説明

ウォータービーム加工装置、およびウォータービーム加工装置における集光調整方法

【課題】高精度な集光調整が可能なウォータービーム加工装置、および集光調整方法を提供する。
【解決手段】レーザー照射源(12)を移動させて照射されたレーザーLの焦光点を調整するXYZ軸移動テーブル2と、開口部31を通過するレーザーL2の光量を調整するアパチャ3と、コリメートレンズ41および集光レンズ42からなるレンズユニット4と、噴流液体WRを噴射して噴流液柱WJを形成するノズル6と、を備え、レーザーL2を噴流液柱WJ内に導いて加工するウォータービーム加工装置1であって、アパチャ3とレンズユニット4との光軸L0方向における距離、またはアパチャ3の開口径を調整してコリメートレンズ41に到達するレーザー径dを調整するコリメート径調整機構5を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォータービーム加工装置、および集光調整方法に係り、特に、コリメート径調整機構を備えたウォータービーム加工装置、および集光調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウォータービーム加工装置は、ノズルから水等の噴流液体を噴射して噴流液柱(ウォータジェット)を形成し、この噴流液柱内に導かれたレーザー(ウォータービーム)によってワークを加工する。このため、ウォータービーム加工装置は、噴流液柱内に的確にレーザーを導くために、レーザー照射源から照射されたレーザーをコリメートレンズにより一度平行光まで絞った後、さらに集光レンズによりノズル孔にレーザーを集光させている。
【0003】
このようなウォータービーム加工装置では、噴流液柱内に的確にレーザーが導光されないと、ノズルを損傷し、レーザー出力が減衰してワークの加工精度に影響を及ぼすため、レーザーの光軸を調整するミラーやノズルまたは集光レンズの軸方向位置を移動させて集光点を調整する機構が設けられている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−95884号公報(段落0115〜0119、図23)
【特許文献2】特開2007−61914号公報(請求項1、段落0007,0008、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置において、レーザー照射源から照射されるレーザーの受光部(アパチャ)とコリメートレンズは、ユニット化された一体の筒形状部材となっており、レーザーの光量を調整して集光点を合わせるために、ミラーで調整したり、ノズルや一体の筒形状部材からなる光学系を移動して調整したりすると、調整機構が複雑になり、調整作業が煩雑になるといった課題があった。
【0006】
さらに、アパチャやコリメートレンズ等の光学系がユニット化された従来の一体の筒形状部材では、アパチャがカットしたレーザーによって発生する熱により筐体が熱変形することによって光学系の精度に影響を及ぼしレーザーの集光点がずれてしまうといった課題があった。
【0007】
そこで、本発明は、前記した課題を解決すべく、高精度な集光調整が可能なウォータービーム加工装置、およびウォータービーム加工装置における集光調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明は、レーザーを照射するレーザー照射源と、このレーザー照射源を移動させて照射されたレーザーの焦光点を調整する移動テーブルと、開口部を通過する前記レーザーの光量を調整するアパチャと、このアパチャを通過したレーザーを集光させるコリメートレンズおよび集光レンズからなるレンズユニットと、噴流液体を噴射して噴流液柱を形成するノズルと、を備え、前記レンズユニットにより集光されたレーザーを前記噴流液柱内に導いて加工するウォータービーム加工装置であって、前記移動テーブルは、前記レーザーの光軸に直交するXY平面内、および前記光軸方向に沿うZ軸方向に移動可能なXYZ軸移動テーブルであり、前記アパチャと前記レンズユニットとの前記光軸方向における距離、または前記アパチャの開口径を調整して前記コリメートレンズに到達するレーザー径を調整するコリメート径調整機構を備えたこと、を特徴とする。
【0009】
本発明に係るウォータービーム加工装置によれば、前記コリメート径調整機構を備えたことで、前記レンズユニットによるコリメート径を自在に調整することができるため、要求されるコリメート径ごとにアパチャを交換することなく、ワークの加工条件に合わせて容易に最適なコリメート径を採択することができる。
そして、最適なコリメート径を採択することで、ノズルに導光されるレーザーのビーム品質を好適に調整して、高精度な集光調整を実現しワークの加工品質を向上させることができる。
【0010】
また、レーザーの焦光点を調整するXYZ軸移動テーブルを備えたことで、集光調整のためにノズルやレンズユニットを移動させる必要がないので、ノズルおよびレンズユニットを固定して配設することができるため、集光点のずれを防止して精度管理が容易で高精度な集光調整が可能となる。さらに、調整された集光点を安定して維持することができる。
【0011】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載のウォータービーム加工装置であって、前記アパチャは、前記レンズユニットから分離した別体として構成したことを特徴とする。
【0012】
請求項2に係る発明によれば、前記アパチャをレンズユニットから分離した別体としたことで、アパチャをレンズユニットから離隔させることができるため、アパチャで遮蔽されたレーザーによるアパチャの発熱がレンズユニットに伝達されるのを効果的に抑制することができる。
このため、請求項2に係るウォータービーム加工装置は、レンズユニットに及ぼす熱影響を低減することで、レンズユニットの熱歪みを抑制して、より精度管理が容易で高精度な集光調整が可能となる。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載のウォータービーム加工装置であって、前記レンズユニットおよび前記ノズルをベース部材に固定して配設し、前記アパチャを前記レンズユニットに対して前記光軸方向に移動自在に前記ベース部材に配設し、前記レーザー径調整機構は、前記レンズユニットに対して前記アパチャを移動させて、当該アパチャと前記コリメートレンズとの前記光軸方向における距離を調整すること、を特徴とする。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、前記レンズユニットおよび前記ノズルをベース部材に固定したことで、レンズユニットとノズルとの位置関係を高精度に確保することができる。
このため、請求項3に係るウォータービーム加工装置は、集光点の位置ずれの範囲を狭くすることができるため、コリメート径調整機構によりコリメート径を調整し、XYZ軸移動テーブルにより集光点を調整することで、精度管理が容易で高精度な集光調整が可能となる。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウォータービーム加工装置であって、前記アパチャを冷却する冷却装置を備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項4に係る発明によれば、前記アパチャを冷却する冷却装置を備えたことで、レンズユニットに伝達される熱の影響をより効果的に低減することができるため、レンズユニットの熱歪みを抑制して、より精度管理が容易で高精度な集光調整が可能となる。
【0017】
請求項5に係る発明は、レーザーを照射するレーザー照射源と、このレーザー照射源を移動させる移動テーブルと、開口部を通過するレーザーの光量を調整するアパチャと、コリメートレンズおよび集光レンズにより前記アパチャを通過した前記レーザーを集光させるレンズユニットと、噴流液体を噴射して噴流液柱を形成するノズルと、を備えたウォータービーム加工装置における前記噴流液柱にレーザーを導くための集光調整方法であって、前記アパチャと前記コリメートレンズとの前記レーザーの光軸方向における距離、または前記アパチャの開口径を調整して前記コリメートレンズに到達するレーザー径を調整するコリメート径調整工程と、前記移動テーブルにより、集光された前記レーザーの焦光点を調整する焦光点調整工程と、を含んで集光調整を行うことを特徴とする。
【0018】
本発明に係るウォータービーム加工装置における集光調整方法によれば、前記コリメート径調整工程により、前記レンズユニットによるコリメート径を自在に調整することができるため、コリメート径ごとにアパチャを交換することなく、ワークの加工条件に合わせて容易に最適なコリメート径を採択することができる。
そして、最適なコリメート径を採択することで、ノズルに導光されるレーザーのビーム品質を好適に調整して、高精度な集光調整を実現しワークの加工品質を向上させることができる。
【0019】
また、焦光点調整工程により、レーザーの焦光点を調整することができるため、集光調整のためにノズルやレンズユニットを移動させる必要がないので、ノズルおよびレンズユニットを固定して配設することができる。
このため、本発明に係るウォータービーム加工装置における集光調整方法は、精度管理が容易で高精度な集光調整が可能となり、しかも調整された集光点を安定して維持することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係るウォータービーム加工装置、およびウォータービーム加工装置における集光調整方法は、レンズユニットを強固に固定した状態でコリメート径および集光点を調整することができるため、集光点のずれを防止して精度管理が容易で、高精度な集光調整が可能となる。さらに、調整された集光点を安定して維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置における主要な構成を説明するための正面断面図であり、集光点が調整された状態を示す。
【図2】図1の状態からアパチャを上昇させた状態を示す正面断面図である。
【図3】図1の状態からアパチャを下降させた状態を示す正面断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置における集光調整方法を説明するための要部を示した正面断面図であり、アパチャを移動させるコリメート径調整工程を示す。
【図5】本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置における集光調整方法を説明するための要部を示した正面断面図であり、XYZ軸移動テーブルを移動させる集光点調整工程を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置1について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、説明の便宜上、図1における左右方向をX軸方向、紙面奥行き方向をY軸方向、および上下方向をZ軸方向として表記する。
【0023】
本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置1は、図1に示すように、ノズル6から噴流液体WRを噴射して噴流液柱WJ(ウォータジェット)を形成し、集光されたレーザーLを噴流液柱WJ内に導いて、この噴流液柱WJ内に導かれたレーザーL(ウォータービームWB)によってワーク(不図示)を加工する装置である。
ウォータービーム加工装置1は、ファイバ12から照射されたレーザーLをコリメートレンズ41および集光レンズ42によりノズル6の入口開口部6aに集光して、レーザーLを噴流液柱WJ内に導いている。
【0024】
ウォータービーム加工装置1は、図1に示すように、レーザー発振器11と、レーザーLを照射するレーザー照射源であるファイバ12と、ファイバ12を移動させるXYZ軸移動テーブル2と、フレームとして機能するベース部材13と、開口部31が形成されたアパチャ3と、アパチャ3を冷却する冷却装置32と、レーザーLを集光させるコリメートレンズ41および集光レンズ42からなるレンズユニット4と、アパチャ3を移動させるコリメート径調整機構5と、噴流液体WRを噴射するノズル6と、噴流液体WRを増圧して高圧室13aに供給する高圧ポンプPと、集光点を確認するための集光検出装置であるレーザー出力計測装置8と、XYZ軸移動テーブル2、コリメート径調整機構5、およびレーザー出力計測装置8、その他の関連装置の動作を制御する制御装置9と、を備えている。
【0025】
レーザー発振器11は、グリーンレーザー発振器を採用している。グリーンレーザーは、水を通過しやすく、水に吸収されにくい特性を有するため、噴流液体WRとして水を使用する場合には、ウォータービーム加工装置1のレーザーLとして好適に使用することができる。
ファイバ12は、光ファイバケーブルであり、レーザー発振器11から発振されたレーザーLを導光して照射口12aから照射する。
【0026】
XYZ軸移動テーブル2は、レーザーLの光軸L0に直交する水平方向のXY平面内で移動自在なXY軸移動テーブル21と、光軸L0に沿うZ軸方向に移動可能なZ軸移動テーブル22と、を備えている。
XYZ軸移動テーブル2は、XY軸移動テーブル21にZ軸移動テーブル22を載置し、Z軸移動テーブル22にファイバ12を固定して、制御装置9によりファイバ12をXYZ軸方向に移動させるようになっている。
【0027】
ベース部材13は、アパチャ3やレンズユニット4を固定する部材であり、内部には高圧の噴流液体WRが貯留される高圧室13aが形成され、高圧室13aの上部にはレーザーL2が導入される導入窓14が配設されている。
導入窓14は、レーザーL2を透過させて高圧室13a内まで導くための部材であり、一般にサファイヤやガラス部材等を採用することができる。
【0028】
アパチャ3は、所定の開口径を有する開口部31においてレーザーLの一部を遮蔽し(L1参照)、必要量のレーザーLを通過させて(L2参照)、通過するレーザーLの光量およびビーム品質を調整する光学機器であり、開口部31を通過したレーザーL2がコリメートレンズ41に到達する。
アパチャ3は、上下方向に移動自在にコリメート径調整機構5に支持され、レンズユニット4から分離した別体として構成されている。
【0029】
冷却装置32は、アパチャ3の周囲に冷媒の流通路32aを設けて、アパチャ3を冷却する装置であり、冷媒として空気を用いる空冷式やクーラントを用いる水冷式等の種々の形式を適宜採用することができる。
ウォータービーム加工装置1では、アパチャ3がレンズユニット4から分離した別体として構成されているため、アパチャ3を効率よく冷却してレンズユニット4に対する熱影響を効果的に抑制することができる。具体的には、XYZ軸方向におけるレンズユニット4における熱歪みをそれぞれ2μm以下に低減することが可能である。このため、精度管理が容易で、高精度な集光調整が可能となる。
【0030】
レンズユニット4は、コリメートレンズ41および集光レンズ42を円筒状の筐体4aに収容し一体としてユニット化した光学機器であり、ベース部材13に形成された位置決め部13b(突き当てや印籠)を利用して位置決め固定されている。かかる構成により、レンズユニット4を安定して強固にベース部材13に固定することができるため、位置ずれを効果的に防止して精度管理が容易で、高精度な集光調整が可能となり、しかも調整された集光点を安定して維持することができる。
【0031】
コリメートレンズ41は、アパチャ3を通過したレーザーL2を平行光L3にするレンズであり、本実施形態においては1枚構成としたが複数枚で構成することもできる。コリメートレンズ41により形成された平行光L3の径をコリメート径dという。
集光レンズ42は、平行光L3をノズル6に集光してレーザーL3を噴流液柱WJ内に導くレンズであり、本実施形態においては1枚構成としたが複数枚で構成することもできる。平行光L3は、集光レンズ42により、導入窓14から高圧室13aを通ってノズル6の入口開口部6aに集光される。
【0032】
なお、本実施形態においては、レンズユニット4を直胴型の円筒状をなした筐体4aに収容したが、これに限定されるものではなく、L形やクランク形状をなした筐体に収容し、ミラーによりレーザーLの照射方向を変える構成を採用することもできる。
【0033】
コリメート径調整機構5は、アパチャ3を光軸L0の方向に移動して、アパチャ3とレンズユニット4との光軸L0方向における距離を調整することで、コリメートレンズ41に到達するレーザー径(コリメート径d)を調整する機構である。
コリメート径調整機構5は、アパチャ3を支持する支持部材51と、支持部材51を光軸L0の方向に移動自在にガイドするガイド部材52と、を備え、制御装置9により支持部材51を光軸L0の方向に移動させることができるようになっている。
【0034】
かかる構成により、図2と図3に示すように、アパチャ3を上方へ移動させるとコリメート径dを拡大してレーザーL2の出力を増大させることができ(図2参照)、集光点における集光角度θ1も拡大する。一方、アパチャ3を下方へ移動させるとコリメート径dを縮小してレーザーL2の出力を減少させることができ、集光点における集光角度θ2は減少する(図3参照)。
【0035】
ノズル6は、ベース部材13の下部に装着され、高圧ポンプPから高圧室13aに供給された高圧の噴流液体WRを入口開口部6aから導入して噴射し、噴流液柱WJ(ウォータジェット)を形成する部材である。
入口開口部6aのノズル径は、例えば100〜200μm程度であり、入口開口部6aの上面の中心に合わせてレーザーL2を集光させた場合にウォータービームWBのレーザー出力が最大(ジャストフォーカス)となる。
【0036】
集光検出装置は、ノズル6の入口開口部6aにレーザーL2が集光されているかどうかを確認するための装置であり、例えば、噴流液柱WJ内に導かれたレーザーL(ウォータービームWB)の光量およびビーム品質を検出するレーザー出力計測装置8を採用し、ウォータービームWBの出力が最大となるように集光調整することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、集光検出装置としてレーザー出力計測装置8を採用したが、これに限定されるものではなく、集光点(ノズル6の入口開口部6a)をカメラで撮像する装置を採用し、ノズル6の入口開口部6aとレーザーLの集光点のずれを観察して集光調整することもできる。このように、集光検出装置は、適宜仕様に合わせて公知の手段を採用することができるため、詳細な説明は省略する。
【0038】
続いて、本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置1における噴流液柱WJにレーザーを導くための集光調整方法について、主として図1と図4および図5を参照しながら説明する。
参照する図1は、コリメート径調整工程および焦光点調整工程が終了して集光調整が完了した状態を示す。図4は、コリメート径調整工程を示し、(a)は調整前の状態を示し、(b)は調整後の状態を示す。図5は、焦光点調整工程を示し、(a)はファイバ12の上下方向を調整した状態を示し、(b)はファイバ12の水平方向を調整してすべての調整が完了した状態を示す。なお、図4と図5において、説明の便宜上、レーザーLの照射方向等におけるずれ量を強調して表示しているが、基本的に極めて微調整の範囲である。
【0039】
図4(a)に示す調整前の状態では、ファイバ12の照射口12aの位置が図1に示す調整後の位置から上下方向にδ1、水平方向にδ2だけ光軸L0からずれている。また、アパチャ3の上下方向の位置も図1に示す調整後の状態よりも上方にずれている。
このため、コリメートレンズ41に到達するレーザー径d1が図4(b)に示す調整後のコリメート径dよりも大きくなりすぎている。最初に、コリメート径調整工程によりコリメート径dを調整する。
【0040】
コリメート径調整工程は、図4に示すように、コリメート径調整機構5により、アパチャ3を光軸L0の方向に移動して、アパチャ3とレンズユニット4との光軸L0方向における距離を調整して、コリメートレンズ41に適合するようにコリメート径d(図1)を調整する工程である。
具体的には、図4(b)に示すように、レーザー出力計測装置8(図1)によりウォータービームWB(図1)の出力を検出しながら、コリメート径調整機構5によりアパチャ3を下方に移動させて予め設定したコリメート径dおよびウォータービームWBの設定出力が得られるように調整する。
【0041】
図4(b)に示すコリメート径dの調整が完了した状態では、焦光点調整工程が完了していないので、ファイバ12の照射口12aの位置が図1に示す調整後の位置から上下方向にδ1、水平方向にδ2だけ光軸L0からずれているため、ノズル6の入口開口部6aに対して集光点が、上下方向にδ1′、水平方向にδ2′だけずれている。
【0042】
ここで、ノズル6の入口開口部6aにおける上下方向のずれδ1′、および水平方向のずれδ2′は、それぞれ、ファイバ12の照射口12aにおける上下方向のずれδ1、および水平方向のずれδ2よりも小さくなるように、それぞれの位置関係が設定されている。つまり、ファイバ12の照射口12aの位置は、レンズユニット4とノズル6の距離よりもレンズユニット4から遠くなるように設定されている。かかる構成により、高精度な集光調整が可能となる。
【0043】
集光点調整工程は、図5に示すように、XYZ軸移動テーブル2により、ファイバ12の照射口12aの位置ずれを調整して、レーザーL2の集光点を調整してノズル6の入口開口部6aに合わせる工程である。
具体的には、集光点調整工程では、レーザー出力計測装置8により、噴流液柱WJ内に導かれたレーザーL2(ウォータービームWB)の出力を検出しながら、ウォータービームWBの出力が最大となるように集光調整して、レーザーL2の集光点をノズル6の入口開口部6aに合わせている。
【0044】
図5(a)は、図4(b)の状態からZ軸移動テーブル22により、ファイバ12を下方に移動させて、ファイバ12の照射口12aの位置を調整し、ノズル6の入口開口部6aにおける上下方向の位置の調整が完了した状態である。
図5(b)は、図5(a)の状態からXY軸移動テーブル21により、ファイバ12を図の左方向に移動させて、ファイバ12の照射口12aの水平方向の位置を調整し、ノズル6の入口開口部6aにおける集光調整が完了した状態である。
【0045】
なお、本実施形態においては、集光点調整工程において、上下方向の調整(図5(a)参照)をしてから水平方向の調整(図5(b)参照)を行い両方向の調整を別々に実行したが、水平方向の調整をしてから上下方向の調整を行ってもよいし、両方向の調整を同時に実行してもよい。
【0046】
本発明の実施形態に係るウォータービーム加工装置1は、以下のような作用効果を奏する。すなわち、ウォータービーム加工装置1は、コリメート径調整機構5を備えたことで、レンズユニット4によるコリメート径dを自在に調整することができるため、要求されるコリメート径dごとにアパチャ3を交換することなく、ワーク(不図示)の加工条件に合わせて容易に最適なコリメート径dを採択することができる。
【0047】
そして、最適なコリメート径dを設定することで、ノズル6に導光されるレーザーLのビーム品質を好適に調整して、ワーク(不図示)の加工品質を向上させることができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記した実施形態に限定されず、適宜変更して実施することが可能である。
例えば、本実施形態においては、コリメート径調整工程(図4参照)の後で集光点調整工程(図5参照)を実行することとしたが、これに限定されるものではなく、工程順を変えて集光点調整工程の後でコリメート径調整工程を実行してもよいし、予め集光点調整工程により仮調整をした後に本実施形態のようなコリメート径調整工程と集光点調整工程を実行してもよいし、コリメート径調整工程の後で集光点調整工程を実行し、さらにコリメート径調整工程を実行してもよいし、これらの工程を繰り返し実行してもよい。
【0049】
本実施形態においては、アパチャ3の開口部31の開口径を固定して、コリメート径調整機構5によりアパチャ3を上下方向に移動させてコリメート径dを調整したが(図4参照)、これに限定されるものではなく、アパチャ3を上下方向に移動させずに複数枚の絞り羽根を重ね合わせた絞り機構(不図示)により、開口部31の開口径を可変してコリメート径dを調整するものであってもよいし、アパチャ3を上下方向に移動させる機構と絞り機構を両方とも備えてコリメート径調整機構を構成することもできる。
【符号の説明】
【0050】
1 ウォータービーム加工装置
2 XYZ軸移動テーブル(移動テーブル)
3 アパチャ
4 レンズユニット
5 コリメート径調整機構
6 ノズル
6a 入口開口部
8 レーザー出力計測装置(集光検出装置)
9 制御装置
11 レーザー発振器
12 ファイバ(レーザー照射源)
13 ベース部材
31 開口部
32 冷却装置
41 コリメートレンズ
42 集光レンズ
L0 光軸
L,L1,L2 レーザー
L3 平行光(レーザー)
WJ 噴流液柱(ウォータジェット)
WB ウォータービーム
WR 噴流液体
d コリメート径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを照射するレーザー照射源と、
このレーザー照射源を移動させて照射されたレーザーの焦光点を調整する移動テーブルと、
開口部を通過する前記レーザーの光量を調整するアパチャと、
このアパチャを通過したレーザーを集光させるコリメートレンズおよび集光レンズからなるレンズユニットと、
噴流液体を噴射して噴流液柱を形成するノズルと、を備え、前記レンズユニットにより集光されたレーザーを前記噴流液柱内に導いて加工するウォータービーム加工装置であって、
前記移動テーブルは、前記レーザーの光軸に直交するXY平面内、および前記光軸方向に沿うZ軸方向に移動可能なXYZ軸移動テーブルであり、
前記アパチャと前記レンズユニットとの前記光軸方向における距離、または前記アパチャの開口径を調整して前記コリメートレンズに到達するレーザー径を調整するコリメート径調整機構を備えたこと、
を特徴とするウォータービーム加工装置。
【請求項2】
前記アパチャは、前記レンズユニットから分離した別体として構成したことを特徴とする請求項1に記載のウォータービーム加工装置。
【請求項3】
前記レンズユニットおよび前記ノズルをベース部材に固定して配設し、
前記アパチャを前記レンズユニットに対して前記光軸方向に移動自在に前記ベース部材に配設し、
前記レーザー径調整機構は、前記レンズユニットに対して前記アパチャを移動させて、当該アパチャと前記コリメートレンズとの前記光軸方向における距離を調整すること、
を特徴とする請求項1または請求項2に記載のウォータービーム加工装置。
【請求項4】
前記アパチャを冷却する冷却装置を備えたことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のウォータービーム加工装置。
【請求項5】
レーザーを照射するレーザー照射源と、
このレーザー照射源を移動させる移動テーブルと、
開口部を通過するレーザーの光量を調整するアパチャと、
コリメートレンズおよび集光レンズにより前記アパチャを通過した前記レーザーを集光させるレンズユニットと、
噴流液体を噴射して噴流液柱を形成するノズルと、を備えたウォータービーム加工装置における前記噴流液柱にレーザーを導くための集光調整方法であって、
前記アパチャと前記コリメートレンズとの前記レーザーの光軸方向における距離、または前記アパチャの開口径を調整して前記コリメートレンズに到達するレーザー径を調整するコリメート径調整工程と、
前記移動テーブルにより、集光された前記レーザーの焦光点を調整する焦光点調整工程と、
を含んで集光調整を行うことを特徴とするウォータービーム加工装置における集光調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−210651(P2012−210651A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−78518(P2011−78518)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000132161)株式会社スギノマシン (144)
【Fターム(参考)】