説明

エチルベンゼンのスチレンへの脱水素化のための二酸化炭素及び酸素の併用法

炭化水素の脱水素化において二酸化炭素及び酸素を併用する方法を提供する。炭化水素供給原料、二酸化炭素及び酸素を、炭化水素供給原料を脱水素化して脱水素化炭化水素生成物の生成を促進する1以上の触媒を収容する酸化脱水素化反応器システムに供給する。本発明の方法は、例えば、酸化剤として二酸化炭素及び酸素を使用するエチルベンゼンの脱水素化によってスチレンモノマーを生成するために使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脱水素化プロセスにおいて二酸化炭素及び酸素を併用する方法に係る。本発明の方法は、例えば、酸化剤として二酸化炭素及び酸素を使用するエチルベンゼンの脱水素化によってスチレンモノマーを生成するために使用される。
【背景技術】
【0002】
スチレンは、現代の石油化学工業において最も重要なモノマーの1つである。スチレンは、ゴム及び樹脂と共に、多くのプラスチック、特にポリスチレンの製造において、原料として使用される。米国におけるスチレンの2006年の消費量は、約14.4×109ポンドである。
【0003】
スチレンモノマー(SM)の最も一般的な製法は、エチルベンゼン(EB)の脱水素化によるものである。EBからスチレンモノマーを製造する1つの方法は、直接脱水素化によるものである。この方法では、カリウム促進酸化鉄触媒を収容する低圧断熱反応器において、約800℃に過熱した過剰量のスチームをEBと組み合わせている。反応温度は、代表的には、約600〜650℃であり、反応圧力は、一般的に、約30〜100 kPaである。スチームは希釈剤として機能して、脱水素化反応によって生成した水素の分圧を低下させ、より良好に進行させる。高度に過熱されたスチームは、脱水素化反応(高度の吸熱反応である)を駆動する熱キャリヤーでもあり、スチームは、スチームガス化によって、反応触媒上でのコークスの生成量を低減させる。この方法は、過剰量のスチームの使用及びスチームを気化し及び過熱するために必要なエネルギーを介して、多量のエネルギーを消費するものである。また、触媒の脱活性化及び限られた熱力学的転化の欠点を有する。
【0004】
Lummus/UPO Smart法は、EBをスチレンに転化する他の方法であるが、脱水素化反応において生成された水素副生物の一部の選択的酸化を使用することによる直接脱水素化のいくつかの問題点を有している。酸素による水素の発熱酸化反応は、続くEBの脱水素化反応に要求される熱の少なくとも一部を提供する。さらに、プロセスからの水素の除去は、脱水素化ユニットにおける反応平衡をシフトさせ、スチレンモノマーの高い選択率を維持するが、シングルパスEB転化を実質的に増大させる。反応器における芳香族酸化剤の形成及びCO2の生成は、カリウム促進酸化鉄脱水素化触媒に悪影響を及ぼす。
【0005】
最近では、温和な酸化剤としてCO2を使用することが提案されている。米国特許第6,958,427号に記載された方法では、バナジウム及び鉄を含んでなる触媒上、ソフト酸化剤としての二酸化炭素の存在下、CO2を他の石油化学プロセスの排出物により外部から供給し、エチルベンゼンを脱水素化して、スチレンモノマーを生成している。一般的な方法と比較して、二酸化炭素の存在は、より低い温度で操作することを可能とし、より増大された転化率及び顕著なエネルギーの節約を提供する。行われる反応は、純粋なCO2のオキシ脱水素化、直接脱水素化及びCO2のオキシ脱水素化の組合せ(直接脱水素化の後、反応器内において、水−ガスシフト反応が生ずる)、又は独占的な直接脱水素化(続いて、反応器内において、水−ガスシフト反応が生ずる)のいずれかである。O2-ODHと比べて、酸化剤としてCO2を使用することにより、酸素の爆発の危険を回避でき、より高い選択率を提供できる。CO2は、加熱媒体としても機能し、一般的な脱水素化プロセスにおいて使用されるスチームのいくらか又は全ての代用となる。
【0006】
米国特許第6,958,427号(参照して、その前内容を本明細書に含める)に一部記載された方法に伴う欠点としては、次の事項:すなわち、1)過剰なスチームの存在下における一般的な直接脱水素化よりも少ない熱要求量を使用できるが、それでも、高い二酸化炭素割合と共に、多量の反応吸熱のため、多量のエネルギーを消費するものである;2)明らかに、過熱スチームの連続要求に依存するものである;3)多くのヒートアップ及びクールダウン工程を有するものであるため、設備費及び操作費が高いことがある。CO2の連続供給の必要性は、SMプラントがCO2の専用供給近くに設置されなければならないため、SMプラントの可能な設置位置を制限することにもなる。これは「環境に優しい」プロセスであることが主張されているが、この方法によって、CO2を完全に排除できるものではないことを認識することは重要である。CO2は単なる酸素キャリヤーであり、オキシ脱水素化反応器においてCOに転化される。COは、水/ガスシフト反応器によって、再度CO2に転化されなければならないか、又はいくつかの他の酸化化合物を生成するために使用されなければならない。
【0007】
KRICT(韓国)のParkらは、(1)オフガスへのスチームの添加及び水−ガスシフト反応(クールダウン及びH2及びH2Oの分離、及び続くCO2の循環を伴う)の使用、又は(2)オフガスからのCO2の分離及び循環、及び残るH2及びCOの触媒反応器における酸化生成物を生成する処理のいずれかを適用することを含むCO2のオキシ脱水素化法を記載している。
【0008】
オキシランPOSM法は、エチルベンゼンハイドロペルオキシド中間体を生成するエチルベンゼンの酸化を発端とし、続く、等モル量のプロピレンオキシド及びスチレンモノマーを生成するエチルベンゼンハイドロペルオキシドによるプロピレンのエポキシ化によって、連産物としてSMを生成するものである。この方法は、極めて多くの資本を必要とするものであり、その経済性はプロピレンオキシドのマーケットに左右される。
【0009】
上述の方法に加えて、酸化剤として酸素を使用するEBの酸化脱水素化、Snamprogetti/Dow SNOW(商標名)法(エタン及びエチルベンゼンの並行脱水素化)、Exelus ExSyM(商標名)法(トルエン及びメタノール供給原料に基づく)、液相エチルベンゼン脱水素化法(Pincer触媒技術)、及び膜を使用する方法が考案されている。しかし、これらの方法は、市場規模では実施されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来の脱水素化法の1以上の欠点を回避できるEBの脱水素化によるスチレンの製法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、酸化剤として二酸化炭素及び酸素を併用する炭化水素の脱水素化法に係る。本発明の方法は、酸化剤として二酸化炭素及び酸素を併用する酸化脱水素化を使用するスチレンの製造に特に適している。スチレンの製造に加えて、CO2及びO2の組み合せは、パラフィンからのオレフィンの生成(例えば、エタンからのエチレン、プロパンからのプロピレン、n−ブタンからのn−ブテン、イソブタンからのイソブテンの生成等)、及びパラフィン及び/又はオレフィンからのジオレフィン又はアルキンの生成(例えば、n−ブタン又はn−ブテンからのブタジエンの生成)のための本発明のオキシ脱水素化法において使用される。CO2及びO2の組み合せは、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸、酢酸、無水マレイン酸、1,4−ブタンジオール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの生成のための選択的酸化においても使用できる。
【0012】
オキシ脱水素化反応器は、酸素特異性膜補助脱水素化反応器である。反応器への二酸化炭素供給物は、脱水素化システムのオフガスからの再循環二酸化炭素によって供給される。
【0013】
本発明の1具体例では、1以上の固定床ラジアルフロー反応器システムにおいて、二酸化炭素及び酸素の存在下、気化した炭化水素供給原料を、触媒脱水素化する。反応器システムは直列に結合され、熱交換による再加熱を伴うか、又は炉内に設置される。必要な反応熱の一部は、熱い再生循環ガスによって提供される。プロセスに必要な熱の一部は、オキシ脱水素化反応器内において、O2との発熱反応によって直接提供されるか、又は、発熱酸化反応によって間接的に提供される。全体としての脱水素化反応は、全体的な反応システムを温和な吸熱性と温和な発熱性との間で変動させるように二酸化炭素及び酸素の量を調節することによって調整される。
【0014】
反応器システムに熱を提供するいくつかの他の方法は、特に流動床反応器システムの使用に適するアプローチを含むものである。これらは、供給酸素のための複数個の注入位置を含む。これは、他の供給ストリームのいずれかの一部によっても行われる。さらに、1つのアプローチは、外部のO2との発熱反応を利用し、その生成物を流動床反応器に供給するものである。また、流動触媒粒子又は他の粒子は、CO2/O2-ODH主反応器床から除去され、別の流動床容器において、例えば、少量の炭化水素を空気と共に燃焼させることによって、加熱される。続いて、これらの粒子を、FCCシステムと同様に、主反応器床に戻す。別の床での粒子の加熱も、触媒の再生を含むことができる。最後に、流動化粒子は、「再生器」において酸素を獲得し、前記酸素を主反応器床に移動させて、CO2/O2-ODH反応用の酸素を提供する粒子である。
【0015】
熱インプットを提供するための他の特別なアプローチは、炭化水素供給原料を部分的に脱水素化し、プロセスにおいて、CO2/O2-ODH反応器の条件に向けて反応混合物を加熱するように、限られた酸素が供給されるO2-ODH反応器を使用することである。このアプローチは、CO2/O2-ODH反応器システムへの初期供給のために使用され、及びCO2/O2-ODH反応器システムのその後のステージ(中央反応器、二次ステージ等)での熱及び反応混合物を添加するためにも使用される。
【0016】
脱水素化反応器からアウトプットを一次分離セクションに送り、ここで、脱水素化生成物ストリームを、未反応の炭化水素供給原料、凝縮可能な副生物及びオフガスから分離する。一般的には、未反応の炭化水素供給原料を、1以上の脱水素化反応器に再循環する。オフガスは、酸素源として空気を使用した場合にはN2と共に、H2O、CO、CO2、H2及び軽質の不純物を含んでなる。オフガスストリームをさらに処理して、CO2を回収、再循環することもできる。
【0017】
1具体例では、オフガスを圧縮し、続いて、酸化剤として酸素又は空気を使用する酸化器/バーナーにおけるCOのCO2への転化のための単純な酸化に供することによって、オフガスを処理してCO2を回収する。酸化器/バーナーユニットの生成物は、主に二酸化炭素及びいくらかの水を含んでなり、生成物をクールダウン/分離ユニットに供給して、二酸化炭素の再循環前に、水のいくらか又は全てを除去することができる。別法では、酸化器/バーナーユニットの生成物を水除去に供し、クールダウンすることなく熱い状態で再循環することもできる。
【0018】
本発明の他の具体例では、圧縮後、オフガスを1以上のセパレーターに供給して、水及び水素を除去する。水素ガスを、価値ある連産物として、回収することができる。セパレーターからの残りのガスは、主にCO/CO2混合物を含んでなり、酸素と合わせ、二酸化炭素を再循環する前に、COをCO2に転化するための酸化器/バーナーに供給する。
【0019】
本発明の他の具体例では、圧縮後、オフガスを追加の水と合わせ、水−ガスシフトユニットに供給して、圧縮されたオフガス中のCOをCO2へ転化させ、及び追加の水素を生成することができる。水−ガスシフトユニット生成物を酸化器/バーナーに供給して、二酸化炭素を脱水素化反応器に再循環する前に、水及び水素のいくらか又は全てを回収する。
【0020】
本発明のさらに他の具体例では、吸収器システム(例えば、アミン又は炭酸塩系)及び/又は吸着器システム(例えば、活性炭、モレキュラーシーブ又は多孔性固体支持体上の固定化/不動化アミン)を使用して、最初にオフガスからCO2を除去する。吸収器/吸着器システムに代わるものは冷凍/極低温システムである。吸収器/吸着器を一体化する理由は、圧縮する前にCO2を除去することである。好ましくは、吸収器/吸着器システムから再循環のために充分に高い圧力でCO2を回収する。吸収器/吸着器システムからの残りのオフガスを圧縮することができ、オフガスは、本質的に、CO及びH2からなる。CO及びH2は、さらに、合成ガスとして価値を有する。別法では、H2を連産物として分離することができ、COを酸化器/バーナーユニットに供給して、再循環のための追加のCO2へ転化することができる。水−ガスシフトユニットを含むことができ、H2O及びCOを転化して、更なるH2連産物及び再循環用CO2とすることができる。
【0021】
本発明の方法の利点として、エチルベンゼンのスチレンへの脱水素化のための二酸化炭素及び酸素の併用は、二酸化炭素の利点(スチレンへのオキシ脱水素化反応の選択性及び熱容量)及び酸素の利点(例えば、吸熱性のCO2-ODH反応を平衡化する発熱、脱水素化生成物CO及びH2を除去することによる転化率の増大)を一体化させることにある。オキシ脱水素化反応において二酸化炭素を使用することによる利点は、より好適な平衡のため、直接脱水素化よりも低い温度で操作できることである。酸化又はオキシ脱水素化反応において二酸化炭素を使用することによる1つの利点は、反応が発熱性であるため、エネルギー的に非常に好適であることである。このように、二酸化炭素オキシ脱水素化と、O2-ODHのような酸素系発熱反応又はCO及び/又はH2の酸化との組み合わせ(この組み合わせをCO2/O2-ODHと称する)は、二酸化炭素によって提供される高い選択率及び酸素(ただし、純粋な酸素のオキシ脱水素化よりも、酸素濃度及び危険度が低い)によって提供される熱及び転化率を保持する。CO2/O2-ODH法は、従来の脱水素化法及びCO2-ODH法よりも低い温度で行われる。本発明の方法の他の利点は、下記に示す本発明の具定例に関する詳細な説明により、当業者には明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、二酸化炭素及び酸素の両方の存在下における供給原料の酸化脱水素化に関する本発明の方法の具体例を実施するための脱水素化システムの概略図である。
【図2】図2は、オフガスの回収及び再循環及び、特に二酸化炭素としてのCOxの回収及び再循環、CO(及びH2)の酸化に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図3】図3は、オフガスの回収及び再循環及び、特に二酸化炭素としてのCOxの回収及び再循環、水及びH2の分離、続くCOの酸化に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図4】図4は、オフガスの回収及び再循環及び、特に、水−ガスシフトユニットを使用する二酸化炭素としてのCOxの回収及び再循環、続く水及びH2の分離に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図5】図5は、オフガスの回収及び再循環及び、特に、吸収器/吸着器システムを使用する二酸化炭素としてのCOxの回収及び再循環及びH2及びCOを含有するオフガスの提供に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図6】図6は、オフガスの回収及び再循環及び、特に、吸収器/吸着器システムを使用する二酸化炭素の回収及び再循環及びH2及びCO用の別個のオフガスの提供に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図7】図7は、オフガスの回収及び再循環及び、特に、吸収器/吸着器システムを使用する二酸化炭素の回収及び再循環、H2を含有するオフガス、及びCOの追加の再循環用CO2への酸化に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図8】図8は、オフガスの回収及び再循環及び、特に、吸収器/吸着器システムを使用する二酸化炭素の回収及び再循環、水−ガスシフトユニットを使用するCOの追加の再循環用CO2への転化及びH2Oの追加のH2連産物への転化、続くCO2、H2及びH2Oの分離及び送達に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図9】図9は、オフガスの回収及び再循環及び、特に、図8のシステム+H2及びCO2へのシフト転化を増大させるための水−ガスシフトユニット前のH2のセパレーターを使用する二酸化炭素の回収及び再循環に関する本発明の方法の具体例を実施するためのオフガスシステムの概略図である。
【図10】図10は、酸素特異性膜脱水素化反応器を使用する、二酸化炭素及び酸素の両方の存在下における供給原料の酸化脱水素化に関する本発明の方法の具体例を実施するための脱水素化システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、二酸化炭素の存在下、酸素によって援助された炭化水素供給原料の改善された酸化脱水素化(CO2/O2-ODH)法に係る。本発明の方法は、副生物の回収及び再循環を含むこともでき、再循環される二酸化炭素がオキシ脱水素化反応器システム内で得られ、再使用される。最後に、本発明の方法は、各種の他の反応器に加えて、酸素特異性膜補助脱水素化反応器の使用を含むこともできる。
【0024】
1具体例では、本発明は、O2によって援助されたCO2酸化脱水素化を使用するスチレンの製造のための新規な脱水素化法に係る。エチルベンゼンのスチレンへのオキシ脱水素化における二酸化炭素及び酸素の併用は、二酸化炭素の利点(スチレンへのオキシ脱水素化反応の選択性及び熱容量)及び酸素の利点(例えば、発熱、増大された転化率)を組み合わせるものである。
【0025】
特に、オキシ脱水素化反応において二酸化炭素を使用する1つの利点は、直接脱水素化よりも低い温度で操作できることである。直接脱水素化及びCO2-ODHのいずれの欠点も、これら反応が吸熱反応であり、多量の熱インプットを要求することである。オキシ脱水素化反応において酸素を使用する重要な利点は、反応が発熱性であるため、エネルギー的に非常に好適であることである。しかし、酸素の使用は、現在の触媒系を使用する場合にはスチレンへの選択率が低い、及び純粋な酸素を使用する場合には、爆発に関する特有の危険性があり、その操作法が制限されるため、望まれてはいない。酸素は、COをCO2へ及び/又はH2をH2Oへ選択的に酸化するためにも使用される。ここでも、O2が貴重な供給物及び生成化合物を燃焼する望ましくない可能性のため、選択性が問題である。二酸化炭素オキシ脱水素化と酸素系発熱反応との組み合わせ(CO2/O2-ODH)、CO及び/又はH2の選択的酸化は、二酸化炭素によって提供される高い選択性を維持することができ、酸素の反応によって熱及び転化の増進が提供され、純粋な酸素によるオキシ脱水素化よりも酸素濃度は低く、危険性も低い。従って、CO2/O2-ODH法は、従来の脱水素化法(代表的には、約600℃)よりも低い温度で及び潜在的にはCO2-ODH法(約550℃)よりもさらに低い温度で操作できる。
【0026】
本発明の1具体例では、1以上の固定床ラジアルフロー反応器システムにおいて、酸素を反応器システムに供給しながら、二酸化炭素存在下、気化した炭化水素供給原料を、触媒脱水素化する。2つ以上の反応器システムが存在していてもよく、反応器システムは直列に結合され、熱交換器による再加熱を伴うか、又は炉内に設置される。反応熱の一部は、熱い再生循環ガスによって提供される。プロセスに必要な熱の一部は、オキシ脱水素化反応器内において、酸素との発熱反応によって直接提供されるか、又は、発熱性酸化反応によって間接的に提供される。全体としての脱水素化反応は、全体的な反応システムを温和な吸熱性と温和な発熱性との間で変動させるように二酸化炭素及び酸素の量を調節することによって調整される。
【0027】
本発明のオキシ脱水素化オフガスは、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水及び他の反応副生物を含んでなる。1具体例では、いくつかの異なる構成の1つを使用してオフガスを処理する。オフガスの処理法は、二酸化炭素を生成し、これをオキシ脱水素化反応器システムに再循環するものである。例えば、オフガスの処理法は、オフガスを、1以上の酸化器、分離システム、水−ガスシフト反応器、コンプレッサー、及び/又は吸収器/吸着器に供することを含むものであるが、これらに限定されない。
【0028】
本発明の具体例に関する下記の詳細な記載は、実施可能な具体例を提供することを意図するものであり、いずれにしても、本発明の範囲を限定するものではない。
【0029】
図1を参照すると、本発明の1具体例において、脱水素化反応器システムにおいて、エチルベンゼンをスチレンに転化し、オフガス、スチレン、残留エチルベンゼン及び副生物を分離及び処理している。エチルベンゼン供給原料(2)は、新鮮な供給物及び/又は他のプロセスからの再循環供給物及び/又は後述する分離システム(30)からの再循環物(24)として供給される。エチルベンゼン供給原料(2)及び(24)を脱水素化反応器システム(10)に供給する。酸素(4)を脱水素化反応器システム(10)に供給する。酸素供給物(4)は、実質的に純粋な酸素ガス及び/又は空気、又は酸素富有化空気、又はO2を含有する各種の他の好適なガスとして供給される。二酸化炭素(6)も脱水素化反応器システム(10)に供給する。二酸化炭素供給物(6)は、代表的には、再循環二酸化炭素(26)及び補充ストリーム(8)の組み合わせである。補充ストリーム(8)は、新鮮な供給物として及び/又は他のプロセスからの排出ガス又は液として供給される。特に、CO2は、他の石油化学プロセス(例えば、エチレンオキシド)から、CO2除去/回収又は移送システムから、又は炭化水素の燃焼からのパージストリームとして得られる。
【0030】
脱水素化反応器システム(10)は、CO2の存在下におけるオキシ脱水素化反応及び発熱性のO2「支援」反応を促進するために、1以上の触媒を含む。CO2-ODHを行うための公知の触媒は、例えば、混合FeIIFeIII酸化物触媒又はジルコニア系触媒である。酸素系ODH触媒は、Ni-V-Si/Al2O3、Ba-Ni/Al2O3、又は活性炭系触媒のような混合金属酸化物触媒である。水−ガスシフト触媒(HTS)は、好ましくは、Fe-Cr酸化物触媒である。さらに、COをCO2へ及び/又はH2をH2Oへ選択的に酸化するものとして当分野において公知の触媒を使用することができる。これらの触媒は、担持されたAu、Pt、Pd、Ru又はRhのような貴金属系である(これらに限定されない)。担持バナジウム又は混合酸化物上に担持されたCo-Cu、Ni-Co-Fe、Ag又はCr-Feのような金属の組み合わせのような非貴金属も使用できる。
【0031】
好ましくは、使用する触媒系は、上述の他の触媒の1以上と組み合わせた当分野において公知のCO2-ODH触媒である。異なる触媒及びその反応を、別個の、例えば、連続する反応器において行い、又は同一の反応器において行うことができる。好適な1具体例では、オキシ脱水素化反応器を、温度400〜700℃及び圧力10〜500 kPaで作動させる。
【0032】
主の脱水素化反応器システム(10)と直列に、追加の脱水素化反応器システム(20)を組み込むことができる。この具体例では、追加の反応器システム1つを示しているが、本発明に従って、各種の数の追加の反応器システムを利用できる。追加の反応器システムは、温度の制御、エチルベンゼン、酸素又は二酸化炭素の段階的供給、又は異なる反応器モードの提供を含む各種の理由(これらに限定されない)で追加される。異なる反応器モードの例は、反応器の種類(例えば、固定床反応器、流動床反応器、又は膜反応器)を含む。これらは、追加のO2の供給を含んでいてもよく、含んでいなくてよい。総反応器システム(10)+(20)は、異なる種類の脱水素化システム(CO2/O2-ODH、CO2-ODH、O2-ODH、非ODH(CO2/O2-ODHが、非ODHの流出物について使用される場合)、及び可及的に水−ガスシフト反応を含むことができる。システム(10)又は(20)における最後の反応器からのスチレン生成物、副生物及び未反応EB、H2O及びガスを、主の凝縮及び分離セクション(30)に供給する(14)。
【0033】
主凝縮及び分離セクション(30)は、本質的に、従来の脱水素化システムにおいて一般的に使用されているセクションと同一又は同様のものである。分離システム、回収システム及び精製システムの組み合わせを使用して、生成物ストリーム(14)を冷却して、未反応のエチルベンゼン及びスチレンモノマー生成物及び凝縮可能な副生物を凝縮させ、それぞれから及びオフガスから分離する。スチレンモノマー生成物を、ライン(22)を介して取り出し、貯蔵又は更なる処理に送給する。未反応のエチルベンゼンを、オキシ脱水素反応器システム(10)又は(20)の1以上に再循環する(24)。オフガスをオフガスセクション(40)に供給する(16)。オフガスセクション(40)では、CO、H2O、CO2、H2及び軽質の不純物(加えて、O2源として空気を使用した場合にはN2)を含んでなるオフガスを、CO2再循環(26)及び1以上のパージ又は連産物ストリーム(18)に分離する。いくつかの二次回収システム(図示していない)をオフガスセクション(40)に設置して、生成物等を主凝縮及び分離セクション(30)に戻すこともできる。
【0034】
エチルベンゼン供給原料(2)及び再循環エチルベンゼン(24)を、当分野においてよく知られているような一般的な圧力及び温度で、脱水素反応器に供給する。酸素(4)も、二酸化案素(6)と共に、一般的な圧力及び温度で供給する。CO2比率が、その流出量が完全に除去され得るほど充分に低い場合には、CO2再循環(26)は省略される。
【0035】
好ましくは、総エチルベンゼン(新鮮な供給物+再循環物)に対する総モル供給比率は、二酸化炭素について、0.1〜10、及び酸素については0.01〜1.0である。
【0036】
本発明は、炭化水素供給原料の脱水素化に適用される。供給原料は、単一の化合物を含むものであるか、化合物の混合物を含むものでもよい。供給原料は、工業プロセスからの軽質カットとして得られたものでもよい。好ましくは、供給原料は、平均分子量150ダルトン未満を持つ低分子量炭化水素を含んでなる。特に、本発明の方法は、パラフィンからのオレフィンの製造(例えば、エタンからのエチレン、プロパンからのプロピレン、n−ブタンからのn−ブテン、i−ブタンからのi−ブテンの製造等)、及びパラフィン及び/又はオレフィン等からのジオレフィン又はアルキンの製造(例えば、n−ブタン又はn−ブテンからのブタジエンの製造)において使用される。CO2及びO2の併用は、選択的酸化において、例えば、アクリロニトリル、アクリル酸、酢酸、無水マレイン酸、1,4−ブタンジオール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの製造のためにも利用される。
【0037】
主脱水素化反応器システム(10)及び任意の追加の脱水素化反応器システム(20)、すなわち、反応器セクションは、1以上の固定床、1以上の流動床、膜反応器、又はこれらの組み合わせからなる。エチルベンゼン、CO2及びO2を一緒に又は別々に供給でき、いずれも、一度で反応器入口に供給するか、又は入口の下流において、いくつかの段階に分けて供給する。O2は少なくとも1つの段階で供給されるが、全ての段階において供給されなくてもよい。脱水素化反応器システムで使用される脱水素化触媒は、二酸化炭素の存在下、所望の脱水素化反応を促進するように選択される。代表的には、二酸化炭素によってオキシ脱水素化を促進する少なくとも1の触媒を、酸素の存在下において、CO及びH2の選択的酸化(又は択一的に/付加的にO2-ODH)を促進する少なくとも1の触媒と組み合わせる。
【0038】
本発明によるEBのスチレンへの脱水素化のための反応セクションでは、下記の主な反応が生ずる。
【0039】
EB=スチレン+H2 (直接脱水素化;吸熱)
EB+CO2=スチレン+CO+H2O (CO2-ODH;吸熱)
EB+1/2O2→スチレン+H2O (O2-ODH;発熱)
CO2+H2=CO+H2O (水−ガスシフト;少量の反応熱のみ)
H2+1/2O2→H2O (発熱)
CO+1/2O2→CO2 (発熱)
O2の少量が炭化水素を燃焼することもある(発熱;望ましくない)。
【0040】
本発明に含まれる他の反応器の構成は、
直接脱水素化(O2又はCO2のいずれも使用しない)、
CO2-ODH(O2無し)又は
O2-ODH(希釈剤以外の有効な役割を果たすCO2無し)
のいずれかを使用する脱水素化セクションの下流での、組み合わせCO2/O2-ODH反応セクションの利用を含むものである。
【0041】
本発明の他の態様では、いくつかの回収オプションによって、二酸化炭素を回収及び再循環する。オフガスの処理は、吸収、吸着、膜分離、さらに冷却/チリング/冷凍、凝縮、酸化によるCOのCO2への転化又は水−ガスシフト等を含むことができる。これらの処理工程は、各種のパージストリームを生成し、CO2再循環の量及び組成に影響を及ぼす。例えば、COを再循環用のCO2へ転化するためにO2又は空気による酸化が利用される場合には、熱は、反応器に対する最終加熱工程としての使用に有利である。パージストリームは、代表的には、H2、CO、CO2、H2O、軽質不純物及びN2(存在する場合)に由来する化合物を含んでなる。
【0042】
1具体例では、本発明は、エチルベンゼンをスチレンへ転化するための二酸化炭素/酸素ODHプロセスのオフガス(ここで、オフガスは、H2、CO、CO2、H2O、軽質不純物及びN2(存在する場合)を含んでなる)を取扱い及び分離する新規な手段に係る。
【0043】
図1を参照すると、主分離セクション(30)からのオフガス(16)を、各種のオプションによって、再循環又は処分することができる。図2を参照すると、本発明の1具体例では、全部のオフガスを、圧縮後、酸化剤として酸素又は空気を使用する単なる酸化に供する。オフガス供給(16)を、酸化器/バーナーユニット(60)に供給する前に、圧縮する。酸素又は空気(32)を別々に酸化器/バーナーユニット(60)に供給するか、又は酸化器/バーナー(60)以前でオフガス(16)と混合する。このケース又は後述する全てのケースにおいて、1以上のパージガスストリーム(図示していない)を、オフガスセクションにおいて、いくつかの位置から取り出すことができる。
【0044】
酸化器/バーナーユニット(60)の生成物(34)は、主に、二酸化炭素及びいくらかの水(空気がO2源である場合はN2も)、加えて、未転化CO及び/又はいくらかのO2を含んでなり、生成物を、任意に、クールダウン/分離ユニット(70)に供給して(34)、酸化器/バーナーユニットの流出物を冷却し、二酸化炭素の再循環(26)の前に、水の少量又は全量を除去する(36)。別法では、ストリーム(16)中に既に存在している水を、バーナーユニット(60)の前、又はバーナーユニット(60)の前及び後の両方で、酸化器/バーナーユニット(60)の前に配置されたクールダウン/分離ユニット(70)によって、又は酸化器/バーナーユニット(60)の前の追加の二次クールダウン/分離ユニットによって減少又は除去できる。
【0045】
図3を参照すると、本発明の1具体例では、オフガスを、圧縮後、セパレーター(80)に供給して、水(42)及び水素(38)を除去する。水素ガス(38)は、下流において、価値ある連産物として回収される。セパレーターからの生成物(31)は、主にCO/CO2混合物を含んでなり、酸素又は空気(32)と合わせ、再循環(26)前に、上述のように、燃焼のため酸化器/バーナーユニット(90)に供給する。二酸化炭素再循環(26)は高度に水フリーである(ストリーム(26)は残留量のCO及び/又はCO2を含有できる)。
【0046】
図4を参照すると、本発明の1具体例では、オフガス(16)を、圧縮後、追加の水(44)を合わせ、水−ガスシフトユニット(100)に供給して、圧縮したオフガス中のCOを追加のCO2に転化し、水素ガス生成を増大することができる。水−ガスシフトユニット生成物をクールダウン/分離システム(70)に供給して(46)、二酸化炭素の再循環(26)前に、水のいくらか又は全量(36)及び水素ガス(48)を除去できる。
【0047】
図5〜9を参照すると、本発明のこれらの具体例では、初めにオフガスからH2O及びCO2を除去するために、吸収器システム(例えば、アミン又は炭酸塩系)及び/又は吸着器システム(例えば、活性炭、モレキュラーシーブ又は多孔性の固体支持体上に固定化/不動化したアミン)を使用する。別法として、冷凍/極低温システムを使用することもできる。吸収器/吸着器を一体化する理由は、圧縮前にCO2を除去することにある。好ましくは、CO2を、再循環用として充分に高い圧力で吸収器/吸着器から回収し、同時に、排出不純物及び水を除去する。吸収器/吸着器からの残りのオフガスの容量は非常に低減されており、実質的にCO及びH2を含んでなり、更なる処分のため圧縮される。特に図5を参照すると、本発明の1具体例では、オフガス(16)を吸収器/吸着器システム(120)に供給する。再循環用の二酸化炭素(26)及び水/不純物(56)をシステム(120)から回収する。システム(120)からの一酸化炭素/水素混合物(54)を、連産物として又は更なる二酸化炭素への転化のために排出する。
【0048】
図6を参照すると、本発明の1具体例では、オフガス(16))を吸収器/吸着器システム(120)に供給する。再循環用の一酸化炭素(26)及び水/不純物(56)をシステム(120)から回収する。システム(120)からの二酸化炭素/水素混合物(54)をセパレーター(130)に供給して、2つのガスを、一酸化炭素ストリーム(62)及び水素ガスストリーム(64)に分離する。好ましくは、セパレーターは、膜分離又は活性炭又はモレキュラーシーブ吸着システムを含んでなる。CO及びH2ガスストリーム(62)及び(64)は連産物であり、及び/又はストリーム(62)を、さらに、追加の再循環用として、二酸化炭素に転化することができる。いずれも連産物である場合には、COストリーム及びH2ストリームの一部を再度組み合わせて合成ガスストリームとするか、又は好適なH2/CO比を持つ合成ガスストリームを提供できる。
【0049】
図7を参照すると、本発明の1具体例において、図6からの一酸化炭素ストリーム(62)を酸化器/バーナーユニット(90)に供給し、上述のように、酸素又は空気(32)にて酸化する。酸化器/バーナーユニット(90)の生成物(68)は、主に二酸化炭素(及び空気が減である場合には窒素)、加えて、未転化COの残留量及び/又は少量の酸素を含んでなる。この追加の二酸化炭素ストリーム(68)を、二酸化炭素の主再循環ストリーム(26)と合わせることができる。
【0050】
図8を参照すると、本発明の1具体例では、図5から一酸化炭素及び水素ガスストリーム(54)を追加の水(44)と合わせ、水−ガスシフトユニット(160)に供給して、圧縮したオフガス中のCOを追加のCO2へ転化し、及び水素ガスの製造を増大することもできる。水−ガスシフト生成物をクールダウン/分離システム(170)に供給して(72)、二酸化炭素の再循環(74)の前に、水の少量又は全量(36)及び水素ガス(48)を除去することができる。追加の二酸化炭素ストリーム(74)を、二酸化炭素の主再循環ストリーム(26)と合わせることができる。
【0051】
最後に、図9を参照すると、本発明の他の具体例では、図6からの一酸化炭素ストリーム(62)を追加の水(44)と合わせ、水−ガスシフトユニット(160)に供給して、圧縮したオフガス中のCOをCO2へ転化し、及び水素ガスの製造を増大することもできる。水−ガスシフト生成物をクールダウン/分離システム(70)に供給して(72)、二酸化炭素の再循環(74)の前に、水の少量又は全量(36)及び水素ガス(48)を除去することができる。追加の二酸化炭素ストリーム(74)を、二酸化炭素の主再循環ストリーム(26)と合わせることができる。
【0052】
図2、3及び7に示す具体例(COを再循環用の二酸化炭素に転化するために、酸素又は空気による酸化が使用される)に関して、生成された熱は、反応器システムに対する重要な加熱工程として利用される。
【0053】
本発明の他の具体例では、酸化脱水素化反応器システムは、流動床反応器システムを含んでなるものである。このシステムは、脱水素化炭化水素の製造に関して、各種の追加の有利なアプローチの使用を容易なものとする。これらアプローチは、供給酸素を複数の位置で注入することを含む。これは、他の供給ストリームのいずれかの一部によっても行われる。加えて、1つのアプローチは、外部のO2との発熱反応を利用し、その生成物を流動床反応器に供給するものである。例えば、オフガスセクションからのCOを酸素によって酸化し、反応器に供給して、酸化脱水素化反応器システム内の多数の位置で熱(及びCO2)を供給することができる。他の例は、主の反応器(流動床又は他の反応器のいずれでもよい)から、選択的酸化反応器(流動床又は他の反応器のいずれでもよい)に、オフガス又はオフガスの一部を供給して、含まれるCO及びH2を酸化させ、及び熱を発生させ、ついで、この熱いストリームを、流動床の二次段階CO2/O2-ODH反応器において、複数の位置で導入することである。
【0054】
流動床反応器システムにて可能な他のアプローチは、CO2/O2-ODH主反応器床から、流動触媒粒子又は他の粒子を取り出し、別の流動床容器において、例えば、少量の炭化水素を空気にて燃焼することによって、前記粒子を加熱することである。これらの粒子は、FCCシステムの場合と同様に、続いて、主反応器床に戻される。移動される粒子は、触媒を再生するために、触媒(他の粒子と一緒に又は別々に)を含む。流動床システムによる他の可能なアプローチは、粒子が他の容器において酸素を捕捉するように、主反応器床と他の反応器との間で粒子を移動させることである。酸素を保持した粒子が主反応器に戻されるため、CO2/O2-ODH反応用に酸素が提供される。
【0055】
本発明の他の具体例では、主CO2/O2-ODH反応器システムは、炭化水素供給原料を部分的に脱水素化し、及びこのプロセスにおいて、反応混合物を、CO2/O2-ODH反応器のための条件となるように加熱するために、限られた酸素供給を使用するO2-ODH反応器システムにおいて処理された供給物の一部又は全部を受け取ることができる。このアプローチは、CO2/O2-ODH反応器システムへの初期供給のため、及びCO2/O2-ODH反応器システムの続く段階(中間反応器、二次段階等)で熱及び反応混合物を添加するために使用される。
【0056】
本発明のさらに他の具体例では、主CO2/O2-ODH反応器システムは、従来の直接脱水素化反応器システム、又はその供給物の中に酸素を含まないCO2-ODH反応器システムにおいて処理された供給物の一部又は全部を受け取ることができる。主CO2/O2-ODH反応器システム(O2に加えて追加の供給(例えば、CO2)を受けることができる)は、上流にある脱水素化システムにおいて達成される以上の転化が得られる。
【0057】
本発明のさらに他の具体例では、酸化脱水素化反応器システムは膜反応器を含んでなることができる。例えば、本発明は、膜反応器において、EBのODHのために酸素及び二酸化炭素の両方を使用できる。この構成は、酸素を、酸素透過性膜を通って移動させるために使用され、好適なCO及び水素選択酸化触媒を使用することにより、選択的に、CO2-ODH反応からのCO、又はいずれかの直接脱水素化反応からの水素と反応できる。この反応は吸熱脱水素化用の熱を提供し、CO及び水素を消費することによって、脱水素化反応をより高い転化率にシフトさせる。さらに、酸素選択性膜の使用は、可燃性ガス混合物における酸素の使用に伴う危険性を最少にする。反応の選択性は、CO及び水素酸化触媒を炭化水素側の膜表面に配置し、バルク反応混合物に到達する前に酸素を消費することによって増大される。逆に、ガス状O2が充分に炭化水素と混合すると、むやみに反応して、炭化水素を燃焼するか又は酸化生成物を又は他の望ましくない副生物を生成する。このようなシステムは、空気又はO2のいずれかと共に使用されるが、低コストの空気を、反そのN2成分を応混合物に導入することなく利用できるようにするためには特に有利である。
【0058】
図10を参照すると、本発明の1具体例において、スチレンへのEBの脱水素化に関するCO2/O2-ODH膜反応器が示されている。エチルベンゼン及び二酸化炭素を、一緒に又は別々に、反応器(200)に供給する(202)。反応器は酸素透過性膜(208)を含んでなる。酸素(4)を複数の位置で反応器(200)に供給する。酸素は、純粋なO2ガス及び/又は空気又は好適なO2含有ガスによって供給される。空気中の窒素(膜を通過しない)及び過剰な酸素を、ライン(206)を介して除去する。脱水素化生成物ストリームを、ライン(204)を介して取り出し、過剰なエチルベンゼン、反応副生物及びオフガスからスチレンモノマーを分離するための更なる処理に送る。
【0059】
本発明の1具体例では、CO及び水素を選択的に酸化してCO2及び水を生成する触媒を、膜の炭化水素供給側に配置する。触媒は、膜上に析出、膜に固定、及び/又は膜内に埋設される。他の具体例では、膜の材料自体、膜及び触媒の機能が充分に一体化された活性なCO及び水素酸化触媒である。
【0060】
反応条件下において機能する各種の酸素透過性膜材料を使用できる。好ましくは、材料は、フルオライト又はペロブスカイト関連構造体のような混合酸化物を含んでなる。例えば、Se-Fe-Co酸化物、La-Sr-Co-Fe酸化物、Ba-Co-Fe-Zr酸化物及び/又はBi-Y-Sm酸化物を使用できる。また、選択的にCO及びH2を酸化するための当分野において公知の各種触媒も使用できる。好ましくは、触媒は、担持されたAu、Pt、Pd、Ru又はRhのような貴金属系である(これらに限定されない)。担持バナジウム又は混合酸化物上に担持されたCo-Cu、Ni-Co-Fe、Ag又はCr-Feのような金属の組み合わせのような非貴金属も使用できる(これらに限定されない)。
【0061】
膜の炭化水素供給側に選択的酸化触媒を固定する膜反応器の使用は、従来技術を越える利点を提供する。このような固定は、望ましくない非選択的酸化を制限し、酸素の注入は、極めて少ない位置に制限されるのに対して、本質的に、入口から出口までのいずれの位置においても可能である。
【0062】
膜が介在するCO及びH2の酸化は、また、吸熱脱水素化用の熱を提供し、CO2-ODH脱水素化(及び各種の付随する直接脱水素化)を、CO及びH2を消費することによってより高い転化性にシフトさせる。さらに、触媒混合物を適用できる。選択的にCOをCO2へ及び/又はH2をH2Oへ酸化するための当分野において公知の触媒も使用できる。これら触媒は、担持されたAu、Pt、Pd、Ru又はRhのような貴金属系である(これらに限定されない)。担持バナジウム又は混合酸化物上に担持されたCo-Cu、Ni-Co-Fe、Ag又はCr-Feのような金属の組み合わせのような非貴金属も使用できる(これらに限定されない)。この膜構造におけるCO及びH2酸化触媒を、エチルベンゼンのスチレンへの転化用の酸素ODH触媒と組み合わせることができる。別法では、選択的CO酸化を、上記反応のいずれか1以上、又は主CO2-ODH反応と組み合わせる多機能性触媒を使用することができる。
【0063】
本発明の範囲は、エチルベンゼンのスチレンへの転化に基づいて提示した実施例に限定されない。CO2/O2-ODHを使用するスチレンの製造に関する適用に加えて、本発明は、オレフィンの製造(例えば、エタンからのエチレン、プロパンからのプロピレン、n−ブタンからのn−ブテン、i−ブタンからのi−ブテンの製造等)、及びパラフィン及び/又はオレフィン等からのジオレフィン又はアルキンの製造(例えば、n−ブタン又はn−ブテンからのブタジエンの製造)において使用される。ODHに関する適用に加えて、選択的CO及びH2酸化膜反応器構造の使用は、潜在的に、CO2がソフト酸化剤として使用される選択的部分酸化(例えば、アクリロニトリル、アクリル酸、酢酸、無水マレイン酸、1,4−ブタンジオール、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドの生成用)においても使用される。
【0064】
好適な具体例を記載したが、本発明の精神及び範囲を逸脱することなく、特許請求の範囲に記載するように、上述の方法に各種の変更をなすことができる。従って、本発明が、実施例によって詳述されており、これらによって限定されるものではないことが理解されなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素供給原料を酸化脱水素化する方法であって、
(a)炭化水素供給原料を、炭化水素を脱水素化する酸化脱水素化反応器システムに供給する工程、ここで、脱水素化反応器は、炭化水素供給原料を選択的に酸化して、脱水素化炭化水素生成物を生成する少なくとも1の触媒を収容するものであり;
(b)二酸化炭素を酸化脱水素化反応器システムに供給する工程、ここで、二酸化炭素/総炭化水素供給原料(新鮮な供給物+再循環物)のモル供給比率が0.1〜10であり;
(c)酸素を酸化脱水素化反応器システムに供給する工程、ここで、酸素/総炭化水素供給原料(新鮮な供給物+再循環物)のモル供給比率が0.01〜1.0であり;
(d)炭化水素供給原料を、触媒脱水素化して、脱水素化炭化水素生成物、未反応炭化水素供給原料、副生物及びオフガスを含んでなる脱水素化生成物ストリームを生成する工程;及び
(e)脱水素化炭化水素生成物、未反応供給原料、副生物及びオフガスを回収する工程
を含んでなる、炭化水素供給原料の酸化脱水素化法。
【請求項2】
脱水素化炭化水素生成物、未反応供給原料、副生物及びオフガスを回収する工程が、
(f)炭化水素化生成物ストリームを、凝縮システム及び分離システムを含んでなる主分離セクションに供給する工程;及び
(g)凝縮システムにおいて、脱水素化生成物ストリームの少なくとも一部を冷却及び凝縮し;及び分離システムにおいて、脱水素化生成物ストリームから、未反応炭化水素供給原料、凝縮した副生物及びオフガスを分離する工程
を含んでなるものである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
さらに、未反応炭化水素供給原料を酸化脱水素化反応器システムに供給する工程を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項4】
炭化水素供給原料がパラフィンであり、脱水素化炭化水素生成物がオレフィンである、請求項1記載の方法。
【請求項5】
炭化水素供給原料がエチルベンゼンであり、脱水素化炭化水素生成物がスチレンである、請求項1記載の方法。
【請求項6】
二酸化炭素/エチルベンゼンのモル供給比率が0.3〜8であり、酸素/エチルベンゼンのモル供給比率が0.02〜0.6である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
酸化脱水素化反応器システムが、酸素選択膜補助脱水素化反応器を含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化脱水素化反応器システムが、流動床反応器システムを含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項9】
酸化脱水素化反応器システムが、反応混合物を再加熱/予熱するためのO2-ODH反応器を含むものである、請求項1記載の方法。
【請求項10】
酸素を空気によって供給する、請求項1記載の方法。
【請求項11】
さらに、
(h)オフガスをコンプレッサーに供給する工程、ここで、オフガスは一酸化炭素を含んでなり、コプレッサーからの生成物が、一酸化炭素を含んでなる圧縮されたガスであり;
(i)圧縮されたガスを、一酸化炭素を二酸化炭素に転化する酸化器に供給する工程、ここで、酸化器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり;
(j)酸化器から二酸化炭素を回収する工程;及び
(k)回収した二酸化炭素を酸化脱水素化反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項12】
さらに、
(h)オフガスをコンプレッサーに供給する工程、ここで、オフガスは、二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでなり、コプレッサーからの生成物が、一酸化炭素及び二酸化炭素を含んでなる圧縮されたガスであり;
(i)圧縮されたガスを、オフガス中の二酸化炭素及び一酸化炭素を分離するセパレーターに供給して、一酸化炭素を含んでなるストリーム及び二酸化炭素を含んでなるストリームを生成する工程;
(j)一酸化炭素ストリームを、一酸化炭素を二酸化炭素に転化する酸化器に供給する工程、ここで、酸化器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり;
(k)酸化器から二酸化炭素を回収する工程;及び
(l)回収した二酸化炭素を反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項13】
さらに、
(h)オフガスをコンプレッサーに供給する工程、ここで、オフガスは一酸化炭素を含んでなり、コプレッサーからの生成物が、一酸化炭素を含んでなる圧縮されたガスであり;
(i)圧縮されたガスを、一酸化炭素を二酸化炭素へ転化する水−ガスシフトユニットに供給する工程、ここで、水−ガスシフトユニットからの生成物が、二酸化炭素を含んでなる転化されたガスであり;
(j)転化されたガスを、転化されたガス中の二酸化炭素を分離するセパレーターに供給する工程、ここで、セパレーターからの生成物が二酸化炭素を含んでなり、
(k)セパレーターから二酸化炭素を回収する工程;及び
(l)回収した二酸化炭素を反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項14】
さらに、
(h)オフガスを、二酸化炭素を分離する吸収器/吸着器に供給する工程、ここで、オフガスは二酸化炭素を含んでなり、吸収器/吸着器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり;
(i)吸収器/吸着器から二酸化炭素を回収する工程;及び
(j)回収した二酸化炭素を反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項15】
さらに、
(h)オフガスを、一酸化炭素から二酸化炭素を分離する吸収器/吸着器に供給する工程、ここで、オフガスは二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでなり、吸収器/吸着器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり、及び吸収器/吸着器からの副生物が一酸化炭素を含んでなり;
(i)副生物を、一酸化炭素を分離するセパレーターに供給する工程、ここで、セパレーターからの生成物が、一酸化炭素を含んでなる分離されたガスであり、
吸収器/吸着器から二酸化炭素を回収する工程;及び
(j)分離されたガスを、一酸化炭素を二酸化炭素に転化する酸化器に供給する工程、ここで、酸化器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり;
(k)吸収器/吸着器及び酸化器から二酸化炭素を回収する工程;及び
(l)回収した二酸化炭素を反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項16】
さらに、
(h)オフガスを、一酸化炭素から二酸化炭素を分離する吸収器/吸着器に供給する工程、ここで、オフガスは二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでなり、吸収器/吸着器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり、及び吸収器/吸着器からの副生物が一酸化炭素を含んでなり;
(i)副生物を、一酸化炭素を二酸化炭素へ転化する水−ガスシフトユニットに供給する工程、ここで、水−ガスシフトユニットからの生成物が、二酸化炭素を含んでなる転化されたガスであり;
(j)転化されたガスを、転化されたガス中の二酸化炭素を分離するセパレーターに供給する工程、ここで、セパレーターからの生成物が二酸化炭素を含んでなり、
(k)吸収器/吸着器及びセパレーターから二酸化炭素を回収する工程;及び
(l)回収した二酸化炭素を反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。
【請求項17】
さらに、
(h)オフガスを、一酸化炭素から二酸化炭素を分離する吸収器/吸着器に供給する工程、ここで、オフガスは二酸化炭素及び一酸化炭素を含んでなり、吸収器/吸着器からの生成物が二酸化炭素を含んでなり、及び吸収器/吸着器からの副生物が一酸化炭素を含んでなり;
(i)副生物を、一酸化炭素を分離するセパレーターに供給する工程、ここで、セパレーターからの生成物が、一酸化炭素を含んでなる分離されたガスであり、
(j)分離されたガスを、一酸化炭素を二酸化炭素へ転化する水−ガスシフトユニットに供給する工程、ここで、水−ガスシフトユニットからの生成物が、二酸化炭素を含んでなる転化されたガスであり;
(k)転化されたガスを、転化されたガス中の二酸化炭素を分離するセパレーターに供給する工程、ここで、セパレーターからの生成物が二酸化炭素を含んでなり、
(l)吸収器/吸着器及びセパレーターから二酸化炭素を回収する工程;及び
(m)回収した二酸化炭素を反応器に再循環する工程
を含んでなる、請求項2記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−524913(P2011−524913A)
【公表日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514722(P2011−514722)
【出願日】平成21年6月12日(2009.6.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/047233
【国際公開番号】WO2009/155219
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(391011227)ルマス テクノロジー インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】