説明

ウォーターポンプ

【課題】ウォーターポンプにおいてポンプ部から洩れた水がモータに進入するのを防止する。
【解決手段】ウォーターポンプ1は、遠心羽根10を有するポンプ部11と、遠心羽根10を回転させる回転軸12と、ポンプ部11の後方側に設けられ、回転軸12を駆動するモータ部13とを有している。モータ部13は、モータケース30と、モータケース30内に収容され、回転軸12を回転させるモータ62と、回転軸12上のモータ62を挟んだ両側に設けられ、モータケース30の内面と回転軸12の間に介在され、回転軸12を回転自在に支持するベアリング61、63とを有している。モータケース30には、モータケース30内のモータ62のあるモータ空間Aとモータケース30の外部とを通気するための通気孔110が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウォーターポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば燃料電池自動車等には、燃料電池に冷却水を供給するためのウォーターポンプが搭載されている。
【0003】
上記ウォーターポンプは、通常、遠心羽根を有するポンプ部と、遠心羽根を回転させる回転軸を駆動するモータ部を備えている(特許文献1参照)。上記モータ部は、モータケースに覆われ、回転軸を回転させるモータや、当該モータの前後に設けられたベアリング等を有している。
【0004】
ところで、上記ウォーターポンプにおいて、ポンプ部に供給された水がシール部を伝ってモータ部側に漏れることがある。このため、ポンプ部のモータ部側に水抜き穴を設ける対策が考えられている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−24192号公報
【特許文献2】特開2004−162609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の水抜き穴を設けた場合であっても、ポンプ部から漏れた水がモータ部側の例えば前方側のベアリング付近に付着する可能性がある。そして、モータケース内において熱による温度変動等により空気の膨縮が起こり、モータケース内の空気が急激に収縮すると、上記ベアリング付近に付着した水がベアリングからモータ部のモータに入り込む可能性がある。水がモータに入り込むと、ウォーターポンプが故障する恐れがある。
【0007】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、ウォーターポンプにおいてポンプ部から洩れた水がモータに進入するのを防止することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、ウォーターポンプであって、羽根を有するポンプ部と、前記羽根を回転させる回転軸と、前記ポンプ部の後方側に設けられ、前記回転軸を駆動するモータ部と、を有し、前記モータ部は、モータケースと、前記モータケース内に収容され、前記回転軸を回転させるモータと、前記回転軸上の前記モータを挟んだ両側に設けられ、前記モータケースの内面と前記回転軸の間に介在され、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングと、を有し、前記モータケースには、前記モータケース内の前記モータのあるモータ空間と前記モータケースの外部とを通気するための通気孔が形成されている、ウォーターポンプである。
【0009】
本発明によれば、モータケースのモータ空間の空気が急激に収縮したときに、通気孔から外気が流入してモータ内部の空気の膨張・収縮が解消されるので、ポンプ部から洩れた水がベアリングを通じてモータ空間内に入り込むことを防止できる。
【0010】
上記ウォーターポンプにおいて、前記モータケース内の後方側のベアリングの後方側には、前記モータ空間に通じる後方空間が形成され、前記通気孔は、前記後方空間に開口していてもよい。
【0011】
前記回転軸上の前記ポンプ部の羽根と前記モータ部の前方側のベアリングとの間には、防水シールと、水抜き孔が設けられていてもよい。
【0012】
前記通気孔が前記モータケースの上面に設けられていてもよい。
【0013】
上記ウォーターポンプは、前記通気孔の外側の開口部を覆うカバーをさらに有していてもよい。
【0014】
前記通気孔には、ホースが接続されていてもよい。
【0015】
前記ホースの先端部は、下方に曲げられていてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ウォーターポンプにおいてポンプ部から洩れた水がモータ内に進入するのを防止できるので、ウォーターポンプの信頼性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】ウォーターポンプの構成を示す縦断面の説明図である。
【図2】通気孔とカバーの他の形状を示す説明図である。
【図3】通気孔をモータケースの上面に形成した場合のウォーターポンプを示す縦断面の説明図である。
【図4】通気孔にホースを接続した場合のウォーターポンプを示す縦断面の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施の形態について説明する。図1は、本実施の形態に係るウォーターポンプ1の構成の概略を示す説明図である。
【0019】
ウォーターポンプ1は、遠心羽根10を有するポンプ部11と、遠心羽根10を回転させる回転軸12と、回転軸12を駆動するモータ部13を有している。ポンプ部11とモータ部13は、回転軸12に沿って並べて配置されている。ポンプ部11は、回転軸12の前方側にあり、モータ部13は、後方側にある。
【0020】
ポンプ部11は、軸方向に沿って前方(図1の左方向)が小径で後方側が次第に大径になるポンプケース20を有している。ポンプケース20の後方の大径部には、複数枚(例えば6枚、7枚若しくは8枚)の遠心羽根10が設けられている。遠心羽根10は、回転軸12の前方端付近に固定されている。ポンプケース20の前方側の小径部は、流入ポート21になっており、ポンプケース20の後方側の大径部の側方には、図示しない流出ポートが形成されている。なお、ポンプケース20の流入ポート21と流出ポートは、例えば一体的に成型されている。また、ポンプケース20には、図示しないエア抜きポートが一体的に設けられている。ポンプ部11では、回転軸12による遠心羽根10の回転により差圧を発生させ、流入ポート21から流入した水を流出ポートから流出することができる。
【0021】
モータ部13は、例えばモータケース30を有している。モータケース30は、例えば回転軸12を軸周りに覆うように設けられた略円筒状の第1のケース部40と、回転軸12の後方側で第1のケース部40の後方開口部を覆う第2のケース部41と、第2のケース部41の後方側に設けられ、第2のケース部41との間に後方空間Bを形成する第3のケース部42を有している。
【0022】
第1のケース部40は、例えばアルミ鋳物により形成され、ボルト45によってポンプケース20に締結されている。第1のケース部40内の中心に回転軸12が設置され、第1のケース部40内には、回転軸12に沿って前方側から後方側に向かって、水漏れ防止用の防水シールとしてのメカニカルシール60、前方ベアリング61、モータ62、後方ベアリング63がこの順で設けられている。
【0023】
メカニカルシール60は、第1のケース部40の内周面と回転軸12の間に気密に設けられている。前方ベアリング61と後方ベアリング63は、例えば単列転がり軸受けであり、回転軸12を回転可能に支持している。前方ベアリング61は、第1のケース部40の内周面と回転軸12との間に介在され、後方ベアリング63は、第2のケース部41の内周面と回転軸12との間に介在されている。
【0024】
モータ62は、第1のケース部40の内部に形成されたモータ空間Aに配置されている。モータ62は、例えば回転軸12に固定され、回転軸12の軸周りに環状に配置されたロータ70と、第1のケース部40の内周面に固定されたステータ71を有している。モータ62は、例えば銅板に差し込まれて位置決めされている。また、ステンレス製の回転軸12には、キー溝12aが形成され、ロータ70には、凸部70aが形成されており、回転軸12のキー溝12aにロータ70の凸部70aを嵌合させることによって、モータ62が回転軸12に固定されている。ステータ71は、アルミ鋳物に嵌合されている。なお、回転軸12とロータ70の嵌合は、キー溝を用いる場合の他に、圧入、ボルト止め等の手段を用いてもよい。ステータ71に給電することによりロータ70が回転し、それによって回転軸12を回転させることができる。
【0025】
第1のケース部40の内側のメカニカルシール60と前方ベアリング61との間には、水抜き空間Cが形成され、第1のケース部40には、水抜き空間Cから第1のケース部40の外部に通じる水抜き孔80と蒸気抜き孔81が形成されている。水抜き孔80は、例えば第1のケース部40の下側に設けられ、蒸気抜き孔81は、第1のケース部40の上側に設けられている。
【0026】
第2のケース部41は、例えばアルミ鋳物製の略円板状に形成され、ボルト85によって第1のケース部40に締結されている。第2のケース部41の中央には、例えば中心孔90が形成されており、第1のケース部40側の回転軸12及び後方ベアリング63と、第3のケース部42側の後方空間Bを連通させている。また、第2のケース部41には、第1のケース部41のモータ空間Aと後方空間Bを連通させる連通孔91が形成されている。
【0027】
第2のケース部41の後方面には、後方に突出する環状の凸条部100が形成され、環状の凸条部100の内側が凹み部101になっている。例えば電源からステータ71に通じる配線102は、外部から凸条部100の側部を気密に通って、例えば連通孔91を通ってステータ71に通じている。
【0028】
第3のケース部42は、例えば打ち抜き製法による板状に形成され、第2のケース部41にボルト105によって締結されている。第3のケース部42は、第2のケース部41の凸条部100の先端に凹み部101を覆うように取り付けられている。これによって、後方空間Bが形成されている。
【0029】
第3のケース部42には、後方空間Bと外部を通気させる通気孔110が形成されている。通気孔110は、例えば第3のケース部42の中心より上側に形成されている。この通気孔110により、後方空間B及び中心孔90を通じて、或いは後方空間B及び連通孔91を通じてモータ空間Aと外部が連通する。また、第3のケース部42には、通気孔110の外側の開口部を覆うカバー111が設けられている。カバー111は、例えば第3のケース部42の通気孔110の上部に取り付けられ、第3のケース部42から後方側の斜め下方に延び、その後下方に延びる板状に形成されている。
【0030】
次に、以上のように構成されたウォーターポンプ1の作用について説明する。ウォーターポンプ1の稼働時には、モータ62が駆動され、モータ62によって回転軸12が回転し、それによってポンプ部11の遠心羽根10が回転する。これによって、ポンプ部11の流入ポート21から水が流入し、圧力を得て、流出ポートから吐き出される。
【0031】
この際、メカニカルシール60は、ポンプ部11の水がモータ62側に入り込むのを防いでいる。それでも、ポンプ部11の水がメカニカルシール60を通過した場合には、水抜き孔80から水が排出される。
【0032】
また、モータ62の駆動時に生じる熱等の影響により、モータ空間Aの空気が膨縮し、モータ空間Aの空気が急激に収縮した場合には、通気孔110から外気が入り込み、モータ空間Aの膨張・収縮が解消される。これにより、メカニカルシール60と前方ベアリング61との間の水抜き空間Cや、水抜き孔80、前方ベアリング61に水が付着している場合であっても、当該水がモータ空間Aに入り込むことが防止される。
【0033】
本実施の形態によれば、通気孔110により、ポンプ部11の水がモータ空間A内に入り込むことが防止されるので、ウォーターポンプ1の信頼性が向上する。
【0034】
また、本実施の形態では、モータケース30内の後方ベアリング63の後方側に、モータ空間Aに通じる後方空間Bが形成され、通気孔110が後方空間Bに開口しているので、通気孔110が直接モータ空間Aに開口しておらず、仮に外部の水が通気孔110から入っても、当該水がモータ空間Aに入り込むことが防止される。
【0035】
回転軸12上のポンプ部11の遠心羽根10とモータ部13の前方ベアリング61との間には、メカニカルシール60と水抜き孔80が設けられているので、メカニカルシール60は、ポンプ部11から洩れた水が水抜き空間Cに到達することを防止し、仮に水抜き空間Cに到達しても、当該水を水抜き孔80から排出できる。よって、漏れた水がモータ空間Aに入るのを効果的に防止できる。また、漏れた水が一旦空間Cに到達した場合には、水滴が前方ベアリング61に付着しやすくなるが、上述のように通気孔110により水滴がモータ空間A内に引き込まれることを防止できるので、全体として水がモータ62に入り込むことを効果的かつ確実に防止できる。
【0036】
ウォーターポンプ1は、通気孔110の外側の開口部を覆うカバー111を有しているので、仮にモータケース30の外面に水が付着した場合でも、通気孔110から水が入り込むことが防止される。
【0037】
上記カバー111は、例えば図2に示すように通気孔110に通気可能に被せられるキャップ状に形成されていてもよく、かかる場合には、通気孔110とカバー111との間の通気部に、発泡性樹脂のような防水性で通気性のある部材112を設置するようにしてもよい。
【0038】
以上の実施の形態では、通気孔110がモータケース30の裏面側の第3のケース部42に形成されていたが、図3に示すようにモータケース30の上面に設けられていてもよい。かかる場合、通気孔110の位置が高くなり、外部の水が通気孔110に入りにくくなる。
【0039】
さらに、通気孔110には、図4に示すようにホース120が接続されていてもよい。これにより、ホース120の先端をより高い位置に置くことができるので、外部の水が通気孔110に入り込むことを防止できる。さらに、ホース120は、先端部を下方に曲げてもよく、かかる場合には、水の入り込みをより確実に防止できる。
【0040】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0041】
例えば以上の実施の形態において、ポンプケース20やモータケース30の形状は他の形状であってもよい。また、通気孔110は、モータケース30の他の位置に形成されていてもよい。本発明に係るウォーターポンプは、例えば燃料電池自動車、電気自動車、ハイブリッド自動車などの車両のほか、各種移動体(例えば、船舶や飛行機、ロボットなど)等にも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、ウォーターポンプにおいてポンプ部から洩れた水がモータに進入するのを防止する際に有用である。
【符号の説明】
【0043】
1 ウォーターポンプ
10 遠心羽根
11 ポンプ部
12 回転軸
13 モータ部
20 ポンプケース
30 モータケース
60 メカニカルシール
61 前方ベアリング
62 モータ
63 後方ベアリング
110 通気孔
111 カバー
A モータ空間
B 後方空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウォーターポンプであって、
羽根を有するポンプ部と、
前記羽根を回転させる回転軸と、
前記ポンプ部の後方側に設けられ、前記回転軸を駆動するモータ部と、を有し、
前記モータ部は、
モータケースと、
前記モータケース内に収容され、前記回転軸を回転させるモータと、
前記回転軸上の前記モータを挟んだ両側に設けられ、前記モータケースの内面と前記回転軸の間に介在され、前記回転軸を回転自在に支持するベアリングと、を有し、
前記モータケースには、前記モータケース内の前記モータのあるモータ空間と前記モータケースの外部とを通気するための通気孔が形成されている、ウォーターポンプ。
【請求項2】
前記モータケース内の後方側のベアリングの後方側には、前記モータ空間に通じる後方空間が形成され、
前記通気孔は、前記後方空間に開口している、請求項1に記載のウォーターポンプ。
【請求項3】
前記回転軸上の前記ポンプ部の羽根と前記モータ部の前方側のベアリングとの間には、防水シールと、水抜き孔が設けられている、請求項1又は2に記載のウォーターポンプ。
【請求項4】
前記通気孔が前記モータケースの上面に設けられている、請求項1〜3のいずれかに記載のウォーターポンプ。
【請求項5】
前記通気孔の外側の開口部を覆うカバーをさらに有する、請求項1〜4のいずれかに記載のウォーターポンプ。
【請求項6】
前記通気孔には、ホースが接続されている、請求項1〜4のいずれかに記載のウォーターポンプ。
【請求項7】
前記ホースの先端部は、下方に曲げられている、請求項6に記載のウォーターポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−100723(P2013−100723A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243488(P2011−243488)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】