説明

エコー信号処理装置、レーダ装置、エコー信号処理方法、およびエコー信号処理プログラム

【課題】送信パルスの条件に起因するぼやけを解消し、物標を明りょうに表示することができる画像処理方法を提供する。
【解決手段】測定データのうち、サンプル間の値の変化度合いが相対的に大きいサンプルの測定データを強調するエッジ強調処理を行い、エッジ強調処理後の測定データを用いてスキャン相関処理を行う。物標の輪郭のうち、自船に近い箇所は、サンプル間の値の変化度合いが相対的に大きい箇所である(エコーレベルが急激に立ち上がる箇所である)。この立ち上がり部分の測定データは、パルス長等の送信パルス条件が変化しても大きく変動しない情報である。したがって、エッジ強調処理を行ってからスキャン相関を行うことにより、送信パルスの条件に起因するぼやけ等を解消し、物標の輪郭を明りょうに表示することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エコー信号に種々の処理を行うエコー信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レーダ装置等においては、測定した物標の画像(エコー画像)を画面表示する際に、同じ位置に連続して生じないエコー(シークラッタ等)を抑圧し、物標のエコーを強調するスキャン相関処理を行う(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−352212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、エコーレベルは、送信パルスの条件によって変化するため、スキャン相関を行っても輪郭がぼやける等の問題が生じる場合がある。特に、特許文献1の手法では、重み付け加算処理を行うため、物標のエコーレベルの変動や誤差等により、不動の物標についても輪郭がぼやける場合があった。
【0005】
そこで、この発明は、送信パルスの条件に起因するぼやけを解消し、物標の輪郭を明りょうに表示することができるエコー信号処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエコー信号処理装置は、エコー信号入力部と、エコー信号レベル検出部と、レベル変化度算出手段と、エッジ強調処理部と、相関処理部と、を備えている。エコー信号入力部は、電磁波を所定領域に発射して物標で反射されたエコー信号を受信するアンテナから前記エコー信号が入力される。エコー信号レベル検出部は、前記電磁波が発射された方位の前記アンテナからの距離に対応させて各地点の前記エコー信号のレベルを出力する。レベル変化度算出手段は、前記各地点のうち互いに隣接する地点の前記エコー信号のレベルの変化度を算出する。エッジ強調処理部は、前記方位における前記エコー信号のレベルに対して前記変化度に基づいたエッジ強調処理を行ってエッジ強調エコー信号を出力する。相関処理部は、前記所定領域全体のエコー信号を1スキャンとして、前記エッジ強調エコー信号を用いて複数スキャンのエコー信号の相関値を算出するスキャン相関処理を行う。
【0007】
物標の輪郭のうち、自船に近い箇所は、互いに隣接する地点間のエコーレベルの変化度(サンプル間の値の変化)が相対的に大きい箇所である(エコーレベルが急激に立ち上がる箇所である)。この立ち上がり部分の測定データは、パルス長等の送信パルス条件が変化しても大きく変動しない情報である。したがって、エッジ強調処理を行ってからスキャン相関を行うことにより、送信パルスの条件に起因するぼやけ等を解消し、物標の輪郭を明りょうに表示することができる。
【0008】
変化度は、各方位におけるサンプル間の差分値、包絡線の微分値により求めることができる。また、各サンプルについて、周辺地点との重み付け加算(空間フィルタ処理)等により求めることもできる。
【0009】
エッジ強調の手法は、例えば元の測定データに、微分値に応じた係数を乗算し、重み付けを行うことでエッジ強調を行ってもよい。さらに、エッジ強調の手法として、エッジ部分を抽出する処理を行ってもよい。例えば、上記差分値が所定の閾値以上である箇所は測定データをそのままとし、その他の箇所を0とすることによりエッジ部分を抽出する。
【0010】
また、スキャン相関は、今回のエッジ強調処理後のデータと、過去の測定データ(エッジ強調処理を行っていない測定データ)との相関を求める処理であってもよいし、微分値によるエッジ強調処理を行った測定データと、エッジ部分を抽出する処理を行った測定データとの相関を求める処理であってもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明の画像処理方法によれば、送信パルスの条件に起因するぼやけを解消し、物標の輪郭を明りょうに表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のレーダ装置の構成を示すブロック図である。
【図2】図2(A)乃至同図(C)は、従来のレーダ装置の各種信号の概要を説明する図であり、同図(D)は、従来のレーダ装置のエコー画像を示す模式図である。
【図3】図3(A)乃至同図(C)は、本実施形態の各種信号の概要を説明する図であり、同図(D)は、本実施形態のレーダ装置のエコー画像を示す模式図である。
【図4】図4(A)乃至同図(E)は、1つの送信パルス内に複数の物標が存在する場合において、従来のレーダ装置の各種信号の概要を説明する図である。
【図5】図5(A)乃至同図(C)は、1つの送信パルス内に複数の物標が存在する場合において、本実施形態の各種信号の概要を説明する図であり、同図(D)は、本実施形態のレーダ装置のエコー画像を示す模式図である。
【図6】図6(A)は実際の衛星写真であり、同図(B)は従来のスキャン相関処理を行った場合のレーダ画像であり、同図(C)は、本実施形態のスキャン相関処理を行った場合のレーダ画像である。
【図7】衝突予防支援装置の代表点を示す模式図である。
【図8】他の例に係るエコー画像を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明の画像処理装置を内蔵したレーダ装置の構成を示すブロック図である。レーダ装置は、例えば船舶に設置され、自船の周囲に電磁波を送受信し、他船等の物標を探知する装置である。
【0014】
同図において、レーダ装置は、アンテナ11、受信部12、A/D変換器13、スイープメモリ14、エッジ強調処理部15、微分処理部16、相関処理部17、画像メモリ18、および表示器19を備えている。
【0015】
アンテナ11は、自船の周囲(所定領域)に電磁波を発射し、物標で反射したエコー信号を受信する。受信部12は、アンテナ11の受信強度に応じた値をA/D変換器13に出力する。A/D変換器13は、入力されたアナログ値の受信強度をデジタル変換し、測定データとしてスイープメモリ14に出力する。
【0016】
スイープメモリ14は、測定1周期分(自船の周り360度分)の測定データを記憶する。各測定データは、極座標系の座標と対応付けられ、スイープデータとして記憶されている。アンテナ11は、所定角度毎にパルス状に電磁波を送受信するため、スイープデータは、アンテナ11の各送受信角度(各方位)について、所定サンプルt毎(各地点)の離散値X(t)として記憶される。このスイープデータが自船の周囲全体のエコー信号(1スキャン分のエコー信号)を表す。
【0017】
エッジ強調処理部15および微分処理部16は、スイープメモリ14からスイープデータを読出し、各種処理を行う。まず、微分処理部16は、スイープデータの微分処理を行い、各地点のうち、互いに隣接する地点のエコーレベルの変化度を算出する。微分データは、例えばd(t)=X(t)−X(t−1)で表されるように、距離方向の各サンプル間の差分値をとることにより生成する。X(t)が0〜255(8ビット)の値をとる場合、d(t)は、−255〜255の値となる。なお、微分データd(t)は、サンプル毎のエコーレベルにより形成される包絡線に対して、各方位に対する微分値であってもよい。また、各地点とその周辺のエコーレベルを平均化(重み付け加算)することにより微分データを生成してもよい。例えば、各サンプルについて、ソーベルフィルタやラプラシアンフィルタ等の空間フィルタ処理を行う。
【0018】
次に、エッジ強調処理部15は、スイープメモリ14から入力したスイープデータに、微分処理部16で求めた微分データの各値に応じた係数(エッジ強調係数μ)を乗算する処理を行う。すなわち、
【0019】
【数1】

で表される処理を行う。エッジ強調係数μは、
【0020】
【数2】

で表される。dmaxは微分データd(t)の最大値であり、
【0021】
【数3】

は最大値との比を表すから、−0.5〜0.5の値をとることになる。
【0022】
したがって、エッジ強調係数μは0から1の値をとる。エッジ強調係数μは、微分データd(t)の値が大きいほど大きい値をとるため、エッジ強調処理データ
【0023】
【数4】

は、エコーレベルの立ち上がり方に応じて重みづけ処理がなされたデータとなる。つまり、各物標のエッジのうち、自船に近い箇所を強調したデータとなる。
【0024】
その後、エッジ強調処理部15は、極座標系のエッジ強調処理データを、自船の位置を原点とした直交座標系に変換して、相関処理部17に出力する。
【0025】
相関処理部17は、エッジ強調処理部15から入力されるデータと、出力側の画像メモリ18から読出される過去のデータとの相関を求め、新たなデータとして画像メモリ18に出力する処理を行う。すなわち、相関処理部17は、エッジ強調処理部15から入力される今回のデータXnと、画像メモリ18から読み出される1回転前のスキャン相関処理後のデータYn−1との相関(ほぼ同じ位置での観測信号として観測されたエコー信号同士の重み付け加算)を求め、今回のスキャン相関処理後のデータYnを算出して、画像メモリ18へ出力する。
【0026】
このスキャン相関処理後のデータが、直交座標系の各座標の画像輝度値(画像データ)として、アンテナ一回転分、画像メモリ18に記憶される。
【0027】
表示器19では、画像メモリ18に記憶されている画像データがレーダ画像(エコー画像)としてユーザに表示される。
【0028】
図2乃至図6を参照して、従来のレーダ装置と本実施形態のレーダ装置のエコー画像の違いについて説明する。
【0029】
まず、図2(A)および同図(B)に示すように、従来のレーダ装置では、送信パルスの条件が変化すると、エコー信号のレベル(距離方向の特性)が変化する。したがって、相関処理を行うと、同図(C)に示すような距離方向に広がりを有したエコー信号となってしまい、同図(D)に示すような距離方向に広がりを有したエコー画像を表示してしまう。すなわち、距離方向分解能が低下し、ぼやけたようなエコー画像を表示してしまう。このときの距離分解能dは、d=c・τ/2(cは光速、τは送信パルス長)で表され、サンプリング周期Tsを短くしても、スキャン相関を行っても距離分解能は変化しないため、従来はこのような輪郭のぼやけたエコー画像を補正することはできなかった。
【0030】
しかし、本実施形態のレーダ装置では、エコーレベルの立ち上がり方に応じて重みづけを行ってエッジ強調処理を行い、さらにこのエッジ強調処理後の測定データを用いて過去のデータとのスキャン相関を行うため、各物標の輪郭のうち自船に近い箇所が強調され、その他の部分が抑制されることになる。すなわち、本実施形態のレーダ装置では、図3(A)および同図(B)に示すように、エッジ強調処理によって各物標の自船に近い箇所が強調されることになる。物標の輪郭のうち、自船に近い箇所は、サンプル間の値の変化度が相対的に大きい箇所である(エコーレベルが急激に立ち上がる箇所である)。この立ち上がり部分の測定データは、パルス長等が変化しても大きく変動しない情報であり、物標の後方部分に相当する測定データとは異なり、スキャン毎に大きく変化しない情報である。したがって、同図(C)に示すように、スキャン相関処理を行うことによりエッジ以外の部分のレベルが相対的に下がることになり、距離方向の広がりが抑制されることになる。そのため、同図(D)に示すように、エッジ強調処理を行ってからスキャン相関を行うことにより、送信パルスの条件に起因する距離方向の広がり(ぼやけ)が抑制され、物標の輪郭を明りょうに表示することができる。
【0031】
また、本実施形態のレーダ装置では、以下のような複数の物標が存在した場合であっても物標毎の輪郭を明りょうに表示することができる。
【0032】
図4は、従来のレーダ装置の各種信号を示した図である。従来のレーダ装置では、複数の物標が存在し、図4(A)に示すような物標間の距離よりも短い送信パルスを出力した場合と、同図(B)に示すような物標間の距離よりも長い送信パルスを出力した場合のエコー信号を受信した場合、複数の物標が存在することがエコー画像から判断することができなくなっていた。
【0033】
すなわち、短い送信パルスであれば、同図(C)に示すような物標毎に立ち上がりの大きいエコー信号が受信されるが、長い送信パルスの場合、同図(D)に示すように、最も近い物標からのエコー信号が受信されている間に、さらに次の物標からのエコー信号が受信される。それぞれの物標からのエコー信号は位相が異なり、1回転前の送信パルスと今回の送信パルスでは、パルス長やエコーレベルも異なり、前方の物標と後方の物標のエコー信号を区別することが困難である。したがって、相関処理を行っても同図(E)に示すような距離方向に広がりを有したエコー信号となってしまい、距離方向に広がりを有した(輪郭のない)エコー画像を表示してしまうため、複数の物標が存在することがエコー画像から判断することができなくなっていた。
【0034】
しかし、本実施形態のレーダ装置では、同図(A)および同図(B)に示すように、送信パルスの条件が変化し、後方の物標のエコー信号が受信された場合においても、エッジ強調処理によって各物標の自船に近い箇所が強調されることになる。したがって、同図(C)に示すように、スキャン相関処理を行うことにより距離方向の広がりが抑制されることになる。そのため、同図(D)に示すように、送信パルスの条件に起因する距離方向の広がり(ぼやけ)が抑制され、各物標の輪郭を明りょうに表示することができ、複数の物標が存在することがエコー画像から判断することができる。
【0035】
図6は、停泊船が多数存在する状況において、実際の衛星写真とレーダ画像を示す図である。図6(A)は実際の衛星写真である。同図(B)は従来のスキャン相関処理を行った場合のレーダ画像であり、同図(C)は、本実施形態のスキャン相関処理を行った場合のレーダ画像である。これらの図に示すように、従来のスキャン相関処理では、距離方向に広がり(ぼやけ)が発生するため、停泊船や桟橋、岸壁等がつぶれたようなエコー画像となってしまう。これに対し、本実施形態のレーダ装置では、各物標のエッジが強調され、その他の部分が抑制されるため、送信パルス長に起因する広がり(ぼやけ)がなくなり、停泊船や桟橋、岸壁等がつぶれていないエコー画像となる。
【0036】
また、本実施形態のレーダ装置によれば、レインクラッタ等のような、距離方向になだらかにレベルが上昇するものについても上記微分処理により抑制されるため、主として衝突予防等の観点から重要な情報(実際の障害物)がエコー画像として表示されることになる。
【0037】
また、レーダ装置を衝突予防支援装置として用いる場合、例えば、図7に示すように、物標を表すエコー画像の中から代表点を決定し、その代表点から物標の移動方向と移動量(速度)を示すベクトル画像を表示することが行われている。代表点は、自船に最も近い位置とする手法や、重心位置とする場合等の手法が考えられるが、いずれもエコー画像に基づいて算出するものであるため、距離方向に広がりがあるエコー画像であると、代表点を正確に求めることができない場合がある。しかし、本実施形態のように距離方向の広がりが抑制されたエコー画像に基づいて算出すると、代表点を安定して求めることができ、衝突予防支援装置として非常に有用なエコー画像を表示することができる。
【0038】
なお、エッジ強調処理は、上記の例(微分処理による重み付け)に限るものではない。例えば、微分データが所定の閾値を超えた場合に限り、エッジ強調を行ってもよいし、以下の様なエッジ抽出を行う処理であってもよい。すなわち、エッジ強調係数μを次の数式により求める。
【0039】
【数5】

この場合、微分データの各値が所定の閾値以上である箇所は、測定データをそのままとし、その他の箇所は0となる。したがって、エッジ部分のみを抽出することになる。なお、この場合、図1における微分処理部16の処理は必要ない。
【0040】
この場合、相関処理部17は、エッジ強調処理部15から入力されるエッジ部分のみを抽出したデータと、画像メモリ18から読出した過去のデータとの相関を求める。この結果、図8(A)に示すように、各物標の輪郭のうち自船に近い箇所だけが抽出されたエコー画像を表示することになる。この場合の距離分解能は、d=c・Ts/2となるため、サンプリング周期Tsを送信パルス長より短くすれば、送信パルスの条件に全く影響されることなく、高い距離分解能を実現することができる。また、物標の輪郭のうち自船に近い位置は、衝突予防等の観点からも非常に重要な情報となるため、当該輪郭のみが明りょうに表示されることの効果は非常に大きい。
【0041】
また、上記例では、自船に設置されたレーダ装置の測定データのみを入力し、エッジ抽出(または微分による重み付け)およびスキャン相関処理を行っているが、同図(B)に示すように、他船のレーダ装置や陸地の固定レーダ装置からの測定データを受信し、受信した測定データのエッジ抽出およびスキャン相関処理を行ってもよい。この場合、360度方向からのエッジを抽出することができるため、物標の形状を正確に示したエコー画像を表示することができる。
【0042】
なお、本実施形態において、エッジ強調処理を行っていないエコーデータを画像メモリ(または他のメモリ)に記憶しておき、エッジ強調処理後のデータと、エッジ強調処理を行っていない過去のエコーデータとのスキャン相関処理を行うようにしてもよい。
【0043】
また、微分値による重み付けを行った測定データと、エッジ部分を抽出する処理を行った測定データとの相関処理を行ってもよい。この場合、スキャン毎に微分値による重み付けとエッジ抽出の両方を行い、いずれかの処理を行った後の測定データを過去のデータとしてメモリに記憶しておき、スキャン相関を行う。
【0044】
すなわち、本実施形態のレーダ装置によれば、エッジ強調処理データを用いて複数スキャンのエコー信号の相関値を算出するものであればよく、以下のいずれかの処理を行う態様が可能である。
(1)エッジ抽出したデータ同士の相関(エッジ抽出した今回のデータと過去の画像データとの相関)
(2)エッジ部分を抽出したデータと、微分値による重み付けを行ったデータとの相関
(3)エッジ部分を抽出したデータと、エッジ強調処理を行っていないデータとの相関
(4)微分値による重み付けを行ったデータ同士の相関(微分値による重み付けを行った今回のデータと過去の画像データとの相関)
(5)微分値による重み付けを行ったデータと、エッジ強調処理を行っていない過去のデータとの相関
例えば、エッジ抽出したデータ同士の相関をとると、輪郭のみが明りょうに表示されることになり、最も精細感の高いレーダ画像となる。一方で、重み付けを行ったデータと、エッジ強調処理を行っていない過去のデータとの相関をとると、実際の物標の形状に近いレーダ画像を表示することになる(距離方向の広がりをある程度残したレーダ画像となる)。
【0045】
なお、これらの処理をユーザが選択できるようにしてもよい。例えば、通常時は重み付けを行ったデータ同士のスキャン相関を行うように設定しておき、複数の物標が非常に接近した場合のみ、エッジ部分を抽出したデータ同士の相関をとる処理を選択する等、状況に応じてユーザが見やすいエコー画像を表示することができる。
【符号の説明】
【0046】
11…アンテナ
12…受信部
13…A/D変換器
14…スイープメモリ
15…エッジ強調処理部
16…微分処理部
17…相関処理部
18…画像メモリ
19…表示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を所定領域に発射して物標で反射されたエコー信号を受信するアンテナから前記エコー信号が入力されるエコー信号入力部と、
前記電磁波が発射された方位の前記アンテナからの距離に対応させて各地点の前記エコー信号のレベルを出力するエコー信号レベル検出部と、
前記各地点のうち互いに隣接する地点の前記エコー信号のレベルの変化度を算出するレベル変化度算出手段と、
前記方位における前記エコー信号のレベルに対して前記変化度に基づいたエッジ強調処理を行ってエッジ強調エコー信号を出力するエッジ強調処理部と、
前記所定領域全体のエコー信号を1スキャンとして、前記エッジ強調エコー信号を用いて複数スキャンのエコー信号の相関値を算出するスキャン相関処理を行う相関処理部と、
を備えたエコー信号処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のエコー信号処理装置において、
前記スキャン相関処理は、第1の時刻に前記アンテナから発射された電磁波による第1のエコー信号と、前記第1の時刻とは異なる第2の時刻に前記アンテナから発射された電磁波による前記第1のエコー信号とほぼ同じ位置での観測信号として観測されたエコー信号のレベルに対する前記エッジ強調処理部により出力されたエッジ強調エコー信号との相関に基づいて、エコー信号の相関値を算出する処理であることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のエコー信号処理装置において、
前記スキャン相関処理は、第1の時刻に前記アンテナから発射された電磁波による第1のエコー信号のレベルに対する前記エッジ強調処理部により出力された第1のエッジ強調エコー信号と、前記第1の時刻とは異なる第2の時刻に前記アンテナから発射された電磁波による第1のエコー信号とほぼ同じ位置での観測信号として観測されたエコー信号のレベルに対する前記エッジ強調処理部により出力された第2のエッジ強調エコー信号との相関に基づいて、エコー信号の相関値を算出する処理であることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のエコー信号処理装置において、
前記相関処理部からの出力信号を記憶する記憶部を有し、
第1の時刻に前記アンテナから発射された電磁波による第1のエコー信号のレベルに対する前記エッジ強調処理部により出力された第1のエッジ強調エコー信号と、前記記憶部に記憶された過去のスキャン相関処理後の信号との相関に基づいて、エコー信号の相関値を算出する処理であることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエコー信号処理装置において、
前記エコー信号の変化度は、互いに隣接する前記地点の前記エコー信号のレベル同士の差分であることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエコー信号処理装置において、
前記エコー信号の変化度は、前記エコー信号のレベルにより形成される包絡線に対して、前記方位に対する微分処理を行うことによって算出される微分値であることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のエコー信号処理装置において、
前記エコー信号の変化度は、前記地点と前記地点周辺の前記エコー信号のレベルに対する重み付け加算処理によって算出される値であることを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエコー信号処理装置において、
前記エッジ強調処理は、前記各地点の前記エコー信号のレベルに対して、前記変化度に基づいて定まる係数を乗算する処理を含むことを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載のエコー信号処理装置において、
前記エッジ強調処理は、前記エコー信号の変化度が予め定められた閾値を超える場合に前記エッジ強調処理を行うことを特徴とするエコー信号処理装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれかに記載のエコー信号処理装置において、
前記相関処理部の出力信号に基づいて物標の画像を表示する表示手段を備えたエコー信号処理装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれかに記載のエコー信号処理装置と、
方位毎に電磁波を発射し、エコー信号を受信しながら回転するアンテナと、を備えたレーダ装置。
【請求項12】
電磁波を所定領域に発射して物標で反射されたエコー信号を受信するアンテナから前記エコー信号が入力されるエコー信号入力ステップと、
前記電磁波が発射された方位の前記アンテナからの距離に対応させて各地点の前記エコー信号のレベルを出力するエコー信号レベル検出ステップと、
前記各地点のうち互いに隣接する地点の前記エコー信号のレベルの変化度を算出するレベル変化度算出ステップと、
前記方位における前記エコー信号のレベルに対して前記変化度に基づいたエッジ強調処理を行ってエッジ強調エコー信号を出力するエッジ強調処理ステップと、
前記所定領域全体のエコー信号を1スキャンとして、前記エッジ強調エコー信号を用いて複数スキャンのエコー信号の相関値を算出するスキャン相関処理を行う相関処理ステップと、
を備えたエコー信号処理方法。
【請求項13】
電磁波を所定領域に発射して物標で反射されたエコー信号を受信するアンテナから前記エコー信号が入力されるエコー信号入力ステップと、
前記電磁波が発射された方位の前記アンテナからの距離に対応させて各地点の前記エコー信号のレベルを出力するエコー信号レベル検出ステップと、
前記各地点のうち互いに隣接する地点の前記エコー信号のレベルの変化度を算出するレベル変化度算出ステップと、
前記方位における前記エコー信号のレベルに対して前記変化度に基づいたエッジ強調処理を行ってエッジ強調エコー信号を出力するエッジ強調処理ステップと、
前記所定領域全体のエコー信号を1スキャンとして、前記エッジ強調エコー信号を用いて複数スキャンのエコー信号の相関値を算出するスキャン相関処理を行う相関処理ステップと、
をコンピュータに実行させるエコー信号処理プログラム

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【図6】
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