説明

エアバッグドアの製造方法

【課題】車両内装部材の厚み寸法のばらつきに対応して精度よく破断予定部を形成する。
【解決手段】インストルメントパネル10を、固定治具42にセットし、溝38,40の形成に先立って、基材20の裏面位置を計測手段46で計測する。第1溝38を加工手段44で形成するときは、予め設定されたセット面42aの位置を基準として、加工手段44による第1溝38の形成深さを制御する。第2溝40を加工手段44で形成するときは、計測手段46で計測した基材20の裏面位置に応じて補正を行い、この補正したデータに基づき加工手段44による第2溝40の形成深さを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材とこの基材の表面を覆う積層材とを有する車両内装部材に、基材の裏面から溝を形成して破断予定部を設けるエアバッグドアの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
インストメントパネルの裏側には、助手席用のエアバッグ装置が助手席前方に配設されている。このため、図5に示すように、インストルメントパネル10にはエアバッグドア12が設けられ、エアバッグ装置14の作動時にエアバッグドア12が破断予定部16で破断して開放することで、エアバッグ15の乗員室側への膨張が許容されるようになっている。エアバッグドア12の破断予定部16は、インストルメントパネル10を構成する基材20の裏面に所定深さの溝18を設けることで脆弱化した部分であって、インストルメントパネル10の表面に表れないように形成されている。
【0003】
前記破断予定部16は、エアバッグ装置14が作動した際には、迅速かつ確実に破断することが要求される。一方で、エアバッグドア12は、エアバッグ装置14が作動する前の状態では、インストルメントパネル10の一部分として、意図しない破断や変形が起きない程度の構造的な強度が破断予定部16に必要とされる。ここで、破断予定部16の破断容易性および強度は、溝18を形成した際に残った基材20の厚み寸法、所謂基材残厚によって規定される。そして、破断予定部16の破断容易性および強度を両立させるためには、基材残厚を精度よく管理する必要がある。
【0004】
前記破断予定部16の形成方法としては、基材20を所定形状に成形した後に、基材20の裏面から所定深さの溝18を切削する方法がある。この方法は、エンドミル等の切削刃を所定方向に移動させながら、固定治具に載置して固定した基材20に所定の深さの溝18を切削することで破断予定部16を形成している。この際、基材残厚は、基材20の表面形状に合わせて形成された固定治具の載置面に合わせて設定された位置データを基準として、切削刃の該載置面に対する位置を制御することで管理される。
【0005】
インストルメントパネル10としては、基材20の表面を発泡層22および表皮24で覆ったものが多く採用されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1のエアバッグドア12の破断予定部16は、基材を貫通しない溝18と、基材20および発泡層22を貫通して表皮24に達する溝(図示せず)とから構成されている。ここで、基材20に比べて柔らかい表皮24では、表皮24の表面に溝の影響が現れ易いため、外観品質が表皮残厚によって大きく左右される。すなわち、特許文献1のエアバッグドア12の破断予定部16では、基材残厚および表皮残厚の夫々を精度よく管理する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−290643号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
積層構造のインストルメントパネル10は、発泡層22の厚み寸法が基材20と比べてばらつき易く、また発泡層22および表皮24を積層することで厚み寸法の誤差が累積することから、基材20だけの一層構造のインストルメントパネルと比べて厚み寸法の精度が低い。固定治具の載置面を基準として基材20だけに溝18を切削する方法では、発泡層22および表皮24の厚み寸法が設計寸法より小さいと基材残厚が大きくなり、表皮の厚み寸法が設計寸法より大きいと基材残厚が小さくなり、基材残厚を精度よく管理することができない。
【0008】
すなわち本発明は、従来の技術に内在する前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、車両内装部材の厚み寸法のばらつきに対応して精度よく破断予定部を形成し得るエアバッグドアの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願請求項1に係るエアバッグドアの製造方法は、
基材とこの基材の表面を覆う積層材とを有する車両内装部材に、基材の裏面から該基材を貫通して積層材に至るよう形成される第1溝と、基材の裏面から該基材だけに形成される第2溝とを備える破断予定部により規定されるエアバッグドアの製造方法であって、
前記車両内装部材を、前記積層材の表面に合わせて形成された固定手段のセット面に、該積層材の表面を当接させた状態でセットし、
前記第1溝および前記第2溝の形成に先立って、前記基材の裏面位置を計測手段で計測し、
前記第1溝を加工手段で形成するときは、予め設定された前記セット面の位置を基準として、前記加工手段による第1溝の形成深さを制御し、
前記第2溝を前記加工手段で形成するときは、前記計測手段で計測した前記基材の裏面位置に応じて、前記加工手段による第2溝の形成深さを制御するようにしたことを要旨とする。
請求項1に係る発明によれば、基材を貫通して積層材に至る第1溝を形成するときは、積層材の表面に合わせて形成されたセット面の予め設定された位置を基準として第1溝の形成深さを制御するから、積層材の厚み寸法に誤差がある場合でも第1溝による積層材の残厚を一定にすることができる。また、第2溝を形成するときは、計測手段で計測した基材の裏面位置に応じて第2溝の形成深さを制御することで、仮に積層材の厚み寸法にばらつきがあっても、第2溝による基材の残厚を一定にすることができる。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記加工手段は、前記計測手段で計測した前記基材の裏面位置に応じて、前記車両内装部材の厚み寸法を補正して、この補正した厚み寸法に合わせて前記セット面の位置を基準として前記第2溝の形成深さを制御するようにしたことを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、車両内装部材の厚み寸法に合わせて第2基材の形成深さが制御されるので、基材の残厚をより精度よく管理することが可能となる。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記計測手段は、前記溝の加工予定部位を複数ポイント計測することを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、基材の裏面全体を計測手段で計測するのではなく、第2溝の形成予定部位の複数ポイントを計測するだけなので、計測にかかる時間を短縮することができる。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記加工手段は、前記破断予定部の形成予定ラインに沿って混在する前記第1溝および前記第2溝を、該形成予定ラインに沿って移動しながら連続的に形成することを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、第1溝および第2溝の形成に先立って計測手段で基材の裏面位置を計測しているので、第1溝および第2溝を破断予定部の形成予定ラインに沿って移動させながら連続的に形成しても、計測手段による計測待ちが発生せず、短時間で破断予定部を形成することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るエアバッグドアの製造方法によれば、表皮の厚み寸法のばらつきに対応して精度よくエアバッグドアの破断予定部を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】エアバッグドアが設けられたインストルメントパネルの一部を示す概略斜視図である。
【図2】実施例のエアバッグドアをインストルメントパネルの裏側から示す平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】実施例のエアバッグドアの製造方法を示す工程図であって、(a)は計測手段による計測ステップを示し、(b)は加工手段による第1溝の形成工程を示し、(c)は加工手段による第2溝の形成工程を示す。
【図5】エアバッグドアおよびエアバッグ装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るエアバッグドアの製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。図1に示すように、実施例では、車両内装部材であるインストルメントパネル10に破断予定部32によって規定されるエアバッグドア30を製造する場合を説明する。
【実施例】
【0016】
図1または図3に示すように、実施例のインストルメントパネル10は、基材20とこの基材20の乗員室側となる表面を覆う積層材21とから構成された複層構造になっている。インストルメントパネル10の裏面を構成する基材20は、ポリプロピレンやAGS等の合成樹脂材料を射出成形等により所定形状に成形した硬質な部材であり、インストルメントパネル10の剛性を担保している。積層材21は、インストルメントパネル10の意匠面(表面)を構成し、TPO(オレフィン系エラストマ)やPVC(塩化ビニル)等の柔軟な表皮24と、この表皮24と基材20との間に配置され、ポリウレタンやポリプロピレン等の弾力性を有する発泡体からなる発泡層22とから構成されている。
【0017】
図1または2に示すように、実施例のエアバッグドア30は、エアバッグ装置の作動時に破断予定部32によって4枚のドアパネル30a,30bに分かれて開放する所謂4枚ドアタイプである。破断予定部32は、略矩形状に延在する第1破断予定ライン34と、この第1破断予定ライン34の内側に設けられ、隣り合うドアパネル30a,30bを区分する第2破断予定ライン36からなり、各ドアパネル30a,30bが第1破断予定ライン34の各辺をヒンジ側として開放するようになっている。第2破断予定ライン36は、第1破断予定ライン34の内側中央部に延在する中央ライン36aと、この中央ライン36aの端部からV字状に分岐する分岐ライン36bとからなり、分岐ライン36bの夫々が第1破断予定ライン34の角部に接続されている。すなわち、エアバッグドア30は、中央ライン36aを挟んで隣接する2枚の台形状のドアパネル30a,30aと、分岐ライン36b,36bで囲まれた2枚の三角形状のドアパネル30b,30bとに区分されている。
【0018】
図3に示すように、破断予定部32は、基材20の裏面から該基材20を貫通して積層材21に至る第1溝38と、基材20の裏面から基材20にだけに形成された第2溝40とを備えている。ここで、第1溝38は、基材20の裏側から発泡層22まで到達するように形成されて、インストルメントパネル10の意匠面と第1溝38の底との間に、発泡層22の一部と表皮24の全部とが残るようになっている。 一方、第2溝40の形成部位では、インストルメントパネル10の意匠面と第2溝40の底との間に、基材20の一部および積層材21の全部が残るようになっている。このように、実施例のエアバッグドア30は、溝38,40が基材20の裏側に開放して、インストルメントパネル10の意匠面に破断予定部32が表れないインビジブルタイプである。破断予定部32を構成する溝38,40は、前述した破断予定ライン34,36に沿って断続的に設けられ、隣り合う溝38,40と溝38,40との間の一般部が、エアバッグ装置の作動時に当該溝38,40での破断に案内されて破断するようになっている。また、第1溝38および第2溝40は、破断予定ライン34,36に沿って混在しており、中央ライン36aと分岐ライン36bとの交差部位等の破断予定ライン34,36が交差する部位には、何れかの溝38,40が基本的に設けられる。ここで、第1溝38は、エアバッグ装置の作動時にエアバッグに押圧されて破断予定部32の破断を開始させる部位である、中央ライン36aと分岐ライン36bとの交差部位や中央ライン36aの中央部位に形成される(図2参照)。
【0019】
前記第1溝38および第2溝40を形成する加工装置は、インストルメントパネル10を固定する固定治具(固定手段)42と、この固定治具42の上方に配置され、溝38,40を加工する加工手段44と、基材20の裏面位置を計測する計測手段46とを備えている(図4参照)。固定治具42は、インストルメントパネル10の意匠面に合わせて形成されたセット面42aを備えている。固定治具42は、セット面42aにインストルメントパネル10の意匠面を当接させて、インストルメントパネル10(基材20)の裏面を上方(外方)に臨ませた状態で該インストルメントパネル10を保持し得るよう構成される。加工手段44は、固定治具42のセット面42aに対して平行なX−Y軸方向(前後左右方向)およびセット面42aに対して進退するZ軸方向(上下方向)に先端部を移動可能に構成された3軸のロボットアームであって、外周面および端面に切れ刃があるエンドミル44aが先端部に設けられている。加工装置は、加工手段44をセット面42aに向けて下降することで、回転駆動されたエンドミル44aをインストルメントパネル10に所定の深さで切り込んで、インストルメントパネル10の裏面に所要の深さの溝38,40を形成するようになっている。加工装置には、セット面42aの位置、インストルメントパネル10の基準となる厚み寸法、破断予定部32(溝38,40)の平面形状、溝38,40の配置パターン、溝38,40を加工する順序等の設定データが制御手段48に予め設定されている。そして、加工装置は、設定データや計測手段46の計測結果に応じて、制御手段48で加工手段44の動作が制御される。
【0020】
前記計測手段46は、加工手段44の先端部に配設されて、固定治具42のセット面42aに保持された基材20の裏面に対向すると共に、加工手段44をX−Y軸方向に移動することで、固定治具42にセットされたインストルメントパネル10(基材20)の裏面における任意の部位を計測可能になっている。実施例の計測手段46は、レーザー計測器であって、加工手段44による溝38,40の形成に先立って基材20の裏面位置の計測を行うようになっている。
【0021】
次に前記加工装置を用いたエアバッグドア30の製造方法を説明する。先ずインストルメントパネル10を、固定治具42のセット面42aに意匠面を当接させた状態でセットすることで、インストルメントパネル10の裏面を加工手段44および計測手段46に相対させた状態で固定する。インストルメントパネル10(基材20)のZ軸方向の裏面位置を、計測手段46によって計測する。ここで、計測手段46による計測ステップでは、加工手段44をX−Y軸方向に移動することで、溝38,40の形成予定部位等に応じて予め設定された複数(例えば10ポイント程度)の計測ポイントで夫々計測し、その計測結果の夫々が制御手段48に入力される(図4(a)参照)。計測ポイントは、第2溝40の形成予定位置を含めるように設定されており、実施例では、基材20の裏面における第1溝38および第2溝40の形成予定位置について、Z軸方向の位置を計測している。なお、計測ステップは、各インストルメントパネル10を固定治具42にセットする毎に行われ、個々のインストルメントパネル10の厚み寸法に合わせて、後述する加工ステップが行われるようになっている。
【0022】
計測ステップにおいて、基材20の裏面位置を計測することで、計測ポイントに対応するセット面42aのZ軸方向の位置が既知の値としてデータ設定されているから、当該計測ポイントにおけるインストルメントパネル10の実際の厚み寸法(計測厚み寸法)が分かる。また、制御手段48には、インストルメントパネル10の設計上等の基準となる厚み寸法(基準厚み寸法)が設定されているので、基準厚み寸法と計測厚み寸法との誤差が分かる。そして、計測手段38で計測された基材20の裏面位置から算出した計測厚み寸法と基準厚み寸法の誤差に基づいて、第2溝40の形成時における加工手段44のZ軸方向の動作データが補正される。一方、第1溝38の形成時における加工手段44のZ軸方向の動作データは、計測手段46で計測された基材20の裏面位置に応じて補正されず、制御手段48に予め設定されたセット面42aのZ軸方向の位置データを基準としている。なお、計測ステップによる補正は、複数の計測ポイントの計測結果の平均値や偏差に応じて行っても、計測ポイントの夫々に応じて行ってもよい。
【0023】
前記加工手段44は、エンドミル44aを回転駆動しつつ、制御手段48の制御下にX−Y軸方向に所定の形成予定ラインに沿って移動する。そして、加工手段44は、第1溝38または第2溝40の形成予定位置において、セット面42aとの関係でZ軸方向に進退移動しつつX−Y軸方向に移動することで、破断予定ライン34,36に沿って第1溝38または第2溝40が形成される。ここで、溝38,40を形成するときは、制御手段38に予め設定されたセット面42aのZ軸方向の位置に基づいて、加工手段44におけるZ軸方向の進退移動が基本的に制御されて、X−Y軸方向の移動に伴い湾曲するインストルメントパネル10の立体形状に合わせて、溝38,40の形成深さを調節している(図4(b)または(c)参照)。
【0024】
特に第1溝38を形成するときは、制御手段48に予め設定されたセット面42aのZ軸方向の位置に対して、加工手段44におけるエンドミル44aの先端位置が一定になるよう、加工手段44におけるZ軸方向の進退移動が制御される(図4(b)参照)。そして、加工手段44におけるエンドミル44aの先端位置をセット面42aに対して一定になるよう制御することで、第1溝38の底とインストルメントパネル10の意匠面との間の積層材21の残厚が一定とすることができる。
【0025】
これに対して、第2溝40を形成するときは、制御手段48に予め設定されたセット面42aのZ軸方向の位置に対して、加工手段44におけるエンドミル44aの先端位置が前述した計測ステップによる補正データに応じてZ軸方向に進退するよう移動制御される(図4(c)参照)。すなわち、インストルメントパネル10の計測厚み寸法が基準厚み寸法より厚い場合は、誤差分だけセット面42aより離れる方向に補正され、インストルメントパネル10の計測厚み寸法が基準厚み寸法より薄い場合は、誤差分だけセット面42aに近づく方向に補正される。このように、加工手段44は、インストルメントパネル10(基材20)の裏面から一定の深さで第2溝40を形成し、第2溝40による基材20の残厚を一定にしている。インストルメントパネル10は、インジェクション成形による比較的寸法精度のよい基材20と比べて、発泡層22を含む積層材21の寸法精度が劣っているので、インストルメントパネル10の厚み寸法の誤差は、ほとんどが積層材21の精度によるものである。従って、第2溝40の形成に際して、加工手段44をセット面42aから誤差分だけ接離するよう補正することで、積層材21の誤差があっても加工手段44による基材20の形成深さを一定にすることができる。換言すると、基材20の裏面からの第2溝40の形成深さが一定になれば、前述の如く基材20の寸法精度が比較的よいので、第2溝40における基材残厚を一定にすることができる。
【0026】
前記加工手段44は、破断予定部32の破断予定ライン34,36をなるべく一筆書きでなぞるように、X−Y軸方向に移動され、破断予定ライン34,36に沿って混在する第1溝38および第2溝40を連続的に形成している。ここでいう「連続」とは、破断予定ライン34,36に沿うX−Y軸方向の移動の中での連続であり、実施例のように隣り合う溝38,40の間があいていても、隣り合う溝38,40が繋がっていてもよい。すなわち、一方の溝38,40だけを形成した後に他方の溝40,38を形成するように、破断予定ライン34,36と関係なく加工手段44をなるべく移動させないので、破断予定部32の形成時間を短縮化することができる。
【0027】
このように、実施例の製造方法によれば、積層材21の厚み寸法に誤差があっても、第1溝38による積層材21の残厚を精度よく管理できると共に、第2溝40による基材残厚を精度よく管理できる。また、計測手段36による計測ステップをインストルメントパネル10毎に行うから、インストルメントパネル10毎の積層材21の厚み寸法のばらつきに対応できる。基材20の裏面全体を計測手段46で計測するのではなく、溝38,40の形成予定部位の複数ポイントを計測するだけなので、計測にかかる時間を短縮することができる。そして、第1溝38および第2溝の40形成に先立って計測手段46で基材20の裏面位置を計測しているので、第1溝38および第2溝40を破断予定部32の破断予定ライン34,36に沿って移動させながら連続的に形成しても、計測手段46による計測待ちが発生せず、短時間で破断予定部32を形成することができる。
【0028】
(変更例)
前述した実施例に限定されず、例えば以下のように変更することも可能である。
(1)インストルメントパネルに限らず、例えばグローブボックスのリッドやその他の車両内装部材に適用可能である。
(2)積層材は、多層構造に限定されず、表皮だけであってもよい。また表皮と基材との間で発泡層が発泡充填される構成であっても、表皮と発泡層とが一体化されたものであってもよい。
(3)加工手段としては、エンドミル、フライス、熱刃、超音波カッター、コールドナイフ等の加工手段自体がインストルメントパネルに切り込んで溝を形成するものでもよく、レーザーを照射して合成樹脂材料からなるインストルメントパネルを部分的に融解して溝を形成するものでもよい。
(4)計測手段としては、レーザー、光や電波等の電磁波や磁気等その他の非接触式の距離測定装置を採用し得る。
【符号の説明】
【0029】
10 インストルメントパネル(車両内装部材),20 基材,21 積層材,
32 破断予定部,38 第1溝,40 第2溝,42 固定治具(固定手段),
42a セット面,44 加工手段,46 計測手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材とこの基材の表面を覆う積層材とを有する車両内装部材に、基材の裏面から該基材を貫通して積層材に至るよう形成される第1溝と、基材の裏面から該基材だけに形成される第2溝とを備える破断予定部により規定されるエアバッグドアの製造方法であって、
前記車両内装部材を、前記積層材の表面に合わせて形成された固定手段のセット面に、該積層材の表面を当接させた状態でセットし、
前記第1溝および前記第2溝の形成に先立って、前記基材の裏面位置を計測手段で計測し、
前記第1溝を加工手段で形成するときは、予め設定された前記セット面の位置を基準として、前記加工手段による第1溝の形成深さを制御し、
前記第2溝を前記加工手段で形成するときは、前記計測手段で計測した前記基材の裏面位置に応じて、前記加工手段による第2溝の形成深さを制御するようにした
ことを特徴とするエアバッグドアの製造方法。
【請求項2】
前記加工手段は、前記計測手段で計測した前記基材の裏面位置に応じて、前記車両内装部材の厚み寸法を補正して、この補正した厚み寸法に合わせて前記セット面の位置を基準として前記第2溝の形成深さを制御するようにした請求項1記載のエアバッグドアの製造方法。
【請求項3】
前記計測手段は、前記溝の加工予定部位を複数ポイント計測する請求項1または2記載のエアバッグドアの製造方法。
【請求項4】
前記加工手段は、前記破断予定部の形成予定ラインに沿って混在する前記第1溝および前記第2溝を、該形成予定ラインに沿って移動しながら連続的に形成する請求項1〜3の何れか一項に記載のエアバッグドアの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−18368(P2013−18368A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153261(P2011−153261)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】