説明

エアバッグ

【課題】基布の接合の強度を確保できるとともに製造コストを抑制できるエアバッグを提供する。
【解決手段】エアバッグ10は、互いに対向する一対の本体基布31,31と、本体基布31,31を弾性的に接合する接合部32とを備える。接合部32を、本体基布31,31を接合する本体接合部47と、本体接合部47から内方へと延設し本体基布31,31を接合する延設接合部48とで構成する。延設接合部48の伸びや破断によって展開衝撃を受けて本体接合部47に加わる衝撃を緩和できるので、本体基布31,31の接合の強度を確保できる。本体基布31,31を接合する縫製の糸やステッチ仕様などの合理化や縫製の省略が可能になるため、製造コストを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対向する一対の基布を接合する接合部を備えたエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、膨張ガスを導入して膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置について、自動車の車室の側方のドアの窓部などに沿ってエアバッグを展開する、いわゆるカーテンエアバッグ装置が知られている。このようなエアバッグは、通常時は、細長く折り畳まれるように圧縮された状態で、車室側面の窓部の上縁部に沿って収容されている。そして、側面衝突や横転(ロールオーバー)などの衝撃を受けた際に、インフレータから膨張ガスが供給されてエアバッグが展開し、側部の窓部などに沿って下方に向かって膨張展開することで、乗員を拘束して保護するように構成されている。
【0003】
そして、このようなエアバッグにおいて、乗員と車両室内壁などとの衝突(二次衝突)における衝撃を緩和できるように、所定の時間だけ内圧を維持できるよう気密性を向上したものが知られている。ここで、所定の時間とは、例えば乗員の前方に設置する運転席用エアバッグ、あるいは助手席用エアバッグなどの起動時間に対して非常に長い時間であり、例えば運転席用エアバッグが20msで起動し500msで乗員を拘束し内気を排出して萎むのに対して、その10倍の長い時間、例えば6秒間に亘って25kPa程度の内圧を維持することが望まれる。
【0004】
エアバッグを構成する基布の通気性は、シリコーンゴムなどの目止め材を専用の工具により少量コーティングすることにより有効な目止め処理が行われている。このような処理を行うことで、エアバッグの質量増加とコストアップを最小限に抑制しつつ、内圧を維持する特性を得る。
【0005】
一方で、このようなエアバッグは、一般的に、一対の基布を縫い合わせて袋状に形成しているため、縫い目からの内気漏れが生じることもあり、内圧を維持するためのシールが追加で行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
しかしながら、このエアバッグでは、シールと縫製とを併用しているため、例えばシールの塗布工程の後に縫製工程が必要となり、設備費用が増加し、製造ラインが増大するなど、製造コストの増加を抑制することが容易でない。
【0007】
そこで、一対の基布をシール剤によって接合してエアバッグを形成する構成が知られている。この構成では、点状に塗布したシール剤同士を互いに連続させることによって、接合部を波状に形成している(例えば、特許文献2参照。)。
【0008】
しかしながら、このように基布をシール剤によって波状に接合する場合、外力が加わった際の剥離を防止するための縫製などが別途必要になることがあり、製造コストの増加を抑制することが容易でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−72503号公報 (第2−3頁、図1−2)
【特許文献2】特開2007−176305号公報 (第4頁、図1−3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、製造コストを抑制でき、かつ、基布の接合の強度を確保したエアバッグが望まれている。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、基布の接合の強度を確保できるとともに製造コストを抑制できるエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載のエアバッグは、互いに対向する一対の本体基布、及びこれら本体基布を接合することにより膨張部を区画する接合部を備えた袋状に形成され、前記膨張部に膨張ガスが導入されることにより展開するエアバッグであって、前記接合部は、前記膨張部の周囲を区画する本体接合部と、この本体接合部から前記膨張部の内方へと延設された延設接合部とを有しているものである。
【0013】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、延設接合部は、互いに離間されて複数配置され、それぞれの先端側が基端側よりも幅寸法が大きく形成されているものである。
【0014】
請求項3記載のエアバッグは、請求項1または2記載のエアバッグにおいて、延設接合部は、先端側が基端側よりも厚さ寸法が大きく形成されているものである。
【0015】
請求項4記載のエアバッグは、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグにおいて、延設接合部は、弾性体により形成され、本体接合部は、少なくとも反膨張部側が前記延設接合部を形成する弾性体よりも伸び性が小さい弾性体により形成されているものである。
【0016】
請求項5記載のエアバッグは、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグにおいて、膨張部内に配置された一対の区画基布と、これら区画基布同士及びこれら区画基布と前記本体基布とを接合することにより膨張部の内部に気室を区画する区画接合部とを備え、前記区画接合部は、前記気室の周囲を区画する区画本体接合部と、この区画本体接合部から延設された区画延設接合部とを備えているものである。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載のエアバッグによれば、一対の本体基布を接合する接合部を、膨張部の周囲を区画する本体接合部と、この本体接合部から膨張部の内方へと延設する延設接合部とによって構成することで、延設接合部の伸縮によって展開衝撃を受けて本体接合部に加わる衝撃を緩和できるので、本体基布の接合の強度を確保でき、本体基布を接合する縫製の糸やステッチ仕様などの合理化や縫製の省略が可能になるため、製造コストを抑制できる。
【0018】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加え、互いに離間して配置した各延設接合部の先端側の幅寸法を基端側の幅寸法よりもそれぞれ大きく形成することで、延設接合部による衝撃吸収のプロセスが先端側と基端側との2段階となり、延設接合部から本体接合部へと開裂が一連化することを抑制でき、本体基布の接合をより確実に維持できる。
【0019】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項1または2記載のエアバッグの効果に加え、延設接合部の先端側の厚さ寸法を基端側の厚さ寸法よりも大きく形成することで、延設接合部による衝撃吸収のプロセスが先端側と基端側との2段階となり、延設接合部から本体接合部へと開裂が一連化することを抑制でき、本体基布の接合をより確実に維持できるとともに、衝撃吸収のプロセスを先端側と基端側とで2段階とする延設接合部を、接合の際の圧縮などによって容易に形成できる。
【0020】
請求項4記載のエアバッグによれば、請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグの効果に加え、衝撃吸収性を必要とする延設接合部を弾性体により形成し、気密維持性を必要とする本体接合部の少なくとも反膨張部側を、延設接合部を形成する弾性体よりも伸び性が小さい弾性体により形成することで、気密維持性と衝撃吸収性とをより容易に両立できる。
【0021】
請求項5記載のエアバッグによれば、請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグの効果に加え、膨張部内に配置した一対の区画基布同士、及び区画基布と本体基布とを接合する区画接合部を、気室の周囲を区画する区画本体接合部と、この区画本体接合部から延設する区画延設接合部とによって構成することで、区画延設接合部の伸縮によって展開衝撃を受けて区画本体接合部に加わる衝撃を緩和できるので、区画基布同士の接合の強度及び区画基布と本体基布との接合の強度を確保でき、これらを接合する縫製の糸やステッチ仕様などの合理化や縫製の省略が可能になるため、製造コストをより抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のエアバッグの第1の実施の形態の一部を拡大して示す説明図である。
【図2】同上エアバッグを車室側から見た側面図である。
【図3】同上エアバッグを模式的に示す断面図である。
【図4】本発明のエアバッグの第2の実施の形態の一部を拡大して示す説明図である。
【図5】同上エアバッグの一部を切り欠いて示す説明図である。
【図6】本発明のエアバッグの第3の実施の形態の接合部を拡大して示す説明図である。
【図7】同上エアバッグの接合部を形成するノズルの動作を示す説明図である。
【図8】本発明のエアバッグの第4の実施の形態の一部を示す説明図である。
【図9】同上エアバッグの一部を示す断面図であり、(a)は延設接合部が伸びている状態を示し、(b)は延設接合部が破断した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明のエアバッグの第1の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0024】
図1ないし図3において、10はエアバッグで、このエアバッグ10を備えたエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれるもので、車両としての自動車を構成する車体の車室の収納位置であるルーフサイド部に配置されている。そして、このエアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての座席に着席した乗員の側方にほぼ面状に展開し、乗員を保護するようになっている。
【0025】
なお、以下、車幅方向である両側方向、上下方向、及び、前後方向などの方向は、車体の直進方向を基準とし、下方(図2などに示す矢印D方向)、上方(図2などに示す矢印U方向)、前側方向(図2などに示す矢印F方向)、後側方向(図2などに示す矢印R方向)、外方などを説明する。
【0026】
そして、この自動車の車体は、図示しないが、車室内に乗員が着座可能な前席及び後席などの座席を備え、これら前席及び後席に対応して、開口可能な窓部(サイドウィンドウ)を備えたドアが設けられている。また、車室の両側部には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれるフロントピラー、Bピラーとも呼ばれるセンターピラー、Cピラーとも呼ばれるリアピラーが設けられている。そして、これら窓部、ドア及び各ピラーなどにより、車室の両側の側部に所定面が構成されている。また、これらピラーの上側、すなわち窓部の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネルが設けられ、この車体パネルを介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、両側のフロントピラーの前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラーの後側にはリアガラスが設けられている。そして、ルーフサイド部は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分と交差する方向に伸びるフロントピラー及びリアピラーのほぼ全長にかかる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー及びリアピラーとで仮想的に構成される弧の内側に、エアバッグ10が展開する所定面が設定される。
【0027】
なお、ここで、センターピラーとは、前後の端部のピラーではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラーを示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラーを備える場合があるが、前から3本目以後のピラーは、リアピラーとして説明する。
【0028】
そして、エアバッグ装置は、前席及び後席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、ルーフサイド部に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ10に加え、後席の後部上側に位置してエアバッグ10に膨張のための膨張ガスを供給するガス発生器である図示しないインフレータ、エアバッグ10を取り付けるブラケット、折り畳んだエアバッグ10に沿って取り付けられた樹脂製のカバー体、折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する形状保持部材及び制御装置などが備えられ、モジュールが構成されている。
【0029】
エアバッグ10は、前後方向に沿って長手方向を有する長手状の(扁平な)袋状に形成されたエアバッグ本体部26と、このエアバッグ本体部26にインフレータからの膨張ガスを供給するガス供給部としてのインフレータ接続部27と、エアバッグ本体部26の上縁部に形成された取付部28と、エアバッグ本体部26の前側の下端部に取り付けられたテザー部29となどを備え、前後方向を長手方向として細長く折り畳んでルーフサイド部に収納される。そして、エアバッグ本体部26は、一対の本体基布31,31が厚さ方向に重ねられてその周囲が接合部32によって弾性的に接合されて構成されている。
【0030】
また、各本体基布31は、一方が乗員側基布で他方が車体側基布であり、所定の目止め材であるシリコーンゴムによりコーティングを施すことで目止め処理が行われている。さらに、各本体基布31は、前後方向に長手状の略四角形状に形成されており、例えば長手方向の一端部である後端部の上側に、インフレータ接続部27を形成する突出部35が後方に向けて突設されているとともに、上側の複数の位置に、取付部28を形成する取付突出部36が上方に向けて直線状にそれぞれ突設されている。そして、これら本体基布31の間には、インフレータ接続部27と連通する一方及び他方の膨張室41,42が前後に区画されており、これら膨張室41,42の上側が連通部43によって互いに連通している。これら一方及び他方の膨張室41,42及び連通部43によって、膨張部44が構成されている。さらに、連通部43の下方は、非膨張部45となっている。
【0031】
一方の膨張室41は、展開時に前席の乗員の側方に対向して展開する前席保護部であり、他方の膨張室42は、展開時に後席の乗員の側方に対向して展開する後席保護部である。
【0032】
そして、接合部32は、一方及び他方の膨張室41,42を略気密あるいは高度な気密とするように一対の本体基布31を接合するものであり、膨張部44、すなわち一方の膨張室41、他方の膨張室42、連通部43とインフレータ接続部27との周囲に沿って連続しこれらを区画する本線である本体接合部47と、この本体接合部47から膨張部44の内方、すなわち一方の膨張室41、他方の膨張室42及び連通部43側へと複数延設された突起である延設接合部48とを一体に有している。
【0033】
本体接合部47は、例えばシリコーンゴムなどの所定の弾性体であるシール剤(シーラント)により一定幅の帯状に形成されている。したがって、本体接合部47の内部の各延設接合部48間には、一方の膨張室41、他方の膨張室42及び連通部43に臨む平坦部51が形成されている。
【0034】
また、各延設接合部48は、例えば本体接合部47と同一のシール剤により形成されており、基端側を構成する基端接合部53と先端側を構成する先端接合部54とを一体に有している。さらに、これら延設接合部48は、本体接合部47の全体に亘って略一定間隔(距離A1)で互いに離間されて配置されている。換言すれば、各平坦部51の長さ、すなわち基端接合部53,53間が距離A1となっている。そして、各延設接合部48は、本体接合部47の法線方向に沿って、すなわち本体接合部47に対してほぼ直交する方向に沿ってそれぞれ突設されている。
【0035】
ここで、本体接合部47及び各延設接合部48、すなわち接合部32を構成するシール剤は、例えば硬さ(デュロメータタイプA)7以上20以下、密度1.2g/cm3以上1.3g/cm3以下、引張り強さ2MPa以上、伸び1200%以上、粘度100Pa・s以上300Pa・s以下などの特性を有する、エアバッグ10に一般的に使用されるものが用いられる。
【0036】
また、基端接合部53は、細長い直線状に形成されており、基端側が本体接合部47と連続するとともに先端側が先端接合部54と連続している。したがって、この基端接合部53の両側は、本体接合部47の互いに隣り合う平坦部51に対して、円弧状に湾曲した湾曲部56,56を介して連続する直線部57,57となっている。
【0037】
さらに、先端接合部54は、基端接合部53よりも幅寸法が大きい、すなわち幅広の円形状に形成されている。このため、各延設接合部48は、基端側が先端側に対して幅方向に括れた形状、換言すれば平面視の括れ形状となっている。また、この先端接合部54の外周は、直線部57,57間に連続して一方の膨張室41、他方の膨張室42及び連通部43の内部に突出する円弧部59となっている。ここで、隣り合う延設接合部48,48の先端接合部54,54間の距離A2は、隣り合う延設接合部48,48間の距離A1(基端接合部53,53間の距離)の1/2以下に設定されている。また、この先端接合部54の円弧部59の周長は、距離A1よりも大きく設定されている。
【0038】
さらに、テザー部29は、エアバッグ10を車室に連結するためのものであり、吊り紐、テザー、テザーベルト、あるいはストラップなどとも呼ばれる。
【0039】
また、カバー体は、ガーニッシュあるいはピラーガーニッシュとも呼ばれるもので、ルーフサイド部の最前部のピラー及び最後部のピラーのほぼ全長に配置され、テザー部を覆うとともに、折り畳んだエアバッグ10の一部を覆うようになっている。そして、このカバー体は、エアバッグ10の展開時に一部が屈曲することによりエアバッグ10を膨張展開可能としている。
【0040】
一方、インフレータは、円柱状のインフレータ本体部を備え、このインフレータ本体部に、薬剤を燃焼させる燃焼式(パイロテクニックタイプ)、膨張ガスを高圧で貯蔵する貯蔵式(ストレージタイプ)、あるいはこれら燃焼式と貯蔵式とを組み合わせたハイブリッド式などのガス発生手段が内蔵されている。そして、このインフレータ本体部には、膨張ガスを噴射するガス噴射部が設けられ、このガス噴射部が接続管によりエアバッグ10のインフレータ接続部27に接続されている。また、インフレータ本体部には、ハーネスと呼ばれる電線が接続されるコネクタ部が設けられている。
【0041】
さらに、制御装置は、インフレータに電気的に接続されている。
【0042】
また、形状保持部材は、所定の形状に折り畳まれたエアバッグ10の形状を保持して折り崩れを防止するもので、破断可能なスリットを設けた筒状部材や、破断可能な粘着テープなどが用いられる。
【0043】
そして、エアバッグ10を製造する際には、まず、予め所定の形状に構成した一方の本体基布31に対してシール剤を塗布する。このシール剤の塗布方法は種々可能であるが、例えばまず塗布手段としてのノズルからシール剤を一定量ずつ吐出して本体接合部47を一方の本体基布31の全周に形成した後、同一のノズル、あるいは別のノズルから本体接合部47に対して一定の間隔で内部側へと各延設接合部48を順次突出させる。
【0044】
次いで、予め所定の形状に構成した他方の本体基布31を一方の本体基布31に対して重ね、これら本体基布31,31をプレスすることによりシール剤を硬化(キュア)させて接合部32を構成する。この結果、一方及び他方の膨張室41,42が連通部43により互いに連通するとともにインフレータ接続部27に連通するエアバッグ10が完成する。
【0045】
このエアバッグ10の折畳方法は、種々の方法を採ることができるが、例えば下側部をロール状に折り畳むとともに、上側部を蛇腹状に折り畳む。
【0046】
そして、このエアバッグ装置(カーテンエアバッグモジュール)を車室内に持ち込み、ヘッドライニング及びピラーガーニッシュなどの内装部材が取り付けられる前に車体への取付作業を行う。この取付作業は、エアバッグ10の複数の取付部28、テザーベルト、インフレータに設けたインフレータ取付部、及び、取付ブラケットをそれぞれボルトなどの固定具で車体に固定することにより行われる。また、インフレータから導出されたハーネスを車体に備えた制御装置に接続する。次いで、車体の天井パネルにヘッドライニングを取り付け、各ピラーにピラーガーニッシュを取り付けてエアバッグ装置を覆うことにより、エアバッグ装置の車体への取付作業、すなわち、折り畳んだエアバッグ10を所定面の上縁部に沿った収納位置であるルーフサイド部に配置する作業が完了する。
【0047】
そして、車両の側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータが作動し、このインフレータから噴射される膨張ガスがインフレータ接続部27からエアバッグ10内へと導入される。
【0048】
この導入された膨張ガスは、他方の膨張室42に流入するとともに、連通部43を介して一方の膨張室41に流入する。この結果、エアバッグ10の蛇腹状に折り畳んだ上部が迅速に膨張展開して、ヘッドライニング及び前後のピラーガーニッシュを押しのける。この後、一方及び他方の膨張室41,42が膨張することにより、エアバッグ10が車室の側部内面である所定面に沿った所定方向である略下方に迅速にカーテン状に膨張展開して、窓部及びセンターピラーなどを覆い、側方に投げ出されてくる乗員を拘束してその頭部などを保護する。
【0049】
このとき、エアバッグ10には、充填された膨張ガスによって本体基布31,31が互いに離れる方向、すなわち接合部32を引き剥がす方向へと展開衝撃が加わる。特に、低温または常温での展開時よりも急速かつ積極的に膨張ガスが充填される高温展開時(例えば雰囲気温度100℃)の場合、接合部32に対して100〜150N/cm程度の展開衝撃が接合部32に加わる。
【0050】
そこで、本実施の形態では、一対の本体基布31,31を接合する接合部32を、膨張部44の周囲を区画する本体接合部47と、この本体接合部47から膨張部44の内方へと延設する延設接合部48とによって構成したことで、仮に接合部32を構成するシール剤単体の接合強度としては展開衝撃に耐え得る強度を有していなくても、内方へと突出する延設接合部48の伸縮、すなわち伸びや破断によって展開衝撃を受けて本体接合部47に加わる衝撃を分散して緩和でき、本体基布31,31の接合の強度を確保でき、展開衝撃に耐えることができる。この結果、本体基布31,31を接合する縫製の糸やステッチ仕様などの合理化、すなわち縫製に用いる糸の番手を細い糸に下げたり、運針数を減らしたり、縫い仕様を簡略化(二重環縫の2列を1列にする)したりするなどの低スペックのものへの移行や、縫製の省略(縫製レスのエアバッグ10)が可能になるので、製造コストを抑制できる。
【0051】
そして、エアバッグ10の縫製による硬さ(こわさ)が下がって柔軟性が上がるので、エアバッグ10を容易に小さく折り畳め、収納スペースを抑制できる。
【0052】
また、互いに離間されて配置された延設接合部48の先端側である先端接合部54の幅寸法を基端側である基端接合部53の幅寸法よりもそれぞれ大きく形成することで、延設接合部48による展開衝撃の吸収のプロセスが先端側と基端側との2段階となり、延設接合部48から本体接合部47への開裂の一連化、すなわち延設接合部48から本体接合部47へと連続かつ一気に破断する動作を抑制でき、本体基布31,31の接合をより確実に維持できる。
【0053】
しかも、延設接合部48の先端接合部54,54間の距離A2を、基端接合部53,53間の距離A1の1/2以下とすることにより、本体接合部47の平坦部51に加わる展開衝撃を、先端接合部54によって、より確実に分散でき、本体基布31,31の接合をより確実に維持できる。
【0054】
そして、延設接合部48の先端接合部54の円弧部59の周長を平坦部51の長さである距離A1よりも大きくすることにより、延設接合部48によって、本体接合部47の平坦部51に加わる展開衝撃をより確実に分散でき、本体基布31,31の接合をより確実に維持できる。しかも、先端接合部54は、基端接合部53に対して幅寸法が大きいため、接合面積がより拡大され、展開衝撃に伴う引き剥がし力に対する耐久力が増加するだけでなく、先端接合部54が展開衝撃により破断して接合が仮に破壊されたとしても、先端接合部54,54間の隙間からの展開衝撃は本体接合部47の平坦部51で確実に受け止めることができる。
【0055】
次に、第2の実施の形態を図4及び図5を参照して説明する。なお、上記第1の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0056】
この第2の実施の形態は、上記第1の実施の形態の膨張部44、例えば一方の膨張室41の内部に複数のチャンバである気室61をそれぞれ区画する一対の区画基布62,62を備えるものである。
【0057】
各区画基布62は、前後方向に長手状の四角形状にそれぞれ形成されており、一方の区画基布62は、長手方向の所定間隔で一方の本体基布31と他方の区画基布62とに区画接合部64によって交互に弾性的に接合され、他方の区画基布62は、長手方向の所定間隔で他方の本体基布31と一方の区画基布62とに区画接合部64によって交互に接合されている。したがって、各区画基布62は、幅方向に互いに線対称にジグザグ状に屈曲しており、区画基布62,62間、あるいは区画基布62,62と一方及び他方の本体基布31,31との間にそれぞれ気室61が区画されている。
【0058】
これら気室61は、前後に隣接して配置され、上下両端にてそれぞれ前後方向に長手状の連通路66,67に対して並列に接続されている。
【0059】
また、各区画接合部64は、各区画基布62の上下方向に亘って連続して形成されている。これら区画接合部64は、上下方向に沿って長手状に連続し気室61の周囲を区画する区画本線である区画本体接合部71と、この区画本体接合部71から複数延設された区画突起である区画延設接合部72とを一体に有している。
【0060】
区画本体接合部71は、例えば接合部32と同様のシリコーンゴムなどの所定の弾性体であるシール剤により一定幅の帯状に形成されている。したがって、区画本体接合部71の前後両側の各区画延設接合部72間には、各気室61に臨む区画平坦部74が形成されている。
【0061】
また、各区画延設接合部72は、例えば区画本体接合部71と同一のシール剤により形成されており、基端側を構成する区画基端接合部77と先端側を構成する区画先端接合部78とを一体に有している。さらに、これら区画延設接合部72は、区画本体接合部71の全体に亘って略一定間隔(距離A3)で配置されている。換言すれば、各区画平坦部74の長さが距離A3となっている。そして、各区画延設接合部72は、区画本体接合部71の法線方向に沿って、すなわち区画本体接合部71に対してほぼ直交する方向に沿ってそれぞれ突設されている。なお、各区画延設接合部72は、各区画基布62,62の最前部に位置する区画接合部64については、区画本体接合部71の後部及び上下部に突設され、各区画基布62,62の最後部に位置する区画接合部64については、区画本体接合部71の前部及び上下部に突設され、それ以外の各区画接合部64については、区画本体接合部71の前後部及び上下部に突設されている。
【0062】
また、区画基端接合部77は、細長い直線状に形成されており、基端側が区画本体接合部71と連続するとともに先端側が区画先端接合部78と連続している。したがって、この区画基端接合部77の両側は、区画本体接合部71の互いに隣り合う区画平坦部74に対して、円弧状に湾曲した区画湾曲部81,81を介して連続する区画直線部82,82となっている。
【0063】
さらに、区画先端接合部78は、区画基端接合部77よりも幅寸法が大きい、すなわち幅広の円形状に形成されている。したがって、この区画先端接合部78の外周は、区画直線部82,82間に連続して各気室61の内方に向けて突出する区画円弧部84となっている。ここで、隣り合う区画延設接合部72,72の区画先端接合部78,78間の距離A4は、隣り合う区画延設接合部72,72間の距離A3(区画基端接合部77,77間の距離)の1/2以下に設定されている。また、この区画先端接合部78の区画円弧部84の周長は、距離A3よりも大きく設定されている。
【0064】
そして、インフレータから供給された膨張ガスが充填されたエアバッグ10には、充填された膨張ガスによって本体基布31,31が互いに離れる方向、すなわち接合部32を引き剥がす方向、及び、区画基布62,62が互いに離れる方向及び本体基布31と区画基布62とが互いに離れる方向、すなわち区画接合部64を引き剥がす方向へと展開衝撃が加わる。
【0065】
このとき、接合部32では、内方へと突出する延設接合部48の伸びや破断によって展開衝撃を受けて本体接合部47に加わる衝撃を分散して緩和する。
【0066】
また、区画接合部64では、気室61側へと突出する区画延設接合部72の伸びや破断によって展開衝撃を受けて区画本体接合部71に加わる衝撃を分散して緩和する。
【0067】
このように、本実施の形態によれば、膨張部44内に配置した一対の区画基布62,62同士、及び区画基布62と本体基布31とを接合する区画接合部64を、気室61の周囲を区画する区画本体接合部71と、この区画本体接合部71から延設する区画延設接合部72とによって構成することで、区画延設接合部72の伸縮、すなわち伸びや破断によって展開衝撃を受けて区画本体接合部71に加わる衝撃を緩和できるので、区画基布62,62の接合の強度及び区画基布62と本体基布31との接合の強度を確保でき、展開衝撃に耐えることができる。この結果、区画基布62,62の接合の強度及び区画基布62と本体基布31とを接合する縫製の糸やステッチ仕様などの合理化、すなわち縫製に用いる糸の番手を細い糸に下げたり、運針数を減らしたり、縫い仕様を簡略化(二重環縫の2列を1列にする)したりするなどの低スペックのものへの移行や、縫製の省略(縫製レスのエアバッグ10)が可能になるので、製造コストを抑制できる。
【0068】
特に、区画基布62と本体基布31とを接合する区画接合部64を補強するために、この区画接合部64上に縫製を施した場合には、区画基布62と本体基布31との接合面間において気室61,61間で膨張ガスのリークが生じたり、縫製により生じる縫い目において一方の膨張室41の外部への膨張ガスのリークが生じたりするおそれがあるのに対して、本実施の形態では、区画基布62と本体基布31とを接合する区画接合部64に補強用の縫製などを施さなくても、展開衝撃に耐えることができるので、縫製により生じ得る問題を回避できる。
【0069】
また、区画延設接合部72の先端側である区画先端接合部78の幅寸法を基端側である区画基端接合部77の幅寸法よりも大きく形成することで、区画延設接合部72による展開衝撃の吸収のプロセスが先端側と基端側との2段階となり、区画延設接合部72から区画本体接合部71へと開裂が一連化、すなわち区画延設接合部72から区画本体接合部71へと連続かつ一気に破断する動作を抑制でき、区画基布62,62の接合及び区画基布62と本体基布31との接合をより確実に維持できる。
【0070】
しかも、区画延設接合部72の区画先端接合部78,78間の距離A4を、区画基端接合部77,77間の距離A3の1/2以下とすることにより、区画本体接合部71の区画平坦部74に加わる展開衝撃を、区画先端接合部78によって、より確実に分散でき、区画基布62,62の接合及び区画基布62と本体基布31との接合をより確実に維持できる。
【0071】
そして、区画延設接合部72の区画先端接合部78の区画円弧部84の周長を区画平坦部74の長さである距離A3よりも大きくすることにより、区画延設接合部72によって、区画本体接合部71の区画平坦部74に加わる展開衝撃をより確実に分散でき、区画基布62,62の接合及び区画基布62と本体基布31との接合をより確実に維持できる。しかも、区画先端接合部78は、区画基端接合部77に対して幅寸法が大きいため、接合面積がより拡大され、展開衝撃に伴う引き剥がし力に対する耐久力が増加するだけでなく、区画先端接合部78が展開衝撃により破断して接合が仮に破壊されたとしても、区画先端接合部78,78間の隙間からの展開衝撃は区画本体接合部71の区画平坦部74で確実に受け止めることができる。
【0072】
さらに、区画延設接合部72を区画本体接合部71から前後にそれぞれ延設することにより、前後に隣り合う気室61,61の膨張による前後両側方向(図4に示す矢印X,Y方向)に加わる展開衝撃を確実に受け止めることができる。
【0073】
なお、上記の第2の実施の形態において、各気室61,61間の気密性は、一方及び他方の膨張室41,42の気密性が確保されていれば、これら一方及び他方の膨張室41,42の気密性ほど問題にしなくてよいため、区画基布62,62同士は、区画接合部64に代えて、縫製により接合してもよい。
【0074】
次に、第3の実施の形態を図6及び図7を参照して説明する。なお、上記各実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0075】
この第3の実施の形態は、上記の各実施の形態において、接合部32を、一方及び他方の塗布手段としての一方及び他方のノズルN1,N2を備えたノズルユニットを用いて形成するものである。
【0076】
一方のノズルN1は、本体接合部47の外部47aを形成するためのものであり、相対的に大径の吐出開口を有している。
【0077】
また、他方のノズルN2は、本体接合部47の内部47b及び延設接合部48を形成するためのものであり、相対的に小径の吐出開口を有している。
【0078】
そして、一方のノズルN1は、一定量のシール剤を吐出しつつノズルユニットの送り方向に所定の中速で移動させることで、本体接合部47の外部47aを帯状に形成する。
【0079】
また、他方のノズルN2は、一定量のシール剤を吐出しつつ、平坦部51に対応する位置では一方のノズルN1と平行、すなわちノズルユニットの送り方向に所定の中速で移動させ本体接合部47の内部47bを帯状に形成するとともに、一方の直線部57に対応する位置では一方のノズルN1に対して離間される方向へとほぼ垂直に所定の中速よりも速い所定の高速で移動させ、円弧部59に対応する位置では円弧状に折り返すように所定の中速よりも遅い所定の低速で移動させ、他方の直線部57に対応する位置では一方のノズルN1に対して接近させる方向へとほぼ垂直に所定の中速よりも速い所定の高速で移動させることで、基端接合部53が本体接合部47から突出する細い直線状で、先端接合部54が多めのシール剤により玉状(円形状)となった延設接合部48を形成する。
【0080】
この結果、帯状の本体接合部47と、この本体接合部47から内方に突出し先端側の幅寸法が基端側の幅寸法よりも大きい延設接合部48とを備える接合部32を容易に形成できる。
【0081】
なお、上記の第3の実施の形態において、一方のノズルN1から吐出するシール剤と他方のノズルN2から吐出するシール剤とは、同一でもよいし互いに異なっていてもよい。すなわち、本体接合部47の少なくとも外部47aと延設接合部48とは、互いに異なるシール剤により形成してもよい。この場合には、衝撃吸収性を必要とする延設接合部48と気密維持性を必要とする本体接合部47とのそれぞれに適した特性の材料を選択配置することが可能になるので、気密維持性と衝撃吸収性とをより容易に両立できる。しかも、第3の実施の形態のように、一方及び他方のノズルN1,N2を用いて接合部32を構成する場合、一方のノズルN1から吐出するシール剤と他方のノズルN2から吐出するシール剤を互いに異ならせるだけで、本体接合部47の少なくとも外部47aと延設接合部48とを互いに異なるシール剤により形成する接合部32を容易に構成できる。
【0082】
また、上記の第2の実施の形態の区画接合部64に対して第3の実施の形態の一方及び他方のノズルN1,N2とシール剤とを同様に用いることで、区画接合部64についても上記第3の実施の形態の接合部32と同様に構成でき、同様の作用効果を奏することができる。
【0083】
次に、第4の実施の形態を図8及び図9を参照して説明する。なお、上記第1及び第2の実施の形態と同様の構成及び作用については、同一符号を付してその説明を省略する。
【0084】
この第4の実施の形態は、上記の第1及び第2の実施の形態の接合部32が、一方の膨張室41、他方の膨張室42、連通部43及びインフレータ接続部27の周囲に沿って連続する本線である本体接合部86と、この本体接合部86から内方、すなわち一方の膨張室41、他方の膨張室42及び連通部43側へと突出する突起である延設接合部87とを一体に有しているものである。
【0085】
図8に示すように、本体接合部86は、例えばシリコーンゴムなどの所定の弾性体であるシール剤(シーラント)により一定幅の帯状に形成されている。この本体接合部86を構成するシール剤としては、例えば接合強度が大きく伸び性が若干小さいものが用いられる。
【0086】
また、延設接合部87は、例えば本体接合部86を構成するシール剤よりも伸び性が大きい所定の弾性体であるシール剤により本体接合部86と平行な一定幅の帯状に形成されている。さらに、この延設接合部87は、基端側を構成し本体接合部86と連続する基端接合部91と先端側を構成する先端接合部92とを一体に有している。
【0087】
また、基端接合部91は、本体接合部86に対して厚みが小さい薄手、すなわち薄肉状に形成されている。さらに、先端接合部92は、基端接合部91に対して厚さ寸法が大きい厚手、すなわち厚肉状に形成されている。したがって、延設接合部87は、基端側が先端側に対して厚み方向に括れた形状、換言すれば断面視の括れ形状となっている。
【0088】
そして、エアバッグ10を製造する際には、まず、予め所定の形状に構成した一方の本体基布31に対してシール剤を塗布する。このシール剤の塗布方法は種々可能であるが、例えば一方の塗布手段としての図示しない一方のノズル部から一方のシール剤を一定量ずつ吐出して本体接合部86を一方の本体基布31の全周に形成するとともに、一方のノズル部と異なる他方の塗布手段としての図示しない他方のノズル部から他方のシール剤を一定量ずつ吐出して延設接合部87を本体接合部86の内部に沿って平行に一方の本体基布31の全周に形成する。
【0089】
次いで、予め所定の形状に構成した他方の本体基布31を一方の本体基布31に対して重ね、これら本体基布31,31を圧縮(プレス)することによりシール剤を硬化(キュア)させるとともに、押し型によって延設接合部87の基端側を押し込むことによって基端側が先端側よりも薄手(先端側が基端側よりも厚手)の延設接合部87を有する接合部32を構成する。この結果、一方及び他方の膨張室41,42が連通部43により互いに連通するとともにインフレータ接続部27に連通するエアバッグ10が完成する。
【0090】
そして、エアバッグ10の展開の際には、膨張ガスの圧力により一方及び他方の膨張室41,42が膨張することで、本体基布31,31が互いに離れる方向へと力を受ける。そのため、図9(a)に示すように、まず、本体接合部86の内部に位置する延設接合部87が力を受けて伸びてエネルギを吸収するとともに、所定以上の力を受けた場合には、図9(b)に示すように、延設接合部87が自ら破断することによってエネルギをさらに吸収して本体接合部86を保護し、接合部32による所定の接合強度を維持する。このとき、延設接合部87と本体接合部86とは構成するシール剤が異なっているため、仮に延設接合部87が破断したとしてもその破断が本体接合部86まで一気に伝播しにくい。
【0091】
このように、延設接合部87の先端接合部92の厚さ寸法を基端接合部91の厚さ寸法よりも大きく形成することで、延設接合部87による衝撃吸収のプロセスが先端接合部92側と基端接合部91側との2段階となり、延設接合部87から本体接合部86へと連続かつ一気に破断する開裂の一連化を抑制でき、本体基布31,31の接合をより確実に維持できるとともに、衝撃吸収のプロセスを先端接合部92側と基端接合部91側とで2段階とする延設接合部87を、シール剤の接合の際の圧縮のときに押し型により押し込むことなどによって容易に形成できる。
【0092】
また、衝撃吸収性を必要とする延設接合部87を高伸び性の弾性体であるシール剤により形成し、気密維持性を必要とする本体接合部86の少なくとも外部すなわち反膨張部44側を、延設接合部87を形成するシール剤よりも伸び性が小さい弾性体であるシール剤により形成することで、それぞれに適した特性の材料を選択配置することが可能になるので、気密維持性と衝撃吸収性とをより容易に両立できる。
【0093】
なお、上記の各実施の形態において、延設接合部48,87は、本体接合部47,86から内方へと突出する任意の形状とすることができる。
【0094】
また、エアバッグ10は、上側から下側に向かって展開して自動車の側方の窓部を覆う構成に限られず、例えばドアの上部から上側に向かって展開する、いわゆるドアマウントエアバッグ、あるいは、シートの背部の側部から前側に向かって展開する、いわゆるサイドエアバッグなど、所定面に沿って面状に膨張展開する必要がある適宜のエアバッグ装置に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明は、例えば自動車の側部の窓部に沿って取り付けられ展開することで乗員を保護するエアバッグに適用できる。
【符号の説明】
【0096】
10 エアバッグ
31 本体基布
32 接合部
44 膨張部
47,86 本体接合部
48,87 延設接合部
61 気室
62 区画基布
64 区画接合部
71 区画本体接合部
72 区画延設接合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する一対の本体基布、及びこれら本体基布を接合することにより膨張部を区画する接合部を備えた袋状に形成され、前記膨張部に膨張ガスが導入されることにより展開するエアバッグであって、
前記接合部は、
前記膨張部の周囲を区画する本体接合部と、
この本体接合部から前記膨張部の内方へと延設された延設接合部とを有している
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
延設接合部は、互いに離間されて複数配置され、それぞれの先端側が基端側よりも幅寸法が大きく形成されている
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
延設接合部は、先端側が基端側よりも厚さ寸法が大きく形成されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ。
【請求項4】
延設接合部は、弾性体により形成され、
本体接合部は、少なくとも反膨張部側が前記延設接合部を形成する弾性体よりも伸び性が小さい弾性体により形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載のエアバッグ。
【請求項5】
膨張部内に配置された一対の区画基布と、
これら区画基布同士及びこれら区画基布と前記本体基布とを接合することにより膨張部の内部に気室を区画する区画接合部とを備え、
前記区画接合部は、
前記気室の周囲を区画する区画本体接合部と、
この区画本体接合部から延設された区画延設接合部とを備えている
ことを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載のエアバッグ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−23138(P2013−23138A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−161986(P2011−161986)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】