説明

エアゾール組成物およびエアゾール組成物が充填されたエアゾール式噴射装置

【課題】熟練者でなくても取り扱いが簡便であって、誰でも容易に使用でき、携帯にも便利であり使い勝手が良く、しかも微細な噴霧を可能とし、かつ噴射開始から使い切るまでの間、細分化された粒子の状態が一定に保たれるようにした、
エアゾール組成物、およびこのエアゾール組成物をパッケージング化したエアゾール噴射装置を提供する。
【解決手段】成形品離型剤をエアゾール組成物とした。このエアゾール組成物をエアゾール容器内に充填した。エアゾール容器内には、液化ジメチルエーテルおよび水溶性離型剤からなる液相部、圧縮ガスからなる気相部が充填され、気相部の占める割合を液相部より大とし、液化ジメチルエーテルを水溶性離型剤の安定性を損ねる量より少なくしても水溶性離型剤を使い切るまで均一に噴霧可能とした。エアゾール容器にベーパータップオリフィス構造のバルブを設け、微細化した霧を噴霧可能とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、成形品の離型剤として用いられるエアゾール組成物および組成物の水溶性離型剤を成形型の所定部分に噴射して均一に塗布し、成形品を型から離型させるエアゾール式噴射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム、プラスチック工場等では、目的、用途に合わせ各種形状の成形品を製造している。周知のように、成形は成形材料を成形型のキャビティに充填して行われ、成形完了後は成形品を型から取り出す。
【0003】
この場合、成形品を離型しやすいように、予め成形型に離型剤を塗布している。この離型剤としては、油溶性のものが大部分であるが、環境面および性能面から水溶性タイプのものが開発されている。
【0004】
この水溶性の離型剤を成形型の対象面に塗布する場合、乾燥後に十分な効果を発揮させるためには微細な霧で均一に塗布する技術が要求される。
【0005】
現在、大規模な工場では噴霧設備を用いて離型剤を塗布している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、噴霧設備を用いての離型剤塗布作業はコンプレッサーによる配管中のエアーの流量、圧力の変動があり、塗布作業に必要な噴霧状態を得るためにはその度ごとに調整等が必要となり作業者の熟練度や煩雑さがあるのが現状である。
また、一定の噴霧状態が得られない場合は塗布面の仕上がり状態が異なってしまうなどの課題があった。
簡易な設備として樹脂製の小さな簡易ポンプ等を利用したスプレー方式が考えられる。しかしながら、簡易ポンプでは噴射の際の微細化が困難である、という課題があった。
【0007】
このようなことから、性能の高い水溶性離型剤を、その効果を十分に発揮できるような塗布面を形成させるために特殊なエアゾール組成物、およびエアゾール式の噴射装置の開発が期待されている。
【0008】
この発明は上記のことに鑑み提案されたもので、その目的をするところは、熟練者でなくても取り扱いが簡便であって、誰でも容易に使用でき、携帯にも便利であり使い勝手が良く、しかも誰が使用しても離型剤の効果が発揮されるような同じ状態の霧が得られ微細な噴霧を均一に塗布することを可能とし、かつ噴射開始から使い切るまでの間、細分化された粒子の状態が一定に保たれるようにした、エアゾール組成物、およびこのエアゾール組成物をパッケージング化したエアゾール噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の本発明は、 エアゾール容器内に充填され、かつ成形品の離型に用いられるエアゾ−ル組成物であって、
前記エアゾール容器内には、液相部と気相部が充填され、
液相部は、噴射剤としての液化ジメチルエーテルおよび水溶性離型剤からなり、気相部は噴射剤としての圧縮ガスからなることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1記載のエアゾール組成物において、前記エアゾール容器内の気相部の占める割合は前記液相部の占める割合より大としたことを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項1または2記載のエアゾール組成物において、前記気相部は前記エアゾール容器容積全体の60体積%以上、前記液相部は40体積%以下としたことを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項1〜3いずれか1項記載のエアゾール組成物において、前記液化ジメチルエーテルは前記液相部の25体積%以下、前記水溶性離型剤は75体積%以上としたことを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項1〜4いずれか1項記載のエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器であって、
このエアゾール容器に設けたバルブはベーパータップオリフィス構造のバルブであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の本発明にかかるエアゾール組成物は、エアゾール噴射剤として水溶性離型剤に対し溶解性の高い液化ジメチルエーテルを使用し、水溶性離型剤が析出してしまうことがないようにし、長期の安定保存を可能としている。
請求項2〜4記載の本発明によれば、気相部の占める割合を液相部より大きくしたため、液相部の液化ジメチルエーテルを水溶性離型剤の安定性を損ねる量より少なくし、液相部の25体積%以下としても使い始めから使い切るまで水溶性離型剤をほぼ均一に変わらない状態で噴霧することができる。
請求項5記載の本発明によれば、霧を微細化できるようにエアゾールバルブはベーパータップと呼ばれる気相放出経路を備えたものを使用する。
エアゾール容器内の気相部の占める割合をエアゾール容器容積全体の60体積%以上としここに圧縮ガスを充填することにより、使い初めから使い切るまでほぼ均一に変わらない状態で微細な霧を噴霧したい対象面に塗布することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に沿って本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(a)は本発明の一実施例にかかるエアゾール式噴射装置の概略断面図を示す。
【0013】
図1(a)において1は光を透過しない密閉状であって耐圧性のエアゾール容器であり、このエアゾール容器1は有底円筒状の容器本体1aと、その上方に一体に設けられた逆漏斗状の上部1bとからなり、上部1bの中央部には外部に充填物を噴射する押しボタン式のバルブ3が設けられている。このバルブ3は、ノズル5を有する押しボタン6、容器1内に位置するハウジング7等を備えている。
【0014】
エアゾール容器1の素材としては腐食防止の観点から好ましくはアルミニウムが用いられ、かつ内部には噴射剤として利用される液化ジメチルエーテルと水溶性離型剤が充填される。符号2はその液相部を示す。また、気相部2’としての圧縮ガスも充填されている。
【0015】
エアゾール容器1の上部1bは容器本体1aと予め一体形成してなるが、容器1としては、別体の天蓋を一体化するようにしたものでも良い。
【0016】
また、エアゾール容器1の内面には好ましくはエポキシポリアミドイミドの如き耐食性の樹脂4が被覆される。
【0017】
このように、エアゾール容器1をアルミニウムで形成し、かつその内面に耐食性の樹脂4をコーティングすることにより、内部の液相部2に対して十分な経時耐久性を確保することができる。
【0018】
エアゾール容器1内に充填される液相部2は、前記したように水溶性離型剤と噴射剤としての液化ジメチルエーテルとからなる。水溶性離型剤のほとんどはエアゾール噴射剤である液化ガスとの相溶性が低いため、微細な霧を得るために十分な噴射剤の充填ができない。本発明では噴射剤の中でも特に水溶性離型剤に対し溶解性の高い液化ジメチルエーテルを使用している。また、液相部2は缶内容積の40体積%以下としている。
【0019】
エアゾール容器1内の液相部2の液化ジメチルエーテルと水溶性離型剤の原液との充填割合については、液化ジメチルエーテルの充填量は水溶性離型剤原液の安定性を損ねる量より少なくする。液化ジメチルエーテルを水溶性離型剤原液中に充填していくと、ある一定以上の量を越えると水溶性離型剤原液が液化ジメチルエーテルの影響を受け、分離、固形分の析出といった現象がおこり、水溶性離型剤としての性能が発揮できなくなるためである。
一般的に液化ジメチルエーテルは水に対して約35体積%程度の溶解度をもつといわれているが水溶性離型剤に対しては35体積%の充填は困難である。
【0020】
したがって、本発明では、液相部2において液化ジメチルエーテルは25体積%以下、水溶性離型剤の原液75体積%以上としている。
【0021】
しかしながら、この液化ジメチルエーテルを25体積%以下とした組成では、エアゾールを作成しても離型剤の性能を発揮する十分な微細な霧は得られない。微細な霧を噴霧するためには図1(b)に示すように、通常のメインオリフィス7bに加えてベータータップオリフィス7aとよばれる構造をもつハウジングを備えたバルブの選定が必要となる。
【0022】
一般的にベーパータップオリフィス構造をもつバルブ3を使用する条件として、十分な液化ガスの量が必要となる。液化ジメチルエーテル25体積%以下では必要量としては不十分である。
【0023】
量が少ないためにおこる不具合は
a.噴射力が弱く細かい霧にならない
b.使い初めと使用中の霧の状態が異なりすぐに弱くなっていく
c.最後まで使いきれずに液が残ってしまう
などの欠点がある。
【0024】
従って、本発明者は鋭意検討した結果、噴射剤として液化ジメチルエーテルに加えて、気相部2’として、圧縮ガスである窒素を併用することによりこの問題の解決に至った。
【0025】
使用される窒素の量は霧の微細化に十分貢献できるように十分な空間体積を確保し、その体積はエアゾール容器1の内容積全体に対して60体積%以上とした。
【0026】
また、窒素を充填することによる製品圧力は25℃において0.4〜0.8MPaになるように設計した。
【0027】
これによってベーパータップオリフィス構造をもつバルブ3の使用が可能となり離型剤の効果が十分に発揮される微細な霧の噴霧が可能となる。
また、この構造をとることにより使い始めから使い切るまで変わらない均一噴霧が可能となった。
【0028】
図2はベータータップオリフィス構造のバルブ3の構成例を示す。
【0029】
樹脂の成形品からなるバルブ3内にはスプリング8の一端が係止され、スプリング8は他端はステム9の下部に係止され、ステム9は、図1に示した押しボタン6を押し下げるとスプリング8のバネ力に抗して下動し、押し下げ力を解除するとバネ力により上動し、復帰するようになっている。
【0030】
ステム9内には容器1内の充填物を外部に導出する孔9aが軸方向に形成され、かつ下方部に孔9aと直交する方向にステムオリフィス9bが形成されている。このステムオリフィス9bは、常時はその外周部に設けられたステムラバー10によって塞がれており、ステム9を下動させるとハウジング7内の中空室7cに位置し、容器1内とステム9の孔9aとが連通するようになっている。
【0031】
ハウジング7の側部には中空室7cと連通する例えば0.3mm以上のベーパータップオリフィス7aが形成され、かつハウジング7内の下方部には中空室7c、エアゾール容器1内と連通する例えば2.0mm以下のメインオリフィス7bが形成され、かつハウジング7はチューブ11に接続されている。そして、ステム9が押し下げられるとメインオリフィス7b、ベーパータップオリフィス7aを介し充填物がステムオリフィス9b、孔9aを通って図1に示したノズル5から外部に噴出するように構成されている。
【0032】
この場合、噴射剤としての液化ジメチルエーテルの不足を解消するために、図1に示すように、エアゾール容器1内に窒素からなる圧縮ガスを封入しているため、内容量を缶内容積に対して40体積%以下にし、液化ジメチルエーテルを25体積%以下としても、使用初期から使い切るまでほぼ同じ状態の微粒子を噴射させることができるようにしている。
【0033】
なお、上記実施例において、エアゾール容器1は図示例の形状に限定されるものではない。また、圧縮ガスとして窒素を使用したが、窒素以外に、例えば炭酸ガス、酸素等を使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(a)は本発明の一実施例の概略断面図、(b)はバルブの概略断面図を示す。
【図2】バルブの構成を示す。
【符号の説明】
【0035】
1 エアゾール容器
1a 容器本体
1b 上部
2 液相部
2’ 気相部
3 バルブ
4 耐食性樹脂
5 ノズル
6 押しボタン
7 ハウジング
7a ベーパータップオリフィス
7b メインオリフィス
7c 中空室
8 スプリング
9 ステム
9a 孔
9b ステムオリフィス
10 ステムラバー
11 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアゾール容器内に充填され、かつ成形品の離型に用いられるエアゾ−ル組成物であって、
前記エアゾール容器内には、液相部と気相部が充填され、
液相部は、噴射剤としての液化ジメチルエーテルおよび水溶性離型剤からなり、気相部は噴射剤としての圧縮ガスからなることを特徴とするエアゾール組成物。
【請求項2】
請求項1記載のエアゾール組成物において、前記エアゾール容器内の気相部の占める割合は前記液相部の占める割合より大としたことを特徴とするエアゾール組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載のエアゾール組成物において、前記気相部は前記エアゾール容器容積全体の60体積%以上、前記液相部は40体積%以下としたことを特徴とするエアゾール組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれか1項記載のエアゾール組成物において、前記液化ジメチルエーテルは前記液相部の25体積%以下、前記水溶性離型剤は75体積%以上としたことを特徴とするエアゾール組成物。
【請求項5】
請求項1〜4いずれか1項記載のエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器であって、
このエアゾール容器にベーパータップオリフィス構造のバルブを設けたことを特徴とするエアゾール式噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−155525(P2008−155525A)
【公開日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−348115(P2006−348115)
【出願日】平成18年12月25日(2006.12.25)
【出願人】(506427808)ケムリースジャパン株式会社 (1)
【出願人】(500123348)株式会社東洋化学商会 (3)
【出願人】(595058808)日本瓦斯株式会社 (13)
【Fターム(参考)】