説明

エアバッグ用基布

【課題】エアバッグモジュールのコンパクト化及び軽量化に有効な、薄肉かつ軽量で収納性に優れたエアバッグ用基布を提供する。
【解決手段】熱可塑性合成フィラメント糸の織布よりなるエアバッグ用基布において、該フィラメント糸の原糸強度が7.0g/d以上であり、かつ、該フィラメント糸の繊度が200〜250dであるエアバッグ用基布。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアバッグ用基布に係り、特に、エアバッグモジュールのコンパクト化及び軽量化に有効な、薄肉かつ軽量で収納性に優れたエアバッグ用基布に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般にエアバッグモジュールのエアバッグ用基布としては、繊度420〜630d(デニール)の合成フィラメント糸の織布よりなり、この織布にエラストマー等のコーティングを施したものが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
繊度420〜630dの合成フィラメント糸の織布よりなる従来のエアバッグ用基布は、織布自体の厚みが厚い上に、この織布にコーティングを施すことから、より一層その厚みが厚いものとなる。このため、折り畳んだ際の容量が大きく、また、重量も重いことから、エアバッグモジュールの小型、軽量化に不適当である。
【0004】
特に、最近では、ルーフサイドレールに沿って設けた頭部保護用サイドエアバッグが広く採用されるようになってきているが、ルーフサイドレールはスペーサが小さいため、より一層のコンパクト化が要求されている。
【0005】
本発明は上記従来の問題点を解決し、エアバッグモジュールのコンパクト化及び軽量化に有効な、薄肉かつ軽量で収納性に優れたエアバッグ用基布を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエアバッグ用基布は、熱可塑性合成フィラメント糸の織布よりなるエアバッグ用基布において、該フィラメント糸の原糸強度が7.0g/d以上であり、かつ、該フィラメント糸の繊度が200〜250dであることを特徴とする。
【0007】
繊度が200〜250dという細いフィラメント糸であれば、薄く軽量で、折り畳み易く、収納性に優れたエアバッグ用基布とすることができる。また、フィラメント糸を細くすることで織目(織密度)が細かくなることから、通気性が低くなり、樹脂コーティングを施すことなく、或いは、薄いコーティングのみでガスリークを防止することができる。このため、表面平滑性に優れたものとなると共に、より一層エアバッグのコンパクト化が可能となる。
【0008】
ただし、フィラメント糸を細くするとエアバッグ用基布の強度が不足する恐れがある。しかし、本発明では原糸強度が7.0g/d以上のものを用いるため、細繊化による強度低下は防止される。
【0009】
フィラメント糸としてはポリアミド糸又はポリエステル糸が好適であり、このようなフィラメント糸を打込本数50本/inch以上で織り込むことにより、高強度で、高圧下においても通気性が極めて小さい、表面平滑なエアバッグ用基布を得ることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明のエアバッグ用基布によれば、エアバッグモジュールのコンパクト化及び軽量化に有効な、薄肉かつ軽量で収納性に優れたエアバッグ用基布が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0012】
本発明のエアバッグ用基布を構成するフィラメント糸としては、ポリアミド糸又はポリエステル糸が挙げられ、特にナイロン等のポリアミド糸が好ましい。
【0013】
本発明において、このフィラメント糸は原糸強度が7.0g/d以上であり、繊度が200〜250dである。
【0014】
原糸強度が7.0g/d未満では、十分な強度を得ることができない。原糸強度は特に7.5g/d以上であることが好ましい。なお、本発明においてフィラメント糸の原糸強度は、その細繊構成上、9.7g/dよりも大きくすることは困難であり、従って、好適な原糸強度は7.5〜9.7g/dである。
【0015】
また、本発明において、フィラメント糸の繊度が250dよりも大きいと細繊化による基布の薄肉化、軽量化が十分に図れず、200dよりも小さいと、強度が不足することとなり、好ましくない。特に好ましい繊度は210dである。
【0016】
なお、このフィラメント糸は、3.1〜6.2dのフィラメント34〜68本で構成されるものが好ましい。
【0017】
フィラメントデニールが3.1d未満ではフィラメント強度が十分でなく、このようなフィラメントを多数本集めて200〜250dのフィラメント糸を形成しても原糸強度7.0g/d以上のフィラメント糸を構成し得ない場合がある。また、フィラメントデニールが6.2dを超えると200〜250dのフィラメント糸を構成するためにはフィラメント数が少なくなり過ぎ、剛性が高くなる傾向にあり、また、通気性が高くなり好ましくない。
【0018】
本発明において、このようなフィラメント糸よりなる織布の織方は通常の場合平織が採用されるが、ジャガード織(袋織)であっても良い。
【0019】
この織布の打込み本数は50本/inch以上とするのが好ましい。打込み本数が50本/inch未満では、基布の強度や耐通気性が劣るものとなる。打込み本数を過度に多くすると、基布の剛性が高くなり、折り畳み難くなる上に、パッケージングが大きくなり、一般的には、打込み本数は68〜75本/inch程度であることが好ましい。
【0020】
本発明に係る織布は、必要に応じてヒートセット及び/又はカレンダー加工を施し、より一層厚さの薄いものとすることができ、このような処理を施すことにより通気性をより一層低減することができる。
【0021】
このような本発明の基布を構成する織布は、上記フィラメント糸及び打込み本数により、更に必要に応じてヒートセット及び/又はカレンダー加工を施すことにより、好ましくは、厚さ0.15〜0.25mm、フラジール試験機において、124.5paにおける通気量0.8cm/cm/sec以下となるように製造される。
【0022】
この織布は、それ自体で通気性が極めて小さいために、樹脂コーティングを施すことなく、エアバッグ用基布として用いることができるが、本発明では、必要に応じて、シリコーン等のエラストマー系の樹脂コーティングを施しても良い。この場合、本発明に係る織布はそれ自体通気性が小さいことから、コーティング量は従来に比べて著しく低減することができ、5〜25g/m程度で十分である。このように少ない樹脂コーティング量であれば、基布を過度に厚くかつ重くすることがなく、また、折り畳み性が損なわれることもない。
【0023】
本発明のエアバッグ用基布は、運転席用、助手席用等の各種エアバッグ用基布として有効であるが、特に、収納スペースの小さいルーフサイドレールに収納される頭部保護用エアバッグ用基布として好適である。
【実施例】
【0024】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0025】
実施例1〜7,比較例1〜4
表1に示すナイロン糸を用いて表1に示す打込み本数で平織の織布を作製し、ヒートセット及びカレンダー加工を施した。また、一部のものについては、シリコーン樹脂コーティング(コーティング量約20g/m)を施した。
【0026】
得られたエアバッグ用基布の厚さ及び単位面積当りの重量は表1に示す通りであった。
【0027】
このエアバッグ用基布について、フラジール試験機における124.5paでの通気量と通常のエアバッグの展開時のガス圧力である200kpaにおける通気保持率を測定すると共に、引張強度を測定し、結果を表1に示した。
【0028】
また、各基布を用いて、容量60L相当のドライバー用バックを作製してこれを折り畳み、そのときの嵩(体積比)を調べ、結果を表1に示した。
【0029】
なお、ヒートセット及びカレンダー加工の処理条件は次の通りとした。
[ヒートセット条件]
温度: 170〜200℃
加工スピード: 15〜25m/min
[カレンダー加工条件]
温度: 180〜200℃
加工スピード: 10〜15m/min
線圧: 250〜300kg/cm
【0030】
【表1】

【0031】
表1より、本発明のエアバッグ用基布によればエアバッグの軽量化及びコンパクト化が可能であることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性合成フィラメント糸の織布よりなるエアバッグ用基布において、該フィラメント糸の原糸強度が7.0g/d以上であり、かつ、該フィラメント糸の繊度が200〜250dであることを特徴とするエアバッグ用基布。
【請求項2】
請求項1において、該フィラメント糸はポリアミド糸又はポリエステル糸であり、該フィラメント糸の打込本数が50本/inch以上であることを特徴とするエアバッグ用基布。

【公開番号】特開2006−241666(P2006−241666A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−106498(P2006−106498)
【出願日】平成18年4月7日(2006.4.7)
【分割の表示】特願平10−331111の分割
【原出願日】平成10年11月20日(1998.11.20)
【出願人】(306009581)タカタ株式会社 (812)
【Fターム(参考)】