説明

エスカレーター乗降口注意喚起装置

【課題】乗降口近傍において平坦であった踏段が階段状に離れていく位置やその際の踏段の具体的な動き又はその逆の位置や動きを、利用者が容易に知ることができ、利用者の注意を喚起して躓きやよろめき等を未然に防止することが可能であるエスカレーター乗降口注意喚起装置を提供する。
【解決手段】エスカレーター乗降口注意喚起装置において、無端状に連結され、エスカレーター本体1内を循環移動する複数の踏段2と、隣り合う踏段2同士の配置が階段状から平坦状又はその逆に変化する踏段2の移動経路の曲部に設けられ、往路側の踏段2の裏側から往路側の踏段2へと向けて可視光を発する発光手段8と、踏段2に設けられ、発光手段8の発する可視光を透過させる窓部と、踏段2の移動速度に同期して発光手段8を間欠的に発光させる発光制御手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エスカレーター乗降口注意喚起装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来におけるエスカレーター乗降口注意喚起装置においては、視覚的な表示により乗降口を明示して乗客の注意を喚起することを目的としたものとして、エスカレーターの踏段走行移動部の左右隣側に立設された欄干の下部スカートガードパネルの乗降口部分に、このスカートガードパネルの長手方向に沿って点滅灯や蛍光灯を配設し、この点滅灯や蛍光灯の光を誘導する透明プラスチック製デマコム(デマケーション・コム:境界クシ部)を踏段の境界部(端部)に配設したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−172750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にエスカレーターは、乗り口側の乗降口近傍においては隣り合う踏段同士の踏板がほぼ平坦となるように配置されており、これらの踏段が移動して乗降口から所定距離だけ離れた所定位置に達すると、当該位置からは踏板同士が次第に上下に離れていき階段状になっていく。
また逆に、踏板同士が上下に離れて階段状になっている踏段が移動して降り口側の乗降口へと近づくと、乗降口から所定距離だけ離れた所定位置において今度は踏板同士が次第に近づいていき、乗降口近傍において再び隣り合う踏段同士がほぼ平坦に配置される。
【0005】
しかしながら、特許文献1に示された従来におけるエスカレーター乗降口注意喚起装置は、乗降板のクシ部に入り込む終端の踏段の位置やこの終端の踏段とスカートガードとの間の隙間を明示するのみであって、利用者にとって、乗降口近傍において平坦であった踏段が階段状に離れていく位置やその際の踏段の具体的な動き、又は、逆に階段状であった踏段が平坦状に近づいていく位置やその際の具体的な踏段の動きが判りにくいという課題がある。
また、このために、利用者は、踏段が階段状になる又は平坦状になる位置や動きが判らずに、躓いたりよろめいたり等して転倒してしまうおそれがあるという課題がある。
【0006】
この発明は、このような課題を解決するためになされたもので、乗降口近傍において平坦であった踏段が階段状に離れていく位置やその際の踏段の具体的な動き、又は、逆に階段状であった踏段が平坦状に近づいていく位置やその際の具体的な踏段の動きを、利用者が容易に知ることができ、利用者の注意を喚起して躓きやよろめき等を未然に防止することが可能であるエスカレーター乗降口注意喚起装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係るエスカレーター乗降口注意喚起装置においては、無端状に連結され、エスカレーター本体内を循環移動する複数の踏段と、隣り合う前記踏段同士の配置が階段状から平坦状又は平坦状から階段状に変化する前記踏段の移動経路の曲部に設けられ、往路側の前記踏段の裏側から前記往路側の前記踏段へと向けて可視光を発する第1の発光手段と、前記踏段に設けられ、前記第1の発光手段の発する可視光を透過させる窓部と、前記踏段の移動速度に同期して前記第1の発光手段を間欠的に発光させる発光制御手段と、を備えた構成とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明に係るエスカレーター乗降口注意喚起装置においては、乗降口近傍において平坦であった踏段が階段状に離れていく位置やその際の踏段の具体的な動き、又は、逆に階段状であった踏段が平坦状に近づいていく位置やその際の具体的な踏段の動きを、利用者が容易に知ることができ、利用者の注意を喚起して躓きやよろめき等を未然に防止することが可能であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の実施の形態1に係るエスカレーター乗降口注意喚起装置の構成を模式的に示す乗降口近傍の側面断面図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る図1において踏段を取り除いた状態を示す図1中矢印Aが示す方向からの矢視図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係る踏段のライザー部を示す斜視図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係る踏段の踏板部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
この発明を添付の図面に従い説明する。各図を通じて同符号は同一部分又は相当部分を示しており、その重複説明は適宜に簡略化又は省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1から図4は、この発明の実施の形態1に係るもので、図1はエスカレーター乗降口注意喚起装置の構成を模式的に示す乗降口近傍の側面断面図、図2は図1において踏段を取り除いた状態を示す図1中矢印Aが示す方向からの矢視図、図3は踏段のライザー部を示す斜視図、図4は踏段の踏板部を示す平面図である。
【0012】
図において1は設置された上下階間で利用者を運搬するエスカレーター本体であり、このエスカレーター本体1の内部では、利用者が搭乗する踏段2が無端状に連結されて循環移動している。
この踏段2の(往路側の)移動経路は、上下の乗降口近傍において隣り合う踏段2の踏板同士がほぼ平坦に配置される上水平部及び下水平部、これら上下の水平部の間で踏段2が階段状に配置される傾斜部、並びに、傾斜部の上下端と上下の水平部とを接続し踏段2が階段状から平坦状(又はその逆)に遷移する上曲部及び下曲部、から構成されている。
【0013】
エスカレーター本体1の左右両側には欄干3が立設されており、この欄干3の外周には踏段2と同期して循環移動する無端状の移動手摺4が設けられている。
また、欄干3の下端部には踏段2の左右両側に沿うようにスカートガード5が取り付けられている。
【0014】
そして、当該エスカレーターの上階側及び下階側の乗降口には、乗降口の床板を構成する乗降板6が設けられており、この乗降板6の踏段側の端部には、クシ部6aが踏段側へと下る緩傾斜がつけられて取り付けられている。そして、このクシ部6aの踏段側の端部には、踏段2の踏板に設けられた複数の踏板溝に緩係合する複数のクシ歯が設けられている。
【0015】
それぞれの踏段2のライザー部下端には踏段軸2aが設けられており、この踏段軸2aの両端には一対の追従ローラ2bが回動自在に設けられている。そして、エスカレーター本体1の内部には一対の追従レール7が設けられており、追従ローラ2bがこの追従レール7上を転動することにより、踏段2は所定の経路上を所定の姿勢で循環移動するように案内される。
8は、エスカレーター本体1の基本的枠組を構成する図示しないトラスを構成する部材のうち左右の主トラス間に架設された複数のトラスアングルである。
【0016】
全ての各踏段2の踏段軸2aの所定位置には、センサー9(発信機)がそれぞれ取り付けられている。
そして、これらのセンサー9を検出するための第1の受信機10a及び第2の受信機10bが、トラスアングル8の、踏段2の循環移動時において各踏段2の踏段軸2aに設けられたセンサー9と対向する所定の位置に取り付けられている。
【0017】
より具体的には、踏段2が階段状から平坦状に(又はその逆に平坦状から階段状に)遷移する箇所である踏段2の移動経路の上曲部及び下曲部におけるトラスアングル8に、第1の受信機10aが取り付けられている。
そして、踏段2の移動経路の上水平部及び下水平部におけるトラスアングル8のうち、それぞれ乗降口に最も近く乗降板6のクシ部6aの近傍に位置するトラスアングル8に、第2の受信機10bが取り付けられている。
これらの第1の受信機10a及び第2の受信機10bは、これら受信機の近傍の所定の受信範囲を踏段2の踏段軸2aに設けられたセンサー9が通過したことを検出すると検出信号を出力する。
【0018】
踏段2の移動経路の上水平部及び下水平部並びに上曲部及び下曲部に配置されたトラスアングル8のそれぞれには、フラッシュライト11が取り付けられている。ここでは、1つのトラスアングル8につき3つのフラッシュライト11が取り付けられており、これら3つで1組のフラッシュライト11の各組は、踏段2のセンサー9が第1の受信機10a又は第2の受信機10bの検出範囲に位置した時点での各踏段2にそれぞれに対応して対向するように配置される。
そして、これらのフラッシュライト11は往路側の踏段2の裏側から踏段2へと向けて瞬間的に可視光を発する発光手段を構成している。
【0019】
また、これらのフラッシュライト11の発光タイミングは、第1の受信機10a及び第2の受信機10bから検出信号が出力されると発光するように制御される。
より詳しくは、踏段2の移動経路の上水平部及び上曲部に配設された受信機から出力された検出信号に基づいて、上水平部及び上曲部に配設されたフラッシュライト11の発光タイミングが制御され、踏段2の移動経路の下水平部及び下曲部に配設された受信機から出力された検出信号に基づいて、下水平部及び下曲部に配設されたフラッシュライト11の発光タイミングが制御される。
こうして、踏段2のセンサー9並びに第1の受信機10a及び第2の受信機10bは、踏段2の移動速度に同期して、発光手段であるフラッシュライト11を間欠的に発光させる発光制御手段を構成している。
【0020】
踏段2のライザー部には、フラッシュライト11の発した光を透過するここでは例えばアクリル板からなるライザー窓部12aが設けられている。また、踏段2の踏板部には、フラッシュライト11の発した光を透過する同じくここではアクリル板からなる踏板窓部12bが設けられている。
これらの窓部は、1つのトラスアングル8につき3つずつフラッシュライト11が取り付けられていることに対応して、1つの踏段2につきライザー窓部12aは3つずつ、踏板窓部12bは6つずつ設けられている。
【0021】
また、スカートガード5の、踏段2の移動経路の上水平部及び下水平部並びに上曲部及び下曲部にあたる箇所には、音声を鳴動させるスピーカ13が所定の間隔で設置されている。
これらのスピーカ13は、図示しない音声合成装置による制御の下、所定の注意喚起音声、例えば「段差が発生します(無くなります)。足元にご注意下さい。」等、を鳴動させるものであり、この音声合成装置は第1の受信機10a及び第2の受信機10bから検出信号が出力されるとスピーカ13から注意喚起音声を鳴動させる。
【0022】
このように構成されたエスカレーター乗降口注意喚起装置において、上昇運転時には、まず乗り口側である下階側の乗降板6のクシ部6aから出てくる踏段2の踏段軸2aに設けられたセンサー9が、下水平部に配設された第2の受信機10bにより検出されると、この下水平部の第2の受信機10bから検出信号が出力される。
そして、この下水平部の第2の受信機10bからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の下水平部及び下曲部に配設されたフラッシュライト11が瞬間的に発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0023】
ここで、各踏段2のセンサー9が第2の受信機10bの受信範囲を通過する度に検出信号が出力されてフラッシュライト11が発光するため、1つの踏段2の通過につき1回フラッシュライト11が発光することとなり、すなわち、フラッシュライト11の間欠的な発光タイミングは踏段2の移動速度に同期したものとなる。
【0024】
また、移動経路の下曲部を通過する踏段2のセンサー9が、下曲部に配設された第1の受信機10aにより検出されると、この下曲部の第1の受信機10aから検出信号が出力される。
そして、この下曲部の第1の受信機10aからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の下水平部及び下曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0025】
さらに、今度は降り口側がある上階側において、移動経路の上曲部を通過する踏段2のセンサー9が、上曲部に配設された第1の受信機10aにより検出されると、この上曲部の第1の受信機10aから検出信号が出力される。
そして、この上曲部の第1の受信機10aからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の上水平部及び上曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0026】
また、降り口側である上階側の乗降板6のクシ部6aへと入り込む踏段2のセンサー9が、上水平部に配設された第2の受信機10bにより検出されると、この上水平部の第2の受信機10bから検出信号が出力される。
そして、この上水平部の第2の受信機10bからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の上水平部及び上曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0027】
このようにして、上昇運転時において乗り口近傍の下水平部及びこの下水平部から踏段2が階段状に遷移する下曲部の踏段2は、その移動速度に同期して、ライザー窓部12a及び踏板窓部12bから光が発せられるとともに、降り口近傍の上水平部及びこの上水平部へと向けて踏段2が階段状から平坦状に遷移する上曲部の踏段2は、その移動速度に同期して、ライザー窓部12a及び踏板窓部12bから光が発せられる。
【0028】
一方、下降運転時には、まず乗り口側である上階側の乗降板6のクシ部6aから出てくる踏段2のセンサー9が、上水平部に配設された第2の受信機10bにより検出されると、この上水平部の第2の受信機10bから検出信号が出力される。
そして、この上水平部の第2の受信機10bからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の上水平部及び上曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0029】
また、移動経路の上曲部を通過する踏段2のセンサー9が、上曲部に配設された第1の受信機10aにより検出されると、この上曲部の第1の受信機10aから検出信号が出力される。
そして、この上曲部の第1の受信機10aからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の上水平部及び上曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0030】
さらに、今度は降り口側がある下階側において、移動経路の下曲部を通過する踏段2のセンサー9が、下曲部に配設された第1の受信機10aにより検出されると、この下曲部の第1の受信機10aから検出信号が出力される。
そして、この下曲部の第1の受信機10aからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の下水平部及び下曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0031】
また、降り口側である下階側の乗降板6のクシ部6aへと入り込む踏段2のセンサー9が、下水平部に配設された第2の受信機10bにより検出されると、この下水平部の第2の受信機10bから検出信号が出力される。
そして、この下水平部の第2の受信機10bからの検出信号に基づいて、踏段2の移動経路の下水平部及び下曲部に配設されたフラッシュライト11が踏段2の移動速度に同期して発光し、このフラッシュライト11からの光は踏段2のライザー窓部12a及び踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0032】
このようにして、下降運転時において乗り口近傍の上水平部及びこの上水平部から踏段2が階段状に遷移する上曲部の踏段2は、その移動速度に同期して、ライザー窓部12a及び踏板窓部12bから光が発せられるとともに、降り口近傍の下水平部及びこの下水平部へと向けて踏段2が階段状から平坦状に遷移する下曲部の踏段2は、その移動速度に同期して、ライザー窓部12a及び踏板窓部12bから光が発せられる。
【0033】
加えて、この上昇及び下降運転の際、第1の受信機10a及び第2の受信機10bが踏段2のセンサー9の通過を検出して検出信号を出力すると、この検出信号に基づく音声合成装置の制御の下スピーカ13から所定の注意喚起音声が鳴動される。
こうして、利用者が乗降する上下水平部及び隣り合う踏段2同士の相対位置が変化する上下曲部において、踏段2の窓部を介した光による視覚的な注意喚起が行われるとともに、スピーカ13から鳴動される音声による聴覚的な注意喚起が併せて行われる。
【0034】
なお、以上において、第1の受信機10a及び第2の受信機10bが踏段2に設けられたセンサー9の通過を検出する方式については、センサーと受信機とが接触して検出が行われる接触方式でもよいし、センサーと受信機とが接触することなく検出が行われる非接触方式でもよい。
接触方式としては例えばセンサー9をレバー状の部材とし受信機をこのレバー状部材が当接すると検出信号を出力するスイッチ部材とする等が考えられ、非接触方式としては例えば電磁波を利用して検出する方式等が考えられる。
【0035】
また、ここでは、第1の受信機10a及び第2の受信機10bのいずれからの検出信号によっても、水平部及び曲部のフラッシュライト11が発光するようにしたが、フラッシュライト11のうち、第1の受信機10aには曲部に配設されたフラッシュライト11(以下、第1のフラッシュライトといい、これら第1のフラッシュライトは第1の発光手段を構成する)を、第2の受信機10bには水平部に配設されたフラッシュライト11(以下、第2のフラッシュライトといい、これら第2のフラッシュライトは第2の発光手段を構成する)を、それぞれ対応させて発光させるようにしてもよい。
【0036】
この場合、踏段2の移動経路の下水平部に配設された第2の受信機10bが踏段2のセンサー9を検出すると、この下水平部の第2の受信機10bから検出信号が出力される。そして、この下水平部の第2の受信機10bから検出信号に基づいて、下水平部に配設された第2のフラッシュライトのみが発光する。
そして、下水平部に配設された第2のフラッシュライトからの光は、踏段2の主に踏板窓部12bを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0037】
また、踏段2の移動経路の下曲部に配設された第1の受信機10aが踏段2のセンサー9を検出すると、この下曲部の第1の受信機10aから検出信号が出力される。そして、この下曲部の第1の受信機10aから検出信号に基づいて、下曲部に配設された第1のフラッシュライトのみが発光する。
そして、下曲部に配設された第1のフラッシュライトからの光は、踏段2の主にライザー窓部12aを通して当該エスカレーターの利用者に視認される。
【0038】
同様に、踏段2の移動経路の上曲部に配設された第1の受信機10aが踏段2のセンサー9を検出すると、この上曲部の第1の受信機10aから検出信号が出力される。そして、この上曲部の第1の受信機10aから検出信号に基づいて、上曲部に配設された第1のフラッシュライトのみが発光する。
また、踏段2の移動経路の上水平部に配設された第2の受信機10bが踏段2のセンサー9を検出すると、この上水平部の第2の受信機10bから検出信号が出力される。そして、この上水平部の第2の受信機10bから検出信号に基づいて、上水平部に配設された第2のフラッシュライトのみが発光する。
【0039】
以上のように構成されたエスカレーター乗降口注意喚起装置は、無端状に連結され、エスカレーター本体内を循環移動する複数の踏段と、隣り合う踏段同士の配置が階段状から平坦状又は平坦状から階段状に変化する踏段の移動経路の曲部に設けられ、往路側の踏段の裏側から往路側の踏段へと向けて可視光を発する第1の発光手段と、踏段に設けられ、第1の発光手段の発する可視光を透過させる窓部と、踏段の移動速度に同期して第1の発光手段を間欠的に発光させる発光制御手段と、を備えたものである。
【0040】
このため、乗降口近傍において平坦であった踏段が階段状に離れていく位置やその際の踏段の具体的な動き、又は、逆に階段状であった踏段が平坦状に近づいていく位置やその際の具体的な踏段の動きを、利用者が容易に知ることができ、利用者の注意を喚起して躓きやよろめき等を未然に防止することが可能である。
【0041】
また、発光制御手段は、踏段に設けられたセンサーと、曲部に設けられセンサーを検出して検出信号を出力する第1の受信機と、を有し、第1の受信機からの検出信号に基づいて第1の発光手段の発光タイミングを制御するものであるため、踏段の移動速度に同期して第1の発光手段を間欠的に発光させる制御を簡潔な構成により実現することができる。
【0042】
そして、乗降口の近傍において隣り合う踏段同士の配置が平坦状である踏段の移動経路の水平部に設けられ、往路側の踏段の裏側から往路側の踏段へと向けて可視光を発する第2の発光手段をさらに備え、踏段の窓部は、第2の発光手段の発する可視光を透過させ、発光制御手段は、踏段の移動速度に同期して第2の発光手段を間欠的に発光させることにより、乗降口において移動する踏段に乗り降りする利用者へ注意喚起することができる。
【0043】
また、この際に、発光制御手段は、踏段に設けられたセンサーと、水平部に設けられセンサーを検出して検出信号を出力する第2の受信機と、を有し、第2の受信機からの検出信号に基づいて第2の発光手段の発光タイミングを制御するようにすることにより、踏段の移動速度に同期して第1の発光手段を間欠的に発光させる制御を簡潔な構成により実現することが可能である。
【0044】
加えて、音声を鳴動させるスピーカと、第1の受信機又は第2の受信機からの検出信号に基づいて、スピーカから所定の注意喚起音声を鳴動させる音声合成手段と、をさらに備えたことにより、踏段の窓部を介した光による視覚的な注意喚起とともに、スピーカから鳴動される音声による聴覚的な注意喚起を併せて行うことができ、注意喚起効果をさらに向上させることが可能である。
【0045】
そしてさらに、踏段の窓部は、踏段のライザー部に設けられたライザー窓部を含むものであるため、特にエスカレーターの上昇運転時において、利用者はこのライザー窓部を通して発光手段の発する光を視認することができ、曲部における踏段の動きがより判りやすくなる。
【符号の説明】
【0046】
1 エスカレーター本体
2 踏段
2a 踏段軸
2b 追従ローラ
3 欄干
4 移動手摺
5 スカートガード
6 乗降板
6a クシ部
7 追従レール
8 トラスアングル
9 センサー
10a 第1の受信機
10b 第2の受信機
11 フラッシュライト
12a ライザー窓部
12b 踏板窓部
13 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端状に連結され、エスカレーター本体内を循環移動する複数の踏段と、
隣り合う前記踏段同士の配置が階段状から平坦状又は平坦状から階段状に変化する前記踏段の移動経路の曲部に設けられ、往路側の前記踏段の裏側から前記往路側の前記踏段へと向けて可視光を発する第1の発光手段と、
前記踏段に設けられ、前記第1の発光手段の発する可視光を透過させる窓部と、
前記踏段の移動速度に同期して前記第1の発光手段を間欠的に発光させる発光制御手段と、を備えたことを特徴とするエスカレーター乗降口注意喚起装置。
【請求項2】
前記発光制御手段は、前記踏段に設けられたセンサーと、前記曲部に設けられ前記センサーを検出して検出信号を出力する第1の受信機と、を有し、前記第1の受信機からの検出信号に基づいて前記第1の発光手段の発光タイミングを制御することを特徴とする請求項1に記載のエスカレーター乗降口注意喚起装置。
【請求項3】
乗降口の近傍において隣り合う前記踏段同士の配置が平坦状である前記踏段の移動経路の水平部に設けられ、往路側の前記踏段の裏側から前記往路側の前記踏段へと向けて可視光を発する第2の発光手段をさらに備え、
前記窓部は、前記第2の発光手段の発する可視光を透過させ、
前記発光制御手段は、前記踏段の移動速度に同期して前記第2の発光手段を間欠的に発光させることを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載のエスカレーター乗降口注意喚起装置。
【請求項4】
前記発光制御手段は、前記踏段に設けられた前記センサーと、前記水平部に設けられ前記センサーを検出して検出信号を出力する第2の受信機と、を有し、前記第2の受信機からの検出信号に基づいて前記第2の発光手段の発光タイミングを制御することを特徴とする請求項3に記載のエスカレーター乗降口注意喚起装置。
【請求項5】
音声を鳴動させるスピーカと、
前記第1の受信機又は前記第2の受信機からの検出信号に基づいて、前記スピーカから所定の注意喚起音声を鳴動させる音声合成手段と、をさらに備えたことを特徴とする請求項2又は請求項4のいずれかに記載のエスカレーター乗降口注意喚起装置。
【請求項6】
前記窓部は、前記踏段のライザー部に設けられたライザー窓部を含むことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のエスカレーター乗降口注意喚起装置。
【請求項7】
前記窓部は、前記踏段の踏板部に設けられた踏板窓部を含むことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載のエスカレーター乗降口注意喚起装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate