説明

エアバッグ

スキンを有するエアバッグであって、スキンが、ガスチャンバ(35)を取り囲むとともに、エアバッグの休止状態で閉じられ且つガスチャンバ内の圧力が所定の値を超えるときに開放するベントを有するエアバッグ。前記ベントは、スキンにベントホール(22)を備えるとともに、エアバッグの休止状態で前記ベントホール(22)を閉じる引き裂き可能な接続部を備える。エアバッグが少なくとも第1の方向(A)に沿ってパッケージへと折り畳まれ、引き裂き可能な接続部が第1のポイント(24a)から第2のポイント(24b)へと延びるように引き裂き可能な接続部がベントホール(22)の周囲のスキンをスキン自体に直接に接続する。展開中にベントが閉じられたままとなるようにするとともに、ガスチャンバ内の圧力がかなり小さい圧力公差範囲内で所定値を超えた後にベントが開放するようにするため、2つのポイント(24a,24b)を接続するラインが第1の方向(A)と30°〜60°の角度を成す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車用のエアバッグに関する。そのようなエアバッグは、一般に、ガスチャンバを取り囲むスキンを備える。特に、本発明は、エアバッグの休止状態で閉じられ且つガスチャンバ内の圧力が所定の値を超えるときに開放するベントを有するエアバッグに関する。
【0002】
前述したタイプのベントは以下の利点を有する。すなわち、ベントは少なくともエアバッグの展開開始中に閉じられるため、この展開が非常に素早く行なわれ、それにより、保護されるべき人の良好な保護が早い時点でもたらされる。この人がエアバッグに入り込むと、ガスチャンバ内の圧力が上昇し、それにより、ベントが開放して、エアバッグの必要な柔軟性がもたらされる。
【背景技術】
【0003】
エアバッグの休止状態で閉じられ且つエアバッグチャンバ内の圧力が所定値を超えるときに開放するベントをスキンに形成するために異なる技術が知られている。
【0004】
例えば、独国特許第2421932号からは、スキンに穴を設けて、小さい穴を有する弾性膜で前記スキンを閉じることが知られている。この小さい穴は、ガスチャンバが空のときに閉じられ或いはほぼ閉じられ、ガスチャンバ内の圧力上昇に伴ってその直径を拡大する。この種のベントの欠点は、かなり高価な製造プロセス、および、性能のばらつきの多さである。
【0005】
他の可能性は、スキンに穴を設けて、引き裂き縫い目によってスキンに縫い付けられるフラップにより前記穴を閉じることである。ここでは、展開中に引き裂き縫い目が破壊せず且つガスチャンバ内の圧力が所定値を超えるときに引き裂き縫い目が破壊するように引き裂き縫い目の強度を選択することが難しいという問題が生じる。更なる欠点は、フラップがスキンから完全に外れる場合があり、それが望ましくないという点である。
【0006】
一般的な米国特許第3,990,726号からは、スリットの形態を成す穴をスキンに設け、引き裂き可能な接続部によって、すなわち、引き裂き縫い目によって前記穴を直接に閉じることが知られている。このことは、フラップの形態を成す余分な部分が存在せず、引き裂き縫い目によってスキンがスキン自体に接続されることを意味する。この種のバルブの利点は、製造が非常に容易で、したがって費用効率が高いという点であり、また、外れるフラップの危険がないという点である。しかしながら、両方が安全に達成されるように、すなわち、展開中にベントが閉じられ且つガスチャンバ内の所定の圧力に達するときにベントが開放するように、引き裂き縫い目の強度を選択することが難しいという問題が依然として残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】独国特許第2421932号
【特許文献2】米国特許第3,990,726号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、展開中にベントが閉じられたままとなるようにするとともに、ガスチャンバ内の圧力が所定値を超えた後にベントが開放するようにし、それにより、ベントのこの開放がかなり小さい公差範囲内で行なわれるようにする、汎用型のエアバッグを提供することである。
【0009】
本発明の更なる目的は、容易に且つ高い費用効率で製造される汎用型のエアバッグを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
エアバッグのベントは、引き裂き可能な縫い目がベントホールを取り囲み、したがって、ベントホールを閉じる、いわゆるピンチベントである。本発明によれば、スキンをスキン自体に直接に接続することにより休止状態でエアバッグのスキンのベントホールを閉じる引き裂き可能な接続部は、エアバッグの1または複数の折り畳み方向に対して所定の態様で方向付けられる。無秩序な折り畳みが適用されない限り、パッケージへと折り畳まれる前に折り畳みテーブル上に位置するときに2つの平行な壁を有する略平坦な物体であるエアバッグスキンは、少なくとも1つの折り畳み方向、殆どの場合には基本的に互いに平行な2つの折り畳み方向を示す。折り畳み方向は、折り畳みテーブルと展開されたエアバッグスキンの2つの壁とに対して基本的に平行な幾何学的なラインとして見ることができる。
【0011】
展開中に引き裂き可能な接続部に作用する力は、1または複数の折り畳み方向に対する引き裂き可能な接続部(殆どの場合には、引き裂き縫い目)の方向性に大きく依存することが分かった。この結果は、エアバッグの展開中に引き裂き可能な接続に作用する力がかなりの程度まで織物に作用する力であるという事実によってもたらされる。引き裂き可能な接続部の方向性は、引き裂き可能な接続部の2つの端点(第1および第2のポイントと称される)を接続するラインによって容易に規定され得る。このラインは、それぞれの折り畳み方向との角度を規定する。あるいは、具体的には、幾何学的観点では、この角度は、引き裂き可能な接続部の第1および第2のポイントを接続するラインと折り畳み方向とを折り畳みテーブルによって規定される面へ投影するときに規定され、一方、投影方向は折り畳みテーブルの面に対して垂直である。引き裂き可能な接続部に作用する力の依存性は、0°および90°において、すなわち、引き裂き可能な接続部の2つの端点を接続するラインが折り畳み方向に対して平行または垂直であるときに最大値を有し、45°の角度において最小値を有する。したがって、本発明によれば、角度は30°〜60°、好ましくは約45°である。
【0012】
45°の角度は、エアバッグが互いに垂直な2つの方向に折り畳まれる場合に引き裂き可能な接続部の端点を接続するラインと2つの折り畳み方向との間の角度が同じになる、すなわち45°になるという更なる利点を有する。
【0013】
ここで、添付図面を考慮して本発明を一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】ベントを形成するためのベントホールを有する展開されたエアバッグの平面図であり、前記エアバッグが平面上に位置している。
【図2】図1のI−I線に沿う断面図である。
【図3】図2の細部Dである。
【図4】ベントホールの周囲に引き裂き縫い目を付けた後の図3の物品を示している。
【図5】ベントホールの周囲の引き裂き縫い目が付けられた後の図1のエアバッグの平面図である。
【図6】互いに平行な第1の折り畳みラインに沿ってエアバッグが折り畳まれた後の図5の平面図である。
【図7】互いに平行で且つ第1の折り畳みラインに対して垂直な第2の折り畳みラインに沿ってエアバッグが折り畳まれた後の図6の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
ここで、図1〜図7を参照して本発明の一実施形態について説明する。以下の慣例が適用される。すなわち、目に見える縁部が実線で描かれ、目に見えない縁部が破線で描かれ、目に見える縫い目(引き裂き縫い目であるか或いは耐久性のある縫い目であるかにかかわりなく)が一点鎖線で描かれ、目に見えない縫い目が描かれない。
【0016】
図1は、テーブルのような平面上に位置する未完成のエアバッグの平面図を示している。このテーブルは、以下においては、描画平面に対して平行な基準面としての役目を果たす。エアバッグは、同じ形状およびサイズの2つの層、すなわち、上端の第1の層12と、第1の層の下側の第2の層14とを備えるスキン10を有する。2つの層12,14は、余白縁領域16で互いに接続されてガスチャンバ35を取り囲む(図2参照)。図示の実施形態において、2つの層は、余白縁縫い目18によって一緒に縫い付けられる別個の裁断片から形成される。しかし、一体製織技術を使用することもできることについて言及しておく必要がある。
【0017】
図2は、図1のI−I線に沿う断面図を示している。細部を説明するため、2つの層は、それらが“現実”にそうであるように互いに直接に上下に位置して示されていない。エアバッグが位置する表面は示されていない。図3は、図2の細部Dを示している。
【0018】
図示の実施形態のエアバッグはフロンタルエアバッグである。第1の層12は、穴などが無く、衝撃面としての役目を果たす。第2の層14は、装着されて膨張された状態で基本的にインストルメントパネルまたはステアリングホイールの方を向く。第2の層14は、2つの穴、すなわち、ベントホール22と、図示しないガス発生器を挿入するためのガス発生器穴20とを示している。必要に応じて、更なるベントホールが存在し得る。図1では、ベントホール22の周囲に破線が描かれており、この破線は、引き裂き縫い目が付けられる位置を示している。
【0019】
図4は、引き裂き縫い目24がベントホール22の周囲に縫い付けられて第2の層14をそれ自体に接続した後の図3に示されるものを示している。引き裂き縫い目は、基本的に、第1のポイント24aから第2のポイント24bへと延びる半円の形状を有する。これらの2つのポイント24a,24bはそれらが断面図のI−I線上に位置するように選択され、それにより、2つのポイントを接続するラインが図5に示されるような方向性を有する。2つの層が一緒に押圧されない限り、引き裂き縫い目の描画表面への投影は同じ方向性を有する。
【0020】
引き裂き縫い目を付けた後、エアバッグが完成し、エアバッグを、しばしば図示しないガス発生器の挿入後、パッケージへと折り畳むことができる。図示の実施形態では、エアバッグは、互いに平行で第1の折り畳み方向Aを規定する2つの第1のライン30a,30b(図6に示される)に沿って、および、互いに平行で第1の折り畳みライン30a,30bに対して垂直であるとともに第2の折り畳み方向Bを規定する2つの第2の折り畳みライン32a,32b(図7に示される)に沿って折り畳まれる。2つのポイント24a,24bを接続するラインが第1の折り畳み方向Aおよび第2の折り畳み方向Bと45°の角度を成すのが分かる。折り畳み方向A,Bに対する引き裂き縫い目24のこの方向性は、スキンが折り畳みライン30a,30b,32a,32bに沿って展開するときのエアバッグの展開中に引き裂き縫い目で低い応力をもたらす。その結果、引き裂き縫い目24が所定の脆弱性を有することができ、それにより、ガスチャンバ内の圧力が上昇する際、保護されるべき人が衝撃面に衝突すると直ぐに、引き裂き縫い目が確実に開放する。
【0021】
図示の実施形態における引き裂き可能な接続部は引き裂き縫い目である。無論、接着または溶着された引き裂き可能な接続部も使用できる。また、引き裂き可能な接続として織り接続部を有することもできる。
【符号の説明】
【0022】
10 エアバッグスキン
12 第1の層
14 第2の層
16 余白縁領域
18 余白縁縫い目
20 ガス発生器穴
22 ベントホール
24 引き裂き縫い目
24a 第1のポイント
24b 第2のポイント
30a,b 第1の折り畳みライン
32a,b 第2の折り畳みライン
35 ガスチャンバ
A 第1の方向
B 第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スキンを有するエアバッグであって、
前記スキンが、ガスチャンバ(35)を取り囲むとともに、エアバッグの休止状態で閉じられ且つガスチャンバ内の圧力が所定の値を超えるときに開放するベントを有し、
前記ベントが、前記スキン内にベントホール(22)を備えるとともに、前記エアバッグの休止状態で前記ベントホール(22)を閉じる引き裂き可能な接続部を備え、
前記エアバッグが少なくとも第1の方向(A)に沿ってパッケージへと折り畳まれ、前記引き裂き可能な接続部が第1のポイント(24a)から第2のポイント(24b)へと延びるように、前記引き裂き可能な接続部がベントホール(22)の周囲のスキンをそれ自体に直接接続するエアバッグにおいて、
前記2つのポイント(24a,24b)を接続するラインが第1の方向(A)と30°〜60°の角度を成すことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
第1の角度が基本的に45°であることを特徴とする、請求項1に記載のエアバッグ。
【請求項3】
エアバッグは、第1の方向(A)と略垂直な第2の方向(B)に沿って更に折り畳まれることを特徴とする、請求項2に記載のエアバッグ。
【請求項4】
引き裂き可能な接続部が引き裂き縫い目であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアバッグ。
【請求項5】
引き裂き可能な接続部が溶着または接着される接続部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアバッグ。
【請求項6】
引き裂き可能な接続部が織り接続部であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2011−518067(P2011−518067A)
【公表日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504345(P2011−504345)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/002445
【国際公開番号】WO2009/127329
【国際公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【出願人】(510136301)オートリブ ディベロップメント エービー (46)
【Fターム(参考)】