説明

エアゾール容器

【課題】 容易な残ガスの抜き取り操作が可能な機構を簡単な構造で実現することを課題とする。
【解決手段】 容器本体と、容器本体のステムに嵌合するノズルヘッドと、容器本体の上端部に嵌合装着する外装筒の上端に内鍔状の頂壁を介してノズルヘッドの下降上昇変位のガイドの機能を果たすガイド筒を垂下設したキャップ体を有するエアゾール容器において、キャップ体の後部で、外装筒の所定高さ位置を基端部として上方に延びる左右一対の縦スリットと該縦スリットの終端位置で横方向に形成される横スリット若しくは該終端位置からガイド筒の下端に至る壁欠部で3方を囲んで、外装筒壁の基端部位置から頂壁を経てガイド筒の上端部に至る範囲内の少なくとも頂壁に至る部分を舌片状の可動片とし、この可動片の先端部を押圧状に内側に変形させてノズルヘッドの後部部分に係合して、ステムが押し下げ状態に保持されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残ガスの抜き取り操作を簡単にできるようにしたエアゾール容器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえば特許文献1には、エアゾール容器本体の上端部にアンダーカット状に組付け固定したプロテクターリングを取り外した後に、カバーキャップを被せてノズルヘッドを押下げ位置に維持するようにして残ガスを抜き取るようにしたエアゾール容器に係る発明が記載されている。
【特許文献1】特開2001−2154号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のエアゾール容器では、プロテクターリングの取り外しが容易でないこと、このためプロテクターリングに取り外しを容易にするための引き裂き帯や、剥ぎ取りリングを付設する必要があり構造が複雑になる、と云う問題がある。
【0004】
そこで本発明の技術的な課題は、容易な残ガスの抜き取り操作が可能な機構を簡単な構造で実現すること、にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の課題を解決するための本発明の構成は、
容器本体と、この容器本体のステムに嵌合し前向きの噴出口を有するノズルヘッドと、容器本体の上端部に嵌合装着する外装筒の上端に内鍔状の頂壁を介して、ノズルヘッドが挿通してこのノズルヘッドの下降上昇変位のガイドの機能を果たすガイド筒を垂下し、外装筒とガイド筒のノズルヘッドの噴出口に対向する位置に噴出液が通過する欠部を形成したキャップ体を有するエアゾール容器において、
キャップ体の後部で、外装筒の所定高さ位置を基端部として上方に延びる左右一対の縦スリットと該縦スリットの終端位置で横方向に形成される横スリット若しくは縦スリットの終端位置からガイド筒の下端に至る壁欠部で3方を囲んで、外装筒壁の基端部位置から頂壁を経てガイド筒の上端部に至る範囲内の少なくとも頂壁に至る部分を舌片状の可動片とすること、
この可動片の先端部を押圧状に内側に変形させてノズルヘッドの後部部分に係合して、ステムが押し下げ状態に保持されるように構成すること、
にある。
【0006】
本発明の上記構成により、通常の使用ではノズルヘッドを指先で押圧状に、キャップ体のガイド筒に沿って押下げることにより、容器本体のステムが下降し、エアゾールバルブが開いて、内容液を噴出口から噴出させることができる。
【0007】
使用後の、残ガスの抜き取り操作にあたっては、ノズルヘッドを押し下げた状態で可動片の先端部を指先で押圧状に内側に変形させてノズルヘッドの後部部分に係合する。そしてこの係合によりステムが下降変位した状態で固定され、残ガスの抜き取りができる。
【0008】
本発明の構成では、外装筒の所定高さ位置を基端部として上方に延びる左右一対のこれら一対の縦スリットと、縦スリットの終端位置で横方向に形成される横スリット若しくは終端位置からガイド筒の下端に至る壁欠部で3方を囲んで、舌片状の可動片を形成しており、この可動片は基端部を支点として片持ち梁状に可動可能となる。
【0009】
ここで、可動片の配設範囲は、可動片の変形性、ノズルヘッドとの係合性等を考慮して、外装筒壁の基端部位置から頂壁を経てガイド筒の上端部に至る範囲内で、所定の範囲を設定することができるが、少なくとも頂壁に至る部分を可動片とすることにより、外装筒壁から直角状に屈曲する頂壁部分を利用して可動片の先端に係合するための係合片を形成して、ノズルヘッド後部との係合を確実に達成することが可能となる。
【0010】
ここで、可動片の上端部は一対の縦スリットと、横スリット若しくはガイド筒の下端に至る壁欠部で形成される構成であり、キャップ体の成形性、ガイド筒の剛性等を考慮して横スリットか壁欠部を選択することができるが、特にガイド筒の上端部までを可動片とする場合には射出成形での一体成形の点から壁欠部を選択するのが好ましい。
【0011】
また本発明の別の構成は、ノズルヘッドは、有頂筒状の外筒を有し、この外筒頂部から内側にステムに外嵌する円筒状の嵌合筒を垂下設した構成とし、外筒の後部でこの外筒壁を貫通して係合孔を形成し、この係合孔に可動片の先端部を係合する構成としたものである。
【0012】
上記構成は可動片の先端部を係合するための具体的な構成にかかるものであり、外筒壁に貫通形成された係合孔を利用して可動片の先端部を確実に係合することができる。
【0013】
また本発明の別の構成は、外装筒壁の基端部位置からガイド筒の上端部に至る部分を可動片とし、可動片の先端部をフック状に形成することにある。
【0014】
本発明のキャップ体は、外装筒の上端に内鍔状の頂壁を介してガイド筒を垂下する構成であるので、ガイド筒の上端部に至る部分を可動片とすることにより可動片の先端部をフック状に形成することができ、このフック状の先端部を上述した係合孔等に引っ掛けるようにしてより確実に、ノズルヘッドの後部に係合させることができる。
【0015】
また本発明の別の構成は、可動片を連結小片により破断可能に隣接する外装筒壁、若しくは頂壁に連結する構成としたものである。
【0016】
上記構成により、連結小片により、可動片を少々押圧しても変形しないので、通常の使用の際に誤って、可動片をノズルヘッドに係止してしまうと云うような誤操作を確実に防止することができる。
内容液を使い終わって、残ガスを抜き取る際には連結小片を破断して可動片を変形させてノズルヘッドの後部に係合する。
【発明の効果】
【0017】
本発明は上記した構成となっているので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、ノズルヘッドを押し下げた状態で可動片の先端部を指先で押圧状に内側に変形させてノズルヘッドの後部部分に係合することにより、可動片と云う簡単な構造で、残ガスの抜き取操作を容易に実行することができる。
【0018】
外筒の後部でこの外筒壁を貫通して係合孔を形成し、この係合孔に可動片の先端部を係合する構成としたものにあっては、この外筒壁に貫通形成された係合孔を利用して可動片の先端部を確実に係合することができる。
【0019】
ガイド筒の上端部に至る部分までを可動片としたものにあっては、可動片の先端部をフック状に形成することができ、このフック状の先端部を係合孔等に引っ掛けるようにしてより確実に、ノズルヘッドの後部に係合させることができる。
【0020】
可動片を連結小片により破断可能に隣接する外装筒壁、若しくは頂壁に連結する構成としたものにあっては、通常の使用の際に誤って、可動片をノズルヘッドに係止してしまうと云うような誤操作を確実に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を実施例に沿って、図面を参照しながら説明する。
図1〜図8は本発明のエアゾール容器一実施例を示すものであり、図1は斜視図、図2は縦断側面図、図3は縦断正面図、図4は背面図、図5は平面図である。
この容器は容器本体1と、ノズルヘッド11とキャップ体21の3つの部材から構成される。
【0022】
容器本体1は、有底円筒状の胴部の上端部に環状リム3を有し、頂部中央にエアゾールバルブ(図示省略)に連結するステム2が起立配設されている。
【0023】
ノズルヘッド11は、有頂長円筒状の外筒14を有し、外筒14の頂部12からこの外筒14の内側にステム2に外嵌する円筒状の嵌合筒13を垂下設している。また、このノズルヘッド11の前部では、外筒14の壁の一部を円錐台状に凹ませて、嵌合筒13の壁と一体連設し、この一体連設部分に嵌合筒13に連通する貫通横孔13aを形成し、噴出口15といている。
【0024】
また、頂部12は、前部から後部にかけて下方に傾斜していると共に、前端部および左右端部から中央部にかけて凹むような形状として、指先によるノズルヘッド11の押下げ操作をし易い形状としている。また、外筒14の左右側面の下端部近傍には一対のガイド突片16が突設されている。
【0025】
また、外筒14の後部上端部には壁を貫通して、後述する可動片36の先端部が挿通して係合する係合孔17が形成されている。
【0026】
キャップ体21は、容器本体1の上端部に嵌合装着する円筒状の外装筒22を有し、この外装筒22の上端から内鍔状の頂壁23を介し、ノズルヘッド11の外筒14に緩やかに外嵌して、下降上昇変位のガイドの機能を果たす、長円筒状のガイド筒31を垂下設している。
【0027】
また、前部では、外装筒22の壁とガイド筒31のノズルヘッド11の噴出口15に対向する位置に噴出液が通過する円形の欠部22a、31aを形成している。また、ガイド筒31の左右側部の下端から上方に、ノズルヘッド11のガイド突片16が係合する一対のガイドスリット32を形成している。
また、ガイド筒31の内周面下端部、ガイドスリット32の後方位置に、左右両側一対の係止突片33が突設されている。この係止突片33はノズルヘッド11の外筒14の下端面に係合して、一端ガイド筒31内に挿通したノズルヘッド11の抜け落ちがないようにしている。
【0028】
また、本実施例ではキャップ体21の後部で、頂壁23を下方に凹ませるようにして凹部24を形成し、この凹部24を利用して、エアゾール容器の後方から指をノズルヘッド11の頂部12に当てて押下げ操作が容易にできるようにしている。
【0029】
また、この凹部24が形成されたキャップ体21の後部には、外装筒22の所定高さ位置を基端部25として、この基端部25から頂壁23を経て、ガイド筒31の上端部に至る範囲に、基端部25を支点とした舌片状の可動片36を配設している。
【0030】
この可動片36は、基端部25から上方に延びる左右一対の縦スリット38vと、ガイド筒31の上端部から下端に至る部分の周壁を欠部とした壁欠部31bにより3方を囲んで、キャップ体21を射出成形で一体成形を容易にできるように形成されている。
【0031】
このように、頂壁23を経てガイド筒31の上端部に至る範囲を可動片36とすることにより、可動片36の先端部をフック状の形状にすることができる。
また、本実施例では外装筒22の上端で、可動片36の両側部分を連結小片37で隣接する外装筒22の壁に一体連設する構成とし(図4中の拡大図参照)、可動片36に指先で大きな力を作用させてこの連結小片37を破断しないと、可動片36を内方に押込めないようにしている。
【0032】
次に、上記説明した容器本体1とノズルヘッド11とキャップ体21の一般的な組み立ては、まず、ガイド突片16をガイドスリット32に位置合わせた状態で、ノズルヘッド11をガイド筒31の下方から、挿通する。
一端挿通すると、ノズルヘッド11は係止突片33の係止機能により簡単に抜け落ちることなく、ガイド筒31内に保持される。
【0033】
そして、このようにノズルヘッド11をガイド筒31内に挿通した状態で、キャップ体21をノズルヘッド11と共に、容器本体1の上端部に装着する。この装着状態では、ノズルヘッド11の嵌合筒13が段部13bを利用して押下げ可能にステム2に外嵌し、外装筒22の下端部が容器本体1の環状リム3に係止状に嵌着する。(図2、図3参照)
【0034】
そして、図2、図3に示すような組み立て状態で、指先でノズルヘッド11の頂部12を押し下げると、ステム2が下降して(図6参照)エアゾールバルブが開き、ステム2、嵌合筒13、貫通横孔13aを経て噴出口15から内容液が噴出する。この押下げ操作は、ガイド突片16のガイドスリット32への係止によりスムーズに達成することができる。
【0035】
そして、内容液を使い終わって残ガスの抜き取り操作をする際には、ノズルヘッド11を指先で押し下げた状態で、フック状の先端部が係合孔17を挿通するように、可動片36の上端部を、連結小片37を破断しながら内方に押込む(図7中の白抜き矢印参照)。そして、ノズルヘッド11の指先による押し下げ力を解除すると、ステム2に作用する上方付勢力により、ノズルヘッド11が少し上方変位し、可動片36のフック状の先端部が係合孔17に係合する(図8参照)。そしてこの係合によりステム2が下降変位した状態で固定され、残ガスの抜き取りができる。
可動片36のフック状の先端部が引っ掛かるようにして係合孔17に係合するので、この係合状態を安定して、確実に保持することができる。
【0036】
なお、上記説明では、ノズルヘッド11とキャップ体21を容器本体1に装着した状態で可動片36を係合孔17に係合する手順を説明したが、キャップ体21と共にノズルヘッド11を容器本体1から取り外した状態で可動片36を係合孔17に係合し、容器本体1に再装着することもできる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態を実施例に沿って説明したが、本発明の実施の態様はこれら実施例に限定されるものではない。
たとえば、上記実施例ではガイド筒31の上端部を含めて、可動片36とするようにしたが、頂壁23までの部分を可動片36としても、外装筒22から直角状に屈曲する頂壁23部分を利用して係合機能を発揮させることができる。
また、使用態様を考慮して連結小片を省略することもできる。
【0038】
また、ノズルヘッド11とキャップ21の形状はさまざまな形態のものを使用することができ、上記実施例ではキャップ体21において噴出液の通過のための円形の欠部22a、31aを形成しているが、前部において頂壁23を下方に凹ませるようにして凹部を形成して欠部とすることもできる
【産業上の利用可能性】
【0039】
以上説明したように、本発明のエアゾール容器は簡単な構造で残ガスの抜き取り操作を容易にできるようにしたものであり幅広い用途への展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は本発明のエアゾール容器の一実施例の斜視図、(b1)、(b2)それぞれキャップ体の斜め前方からと斜め後方からの斜視図、(c)はノズルヘッドの斜視図である。
【図2】図1の容器の縦断側面図である。
【図3】図1の容器の縦断正面図である。
【図4】図1の容器の背面図である。
【図5】図1の容器の平面図である。
【図6】図1の容器で、ノズルヘッドを押下げた状態を示す縦断側面図である。
【図7】図1の容器で、可動片の先端部の係合過程を示す縦断側面図である。
【図8】図1の容器で、可動片の先端部の係合状態を示す縦断側面図である。
【符号の説明】
【0041】
1 ;容器本体
2 ;ステム
3 ;環状リム
11;ノズルヘッド
12;頂部
13;嵌合筒
13a;貫通横孔
13b;段部
14;外筒
15;噴出口
16;ガイド突片
17;係合孔
21;キャップ体
22;外装筒
22a;欠部
23;頂壁
24;凹部
25;基端部
31;ガイド筒
31a;欠部
31b;壁欠部
32;ガイドスリット
33;係止突片
36;可動片
37;連結小片
38v;縦スリット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体(1)と、該容器本体(1)のステム(2)に嵌合し前方に噴出口(15)を有するノズルヘッド(11)と、前記容器本体(1)の上端部に嵌合装着する外装筒(22)の上端に内鍔状の頂壁(23)を介して、前記ノズルヘッド(11)が挿通して該ノズルヘッド(11)の下降上昇変位のガイドの機能を果たすガイド筒(31)を垂下し、前記外装筒(22)とガイド筒(31)の前記ノズルヘッド(11)の、前記噴出口(15)に対向する位置に噴出液が通過する欠部を形成したキャップ体(21)を有するエアゾール容器において、前記キャップ体(21)の後部で、外装筒(22)の所定高さ位置を基端部(25)として上方に延びる左右一対の縦スリット(38v)と、該縦スリット(38v)の終端位置で横方向に形成される横スリット若しくは該終端位置からガイド筒(31)の下端に至る壁欠部(31b)で3方を囲んで、前記外装筒(22)の壁の前記基端部(25)位置から前記頂壁(23)を経て前記ガイド筒(31)の上端部に至る範囲の少なくとも前記頂壁(23)に至る部分を舌片状の可動片(36)とし、該可動片(36)の先端部を内側に変形させて前記ノズルヘッド(11)の後部部分に係合して、ステム(2)が押し下げ状態に保持されるように構成したことを特徴とするエアゾール容器。
【請求項2】
ノズルヘッド(11)は、有頂筒状の外筒(14)を有し、該外筒(14)の頂部(12)から該外筒(14)内側にステム(2)に外嵌する円筒状の嵌合筒(13)を垂下設した構成とし、前記外筒(14)の後部で該外筒(14)の壁を貫通して係合孔(17)を形成し、該係合孔(17)に可動片(36)の先端部を係合する構成とした請求項1記載のエアゾール容器。
【請求項3】
外装筒(22)の壁の基端部(25)位置からガイド筒(31)の上端部に至る部分を可動片(36)とし、該可動片(36)の先端部をフック状に形成した請求項1または2記載のエアゾール容器。
【請求項4】
可動片(36)を連結小片により破断可能に隣接する外装筒(22)の壁、若しくは頂壁(23)に連結する構成とした請求項1、2または3記載のエアゾール容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−273534(P2008−273534A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−116074(P2007−116074)
【出願日】平成19年4月25日(2007.4.25)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】