説明

ウォータージェット加工装置

【課題】加工水噴射ノズルの先端と被加工物の表面との位置関係を適正な距離(間隔)に正確に調整することができるウォータージェット加工装置を提供する。
【解決手段】加工水噴射ノズルを備えた加工手段と、被加工物保持テーブルをXY軸方向に移動させるためのXY軸方向移動手段と、被加工物保持テーブルを垂直に移動させるためのZ軸方向移動手段と、被加工物保持テーブルのZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段とを具備するウォータージェット加工装置であって、被加工物の表面にエアーを噴出するエアーノズルと、背圧検出センサーと、ノズル移動手段と、を具備し、被加工物の表面からエアーノズの先端までの距離を検出するための背圧式間隔検出機構と、加工水噴射ノズルおよびエアーノズルの先端を接触させることにより加工水噴射ノズルおよびエアーノズルの基準位置を設定するための基準位置検出センサーと、制御手段と、を具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエーハ等の被加工物を高圧の加工水を噴射して切断するウォータージェット加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程においては、略円板形状である半導体ウエーハの表面に格子状に配列された多数の領域にIC、LSI等の回路を形成し、該回路が形成された各領域を所定のストリートといわれる切断予定ラインに沿ってダイシングすることにより個々の半導体チップを製造している。このようにして分割された半導体チップは、パッケージングされて携帯電話やパソコン等の電気機器に広く利用されている。
【0003】
携帯電話やパソコン等の電気機器はより軽量化、小型化が求められており、半導体チップのパッケージもチップサイズパッケージ(CSP)と称する小型化できるパッケージ技術が開発されている。CSP技術の一つとして、Quad Flat Non−lead Package(QFN)と称するパッケージ技術が実用化されている。このQFNと称するパッケージ技術は、半導体チップの接続端子に対応した接続端子が複数形成されているとともに半導体チップ毎に区画する分割予定ラインが格子状に形成された銅板等の金属板に複数個の半導体チップをマトリックス状に配設し、半導体チップの裏面側から樹脂をモールディングした樹脂部によって金属板と半導体チップを一体化することによりCSP基板を形成する。このCSP基板を分割予定ラインに沿って切断することにより、個々にパッケージされたチップサイズパッケージ(CSP)に分割する。
【0004】
上記CSP基板の切断は、一般にダイシング装置とよばれる精密切削装置によって施される。このダイシング装置は、環状の砥粒層を備えた切削ブレードを備え、この切削ブレードを回転させつつCSP基板の分割予定ラインに沿って相対移動することにより、CSP基板を分割予定ラインに沿って切削し、個々のチップサイズパッケージ(CSP)に分割する。しかるに、CSP基板を切削ブレードによって切断すると、接続端子にバリが生じ、隣接する接続端子同士が短絡してチップサイズパッケージ(CSP)の品質および信頼性を低下させるという問題がある。
また、CSP基板に限らず、半導体ウエーハ等の被加工物を切削ブレードによって切削すると、被加工物の表面に微細な切削屑が付着して汚染するという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
このような切削ブレードによる切断における問題を解消する切断技術として、被加工物保持テーブルによって保持された被加工物にシリカ、ガーネット、ダイヤモンド等の砥粒を混入した高圧の加工水を加工水噴射ノズルから噴射して被加工物を切断するウォータージェット切断加工が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)
【特許文献1】特開2005−230994号公報
【0006】
上述したウォータージェット加工においては、高圧の加工水を噴射する加工水噴射ノズルの先端は被加工物の表面から所定距離(例えば100〜500μm)離れた位置に位置付ける必要がある。このため、加工水噴射ノズルの先端位置を検出するノズル位置検出手段および被加工物保持テーブルの保持面に対して垂直な方向の移動位置を検出するテーブル位置検出手段を設け、被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物の厚みに対応して被加工物保持テーブルを移動する移動手段を制御することにより、加工水噴射ノズルと被加工物の表面との位置関係を適正な距離(間隔)に調整している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
而して、被加工物の厚みにはバラツキがあり、被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物の厚みに対応して上記移動手段を制御しても、加工水噴射ノズルの先端と被加工物の表面との位置関係を適正な距離(間隔)に正確に調整することは困難である。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術的課題は、被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物の厚みにバラツキがあっても、加工水噴射ノズルの先端と被加工物の表面との位置関係を適正な距離(間隔)に正確に調整することができるウォータージェット加工装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物を保持する保持面を有する被加工物保持テーブルと、該被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物に加工水を噴射する加工水噴射ノズルを備えた加工手段と、該被加工物保持テーブルを該保持面と平行にX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段と、該被加工物保持テーブルを該保持面と平行にX軸方向と直交するY軸方向に移動させるためのY軸方向移動手段と、該被加工物保持テーブルを該保持面に対して垂直なZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動手段と、該被加工物保持テーブルのZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段と、を具備するウォータージェット加工装置において、
該被加工物保持テーブルに保持された被加工物の表面にエアーを噴出するエアーノズルと、該エアーノズルから噴出されるエアーの背圧を検出する背圧検出センサーと、該エアーノズルをZ軸方向に移動せしめるノズル移動手段とを具備し、被加工物の表面から該エアーノズの先端までの距離を検出するための背圧式間隔検出機構と、
該被加工物保持テーブルに配設され該加工水噴射ノズルおよび該エアーノズルの先端を接触させることにより該加工水噴射ノズルおよび該エアーノズルの基準位置を設定するための基準位置検出センサーと、
該Z軸方向位置検出手段と該背圧検出センサーと該基準位置検出センサーからの検出信号に基づいて該Z軸方向移動手段に制御信号を出力し、該被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物の表面から加工水噴射ノズルの先端までの距離が所定の値になるように制御する制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするウォータージェット加工装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるウォータージェット加工装置は上述したように構成されているので、加工水噴射ノズルおよび背圧式間隔検出機構のエアーノズルの先端を基準位置検出センサーに接触させることにより、加工水噴射ノズルとエアーノズルの基準位置を一致させることができる。そして、背圧式間隔検出機構によって検出された被加工物の表面からエアーノズルの先端までの距離に基づいてZ軸方向移動手段を制御して被加工物保持テーブルのZ軸方向位置を調整するので、被加工物保持テーブルに保持された被加工物の表面から加工水噴射ノズルの先端までの距離を所定の値に正確に調整することができる。また、上記背圧式間隔検出機構は、エアーノズルを被加工物の表面に接触させることなく被加工物の表面からエアーノズルの先端までの距離(間隔)を正確に検出することができるので、被加工物の表面にエアーノズルが接触することによる被加工物の損傷を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に従って構成されたウォータージェット加工装置の要部斜視図。
【図2】図1に示すウォータージェット加工装置に装備される背圧式間隔検出機構のブロック構成図。
【図3】図2に示す背圧式間隔検出機構を構成する背圧検出センサーの特性線図。
【図4】図1に示すウォータージェット加工装置に装備される制御手段のブロック構成図。
【図5】被加工物としてのCSP基板の斜視図。
【図6】図5に示すCSP基板の断面図。
【図7】被加工物としてのCSP基板を保持しウォータージェット加工装置の被加工物保持テーブル上に載置するための第1の被加工物保持治具の斜視図。
【図8】被加工物としてのCSP基板を保持しウォータージェット加工装置の被加工物保持テーブル上に載置するための第2の被加工物保持治具の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に従って構成されたウォータージェット加工装置の好適な実施形態を図示している添付図面を参照して、更に詳細に説明する。
【0013】
図1には、本発明に従って構成されたウォータージェット加工装置の要部斜視図が示されている。図1に示されたウォータージェット加工装置は、静止基台2と、第1の可動基台3と、第2の可動基台4と、第3の可動基台5を具備している。この静止基台2の手前側の側面には、矢印Xで示す方向(X軸方向)に沿って平行に延びる一対の案内レール21、21が設けられている。
【0014】
第1の可動基台3は、上記静止基台2と対向する一方の側面にX軸方向に形成され静止基台2に設けられた一対の案内レール21、21に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝31、31を備えているとともに、他方の側面に設けられ矢印Zで示す方向(Z軸方向)に平行に延びる一対の案内レール32、32を備えている。このように構成された第1の可動基台3は、一対の被案内溝31、31を上記一対の案内レール21、21に嵌合することにより、静止基台2にX軸方向に移動可能に支持される。図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、第1の可動基台3を上記静止基台2に設けられた一対の案内レール21、21に沿ってX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段30を具備している。X軸方向移動手段30は、一対の案内レール21と21との間に該案内レールと平行に配設された雄ネジロッド301と、該雄ネジロッド301を回転駆動するためのパルスモータ302とを含んでいる。雄ネジロッド301は、上記第1の可動基台3に設けられた雌ネジ33と螺合し、その一端が静止基台2に配設された軸受部材303に回転可能に支持されている。パルスモータ302は、その駆動軸が雄ネジロッド301の他端に連結され、雄ネジロッド301を正転および逆転駆動することにより、第1の可動基台3を静止基台2に設けられた一対の案内レール21、21に沿ってX軸方向に移動せしめる。このように構成されたX軸方向移動手段30のパルスモータ302は、後述する制御手段によって制御される。
【0015】
上記第2の可動基台4は、上記第1の可動基台3と対向する一方の側面にZ軸方向に形成され第1の可動基台3に設けられた一対の案内レール32、32に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝41、41を備えているとともに、上記一方の側面に対して垂直な側面に設けられ矢印Yで示す方向(Y軸方向)に平行に延びる一対の案内レール42、42を備えている。このように構成された第2の可動基台4は、一対の被案内溝41、41を上記一対の案内レール32、32に嵌合することにより、第1の可動基台3にZ軸方向に移動可能に支持される。図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、第2の可動基台4を上記第1の可動基台3に設けられた一対の案内レール32、32に沿ってZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動手段40を具備している。Z軸方向移動手段40は、一対の案内レール32と32との間に該案内レールと平行に配設された雄ネジロッド401と、該雄ネジロッド401を回転駆動するためのパルスモータ402とを含んでいる。雄ネジロッド401は、上記第2の可動基台4に設けられた雌ネジ43と螺合し、その一端が第1の可動基台3に配設された軸受部材403に回転可能に支持されている。パルスモータ402は、その駆動軸が雄ネジロッド401の他端に連結され、雄ネジロッド401を正転および逆転駆動することにより、第2の可動基台4を第1の可動基台3に設けられた一対の案内レール32、32に沿ってZ軸方向に移動せしめる。効用に構成されたZ軸方向移動手段40のパルスモータ402は、後述する制御手段によって制御される。
【0016】
図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、上記第2の可動基台4即ち後述する被加工物保持テーブルのZ軸方向移動位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段45を具備している。このZ軸方向位置検出手段45は、上記第1の可動基台3に一対の案内レール32、32に沿って配設されたリニアスケール451と、第2の可動基台4とともにリニアスケール451に沿って移動する読み取りヘッド452とからなっている。このZ軸方向位置検出手段45の読み取りヘッド452は、図示の実施形態においては1μm毎に1パルスのパルス信号を後述する制御手段に送る。
【0017】
上記第3の可動基台5は、上記第2の可動基台4と対向する一方の側面にY軸方向に形成され上記第2の可動基台4に設けられた一対の案内レール42、42に摺動可能に嵌合する一対の被案内溝51、51(図1においては上側の一方だけが示されている)を備えており、該一対の被案内溝51、51を上記一対の案内レール42、42に嵌合することにより、第2の可動基台4にY軸方向に移動可能に支持される。図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、第3の可動基台5を上記第2の可動基台4に設けられた一対の案内レール42、42に沿って矢印Yで示す方向に移動させるためのY軸方向移動手段50を具備している。Y軸方向移動手段50は、一対の案内レール42と42との間に該案内レールと平行に配設された雄ネジロッド501と、該雄ネジロッド501を回転駆動するためのパルスモータ502とを含んでいる。雄ネジロッド501は、上記第3の可動基台5に設けられた雌ネジ(図示せず)と螺合し、その一端が第2の可動基台4に配設された軸受部材503に回転可能に支持されている。パルスモータ502は、その駆動軸が雄ネジロッド501の他端に連結され、雄ネジロッド501を正転および逆転駆動することにより、第3の可動基台5を第3の可動基台4に設けられた一対の案内レール42、42に沿ってY軸方向に移動せしめる。このように構成されたY軸方向移動手段50のパルスモータ502は、後述する制御手段によって制御される。
【0018】
上記第3の可動基台5の他方の面には、X軸方向に延びる被加工物保持テーブル6が装着されている。この被加工物保持テーブル6は、その上面である保持面がZ軸方向に対して垂直に形成されている。従って、被加工物保持テーブル6の上面である保持面は、水平に維持される。被加工物保持テーブル6には、矩形状の開口61が形成されているとともに、該開口61の周囲上面に4本の位置決めピン62が突出して配設されている。図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、被加工物保持テーブル6の下側に配設され、後述するウォータージェットを緩衝するための水を収容する水槽60を備えている。
【0019】
図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、上記被加工物保持テーブル6上に保持される被加工物に加工水を噴射してウォータージェット加工するための加工手段7を具備している。加工手段7は、被加工物保持テーブル6上に保持される被加工物に加工水を噴射するための直径が200μm程度の噴出口を備えた加工水噴射ノズル71と、該加工水噴射ノズル71に砥粒を混入した高圧の加工水を供給する加工水供給手段72を具備している。加工水噴射ノズル71は、上記静止基台2に固定されたノズル支持部材73に支持されている。
【0020】
図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、被加工物保持テーブル6に保持された被加工物の表面からの距離(間隔)を検出するための背圧式間隔検出機構8を具備している。背圧式間隔検出機構8について、図2を参照して説明する。図示の背圧式間隔検出機構8は、圧縮気体供給源81と、該圧縮気体供給源81から第1の固定絞り821および可変絞り822を経て外気に開放する比較空気回路82と、圧縮気体供給源81から第2の固定絞り831およびエアーノズル832を経て外気に開放する検知空気回路83と、第1の固定絞り821と可変絞り822との中間位置から背圧検出センサー84の比較圧力導入口に連通する比較圧力回路85と、第2の固定絞り831とエアーノズル832との中間位置から背圧検出センサー84の検知圧力導入口に連通する検知圧力回路86と、上記エアーノズル832をZ軸方向即ち上記被加工物保持テーブル6の保持面に対して垂直な方向に移動せしめるノズル移動手段87を具備している。検知ノズル移動手段87は、エアーノズル832を支持するノズル支持ブロック871と、該ノズル支持ブロック871に螺合された雄ネジロッド872と、該雄ネジロッド872を回転駆動するためのパルスモータ873とからなっている。ノズル支持ブロック871は、図1に示すように上記ノズル支持部材73の前面に図示しない案内レールに沿ってZ軸方向に移動可能に配設されている。また、パルスモータ873は、ノズル支持ブロック871の上方においてノズル支持部材73の前面に装着され、その駆動軸が雄ネジロッド872に伝動連結されている。このように構成されたノズル移動手段87は、パルスモータ873を一方向に回転すると検知ノズル支持ブロック871を下方に移動し、パルスモータ873を他方向に回転するとノズル支持ブロック871を上方に移動する。このパルスモータ873は、作動が後述する制御手段によって制御されるようになっている。
【0021】
次に、上記のように構成された背圧式間隔検出機構8による被加工物Wの表面からエアーノズル832の先端(下端)までの距離(間隔)を検出する検出方法について説明する。背圧式間隔検出機構8における検知圧力回路86の圧力は、エアーノズル832の先端(開放口)と被加工物Wの表面との間隔によって変化する。即ち、エアーノズル832と被加工物Wの表面との間隔が小さい程、検知圧力回路86の圧力は高くなる。検知圧力回路86の圧力と比較空気回路82の圧力の差に対応した検出信号を出力する背圧検出センサー84は、図3で示すようにエアーノズル832と被加工物Wの表面との間隔に対応した電圧信号を後述する制御手段に出力するように構成されている。従って、図示の例ではノズル移動手段87のパルスモータ873を一方向に駆動してエアーノズル832を退避位置から下方に移動せしめ、背圧検出センサー84からの出力電圧が例えば4Vのときエアーノズル832の先端(開放口)と被加工物Wの表面との間隔は30μmである。
【0022】
図1および図2を参照して説明を続けると、図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、上記加工水噴射ノズル71およびエアーノズル832の基準位置を設定するための基準位置検出センサー9を具備している。この基準位置検出センサー9は、例えばマイクロスイッチからなっており、上記被加工物保持テーブル6の上面に配設されている。
【0023】
図示の実施形態におけるウォータージェット加工装置は、図4に示す制御手段10を具備している。制御手段10は制御プログラムに従って演算処理する中央処理装置101(CPU)と、制御プログラムや上述した図3で示す背圧式間隔検出機構8におけるエアーノズル832と被加工物Wの表面との間隔に対応した電圧信号との関係マップ等を格納したリードオンリメモリ102(ROM)と、演算結果等を格納する読み書き可能なランダムアクセスメモリ103(RAM)と、入力インターフェース104および出力インターフェース105等を備えている。このように構成された制御手段10の入力インターフェース104には、上記Z軸方向位置検出手段45、背圧式間隔検出機構8の背圧検出センサー84、基準位置検出センサー9等から検出信号化入力される。そして、出力インターフェース105からは、X軸方向移動手段30のパルスモータ302、Z軸方向移動手段40のパルスモータ402、Y軸方向移動手段50のパルスモータ502、加工水供給手段72、背圧式間隔検出機構8を構成する検知ノズル移動手段87のパルスモータ873等に制御信号を出力する。
【0024】
次に、上述したウォータージェット加工装置によって切断される被加工物としてのCSP基板について、図5および図6を参照して説明する。
図5および図6に示すCSP基板70は、金属板700に3個のブロック70a、70b、70cが連続して形成されている。CSP基板70を構成する3個のブロック70a、70b、70cの表面700aには、それぞれ所定の方向に延びる複数の第1の分割予定ライン701と、該第1の分割予定ライン701と直交する方向に延びる第2の分割予定ライン702が格子状に形成されている。第1の分割予定ライン701と第2の分割予定ライン702によって区画された複数の領域にそれぞれチップサイズパッケージ(CSP)703が配置されており、このチップサイズパッケージ(CSP)703は各ブロック70a、70b、70c毎に金属板700の裏面側から合成樹脂部710a、710b、710cによってモールディングされている。なお、CSP基板70を構成する金属板700の外周部は3個のブロック70a、70b、70cより外側に突出して形成されており、この長手方向両側の突出部に位置決め用の複数の穴704(図示の実施形態においては、それぞれ4個)が設けられている。このように形成されたCSP基板70は、第1の分割予定ライン701および第2の分割予定ライン702に沿って切断され個々にパッケージされたチップサイズパッケージ(CSP)703に分割される。
【0025】
上述したCSP基板70は、図7に示す第1の被加工物保持治具90aおよび図8に示す第2の被加工物保持治具90bによって保持され、ウォータージェット加工装置の上記被加工物保持テーブル6上に保持される。なお、図7に示す第1の被加工物保持治具90aおよび図8に示す第2の被加工物保持治具90bは、後述する第1の貫通溝および第2の貫通溝以外は同一の構成であるため、同一部材には同一符号を付して説明する。図7に示す第1の被加工物保持治具90aおよび図8に示す第2の被加工物保持治具90bは、それぞれ下挟持板91と上挟持板92とからなっており、片側辺が2個のヒンジ93、93によって互いにヒンジ結合されている。
【0026】
第1の被加工物保持治具90aおよび第2の被加工物保持治具90bを構成する下挟持板91は、金属または合成樹脂によって矩形状に形成された板材からなっており、その上面には上記CSP基板70が嵌合する矩形状の凹部911が形成されている。この矩形状の凹部911の長手方向両側には上記CSP基板70の電極板700に形成された複数の位置決め用の穴704が嵌合する複数の位置決めピン912が配設されている。また、下挟持板91の4隅部には、上記被加工物保持テーブル6に配設された4本の位置決めピン62と嵌合する位置決め用の4個の穴913が設けられている。そして、図7に示す第1の被加工物保持治具90aを構成する下挟持板91の矩形状の凹部911には、上記CSP基板70の第1の分割予定ライン701と対応する第1の貫通溝914aと、該第1の貫通溝914aの一端および他端において隣接する第1の貫通溝914aを交互に連通する第2の貫通溝915aが形成されている。また、図8に示す第2の被加工物保持治具90bを構成する下挟持板91の矩形状の凹部911には、上記CSP基板70の第2の分割予定ライン702と対応する第1の貫通溝914bと、該第1の貫通溝914bの一端および他端において隣接する第1の貫通溝914bを交互に連通する第2の貫通溝915bが形成されている。
【0027】
第1の被加工物保持治具90aおよび第2の被加工物保持治具90bを構成する上挟持板92には、それぞれ開口921が設けられている。この開口921は、上記CSP基板70と相似形でCSP基板70より僅かに小さい寸法形状に形成されている。
【0028】
上記CSP基板70を第1の分割予定ライン701および第2の分割予定ライン702に沿って切断するには、先ず第1の被加工物保持治具90aの下挟持板91にCSP基板70を載置する。このとき、CSP基板70を矩形状の凹部911に嵌合するとともに、電極板700に形成された複数の位置決め用の穴704を下挟持板91に設けられた複数の位置決めピン912に嵌合する。そして、上挟持板91を重合して係合片94を下挟持板91に設けられた係合凹部916に係合する。このようにしてCSP基板70を第1の被加工物保持治具90aにセットしたならば、CSP基板70がセットされた第1の被加工物保持治具90aを被加工物保持テーブル6上に載置する。このとき、第1の被加工物保持治具90aの下挟持板91に設けられた4個のピン穴913を被加工物保持テーブル6に配設された4本の位置決めピン62と嵌合することにより、CSP基板70がセットされた第1の被加工物保持治具90aは被加工物保持テーブル6の所定位置に保持される。
【0029】
CSP基板70がセットされた第1の被加工物保持治具90aがウォータージェット加工装置における被加工物保持テーブル6の所定位置に保持されたならば、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第1の被加工物保持治具90aにセットされている状態)の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)を所定の値に調整する間隔調整作業を実施する。この間隔調整作業は、以下の手順で実施する。
(1)制御手段10は、X軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して被加工物保持テーブル6に配設された基準位置検出センサー9を加工水噴射ノズル71の直下に位置付けた後、Z軸方向移動手段40を作動して被加工物保持テーブル6を上昇させ基準位置検出センサー9が加工水噴射ノズル71に接触したら(基準位置検出センサー9がONしたら)Z軸方向移動手段40の作動を停止する。
(2)制御手段10は、被加工物保持テーブル6のZ軸方向位置を維持した状態でX軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して被加工物保持テーブル6に配設された基準位置検出センサー9を背圧式間隔検出機構8のエアーノズル832の直下に位置付けた後、ノズル移動手段87を作動してエアーノズル832を下降させ基準位置検出センサー9がエアーノズル832に接触したら(基準位置検出センサー9がONしたら)ノズル移動手段87の作動を停止する。この状態で、加工水噴射ノズル71の先端とエアーノズル832の先端のZ軸方向位置が合致する。
(3)制御手段10は、X軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第1の被加工物保持治具90aにセットされている状態)の表面を背圧式間隔検出機構8のエアーノズル832の直下に位置付けた後、Z軸方向移動手段40を作動して被加工物保持テーブル6を上昇させ背圧式間隔検出機構8の背圧検出センサー84からの出力電圧が例えば4Vになった際、Z軸方向移動手段40を作動を停止するとともに、上記Z軸方向位置検出手段45からの検出信号に基づいて被加工物保持テーブル6のZ軸方向位置(Z1)を求め、このZ軸方向位置(Z1)をランダムアクセスメモリ103(RAM)に格納する。なお、背圧検出センサー84からの出力電圧が4Vの場合は、図示の実施形態においては図3に示すように被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70の表面からエアーノズル132までの距離(間隔)は30μmである。
(4)次に、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第1の被加工物保持治具90aにセットされている状態)の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)を所定の値(例えば100μm)に調整する。即ち、制御手段10は、X軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第1の被加工物保持治具90aにセットされている状態)の表面を加工水噴射ノズル71の直下に位置付けた後、Z軸方向移動手段40を作動して被加工物保持テーブル6を、(Z1)+30μm−100μmのZ軸方向位置に位置付ける。この結果、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第1の被加工物保持治具90aにセットされている状態)の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)は、100μmに調整される。
【0030】
以上のようにして間隔調整作業を実施することにより、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)を所定の値に正確に調整することができる。また、上記背圧式間隔検出機構8は、エアーノズル832をCSP基板70の表面に接触させることなくCSP基板70の表面から加工水噴射ノズル71の先端までの距離(間隔)を正確に検出することができるので、CSP基板70の表面にエアーノズル832が接触することによるCSP基板70の損傷を未然に防止することができる。
【0031】
上述した間隔調整作業を実施したならば、制御手段10はX軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第1の被加工物保持治具90aにセットされている状態)の加工開始位置を加工水噴射ノズル71の直下に位置付ける。次に、制御手段10は加工水供給手段72を作動して加工水噴射ノズル71から砥粒が混入された加工水を噴射するとともに、Y軸方向移動手段50およびX軸方向移動手段30を作動して被加工物保持テーブル6即ちCSP基板70を加工水噴射ノズル71に対して第1の被加工物保持治具90aの下挟持板91に形成された第1の貫通溝914aおよび第2の貫通溝915aに沿って移動せしめる。この結果、CSP基板70は、第1の分割予定ライン701の全てと第2の分割予定ライン702の一部に沿って(第1の被加工物保持治具90aの下挟持板91に形成された第1の貫通溝914aおよび第2の貫通溝915aに沿って)切断される(第1の切断工程)。この第1の切断工程においては、上記間隔調整作業を実施することにより被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)が所定の値に正確に調整されているので、CSP基板70を第1の分割予定ライン701の全てと第2の分割予定ライン702の一部に沿って正確に切断することができる。なお、切断時においては、高圧の加工水はCSP基板70を貫通するが、切断後の高圧の加工水は下挟持板91に形成された第1の貫通溝914aおよび第2の貫通溝915aを通り、水槽60に収容された緩衝用の水によってその勢いが和らげられる。
【0032】
上述した第1の切断工程を実施したならば、第1の切断工程が実施されたCSP基板70を挟持している第1の被加工物保持治具90aを被加工物保持テーブル6から取り外す。そして、第1の被加工物保持治具90aに挟持されているCSP基板70を第2の被加工物保持治具90bにセットする。このCSP基板70のセットは、上記第1の被加工物保持治具90aへのセットと同様に実施する。
【0033】
CSP基板70を第2の被加工物保持治具90bにセットしたならば、CSP基板70がセットされた第2の被加工物保持治具90bを被加工物保持テーブル6上に載置し、上記第1の被加工物保持治具90aと同様に被加工物保持テーブル6の所定位置に保持する。そして、上述した間隔調整作業を実施し、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第2の被加工物保持治具90bにセットされている状態)の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)を100μmに調整する。
【0034】
次に、制御手段10はX軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して、被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70(第2の被加工物保持治具90bにセットされている状態)の加工開始位置を加工水噴射ノズル71の直下に位置付ける。そして、制御手段10は加工水供給手段72を作動して加工水噴射ノズル71から砥粒が混入された加工水を噴射するとともに、X軸方向移動手段30およびY軸方向移動手段50を作動して被加工物保持テーブル6即ちCSP基板70を加工水噴射ノズル71に対して第2の被加工物保持治具90bの下挟持板91に形成された第1の貫通溝914bおよび第2の貫通溝915bに沿って移動せしめる。この結果、CSP基板70は、第2の分割予定ライン702の全てと第1の分割予定ライン701の一部に沿って(第2の被加工物保持治具90bの下挟持板91に形成された第1の貫通溝914bおよび第2の貫通溝915bに沿って)切断される(第2の切断工程)。この第2の切断工程においては、上記間隔調整作業を実施することにより被加工物保持テーブル6に保持されたCSP基板70の表面から加工水噴射ノズル71の先端(下端)までの距離(間隔)が所定の値に正確に調整されているので、CSP基板70を第2の分割予定ライン702の全てと第1の分割予定ライン701の一部に沿って正確に切断することができる。なお、切断時においては、高圧の加工水はCSP基板70を貫通するが、切断後の高圧の加工水は下挟持板91に形成された第1の貫通溝914bおよび第2の貫通溝915bを通り、水槽60に収容された緩衝用の水によってその勢いが和らげられる。
【0035】
上述した第2の切断工程を実施したならば、第2の切断工程が実施されたCSP基板70を挟持している第2の被加工物保持治具90bを被加工物保持テーブル6から取り外す。以上のようにして第1の切断工程および第2の切断工程を実施することによりCSP基板70は、第1の分割予定ライン701のおよび第2の分割予定ライン702に沿って切断され、個々のチップサイズパッケージ(CSP)に分割される。
【符号の説明】
【0036】
2:静止基台
21:案内レール
3:第1の可動基台
30:X軸方向移動手段
4:第2の可動基台
40:Z軸方向移動手段
45:Z軸方向位置検出手段
5:第3の可動基台
50:Y軸方向移動手段
6:被加工物保持テーブル
61:開口
62:位置決めピン
60:水槽
7:加工水噴射ノズル
8:ノズル支持部材
9:加工水供給手段
10:背圧式間隔検出機構
100:基準位置検出センサー
200:制御手段
70:CSP基板
80a:第1の被加工物保持治具
80b:第2の被加工物保持治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工物を保持する保持面を有する被加工物保持テーブルと、該被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物に加工水を噴射する加工水噴射ノズルを備えた加工手段と、該被加工物保持テーブルを該保持面と平行にX軸方向に移動させるためのX軸方向移動手段と、該被加工物保持テーブルを該保持面と平行にX軸方向と直交するY軸方向に移動させるためのY軸方向移動手段と、該被加工物保持テーブルを該保持面に対して垂直なZ軸方向に移動させるためのZ軸方向移動手段と、該被加工物保持テーブルのZ軸方向位置を検出するためのZ軸方向位置検出手段と、を具備するウォータージェット加工装置において、
該被加工物保持テーブルに保持された被加工物の表面にエアーを噴出するエアーノズルと、該エアーノズルから噴出されるエアーの背圧を検出する背圧検出センサーと、該エアーノズルをZ軸方向に移動せしめるノズル移動手段とを具備し、被加工物の表面から該エアーノズの先端までの距離を検出するための背圧式間隔検出機構と、
該被加工物保持テーブルに配設され該加工水噴射ノズルおよび該エアーノズルの先端を接触させることにより該加工水噴射ノズルおよび該エアーノズルの基準位置を設定するための基準位置検出センサーと、
該Z軸方向位置検出手段と該背圧検出センサーと該基準位置検出センサーからの検出信号に基づいて該Z軸方向移動手段に制御信号を出力し、該被加工物保持テーブルの保持面に保持された被加工物の表面から加工水噴射ノズルの先端までの距離が所定の値になるように制御する制御手段と、を具備している、
ことを特徴とするウォータージェット加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−179374(P2010−179374A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−22288(P2009−22288)
【出願日】平成21年2月3日(2009.2.3)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】