説明

エアゾール容器用キャップおよびエアゾール式製品

【課題】キャップに形成する連続作動モード(ガス抜きモード,内容物連続噴射モード)設定用の操作部材を、通常噴射用の操作ボタンと同じように全体が下方向へ移動する操作態様のものとして、連続作動モードの設定操作上の利便化を図る。
【解決手段】連続作動モード設定用の操作部材3が、容器本体1のキャップ2に、フレキシブル性状の各連結部分3aで繋がっている。ガス抜きや内容物連続噴射の連続作動モードを設定するには、操作部材3の天井部分3bを下方向に押圧して薄肉状のリブ3eを切断しながら操作部材の全体を一様に下動させる。この下動にともない、押圧用垂下部3cが通常噴射用の操作ボタン4に当接してこれを作動モード対応位置に押下げる。下動後の操作部材3は、その爪状片部3dとキャップ側の係止部2f(の一つ)との係合作用によって保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール式製品に用いられるキャップなどに関し、特にエアゾール式製品をその静止モードまたは作動モードに設定する通常の操作ボタンを、その作動モード位置に、エアゾール容器に取り付けた状態のキャップに対する操作により簡単,確実に継続して保持できる、すなわちエアゾール式製品をガス抜き状態・内容物連続噴射状態の連続作動モードに設定できるようにしたものである。
【0002】
本明細書では、
「作動モード」の語を、利用者の通常の操作ボタンに対する噴射操作といわば1対1の対応関係にたつ内容物噴射状態(エアゾール容器のバルブが開いて容器内部と外部空間とが連通した状態)を示す意で用い、
「連続作動モード」の語を、利用者の噴射操作終了後もその操作部材がそれまでの操作位置に自己保持されたままとなる、内容物,ガスなどの連続噴射状態を示す意で用い、
「静止モード」の語を、エアゾール容器のバルブが閉じて容器内部と外部空間とが連通していない状態を示す意で用い、
「操作ボタン」の語を、作動モード設定用の操作部を示す意で用い、
「操作部材」の語を、連続作動モード設定用の操作部を示す意で用い、
「キャップ」の語を、容器本体側に着脱自在であって操作ボタンの上方を覆う天井部分を備え、エアゾール容器の使用に際しては容器本体側から取り外されるタイプの操作ボタン保護部材を示す意で用いる。
【0003】
また、容器内容物の噴射孔の側を「前(先)」とし、当該噴射孔とは反対側を「後」と表現している。すなわち図1〜図3の左側が「前(先)」で、右側が「後」となる。
【0004】
ここで、エアゾール容器を作動モードに設定するときの操作部は通常の操作ボタンであり、当該容器を連続作動モードに設定・保持するときの操作部は当該操作ボタンのキャップに設けた操作部材である。
【0005】
この(キャップに設けた)操作部材により連続作動モードが設定された場合、容器内容物をまだ使い切っていないときは内容物連続噴射モードとなり、容器内容物を略使い切っているときはガス抜きモードとなる。
【0006】
内容物連続噴射モードとガス抜きモードとはもっぱら用途上の違いにすぎず、エアゾール式製品の動作機構としては、当該各モードともにアクチュエータがその作動位置に継続的に保持されているものである。すなわち当該モードそれぞれにおけるバルブ機構などの動作メカニズムの違いはない。
【0007】
一般にガス抜きモードの設定は、使用済みエアゾール容器を廃棄するときに初めて必要となり、まだ容器内容物が存在している通常の使用段階では不要なものである。
【0008】
そのため、ガス抜きモード保持機構は、エアゾール式製品の通常の使用段階では内容物噴射動作の障害とならず、また利用者にとっていわば目障りにもならず、そしてガス抜きモードの設定操作を利用者が簡単に行えることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような要請に応えるべく、操作ボタン保護用のキャップをエアゾール容器に取り付けた状態でその所定部分(=操作部材)を操作することにより、ガス抜きモードが設定されるようにしたものである。
【0010】
さらには、比較的長時間にわたってエアゾール式製品を連続使用する場合に、利用者が作動モード設定の操作自体を継続的に行わなくても済むことが望ましく、本発明はこのような要請にも応えるものである。
【背景技術】
【0011】
本件出願人はすでに、キャップに形成した操作部材により、使用済みエアゾール式製品のガス抜きモードを保持する機構として、
(11)ガス抜き用の操作部材として、キャップの天板部分の径方向に形成した(通常噴射用の操作ボタンとは別の)回動タイプのものを用い、
(12)ガス抜きモードに設定する際は、先ず、天板部分と略同一面になっている当該操作部材をその外側端部を持ち上げながら起立させることにより、その反対側端部のボタン作用部を下動させ、
(13)このボタン作用部の下動により、通常噴射用の操作ボタンが押し下げられて作動モード位置に移行する、
(14)最終的には起立状態(=天板部分と略直交した状態)となった当該操作部材で、当該操作ボタンをその作動モード位置に自己保持する、
ものを提案している(例えば、特許文献1の図3参照)。
【0012】
このガス抜きモード保持機構を作動させる場合、利用者は、エアゾール容器にキャップを取り付けた状態(不使用時と同じ状態)で、キャップ天板部分のガス抜き用操作部材の外側端部を持ち上げるようにして当該操作部材を起立させればよい。
【0013】
ガス抜き用操作部材がいったん起立して通常噴射用の操作ボタンをその作動モード位置まで押し下げると、その起立状態であるガス抜きモードは、当該操作部材と当該操作ボタンとの当接作用により継続して保持されるので、ガス抜き用操作部材に対する利用者の持上げ操作はもはや不要となる。
【特許文献1】特開2004−168356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
このガス抜きモード保持機構は、エアゾール容器に普通の態様で取り付けたキャップの一部であるガス抜き用操作部材をその初期状態(=キャップ天板部分と略同一面の状態)から起立状態(=当該天板部分と略直交した状態)へと回動させるだけで、通常噴射用の操作ボタンをその作動モード位置まで押し下げて自己保持でき、使い勝手がよく、利便性のよいものになっている。
【0015】
ただ、ガス抜き用操作部材に対する利用者の操作態様が上方への持上げ操作であって、通常噴射用の操作ボタンに対する押し下げとは逆方向への操作となり、操作上のいくらかの戸惑いを利用者に与えるかもしれないという点や、ガス抜き用操作部材の起立状態(ガス抜きモード)が当該操作部材と操作ボタン自体との当接作用により保持される点で、改善の余地を有している。
【0016】
本発明では、エアゾール式製品の連続作動モードを設定するためキャップに形成する操作部材を、通常噴射用の操作ボタンと同じように全体が下方向へ移動する操作態様のものとして、連続作動モードの設定操作上の利便化を図ることを目的とする。
【0017】
なお、本件出願人は上記目的に沿った一態様のものをすでに出願済み(特願2005−176815)であり、本発明は、この出願内容とは別の態様から連続作動モード機能を備えたエアゾール容器用キャップに関する。
【0018】
また、連続作動モード設定用の操作部材をラチエット機構で保持するようにして、連続作動モードを設定する上でのエアゾール式製品ごとのバラツキ、例えば操作部材と操作ボタンとの間隔や、操作ボタンの静止モードから作動モードへの移動ストロークなどのバラツキが吸収され、連続作動モード設定の確実化を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、以上の課題を次のようにして解決する。
(1)エアゾール容器に対して着脱自在な筒状体(例えば後述の筒状部2a)と、その上側開口部分(例えば後述の開口域2d)に設けた連続作動モード設定用の操作部材(例えば後述のガス抜きモード設定用の操作部材3)とを有し、エアゾール式製品の作動モード設定用の操作ボタン(例えば後述の操作ボタン4)を保護する機能を備えたエアゾール容器用キャップにおいて、
前記操作部材を、その全体が下動できるように、それぞれ変位可能な複数の片部(例えば後述のフレキシブル性状の連結部分3a)によって前記筒状体に連結され、かつ、前記筒状体がエアゾール容器に取り付けられた状態での下動操作に応じて前記操作ボタンをその作動モード位置へ移行させるボタン作用部(例えば後述の押圧用垂下部3c)を備えたものとし、
前記筒状体および前記操作部材のそれぞれに、前記下動操作後の当該操作部材をそのときの位置に継続して保持するための相対的な係止手段(例えば後述のラチエット状の係止部2f,爪状片部3d)を設ける。
(2)上記(1)において、
前記筒状体は環状天板部(例えば後述の天井部2c)を有し、
前記環状天板部には、前記片部および、前記係止手段の一方としてのラチエット作用部分(例えば後述のラチエット状の係止部2f)を備えた垂下部(例えば後述の係止用垂下片2e)を形成し、
前記操作部材には、前記係止手段の他方として、前記ラチエット作用部分に係止される被係止部分(例えば後述の爪状片部3d)を形成する。
【0020】
このような構成からなるエアゾール容器用キャップおよび、当該キャップを備えたエアゾール式製品を本発明の対象としている。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、このように、エアゾール式製品の通常噴射用の操作ボタンに対する保護機能を備えたキャップに、連続作動モード設定用の操作部材を、その全体が、当該操作ボタンと同じく下方向へ移動する態様により形成しているので、連続作動モードの設定操作上の利便化を図ることができる。
【0022】
また、連続作動モードの操作部材をラチエット機構によりキャップ本体側に保持しているので、エアゾール式製品の操作ボタンやそのキャップ,操作部材などのサイズ,形状などにいくらかのバラツキが仮にあったとしても、当該操作部材の被係止部分はこのバラツキをいわば吸収しながら最適な係止部分に保持され、連続作動モード設定動作の適正化を図ることができる。
【0023】
また、後述のように、連続作動モード設定用の操作部材をキャップに薄肉状のリブで連結して、利用者などが所定の操作力で当該リブを切断した場合に初めて当該操作部材が移動可能となるので、例えば連続作動モードの対象がもっぱらガス抜きである使用態様においては、意に反した形でのガス抜きモード設定の防止化を図ることができる。
【0024】
また、後述のように、連続作動モード設定用の操作部材が通常噴射用の操作ボタンの天面中央部に作用してこれを作動モード対応位置に駆動するので、もともと弾性力により当該移動方向とは逆方向(=静止モードへの方向)に付勢されている当該操作ボタンの連続作動モード移行動作の安定化や、その後の当該操作部材の継続保持動作の安定化を図ることができる。
【0025】
また、利用者がキャップの操作部を誤操作して連続作動モードへと間違って移行した場合にも、(容器に対して着脱自在な)当該キャップを容器から取り外しさえすれば当該連続作動モードが解除されるので、エアゾール式製品の使い勝手の良さの向上化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
図1乃至図3を用いて本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【0027】
これまでも繰り返し述べたように、本発明は、ガス抜きモードや内容物連続噴射モードといった連続作動モードの保持機構に関するものである。そして、連続作動モード設定用の操作部材を、作動モード設定用の通常噴射操作ボタンとは別に設けている。
【0028】
この連続作動モード保持機構がガス抜きモードまたは内容物連続噴射モードのどちらで使用されているかということは、いわば利用者の意識の違いにすぎず、当該連続作動モード保持機構の動作メカニズム自体はいずれのモードの使用状態でも同じである。
【0029】
すなわちエアゾール式製品の噴射機構を通常の(操作ボタンによって設定される)作動モードに強制的に連続保持し、必要に応じてこれを解除できるようにしたものである。
【0030】
例えば利用者がガス抜きをするつもりで連続作動モードに設定しても容器に内容物が十分残っていれば内容物の連続噴射状態になり、これに気付いた利用者は連続作動モードを解除することもできる。
【0031】
以下の説明では単なる説明の便宜上、必要に応じて、ガス抜きモードを設定する場合を前提とする。
【0032】
なお、「ガス抜き」の用語を「内容物連続噴射」に置き換えても個々の説明内容の妥当性が担保されるのは勿論である。もっとも図1,図2のキャップは、図3のキャップと違って、内容物連続噴射用の周面開口部を形成していないので「内容物連続噴射」には適さない。
【0033】
ここで、
図1は、キャップ装着時の静止モード(その1)であって、(a)はキャップの平面図を示し、(b)はキャップ断面を示し、
図2は、図1に対応するキャップ装着時のガス抜きモード(その1)であって、(a)はキャップの平面図を示し、(b)はキャップ断面を示し、
図3は、キャップ装着時のガス抜きモード(その2)であって、(a)はキャップの平面図を示し、(b)はキャップ断面を示している。
【0034】
図1は、正確にいうとキャップに形成した連続作動モード設定用の操作部材をまだ1度も使用していないとき、すなわち当該操作部材が薄肉状のリブを介してキャップ本体側に連結されたままのときの静止モードを示している。
【0035】
また、キャップを容器本体から取り外して通常噴射用の操作ボタンを押圧した(連続作動モード設定用の操作部材は押圧されていない)ときの作動モードは図示していないが、このときの当該操作部材のキャップに対する位置関係は図1の静止モードのそれと同様である。
【0036】
なお、図1,図2のキャップと図3のそれとの違いは、後述の周面開口部2g(図3参照)の有無のみである。
【0037】
以下のアルファベット付き参照番号の構成要素(例えばアンダーカット1a)は原則として、当該参照番号の数字部分の構成要素(例えば容器本体1)の一部であることを示している。
【0038】
図1〜図3において、
1は後述の内容物および噴射用ガスを収納したエアゾール式製品の容器本体,
1aは当該容器本体の外周面の一部であって後述のキャップ2を取り付ける際に用いる環状のアンダーカット,
2は当該アンダーカットに着脱自在な形で取り付けられるキャップ(の一部),
2aは当該キャップの筒状部,
2bは当該筒状部の内周下端部分に間歇的に形成されてアンダーカット1aと弱く嵌合する環状の突部,
2cは当該キャップを構成する環状の天井部,
2dは当該天井部に形成された開口域,
2eは当該天井部から下方に延びる係止用垂下片(3箇所),
2fは当該係止用垂下片それぞれの内面部分の周方向(=筒状部2aの周方向)に形成されて、後述の操作部材3を、その押下げの程度が異なる位置に保持するためのラチエット状の係止部(3段階),
2gは当該キャップを容器本体1にセットしたとき後述の操作ボタンの孔部4aと対向するような周面部分に大きく形成された内容物連続噴射用の周面開口部(図3参照),
3は押下げ可能な態様でキャップ2の天井部2cに連結(一体成形)されたガス抜きモード設定用の操作部材(=キャップの一部でもある),
3aは当該操作部材と天井部2cとをつないで変位・変形が可能なフレキシブル性状の連結部分(3箇所),
3bは当該操作部材の天井部分,
3cは当該天井部分から下方に延び、ガス抜きモードの設定操作にともない後述の通常噴射用の操作ボタン4の天面中央部分を押圧してその作動モード対応位置まで下動させる押圧用垂下部,
3dは当該操作部材の外周面に形成され、ガス抜きモードにおいて各係止用垂下片2eの係止部2fのいずれかの段階部分と係合する爪状片部(3箇所),
3eは当該操作部材と天井部2cとを間歇的に連結して、操作部材3がいわば不用意にガス抜きモードへ移行することを防止するための薄肉状のリブ(ヴァージンシール),
4は周知のステム(図示省略)と連結して、内容物噴射の作動モードを設定するための操作ボタン(アクチュエータ),
4aは内容物噴射用(ガス抜き用)の孔部,
をそれぞれ示している。
【0039】
ここで、キャップ2,操作部材3および操作ボタン4はポリプロピレン,ポリエチレン,ポリアセタール,ナイロン,ポリブチレンテレフタレートなどからなるプラスチック製のものである。また、少なくともキャップ2の係止部2fや操作部材3の爪状片部3dはそれぞれ外力を受けることによりいくらか変形し、当該外力を受けなくなると元の状態に略復帰する。
【0040】
また、係止用垂下片2eの係止部2fはそれぞれ天井部2cに近いほうのスロープ状部分とこの(図示)下方に続く段部分(当該係止用垂下片に略垂直な面部分)とを有している。一方、連続作動モード設定用の操作部材3の爪状片部3dの先端側は、図示のように、係止部2fのスロープ状部分に対応した形状の斜面部分となっている。
【0041】
操作部材3を図1などの静止モードから下方に押すと、当該操作部材の各爪状片部3dは、個々の係止部2fのスロープ状部分に乗り上げて係止用垂下片2eを外方にいくらか変形させながら当該スロープ状部分を通過していき、最後に通過した当該係止部の(変形前の状態に戻った)段部分に係合して保持される。
【0042】
エアゾール式製品を使用しない静止モードなどにおいては操作ボタン4を保護するため、キャップ2が容器本体1に、その筒状部2aの突部2bがアンダーカット1aに係合した状態で保持されている。利用者は当該製品の使用に先立ってキャップ2を容器本体1から取り外す。
【0043】
また、利用者などが操作部材3をまだ積極的に押圧していない状態(=まだ連続作動モードが一度も設定されていない状態)では、当該操作部材がリブ3eを介して天井部2cに連結されている。そして、このときの操作部材3および天井部2cは図1に示すように同一面上にある。
【0044】
エアゾール式製品を廃棄する前などに容器内の残留ガスを抜く場合や、エアゾール式製品の内容物を連続噴射したい場合には、キャップ2を容器本体1に取り付けた状態で操作部材3を強く下方に押圧してリブ3eをいわば切り裂けばよい。
【0045】
この押圧操作にともない、キャップ2と操作部材3とをつなぐ連結部分3aの天井部分3bの側がそれぞれ一様に下方に変位して、図2(b)や図3(b)のガス抜きモードなどへと移行する。
【0046】
この移行により、
・作動モード設定用の操作ボタン4が、キャップ側の押圧用垂下部3cに押し下げられて作動モード対応位置、すなわちステムの連通用孔部(図示省略)をそれまでの閉状態から開状態へ変化させて容器内部と外部空間とが連通するエアゾール式製品作動状態の対応位置、へと移動し、
・操作部材3の爪状片部3dが、キャップ天井部2cの係止用垂下片2eに形成された係止部2fのいずれかと係合して安定的に保持される。
【0047】
このガス抜きモードへの移行の際、操作部材3の押圧用垂下部3cが操作ボタン4やこれと一体のステム(図示省略)の平面中央部分に作用し、これにより当該操作ボタンなどは下方の作動モード対応位置へスムーズに移動する。
【0048】
ここで複数の係止部2fを設けているのは、製品によって、押圧用垂下部3cと操作ボタン4との間隔や、ステム自体の静止モード位置から作動モード位置への移行ストロークなどにバラツキがあり、個々の操作部材3に対するガス抜きモード用の最適な下動位置を一意に決めることができないからである。
【0049】
このように複数の係止部2fが形成されているので、エアゾール式製品のガス抜きモードを設定しようとする利用者は、その操作部材3がどの下動位置で係止用垂下片2eに係合保持されるかといったことなどを気にせずに、当該操作部材を、その停止感を得るまで押圧すればよい。
【0050】
押圧されて下方に移動した操作部材3は、その位置に合致した(一つの)係止部2fに爪状片部3dが係合して保持される。これにより操作ボタン4が作動モードと同じ位置状態となって、容器内部の残留ガスなどは、後述のようにステム内の周知の通路部(図示省略)や操作ボタンの孔部4aなどを経て外部空間に噴射される。
【0051】
なお、静止モードにおける操作ボタン4は、ステムを図示上方向に付勢するコイルスプリング(図示省略)などの作用により上動し、図1(b)の状態に位置している。
【0052】
図2および図3のガス抜きモードにおいては、操作ボタン4および周知のステム(図示省略)5が上方向への弾性力に抗して下動し、容器本体1の内部と外部空間とを連通させる周知のステム孔部(図示省略)が開いた状態の作動モードに設定される。
【0053】
したがって、
(21)図1のガス抜きモードでは、容器本体1の残留ガスが、概略、ステム孔部−ステム内通路−操作ボタン内通路−孔部4a−開口域2dを経て外部空間に噴射され、
(22)図3のガス抜きモードでは、容器本体1の残留ガスが、概略、ステム孔部−ステム内通路−操作ボタン内通路−孔部4a−開口域2d・周面開口部2gを経て外部空間に噴射される。
【0054】
なお、以上のガス抜きモードを解除して静止モードに戻すときは、キャップ2を容器本体1から外せばよい。
【0055】
キャップ2を容器本体1から外すと、操作ボタン4は上述のコイルスプリングなどの付勢力により上方向に移動して周知のバルブ機構が閉状態となる。すなわち静止モードに移行する。
【0056】
キャップ2を容器本体1から取り外した状態で操作ボタン4を下方へ押圧すると、勿論バルブ機構が開き作動モードとなる。
【0057】
本発明が以上説明した内容に限定されないことは勿論であり、例えば、
(31)操作部材3とキャップ2とを連結する薄肉状のリブ3eを省略する、
(32)連結部分3aの剛性を強めて、リブ3eを切り裂いた後の静止モードにおける操作部材3をその初期状態(=リブ3eでキャップ2と連結されている状態)にいわば自己保持する、
(33)この自己保持機能を備えた連結部分3aとリブ3eとを併用する、
(34)いわゆるチルト式の操作ボタンにも適用する、
ようにしてもよい。
【0058】
本発明が適用されるエアゾール式製品としては、洗浄剤,清掃剤,制汗剤,冷却剤,筋肉消炎剤,ヘアスタイリング剤,ヘアトリートメント剤,染毛剤,育毛剤,化粧品,シェービングフォーム,食品,液滴状のもの(ビタミンなど),医薬品,医薬部外品,塗料,園芸用剤,忌避剤(殺虫剤),クリーナー,消臭剤,洗濯のり,ウレタンフォーム,消火器,接着剤,潤滑剤などの各種用途のものがある。
【0059】
容器本体に収納する内容物は、例えば、粉状物,油成分,アルコール類,界面活性剤,高分子化合物,各用途に応じた有効成分などである。
【0060】
粉状物としては、金属塩類粉末,無機物粉末や樹脂粉末などを用いる。例えば、タルク,カオリン,アルミニウムヒドロキシクロライド(アルミ塩),アルギン酸カルシウム,金粉,銀粉,雲母,炭酸塩,硫酸バリウム,セルロース,これらの混合物などを用いる。
【0061】
油成分としては、シリコーン油,パーム油,ユーカリ油,ツバキ油,オリーブ油,ホホバ油,パラフィン油,ミリスチン酸,パルミチン酸,ステアリン酸,リノール酸,リノレン酸などを用いる。
【0062】
アルコール類としては、エタノールなどの1価の低級アルコール,ラウリルアルコールなどの1価の高級アルコール,エチレングリコールなどの多価アルコールなどを用いる。
【0063】
界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウムなどのアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性界面活性剤、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインなどの両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなどのカチオン性界面活性剤などを用いる。
【0064】
高分子化合物としては、メチルセルロース,ゼラチン,デンプン,カゼインなどを用いる。
【0065】
各用途に応じた有効成分としては、サリチル酸メチル,インドメタシンなどの消炎鎮痛剤、安息香酸ナトリウム,クレゾールなどの除菌剤、ヒレスロイド,ジエチルトルアミドなどの害虫忌避剤、酸化亜鉛などの制汗剤、カンフル,メントールなどの清涼剤、エフェドリン,アドレナリンなどの抗喘息薬、スクラロース,アスパルテームなどの甘味料、エポキシ樹脂,ウレタンなどの接着剤や塗料、パラフェニレンジアミン,アミノフェノールなどの染料,リン酸二水素アンモニウム,炭酸水素ナトリウム・カリウムなどの消火剤などを用いる。
【0066】
さらに、上記内容物以外の、懸濁剤,紫外線吸収剤,乳化剤,保湿剤,酸化防止剤、金属イオン封鎖剤なども用いることができる。
【0067】
エアゾール式製品における内容物噴射用ガスとしては、炭酸ガス,窒素ガス,圧縮空気,酸素ガス,希ガス,これらの混合ガスなどの圧縮ガスや、液化石油ガス,ジメチルエーテル,フロロカーボンなどの液化ガスを用いる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の、キャップ装着時の静止モード(その1)であって、(a)はキャップの平面図を示し、(b)はキャップ断面を示している。
【図2】本発明の、図1に対応するキャップ装着時のガス抜きモード(その1)であって、(a)はキャップの平面図を示し、(b)はキャップ断面を示している。
【図3】本発明の、キャップ装着時のガス抜きモード(その2)であって、(a)はキャップの平面図を示し、(b)はキャップ断面を示している。
【符号の説明】
【0069】
1:エアゾール式製品の容器本体
1a:環状のアンダーカット
2:キャップ(の一部)
2a:筒状部
2b:環状の突部
2c:環状の天井部
2d:開口域
2e:係止用垂下片(3箇所)
2f:ラチエット状の係止部(3段階)
2g:内容物連続噴射用の周面開口部(図3参照)
3:ガス抜きモード設定用の操作部材(キャップの一部でもある)
3a:フレキシブル性状の連結部分(3箇所)
3b:天井部分
3c:押圧用垂下部
3d:爪状片部(3箇所)
3e:薄肉状のリブ(ヴァージンシール)
4:通常噴射用の操作ボタン(アクチュエータ)
4a:内容物噴射用(ガス抜き用)の孔部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に対して着脱自在な筒状体と、その上側開口部分に設けた連続作動モード設定用の操作部材とを有し、エアゾール式製品の作動モード設定用の操作ボタンを保護する機能を備えたエアゾール容器用キャップにおいて、
前記操作部材は、その全体が下動できるように、それぞれ変位可能な複数の片部によって前記筒状体に連結され、かつ、前記筒状体がエアゾール容器に取り付けられた状態での下動操作に応じて前記操作ボタンをその作動モード位置へ移行させるボタン作用部を備えたものであり、
前記筒状体および前記操作部材のそれぞれに、前記下動操作後の当該操作部材をそのときの位置に継続して保持するための相対的な係止手段を設けた、
ことを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項2】
前記筒状体は環状天板部を有し、
前記環状天板部には、前記片部および、前記係止手段の一方としてのラチエット作用部分を備えた垂下部が形成され、
前記操作部材には、前記係止手段の他方として、前記ラチエット作用部分に係止される被係止部分が形成されている、
ことを特徴とする請求項1記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項3】
請求項1または2記載のエアゾール容器用キャップを備え、かつ、噴射用ガスおよび内容物を収容した、
ことを特徴とするエアゾール式製品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−126164(P2007−126164A)
【公開日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−318586(P2005−318586)
【出願日】平成17年11月1日(2005.11.1)
【出願人】(000144463)株式会社三谷バルブ (142)
【Fターム(参考)】