説明

エアゾール装置

【課題】
横方向のブレがないステムの安定した上下動を可能にするとともに、ステムの軸方向と交差する方向から加えられた負荷によるステムの折損事故を効果的に防止するエアゾール装置を得る。
【解決手段】
プッシュダウン式のバルブ機構において、ステム18に、外周環状に鍔部30を突出形成するとともに、ステム18の非押圧時におけるステム18の外周面及び鍔部30と装着室13の内周面との間に、ステム18を傾斜可能とするための傾斜間隔32を設ける。ステム18の非押圧時には、傾斜間隔32内でステム18をステム18の軸方向とは交差方向に5°〜30°傾斜可能とする。ステム18の押圧時には、鍔部30の外周面と装着室13の内周面との間隔を0.2mm〜1.0mmとする傾斜抑制部33を装着室13内に形成し、ステム18の傾斜可能角度を5°未満とし、横ブレを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頭髪用品、人体用品、医薬品、その他の内容物を充填して噴射するためのエアゾール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、エアゾール装置のバルブ機構として、特許文献1に示す如く、エアゾール容器の上部に設けたハウジングの装着室内に、ステムの下端側を上下動可能に挿入配置し、このステムをステムの軸方向に押圧することにより開弁して、エアゾール内容物の噴射を行うプッシュダウン式のバルブ機構が存在する。そして、このプッシュダウン式のバルブ機構においては、ハウジングの装着室内にステムの外周面を密に挿入し、ステムの外周面とハウジングの内周面との間隔を小さくすることにより、ステムの上下動に於てステムの横方向へのブレを防止し、ステムを安定して軸方向に上下動させるようにしたものである。
【0003】
【特許文献1】特開2000−161516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術においては、ステムの軸方向への上下動は横方向にブレることなく安定的に行うことができるものの、ステムを装着室に密に挿入しているため、エアゾール装置の落下等によりステムに軸方向と交差する方向の強い負荷が加えられた場合に、ステムはその負荷を吸収することができず、その負荷によりステムが折損し易いものとなっていた。
【0005】
そこで、本発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、エアゾール容器の落下等によりステムに強い負荷が加えられた場合にも、その強い負荷を有効に吸収し、ステムの折損事故を防止するとともに、ステムの軸方向への押圧時にはステムにブレを生じさせることなく、従来公知のステムと同様に安定した上下動を可能にしようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ハウジングの中央軸方向に形成した装着室内に、ステムスプリングで上方に付勢したステムの下端側を配置し、このステムのオリフィスをステムガスケットにより密閉して上下動可能にステムを配置し、このステムを軸方向に押圧することによりオリフィスとステムガスケットの密閉を解除して開弁し、エアゾール内容物の噴射を行うプッシュダウン式のバルブ機構である。
【0007】
そして、前述の如き従来技術の課題を解決するため、ステムの非押圧時におけるステムの外周面と装着室の内周面との間に、ステムを傾斜可能とするための傾斜間隔を設け、ステムの非押圧時には、傾斜間隔内でステムをエアゾール容器本体の軸方向とは交差方向に5°〜30°傾斜可能としている。従って、ステムの軸方向と交差する方向に強い負荷が加えられた場合には、ステムは傾斜することによって負荷を吸収し、折損を防止することができる。そして、この傾斜時に於てステムは、ステムスプリング及びステムガスケットを弾性変形させながら傾斜するものである。そのため、ステムの非押圧時に、エアゾール装置の落下等によりステムに軸方向と交差する方向の強い負荷が加えられた場合であっても、ステムがステムスプリング及びステムガスケットを弾性変形させながら傾斜間隔内を傾斜するから、この傾斜に伴うステムスプリング、ステムガスケットの弾性変形によって強い負荷を有効に吸収し、ステムの折損事故を防止することが可能となる。
【0008】
また、上記ステムは、装着室への挿入部分に外周環状に鍔部を突出形成している。そして、噴射のためのステムの押圧時には、この押圧により装着室の内方に移動した上記鍔部の外周面と装着室の内周面との間隔を0.2mm〜1.0mmとする傾斜抑制部を装着室の内周面に形成し、この傾斜抑制部に鍔部を移動した状態では、ステムの傾斜可能角度を5°未満としている。従って、押圧時におけるステムの上下動に際して、ステムの横方向へのブレを効果的に防止することができるため、ステムの安定した上下動が可能となる。
【0009】
また、ハウジングには、その中央軸方向に形成した装着室内に流通口を介して上部室と下部室とを形成し、上部室には上記ステムを配置するとともに、下部室には内容物の噴射動作時にもステムの下端部に接触する事のない切替バルブを上下動可能に装着する。また、この切替バルブには、上部室と下部室とを連通する少量流通口を開口するとともに、切替バルブを分離壁に押圧付勢して、流通口を少量流通口の連通以外では閉止する。
【0010】
このように配置することにより、内容物の噴射時には、上記装着室の下部室から上部室内に流入する内容物の流量を少量流通口によって最適な量に抑制することができ、内容物の過剰な噴射を抑制して適度な噴射が可能となる。また、内容物の充填時には、ハウジングの上部室に流入した内容物が、切り替えバルブを充填圧で押し下げて流通口を開口するため、開口した流通口を介して内容物を内袋内に迅速に充填することが可能となる。
【0011】
また、ステムは、鍔部の下方を、下端側を小径としたテーパー部としたものであっても良いし、鍔部の下方を、外径を上下方向で一定とした柱状部としたものであっても良い。すなわち、非押圧時におけるステムの傾斜可能角度が、5°〜30゜に保たれるものであれば良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述の如く構成したものであって、ステムの非押圧時には、ステムの外周面と装着室の内周面との間に、ステムを傾斜可能とするための傾斜間隔を設けており、ステムをその軸方向とは交差方向に5°〜30°傾斜可能としている。従って、エアゾール装置の落下等によりステムにステムの軸方向と交差する方向の強い負荷が加えられた場合であっても、ステムがステムスプリング及びステムガスケットを弾性変形させながら傾斜間隔内を傾斜することができるから、ステムは傾斜しながらその強い負荷を有効に吸収するため、ステムの折損事故を効果的に防止することが可能となる。
【0013】
また、ステムの押圧時には、この押圧により装着室の内方に移動した鍔部の外周面と装着室の内周面との間隔を0.2mm〜1.0mmとする傾斜抑制部を装着室の内周面に形成し、この傾斜抑制部に鍔部を移動した状態では、傾斜抑制部内に鍔部が密に挿入されることとなり、ステムの傾斜角度を5°未満としている。従って、ステムの押圧時には、ステムが横方向にブレることがなく上下動するため、従来公知のステムと同様に安定した上下動が可能となる。
【実施例1】
【0014】
以下、本発明の実施例1を図1〜図4に於て説明すると、(1)はエアゾール容器本体であって、金属で形成した外容器(2)内に、変形容易なプラスチック等で形成した内袋(3)を挿入配置している。この外容器(2)には、その側部の上端を内方環状に略90度折曲して環状の固定片(4)を形成し、以下に説明する蓋体(5)、ハウジング(6)等の部材を固定している。また、上記内袋(3)は外容器(2)の内周面とハウジング(6)の外周面との間に上端部を挿入固定されている。
【0015】
また、上記外容器(2)の上端部には前記固定片(4)によって固定された蓋体(5)を配置しており、この蓋体(5)の内面にはハウジング(6)を固定配置している。そして、このハウジング(6)は、上端部の外周に外周フランジ(7)を突出し、この外周フランジ(7)の下面と内袋(3)の上端縁(8)との間にパッキン(10)を介在させるとともに、このパッキン(10)の上面に外周フランジ(7)の下面に設けた環状リブ(11)を当接して、内袋(3)の内部から外部への内容物の漏洩を防止している。また、内袋(3)の外周と外容器(2)との間にはシールガスケット(12)を介在させ、内袋(3)を外側から加圧するための噴射剤の外部への漏洩を防止している。
【0016】
以下、上記ハウジング(6)について詳細に説明すると、図1に示す如く、ハウジング(6)の装着室(13)は、分離壁(14)に設けた流通口(15)を介して上部室(16)と下部室(17)とを形成している。そして、上記上部室(16)の内部には、ステム(18)を上下動可能に装着している。このステム(18)は、蓋体(5)から上方に突出するステム上部(20)とハウジング(6)内に位置するステム下部(21)とからなり、ステム上部(20)は、オリフィス(22)を密閉したステムガスケット(23)を介して蓋体(5)の外方に突出するとともに、その上端には押釦(24)を装着している。また、ステム下部(21)は装着室(13)の上部室(16)内に配置されており、ステム(18)の下端と上部室(16)の下底との間に介装したステムスプリング(25)により上方に押圧付勢されている。
【0017】
そして、上記ステム(18)には、エアゾール内容物の噴出路(26)をオリフィス(22)と連通して形成しており、この噴出路(26)の上端を、上記押釦(24)のノズル(27)と連通させている。また、オリフィス(22)は、前記ステムガスケット(23)の内周端面(28)によって常時は密閉されており、ステム(18)を押し下げた状態でステムガスケット(23)の内周端面(28)との密接を解除し、装着室(13)の内部と噴出路(26)との連通を可能とするように構成している。
【0018】
また、上記ステム(18)の外周面には、図1に示す如く、装着室(13)への挿入部分に外周環状に鍔部(30)を突出形成するとともに、この鍔部(30)の下方を、下端側を小径としたテーパー部(31)としている。そして、このステム(18)の装着室(13)への挿入部分の外周面と装着室(13)の内周面との間には、ステム(18)の非押圧時に於て、ステム(18)をその軸方向と交差する方向に傾斜可能とするための傾斜間隔(32)を設けており、外部から負荷が加えられた場合には、ステム(18)がその軸方向と交差する方向に5°〜30°傾斜可能となっている。
【0019】
なお、上記テーパー部(31)は、エアゾール装置の落下等の際にステム(18)が傾斜間隔(32)内に於いて最大限に傾斜した場合に、図3に示す如く、テーパー部(31)の外周面と装着室(13)の内周面とが略平行となるようにテーパー加工している。テーパー部(31)をこのように形成することにより、装着室(13)内におけるステム(18)の傾斜間隔(32)を大きく取ることが可能となるため、ステム(18)の傾斜間隔(32)内に於ける傾斜可能角度を大きくすることができる。
【0020】
また、上述の如く、ステム(18)の外周面に形成された鍔部(30)は、ステム(18)の外周面から突出している。そのため、ステム(18)が傾斜する際に、鍔部(30)の外周面が装着室(13)の内周面の上端側と接触して、ステム(18)の5°〜30°の傾斜が妨げられるおそれがある。そこで、本実施例に於ては図1に示す如く、装着室(13)の内周面にリブ等を突出して形成した傾斜抑制部(33)を、装着室(13)の内周面の下側のみに形成配置することにより、傾斜抑制部(33)を形成していない装着室(13)の内周面の上側の内周径を、下側の内周径よりも幅広に形成している。このように形成することにより、鍔部(30)の外周面と装着室(13)の内周面との対向間隔が、テーパー部(31)と装着室(13)の内周面との対向間隔と同様に広いものとなり、ステム(18)を装着室(13)内に於て5°〜30°傾斜させることが可能となる。
【0021】
また、上記装着室(13)の内周面にリブ等を突出して形成した傾斜抑制部(33)は、ステム(18)の押圧時に上記鍔部(30)がこの傾斜抑制部(33)と対向する位置まで移動した際に、傾斜抑制部(33)と鍔部(30)の外周面との間隔が0.2mm〜1.0mmとなる位置に形成している。そのため、ステム(18)の押圧時には、ステム下部(21)はこの狭い間隔内に配置され、ステム(18)の傾斜可能角度が5°未満に制限され、ステム(18)押圧時に於けるステム(18)の横方向へのブレを防止することが可能となる。
【0022】
そして、上記装着室(13)の下部室(17)には、図1に示す如く、切替バルブ(34)をスプリング(35)で分離壁(14)に押圧付勢して上下動可能に装着する。この切替バルブ(34)の上部に少量流通口(36)を開口し、装着室(13)を構成する上部室(16)と下部室(17)とを常時連通する。また、この少量流通口(36)は内容物の噴射量を最適なものとするための寸法に形成し、ステム(18)の噴出路(26)に連通して形成したノズル(27)からの過剰な噴射を行うことがないよう噴射量を抑制している。なお、上記切替バルブ(34)は、上述の如く分離壁(14)に押圧付勢しているため、流通口(15)を少量流通口(36)の連通以外では閉止している。
【0023】
まず、上述の如く構成したものに於て、ステム(18)の非押圧時に、エアゾール装置の落下等によりステム(18)に軸方向と交差する方向の強い負荷が加えられた場合について、図1及び図3に於て説明する。本実施例に於ては、上述の如く、ステム(18)の非押圧時において、ステム(18)の外周面とハウジング(6)の装着室(13)の内周面との間に、ステム(18)を傾斜するための傾斜間隔(32)を設けており、ステム(18)を傾斜間隔(32)内に於て、ステム(18)の軸方向とは交差方向に5°〜30°傾斜可能としている。
【0024】
従って、ステム(18)の非押圧時に、ステム(18)の軸方向と交差する方向の強い負荷が加えられた場合には、ステム(18)が軸方向とは交差方向に傾斜するが、この傾斜にあわせて、図3に示す如く、ステム(18)のオリフィス(22)に密着配置したステムガスケット(23)が、負荷によって弾性変形する。また、ステム(18)と装着室(13)を構成する上部室(16)の下底との間に介装したステムスプリング(25)も、同様に負荷によって弾性変形する。従って、ステム(18)の傾斜に際したステムガスケット(23)及びステムスプリング(25)の弾性変形によって、ステム(18)にかかる強い負荷を吸収することができるから、強い負荷を効果的に軽減して、ステム(18)の折損事故を有効に防止することが可能となる。
【0025】
なお、上述の如く本実施例に於ては、非押圧時におけるステム(18)の傾斜可能角度を、5°〜30°としている。この角度を5゜未満とすると、従来のエアゾール装置と同様に、衝撃を加えられた場合に、ステム(18)が軸方向と交差する方向の負荷を十分に吸収しきれずに折損するおそれがある。また、この角度を30°よりも大きいものとしても、負荷の吸収効果はそれ以上期待できず、ハウジング(6)を大型化するのみとなり、好ましくない。
【0026】
次に、上述の如く構成したものにおいて、通常の噴霧を行う場合について図1及び図2を用いて説明する。まず図1に示す非噴射状態から押釦(24)をステムスプリング(25)の復元力に抗して指等でステム(18)の軸方向に押圧すると、図2に示す如くステムガスケット(23)が変形し、ステムガスケット(23)の内周端面(28)とオリフィス(22)とが分離することにより、オリフィス(22)を開放する。これにより、装着室(13)と噴出路(26)とがオリフィス(22)を介して連通して、装着室(13)内の内容物がオリフィス(22)及び噴出路(26)を通じて、上記ノズル(27)から噴射される。
【0027】
また、上述の如く本実施例においては、ステム(18)の装着室(13)への挿入部分に、外周環状に鍔部(30)を突出形成しており、ステム(18)が軸方向の下方に移動した場合には、この鍔部(30)が装着室(13)内を下方に移動し、図2に示す如く、装着室(13)内の傾斜抑制部(33)に臨ませた位置に移動する。この鍔部(30)の外周面と傾斜抑制部(33)との間隔を0.2mm〜1.0mmとするから、傾斜抑制部(33)に鍔部(30)を移動した状態では、ステム(18)の傾斜可能角度は5°未満となり、押圧時の上下動に際して、ステム(18)の横方向のブレを効果的に防止することができ、ステム(18)の安定した上下動が可能となる。
【0028】
なお、上述の如く本実施例に於ては、ステム(18)の押圧時における傾斜抑制部(33)と鍔部(30)の外周面との間隔を0.2mm〜1.0mmしている。この間隔を0.2mm未満とすると、密に配置された上記傾斜抑制部(33)と鍔部(30)の外周面とが接触し、ステム(18)の上下動が円滑ではなくなる。また、この間隔を1.0mmよりも広いものとすると、ステム(18)の押圧時に横方向のブレが生じて、ステム(18)の安定した上下動が困難なものとなる。
【0029】
また、本実施例に於いては、上述の如く、装着室(13)の下部室(17)には、上部室(16)と下部室(17)とを常時連通する少量流通口(36)を設けた切替バルブ(34)が配置されており、この切替バルブ(34)は分離壁(14)にスプリング(35)で押圧密着しているため、流通口(15)は上記少量流通口(36)の連通以外では連通を遮断している。従って、この少量流通口(36)を、内容物の適量の噴出が可能となるよう小さなものとしておけば、内袋(3)内から装着室(13)の下部室(17)を介して上部室(16)内に流入する内容物は、この少量流通口(36)によって流量を最適な量に抑制される。そのため、ステム(18)の噴出路(26)及びオリフィス(22)の直径が大きなものであっても、必要とされる適量の内容物のみを、装着室(13)を介してオリフィス(22)及び噴出路(26)に導く事になるから、内容物の過剰な噴射を抑制して適度な噴射が可能となる。
【0030】
なお、押圧時にステム(18)が軸方向の下方に移動した際に、上記切替バルブ(34)の上端が、ステム(18)の下端に接触すると、切替バルブ(34)に設けられた少量流通口(36)の上端がステム(18)の下端により閉鎖されて、内容物の下部室(17)から上部室(16)への流入が妨げられるおそれがある。そのため、切替バルブ(34)は、ステム(18)の押圧時に於ても、ステム(18)の下端に接触しない位置に配置することを要する。
【0031】
なお、本実施例の噴射時においては、内容物の噴射量を最適な量に制限するため、上述の如く、上部室(16)と下部室(17)の間に設けられた流通口(15)は、少量流通口(36)の連通以外では連通を遮断している。しかし、内容物の充填時にもこの少量流通口(36)によってのみ上部室(16)と下部室(17)とを連通するとすれば、上部室(16)から下部室(17)を通って内袋(3)内に充填される内容物の量は、少量流通口(36)を通過する量に制限され、内容物の迅速な充填を行うことはできない。そこで、本実施例の充填時においては、以下に詳述の如く、分離壁(14)に押圧付勢した切替バルブ(34)を、充填圧で押し下げて流通口(15)を開口し、この開口した流通口(15)を介して内容物の充填を行うこととしている。
【0032】
以下本実施例に於て内容物の充填を行う場合について、図1及び図4に於て詳細に説明する。まず、ステム(18)の上端から押釦(24)を取り外した後、図4に示す如く、ステム(18)の上端に充填機(37)の充填ノズル(38)を接続することにより、充填ノズル(38)の幅方向中央に貫通形成した連通路(40)とステム(18)の噴出路(26)とを連通させる。なお、この充填ノズル(38)には、ステム(18)の上端と当接するための当接部(41)を設けるとともに、この当接部(41)の下面に、ステム(18)の上端の外周に密着するオーリング(42)を配置して、充填ノズル(38)とステム(18)の接合部分の気密性を保っている。
【0033】
そして、上記連通路(40)、噴出路(26)及びオリフィス(22)を介して、充填機(37)内の内容物を装着室(13)内に流入する。その際、ステム(18)を押し下げながら高圧で内容物の充填を行うと、装着室(13)の上部室(16)内に流入した内容物は、下部室(17)に配置され、分離壁(14)にスプリング(35)で押圧付勢した切替バルブ(34)を、その付勢力に抗して充填圧で押し下げて、流通口(15)を開口する。従って、この流通口(15)の開口によって、ステム(18)を介して充填された内容物を迅速に内袋(3)内に充填することが可能となる。
【0034】
また、内容物の充填を完了した時には、ステム(18)は充填ノズル(38)による加圧力を受けないものになるとともに、内袋(3)内とハウジング(6)の装着室(13)内とは圧力平衡するから、図1に示す如く、ステム(18)がステムスプリング(25)の付勢力によって元位置に復帰し、オリフィス(22)をステムガスケット(23)の内周端面(28)によって閉止する。また、切替バルブ(34)もスプリング(35)の付勢力によって元位置に復元し、分離壁(14)に密着して流通口(15)を少量流通口(36)以外では閉止する。従って、上述のように、内袋(3)内から装着室(13)の下部室(17)を介して上部室(16)内に流入する内容物は、少量流通口(36)によって流量を最適な量に抑制されるため、内容物の噴射時には内容物の過剰な噴射を抑制して適度な噴射が可能となる。
【実施例2】
【0035】
また、上記実施例1においては、鍔部(30)の下方をテーパー部(31)とすることにより、傾斜間隔(32)を大きく取ることを可能としているが、本実施例2においては、図5に示す如く、鍔部(30)の下方を外径を上下方向で一定とした柱状部(43)としており、この場合には、ステム(18)の下方をテーパー加工する手間がかからないため、鍔部(30)の下方にテーパー部(31)を設けた場合と比べてステム(18)の成形が容易なものとなり、ステム(18)の製造コストを低廉なものとすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1実施例に於て、内容物の非噴射状態を示す断面図。
【図2】内容物の噴射状態を示す断面図。
【図3】エアゾール装置の落下等により、ステムに軸方向と交差する方向の負荷が加えられた状態を示す断面図。
【図4】内容物の充填状態を示す断面図。
【図5】ステムの下部を円柱状とした状態の断面図。
【符号の説明】
【0037】
1 エアゾール容器本体
6 ハウジング
13 装着室
14 分離壁
15 流通口
16 上部室
17 下部室
18 ステム
22 オリフィス
23 ステムガスケット
25 ステムスプリング
30 鍔部
31 テーパー部
32 傾斜間隔
33 傾斜抑制部
34 切替バルブ
36 少量流通口
43 柱状部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの中央軸方向に形成した装着室内に、ステムスプリングで上方に付勢したステムの下端側を配置し、このステムのオリフィスをステムガスケットにより密閉して上下動可能にステムを配置し、このステムを軸方向に押圧することによりオリフィスとステムガスケットの密閉を解除して開弁し、エアゾール内容物の噴射を行うプッシュダウン式のバルブ機構において、上記ステムは、装着室内への挿入部分に外周環状に鍔部を突出形成するとともに、ステムの非押圧時におけるステムの上記挿入部分の外周面及び鍔部と装着室の内周面との間に、ステムを傾斜可能とするための傾斜間隔を設け、ステムの非押圧時には、傾斜間隔内でステムをエアゾール容器本体の軸方向とは交差方向に5°〜30°傾斜可能とするとともに、ステムの押圧時には、この押圧により装着室の内方に移動した上記鍔部の外周面と装着室の内周面との間隔を0.2mm〜1.0mmとする傾斜抑制部を装着室の内周面に形成し、この傾斜抑制部に鍔部を移動した状態では、ステムの傾斜可能角度を5°未満としたことを特徴とするエアゾール装置。
【請求項2】
ハウジングは、その中央軸方向に形成した装着室内に、分離壁に設けた流通口を介して上部室と下部室とを形成し、上部室にはステムを配置し、下部室には内容物の噴射動作時にもステムの下端部に接触する事のない切替バルブを上下動可能に装着し、この切替バルブに、上部室と下部室とを連通する少量流通口を開口するとともに、切替バルブを分離壁に押圧付勢して、流通口を少量流通口の連通以外では閉止した事を特徴とする請求項1のエアゾール装置。
【請求項3】
ステムは、鍔部の下方を、下端側を小径としたテーパー部としたことを特徴とする請求項1又は2のエアゾール装置。
【請求項4】
ステムは、鍔部の下方を、外径を上下方向で一定とした柱状部としたことを特徴とする請求項1又は2のエアゾール装置。
【請求項5】
ステムは、軸方向と傾斜する方向に負荷が加えられた場合、ステムスプリング及びステムガスケットを弾性変形させながら傾斜することを特徴とする請求項1のエアゾール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−105689(P2008−105689A)
【公開日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−288517(P2006−288517)
【出願日】平成18年10月24日(2006.10.24)
【出願人】(000222129)東洋エアゾール工業株式会社 (77)
【Fターム(参考)】