説明

エア制御弁、及び塗装システム

【課題】 シェーピングエアの流量を的確にかつ速やかに制御することができるエア制御弁を提供すること。
【解決手段】 塗装機2は、噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する2系統の給気流路18a,18bを有する。エア制御弁26は、第1弁部及び第2弁部を備え、第1弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、主流路24からのエアのトータル流量を設定し、第2弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、2系統の給気流路18a,18bに分配するエアの比率を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを制御するエア制御弁、及びそれを利用した塗装システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディの塗装においては、厳しい塗装品質が要求されるため、均一で高品質の塗装を行うことができる回転霧化式の塗装機が用いられている。この塗装機は回転霧化頭を備え、その回転霧化頭が回転することにより塗料が霧化されて自動車ボディの塗装が行われる。また、この塗装機においては、回転霧化頭の後方外側からシェーピングエアを吐出して噴霧塗料の拡がりを抑えることにより所望の塗装パターンで塗装が行われる。そのため、この塗装機では、噴霧塗料の塗着効率の向上によって塗料の無駄が抑えられるとともに、均一の塗膜が形成されて塗装品質が高められる。
【0003】
ところで、被塗装物の形状や塗料の種類などの塗装条件が異なる場合には、それに応じた最適な塗装パターンにする必要がある。その場合、回転霧化頭への塗料の供給量や回転霧化頭の回転数などが変更され、その変更に応じてシェーピングエアの流量が制御される。
【0004】
従来、この種の塗装機においては、吐出方向の異なる2種類以上のシェーピングエアを供給可能なものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この塗装機においては、渦状に吐出される渦流及び円錐面状に吐出される円錐空気流のいずれか一方または両方をシェーピングエアとして用いることにより、塗装パターンが変更される。上記のような回転霧化式の塗装機では、例えば絞り弁構造を有する電/空レギュレータを使用してシェーピングエアの圧力が制御される。具体的には、電/空レギュレータを用いる場合、出力圧力が圧力センサで検出され、入力信号に応じた出力圧力となるようフィードバック制御されることでシェーピングエアが所定の流量となるよう調整される。
【特許文献1】特開2002−224611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、近年の塗装機においてシェーピングエアの流量は比較的大きくなってきており、電/空レギュレータを使用してシェーピングエアの流量を変更した場合、変更後のエア流量が安定するまでに時間がかかる。従って、エア流量の安定を待たずに塗装を行うと、塗膜の厚さがばらついてしまう。一方、このような不具合を避けるためにエア流量の安定を待って塗装を行うと、塗料の無駄が多くなり、塗着効率が悪化してしまう。また、特許文献1のように、2種類のシェーピングエアを吐出する場合には、それらのエアの流量を制御するために2つの電/空レギュレータが必要になるため、各エアの流量が不安定となると、最適な塗装パターンを得ることが困難となってしまう。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、シェーピングエアの流量を速やかにかつ的確に制御することができるエア制御弁、及び塗装システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明では、噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機に用いられ、エア供給源に接続される主流路のエアを前記複数系統の給気流路に分配して供給可能なエア制御弁であって、第1弁部及び第2弁部を備え、前記第1弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記主流路からのエアのトータル流量が設定可能であり、前記第2弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記複数系統の給気流路に分配するエアの比率が設定可能であることを特徴とするエア制御弁をその要旨とする。
【0008】
請求項1の発明によれば、エア制御弁の第1弁部の変位に基づいて流路断面積が変更され主流路からのエアのトータル流量が設定される。また、第2弁部の変位に基づいて流路断面積が変更され複数系統の給気流路に分配するエアの比率(0%〜100%の比率)が設定される。この場合、例えば、給気流路の断面積を変更する2段階調節機構(第1弁部及び第2弁部)によって、塗装パターンに応じたシェーピングエアの流量の切り替えを的確に行うことができる。また、電/空レギュレータを使用してシェーピングエアを制御する従来の場合に比較して、シェーピングエアの流量を短時間で安定させることができる。よって、本発明のエア制御弁を塗装機に適用した場合には、塗着効率及び塗装品質を向上することが可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機と、請求項1に記載のエア制御弁と、前記エア制御弁の前記第1弁部及び前記第2弁部を駆動するために前記エア制御弁に取り付けられたアクチュエータとを備え、前記アクチュエータによる前記第1弁部及び前記第2弁部の駆動により、前記シェーピングエアのパターン変更が可能な塗装システムをその要旨とする。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載のエア制御弁にアクチュエータが取り付けられ、そのアクチュエータによって第1弁部及び第2弁部が駆動される。この駆動により、主流路からのエアのトータル流量が設定されるとともに複数系統の給気流路に分配するエアの比率が設定され、シェーピングエアのパターンが的確に変更される。このように、エア制御弁によってシェーピングエアのパターン変更を行うようにすると、パターン変更後のシェーピングエアの流量を短時間で安定させることができ、塗着効率及び塗装品質に優れた塗装システムを実現することができる。
【0011】
また、上記塗装機がロボット搭載型である塗装システムにおいては、前記エア制御弁及び前記アクチュエータは、そのロボット搭載型塗装機に配置されることが好ましい。このようにすれば、例えば上記塗装機が回転霧化式である場合、回転霧化頭への塗料の供給量や回転霧化頭の回転数などの変更に応じた適切なパターンにシェーピングエアのパターンを瞬時に切り替えることが可能となる。
【0012】
請求項3に記載の発明は、請求項2において、前記第1弁部及び前記第2弁部は共通のアクチュエータにより駆動されることをその要旨とする。
【0013】
請求項3に記載の発明によれば、共通のアクチュエータによって第1弁部と第2弁部とが連係して駆動可能なため、パターン変更をより的確にかつ高再現性で行うことができる。また、別々のアクチュエータで第1弁部及び第2弁部を駆動する塗装システムと比較して、低コスト、コンパクト、軽量なシステムを構築することができる。この場合、エア制御弁及びアクチュエータをロボット搭載型塗装機やロボットアームに配置しやすくなる。
【0014】
請求項4に記載の発明は、請求項2または3において、前記アクチュエータは防爆用ケース内に収納された制御用モータであることをその要旨とする。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、制御用モータを電気的に駆動することによって、エア制御弁の第1弁部及び第2弁部を正確に駆動することができる。また、制御用モータを防爆用ケース内に収納することにより、制御用モータをケース外部の環境から隔絶することができる。このような制御用モータとしては、サーボモータやステッピングモータが挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
以上詳述したように、請求項1〜4に記載の発明によると、シェーピングエアの流量を速やかにかつ的確に制御することができ、塗装機の塗着効率の向上及び塗装品質の向上を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明を具体化した一実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。図1は本実施形態における塗装システムの概略構成図である。
【0018】
図1に示されるように、塗装システム1は、塗装機2と、塗料を供給するための塗料供給装置3と、シェーピングエアを供給するためのエア供給装置4と、シェーピングエアの流量を設定するためのバルブユニット5と、塗料供給装置3及びバルブユニット5を制御するための制御装置6とを備える。
【0019】
制御装置6は、CPU、ROM、RAM、入出力回路等からなる周知のコンピュータにより構成されている。この制御装置6は、塗料供給装置3及びバルブユニット5と電気的に接続されており、各種の制御信号によってそれらを制御する。塗装機2は、回転霧化式の塗装機であり、有機溶剤系の塗料を霧化するための回転霧化頭11を備える。回転霧化頭11は、図示しない回転モータ(塗装機本体に内蔵されるエアモータ)によって回転される回転軸12の先端に設けられている。本実施の形態の塗装機2は、ロボット搭載型塗装機であり、図示しない塗装用ロボットのアーム先端に固定され、その塗装用ロボットがアームを駆動することで塗装機2の位置や塗装方向が変更される。
【0020】
塗料供給装置3は、塗料が充填されるシリンダ装置やそのシリンダ装置を駆動するモータなどを備え、制御装置6の制御信号に基づいて、所定量の塗料を吐出する。なお、この塗料供給装置3も塗装用ロボットのアームなどに搭載されている。塗料供給装置3から吐出された塗料は、塗料配管14を介して塗装機2に供給され、さらに、塗装機2の内部に形成されている塗料供給路(図示略)を介して回転霧化頭11に供給される。そして、回転する回転霧化頭11に加わる遠心力によって塗料が霧化されて塗装が行われる。
【0021】
また、本実施形態の塗装機2においては、回転霧化頭11の後方外側から噴霧塗料の拡がりを抑えるためのシェーピングエアが吐出される。詳述すると、塗装機2の先端側のハウジング15には、シェーピングエアを吐出するための複数の吐出孔16a,16bがそれぞれ設けられている。図2に示すように、これら吐出孔16a,16bは、回転軸12を中心とした2つの同心円上に形成されている。内側の吐出孔(第1吐出孔)16aは、軸方向に沿って直線的に形成されたストレート孔であり、外側の吐出孔(第2吐出孔)16bは、軸方向を基準として傾斜するように形成された捩じれ孔である。
【0022】
図1に示すように、塗装機2のハウジング15には、環状のエア供給室17a,17bが2つ設けられており、複数の第1吐出孔(第1吐出孔群)16aは内側のエア供給室17aに連通し、複数の第2吐出孔(第2吐出孔群)16bは外側のエア供給室17bに連通している。また、内側のエア供給室17aは第1給気経路18aを介してバルブユニット5に接続されるとともに、外側のエア供給室17bは第2給気経路18bを介してバルブユニット5に接続されている。
【0023】
本実施形態の塗装システム1では、そのバルブユニット5により、エア供給装置4からのエアが2系統の給気流路(第1給気経路18a及び第2給気経路18b)に分配されて供給される。そして、それら給気流路18a,18bとエア供給室17a,17bとを経由して第1吐出孔16aと第2吐出孔16bとから吐出方向の異なるシェーピングエアが吐出される。また、バルブユニット5によって各給気流路に供給されるシェーピングエアの流量が制御されることで、塗装条件に応じた最適な塗装パターンで塗装が行われる。
【0024】
以下、シェーピングエアを制御するための構成について詳述する。
【0025】
エア供給装置4は、エア供給源21と、開閉バルブ22と、エアレギュレータ(空気減圧弁)23とを備え、主流路24を介してバルブユニット5に接続されている。エア供給源21は、コンプレッサからなり、高圧のエアを開閉バルブ22を介してエアレギュレータ23に供給する。エアレギュレータ23は、その高圧のエアを一定の圧力に調整してバルブユニット5に供給する。
【0026】
バルブユニット5は、エア制御弁26とそのエア制御弁26に取り付けられたアクチュエータ27とを備える。本実施の形態におけるバルブユニット5(エア制御弁26及びアクチュエータ27)は塗装機2のケース外部に固定されている。なお、塗装機2のケース内部に設置スペースが確保可能な場合は、バルブユニット5をそのケース内に配置してもよい。
【0027】
図3に示すように、エア制御弁26は、弁体としての第1のバルブロータ31及び第2のバルブロータ32と、それらを収納する弁体収納空間33,34を有するボディ35とを備える。
【0028】
エア制御弁26のボディ35には、第1のバルブロータ31の弁体収納空間33に連通し、主流路24に接続可能な給気ポートXと、第2のバルブロータ32の弁体収納空間34に連通し、2系統の給気流路18a,18bに接続可能な排気ポートA,Bとが設けられている。ボディ35において、給気ポートXと弁体収納空間33との接続部には、ロータ軸方向に延びるスリット状の貫通孔38が形成されている。また、各排気ポートA,Bと弁体収納空間34との接続部にもスリット状の貫通孔39a,39bが形成されている。
【0029】
各バルブロータ31,32は中空筒状をなし、その側壁にはエアを通過させるための所定形状のスロット41,42が形成されている。第1のバルブロータ31においてスロット41が形成される領域が第1弁部に相当し、第2のバルブロータ32においてスロット42が形成される領域が第2弁部に相当する。また、各バルブロータ31,32の先端側に開口部が設けられ、それら開口部は、ボディ35側に形成されたエア通路44を介して連通している。つまり、エア制御弁26において、給気ポートXから供給されたエアは、第1のバルブロータ31→エア通路44→第2のバルブロータ32の順に流れ、排気ポートA,Bから排出されるようになっている。
【0030】
また、各バルブロータ31,32の基端側中心部には回転軸46,47が固定されており、それら回転軸46,47はギヤ48を介してアクチュエータ27の回転軸49に連結されている。本実施形態のアクチュエータ27は、回転位置が制御可能なサーボモータからなり、防爆用ケース51内に収納されている。このアクチュエータ27が駆動すると、回転軸49の回転に応じてバルブロータ31,32が所定角度だけ回転(変位)する。
【0031】
本実施の形態では、第1のバルブロータ31の回転位置に基づいて流路断面積が変更され、シェーピングエアのトータルの流量が設定される。また、第2のバルブロータ32の回転位置に基づいて流路断面積が変更され、2系統の給気流路18a,18bに分配するエアの比率が設定される。
【0032】
図4は、各バルブロータ31の外周面を回転方向に展開した状態を示すバルブ展開図である。なお、同図には、各バルブロータ31,32のスロット41,42に加えて、ボディ35側の貫通孔38,39a,39bも図示している。
【0033】
図4(a)に示すように、第1のバルブロータ31のスロット41は、ロータ回転方向に沿って徐々に幅が広くなるよう形成されている。給気ポートX側の貫通孔38に繋がるスロット41の断面積(流路断面積)は、第1のバルブロータ31の回転位置に応じて、徐々に変化するようになっている。そして、その断面積に応じてシェーピングエアの流量が、0%〜100%の範囲で設定可能となっている。
【0034】
また、図4(b)に示すように、第2のバルブロータ32には、第1の排気ポートAに繋がるスロット(図中左側に設けられるスロット)42aと第2の排気ポートBに繋がるスロット(図中右側に設けられるスロット)42bとが複数設けられている。そして、第2のバルブロータ32の回転位置に応じて、各排気ポート側の貫通孔39a,39bに繋がるスロット42a,42bの組み合わせが変更される。換言すると、上記回転位置に応じて、第1の排気ポートA及び第2の排気ポートBにエアを分配する比率が、0:100、50:50、100:0のいずれかに設定されるようになっている。
【0035】
本実施の形態では、制御装置6の制御信号に応答してアクチュエータ27が駆動することで、図4において1〜7の番号で示すステップでバルブロータ32が段階的に回転し、その回転位置に応じてシェーピングエアのパターンが変更される。
【0036】
具体的にいうと、第1の回転位置では、第1の排気ポートAの貫通孔39aのみがスロット42aを介して第2のバルブロータ32の中空部に連通される。従って、各排気ポートA,Bのうちの第1の排気ポートAから第1給気経路18aにエアが供給され、ハウジング15に形成されたストレート孔16aからシェーピングエアが吐出される。
【0037】
第2の回転位置では、第1及び第2の排気ポートA,Bの各貫通孔39a,39bがスロット42a,42bを介して第2のバルブロータ32の中空部に連通される。従って、第1及び第2の排気ポートA,Bの両方から第1給気経路18a及び第2給気経路18bにエアが供給され、ハウジング15に形成されたストレート孔16aと捩じれ孔16bとから吐出方向が異なる2種類のシェーピングエアが吐出される。
【0038】
第3の回転位置では、第2の排気ポートBの貫通孔39bのみがスロット42bを介して第2のバルブロータ32の中空部に連通される。従って、各排気ポートA,Bのうちの第2の排気ポートBから第2給気経路18bにエアが供給され、ハウジング15に形成された捩じれ孔16bからシェーピングエアが吐出される。
【0039】
第4の回転位置では、第2の回転位置と同様に、第1及び第2の排気ポートA,Bの両方からエアが供給され、ハウジング15のストレート孔16aと捩じれ孔16bとから噴射方向が異なる2種類のシェーピングエアが吐出される。
【0040】
第5の回転位置では、第1の回転位置と同様に、各排気ポートA,Bのうちの第1の排気ポートAからエアが供給され、ハウジング15のストレート孔16aからシェーピングエアが吐出される。
【0041】
第6の回転位置では、第2及び第4の回転位置と同様に、第1及び第2の排気ポートA,Bの両方からエアが供給され、ハウジング15のストレート孔16aと捩じれ孔16bとから噴射方向が異なる2種類のシェーピングエアが吐出される。
【0042】
第7の回転位置では、第3の回転位置と同様に、各排気ポートA,Bのうちの第2の排気ポートBからエアが供給され、ハウジング15の捩じれ孔16bからシェーピングエアが吐出される。
【0043】
本実施の形態のバルブユニット5において、第1のバルブロータ31と第2のバルブロータ32は、共通のアクチュエータ27の回転によりそれぞれ連動して回転する。そのため、第2のバルブロータ32が第1の回転位置から第7の回転位置に段階的に回転する場合、第1のバルブロータ31も同様に回転し、その第1のバルブロータ31によって制御されるエアのトータルの流量はその回転に応じて徐々に増大するようになっている。
【0044】
また、ストレート孔16aから吐出されるシェーピングエアは、塗装パターンをある程度広げて均一な円形に整える作用を有し、捩じれ孔16bから吐出されるシェーピングエアは、塗装パターンを絞り込む作用を有する。
【0045】
従って、第1及び第2のバルブロータ31,32の回転位置を制御することにより、第1のバルブロータ31によってシェーピングエアのトータルの流量が変更されるとともに第2のバルブロータ32によってシェーピングエアの組み合わせが変更される。その結果、図5に示すように、各回転位置においてそれぞれ異なるシェーピングエアパターンを設定でき、異なる塗装パターンで塗装を行うことができる。なお、図5においては、左側から順に第1〜第7の回転位置に応じた塗装パターンP1〜P7を示している。
【0046】
このように、本実施形態の塗装システム1では、塗料の種類、被塗装物の形状や距離などの塗装条件に応じた所望のパターンにシェーピングエアを切り替えて塗装を行うことができる。
【0047】
従って、本実施形態によれば以下の効果を得ることができる。
【0048】
(1)本実施形態のエア制御弁26では、いわば給気流路の断面積を変更する2段階調節機構によって、塗装パターンに応じたシェーピングエアの流量の切り替えを的確に行うことができる。また、このエア制御弁26を用いることにより、シェーピングエアの流量を瞬時に安定させることができるため、塗装機2の塗着効率及び塗装品質を向上することができる。
【0049】
(2)本実施形態の場合、共通のアクチュエータ27により第1のバルブロータ31と第2のバルブロータ32とを連係して駆動することができ、パターン変更をより的確にかつ高再現性で行うことができる。また、アクチュエータ27が1つで済むことから、低コスト、コンパクト、軽量な塗装システム1を実現することができる。
【0050】
(3)本実施形態の場合、アクチュエータ27がサーボモータであるので、各バルブロータ31,32を正確に回転駆動することができる。また、アクチュエータ27であるサーボモータが防爆用ケース51内に収納されているので、サーボモータを防爆用ケース51外部の環境から隔絶することができる。よって、有機溶剤系の塗料を用いた塗装システム1における好適なバルブユニット5として使用することが可能となる。
【0051】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
【0052】
・上記実施形態において、第1及び第2のバルブロータ31,32に形成されるスロット41,42の形状は適宜変更することができる。図6には、別の実施形態のバルブロータ61,62のバルブ展開図を示す。図6(a)に示すように、第1のバルブロータ61のスロット63は、ロータ回転方向に沿って徐々に幅が狭くなるよう形成されている。また、図6(b)に示すように、第2のバルブロータ62には、第1の排気ポートAに繋がるスロット(図中左側に設けられるスロット)64aと第2の排気ポートBに繋がるスロット(図中右側に設けられるスロット)64bが1つずつ設けられている。第1の排気ポートAに繋がるスロット64aは、ロータ回転方向に沿って徐々に幅が広くなるよう形成され、第2の排気ポートBに繋がるスロット64bは、前記スロット64aとは逆に徐々に幅が狭くなるよう形成されている。このように構成しても、第1のバルブロータ61の回転位置に応じて、各シェーピングエアのトータルの流量を設定することができる。また、第2のバルブロータ62の回転位置に応じて、2系統の給気流路に分配するエアの比率を設定することができる。
【0053】
・上記実施形態では、第1及び第2のバルブロータ31,32を共通のアクチュエータ27で回転させるものであったが、これに限定されるものではない。図7に示す別の実施形態のように、第1及び第2のバルブロータV1,V2を別々のサーボモータM1,M2で回転させるよう構成してもよい。この場合、第1の排気ポートAと第2の排気ポートBとを介して各給気経路18a,18bに流れるシェーピングエアを任意の流量に設定することができ、所望の塗装パターンで塗装を行うことができる。なお、トータルエア流量を設定する第1のバルブモータ31、エア分配比率を設定する第2のバルブモータ32は、第1実施形態のように共通のボディ内に収容されていてもよいが、別々のボディ内に収容されていてもよい。換言すると、第1弁体としての機能と第2弁体としての機能とを別々のバルブに担わせるようにして構成してもよい。
【0054】
・上記実施の形態では、2つのバルブロータ31,32を用いて各シェーピングエアの流量を制御するものであったが、これに限定されるものではない。図8に示す別の実施形態のように、1つのバルブロータ71を用いて各シェーピングエアの流量を制御することもできる。即ち、このバルブロータ71には、第1の排気ポートAに繋がる1つのスロット(図中左側に設けられるスロット)72と第2の排気ポートBに繋がる2つのスロット(図中右側に設けられるスロット)73,74が設けられている。排気ポートA側のスロット72は、上方から下方に向けて徐々に幅が広くなるよう形成されるとともに、一点鎖線よりも下側は下方に向けて徐々に幅が狭くよう形成される。また、このスロット72において一点鎖線よりも下側は、上側と比較して幅が狭く形成されている。排気ポートB側において一点鎖線の上方に設けられたスロット73は、上方から下方に向けて徐々に幅が狭くなるよう形成され、一点鎖線の下方に設けられたスロット74は、上方から下方に向けて徐々に幅が広くなるよう形成されている。排気ポートB側の各スロット73,74について、下側のスロット74は上側のスロット73と比較して幅が狭く形成されている。
【0055】
このように構成したバルブロータ71を用いると、一点鎖線の上側と下側の回転位置とで2段階にシェーピングエアの流量を設定することができる。さらに、一点鎖線の上側と下側とにおいて、回転位置を変更することでそれぞれ任意の比率に各シェーピングエアを分配することができる。つまり、図8のバルブロータ71は、第1弁部及び第2弁部として機能する1つの弁体を備えていると把握できる。
【0056】
・上記実施形態において、バルブロータ31,32,61,62,71を駆動するアクチュエータ27としては、サーボモータなどの電気的アクチュエータ以外に、エアシリンダや油圧シリンダなどの流体圧アクチュエータを用いてもよい。
【0057】
・エア制御弁26の弁体としては、回転駆動されるバルブロータ31,32,61,62,71に限定されるものではなく、軸方向に往復動する弁体を用いてもよい。つまり、弁体の変位に基づいて給気流路の断面積を変更できるエア制御弁であればよい。
【0058】
・上記の塗装システム1において、エア制御弁26でのエアの圧力を圧力センサで検出し、そのエアの圧力に基づいてバルブ動作の異常を検出するよう構成してもよい。また、エア制御弁26の各排気ポートA,Bから出力されるエアの流量を流量計で検出し、そのエアの流量に基づいてバルブ動作の異常を検出するよう構成してもよい。さらに、圧力センサや流量計で検出した検出値に基づいてバルブロータ31,32,61,62,71の回転位置を制御するよう構成してもよい。
【0059】
・上記の塗装システム1において、塗料供給装置3のモータと、バルブユニット5のアクチュエータ27とを一体的に構成して、システムの小型化を図るようにしてもよい。
【0060】
・上記実施形態の塗装システム1は、吐出方向の異なる2種類のシェーピングエアを吐出するものであったが、3種類以上のシェーピングエアを吐出するシステムに具体化してもよい。
【0061】
・上記実施形態の塗装システム1では、有機溶剤系の塗料を用いたが、有機溶剤を含まない水性塗料を用いてもよい。有機溶剤系塗料を用いる塗装システム1では、アクチュエータ27を防爆用ケース51に収納する必要があるが、水性塗料を用いる塗装システムでは、アクチュエータ27を防爆用ケース51に収納する必要はない。
【0062】
・上記実施形態では、エア制御弁26を回転霧化式の塗装機2に用いたが、例えばエア霧化ガン等に用いることもできる。また、塗装機2以外にも、液体噴霧機において薬剤などの噴霧液体に作用するシェーピングエアの流量を制御するために、エア制御弁26を用いることも可能である。
【0063】
次に、特許請求の範囲に記載された技術的思想のほかに、前述した実施形態によって把握される技術的思想を以下に列挙する。
【0064】
(1)請求項2乃至4のいずれか1項において、前記塗装機はロボット搭載型であり、前記エア制御弁及び前記アクチュエータはそのロボット搭載型塗装機に配置されていることを特徴とする塗装システム。
【0065】
(2)請求項1において、前記給気流路は、複数の第1吐出孔からなる第1吐出孔群にシェーピングエアを供給する第1給気経路と、前記複数の第1吐出孔とはエアの吐出方向が異なる複数の第2吐出孔からなる第2吐出孔群にシェーピングエアを供給する第2給気経路とにより構成されていることを特徴とする塗装システム。
【0066】
(3)噴霧液体に作用するシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する液体噴霧機に用いられ、エア供給源に接続される主流路のエアを前記複数系統の給気流路に分配して供給可能なエア制御弁であって、第1弁部及び第2弁部を備え、前記第1弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記主流路からのエアのトータル流量が設定可能であり、前記第2弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記複数系統の給気流路に分配するエアの比率が設定可能であることを特徴とするエア制御弁。
【0067】
(4)噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機に用いられ、エア供給源に接続される主流路のエアを前記複数系統の給気流路に分配して供給可能なエア制御弁であって、弁体収容空間を有するボディと、前記ボディに設けられ、前記弁体収容空間に連通し、前記主流路に接続可能な給気ポートと、前記ボディに設けられ、前記弁体収容空間に連通し、前記複数系統の給気流路にそれぞれ接続可能な複数の排気ポートと、前記弁体収容空間内にて変位可能に収容され、第1弁部及び第2弁部が形成された弁体とを備え、前記第1弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記主流路からのエアのトータル流量が設定可能であり、前記第2弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記複数系統の給気流路に分配するエアの比率が設定可能であることを特徴とするエア制御弁。
【0068】
(5)上記(4)において、前記弁体は、その側壁に所定パターンのスロットが形成され、前記ボディに対して回転駆動される中空円筒形状のバルブロータであり、前記バルブロータの回転位置に応じて前記流路断面積が変更されることを特徴とする塗装システム。
【0069】
(6)上記(5)において、前記アクチュエータにより前記弁体が段階的に回転駆動され、その弁体の回転位置に基づいて前記各排気ポートに繋がるスロットの組み合わせが変更されることで、シェーピングエアのパターンが変更されることを特徴とする塗装システム。
【0070】
(7)噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機に用いられ、エア供給源に接続される主流路のエアを前記複数系統の給気流路に分配する箇所の上流側に設けられるエア制御弁であって、弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記主流路からのエアのトータル流量が設定可能なエア制御弁。
【0071】
(8)噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機に用いられ、エア供給源に接続される主流路のエアを前記複数系統の給気流路に分配するエア制御弁であって、弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記複数系統の給気流路に分配するエアの比率が設定可能であることを特徴とするエア制御弁。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明を具体化した一実施の形態の塗装システムを示す概略構成図。
【図2】シェーピングエアの吐出孔のレイアウトを示す説明図。
【図3】バルブユニット及びアクチュエータを示す断面図。
【図4】(a),(b)はバルブロータを示すバルブ展開図。
【図5】各塗装パターンを示す説明図。
【図6】(a),(b)は別の実施形態のバルブロータを示すバルブ展開図。
【図7】別の実施形態の塗装システムを示す構成図。
【図8】別の実施形態のバルブロータを示すバルブ展開図。
【符号の説明】
【0073】
1…塗装システム
2…塗装機
18a…給気流路としての第1給気経路
18b…給気流路としての第2給気経路
21…エア供給源
24…主流路
26…エア制御弁
27…アクチュエータ
31,61…第1弁部を備える第1のバルブロータ
32,62…第2弁部を備える第2のバルブロータ
51…防爆用ケース
71…第1弁部及び第2弁部を備えるバルブロータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機に用いられ、エア供給源に接続される主流路のエアを前記複数系統の給気流路に分配して供給可能なエア制御弁であって、
第1弁部及び第2弁部を備え、前記第1弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記主流路からのエアのトータル流量が設定可能であり、前記第2弁部の変位に基づく流路断面積の変更により、前記複数系統の給気流路に分配するエアの比率が設定可能であることを特徴とするエア制御弁。
【請求項2】
噴霧塗料の拡がりを抑えるシェーピングエアを供給する複数系統の給気流路を有する塗装機と、
請求項1に記載のエア制御弁と、
前記エア制御弁の前記第1弁部及び前記第2弁部を駆動するために前記エア制御弁に取り付けられたアクチュエータと
を備え、前記アクチュエータによる前記第1弁部及び前記第2弁部の駆動により、前記シェーピングエアのパターン変更が可能な塗装システム。
【請求項3】
前記第1弁部及び前記第2弁部は共通のアクチュエータにより駆動されることを特徴とする請求項2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記アクチュエータは防爆用ケース内に収納された制御用モータであることを特徴とする請求項2または3に記載の塗装システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−334577(P2006−334577A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−166266(P2005−166266)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000110343)トリニティ工業株式会社 (147)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】