説明

エアー・スクリュー・ノズル

【課題】水切り乾燥、粉塵の除去するに際し、特に窪んだところに残留した水などの水切り、粉塵の除去に適した噴射ノズルを提供する。
【解決手段】エアー・スクリュー・ノズルは、複数の噴射ノズルを円筒状の回転子に対して傾斜させて取り付け配置し、エアー供給源からのエアーを噴出口から噴射することにより、エアー噴射の推力を利用して回転子を回転させながらエアー噴射するように構成される。また、エアー・ナイフ・ノズル、エアー・スクリュー・ノズルの外側に向けたノズルも併用して噴射エアーの到達距離を大きくし、また粉塵等を積極的にはじき飛ばすように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエアーを噴射させるノズルに関わり、主として濡れた洗浄物等の水切り乾燥、または除塵、付着物等の剥離を行い、特に、噴射するエアーが捩れるように噴出するノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
HDD用ケース、またそれらを収納するトレイ等を水系の洗浄液で洗浄を行い、純水ですすいだ後、乾燥を行っている。乾燥は生産工程の能率化を図るため短時間で乾燥させる必要がある。これらを乾燥させるために通常は噴射ノズルにより洗浄物にエアーを噴き付けて行っている。
【0003】
しかし、トレイ等の凹凸のある洗浄物を洗浄後、乾燥する場合に窪んだところに残留する水の水切りを行うのは困難であった。これらの水切りを行うためには洗浄物を立掛けて搬送し、洗浄物から水が自然に下方に落下して流れ出すように搬送するとか、また長時間エアーを噴きつけるかエアーの温度を上げるなどさまざまな工夫がされている。
また、自動車部品業界などでは機械部品等の加工後の切り粉、切削油をエアー・ガンで吹き飛ばして除去している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
トレイ、機械部品等の洗浄後、乾燥工程において、水切りにはエアー・ナイフ・ノズルまたはエアー・ガンにより残留水分を吹き飛ばしたり、また、トレイなどは水分を流れやすくするため傾斜させて搬送する方法が採られている。また、機械部品等の加工後の切り粉、切削油もエアー・ガンで吹き飛ばして除去している。
【0005】
しかし、このため多くの人手を要し、またコンプレッサー・エアーをも大量に要するため、コスト面でも大きな負担となっている。これをエアー・ナイフ・ノズル等を使用して自動化するにしても水切り工程においては、特に窪んだところにある水を除去することは困難で自動化の障害になっていた。
【0006】
本発明は、部品の表面はもちろん窪んだところに残留する水をも積極的に掻き出し、容易に水切りを行うことができ、また粉塵を吹き飛ばすのに多大な効果がある。かつ耐久性があり、長寿命のエアー・スクリュー・ノズルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような問題を解決するために本発明のエアー・スクリュー・ノズルは以下の構成よりなる。
中空円筒からなる固定パイプ内に中空円筒からなる回転軸と、この回転軸と一体形成される円筒状の回転子が回転自在に構成されてエアー通路を形成し、回転子の底部に1または2以上の回転子の底部に対して傾斜させた噴射ノズルを設けたことを特徴とする。
この構成を採ることにより、噴出エアーが回転しながら対象物に当たるため、窪みの中に存在するものも抉り出すように窪み内から除去される。
【0008】
また、回転子の底部にエアー・ナイフ・ノズルおよび/または噴射方向をエアー・スクリュー・ノズルの回転子の半径方向で外側に向けて取り付けた噴射ノズルを設けたことを特徴とする。
エアー・ナイフ・ノズルを取り付けることにより、エアー・ナイフのスリットから噴射されるエアーの到達距離を増長させることができる。また、回転子の半径方向で外側に向けて取り付けた噴射ノズルによりエアー・スクリュー・ノズルの領域外に粉塵等を吹き飛ばすことができる。
【0009】
傾斜させた噴射ノズルの傾斜角度を20°〜40°とする。20°以下では噴射エアーの到達距離は伸びるが、回転子の回転力が小さくなり(図6)、円滑な回転をしなくなり、40°以上では、回転力は大きいが、噴射エアーの到達距離が極端に小さくなる(図7)からである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によるエアー・スクリュー・ノズルは、中空の回転軸とその一端に接続される中空円筒状の回転子とその回転子の底面に固定された噴射ノズルによりエアー流路を形成する回転体が固定パイプに軸受を介して回転するため耐久性が高く、かつ噴出エアーが回転子により捩れるように噴出すため、窪んだところにある水も容易に掻き出し除去できる。
【0011】
また、エアー・ナイフ・ノズルを取り付けることにより、エアーの到達距離も引き伸ばすことができる。従って、機械部品等の奥行きの深い穴までエアーが到達するので切り粉、粉塵等の除去に多大な効果がある。
【0012】
また、回転子の半径方向に外向きに噴射ノズルを取り付けることにより粉塵等をエアー・スクリュー・ノズル領域外に吹き飛ばすこともできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明を実施するための最良の形態を添付図面に基づいて、詳細に説明する。図1は本発明に関わるエアー・スクリュー・ノズルの第1実施の形態を示す断面図、図2は第1実施の形態を示す図1の底面図を表す。図3は第2実施の形態を示す回転子2の断面図、図4は第2実施の形態を示す図3の底面図を表す。図5は回転子2にダクトホース11を接続カフス12で接続を示した図である。図6は噴射ノズル(A)3の噴射角と回転力の関係を示すグラフである。図7は噴射ノズル(A)3の噴射角と噴出エアーの到達距離の関係を示すグラフである。図8は本発明によるエアー・スクリュー・ノズルを適用した一実施例を示したものでトレイの水切りを示した図である。
【0014】
図1は本発明のエアー・スクリュー・ノズル1の概略を示した図である。この2個の噴射ノズル(A)3の取り付けは図2の底面図に示している。図2よると2個の噴射ノズル(A)3からエアーを噴出することによりエアー噴射の推力を利用して、回転子2が回転軸4を中心軸として図2矢印の方向に回転し、所定の領域に渉ってエアーを円周上に均一に噴射させることができるように2個の噴射ノズル(A)3は同一方向に点対称にかつ回転子2の底面に対して傾斜して取り付けられている。
【0015】
ここで、この回転子2は中空円筒状の基体とその基体の両端を円板にて封じ、一方の円板には噴射ノズルを取り付け、他方の円板には中空パイプよりなる回転軸4を取り付けて一体の構成体を作り上げ、エアーが回転軸4から回転子2に流入し、噴射ノズルから噴出すエアー流路を形成し、エアー噴射の推進力により一体の構成体が回転する(図3)。
【0016】
また、この一体の構成体である回転体は2個の軸受7が間隔を置いて支持されているため円滑に回転する。この軸受7はラジアル荷重と同時にスラスト荷重も受けられるアンギュラ軸受を使用しており、回転子の底面部に掛かる圧力を受けることができるため耐久力も強い。
【0017】
この回転子2は中空パイプよりなる回転軸4が軸受け7を介して固定パイプ6に設けられている。この固定パイプ6の回転子2の反対側の端部に図示していないブロアーにダクトホース11を接続してエアーを送り込む。また、回転軸4と固定パイプ6の間にはエアー洩れを防止するためシール材8が設けられている。
【0018】
ブロアーから発生したエアーはダクトホース11、回転軸4の内部を通して中空円筒状の回転子2に流入し、噴出しノズル(A)から外部に噴出されるエアー流路を形成される。なお、回転子2の周囲には保護用のカバー5が設けられている。カバー5は周辺に対する保護と同時に噴射ノズル(A)3から噴出すエアーを一定の限られた範囲に留める働きもある。
【0019】
なお、噴射ノズル(A)3は一つでもよくまた、3個以上の複数個を取り付けてもよい。また、噴射ノズル(A)3の傾斜方向は一定方向に回転する方向ならば点対象でなくてもよくまた傾斜角度も同一である必要はない。回転子2は、フライホイールの役目も果たしているため、その回転は円滑なものとなる。
【0020】
また、エアーの流路も兼ねた中空状の回転子2にはエアー噴出と同時に回転力を与える円筒型噴射ノズル(A)3のほかに適宜、いろいろな用途に合わせてノズルを取り付けることも可能である。
【0021】
図3は第2の実施形態を示す図で、回転子2に噴射ノズル(A)3の他にエアー・ナイフ・ノズル9と噴射ノズル(B)10を設けたものである。エアー・ナイフ・ノズル9は回転子2の底面にどの位置にでも適宜、設けることができる。エアー・ナイフ・ノズル9のスリットから噴出すエアーは到達距離が大きく、また、エアー・ナイフ・ノズル9を回転子2の中心部に設けた場合には洗浄対象物の中心部の水切りや粉塵除去に多大な効果を発揮する。
【0022】
噴射ノズル(B)10は回転子2の半径方向において回転子2の外側に向けて設けているためエアー・スクリュー・ノズル1の領域外に切粉等の粉塵を積極的に吹き飛ばす効果を発揮する。
また、本発明のエアー・スクリュー・ノズルの構成材料はステンレス、アルミニューム等の金属や、塩ビ、ポリプロピレン等の樹脂でもよい。
【実施例】
【0023】
本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図8において水で洗浄後のトレイ13をエアーを噴射しているエアー・スクリュー・ノズル1の下に搬送して置く。エアー・スクリュー・ノズル1から噴出するエアーは回転子の回転により捩れるように噴射する。この噴出エアーによりトレイ13の表面に付着する水はもちろんトレイ13の窪み14内に存在する水も掻き出すように除去する。
【0024】
これと同様に機械加工部品に付着する切り粉や切削油もエアー・スクリュー・ノズル1により吹き飛ばして除去される。この方法によるとコンプレッサ・エアーを使用したエアー・ガンによる除去よりも数倍の威力を発揮する。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明によるエアー・スクリュー・ノズルは機械部品、食品業界等において水切り乾燥、粉塵除去、切り粉飛ばしなどあらゆる業界において実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明によるエアー・スクリュー・ノズルの概略を示す断面図。
【図2】本発明によるエアー・スクリュー・ノズルの底面図。
【図3】本発明による回転子と回転軸を一体とする回転体の断面図。
【図4】本発明による回転子と回転軸を一体とする回転体の底面図。
【図5】本発明による回転子と回転軸を一体とする回転体とダクトホースの接続図。
【図6】噴射角と回転力の関係を示すグラフ。
【図7】噴射角と到達距離の関係を示すグラフ。
【図8】本発明によるエアー・スクリュー・ノズルを適用した一実施例を示した図。
【符号の説明】
【0027】
1 エアー・スクリュー・ノズル
2 回転子
3 噴射ノズル(A)
4 回転軸
5 カバー
6 固定パイプ
7 軸受
8 シール材
9 エアー・ナイフ・ノズル
10 噴射ノズル(B)
11 ダクトホース
12 接続カフス
13 トレイ
14 窪み

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒からなる固定パイプ内に中空円筒からなる回転軸と、この回転軸と一体形成される円筒状の回転子が回転自在に構成されてエアー通路を形成し、回転子の底部に1または2以上の回転子の底部に対して傾斜させた噴射ノズルを設けたエアー・スクリュー・ノズル。
【請求項2】
回転子の底部にエアー・ナイフ・ノズルおよび/または噴射方向をエアー・スクリュー・ノズルの外側に向けて取り付けた噴射ノズルを設けたことを特徴とする請求項1記載のエアー・スクリュー・ノズル。
【請求項3】
傾斜させた噴射ノズルの傾斜角度を20°〜40°とする請求項1および請求項2記載のエアー・スクリュー・ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−36617(P2008−36617A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−239522(P2006−239522)
【出願日】平成18年8月9日(2006.8.9)
【出願人】(506299227)フェニックス精工株式会社 (2)
【出願人】(506299238)ピュアトラスト株式会社 (2)
【Fターム(参考)】