説明

エアブラストインジェクタ

【課題】噴射初期の微粒化を達成し、剪断能力を高めて加圧空気と液体燃料の混合性を促進し、吸出能力を高めて吸出し速度の向上を図る。
【解決手段】第2ニードル9に液体燃料が供給される中心孔11を設け、第2ニードル9と第2ノズルボディ8との間に加圧空気の流れるエア流路12を設け、エア流路12の途中にベンチュリー部13を設ける。そして、ベンチュリー部13を通過した後で、流速がマッハ1(音速)を超える領域に、液体燃料を吸い出す細孔15の燃料出口を開口させる。細孔15より吸い出された液体燃料は、マッハ1を超える流速の加圧空気によって剪断能力が高められて加圧空気との混合性が促進し、噴射初期から微粒化した燃料が第2噴射孔7から気筒内へ噴射される。また、この細孔15の燃料出口が設けられる領域は、拡径に伴う負圧化により吸出能力が高められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加圧された液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタと、この第1インジェクタから噴射された液体燃料とともに、外部から供給された加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタとを備えるエアブラストインジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン(燃料の燃焼エネルギーにより回転トルクを発生する内燃機関)に搭載される燃料噴射装置では、燃費向上およびエミッション低減を目的として、液体燃料を微粒化してインジェクタより噴射する技術が望まれる。
液体燃料の微粒化を達成するインジェクタとして、エアブラストインジェクタが知られている。エアブラストインジェクタは、液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタと、この第1インジェクタから噴射された液体燃料と加圧空気を一緒に噴射させる第2インジェクタとから構成される複合インジェクタであり、加圧空気が第2噴射孔(第2インジェクタの噴射孔)を通過する際に音速化することで、加圧空気とともに噴射される液体燃料を微粒化するものである。
【0003】
エアブラストインジェクタの従来技術を、図8を参照して説明する(例えば、特許文献1参照)。なお、背景技術において使用する符号は、後述する[発明を実施するための形態]および[実施例]と同一機能物に対して同一符号を付したものである。
【0004】
第1インジェクタ1の第1噴射孔3(燃料噴射孔)は、第2インジェクタ2の第2ニードル9に設けられた中心孔11の上端と対向配置されており、第1噴射孔3は中心孔11の上端部に向けて燃料の噴射を行なう。
一方、第1インジェクタ1の第1噴射孔3が燃料噴射を行なう空間(第1インジェクタ1の下部空間)には、エア導入通路43を介して外部から加圧された空気(エアポンプで加圧された空気)が供給される。
これにより、第2インジェクタ2の上部には、第1インジェクタ1から噴射燃料が供給されるとともに、エア導入通路43を介して加圧空気が供給される。
【0005】
第1インジェクタ1から第2インジェクタ2の上部に噴射供給された燃料は、主に中心孔11を通り、中心孔11の下端から第2ニードル9の下側側面に形成された太穴J1を通って、エア流路12の下端に溜まる。
そして、第2噴射孔7が開弁すると、エア流路12の下端に溜まった液体燃料が、加圧空気に押し出されて噴射する。
その結果、第2噴射孔7の開弁初期(噴射初期)には、エア流路12の下端に溜まった液体燃料がまとまった状態で第2噴射孔7から外部に押し出されることになり、噴射初期の噴霧粒径が大きくなってしまう。
【0006】
そこで、噴射初期の噴霧粒径を小さくする手段として、図9に示す技術が考えられる(この技術は参考例であり、周知技術ではない)。
この図9に示す技術は、エア流路12の通路途中に加圧空気の流路面積を絞るベンチュリー部13を設けるとともに、中心孔11の下端からベンチュリー部13に通じる細孔15を設けるものであり、ベンチュリー効果(エジェクタ効果)によって、中心孔11の液体燃料を、ベンチュリー部13を通過する加圧空気中に吸い出させるものである。
具体的には、第2噴射孔7の開弁時に、ベンチュリー部13を通過する加圧空気中に液体燃料が吸い込まれる。その結果、噴射初期から、ベンチュリー部13において燃料を吸い込んだ加圧空気が第2噴射孔7から噴射される。このため、第2インジェクタ2の噴射初期から噴霧粒径を微粒化することができる。
【0007】
(問題点1)
ここで、図9に示す参考例は、ベンチュリー効果を得る目的で、細孔15の燃料出口をベンチュリー部13の途中に開口させていた。
しかし、ベンチュリー部13を通過する加圧空気の流速解析を行なったところ{図2(a)参照}、加圧空気の通過速度の最速部位は、ベンチュリー部13の通過中ではないことを見出した。
このため、細孔15から吸い出された液体燃料を、ベンチュリー部13を通過する加圧空気が剪断する剪断能力が低く、加圧空気と液体燃料との混合性に改善の余地があった。
【0008】
(問題点2)
また、ベンチュリー部13の周辺における加圧空気の圧力解析を行なったところ{図2(b)参照}、ベンチュリー部13は、流速が速くても、加圧空気が狭い流路を通過する部分であるため大きな圧力低下が得られていなかった。
このため、中心孔11の液体燃料を細孔15が吸い出す吸出能力が低く、燃料の吸出し速度が遅くなっていた。
なお、上記吸出能力を高めるために細孔15の径を太くすると、第2噴射孔7が開弁する前に、液体燃料が細孔15から漏れ出てしまい、第2インジェクタの噴射初期の微粒化の達成ができなくなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−325383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ベンチュリー効果を用いて第2インジェクタの噴射初期の微粒化を達成するエアブラストインジェクタにおいて、
(i)細孔から吸い出された液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を高めて加圧空気と液体燃料の混合性を促進するとともに、
(ii)中心孔の液体燃料を細孔が吸い出す吸出能力を高めて吸出し速度の向上を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[請求項1の手段]
請求項1のエアブラストインジェクタは、ベンチュリー効果を用いて第2インジェクタの噴射初期の微粒化を達成するものであり、次の作用効果を奏する。
第2噴射孔が開かれると、第2噴射孔へ向けて流れるエア流路の加圧空気は、エア流路の途中に設けられたベンチュリー部で絞られる。
ベンチュリー部を通過する加圧空気は、ベンチュリー部による流体圧縮によって流速が増し、例えば通過速度がマッハ1(音速)もしくはマッハ1に近い流速に達する。
【0012】
このようにベンチュリー部の通過中に流速が増し、例えばマッハ1もしくはマッハ1に近い流速に達した加圧空気は、ベンチュリー部の通過後、ベンチュリー部の下流側の流路面積が増える領域において流体の膨張効果により流速が増す。即ち、加圧空気の最速部位は、ベンチュリー部(流路面積が最も絞られている範囲)を通過した後のエア流路中において発生する。
一方、ベンチュリー部の下流側の流路面積が増える領域では、流路の拡径に伴う負圧化によって圧力が急速に下がる。これにより、細孔による液体燃料の吸出能力が高められる。
【0013】
細孔より吸い出された液体燃料は、ベンチュリー部を通過する加圧空気よりも速い流速の加圧空気によって連続的に高速分断される。即ち、加圧空気による液体燃料の剪断能力が高められる。このようにして、細孔から吸い出された液体燃料は、速い流速の加圧空気によって非常に細かく分断されながら加圧空気に混ざり合う。その結果、加圧空気と液体燃料の混合性が促進される。
そして、加圧空気と混合した液体燃料は、第2噴射孔を通って噴射されるため、第2インジェクタの噴射初期から噴霧粒径を微粒化することができる。
【0014】
このように、請求項1のエアブラストインジェクタは、
〇ベンチュリー効果を用いて第2インジェクタの噴射初期から噴霧粒径を微粒化し、
〇細孔から吸い出された液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を高めて加圧空気と液体燃料の混合性を促進し、
〇中心孔の液体燃料を細孔が吸い出す吸出能力を高めて吸出し速度の向上を図ることができる。
【0015】
[請求項2の手段]
請求項2のベンチュリー形成部は、第2ノズルボディの内周面において径方向内側へ膨出することで、第2ニードルとの間にベンチュリー部を形成するものである。
これにより、細孔の燃料出口を、第2ニードルの側面に設けることにより、上記請求項1の作用効果を得ることができる。
【0016】
[請求項3の手段]
請求項3の細孔の燃料出口は、ベンチュリー部における第2噴射孔側の端部位置とこの端部位置から第2噴射孔の側へ5mm離れた位置との間に設けられるものである。
このように設けることで、上記請求項1の作用効果を得ることができる。
【0017】
[請求項4の手段]
請求項4のエアブラストインジェクタは、
ベンチュリー形成部は、第2ニードルの外周面において径方向外側へ膨出することで、第2ノズルボディとの間にベンチュリー部を形成するものである。
これにより、細孔の燃料出口を、ベンチュリー形成部におけるベンチュリー部の直下に設けることにより、上記請求項1の作用効果を得ることができる。
【0018】
[請求項5の手段]
請求項5の細孔の燃料出口は、ベンチュリー部を通過した加圧空気の流速がラバーズノズル効果によってマッハ1を超える流速範囲に設けられるものである。
このように設けることで、上記請求項1の作用効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第2インジェクタにおける要部説明図である(実施例1)。
【図2】ベンチュリー部付近における加圧空気の速度分布、および加圧空気の圧力分布を示す説明図である。
【図3】エアブラストインジェクタの断面図である。
【図4】第1インジェクタと第2インジェクタの駆動例を示すタイムチャートである。
【図5】第1インジェクタにおける燃料の流れを示す説明図である。
【図6】第2インジェクタにおける加圧空気の流れを示す説明図である。
【図7】第2インジェクタにおける要部説明図である(実施例2)。
【図8】エアブラストインジェクタの要部断面図である(従来例)。
【図9】エアブラストインジェクタの要部断面図である(参考例)。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照して実施形態におけるエアブラストインジェクタの基本構成を説明する。
エアブラストインジェクタは、加圧された液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタ1と、この第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに、加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタ2とを備える。
【0021】
第1インジェクタ1は、外部より内部へ加圧供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔3を有する第1ノズルボディ4と、この第1ノズルボディ4内に収容されて第1噴射孔3の開閉を行なう第1ニードル5とを備えるものであり、第1ニードル5を駆動する第1電磁駆動部6(第1インジェクタ1を駆動するアクチュエータの一例)を備える。
第2インジェクタ2は、外部より加圧供給された空気とともに第1インジェクタ1から噴射された液体燃料を噴射する第2噴射孔7を有する。また、第2インジェクタ2は、第2噴射孔7の開閉を行なう第2ニードル9と、この第2ニードル9を収容する第2ノズルボディ8とを備えるものであり、第2ニードル9を駆動する第2電磁駆動部10(第2インジェクタ2を駆動するアクチュエータの一例)を備える。
【0022】
そして、第2インジェクタ2は、以下の構成を採用する。
第2ニードル9の内部には、第2ニードル9の上部から下側まで延びる中心孔11が設けられる。
第2ニードル9と第2ノズルボディ8との間には、第2噴射孔7の開弁時に加圧空気が第2噴射孔7に向かって流れるエア流路12が区画される。
【0023】
エア流路12の通路途中には、第2噴射孔7の開弁時に第2噴射孔7に向かって流れる加圧空気を絞るベンチュリー部13を形成するベンチュリー形成部14が設けられる。
第2ニードル9には、中心孔11内の液体燃料を、ベンチュリー部13を通過した加圧空気中に吸い出させる細孔15が設けられる。
【0024】
細孔15の燃料出口は、ベンチュリー部13(流路面積が最も絞られている範囲)よりも空気流れ下流において開口する。
細孔15の燃料出口の好ましい実施形態の一例を説明する。
細孔15の燃料出口は、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気(図1の矢印α参照)に触れる位置において開口するものであり、
(i)ベンチュリー形成部14が、第2ノズルボディ8の内周面に設けられる場合は(図1参照)、ベンチュリー部13と第2噴射孔7との間で、且つベンチュリー部13と同径寸法の第2ニードル9の側面に細孔15の燃料出口が設けられ、
(ii)ベンチュリー形成部14が、第2ニードル9の外周面に設けられる場合は(図7参照)、ベンチュリー形成部14におけるベンチュリー部13の直下に細孔15の燃料出口が設けられる。
【実施例】
【0025】
以下において本発明が適用された具体的な一例(実施例)を図面を参照して説明する。実施例は具体的な一例を開示するものであって、本発明が実施例に限定されないことは言うまでもない。なお、以下の実施例において、上記[発明を実施するための形態]と同一符号は、同一機能物を示すものである。
【0026】
[実施例1]
エアブラストインジェクタは、直噴エンジンに搭載されるものであり、例えばガソリン等の燃料をエンジンの気筒内(燃焼室内)に直接噴射供給するものであって、各気筒毎に搭載される。
エアブラストインジェクタは、液体燃料の噴射を行なう第1インジェクタ1と、この第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに、加圧空気を一緒に噴射する第2インジェクタ2とを備える。
【0027】
(第1インジェクタ1の説明)
実施例1の第1インジェクタ1は、燃料ポンプにより加圧された燃料が、燃料供給管を介して第1インジェクタ1の上端に設けられた燃料導入口21より内部に供給される。
燃料ポンプは、燃料タンクから第1インジェクタ1に燃料を導く燃料供給管の途中に配置されるものであり、燃料タンク内の燃料を吸引して所定圧力へ加圧し、第1インジェクタ1に向けて圧送するものである。また、燃料ポンプは、第1インジェクタ1に向けて吐出される燃料の圧力を、所定の目標圧力(例えば、550kPa)に調圧する調圧装置(プレッシャレギュレータ等)を備えている。
【0028】
第1インジェクタ1は、略円筒形状を呈するものであり、上端から燃料を受け、内部の燃料通路を経由して下端から燃料を噴射する。
第1インジェクタ1は、燃料の噴射と停止を実行する第1噴射ノズル22、この第1噴射ノズル22に閉弁力(燃料噴射を停止させる力)を付与する第1スプリング23、この第1スプリング23の閉弁力に抗して開弁力(燃料噴射を実行させる力)を付与する第1電磁駆動部6、略筒状を呈して第2インジェクタ2の上部に挿入固定される第1ロアボディ24、略筒状を呈して第1ロアボディ24の上部に同軸上に配置される第1アッパーボディ25を備えており、第1アッパーボディ25の上端に設けられた燃料導入口21から内部に流入した燃料は、第1ロアボディ24を通って第1噴射ノズル22の下端に向けて供給される。
【0029】
第1噴射ノズル22は、第1ロアボディ24の下部に固定されて第2インジェクタ2の内部に挿入配置される第1ノズルボディ4と、この第1ノズルボディ4の内部に収容されて上下方向へ摺動自在に支持される第1ニードル5とを含んで構成される。
第1ノズルボディ4の軸中心には、上方から下方へ向けて燃料を導く第1ノズル孔26が穿設されており、第1ノズル孔26の下端に設けられた弁座の中心には、第1ノズルボディ4の先端部から第2インジェクタ2の内部に向けて燃料を噴射するための第1噴射孔3が形成されている。
【0030】
第1ノズル孔26は、第1ニードル5との間に燃料通路を形成して、上方から供給された燃料を弁座側へ導くものである。
第1噴射孔3は、第1ノズルボディ4の下端の軸中心において上下方向に貫通する1つの貫通穴であり、弁座の上面に入口が開口して、出口が第1ノズルボディ4の先端部の外面に開口している。
【0031】
第1ニードル5は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、第1ノズル孔26の中心部において上下方向へ摺動自在に支持されている。
具体的に、第1ニードル5の上端は、第1ロアボディ24の内周面によって上下方向に摺動自在に支持される第1可動コア27(第1電磁駆動部6におけるアーマチャ)の中心に結合されており、その結果、第1ニードル5の上端が第1ロアボディ24の内部において上下方向へ移動可能に支持される。なお、第1可動コア27には、上下方向を連通する燃料通路27aが形成されており、第1可動コア27の上側の燃料を、第1可動コア27の下側へ導くように設けられている。
【0032】
一方、第1ニードル5の下側には、径方向外側へ膨出する第1大径摺動部28が形成されており、この第1大径摺動部28が第1ノズル孔26の内周面によって摺動自在に支持される。なお、第1大径摺動部28には、上下方向を連通させる連通部(面取部、溝部)28aが設けられており、第1大径摺動部28の上側の燃料を、第1大径摺動部28の下側へ導くように設けられている。
【0033】
第1ニードル5の下端には、第1ノズル孔26の下端に設けられた弁座に着座可能なシート部が設けられている。このシート部が弁座に着座することにより、第1ノズル孔26と第1噴射孔3との連通を遮断し、シート部が弁座から離座することにより、第1ノズル孔26と第1噴射孔3とを連通して、第1噴射孔3から燃料の噴射を行なう。
ここで、弁座とシート部との当接部(着座部分)には、シート部が弁座に着座した際に噴射を停止するための線シール部(油密機能部)が設けられている。
なお、シート部の形状は、略円錐形状に限られるものではなく、略円錐台形状、あるいは略半球状など、線シールが可能な形状であればいずれの形状であっても良い。また、弁座とシート部のシール方法としては、線シールに限らず、円錐面の当接でシールするものであっても良い。
【0034】
第1スプリング23は、第1ニードル5を下方へ押し付けて、シート部を弁座に着座させる力(閉弁力)を発生するものであり、この実施例1では圧縮コイルスプリングを用いている。具体的に、第1スプリング23は、第1可動コア27と、筒状を呈する第1バネストッパ29との間で圧縮された状態で組付けられたものである。ここで、第1バネストッパ29は、第1アッパーボディ25の内周面に固定された第1磁気吸引筒34(後述する)の内周面に圧入あるいはネジ込み等により固定されたものである。
【0035】
第1電磁駆動部6は、磁力によって第1ニードル5を上方(開弁方向)に駆動するものであり、通電により磁力を発生する円筒形状に巻回された第1コイル31、この第1コイル31の内周に配置されて上下方向へ摺動自在に支持される第1可動コア27、この第1可動コア27を上方へ磁気吸引するための磁路を形成する第1固定子を備える。
【0036】
第1固定子は、第1ロアボディ24と第1アッパーボディ25の間に挟まれて配置される第1非磁性筒32と、この第1非磁性筒32の下部において第1可動コア27と径方向の磁気の受け渡しを行なう第1磁気受渡筒33と、第1可動コア27を上方へ磁気吸引する第1磁気吸引筒34と、第1コイル31の周囲を覆う第1ヨーク35とを備える。
なお、第1固定子を構成する部材のうち、第1非磁性筒32を除く他の部材(第1磁気受渡筒33、第1磁気吸引筒34、第1ヨーク35)は、全て磁性体金属(例えば、鉄)によって形成されるものである。
ここで、第1固定子は、第1ロアボディ24および第1アッパーボディ25の一部を利用したものであり、第1ロアボディ24の上部が第1磁気受渡筒33として利用され、第1アッパーボディ25が第1磁気吸引筒34と第1ヨーク35の磁気結合を行なう部材として利用されている。
【0037】
第1非磁性筒32は、第1アッパーボディ25と同径の筒体であり、第1磁気吸引筒34と第1磁気受渡筒33(第1ロアボディ24の一部)とが、第1可動コア27を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防ぐためのものである。
第1磁気吸引筒34は、第1アッパーボディ25の内周面に結合された筒状を呈し、第1磁気吸引筒34の下面と第1可動コア27の上面との間にメインギャップ(磁気吸引ギャップ)を形成する部材である。即ち、第1コイル31が通電されると、第1磁気吸引筒34が第1可動コア27を磁気吸引するものである。
【0038】
第1ヨーク35は、第1コイル31の外周を覆って、第1コイル31の周囲に磁路を形成する部材であり、第1コイル31が通電されると、第1ヨーク35→第1アッパーボディ25および第1磁気吸引筒34→第1可動コア27→第1磁気受渡筒33(第1ロアボディ24の一部)→再び第1ヨーク35に戻る磁気経路(磁束の流れ方向は逆であっても良い)が形成される。
【0039】
第1ヨーク35は、絶縁性の第1樹脂部材36によりモールドされており、第1ヨーク35をモールドする第1樹脂部材36の一部には、外部接続用の第1コネクタ37が設けられている。この第1コネクタ37は、第1インジェクタ1の作動制御を行なうECU(エンジン・コントロール・ユニットの略:図示しない)と接続線を介して電気的な接続を行なう接続手段であり、その内部には第1コイル31の両端にそれぞれ接続される端子37aがモールドされている。
【0040】
(第2インジェクタ2の説明)
実施例1の第2インジェクタ2は、エアポンプにより加圧された空気が、圧縮空気供給管を介して第2インジェクタ2の上部の側面より内部に供給される。
エアポンプは、大気中の空気を吸引して所定圧力へ加圧し、第2インジェクタ2に向けて圧送するものである。また、エアポンプは、第2インジェクタ2に向けて吐出される空気の圧力を、所定の目標圧力(燃料ポンプから第1インジェクタ1へ供給される燃料圧力よりも低い圧力:例えば、300kPa)に調圧する調圧装置(プレッシャレギュレータ等)を備えている。
【0041】
第2インジェクタ2は、第1インジェクタ1の下側において、第1インジェクタ1と同軸に配置された略円筒形状を呈するものであり、上部に配置された第1インジェクタ1から噴射燃料を受けるとともに、エアポンプから加圧空気の供給を受ける。そして、この第2インジェクタ2は、第2インジェクタ2の上部に供給された加圧空気と液体燃料(以下では、第2インジェクタ2に供給された加圧空気と第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とを合わせてエア混合燃料と称して説明する)を、内部通路を経由させて下端へ導き、下端から噴射させるものである。
【0042】
第2インジェクタ2は、エア混合燃料の噴射と停止を実行する第2噴射ノズル38、この第2噴射ノズル38に閉弁力(燃料噴射を停止させる力)を付与する第2スプリング39、この第2スプリング39の閉弁力に抗して開弁力(燃料噴射を実行させる力)を付与する第2電磁駆動部10、略筒状を呈してエンジンのシリンダヘッド等に挿入固定される第2ロアボディ40、略筒状を呈して第2ロアボディ40の上部に同軸上に配置される第2アッパーボディ41を備えている。
【0043】
第2アッパーボディ41は、上述したように略筒形状を呈するものであり、その上部に第1インジェクタ1の下部が挿入配置される。第1インジェクタ1を第2アッパーボディ41に固定する一例として、この実施例では、第1ロアボディ24の外周にフランジ部24aを設け、第2アッパーボディ41の上面と、第2アッパーボディ41の上面に締結される取付プレート42との間でフランジ部24aを挟み付けることで、第1インジェクタ1を第2アッパーボディ41に固定している。なお、第1インジェクタ1の固定手段は、適宜変更可能なものである。
また、第2アッパーボディ41の側面には、エアポンプで加圧された空気を内部に導くエア導入通路43が形成されている。そして、第2アッパーボディ41の内部に供給された加圧空気は、第2噴射ノズル38まで充填供給される。
【0044】
第2噴射ノズル38は、第2ロアボディ40の下部にリテーニングナット44を用いて締結固定される第2ノズルボディ8と、この第2ノズルボディ8の内部に収容されて上下方向へ摺動自在に支持される第2ニードル9とを含んで構成される。
第2ノズルボディ8は、先端部が気筒内に露出するように挿入配置されるものであり、その軸中心には、上方から下方へ向けて貫通する筒形状の第2ノズル孔45が形成されている。
第2インジェクタ2は、第2ノズルボディ8の下端に、エア混合燃料を気筒内に噴射供給する第2噴射孔7を備える。この第2噴射孔7は、第2ノズル孔45の下端(下方に向けて拡径したテーパ形状を呈し、外部と連通する開口穴)と第2ニードル9との間に形成されるものであり、第2ニードル9によって開閉される。
【0045】
第2ノズル孔45は、第2ニードル9との間に上下方向を連通する筒状のエア流路12を形成するものであり、エア流路12に供給された加圧空気や液体燃料を第2噴射孔7へ導くものである。
第2ニードル9は、上下方向へ延びるシャフト形状を呈するものであり、第2ノズル孔45の中心部において上下方向へ摺動自在に支持されている。
【0046】
具体的に、第2ニードル9の上端は、第2アッパーボディ41の内周面によって上下方向に摺動自在に支持される第2可動コア46(第2電磁駆動部10におけるアーマチャ)の中心に結合されており、その結果、第2ニードル9の上端が第2アッパーボディ41の内部において上下方向へ移動可能に支持される。なお、第2可動コア46には、上下方向を連通するための通路は形成されておらず、第2ニードル9の外周に何らかの要因で付着した液体燃料は、第2可動コア46の外周面の摺動クリアランスを介して下方へ伝わることで下方のエア流路12へ導かれる。
【0047】
一方、第2ニードル9の下側を摺動自在に支持するための第2大径摺動部47は、第2ノズルボディ8の内周面に形成されている。これは、この実施例1において、後述するベンチュリー形成部14を第2ノズルボディ8の内周面に形成する構造を採用するためである。
具体的に、実施例1の第2大径摺動部47は、第2ノズルボディ8における第2ノズル孔45の上下方向の途中部分において径方向内側へ膨出するものであり、この第2大径摺動部47の内周面が第2ニードル9の外周面を摺動自在に支持する。なお、第2大径摺動部47には、上下方向を連通させる連通部(溝部等)47aが設けられており、第2大径摺動部47の上側に供給された加圧空気を下側へ導くように設けられている。
【0048】
第2ニードル9の内部には、第1インジェクタ1が噴射した燃料と、エア導入通路43から第2アッパーボディ41の内部に供給された加圧空気とを下方へ導く中心孔11を含むニードル内通路が設けられている。
中心孔11の上端は、第1インジェクタ1の第1噴射孔3と同一軸線上に開口し、第1インジェクタ1の噴射した液体燃料と、外部から供給された加圧空気とを、中心孔11の内部に導く導入口として機能する。
【0049】
ここで、第1噴射孔3から中心孔11の内部に燃料を供給する手段として、この実施例の第1インジェクタ1には、第1噴射孔3から噴射された全ての液体燃料を積極的に中心孔11へ供給する燃料ノズル48が設けられている。この燃料ノズル48は、第1噴射孔3から中心孔11の内部まで伸びる中空の細いパイプであって、燃料ノズル48の下端が中心孔11の内部まで伸びて配置されている。
そして、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料は、燃料ノズル48を通って中心孔11に供給され、エア導入通路43から第2アッパーボディ41の内部に供給された加圧空気は、燃料ノズル48の外壁と中心孔11の内壁との間に形成される環状通路を通って中心孔11に供給される。
【0050】
この燃料ノズル48には、第1ノズルボディ4の下端に装着される略カップ形状のキャップ部が一体に設けられており、このキャップ部の中心部に燃料ノズル48が下方へ伸びて設けられている。そして、キャップ部を第1ノズルボディ4の下端に嵌め合わせて、溶接等の固定技術で第1ノズルボディ4に固定することで、燃料ノズル48が第1噴射孔3に連通した状態で第1インジェクタ1に取り付けられる。
【0051】
このように、キャップ部を第1ノズルボディ4の端部に固定することで、第1噴射孔3の周囲が全周に亘ってキャップ部と第1ノズルボディ4との間でシールされる。これにより、第1インジェクタ1から噴射された燃料が、燃料ノズル48の先端(中心孔11に差し込まれている端部)とは別の箇所から漏れ出る不具合を回避できる。
なお、この実施例では、第1ノズルボディ4に燃料ノズル48を取り付ける手段として略カップ形状のキャップ部を用いる例を示したが、他の形状の固定手段を用いて第1ノズルボディ4に燃料ノズル48を固定しても良い。
【0052】
ここで、燃料ノズル48の内部の通路面積は、第1噴射孔3の通路面積より大きく設けられる。これにより、第1インジェクタ1から噴射される噴射燃料に燃料ノズル48が影響を与える不具合を回避することができる。
なお、中心孔11と燃料ノズル48の軸方向のオーバーラップ量は、第1インジェクタ1から噴射された燃料が、中心孔11の上端開口から外部へ吹きこぼれない長さを確保するものである。しかるに、オーバーラップ量を長く設定することで、環状通路を通過する加圧空気の通過抵抗が増すことになるため、中心孔11と燃料ノズル48の軸方向のオーバーラップ量は、必要以上に長くしないように設定されるものである。
【0053】
この燃料ノズル48を用いることにより、第1インジェクタ1から噴射される全ての液体燃料を、中心孔11を介して第2噴射孔7へ安定して導くことができ、第1インジェクタ1から噴射された全ての燃料が第2噴射孔7へ導かれるまでの時間と量が安定する。その結果、第2噴射孔7の開弁中に高い精度の燃料を噴射することができ、燃料の噴射精度を高めることができる。
【0054】
この実施例に示す第2インジェクタ2は、第2アッパーボディ41内に供給された加圧空気をエア流路12に導く手段として、第2可動コア46に上下貫通穴を設けずに済むように、第2可動コア46の内側の中心孔11を用いるものである。
具体的に、第2ニードル9には、第2可動コア46よりも下方に、中心孔11における上下方向の通路途中と、エア流路12(第2ニードル9の外側空間)とを連通する横穴49が設けられている。この横穴49は、中心孔11の内部に供給された加圧空気を分岐させてエア流路12へ供給するエア分岐穴であり、加圧空気は中心孔11および横穴49を通ってエア流路12内に充填供給される。
【0055】
なお、エア流路12を流れる加圧空気量が横穴49で絞られないように、横穴49の内径寸法が大きく設定されている。
また、横穴49よりも下側における中心孔11の内部容積は、1回の燃料噴射量(最大噴射量)よりも大きく設けられ、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料を、横穴49より下側の中心孔11の内部に貯溜できるように設けられている。
これにより、最大噴射時であっても、横穴49からエア流路12に液体燃料が溢れ出る不具合がなく、噴射開始初期に、エア流路12から溢れだした液体燃料がまとまって第2噴射孔7から外部に噴射される不具合がない。
【0056】
第2ニードル9の下端には、第2噴射孔7を開閉する弁傘51が設けられている。この弁傘51の外径寸法は、第2噴射孔7の外径寸法より大径に設けられており、弁傘51が第2噴射孔7の開口縁に着座することにより、エア流路12と外部(気筒内)との連通が遮断され、弁傘51が第2噴射孔7の開口縁から離座することにより、エア流路12と外部が連通して、第2噴射孔7からエア混合燃料が気筒内に噴射される。
ここで、弁傘51と当接する第2噴射孔7の開口縁には、弁傘51が第2噴射孔7の開口縁に着座した際に噴射を停止するための線シール部(油密機能部)が設けられている。なお、第2噴射孔7の形態、および第2ニードル9における弁体(第2噴射孔7を開閉するバルブ部)の形態は、この実施例に示すものに限定されるものではなく、適宜変更可能なものである。
【0057】
第2スプリング39は、第2ニードル9を上方へ押し上げて、弁傘51を第2噴射孔7の開口縁に着座させる力(閉弁力)を発生するものであり、この実施例1では圧縮コイルスプリングを用いている。具体的に、第2スプリング39は、第2ニードル9の外周面に取り付けられた第2バネストッパ52と、第2ノズルボディ8の上端面との間で圧縮された状態で組付けられたものである。なお、第2バネストッパ52は、第2ニードル9の外周面に取り付けられるクリップリング(Eリング、Cリング等)52aによって支持されるものである。
【0058】
第2電磁駆動部10は、磁力によって第2ニードル9を下方(開弁方向)に駆動するものであり、通電により磁力を発生する円筒形状に巻回された第2コイル53、この第2コイル53の内周に配置されて上下方向へ摺動自在に支持される第2可動コア46、この第2可動コア46を下方へ磁気吸引するための磁路を形成する第2固定子を備える。
【0059】
第2固定子は、第2ロアボディ40と第2アッパーボディ41の間に挟まれて配置される第2非磁性筒54と、この第2非磁性筒54の上部において第2可動コア46と径方向の磁気の受け渡しを行なう第2磁気受渡筒55と、第2可動コア46を下方へ磁気吸引する第2磁気吸引部56と、第2コイル53の周囲を覆う第2ヨーク57とを備える。
なお、第2固定子を構成する部材のうち、第2非磁性筒54を除く他の部材(第2磁気受渡筒55、第2磁気吸引部56、第2ヨーク57)は、全て磁性体金属(例えば、鉄など)によって形成されるものである。
ここで、第2固定子は、第2ロアボディ40および第2アッパーボディ41の一部を利用するものであり、第2ロアボディ40の上部が第2磁気吸引部56として利用され、第2アッパーボディ41の下部が第2磁気受渡筒55として利用されている。
【0060】
第2非磁性筒54は、第2アッパーボディ41の下部と同径の筒体であり、第2磁気吸引部56(第2ロアボディ40の一部)と第2磁気受渡筒55(第2アッパーボディ41の一部)とが、第2可動コア46を介さずに直接的に磁気結合(磁路形成)するのを防ぐためのものである。
第2磁気吸引部56は、第2可動コア46の下面と対向配置され、第2可動コア46の下面との間にメインギャップ(磁気吸引ギャップ)を形成する部材である。即ち、第2コイル53が通電されると、第2磁気吸引部56が第2可動コア46を磁気吸引するものである。
【0061】
第2ヨーク57は、第2コイル53の外周を覆って、第2コイル53の周囲に磁路を形成する部材であり、第2コイル53が通電されると、第2ヨーク57→第2磁気吸引部56(第2ロアボディ40の一部)→第2可動コア46→第2磁気受渡筒55(第2アッパーボディ41の一部)→再び第2ヨーク57に戻る磁気経路(磁束の流れ方向は逆であっても良い)が形成される。
【0062】
第2ヨーク57は、絶縁性の第2樹脂部材58によりモールドされており、第2ヨーク57をモールドする第2樹脂部材58の一部には、外部接続用の第2コネクタ59が設けられている。この第2コネクタ59は、第2インジェクタ2の作動制御を行なうECUと接続線を介して電気的な接続を行なう接続手段であり、その内部には第2コイル53の両端にそれぞれ接続される端子59aがモールドされている。
【0063】
ECUは、制御処理、演算処理を行なうCPU、各種プログラムおよびデータを保存する記憶装置(ROM、RAM、SRAMまたはEEPROM等のメモリ)、入力回路、出力回路、電源回路などを含んで構成された周知構造のマイクロコンピュータと、このマイクロコンピュータの指示により第1コイル31および第2コイル53の通電制御を実施するインジェクタ駆動回路とを含んで構成される。
マイクロコンピュータには、ECUに読み込まれたセンサ類の信号(エンジンパラメータ:乗員の運転状態、エンジンの運転状態等に応じた信号)に応じて第1、第2コイル31、53の通電を制御するインジェクタ制御プログラムが搭載されている。
【0064】
このインジェクタ制御プログラムは、ECUに読み込まれた車両の運転状態から、運転状態に応じた噴射形態、噴射タイミング、燃料の噴射量の算出を行なうとともに、算出された噴射形態、噴射タイミング、燃料の噴射量が得られるように、第1、第2コイル31、53の通電制御を実施するものである。
具体的に、インジェクタ制御プログラムは、算出された噴射量が得られるように第1コイル31の通電期間を制御するとともに、算出された噴射タイミングで燃料噴射が実施されるように第2コイル53の通電開始時期を制御する。即ち、第2インジェクタ2において、第1インジェクタ1から噴射された液体燃料とともに加圧空気を一緒に噴射するように、第1、第2インジェクタ1、2の通電制御を行なうものである。
【0065】
一例を示すと、図4に示すように、先ず第1コイル31へ第1インジェクタ1の駆動信号を出力して第1インジェクタ1から第2インジェクタ2内に燃料の供給を行ない、続いて第2コイル53へ第2インジェクタ2の駆動信号を出力してエア混合燃料を第2インジェクタ2から気筒内へ噴射させるものである。
なお、図4は一例を示すだけであって、図4とは異なり、第1インジェクタ1と第2インジェクタ2とが同時に駆動されるオーバーラップ期間があっても良いし、第1インジェクタ1と第2インジェクタ2とが同時に駆動開始されるものであっても良い。
【0066】
(実施例1の背景技術)
図8に示す従来技術のエアブラストインジェクタでは、第1インジェクタ1から中心孔11に噴射供給された液体燃料は、中心孔11の下端から太穴J1を通り、エア流路12の下端に溜まる。そして、第2噴射孔7が開弁すると、エア流路12の下端に溜まった液体燃料が、加圧空気に押し出されて噴射する。
その結果、第2噴射孔7の開弁初期(噴射初期)には、エア流路12の下端に溜まった液体燃料がまとまった状態で第2噴射孔7から外部に押し出されることになり、噴射初期の噴霧粒径が大きくなってしまう。
【0067】
この不具合を回避する手段として、図9の参考例に示すように、エア流路12の通路途中に加圧空気の流路面積を絞るベンチュリー部13を設けるとともに、中心孔11の下端からベンチュリー部13に通じる細孔15を設けて、ベンチュリー部13を通過する加圧空気中に細孔15から燃料を吸い込ませることで、噴射初期から噴霧粒径を微粒化することが考えられる。
【0068】
しかし、ベンチュリー部13を通過する加圧空気の流れ状態を解析してみると、
(i)図1の矢印αに示すように、ベンチュリー部13を通過した加圧空気は、ベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れるとともに、
(ii)図2(a)に示すように、ベンチュリー部13を通過する加圧空気の通過速度よりも、ベンチュリー部13を通過した後の加圧空気の通過速度の方が、速度が速いことを見出した。
具体的には、ベンチュリー部13を通過した後で、ベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる広い範囲において、ベンチュリー部13における加圧空気の流れ速度よりも速い。
特に、ベンチュリー部13を通過した直後における加圧空気の通過速度は、ラバーズノズル効果によって、マッハ1(音速)を超えることを速度解析により見出した。
なお、図2(a)中に矢印に付した符号S付きの数字は、符号Sに付した数字が大きいほど速度が速いことを示すものである。
【0069】
一方、ベンチュリー部13の周辺の加圧空気の圧力状態を解析してみると、
(iii)図2(b)に示すように、ベンチュリー部13における圧力よりも、ベンチュリー部13より下流側(下側)のエア流路12中の圧力の方が、圧力が低い。
なお、図2(b)中に破線境界内を示す符号P付きの数字は、符号Pに付した数字が大きいほど圧力が高いことを示すものである。
【0070】
(実施例1の特徴技術)
そこで、上記の解析結果に鑑み、この実施例1のエアブラストインジェクタは、
(i)ベンチュリー効果を用いて第2インジェクタ2の噴射初期の微粒化を達成することを基本構成とし、
(ii)ベンチュリー部13よりも流速の速い加圧空気によって細孔15から液体燃料を吸い出させて、細孔15から吸い出される液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を高め、
(iii)さらに、ベンチュリー部13よりも低圧範囲において細孔15から液体燃料を吸い出させて、中心孔11に溜まった液体燃料を細孔15が吸い出す吸出能力を高めように設けられている。
【0071】
具体的に、この実施例1のエアブラストインジェクタは、上記を達成するために、次の構成を採用している。
(a)第2ニードル9の内部には、第1インジェクタ1の噴射燃料が供給される中心孔11が設けられている。
(b)第2ニードル9と第2ノズルボディ8との間には、第2噴射孔7の開弁時に加圧空気が第2噴射孔7に向かって流れるエア流路12が区画されている。
(c)エア流路12の通路途中には、加圧空気を絞るベンチュリー部13を形成するためのベンチュリー形成部14が設けられている。
(d)第2ニードル9には、中心孔11の内部に供給された液体燃料を、ベンチュリー部13を通過した加圧空気中に吸い出させる細孔15が設けられている。
(e)この細孔15の燃料出口は、ベンチュリー部13(流路面積が最も絞られている範囲)よりも空気流れの下流側において開口する。具体的に細孔15の燃料出口は、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気に触れる位置に設けられている。
【0072】
上記の構成を図1を参照して具体的に説明する。
細孔15は、中心孔11の下端から径方向外側へ向けて放射状に複数設けられる内外連通穴であり、中心側から外方向に向かうに従って下方に傾斜する傾斜穴として設けられている。また、細孔15の内径寸法は、中心孔11の内部に溜まった液体燃料が、重力によって第2ニードル9の外周部へ漏れ出すのを抑える径寸法に設定されている。
【0073】
また、中心孔11の最下端部が細孔15と連通するように設けられている。即ち、第2ニードル9の上端からドリルで中心孔11を穿設した際に形成される円錐形状の底端が、細孔15と連通して設けられている。
このように、中心孔11の最下端部を細孔15に連通させることにより、第2インジェクタ2の作動時に、中心孔11の最下端部の液体燃料を細孔15を介して吸い出させることができ、第2噴射孔7の噴射後に、中心孔11の内部に液体燃料が貯溜する不具合を回避することができる。
【0074】
実施例1のベンチュリー形成部14は、第2大径摺動部47より下方位置における第2ノズルボディ8の内周面において径方向内側へ膨出することで、第2ニードル9の外周面との間にエア流路12の流路絞りとして機能するベンチュリー部13を形成するものである。ベンチュリー形成部14の上側は、上方からベンチュリー部13の最大絞り部へ向かう加圧空気を徐々に絞るテーパ面に設けられている。また、ベンチュリー形成部14の下側は、ベンチュリー部13の最大絞り部で絞られた加圧空気を徐々に拡張するテーパ面に設けられている。
なお、ベンチュリー部13の隙間距離(第2ニードル9とベンチュリー形成部14とのクリアランス量)と、ベンチュリー部13の軸方向距離(最小絞り部を成す範囲の上下長さ)は、ベンチュリー部13を通過する加圧空気の流速を最速(マッハ1、または、マッハ1に近い速度)にできるように設定されるものである。
【0075】
一方、ベンチュリー形成部14に対向する第2ニードル9の外周面は、少なくともベンチュリー部13の上方からベンチュリー部13の下方に至る範囲において軸方向に直線的な円筒面(外周面が軸方向に直線を成す円筒面)に設けられている。
具体的に、この実施例1における第2ニードル9の外周面は、弁傘51の上側が全て軸方向に直線的な円筒面に設けられるものである。
【0076】
上記の構成により、図1の矢印αに示すように、ベンチュリー部13を通過した加圧空気は、ベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる。即ち、ベンチュリー部13を通過した加圧空気は、第2ニードル9の外周面に沿って流れる。そこで、細孔15の燃料出口(径方向の外側出口)を、ベンチュリー部13と第2噴射孔7との間における第2ニードル9の側面に設ける。
このように設けることで、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気(ベンチュリー部13よりも流速の速い加圧空気)に触れる位置に細孔15の燃料出口を設けることができる。
なお、細孔15の好ましい出口位置については後述する。
【0077】
次に、上記構成を採用するエアブラストインジェクタの作動を説明する。
ECUは、エンジンの気筒内に燃料噴射を実施する際に、第1インジェクタ1を作動させる。
この第1インジェクタ1の作動を図5を参照して説明する。ECUによって第1コイル31の通電が開始されると、磁力により第1可動コア27が上方へ磁気吸引される。そして、第1可動コア27を上方へ駆動する磁気吸引力が、第1ニードル5に加わる閉弁方向荷重に打ち勝つと、第1可動コア27が上方に移動し、第1可動コア27に結合されている第1ニードル5がリフトアップを開始する。そして、第1ニードル5が弁座から離座すると、第1ノズルボディ4の第1ノズル孔26に供給された加圧燃料が第1噴射孔3から噴射される。
第1噴射孔3より噴射された燃料は、燃料ノズル48を通って、第2インジェクタ2の中心孔11の内部に噴射供給される。即ち、燃料ノズル48によって、第1インジェクタ1の噴射燃料が第2インジェクタ2の中心孔11の内部のみに注入される。
【0078】
ECUによって第1コイル31の通電が停止されると、第1可動コア27を上方へ磁気吸引していた磁力が喪失する。すると、第1スプリング23の付勢力により第1可動コア27と第1ニードル5が下降を開始する。そして、第1ニードル5が下降して弁座に着座すると、第1ノズル孔26と第1噴射孔3の連通が遮断されて、第1噴射孔3からの燃料噴射が停止し、中心孔11の内部への燃料供給(燃料注入)が停止される。
【0079】
ECUは、エンジンの気筒内に燃料噴射を実施する際は、第1インジェクタ1の他に第2インジェクタ2を作動させる。
この第2インジェクタ2の作動について図6を参照して説明する。ECUによって第2コイル53の通電が開始されると、磁力により第2可動コア46が下方へ磁気吸引される。そして、第2可動コア46を下方へ駆動する磁気吸引力が、第2ニードル9に加わる閉弁方向荷重に打ち勝つと、第2可動コア46が下方に移動し、第2可動コア46に結合されている第2ニードル9が下降を開始する。そして、第2ニードル9の下端に設けられた弁傘51が第2噴射孔7の開口縁から離座すると、エア流路12の下端とエンジンの気筒内とが連通し、第2インジェクタ2内に充填されていた加圧空気とともに、中心孔11に溜められた液体燃料が、第2噴射孔7を介してエンジンの気筒内に噴射する。
【0080】
この状態(中心孔11に溜められた液体燃料の噴射)を、図1を参照して説明する。
第2噴射孔7が開かれると、エア流路12内に充填された加圧空気が第2噴射孔7を介して気筒内に流れる。このため、エア流路12には、ベンチュリー部13の上側から下方の第2噴射孔7に向かう加圧空気の流れが生じ、加圧空気がベンチュリー部13で絞られる。
ベンチュリー部13を通過する加圧空気は、ベンチュリー部13による流体圧縮によって流速が増し、通過速度がマッハ1(もしくはマッハ1に近い流速)に達する。
【0081】
ベンチュリー部13の通過中にマッハ1(もしくはマッハ1に近い流速)に達した加圧空気は、ベンチュリー部13の通過後、ベンチュリー部13の下流側の流路面積が増える領域において流体の膨張効果により流速が増す。即ち、ベンチュリー部13を通過する加圧空気の最速部位は、ベンチュリー部13を通過した後のエア流路12中において発生する。
一方、ベンチュリー部13の下流側の流路面積が増える領域では、流路の拡径に伴う負圧化によって圧力が急速に下がる。
【0082】
そこで、細孔15の燃料出口を、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気(図1の矢印α)に触れる位置に設けている。
細孔15の燃料出口が設けられる部位のエア流路12は、ベンチュリー部13よりも圧力が低く、細孔15による液体燃料の吸出能力が高められている。
【0083】
また、細孔15より吸い出した液体燃料は、ベンチュリー部13を通過する加圧空気よりも速い流速の加圧空気によって連続的に高速分断される。即ち、加圧空気による液体燃料の剪断能力が高められる。
そして、細孔15から吸い出された液体燃料は、非常に細かく分断されながら加圧空気に混ざり合うことで加圧空気と液体燃料の混合性が促進され、第2噴射孔7を通って気筒内へ噴射される。
このように、細孔15から吸い出した液体燃料が加圧空気に混ざり合った状態で第2噴射孔7から噴射されるため、第2インジェクタ2の噴射初期から噴霧粒径を微粒化することができる。
【0084】
第2インジェクタ2に供給された液体燃料の噴射が終了すると、ECUによって第2コイル53の通電が停止される。すると、第2可動コア46を下方へ磁気吸引していた磁力が喪失する。その結果、第2スプリング39の付勢力により第2可動コア46と第2ニードル9が上昇を開始する。そして、第2ニードル9が上昇して弁傘51が第2噴射孔7の開口縁に着座すると、エア流路12とエンジンの気筒内との連通が遮断されて、第2噴射孔7からエンジンの気筒内へのエア混合燃料の噴射が停止される。
【0085】
(実施例1の効果)
この実施例1のエアブラストインジェクタにおける第2インジェクタ2は、上述したように、ベンチュリー効果を用いて、細孔15から吸い出した液体燃料を加圧空気に混合しながら噴射を行なうため、噴射開始初期にまとまった液体燃料を噴射することがなく、噴射初期から噴霧粒径を微粒化できる。即ち、第2インジェクタ2の噴射初期から噴射終了までの全噴射期間において噴霧粒径を微粒化することができる。
また、細孔15から吸い出された液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を高めているため、噴射直前における加圧空気と液体燃料の混合性を促進することができる。その結果、第2噴射孔7から噴射された燃料の分裂をさらに促進でき、気筒内における燃料噴霧の微粒化を向上させることができる。
さらに、細孔15が吸い出す液体燃料の吸出能力を高めているため、短時間に中心孔11の液体燃料を吸い出すことができる。また、中心孔11の内部に液体燃料が残留する不具合を回避することができる。
【0086】
(実施例1の特徴技術2)
ベンチュリー部13を通過した直後の加圧空気は、ベンチュリー部13を通過した後、エア流路12の通路面積が拡大することで生じるラバーズノズル効果によって、流速がマッハ1(音速)を超える。
そこで、この実施例1では、図1に示すように、加圧空気の流速がマッハ1を超える領域に、細孔15の燃料出口を設けている。
【0087】
このように、加圧空気の流速がマッハ1を超える領域に、細孔15の燃料出口を設けることで、細孔15から吸い出された液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を非常に大きくすることができる。
その結果、加圧空気と液体燃料の混合性を促進することができ、燃料噴霧の微粒化を向上させることができる。
【0088】
(実施例1の特徴技術3)
流速がマッハ1を超える範囲は、特殊な解析装置がないと特定ができない。
そこで、車両用のガソリンエンジンに用いられるエアブラストインジェクタの場合は、ベンチュリー部13の下端位置(0mm)とこの下端位置から下側へ5mm離れた位置との間{流速がマッハ1を超える範囲:図2(a)のL1に示す範囲内}に、細孔15の燃料出口を設けるものである。
このベンチュリー部13の下端位置(0mm)から下方へ5mmの間は、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気のうちで特に流速が速い範囲であるため、この範囲内に細孔15の燃料出口を設けることで、細孔15から吸い出された液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を非常に大きくし、加圧空気と液体燃料の混合性を促進させることができる。
【0089】
特に好ましい形態としては、ベンチュリー部13の下端から下側へ1mm離れた位置とベンチュリー部13の下端から下側へ3mm離れた位置との間{図2(a)のL2に示す範囲内}に、細孔15の燃料出口を設けることが望ましい。
このベンチュリー部13の下端位置から下方へ1mmからベンチュリー部13の下端位置から下方へ5mmの間は、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気のうちで流速が最速になる範囲であるため、この範囲内に細孔15の燃料出口を設けることで、細孔15から吸い出された液体燃料を加圧空気が剪断する剪断能力を最大にし、加圧空気と液体燃料の混合性を促進させることができる。
【0090】
[実施例2]
図7を参照して実施例2を説明する。なお、以下の実施例2において、上記実施例1と同一符号は同一機能物を示すものである。
上記の実施例1では、ベンチュリー形成部14を第2ノズルボディ8の内周面に設ける例を示した。
これに対し、この実施例2は、ベンチュリー形成部14を第2ニードル9の外周面に設けるものである。
具体的に、この実施例2のベンチュリー形成部14は、第2大径摺動部47より下方位置における第2ニードル9の外周面において径方向外側へ膨出することで、第2ノズルボディ8の内周面との間にベンチュリー部13を形成するものである。
なお、この実施例2では、ベンチュリー形成部14を第2ニードル9の外周面に設けるのに伴い、第2ニードル9の下側を摺動自在に支持するための第2大径摺動部47を第2ニードル9の外周面に形成している。
【0091】
一方、ベンチュリー形成部14に対向する第2ノズルボディ8の内周面は、少なくともベンチュリー部13の上方からベンチュリー部13の下方に至る範囲において軸方向に直線的な円筒面(内周面が軸方向に直線を成す円筒面)に設けられている。
【0092】
そして、この実施例2では、細孔15の燃料出口を、ベンチュリー形成部14におけるベンチュリー部13の直下(流路の拡径が開始される部分)に設けるものである。
この位置(ベンチュリー部13の直下)に細孔15の燃料出口を設けることにより、ベンチュリー部13を通過した後、そのベンチュリー部13の隙間に沿うように直進性を保って流れる加圧空気に触れる位置に細孔15の燃料出口を設定することができる。
このように設けても、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
上記の実施例では、中心孔11の内部に供給された燃料が重力によって第2噴射孔7に向かって導かれるように、第2噴射孔7がエアブラストインジェクタの下側(地側)に配置される例を示したが、エアブラストインジェクタの搭載方向は限定されるものではない。
【0094】
上記の実施例では、第2可動コア46を加圧空気が通過せず、第2ニードル9の中心孔11の内部と横穴49を通って加圧空気が第2可動コア46の下側に導かれる例を示したが、加圧空気の供給経路は限定されるものではなく、第2可動コア46の内部または外周部に上方の加圧空気を下方へ導く流路や溝部を形成し、第2可動コア46を介して加圧空気を下方のエア流路12に導くものであっても良い。
【0095】
上記の実施例では、エアブラストインジェクタを直噴エンジンに用いる例を示したが、気筒内に吸気を供給する吸気通路(シリンダヘッドに形成された吸気ポート等)の内部に燃料を噴射するインジェクタに、本発明が適用されたエアブラストインジェクタを用いても良い。
【0096】
上記の実施例では、第1インジェクタ1の駆動手段として電磁アクチュエータ(第1電磁駆動部6)を用いる例を示したが、第1インジェクタ1の駆動手段は電磁アクチュエータに限定されるものではなく、ピエゾアクチュエータなど他の駆動手段を用いても良い。同様に、上記の実施例では、第2インジェクタ2の駆動手段として電磁アクチュエータ(第2電磁駆動部10)を用いる例を示したが、第2インジェクタ2の駆動手段は電磁アクチュエータに限定されるものではなく、ピエゾアクチュエータなど他の駆動手段を用いても良い。
【符号の説明】
【0097】
1 第1インジェクタ
2 第2インジェクタ
3 第1噴射孔
4 第1ノズルボディ
5 第1ニードル
7 第2噴射孔
8 第2ノズルボディ
9 第2ニードル
11 中心孔
12 エア流路
13 ベンチュリー部
14 ベンチュリー形成部
15 細孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部より加圧供給された液体燃料を噴射する第1噴射孔(3)を有する第1ノズルボディ(4)、この第1ノズルボディ(4)内に収容されて前記第1噴射孔(3)の開閉を行なう第1ニードル(5)を備える第1インジェクタ(1)と、
外部より加圧供給された空気とともに前記第1インジェクタ(1)から噴射された液体燃料を噴射する第2噴射孔(7)、この第2噴射孔(7)の開閉を行なう第2ニードル(9)、この第2ニードル(9)を収容する第2ノズルボディ(8)を備える第2インジェクタ(2)と、
を具備するエアブラストインジェクタにおいて、
(a)前記第2ニードル(9)の内部には、前記第1インジェクタ(1)の噴射燃料が供給される中心孔(11)が設けられ、
(b)前記第2ニードル(9)と前記第2ノズルボディ(8)との間には、前記第2噴射孔(7)の開弁時に加圧空気が前記第2噴射孔(7)に向かって流れるエア流路(12)が区画され、
(c)前記エア流路(12)の通路途中には、前記第2噴射孔(7)の開弁時に前記第2噴射孔(7)に向かって流れる加圧空気を絞るベンチュリー部(13)を形成するベンチュリー形成部(14)が設けられ、
(d)前記第2ニードル(9)には、前記中心孔(11)内の液体燃料を、前記ベンチュリー部(13)を通過した加圧空気中に吸い出させる細孔(15)が設けられ、
(e)この細孔(15)の燃料出口は、前記ベンチュリー部(13)の空気流れ下流に開口することを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記ベンチュリー形成部(14)は、前記第2ノズルボディ(8)の内周面において径方向内側へ膨出することで、前記第2ニードル(9)との間に前記ベンチュリー部(13)を形成するものであり、
前記細孔(15)の燃料出口は、前記ベンチュリー部(13)と前記第2噴射孔(7)との間で、且つ前記ベンチュリー部(13)と同径寸法の前記第2ニードル(9)の側面において開口することを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記細孔(15)の燃料出口は、前記ベンチュリー部(13)における前記第2噴射孔(7)側の端部位置とこの端部位置から前記第2噴射孔(7)の側へ5mm離れた位置との間において開口することを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項4】
請求項1に記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記ベンチュリー形成部(14)は、前記第2ニードル(9)の外周面において径方向外側へ膨出することで、前記第2ノズルボディ(8)との間に前記ベンチュリー部(13)を形成するものであり、
前記細孔(15)の燃料出口は、前記ベンチュリー形成部(14)における前記ベンチュリー部(13)の直下において開口することを特徴とするエアブラストインジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載のエアブラストインジェクタにおいて、
前記細孔(15)の燃料出口は、前記ベンチュリー部(13)を通過した加圧空気の流速がラバーズノズル効果によってマッハ1を超える流速範囲において開口することを特徴とするエアブラストインジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−157955(P2011−157955A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−165887(P2010−165887)
【出願日】平成22年7月23日(2010.7.23)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】