式加熱炉の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−219324(P2012−219324A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85886(P2011−85886)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000211123)中外炉工業株式会社 (170)
【Fターム(参考)】