説明

エアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法

【課題】散気膜のスリットにおいて発生した析出物を散気膜の外側へ排出することができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法を提供する。
【解決手段】本発明のエアレーション装置のエアレーションノズルの散気膜に形成される第1のスリット12Aは、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの中央部で交差する分岐スリット12bとから形成され、前記第1のスリット12Aは、供給される空気の圧力(空気量)により、その開口形状が変形する。よって、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、空気量を一時的に増加させることにより、直線状基本スリット12aと分岐スリット12bとの交差部12cにおける開口量が増大するので、析出物の排除が容易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭焚き、原油焚き及び重油焚き等の発電プラントに適用される排煙脱硫装置の排水処理に係り、特に、海水法を用いて脱硫する排煙脱硫装置の排水(使用済海水)をエアレーションにより脱炭酸(暴気)するエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭や原油等を燃料とする発電プラントにおいて、ボイラから排出される燃焼排気ガス(以下、「ガス」と呼ぶ)は、該排ガス中に含まれている二酸化硫黄(SO2)等の硫黄酸化物(SOx)を除去してから大気に放出される。このような脱硫処理を施す排煙脱硫装置の脱硫方式としては、石灰石石膏法、スプレードライヤー法及び海水法等が知られている。
【0003】
このうち、海水法を採用した排煙脱硫装置(以下、「海水排煙脱硫装置」と呼ぶ)は、吸収剤として海水を使用する脱硫方式である。この方式では、たとえば略円筒のような筒形状を縦置きにした脱硫塔(吸収塔)の内部に海水及びボイラ排ガスを供給することにより、海水を吸収液として湿式ベースの気液接触を生じさせて硫黄酸化物を除去している。
上述した脱硫塔内で吸収剤として使用した脱硫後の海水(使用済海水)は、たとえば、上部が開放された長い水路(Seawater Oxidation Treatment System;SOTS)内を流れ排水される際、水路の底面に設置したエアレーション装置から微細気泡を流出させるエアレーションによって脱炭酸(爆気)される(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−055779号公報
【特許文献2】特開2009−028570号公報
【特許文献3】特開2009−028572号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、エアレーション装置で用いるエアレーションノズルは、基材の周囲を覆うゴム製等の散気膜に小さなスリットが多数設けられたものである。一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズルは、供給される空気の圧力により、スリットから略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。従来、ゴム製の散気膜の場合、スリットの長さは、1〜3mm程度である。
【0006】
このようなエアレーションノズルを用いて、海水中でエアレーションを連続して行うと、散気膜のスリット壁面やスリット開口近傍に、海水中の硫酸カルシウム等の析出物が析出し、スリットの間隙が狭くなったり、スリットを塞いだりする結果、散気膜の圧力損失を増大させ、散気装置に空気を供給するブロワ、コンプレッサ等の吐出手段の吐出圧高が発生し、ブロワ、コンプレッサ等に負荷がかかるという、問題がある。
【0007】
析出物の発生は、散気膜の外側に位置する海水が、スリットから散気膜の内側へ浸み込み、常時スリットを通過する空気に、長時間に亙って触れて乾燥(海水の濃縮)が促進され、析出に至っている、と推定される。
【0008】
本発明は、前記問題に鑑み、散気膜のスリットにおいて発生した析出物を散気膜の外側へ排出することができるエアレーション装置及びこれを備えた海水排煙脱硫装置、エアレーション装置の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するための本発明の第1の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備すると共に、前記スリットが供給する空気の圧力により開口形状が変形することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0010】
第2の発明は、第1の発明において、前記スリットが少なくとも折れ曲がり部を有してなることを特徴とするエアレーション装置にある。
【0011】
第3の発明は、第1又は2の発明において、空気の供給の一時的な増加を所定時間毎に制御する制御装置を有することを特徴とするエアレーション装置にある。
【0012】
第4の発明は、第3の発明において、前記制御装置により空気の供給の一時的な増加をすると共に、水を空気供給配管に送る制御を行うことを特徴とするエアレーション装置にある。
【0013】
第5の発明は、海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う第1乃至4のエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置にある。
【0014】
第6の発明は、被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させる第1乃至4のエアレーション装置を用い、吐出手段により空気を供給する際、所定時間毎に、空気の供給の一時的な増大を実行し、スリットの目詰まりを防止することを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【0015】
第7の発明は、第6の発明において、前記空気の供給の一時的な増大を行う際、または単独で、水を空気供給配管に送ることを特徴とするエアレーション装置の運転方法にある。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて、散気膜の外側への析出物の排出を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
【図2−1】図2−1は、エアレーションノズルの平面図である。
【図2−2】図2−2は、エアレーションノズルの正面図である。
【図3】図3は、エアレーションノズルの内部構造概略図である。
【図4−1】図4−1は、本実施例に係るエアレーションノズルの第1のスリットの形状の概略図である。
【図4−2】図4−2は、本実施例に係るエアレーションノズルの第2のスリットの形状の概略図である。
【図4−3】図4−3は、本実施例に係るエアレーションノズルの第3のスリットの形状の概略図である。
【図4−4】図4−4は、本実施例に係るエアレーションノズルの第4のスリットの形状の概略図である。
【図4−5】図4−5は、本実施例に係るエアレーションノズルの第5のスリットの形状の概略図である。
【図4−6】図4−6は、本実施例に係るエアレーションノズルの第6のスリットの形状の概略図である。
【図4−7】図4−7は、本実施例に係るエアレーションノズルの第7のスリットの形状の概略図である。
【図4−8】図4−8は、本実施例に係るエアレーションノズルの第8のスリットの形状の概略図である。
【図4−9】図4−9は、本実施例に係るエアレーションノズルの第9のスリットの形状の概略図である。
【図5−1】図5−1は、散気膜のスリットにおける、空気(飽和度の低い湿り空気)の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。
【図5−2】図5−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況を示す図である。
【図5−3】図5−3は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況(析出物が成長した場合)を示す図である。
【図6】図6は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。
【図7】図7は、本実施例に係る他のエアレーション装置の概略図である。
【図8】図8は、空気量を一時的に増加した場合の時間の経過と散気膜の圧力損失の変動の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【実施例】
【0019】
本発明による実施例に係るエアレーション装置及び海水排煙脱硫装置について、図面を参照して説明する。図1は、本実施例に係る海水排煙脱硫装置の概略図である。
図1に示すように、海水排煙脱硫装置100は、排ガス101と海水103とを気液接触してSO2を亜硫酸(H2SO3)へ脱硫反応させる排煙脱硫吸収塔102と、排煙脱硫吸収塔102の下側に設けられ、硫黄分を含んだ使用済海水103Aを希釈用の海水103と希釈混合する希釈混合槽105と、希釈混合槽105の下流側に設けられ、希釈使用済海水103Bの水質回復処理を行う酸化槽106とからなるものである。
【0020】
海水排煙脱硫装置100では、排煙脱硫吸収塔102において海水供給ラインL1を介して供給される海水103の内の一部の吸収用の海水103を排ガス101と気液接触させて、排ガス101中のSO2を海水103に吸収させる。そして、排煙脱硫吸収塔102で硫黄分を吸収した使用済海水103Aは、排煙脱硫吸収塔102の下部に設けられている希釈混合槽105に供給される希釈用の海水103と混合させる。そして、希釈用の海水103と混合希釈された希釈使用済海水103Bは、希釈混合槽105の下流側に設けられている酸化槽106に送給され、酸化用空気ブロア121より供給された空気122をエアレーションノズル123により供給し、水質回復させた後、排水124として海へ放流するようにしている。
図1中、符号102aは海水を上方に噴出させる液柱用の噴霧ノズル、120はエアレーション装置、122aは気泡、L1は海水供給ライン、L2は希釈海水供給ライン、L3は脱硫海水供給ライン、L4は排ガス供給ライン、L5は空気供給ラインである。
【0021】
このエアレーションノズル123の構成を図2−1、図2−2及び図3を参照して説明する。
図2−1は、エアレーションノズルの平面図、図2−2は、エアレーションノズルの正面図、図3はエアレーションノズルの内部構造概略図である。
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、基材の周囲を覆うゴム製の散気膜11に小さなスリット12が多数設けられたものであり、一般的には「ディフューザノズル」と呼ばれている。このようなエアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から供給される空気122の圧力により散気膜11が膨張すると、スリット12が開いて略均等な大きさの微細気泡を多数流出させることができる。
【0022】
図2−1、図2−2に示すように、エアレーションノズル123は、空気供給ラインL5から分岐した複数(本実施例では8本)の枝管(図示せず)に設けられたヘッダ15に対して、フランジ16を介して取り付けられている。なお、希釈使用済海水103B中に設置される枝管及びヘッダ15には、耐食性を考慮して樹脂製パイプ等が使用されている。
【0023】
エアレーションノズル123は、たとえば図3に示すように、希釈使用済海水103Bに対する耐食性を考慮して樹脂製とした略円筒形状の支持体20を用い、この支持体20の外周を覆うようにして多数のスリット12が形成されたゴム製の散気膜11を被せた後、左右両端部をワイヤやバンド等の締結部材22により固定した構成とされる。
【0024】
また、上述したスリット12は、圧力を受けない通常の状態においては閉じている。なお、海水排煙脱硫装置100においては、常時空気122を供給しているので、常にスリット12は開放状態である。
【0025】
ここで、支持体20の一端20aは、ヘッダ15に取り付けた状態で空気122の導入を可能とすると共に、その他端20bは、海水103が導入可能に開口されている。
このため、一端20a側は、ヘッダ15及びフランジ16を貫通する空気導入口20cを介してヘッダ15内部と連通している。そして、支持体20の内部は、支持体20の軸方向の途中に設けた仕切板20dにより分割され、この仕切板20dにより空気の流通が阻止されている。さらに、この仕切板20dよりヘッダ15側となる支持体20の側面には、散気膜11の内周面と支持体外周面との間に、すなわち、散気膜11を加圧して膨張させる加圧空間11aへ空気122を流出させるための空気出口20e、20fが開口している。従って、ヘッダ15からエアレーションノズル123に流入する空気122は、図中に矢印で示すように、空気導入口20cから支持体20の内部へ流入した後、側面の空気出口20e、20fから加圧空間11aへ流出することとなる。
なお、締結部材22は、散気膜11を支持体20に固定するとともに、空気出口20e、20fから流入する空気が両端部から漏出することを防止するものである。
【0026】
このように構成されたエアレーションノズル123において、ヘッダ15から空気導入口20cを通って流入する空気122は、空気出口20e、20fを通って加圧空間11aへ流出することにより、最初はスリット12が閉じているため加圧空間11a内に溜まって内圧を上昇させる。内圧が上昇された結果、散気膜11は加圧空間11a内の圧力上昇を受けて膨張し、散気膜11に形成されているスリット12が開くことによって空気122の微細気泡を希釈使用済海水103B中に流出させる。
このような微細気泡の発生は、枝管L5A〜5H及びヘッダ15を介して空気供給を受ける全てのエアレーションノズル123で実施される(図6、7参照)。
【0027】
以下、本実施例に係るエアレーション装置について説明する。本発明では、散気膜11に形成するスリット12が、供給する空気の圧力(空気量)により開口形状が変形して開口量が変化し、スリット12において発生した析出物を散気膜11の外側へ排出するようにしたものである。
図4−1〜図4−9は、本実施例に係るエアレーションノズルの散気膜に形成される種々のスリットの形状を示す。
【0028】
図4−1は、本実施例に係るエアレーションノズルの第1のスリットの形状の概略図である。
図4−1に示すように、第1のスリット12Aの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの中央部で交差する分岐スリット12bとから形成されている。そして、前記第1のスリット12Aは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口量が変化するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、直線状基本スリット12aと分岐スリット12bとの交差部12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0029】
ところで、海水の塩分濃度は3.4%であり、96.6%の水に3.4%の塩が溶けている。この塩は、塩化ナトリウムが77.9%、塩化マグネシウムが9.6%、硫酸マグネシウムが6.1%、硫酸カルシウムが4.0%、塩化カリウムが2.1%、その他0.2%の構成となっている。
【0030】
この塩のなかで、海水の濃縮(海水の乾燥)につれて、硫酸カルシウムが最初に析出する塩であり、その析出の閾値が海水の塩分濃度で約14%である。
【0031】
ここで、スリット12に析出物が析出するメカニズムを図5−1〜図5−3を用いて説明する。
図5−1は、散気膜のスリットにおける、空気(飽和度の低い湿り空気)の流出と海水の浸入、および濃縮海水の状況を示す図である。図5−2は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水および析出物の状況を示す図である。図5−3は、散気膜のスリットにおける、空気の流出と海水の浸入、濃縮海水及び析出物の状況(析出物が成長した場合)を示す図である。
ここで、本発明において、スリット12とは、散気膜11に形成される切れ込みをいい、スリット12の間隙は空気が排出される通路となる。
この通路を形成するスリット壁面12aは、海水103が接触しているが、空気122の導入によって乾燥・濃縮され、濃縮海水103aとなり、その後スリット壁面に析出物103bが析出され、スリットの通路を閉塞するものとなる。
【0032】
図5−1は、空気122の相対湿度が低い(飽和度が低い)ので、海水の塩分濃縮が徐々に進行し、濃縮海水103aが形勢された状況を示している。但し、海水の濃縮が始まっても海水の塩分濃度が概ね14%以下では、硫酸カルシウム等の析出はない。
【0033】
図5−2は、濃縮海水103aの一部において、局所的に海水の塩分濃度が14%を超えた部分に析出物103bが発生している状態である。この状態では析出物103bが僅かであるので、スリット12を空気が通過する際の圧力損失が僅かに上昇するものの、空気122は通過可能である。
よって、この状態において、後述するように圧力変動を生じさせることにより、強制的に析出を除去することで、長期間に亙っての運転が可能となる。
【0034】
これに対し、図5−3は、濃縮海水103aの濃縮が進行すると、析出物103bによる閉塞(プラッキング)状態となり、圧力損失が大きくなる状態である。なお、このような状態でも空気122の通路は残っている。この状態においても、後述するように圧力変動を生じさせることにより、強制的に析出物を除去することで、長期間に亙っての運転が可能となる。
このため、本実施例では、図4−1に示すように、供給する空気の圧力(空気量)によりスリットの開口形状が変形できるようにすることで、閉塞を防止するようにしている。
【0035】
図4−2は、本実施例に係るエアレーションノズルの第2のスリットの形状の概略図である。
図4−2に示すように、第2のスリット12Bの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの両端部に直交するように形成された分岐スリット12bとから形成されている。そして、前記第2のスリット12Bは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、直線状基本スリット12aと端部に形成された分岐スリット12bとの交差部12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0036】
図4−3は、本実施例に係るエアレーションノズルの第3のスリットの形状の概略図である。
図4−3に示すように、第3のスリット12Cの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの両端部の少し手前において分岐するように形成された分岐スリット12bとから形成されている。そして、前記第1のスリット12Cは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、直線状基本スリット12aと端部に形成された分岐スリット12bとの交差部12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0037】
図4−4は、本実施例に係るエアレーションノズルの第4のスリットの形状の概略図である。
図4−4に示すように、第4のスリット12Dの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの端部にV字に分岐するように形成された分岐スリット12b、12bとから形成されている。そして、前記第4のスリット12Dは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、直線状基本スリット12aと端部に形成されたV字の分岐スリット12b、12bとの交差部12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0038】
図4−5は、本実施例に係るエアレーションノズルの第5のスリットの形状の概略図である。
図4−5に示すように、第5のスリット12Eの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの両端部に鋭角に分岐するように形成された分岐スリット12b、12bとから形成されている。そして、前記第5のスリット12Eは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、直線状基本スリット12aと端部に基本スリットに対し傾斜して形成された分岐スリット12b、12bとの交差部12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0039】
図4−6は、本実施例に係るエアレーションノズルの第6のスリットの形状の概略図である。
図4−6に示すように、第6のスリット12Fの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの両端部にL字に分岐するように形成された分岐スリット12b、12bとから形成されている。そして、前記第6のスリット12Fは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、直線状基本スリット12aと端部に形成されたL字の分岐スリット12b、12bとの交差部12c、12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0040】
図4−7は、本実施例に係るエアレーションノズルの第7のスリットの形状の概略図である。
図4−7に示すように、第7のスリット12Gの形状は、直線状基本スリット12aと、その直線状基本スリット12aの両端部にV字に分岐するように形成された分岐スリット12b、12bとから形成されている。そして、前記第7のスリット12Gは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、直線状基本スリット12aと端部に形成されたV字の分岐スリット12b、12bとの交差部12cの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0041】
図4−8は、本実施例に係るエアレーションノズルの第8のスリットの形状の概略図である。
図4−8に示すように、第8のスリット12Hの形状は、S字状スリット12dから形成されている。そして、前記第8のスリット12Hは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、S字状スリット12dのカーブの折れ曲がり部における開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0042】
図4−9は、本実施例に係るエアレーションノズルの第9のスリットの形状の概略図である。
図4−9に示すように、第9のスリット12Iの形状は、U字状スリット12eから形成されている。そして、前記第9のスリット12Iは、供給される空気122の圧力(空気量)により、その開口形状が変形するものである。
このように折れ曲がり部は、従来のような直線状スリットのみの場合と異なり、供給する空気の圧力が高くなると(空気量が増加すると)、U字状スリット12eのカーブにおける開口量が増大するので、散気膜の外側への析出物の排出が容易となる。
【0043】
図6、図7は、本実施例に係るエアレーション装置の概略図である。
図6に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Aは、被処理水である希釈使用済海水(図示せず)中に浸漬され、希釈使用済海水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、空気122を吐出手段であるブロア121A〜121Dにより供給する空気供給ラインL5と、水が含まれた空気が供給されるスリットを有する散気膜11を備えたエアレーションノズル123と、空気122の供給の一時的な増大を所定時間毎に制御する制御装置(図示せず)とを具備するものである。
また、空気供給ラインL5には、2基の冷却器131A、131Bと、2基のフィルタ132A、132Bとが各々設けられている。これにより、ブロア121A〜121Dにより圧縮された空気は冷却され、次いで濾過されている。
なお、ブロアが4基あるのは、通常は3基で運転しており、その内の1基は予備としている。また、冷却器131A、131Bと、フィルタ132A、132Bとが各々2基あるのは、連続して運転する必要から、通常は片方のみで運転し、他方はメンテナンス用としている。
【0044】
本実施例では、所定時間経過毎に、制御装置により指令を発して、空気122の供給の一時的な増大を行うようにしている。
【0045】
図8は、時間の経過と圧力変動を示すグラフである。
図8に示すように、定常運転をしている際、所定時間経過した後、空気量を増加させるパージ運転を所定時間行っている。
このように、所定時間毎に空気122の供給が増大されるので、圧力変動が生じ(一時的に空気量が多くなる)、散気膜11の膨張が増大するので、スリット12に析出した硫酸カルシウムの析出物が外部に排出され、スリット12が正常となる。
この結果、連続した運転における硫酸カルシウムの析出によるスリット12の詰まりやスリット12の間隙が狭くなることが防止され、散気膜11の圧力損失を防止できる。
【0046】
この増大の間隔は、析出物の析出の状態に対応して適宜変更すればよいが、好適には1日から2日に一回程度行うようにすればよい。
これは、析出初期の早い段階で空気の供給を増大させ、スリット12を通過する圧力変動を行うことで、容易に析出物を散気膜の外側へ排出することができるからである。
【0047】
この一時的な増加を実施するには、例えば、図6に示すエアレーション装置120Aにおいて、通常3基のブロア121A〜121Cで運転している場合、さらに予備のブロア121Dを駆動させて、大量の空気122を空気供給ラインL5に供給する様にしてもよい。
【0048】
すなわち、予備のブロア121Dの起動によりエアレーションノズル123に導入される空気の量が増加する。この結果、散気膜11のスリット12が大きく開き、硫酸カルシウムを海水側へ排出除去することができる。
よって、硫酸カルシウムの析出によるスリット12の詰まりやスリット12の間隙が狭くなることが防止され、散気膜11の圧力損失を防止できる。
また、ブロアの容量が不足の場合には、追加のブロアを用いて、スリット12から析出物を押出して一掃するような所定のパージ条件とするようにすればよい。
【0049】
また、図7に示すように、本実施例に係るエアレーション装置120Bにおいては、さらに空気供給ラインL5に真水141を供給する水供給ラインL6を設けるようにしている。そして、図示しない制御装置により空気122の供給の一時的に増大させる制御を行うと共に、真水141を空気供給ラインL5に送る制御を行うようにしてもよい。
【0050】
このように、真水141を供給することにより、エアレーションノズル123内に真水141を導入する。これにより、散気膜11のスリット12が洗浄され、スリット12に付着している硫酸カルシウム等の析出物を溶解除去することができる。
この結果、硫酸カルシウムの析出によるスリット12の詰まりやスリット12の間隙が狭くなることが防止され、散気膜11の圧力損失を防止できる。
【0051】
ここで、本実施例では、水の供給としては、真水141を用いているが、真水の代わりに、海水(例えば、希釈海水供給ラインL2の海水103、希釈混合槽105の使用済海水103A、酸化槽106の希釈使用済海水103B等)や水蒸気を用いるようにしてもよい。
【0052】
以上、本実施例では被処理水として海水を例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば汚染処理における汚染水にエアレーションを行うエアレーション装置において、散気孔(メンブレンスリット)での汚泥成分の析出によるプラッギングを防止でき、長期間に亙って安定して操業することができる。
【0053】
以上、本実施例ではエアレーション装置として、チューブ型のエアレーションノズルを用いて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えばディスク型や平板型のエアレーション装置や、セラミックス、金属の散気装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
以上のように、本発明に係るエアレーション装置によれば、エアレーション装置の散気膜のスリットにおいて発生した析出物を散気膜の外側へ排出することができ、例えば海水排煙脱硫装置に適用して、長期間に亙って連続しての安定した操業が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
11 散気膜
12 スリット
12A〜12I 第1〜第9のスリット
100 海水排煙脱硫装置
102 排煙脱硫吸収塔
103 海水
103A 使用済海水
103B 希釈使用済海水
105 希釈混合槽
106 酸化槽
120、120A、120B エアレーション装置
123 エアレーションノズル



【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させるエアレーション装置であって、
空気を吐出手段により供給する空気供給配管と、
前記空気が供給されるスリットを有する散気膜を備えたエアレーションノズルとを具備すると共に、
前記スリットが供給する空気の圧力により開口形状が変形することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記スリットが少なくとも折れ曲がり部を有してなることを特徴とするエアレーション装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
空気の供給の一時的な増加を所定時間毎に制御する制御装置を有することを特徴とするエアレーション装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記制御装置により空気の供給の一時的な増加をすると共に、水を空気供給配管に送る制御を行うことを特徴とするエアレーション装置。
【請求項5】
海水を吸収剤として使用する脱硫塔と、
前記脱硫塔から排出された使用済海水を流して排水する水路と、
前記水路内に設置され、前記使用済海水中に微細気泡を発生して脱炭酸を行う請求項1乃至4のエアレーション装置とを具備することを特徴とする海水排煙脱硫装置。
【請求項6】
被処理水中に浸漬され、被処理水中に微細気泡を発生させる請求項1乃至4のエアレーション装置を用い、
吐出手段により空気を供給する際、所定時間毎に、空気の供給の一時的な増大を実行し、目詰まりを防止することを特徴とするエアレーション装置の運転方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記空気の供給の一時的な増大を行う際、または単独で、水を空気供給配管に送ることを特徴とするエアレーション装置の運転方法。


【図1】
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【図2−1】
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【図2−2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【図4−7】
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【図4−8】
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【図4−9】
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【図5−1】
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【図5−2】
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【図5−3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−40493(P2012−40493A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183499(P2010−183499)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】