説明

エアゾール容器用キャップ及びエアゾール噴射装置

【課題】内容物排出操作が容易且つ確実であり、キャップ内の空所へ内容物を排出することができるワンタッチ式のエアゾール容器用キャップ及びエアゾール噴射装置を提供する。
【解決手段】キャップ本体は、噴射用ボタン12を囲む囲繞壁とボタン装着部15とを備え、ボタン12は、周壁から突出した外フランジ12dを備え、ボタン装着部15は、外フランジ12dより上の位置で筒状部15aから突出した内フランジ15bを備え、ボタン12を下方へ抜け出し可能に収容しており、内フランジ15bと外フランジ12dとは、容器10及びキャップ本体の一方が他方に対して倒立状態で押し付けられたときに、バルブステム上のボタンの外フランジ12dを内フランジ15bが押圧して噴射が行なわれるように位置が決められているエアゾール容器用キャップ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エアゾール容器用キャップ及びエアゾール噴射装置に関し、さらに詳しくは、使用後のエアゾール容器内の内容物を容易に排出することができるエアゾール容器用キャップ及びこのエアゾール容器用キャップが装着されたエアゾール噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エアゾール式のスプレー装置は、容器内の内容物を簡単に噴射し、散布又は塗布することができるので、塗料、殺虫剤、芳香剤、脱臭剤、家庭用洗浄剤、防カビ剤、除菌剤、医薬品、化粧品、医薬部外品などの噴射用に広く利用されている。このエアゾール式のスプレー装置は、エアゾール容器内に被噴射剤及び噴射用ガスが収納されており、噴射用ガスによる加圧で被噴射剤が噴射ノズルを介して噴射されるようになっている。なお、本明細書及び特許請求の範囲では、容器内の「内容物」には、被噴射剤及び噴射用ガスが含まれ、被噴射剤及び噴射用ガスのいずれかのみの場合にも、「内容物」と記すことがある。また、「エアゾール」は、容器から噴射ノズルを経て噴射される液体、気体、粉末等を言い、噴射形態として霧状、粒子状、泡状、ペースト状、ジェル状のもの等を含む。内容物に関して「排出」というときは、特に断らない限り、エアゾール容器を廃棄する目的で残留内容物を放出することを意味する。
【0003】
噴射用ガスとしては、フロンの使用が禁止され、現在は可燃性のブタン、プロパンなどの液化ガス、窒素ガス、炭酸ガスなどの高圧ガスが用いられている。使用後のエアゾール容器がそのままゴミとして廃棄されると、ゴミ処理の際に、容器内のガス圧に起因する容器の爆発が起こる危険性がある。そのような事故を防止するために、エアゾール容器を廃棄する場合には、廃棄する前に容器内の内容物を排出して内圧を常圧程度にするのが望ましく、現在、各自治体などにより、廃棄する前に容器内の内容物を排出するように求められている。
【0004】
汎用されているエアゾール噴射装置には、主として、ステムに取り付けられたノズルヘッドがキャップでカバーされ、使用時にはキャップを外し、ノズルヘッドを押すことによりステムを押し下げて内容物をスプレーするタイプ(ツータッチ式と呼ばれる)と、キャップを取り外すことなく、噴射ノズルを備えた噴射用ボタン(以下、単に「ボタン」と略記する)を押すことにより、ステムを押し下げて内容物をスプレーするタイプ(ワンタッチ式と呼ばれる)とがある。
【0005】
これらの内、ワンタッチ式のものは、噴射操作が簡便であり、キャップの紛失のおそれもないため、近年において多用されている。ワンタッチ式のエアゾール噴射装置は、キャップを外さずに噴射が可能であるので、廃棄前の内容物の排出の際にも一端押し込んだボタンを押し下げ状態に保持する構造を採用することにより、キャップを外さずに排出を行なうことができるものが提案されている(特許文献1,2)。しかしながら、この構造では、ボタンがキャップに覆われていないので、噴射ノズルから周囲環境へ直接内容物が飛散することになり、周囲空気の汚染を生じ、また火の気のあるところでは噴射物への引火のおそれもある。
【0006】
これに対処するものとして、ボタンをキャップに組み込み、排出時には、キャップをボタンと共にエアゾール容器から取り外し、エアゾール容器を倒立させて、露出したバルブステムをボタンの天面に押し付けて排出を行なう構造のものが提案されている(特許文献3)。この装置に使用するボタンの天面には、内容物を導くための溝又は貫通孔が設けられており、それらにより内容物をキャップ内の空所へ導くようになっている。しかしながら、エアゾール容器を倒立させた状態で、小さいバルブステムをボタン天面に押し付ける操作は、ステムが見えにくいこともあって必ずしも容易ではなく、押し付け箇所がずれるなど操作を誤ると、思わぬ方向に内容物が飛び出し、内容物の飛散や皮膚への付着を生じるおそれがある。
【0007】
一方、使用時にキャップを取り外すツータッチ式のエアゾール噴射装置においては、キャップの側壁で囲まれた空所を仕切る水平壁を高さ方向の途中に設け、その水平壁でキャップ内を上下に分割する構造のものが提案されている(特許文献4,5)。通常は、下側の空所内にボタンを納めるようにしてキャップを被せ、排出時には、キャップを取り外して倒立させ、キャップの反対側の空所内にボタンを納めるようにして、水平壁でバルブステム上の噴射ボタンを押し下げ、噴射ボタンからキャップの空所内へ排出を行なう。しかしながら、この構造はツータッチ式の場合に可能であって、ワンタッチ式のエアゾール噴射装置では、キャップを装着したまま手指で噴射ボタンを押す構造となっているため、キャップの高さ方向の途中に水平壁を設けることができない。
【特許文献1】特開平8−133360号公報
【特許文献2】特開2002−193362号公報
【特許文献3】特開2002−293388号公報
【特許文献4】実開平6−71485号公報
【特許文献5】特開2000−309388号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、操作が簡単なワンタッチ式エアゾール噴射装置における上記問題点を解決するためになされたものであって、エアゾール容器を廃棄する際の内容物の排出操作が容易且つ確実であり、キャップ内の空所へ内容物を排出することができるワンタッチ式のエアゾール容器用キャップ及びエアゾール噴射装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために、エアゾール容器に装着されるキャップ本体と、前記エアゾール容器のバルブステムに取り付けられるボタンとを備えたエアゾール容器用キャップであって、前記キャップ本体は、前記エアゾール容器に装着された状態において前記ボタンを囲む囲繞壁を備え、該囲繞壁は、前記エアゾール容器に装着するための嵌合部と、噴射用開口部と、手指を受け入れる操作用凹部と、前記ボタンが装着されるボタン装着部とを備え、前記ボタンは、手指による押し下げ操作を受ける上壁と、該上壁から下方へ延びる周壁と、該周壁から径方向外向きに突出した外フランジと、前記エアゾール容器のバルブステムに嵌合される接続部と、前記接続部を介して前記エアゾール容器の内容物を噴射する噴射ノズルとを備え、前記ボタン装着部は、前記ボタンを上下方向に案内する筒状部と、装着されたボタンの外フランジより上の位置で前記筒状部から径方向内方へ突出した内フランジとを備え、前記ボタンを下方へ抜け出し可能に収容しており、前記外フランジと内フランジとは、前記エアゾール容器及びキャップ本体の一方が他方に対して倒立状態で接近し少なくとも噴射のためのステム押し下げ距離だけ離間している状態で、相互に当接するように位置決めされており、前記噴射用開口部は、非使用状態及び通常噴射状態において前記噴射ノズルに臨む位置にあり、前記倒立状態での外フランジと内フランジとの当接時に前記噴射ノズルより容器本体側に位置するように形成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップを提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るエアゾール容器用キャップは、キャップ本体とボタンとで構成され、前記キャップ本体が、噴射用開口部及び手指を受け入れる操作用凹部を備えたワンタッチ式となっている。また、前記キャップ本体が備えるボタン装着部は、前記ボタンを上下方向に案内する筒状部を備え、前記ボタンを下方へ抜け出し可能に収容している。その筒状部には、径方向内方へ突出した内フランジが設けられ、噴射ノズルを備えたボタンには、周壁から径方向外向きに突出した外フランジが設けられている。そして、これら外フランジと内フランジとは、前記エアゾール容器及びキャップ本体の一方が他方に対して倒立状態で接近し少なくとも噴射のためのステム押し下げ距離だけ離間している状態で、相互に当接するように位置決めされており、前記噴射用開口部は、非使用状態及び通常噴射状態において前記噴射ノズルに臨む位置にあり、前記倒立状態での外フランジと内フランジとの当接時に前記噴射ノズルより容器本体側に位置するように形成されている。
【0011】
したがって、通常は、ボタンは、キャップ本体内で上下動可能であり、押し下げにより内容物の噴射が可能となっている。一方、内容物の排出時には、キャップ本体をエアゾール容器から取り外せば、ボタンをキャップ本体から下方へ抜き出しバルブステム上に係合した状態とすることができる。この状態で、エアゾール容器及びキャップ本体の一方を倒立状態に相互に接近させれば、外フランジ及び内フランジが当接し、両者を相互に押し付けると、噴射に必要な距離に亘ってバルブステムが押し込まれる。この時、噴射用開口部は噴射ノズルより容器本体側に位置しているので、内容物は噴射ノズルからキャップ本体内の空所に噴射されることとなる。
【0012】
前記ボタン装着部の筒状部が前記ボタンを下方へ抜け出し可能に収容する形態には、キャップ本体を持ち上げると、ボタンが自然落下する場合のみならず、製造工程中での一体化等のためにキャップ本体にボタンを緩く仮保持するが手操作で容易に下方へ抜き出すことができる場合を含む。
【0013】
上記排出のための操作は、キャップ本体をエアゾール容器から取り外し、エアゾール容器及びキャップ本体のいずれか一方を倒立させて他方に押し付ければよいので、容易である。また、その際、エアゾール容器のバルブステム上に位置するボタンが、キャップ本体に押し付られるので、ボタンが有する大きさにより、小さいバルブステムを押し付けるときのような誤操作を生じ難く、確実に排出操作を行なうことができる。その結果、ワンタッチ式噴射が可能でありながら、排出時には、キャップ内空所への内容物の排出を容易且つ確実に行なうことができる。
【0014】
本発明に係るエアゾール噴射装置は、噴射用内容物を含むエアゾール容器に、前記キャップが装着されているので、該キャップの利点が反映され、ワンタッチ式噴射装置でありながら、排出時には、内容物をキャップ内空所へ容易且つ確実に排出させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るエアゾール容器用キャップを具体的に説明する。なお、説明に用いる図面においては、同一又は同種の部分に同じ番号を付して説明を省略することがある。
【0016】
図1及び図2は、本発明の実施形態1に係るエアゾール容器用キャップを装着したエアゾール噴射装置の非使用状態を示す図であり、図1の(a)は斜視図、(b)は正面図、図2の(a)は図1(b)のIIa-IIa線に沿う断面図、(b)は図2(a)のIIb-IIb線に沿う断面図、(c)は(b)の一部を拡大して示す図である。また、図3及び図4はキャップのみを示しており、図3の(a)は上から見た斜視図、(b)は下から見た斜視図、(c)は操作用凹部からみた背面図、図4の(a)は図3(c)のIVa-IVa線に沿う断面図、(b)は図4(a)のIVb-IVb線に沿う断面図である。
【0017】
この実施形態に係るエアゾール容器用キャップ1は、図示のように、キャップ本体11とボタン12とで構成されており、エアゾール容器10(図には容器の一部を図示。以下、「エアゾール容器」を単に「容器」と略記することがある)に装着して用いられる。
【0018】
キャップ本体11は、ほぼ筒状で、下端部に容器10に装着するための嵌合部11d(図2参照)が形成されており、嵌合部11dの環状突部が容器10の巻締め部10aに嵌め合わされるようになっている。巻締め部10aは、容器胴部10bとマウンテンキャップ10cとを結合するために形成されている。また、キャップ本体11は、ほぼ筒状をなしボタン12を囲む囲繞壁11aを備えている。この囲繞壁11aには、内容物である噴射物を通すための噴射用開口部11b、及び噴射用開口部11bに対向しキャップ本体11の上端側に開口し、ボタン押下げ時に手指を受け入れる操作用凹部11cが形成されている。さらに、キャップ本体11には、噴射用開口部11bと操作用凹部11cとの間に、容器10の中心軸方向に沿って形成され、ボタン12が挿入されるボタン装着部15が形成されている。また、キャップ本体11の内部、すなわち、容器10の上部、キャップ本体11の囲繞壁11a、ボタン12などで囲まれた領域は空間となっている。
【0019】
図5及び図6は上記ボタンを示しており、図5の(a)は上から見た斜視図、(b)は下から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は側面図であり、図6の(a)は図5(c)のVIa-VIa線に沿う断面図、(b)は図6(a)のVIb-VIb線に沿う断面図である。ボタン12は、図示のように、手指による押し下げ操作を受ける上壁12cと、該上壁から下方へ延びる周壁12bと、エアゾール容器の内容物を噴射する噴射ノズル12aとを備えている。周壁12bの内側には、エアゾール容器の上部に突出しているバルブステム(以下、ステムと記す)16に嵌合される接続部17が設けられ、周壁12bの下部には、径方向外向きに突出した外フランジ12dが設けられている。ステム16から流出する容器10内の内容物は、ボタン12内に形成された流路を介して、ボタン12の側壁に設けられた噴射ノズル12aから、容器10の中心軸に対してほぼ直角方向に噴射されるようになっている。非使用時の状態では、ボタン12は、上向きに付勢されているステム16上で上昇位置に保持されている。
【0020】
ボタン装着部15は、噴射ノズル12aが噴射用開口部11bに向くようにしてボタン12を上下方向に案内する筒状部15aと、装着されたボタンの外フランジ12dより上の位置で筒状部15aから径方向内方へ突出した内フランジ15bとを備えている。筒状部15aは、ボタン12を下側から挿入し、上側へ突出させることができるように、上下端を開放されており、ボタン12を下方へ抜け出し可能に収容する。
【0021】
但し、この実施形態では、筒状部15aの下端に仮保持部15dが設けられ、ボタン12を仮保持している。これに関し図7は、キャップ1を斜め下から見た状態で示している。仮保持部15dは、筒状部15a下端から径方向内方へ僅かに突出した爪状に形成され、下方から挿入されたボタン12の外フランジ12dに係止して落下しない程度に保持する。これにより、製造工程において、キャップ本体11とボタン12とを一体として搬送、組付け等をすることが可能となり、取扱いが容易となる。一方、キャップ1がエアゾール容器10に装着され、容器10のステム16にボタン12の接続部17が嵌合した後は、該嵌合によるステムとボタンとの結合力が強いため、キャップ本体11を容器10から取り外すと、ボタン12は仮保持部15dから外れ、ステム16上に残ったまま下方へ引き出されることとなる。
【0022】
また、キャップ本体11は、キャップ本体及び容器本体のいずれかを倒立させて、ステム16上に位置するボタン12を、内容物噴射に必要な距離に亘ってキャップ本体11内に押し込む際に、容器本体1のマウンテンキャップ10cを受け入れ得るように、上部中央に空所30が設けられている。この実施形態では、空所30に臨む囲繞壁11a側面には、内容物排出のために押し込まれた容器10のステム16周囲の巻締め部13aに係止して、該押し込み状態を保持する嵌着部31が4箇所に設けられている。この嵌着部31は、図3,図4に示すように、キャップ本体11側面に形成された爪状に形成されている。巻締め部13aが空所30に押し込まれると、嵌着部31は外方へ変形し、その弾性力で巻締め部13aを押し込み位置に保持する。
【0023】
さらに、筒状部15aの上端部には、係止部15cが筒状部15aの周方向の複数箇所に環状に設けられている。この係止部15cは、後述するようにエアゾール容器10及びキャップ1のいずれかを倒立させた状態で両者を相互に押し付け、容器10の内容物排出を完了した後等において、エアゾール容器10をキャップ1から取り外したとき、ボタン12をキャップ本体11内に留めてステムから抜き出すことができるように設けられている。そのために係止部15cは爪状とされ、通常使用状態とは逆向きにして筒状部15aに上方から挿入されたボタン12の外フランジ12dに係合する位置に設けられている。この実施形態では、図12(b)に示すように、筒状部15aに逆向きに挿入されたボタン12の外フランジ12dが内フランジ15bに当接した状態で、該外フランジ12dに係合する位置に係止部15cが設けられている。
【0024】
エアゾール噴射装置を組み立てるには、キャップ本体11の筒状部15aに下側からボタン12を挿入し、仮保持部15dにより保持させ、キャップ1とする。このキャップ1をエアゾール容器10の上部に取り付ける。これは、キャップ本体11の嵌合部11dを容器10の巻締め部10aに嵌合させることにより行ない、この時、ステム16はボタン12の接続部17に嵌入し、ボタン12を上昇位置に保持する。これにより、噴射操作が可能な状態となる。
【0025】
図8及び図9は、上記エアゾール噴射装置について、ノズル12aから噴射を行なう通常の使用状態を示しており、図8の(a)は斜視図、(b)は正面図、図9の(a)は図8(b)のIXa-IXa線に沿う断面図、(b)は図9(a)のIXb-IXb線に沿う断面図である。図示のように、被噴射剤が噴射される通常使用の場合には、ボタン12の上面が押圧されて、ステム16が押し下げられる。その操作によって、容器10内の噴射用ガス(高圧ガス)に伴って被噴射剤が噴射ノズル12aを介して噴射される。この押し下げ位置では、噴射ノズル12aは噴射用開口部11bに臨む位置にあるので、被噴射剤は、キャップ1の外側へ噴射されることとなる。
【0026】
次に、エアゾール容器の廃棄時等に容器10内の内容物を排出する操作について説明する。内容物を排出するには、図10に示すように、まずキャップ本体11を容器10から取り外す。このとき、ボタン12は、接続部17とステム16との緊密な嵌合により、仮保持部15dから外れてステム16上に残る。次に、取り外したキャップ本体11を装着時の姿勢(正立姿勢)のまま適宜の支持面上に置く。そして、図11(a)に示すように、容器10を倒立させて、ボタン12をキャップ本体11の筒状部15aに挿入する。このとき、マウンテンキャップ10cの巻締め部13aが嵌着部31に係合する手前の位置で、筒状部15aの内フランジ15bにボタン12の外フランジ12dが当接した状態となる。この状態で、容器10を押し下げる。図11(b)は容器10を押し下げた状態の正面図、図12(a)は図11(b)のXIIa-XIIa線に沿う断面図、図12(b)は図12(a)のXIIb-XIIb線に沿う断面図である。この押し下げ操作により、ステム16は押し込まれて、内容物がステムを経てボタン12の噴射ノズル12aから排出される。この状態で噴射ノズル12aは噴射用開口部11b及び筒状部15aの下端より下方にあり、囲繞壁11aに囲まれた空所内に位置している。したがって、内容物はキャップ本体11内へ噴射される。そして、キャップ本体11下面と支持面との間から緩やかにキャップ外へと流出する。
【0027】
この実施形態においては、上記倒立状態で噴射ノズル12aから噴射が行なわれるのに必要な距離を押し込まれたときに、嵌着部31がエアゾール容器のマウンテンキャップにおける巻締め部13aに緊く嵌合するように形成されている。すなわち、キャップ本体11の正立状態において、内フランジ15bの上端から嵌着部31の下端までの距離d1(図2(c)参照)が、内容物噴射時(ボタン押し下げ時)のボタン12における外フランジ12dの上端からエアゾール容器のマウンテンキャップ10cにおける巻締め部13aの下端までの距離d2に等しくされている。
【0028】
多くのエアゾール噴射装置においては、バルブステムの下端部にはエアゾール容器内の底部まで延びるチューブが結合され、チューブ下端の開口部が、容器内の液体等に浸漬されている。この場合は、エアゾール容器を倒立させて排出を行なうと、加圧用のガスがステムから放出される。また、エアゾール噴射装置によっては、バルブステム下端に結合されたチューブが可撓性を備え、チューブ下端に錘が付けられたものもある。この場合は、エアゾール容器を傾斜させると、チューブ下端が錘と共にエアゾール容器の中で下方に沈む。そして、エアゾール容器を倒立させると、チューブがU字状に撓んで内容物の液体等に沈むものもあり、この場合には、エアゾール容器を倒立させて排出を行なうと、液体が放出される。
【0029】
排出を完了した時、又は、排出を途中で停止させたい場合は、嵌着部31と巻締め部13aとの嵌合を解いてキャップ本体11をエアゾール容器10から取り外せばよい。これにより、ステム16は内蔵バネにより押し込み前の位置に戻り、噴出が停止する。また、図13に示すように、この取り外しの際、ボタン12は、外フランジ12dがキャップ本体11の係止部15cと係合することにより、キャップ本体11内に留まり、接続部17とステム16との係合を解く。この実施形態によれば、キャップ本体11とボタン12とが結合された状態で排出操作が完了するので、金属部品とプラスチック部品等を区別して分別廃棄をする際に便利である。
【0030】
キャップ本体11に係止部15cを設けない場合は、図14に示すように、キャップ本体11をエアゾール容器10から取り外すと、ボタン12は接続部17とステム16との係合により、容器10に伴われて、キャップ本体11から抜け出す。この場合は、必要に応じ、ボタン12をステム16から抜き取って廃棄することになる。また、キャップ本体11に係止部15cを設けず、接続部17とステム16との係合が緩い場合は、キャップ本体11をエアゾール容器10から取り外すと、ボタン12は図13のようにキャップ本体11内に残る。
【0031】
なお、図15に示すように、容器10を正立させたまま、キャップ本体11を倒立状態としてボタン12に対して押し込むことにより、内容物の排出を行なうこともできる。図15の(a)は排出状態、(b)は排出後にキャップ本体11を容器10から取り外した状態を示している。この場合も、内容物は、ボタン12の噴射ノズル12aから囲繞壁11aで囲まれたキャップ本体11内へと放出される。放出された内容物は、その後、キャップ本体11から流れ出るが、噴射物が直接キャップ本体外へ飛散することはないので、広範囲の周囲空気の汚染や噴射物への引火が防止される。
【0032】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、図7等に示した仮保持部15dは、保持機能を高めるために、接続部17とステム16との係合強さより保持力を強くすることもできる。或いは、接続部17とステム16との係合を緩くすることもできる。それらの場合は、図16に示すように、キャップ本体11をエアゾール容器10から取り外すと、ボタン12も外フランジ12dと仮保持部15dとの係合によりキャップ本体11に伴われて、容器10から外れる。したがって、排出操作を行なうには、ボタン12をキャップ本体11から抜き出して、接続部17をステム16に係合させ、その後にキャップ本体11及び容器10のいずれかを倒立させて、両者を相互に押し付ける操作を行なうこととなる。
【0033】
図17は、上記実施形態とは異なる形状のキャップ本体を備えた例を示している。このエアゾール容器用キャップ1’においては、キャップ本体11’の噴射用開口部11b’が、囲繞壁11a’を貫通する孔となっており、該孔は、正面視円形、楕円形などの形状とすることができる。なお、操作用凹部11c’は、容器10を片手で持ち、人差し指でボタンの操作が行われるので、操作性の観点から、上部側が開口した凹形であることが好ましい。一方、図1〜図16に示したエアゾール容器用キャップのように、噴射用開口部が、上部が開口した凹形の場合には、容器からキャップ本体を取り外しやすいキャップを設計できるという利点がある。すなわち、嵌合部により容器の巻締め部に外側から嵌め合わされたキャップ本体を比較的薄肉で軟質の樹脂などで形成した場合、噴射用開口部と操作用凹部との間に位置するキャップ本体の上端部近傍の側壁を両側から指などで挟み、多少力を加えるだけで、容器からキャップ本体を取り外すことができる。これは、上記の持ち方をすることにより、キャップ本体の下端部に形成された容器への嵌合部が、挟んだ方向とは逆向き、すなわち容器に対して外向きに開く作用を受けるからである。
【0034】
図18は、本発明の実施形態に係るエアゾール噴射装置を示す斜視図である。図18に示したエアゾール噴射装置は、エアゾール容器10及びキャップ1により構成されている。容器10には、塗料、殺虫剤、芳香剤、脱臭剤、家庭用洗浄剤、防カビ剤、除菌剤、医薬品、化粧品、医薬部外品などの被噴射剤及び液化プロパンガス、液化ブタンガス、代替フロンガス、高圧の窒素ガス、炭酸ガスなどの噴射用ガスが収められている。また、図示しないが、容器10の頭部領域には、内部にバルブ機構が設けられており、容器10の中心軸に沿って、上向きに付勢されたバルブステムの一端が突出している。
【0035】
このエアゾール噴射装置は、上記実施形態に示したように(図2参照)、エアゾール容器10の肩部に形成された巻締め部10aに、キャップ本体11の下端部に形成された嵌合部11dが嵌め合わされて、エアゾール噴射装置として組み立てられている。エアゾール噴射装置の非使用時、通常の使用時、内容物の排出時の状態及び操作はすでに説明したとおりである。このエアゾール噴射装置には、上記実施形態のエアゾール容器用キャップを用いることができる。
【0036】
また、キャップ本体に設けた嵌着部31は必ずしも必要ではなく、省略することもできる。但し、これを省略したときは、内容物を排出している間、エアゾール容器とキャップとを押しつけた状態に手等により保持する必要がある。
【0037】
上記実施形態においては、内容物排出時にキャップ本体の嵌着部が嵌合する箇所は、エアゾール容器のマウンテンキャップにおけるバルブ機構装着用の巻締め部であったが、これに代えて、キャップ本体の上端部を拡張することにより、容器胴部とマウンテンキャップとの結合用巻締め部とすることもできる。この場合も、上記実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施形態に係るキャップを備えたエアゾール噴射装置の非使用時の状態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)正面図である。
【図2】図1に示したエアゾール噴射装置の断面図であり、(a)は図1(b)のIIa-IIa線に沿う断面図、(b)は図2(a)のIIb-IIb線に沿う断面図、(c)は(b)の一部を拡大して示す図である。
【図3】図1に示したキャップのキャップ本体を示す図であり、(a)は上から見た斜視図、(b)は下から見た斜視図、(c)は操作用凹部の側から見た背面図である。
【図4】図3のキャップの断面図であり、(a)は図3(c)のIVa-IVa線に沿う断面図、(b)は図4(a)のIVb-IVb線に沿う断面図である。
【図5】図1に示したキャップのボタンを示す図であり、(a)は上から見た斜視図、(b)は下から見た斜視図、(c)は正面図、(d)は側面図である。
【図6】図5のボタンの断面図であり、(a)は図5(c)のVIa-VIa線に沿う断面図、(b)は図6(a)のVIb-VIb線に沿う断面図である。
【図7】図1に示したキャップを下から見た斜視図である。
【図8】図1に示したエアゾール噴射装置の通常使用時の状態(噴射状態)を示す図であり、(a)は斜視図、(b)正面図である。
【図9】図8に示したエアゾール噴射装置の断面図であり、(a)は図8(b)のIXa-IXa線に沿う断面図、(b)は図9(a)のIXb-IXb線に沿う断面図である。
【図10】図1に示したエアゾール噴射装置の内容物排出の操作の一例を示す図であり、キャップ本体を容器から取り外した状態を示す斜視図である。
【図11】図10に続く排出操作を示す図であり、(a)は容器及びボタンをキャップ本体に当てがった状態を示す斜視図、(b)は容器をキャップ本体に対して押し付けた状態を示す正面図である。
【図12】図11(b)に示した状態の断面図であり、(a)は図11(b)のXIIa-XIIa線に沿う断面図、(b)は図12(a)のXIIb-XIIb線に沿う断面図である。
【図13】図11に続く排出操作を示す図であり、排出後に容器をキャップ本体から外した状態を示す斜視図である。
【図14】本発明に係るキャップの他の形態について、図13と同様の操作をした場合を示す斜視図である。
【図15】図1に示したエアゾール噴射装置の内容物排出操作の他の例を示す図であり、(a)はキャップ本体を容器に対して押し付けた状態を示す斜視図、(b)は排出後にキャップ本体を容器から外した状態を示す斜視図である。
【図16】本発明に係るキャップのさらに他の形態について、排出操作のためにキャップ本体を容器から取り外した状態を示す斜視図である。
【図17】本発明の他の実施形態に係るキャップを備えたエアゾール噴射装置の斜視図である。
【図18】本発明の一実施形態に係るエアゾール噴射装置を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0039】
1、1’ エアゾール容器用キャップ
10 エアゾール容器
11、11’ キャップ本体
11a 囲繞壁
11b 噴射用開口部
11c 操作用凹部
11d 嵌合部
12 ボタン
12a 噴射ノズル
12b 周壁
12c 上壁
12d 外フランジ
13a 巻締め部
10a 巻締め部
10c マウンテンキャップ
15 ボタン装着部
15a 筒状部
15b 内フランジ
16 バルブステム
17 接続部
30 空所
31 嵌着部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器に装着されるキャップ本体と、前記エアゾール容器のバルブステムに取り付けられるボタンとを備えたエアゾール容器用キャップであって、
前記キャップ本体は、前記エアゾール容器に装着された状態において前記ボタンを囲む囲繞壁を備え、該囲繞壁は、前記エアゾール容器に装着するための嵌合部と、噴射用開口部と、手指を受け入れる操作用凹部と、前記ボタンが装着されるボタン装着部とを備え、
前記ボタンは、手指による押し下げ操作を受ける上壁と、該上壁から下方へ延びる周壁と、該周壁から径方向外向きに突出した外フランジと、前記エアゾール容器のバルブステムに嵌合される接続部と、前記接続部を介して前記エアゾール容器の内容物を噴射する噴射ノズルとを備え、
前記ボタン装着部は、前記ボタンを上下方向に案内する筒状部と、装着されたボタンの外フランジより上の位置で前記筒状部から径方向内方へ突出した内フランジとを備え、前記ボタンを下方へ抜け出し可能に収容しており、
前記外フランジと内フランジとは、前記エアゾール容器及びキャップ本体の一方が他方に対して倒立状態で接近し少なくとも噴射のためのステム押し下げ距離だけ離間している状態で、相互に当接するように位置決めされており、前記噴射用開口部は、非使用状態及び通常噴射状態において前記噴射ノズルに臨む位置にあり、前記倒立状態での外フランジと内フランジとの当接時に前記噴射ノズルより容器本体側に位置するように形成されていることを特徴とするエアゾール容器用キャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体の正立状態において、前記内フランジの上端から前記嵌着部の下端までの距離が、内容物噴射時の前記ボタンにおける前記外フランジの上端から前記エアゾール容器のマウンテンキャップにおける巻締め部の下端までの距離に等しくされていることを特徴とする請求項1に記載のエアゾール容器用キャップ。
【請求項3】
噴射用内容物を含むエアゾール容器に、請求項1又は2に記載のキャップが装着されていることを特徴とするエアゾール噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2008−7143(P2008−7143A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−177859(P2006−177859)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】