説明

エアゾール型日焼け止め化粧料

【課題】金属酸化物粉体を含有するエアゾール型日焼け止め化粧料において、金属酸化物の再分散性に優れ、目詰まりが起きにくく、更に、使用時には快適な冷感が得られるエアゾール型日焼け止め化粧料を提供する。
【解決手段】(A)金属酸化物粉体、(B)炭素数12〜18のモノ脂肪酸ソルビタン、(C)炭化水素系噴射剤、(D)ジメチルエーテルを含有し、(C)と(D)の含有量がC≧Dであり、25℃におけるエアゾール内圧が0.1〜0.35MPaであることを特徴とするエアゾール型日焼け止め化粧料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線防御効果を有する金属酸化物粉体の再分散性に優れ、更に、使用時には快適な冷感が得られるエアゾール型日焼け止め化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エアゾール型乳化化粧料は、肌に塗布しやすく、使用性が良いという点から汎用性の高い化粧料である。一方、日焼け止め化粧料は、紫外線防御効果を有する酸化チタンや酸化亜鉛等の金属酸化物粉体を配合した化粧料である。これらの金属酸化物粉体をエアゾール型化粧料に応用した場合、金属酸化物粉体と噴射剤との比重差が大きいため、分散性が悪くなり、凝集やケーキングが発生し、その結果、紫外線防御効果が低減したり、あるいは目詰まりが起き噴射性が悪くなるという問題があった。
このような問題を解決するために、エアゾール型乳化化粧料の分散性を改良する試みがいくつか報告されている(特許文献1〜4)。例えば、金属酸化物粉体の平均粒子径や、適当な分散剤、噴射剤や噴射圧力を検討することで、分散性や目詰まりの改善が行われてきたが、それに伴い快適な使用感が薄れる傾向にあり、更なる改善が望まれていた。
また、エアゾール型日焼け止め化粧料は、その目的から高温の場所で使用されることが多いため、使用時には冷感を伴う方がより快適な使用感が得られる傾向にある。しかしながら、快適な冷感を得るために、噴射剤の配合量を多くしたり、噴射剤の圧力を高く設定した場合、例えば、高温の車内や直射日光に曝露されエアゾール容器内の温度が上昇すると、破裂や引火の可能性が高くなり、非常に危険である。
【0003】
【特許文献1】特開昭64-56607号公報
【特許文献2】特開平1-93518号公報
【特許文献3】特開平3-2295号公報
【特許文献4】特開2004-224706号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的とするところは、金属酸化物粉体を含有するエアゾール型日焼け止め化粧料において、金属酸化物の再分散性を向上させることで目詰まりが起きにくく、更に、使用時には快適な冷感が得られるエアゾール型日焼け止め化粧料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するために検討した結果、(A)金属酸化物粉体、(B)炭素数12〜18のモノソルビタン脂肪酸エステル、(C)炭化水素系噴射剤及び(D)ジメチルエーテルを含有し、且つ(C)と(D)の含有量が(C)≧(D)であり、25℃におけるエアゾール内圧が0.1〜0.35MPaであれば、再分散性が向上し、目詰まりが起きにくくなり、使用時には快適な冷感も得られる、エアゾール型日焼け止め化粧料を見出し、本発明を完成した。
【発明の効果】
【0006】
本発明のエアゾール型日焼け止め化粧料は、金属酸化物粉体の再分散性に優れるため、目詰まりが起きにくく、その結果、充分な紫外線防御効果を発揮することができる。更に、使用時には、エアゾール内の化粧料の再分散性が高いことから使いやすく、また噴射時にエアゾール内の化粧料が肌に適度に密着することで、快適な冷感が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を詳述する。
【0008】
本発明における分散性とは、(A)の金属酸化物粉体が、油剤や界面活性剤、水等の溶液中で均一な微粒子として存在し、外観上は凝集や沈降が観察されない状態となる性質のことである。一方、再分散性とは、前記の分散物を静置しておいた際に、一度分散した(A)の金属酸化物粉体が沈降してしまい、これを振盪等の操作により再度分散させることにより、前記と同様の状態に戻る性質のことである。本発明のエアゾール型日焼け止め化粧料では、特に、再分散性を向上させることで、使用時の目詰まりを改善することが可能となった。
【0009】
本発明に用いられる(A)金属酸化物粉体は、紫外線防御効果に優れた粉体が好ましく、例えば、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウム等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。市販品としては、例えば、酸化亜鉛としては、FINEX−25、FINEX−50、FINEX−75(以上、堺化学社製)、MZ500シリーズ、MZ700シリーズ(以上、テイカ社製)、ZnO−350、ZnO−510(以上、住友大阪セメント社製)等が挙げられる。微粒子酸化チタンとしては、TTO−55シリーズ、TTO−51シリーズ(以上、石原産業社製)、JRシリーズ、JAシリーズ、MTシリーズ(以上、テイカ社製)等が挙げられる。また、微粒子酸化セリウムとしては、高純度酸化セリウム(ニッキ社あるいはセイミケミカル社製)等が挙げられる。
【0010】
また、これら金属酸化物粉体は、公知の表面処理方法、例えば、シリカ処理、アルミナ処理、水酸化アルミニウム処理、フッ素化合物処理(パーフルオロアルキルリン酸エステル処理、パーフルオロアルキルシラン処理、パーフルオロポリエーテル処理、フルオロシリコーン処理、フッ素化シリコーン樹脂処理等)、シリコーン処理(メチルハイドロジェンポリシロキサン処理、ジメチルポリシロキサン処理、気相法テトラメチルテトラハイドロジェンシクロテトラシロキサン処理等)、シリコーン樹脂処理(トリメチルシロキシケイ酸処理等)、ペンダント処理(気相法シリコーン処理後にアルキル鎖等を付加する方法)、シランカップリング剤処理、チタンカップリング剤処理、シラン処理(アルキルシランやアルキルシラザン処理等)、油剤処理、N−アシル化リジン処理、ポリアクリル酸処理、金属石鹸処理(ステアリン酸やミリスチン酸塩等)、アクリル樹脂処理、金属酸化物処理、等の方法で表面処理を施していてもよい。
これらの中でも、前記した(A)の金属酸化物粉体(酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム)をシリカ処理、アルミナ処理、ステアリン酸塩処理から選ばれる処理剤を用いて表面処理すると、再分散性に優れるため、特に好ましい。
【0011】
本発明において、(A)金属酸化物粉体の好ましい配合量は、化粧料の総量を基準として0.1〜10.0質量%(以下、単に%と略す)であり、さらに好ましくは、0.5〜5.0%である。この範囲内であれば、良好な再分散性が得られる。
【0012】
本発明に用いられる(B)炭素数12〜18のモノ脂肪酸ソルビタンは、(A)の金属酸化物粉体の分散性に優れたものであれば、脂肪酸は直鎖、あるいは分岐鎖のいずれでも用いることができ、また飽和であっても不飽和であってもよい。具体的には、ステアリン酸ソルビタン、、パルミチン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、イソステアリン酸ソルビタン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イソステアリン酸ソルビタンを用いた場合、(A)の金属酸化物粉体の再分散性に優れるため、特に好ましい。
【0013】
本発明において、(B)炭素数12〜18のモノ脂肪酸ソルビタンの好ましい配合量は
、化粧料の総量を基準として0.01〜2.0%であり、さらに好ましくは0.1〜1.0%である。この範囲内であれば、良好な再分散性が得られる。
【0014】
本発明で用いられる(C)炭化水素系噴射剤としては、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等が挙げられ、これらを1種又は2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、イソペンタンを含有すると、快適な冷感が得られ、特に好ましい。
【0015】
本発明において、(C)炭化水素系噴射剤の好ましい配合量は、化粧料の総量を基準として30〜90%であり、さらに好ましくは、35〜80%である。この範囲内であれば、良好な再分散性が得られる。
【0016】
本発明で用いられる(D)ジメチルエーテルは、常温で気体であり、噴射剤として用いることは公知のものである。本発明において(D)ジメチルエーテルの好ましい配合量は、化粧料の総量を基準として1.0〜50%であり、さらに好ましくは5.0〜30.0%である。この範囲内の配合量で、且つ(C)の炭化水素系噴射剤と併用すれば、良好な再分散性が得られる。
【0017】
また、本発明において(C)と(D)の配合量は、C≧Dであることが必要であり、C:D=95:5〜50:50が好ましく、さらに好ましくは、90:10〜70:30である。この配合条件であれば、再分散性に優れ、且つ快適な冷感が得られる。
【0018】
本発明では、更に、25℃におけるエアゾール型日焼け止め化粧料の内圧を0.1〜0.35MPa、特に0.15〜0.3MPaに調整することが好ましい。この範囲の内圧であれば、噴射時の目詰まりが無く、使用時には快適な冷感が得られ、特に優れている。また、高温条件下(例えば、高温になった車内や直射日光に曝露された場合)で使用される場合も、上記範囲内の内圧であれば、エアゾール容器内の温度上昇による容器の耐圧性、破裂や引火の危険性の心配がなく安全に使用できる。
【0019】
また、本発明では、更に(E)揮発性シリコーンを含有することが好ましい。(E)揮発性シリコーンは、常温(25℃)で揮発性を有するシリコーン油で化粧品に一般的に用いられているものであれば何れのものも使用することができる。例えば、重合度0〜5の直鎖状ジメチルポリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン等の重合度3〜7の環状シリコーン、一般式[(CHSiO]SiCHで表されるメチルトリメチコン、一般式[(CHSiO]Siで表されるテトラキストリメチルシロキシシラン等が挙げられる。これらのうち、特にデカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、テトラキストリメチルシロキシシランを含有すると、使用感が良くなり好ましい。
【0020】
本発明において、(E)揮発性シリコーンの好ましい配合量は、化粧料の総量を基準として15〜35%であり、さらに好ましくは、20〜30%である。この範囲内であれば、良好な再分散性が得られる。
【0021】
本発明のエアゾール型日焼け止め化粧料には、上記成分に加え、必要に応じて油性成分、保湿剤、上記成分以外の界面活性剤や粉体成分、香料、紫外線吸収剤、防腐剤、植物エキス等を配合することができる。
【0022】
本発明の日焼け止め化粧料とは、紫外線防御機能を付与した化粧料であり、例えば、サンスクリーン剤、ファンデーション、化粧下地等の剤型が挙げられる。
【実施例】
【0023】
次に実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜6、比較例1〜7
表1に示した処方に従い、日焼け止め化粧料を常法により調製した。これらを用いて、下記に示した(1)再分散性試験、(2)目詰まり試験、(3)使用感(冷感)試験を実施した。結果は表1に併せて示した。
【0025】
(1)再分散性試験方法
表1の処方に従い、常法により調製したエアゾール型日焼け止め化粧料を、耐圧ガラス
製容器に充填し、25℃の恒温槽内に静置した。3週間後、容器を振盪して、沈降した金属酸化物粉体の再分散性について、次の評価基準で評価した。
(評価基準)
○:容易に再分散する(1〜3回の振盪)
△:再分散する(4〜6回の振盪)
×:再分散が困難(7回以上の振盪)
【0026】
(2)目詰まり試験
表1の処方に従い、常法により80gに調製したエアゾール型日焼け止め化粧料を、耐圧アルミ製エアゾール容器(仕様;ステム0.51mm径2穴、ハウジング:1.58×0.76mm径、ボタン:0.64mm径)に充填した。これらを25℃において10秒間隔で噴射し最後まで使用した時の噴霧状態について、次の評価基準で評価した。
(評価基準)
○:最後まで均一な噴霧量にて使用できた
△:噴霧量が不均一であるが使用できた
×:目詰まりを起こし、噴射不可能のため全く使用できなかった
【0027】
(3)使用感(冷感)試験
上記(2)の目詰まり試験と同様の方法で製造したエアゾール型日焼け止め化粧料を、女性パネラー10名に使用してもらい、冷感についての使用特性を次の評価基準に従って評価してもらい、その平均点を求めた。
(評価基準)
2:快適な冷感が得られた
1:やや快適な冷感が得られた
0:冷感が得られなかった、又は冷感が強すぎであった
【0028】
【表1】

【0029】
表1の結果から、本発明の実施例1〜6のエアゾール型日焼け止め化粧料は、金属酸化物粉体の再分散性に優れており、目詰まりすることなく使用でき、更に使用性試験では、快適な冷感が得られ、非常に優れていることは明らかである。これに対して、比較例1〜7では、金属酸化物粉体の再分散性、目詰まりの無さ、快適な使用感(冷感)のいずれかの点で、実施例より劣ることが分かった。
【0030】
次に、以下の実施例7の処方に従い、常法にてエアゾール型日焼け止め化粧料を調製し、上記の各種試験を行ったところ、いずれも再分散性に優れ、目詰まりすることなく使用でき、更に快適な冷感が得られるものであった。
【0031】
実施例7 (化粧下地)
---------------------------------------------------------------
原料成分 配合量(%)
---------------------------------------------------------------
(A)シリカ処理酸化亜鉛(注5) 6.0
(A)アルミナ処理酸化チタン(注6) 1.0
(B)モノイソステアリン酸ソルビタン 0.5
デカメチルシクロペンタシロキサン 20.0
ジメチルポリシロキサン(6cs) 5.0
スクワラン 1.0
イソノナン酸イソノニル 1.0
エタノール 5.0
1,3−ブチレングリコール 2.0
精製水 8.4
香料 0.1
(C)イソペンタン 30.0
(C)LPG(0.20MPa) 10.0
(D)ジメチルエーテル 10.0
---------------------------------------------------------------
注5;マックスライトZS(昭和電工社製)
注6;MT−500H(テイカ社製)
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明のエアゾール型日焼け止め化粧料は、紫外線防御効果を有する金属酸化物粉体の再分散性に優れるため、目詰まりが起きにくく、また使用時には快適な冷感が得られる。従って、本発明により、安全で使いやすく、更に、紫外線防御効果にも優れ、使用時には、なめらかで、べたつきもなく、且つ快適な冷感が得られる優れた日焼け止め化粧料を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)金属酸化物粉体、(B)炭素数12〜18のモノ脂肪酸ソルビタン、(C)炭化水素系噴射剤、(D)ジメチルエーテルを含有し、(C)と(D)の含有量がC≧Dであり、25℃におけるエアゾール内圧が0.1〜0.35MPaであることを特徴とするエアゾール型日焼け止め化粧料。
【請求項2】
(A)の金属酸化物粉体が、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする、請求項1に記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
【請求項3】
(A)の金属酸化物粉体が、その表面をシリカ処理、又はアルミナ処理、又はステアリン酸塩で処理されたものであることを特徴とする、請求項1又は2のいずれかに記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
【請求項4】
(B)の炭素数12〜18のモノ脂肪酸ソルビタンが、イソステアリン酸ソルビタンであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。
【請求項5】
更に、(E)揮発性シリコーンを含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のエアゾール型日焼け止め化粧料。

【公開番号】特開2010−90056(P2010−90056A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−261141(P2008−261141)
【出願日】平成20年10月7日(2008.10.7)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】