説明

エチレン−α−オレフィン共重合体および押出発泡成形品

【課題】外観および機械強度に優れる押出発泡成形品の製造に適した押出発泡成形用エチレン−α−オレフィン共重合体を提供する。また、外観および機械強度に優れる押出発泡成形品を提供する。
【解決手段】分子量分布が5以上、20以下であり、スウェル比が1.15〜1.45であり、流動の活性化エネルギーが60kJ/mol以上、90kJ/mol以下であり、メルトフローレートが0.05〜4g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体。前記エチレン−α−オレフィン共重合体を成形して得られる押出発泡成形品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−α−オレフィン共重合体および押出発泡成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン系樹脂からなる押出発泡成形品は、柔軟性、衝撃吸収性、軽量性、断熱性に優れているため、従来、包装材料、緩衝材、芯材、断熱材、パッキン、建築資材などの種々の用途に使用されている。しかしながら、これまで広く用いられてきた高圧法低密度ポリエチレンの押出発泡成形品では、コルゲーションと呼ばれる周期的に不均一な厚さ、外観の変動が発生しやすい。
特許文献1には、平均気泡密度が15個/9mm2以上の表層を有する高圧法低密度ポリエチレン押出発泡成形品が記載されているが、その外観は良好ではなかった。また、この成形品は、機械強度が十分ではなく、破れやすかった。
特許文献2には、エチレン−α−オレフィン共重合体、芳香族ビニル化合物重合体ブロックと共役ジエン重合体ブロックとからなるブロック共重合体の水素添加物、及びオレフィン系重合体からなる重合体組成物、並びにこの重合体組成物を熱分解型発泡剤を用いて発泡させて得られた発泡体が記載されているが、この発泡体は気泡サイズが大きいため表面の平滑性に劣る。また、前記重合体組成物は、溶融張力が低いために、押出発泡成形時に破泡しやすく、このため、発泡倍率が高い発泡成形品を製造しようとすると、破泡により表面が荒れやすく、得られた発泡成形品の外観は良好ではなかった。また、破泡によって気泡が粗大になった発泡成形品は、機械強度にも劣っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−347619号公報
【0004】
【特許文献2】特開2000−119427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、外観および機械強度に優れる押出発泡成形品の製造に適したエチレン−α−オレフィン共重合体を提供することにある。また本発明の他の目的は、外観および機械強度に優れる押出発泡成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、分子量分布が5以上、20以下であり、スウェル比が1.15〜1.45であり、流動の活性化エネルギーが60kJ/mol以上、90kJ/mol以下であり、
メルトフローレートが0.05〜4g/10分である、エチレン−α−オレフィン共重合体、および該エチレン−α−オレフィン共重合体からなる押出発泡成形品を提供する。なお、本発明において、「押出発泡成形品」とは押出発泡により製造された成形品を意味する。また、以下の説明において、特に断らない限り、「成形品」という用語は「押出発泡成形品」を意味する。
【発明の効果】
【0007】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体を用いることにより、外観および機械強度に優れる押出発泡成形品を製造することができる。また本発明の押出発泡成形品は、外観および機械強度に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、エチレンと炭素数3以上の1種以上のα−オレフィンとの共重合体であり、エチレン由来の構成単位を50重量%より多く含有する。α−オレフィンは、炭素数4〜12のα−オレフィンであることが好ましい。
【0009】
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、4−メチル1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセンなどが挙げられ、1−ブテン及び1−ヘキセンが好ましい。特に、成形品の機械強度の観点から、エチレン−1−ヘキセン共重合体が好ましい。
【0010】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の分子量分布は5以上であり、好ましくは6以上であり、より好ましくは7以上である。分子量分布が小さすぎると、得られる成形品の気泡が粗大となったり、破泡により成形品の表面に穴が空いたりして成形品の外観が悪化する。分子量分布は、好ましくは30以下であり、より好ましくは25以下であり、特に好ましくは20以下である。分子量分布が大きすぎると押出発泡成形品にコルゲーションが発生しやすい。
【0011】
本発明における「分子量分布」は、数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比を意味する。MnとMwとは、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により求められる。
【0012】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の密度は、好ましくは890〜940kg/m3であり、より好ましくは895〜935kg/m3であり、さらに好ましくは900〜930kg/m3である。密度が低すぎると、得られる成形品の剛性が低下する。また、密度が高すぎると、成形品の機械強度が低下する。
【0013】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体のスウェル比(以下、SRと略記することがある)は1.15〜1.45であり、好ましくは1.15〜1.40であり、より好ましくは1.20〜1.35である。SRが1.15未満であると、得られる成形品の気泡が粗大となったり、破泡により成形品の表面に穴が空いたりして成形品の外観が悪化する。SRが1.45を超えると、コルゲーションが発生して成形品の外観が悪化する。
【0014】
本発明におけるスウェル比は、温度150℃、せん断速度60.8s-1で測定した値であり、より詳細には以下のようにして測定される。測定には、直径1mm、長さ40mm、流入角度90度のキャピラリーを有するキャピラリーレオメータ(例えば、東洋精機株式会社製のCAPIROGRAPH−IB)が用いられる。JIS K 7199に従って温度150℃、せん断速度60.8s-1において、溶融状態のエチレン−α−オレフィン共重合体を連続押出しする。押し出されたストランドをキャピラリーの出口において切断し、除去する。引き続き押出しを行い、新たに押し出されたストランドの長さが20mm以上になった時点で、キャピラリーの出口から15mm下の位置でのストランドの直径を測定する。前記直径の測定にはレーザー変位計を用いる。
SRは下式により算出される。
SR=D/D0
ここで、Dはストランドの直径(mm)を表し、D0はキャピラリーの直径(mm)を表す。
【0015】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、流動の活性化エネルギーが40kJ/mol以上であることが好ましく、50kJ/mol以上であることがより好ましく、55kJ/mol以上であることがさらに好ましく、60kJ/mol以上であることが特に好ましい。流動の活性化エネルギーが低すぎると、成形機から押し出された溶融状態の押出物の冷却速度が高くなる。このため、気泡状態が不均一となり、得られる成形品の外観が悪化するとともに、機械強度が低下する。
【0016】
成形品の外観と機械強度の観点から、エチレン−α−オレフィン共重合体の流動の活性化エネルギーは、100kJ/mol以下であることが好ましく、より好ましくは90kJ/mol以下である。
【0017】
[動的粘弾性の測定]
動的粘弾性(貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”))の測定には、粘弾性測定装置を用いる。動的粘弾性の代表的な測定条件は以下の通りである。
(1)測定部形状:パラレルプレート(直径25mm、プレート間隔:約1mm)
(2)せん断歪み:5%
(3)角周波数:0.1〜100rad/秒の範囲内の所定の値
(4)温度:130℃、150℃、170℃、190℃(4点)
測定するサンプルには、予め酸化防止剤を適量(例えば200〜10000ppm)配合し、測定はすべて窒素雰囲気下で実施する。
【0018】
[シフトファクターの算出]
シフトファクター(aT)の算出手順を以下に示す。
130℃(403K)を基準温度(T0)として、式(1)および(2)に従いG’(Pa)およびG”(Pa)のマスターカーブを作成する。
G’(ω、T)=bTG’(aTω、T0) (1)
G”(ω、T)=bTG”(aTω、T0) (2)
ここで、ωは角周波数(rad/秒)を、Tは各測定温度(K)を、T0は基準温度を、aTは角周波数方向のシフト量を、bTはG’、G”軸方向のシフト量をそれぞれ表す。
【0019】
[流動の活性化エネルギーの算出]
流動の活性化エネルギー(Ea)は以下の手順で求める。
1/Tに対してlog(aT)をプロットする。このプロットについて、最小自乗法による直線近似をして直線の傾きを算出する。得られた傾きをEa/2.303RとみなしてEa(kJ/mol)を算出する(流動の活性化エネルギーについては、例えば、Polymer Engineering and Science、第8巻、235ページ(1968年)を参照することができる)。
【0020】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体は、190℃におけるメルトフローレート(以下、MFRと記す)が0.01〜5g/10分であることが好ましく、0.05〜4g/10分であることがより好ましく、0.1〜3g/10分であることがさらに好ましい。MFRは、JIS K 6760に従って求められる値である。MFRが低すぎると、成形品の表面が荒れたり、十分な発泡倍率が得られないことがある。MFRが高すぎると、成形品中の気泡が粗大となったり、成形体の表面に穴が空いたりする。
【0021】
本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体の製造方法としては、下記助触媒担体(A)、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)および有機アルミニウム化合物(C)を接触させて得られるメタロセン系触媒の存在下、エチレンと炭素数3以上のα−オレフィンとを共重合する方法が挙げられる。
【0022】
上記の助触媒担体(A)は、(a)ジエチル亜鉛、(b)フッ素化フェノール、(c)水、(d)シリカおよび(e)トリメチルジシラザン(((CH33Si)2NH)を接触させて得られる担体である。
【0023】
上記成分(a)、(b)及び(c)の使用量には特に制限はないが、各成分の使用量のモル比率を成分(a):成分(b):成分(c)=1:y:zとすると、yおよびzが下記の式を満足することが好ましい。
|2−y−2z|≦1
上記の式において、yは、好ましくは0.01〜1.99の数であり、より好ましくは0.10〜1.80の数であり、さらに好ましくは0.20〜1.50の数であり、最も好ましくは0.30〜1.00の数である。
【0024】
成分(a)に対して使用する成分(d)の量としては、成分(a),(b),(c),(d)及び(e)の接触により得られる粒子に含まれる亜鉛原子のモル数が、該粒子1gあたり0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。成分(d)に対して使用する成分(e)の量としては、成分(d)1gあたり成分(e)0.1mmol以上となる量であることが好ましく、0.5〜20mmolとなる量であることがより好ましい。
【0025】
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)として、好ましくはラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジクロライド、ラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシドである。
【0026】
有機アルミニウム化合物(C)として、好ましくはトリイソブチルアルミニウム、トリノルマルオクチルアルミニウムである。
【0027】
架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)の使用量は、助触媒担体(A)1gあたり、好ましくは5×10-6〜5×10-4molである。また有機アルミニウム化合物(C)の使用量として、好ましくは、架橋型ビスインデニルジルコニウム錯体(B)のジルコニウム原子1モルあたり、有機アルミニウム化合物(C)のアルミニウム原子が1〜2000モルとなる量である。
【0028】
エチレン−α−オレフィン共重合体を製造するための重合方法として、好ましくは、エチレン−α−オレフィン共重合体の粒子の形成を伴う連続重合方法であり、例えば、連続気相重合、連続スラリー重合、連続バルク重合であり、好ましくは、連続気相重合である。気相重合反応装置としては、通常、流動層型反応槽を有する装置であり、好ましくは、拡大部を有する流動層型反応槽を有する装置である。反応槽内に攪拌翼が設置されていてもよい。
【0029】
メタロセン系触媒の各成分を重合反応槽に供給する方法としては、通常、窒素、アルゴン等の不活性ガス、水素、エチレン等をキャリアとして用いて、水分のない状態で供給する方法、各成分を溶液またはスラリー状態で供給する方法が用いられる。触媒の各成分は、個別に供給してもよく、任意の成分を任意の順序にあらかじめ接触させて供給してもよい。
また、本重合を実施する前に、予備重合を実施し、予備重合された予備重合触媒成分を本重合用の触媒成分または触媒として使用することが好ましい。
【0030】
重合温度としては、通常、生成するエチレン−α−オレフィン共重合体が溶融する温度未満であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは30〜100℃である。また、共重合体の溶融流動性を調節する目的で、水素を分子量調節剤として添加してもよい。そして、混合ガス中に不活性ガスを共存させてもよい。
【0031】
押出発泡成形品製造時に用いる発泡剤は特に限定されるものではなく、公知の物理発泡剤や化学発泡剤が使用できる。複数の発泡剤を併用してもよい。
【0032】
物理発泡剤としては、空気、酸素、窒素、二酸化炭素、エタン、プロパン、n−ブタン、イソブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、エチレン、プロピレン、水、石油エーテル、塩化メチル、塩化エチル、モノクロルトリフルオルメタン、ジクロルジフルオルメタン、ジクロルテトラフルオルエタン等が挙げられる。これらの中でも二酸化炭素または窒素を用いることが経済性、安全性の観点から好ましい。
【0033】
化学発泡剤としては、炭酸アンモニウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、亜硝酸アンモニウム、水素化ホウ素ナトリウム、無水クエン酸モノソーダ等の無機系発泡剤;アゾジカルボンアミド、アゾジカルボン酸バリウム、アゾビスブチロニトリル、ニトロジグアニジン、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミン、N,N’−ジメチル−N,N’−ジニトロソテレフタルアミド、p−トルエンスルホニルヒドラジド、p-トルエンスルホニルセミカルバジド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、アゾビスイソブチロニトリル、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルセミカルバジッド、5−フェニルテトラゾール、トリヒドラジノトリアジン、ヒドラゾジカルボンアミド等の有機系発泡剤等が挙げられる。これらの中でもアゾジカルボンアミド、炭酸水素ナトリウム、p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドを用いることが経済性、安全面の観点から好ましい。成形温度範囲が広いことや、気泡が微細な押出発泡成形品が得られることから、アゾジカルボンアミドおよび炭酸水素ナトリウムを含有する発泡剤を用いることが特に好ましい。
【0034】
化学発泡剤を用いる場合、通常は分解温度が140〜180℃である化学発泡剤が用いられる。分解温度が180℃より高い化学発泡剤を使用する場合には、発泡助剤を併用することにより分解温度を180℃以下に下げ、使用することが好ましい。発泡助剤としては、酸化亜鉛、酸化鉛等の金属酸化物;炭酸亜鉛等の金属炭酸塩;塩化亜鉛等の金属塩化物;尿素;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸鉛、二塩基製ステアリン酸鉛、ラウリン酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸亜鉛、二塩基性フタル酸鉛等の金属石鹸;ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジマレート等の有機錫化合物;三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜リン酸鉛、塩基性亜硫酸鉛等の無機塩類;ジブチル錫ジラウレート系、ジブチル錫ジマレート系、カルシウム−亜鉛系、バリウム−亜鉛系等のポリ塩化ビニル用複合安定剤等が挙げられる。発泡助剤の使用量は、発泡剤と発泡助剤との合計を100重量%としたとき、通常0.1〜30重量%であり、好ましくは1〜20重量%である。
【0035】
化学発泡剤を用いる場合、通常は前記化学発泡剤、発泡助剤および樹脂から構成されるマスターバッチが用いられる。マスターバッチに用いられる樹脂の種類は、本発明の効果が阻害されなければ、特に限定されないが、発明の成形品を構成するエチレン−α−オレフィン共重合体であることが好ましい。マスターバッチに含有される化学発泡剤および発泡助剤の合計量の樹脂に対する配合比率は、通常5〜90重量%である。
【0036】
物理発泡剤を用いる場合には、発泡核剤を併用することによって、より微細な気泡を有する成形品を得ることができる。発泡核剤としては、タルク、シリカ、マイカ、ゼオライト、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、アルミノシリケート、クレー、石英紛、珪藻土等の無機充填剤;ポリメチルメタアクリレート、ポリスチレンからなる粒径100μm以下のビーズ;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、安息香酸ナトリウム、安息香酸カルシウム、安息香酸アルミニウム、酸化マグネシウム等の金属塩を例示することができ、これらの二種以上を組み合わせて用いてもよい。また、物理発泡剤を使用する場合には、発泡核剤として前記の化学発泡剤を使用することもできる。化学発泡剤を発泡核剤として用いる場合は、分解温度が低い化学発泡剤を用いることが好ましい。例えば、アゾジカルボンアミド、p,p’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド、N,N−ジニトロソペンタメチレンテトラミンなどを主成分とする化学発泡剤が好ましい。また、複数の化学発泡剤を併用しても構わない。
【0037】
発泡剤の添加量は用いる発泡剤の種類や、製造する成形品の発泡倍率によって適宜設定されるが、成形品を構成する樹脂100重量部に対して通常0.1〜10重量部である。
【0038】
本発明においては、押出発泡成形時に架橋剤を添加してもよい。架橋剤として、例えばジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ベンゾイルパーオキサイド、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、過安息香酸t−ブチル、イソブチルパーオキサイド、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等が挙げられる。
【0039】
架橋剤を使用する場合は、架橋助剤を併用してもよい。架橋助剤としてはトリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン、グリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等を挙げられる。
【0040】
架橋剤を使用する場合の添加量は、成形品を構成する樹脂100重量部に対して通常0.01〜1.0重量部であり、好ましくは0.03〜0.5重量部であり、より好ましくは0.05〜0.3重量部である。架橋剤の使用量が少なすぎると気泡径が不均一になったり、微細な気泡が得られない傾向があり、架橋剤の使用量が多すぎると流動性が悪くなり成形が困難となる傾向がある。架橋助剤を用いる場合には、通常架橋剤の3〜10倍程度(重量基準)である。
【0041】
押出発泡成形時には、本発明の効果が阻害されない程度に前記エチレン−α−オレフィン共重合体以外の樹脂や添加剤を添加してもよい。
【0042】
押出発泡成形時に添加してもよい本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体以外の樹脂としては、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等のエチレン単独重合体や、プロピレン由来の構成単位を50重量%より多く含む、エチレン−プロピレン共重合体や、エチレン−プロピレン−ブテン−1共重合体などの共重合体、本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体に該当しない共重合体などが挙げられる。本発明に用いるエチレン−α−オレフィン共重合体以外の樹脂の含有量は、成形品を構成する樹脂重量を100%としたとき、通常10重量%以下である。
【0043】
添加剤としては公知の添加剤を用いることができ、ガラス繊維、炭素繊維等の無機充填剤;染料、顔料等の着色剤;中和剤、酸化防止剤、熱安定剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、分散剤、難燃剤、抗菌剤、蛍光増白剤等を挙げることができる。
【0044】
本発明の押出発泡成形品の製造において、本発明のエチレン−α−オレフィン共重合体とともに、他の樹脂や添加剤を用いる場合には、予めこれらを混合して樹脂組成物として用いることができる。樹脂組成物の製造には、公知の混合機や混練機が用いられる。また、エチレン−α−オレフィン共重合体と他の樹脂や添加剤を、計量機を用いて計量しながら、個別に押出発泡成形機に供給することもできる。
【0045】
本発明の押出発泡成形品の製造方法は特に限定されるものではく、エチレン−α−オレフィン共重合体、またはこれを含有する樹脂組成物を、単軸スクリュウ押出機、二軸スクリュウ押出機等の公知の成形機にて溶融混練し、成形機の先端に取り付けられたダイから大気中に押し出す方法である。ダイとしては、スリット型ダイ、サーキュラースリット型ダイ、円型ダイ、異型ダイなどの種々のタイプのダイの中から目的に応じて選択できる。成形機とダイとの間には、押出量安定化のためにギアポンプを設けてもよい。また、樹脂と発泡剤を混練する目的でスタティックミキサーなどを、押出機とダイの間に設置してもよい。物理発泡剤を用いる場合には、エチレン−α−オレフィン共重合体または樹脂組成物を溶融した後に、成形機の物理発泡剤供給口から物理発泡剤を注入する。
【0046】
押出発泡成形において、押出機の温度は通常100〜260℃であり、ダイの温度は通常90〜240℃である。ダイから押出された直後の溶融状態の押出成形品は発泡している。該溶融状態の押出発泡成形品を冷却ロール、冷却マンドレル、冷却エア、冷却水等により冷却することにより、最終製品としての押出発泡成形品を得ることができる。
【0047】
本発明の成形品の発泡倍率は特に限定されるものではなく、通常1.2〜50倍である。本発明の成形品は、発泡倍率が高くても外観が良好である。また成形品の厚み、形状も特に限定されるものではない。
本発明の成形品に必要に応じて1層以上の層を積層し、多層成形品とすることができる。このような多層成形品は、多層押出成形により製造することができ、また、押出発泡成形により得られた本発明の成形品と追加の層とをドライラミネート法や熱融着法により積層することにより製造することもできる。
【0048】
本発明の成形品にエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のガスバリア性に優れた樹脂からなる層を設けることにより、ガスバリア性に優れた多層成形品とすることができ、このような多層成形品は、食品容器等に好適に用いられる。また、木粉充填未発泡樹脂からなる最外層を有する多層成形品とすることもできる。また、未発泡ダクトや未発泡パイプの外側に本発明の押出発泡成形品を被覆成形することにより、ダクトやパイプに断熱性、結露防止機能を付加することもできる。さらに、鋼管の周囲に、本発明の押出発泡成形品を被覆成形することにより、鋼管の衝撃強度を向上させることができる。また、電線、光ファイバー等の周囲に本発明の押出発泡成形品を成形することにより、電線や光ファイバーの絶縁性を向上させることができる。
【0049】
本発明の成形品は、床下地材、断熱材、断熱防水材、緩衝材、折板屋根材、養生材、目地材、畳芯材等に例示される建築資材用途、インナーパネル、ドア、天井等の断熱緩衝材、シートの芯材、ホースの断熱緩衝材等に例示される自動車用途、精密機器梱包材、玩具、マット、シート、保冷箱、保温箱、書籍カバー、テープ基材、ヘルメット緩衝材、スポーツ用プロテクター芯材、浮板等に例示される雑貨用途、トレー、ネット、フルーツパック、パッキン等に例示される食品包装用途、パッド、保護具等に例示される医療用途などの種々の用途に好適に使用することができる。
【実施例】
【0050】
以下、本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明が実施例によって限定されるものでない。
実施例および比較例で用いた評価方法は以下のとおりである。
【0051】
1.メルトフローレート(MFR)
メルトフローレート(単位:g/10分)は、JIS K 6760に従って温度190℃、荷重21.2Nで測定した。
【0052】
2.密度(d)
密度(単位;kg/m3)は、JIS K6760−1981に従って測定した。
【0053】
3.分子量分布(MWD)
分子量分布は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定した。
[測定条件]
装置: Waters社製150C−CV型
カラム: 昭和電工社製Shodex GPC AT−806MS
検出器:示差屈折計
カラム温度:140℃
溶媒:o−ジクロロベンゼン
溶媒流量:1ml/分
試料溶液注入量:400μl
o−ジクロロベンゼンに試料を加え、140℃にて2時間加熱して試料濃度0.1%の溶液を調製した。この溶液(400μl)をGPC装置のカラム(140℃)に注入した。カラムより溶出した成分を示差屈折計で検出し、クロマトグラムを得た。得られたクロマトグラムと、単分散標準ポリスチレン(東ソー株式会社製;分子量=500〜6,000,000)で作成したGPC装置の校正曲線とから、試料の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)を求めた。得られたMwとMnとから試料の分子量分布(Mw/Mn)を算出した。(分子量分布をMWDと略記することがある)
【0054】
5.スウェル比(SR)
直径1mm、長さ40mm、流入角度90度のキャピラリーを有するキャピラリー型粘度計(商品名:CAPIROGRAPH−IB;東洋精機株式会社製)を用いて、JIS K7199に従い、温度150℃、せん断速度60.8s-1で試料を連続押出した。押出されたストランドをキャピラリーの出口において切断、除去した。引き続き押出しを行い、新たに押し出されたストランドの長さが20mm程度になった時点で、キャピラリーの出口から15mm下の位置でのストランドの直径を測定した。前記直径の測定にはレーザー変位計を用いた。ストランドの直径をキャピラリーの直径で除した値をスウェル比(SR)とした。
【0055】
6.押出発泡成形品の厚さ
押出発泡成形品の厚さ(単位:mm)は、(株)ミツトヨ製のデジマチック標準外側マイクロメーターを用いて測定した。
【0056】
7.押出発泡成形品の発泡倍率
押出発泡成形品の発泡倍率は、密度計(EW−200SG型;A&D株式会社製)を用
いて、水中置換法により23℃で測定した。
【0057】
8.押出発泡成形品の外観
押出発泡成形品の表面は、目視により、以下に示す基準による3段階で評価した。
(評価基準)
A:コルゲーションが発生せず光沢が優れる。
B:ややコルゲーションが発生した。
C:コルゲーションが発生したり、表面が荒れたり穴が空いたりして外観に劣る。
【0058】
9.押出発泡成形品の引裂強度
ASTM D1922−67に規定された方法(A法)に従って、後述する方法で得られた押出発泡シートの引取り方向へのエルメンドルフ引裂強度(単位:kg/cm)を測定した。
【0059】
10.流動の活性化エネルギーEa
[動的粘弾性の測定]
動的粘弾性(貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G”))の測定には、粘弾性測定装置(Rheometrics社製RMS−800型)を用いた。測定条件は以下の条件で、窒素雰囲気下で行った。
(1)測定部形状:パラレルプレート(直径25mm、プレート間隔:約1mm)
(2)せん断歪み:5%
(3)角周波数:0.1、0.15849、0.2512、0.39812、0.63098、1.00003、1.58496、2.51202、3.98132、6.31006、10.0007、15.8501、25.1206、39.8135、63.1006、100rad/秒
(4)温度:130℃、150℃、170℃、190℃(4点)
【0060】
[シフトファクターの算出]
シフトファクター(aT)の算出手順を以下に示す。
130℃(403K)を基準温度(T0)として、式(1)および(2)に従いG’(Pa)およびG”(Pa)のマスターカーブを作成した。
G’(ω、T)=bTG’(aTω、T0) (1)
G”(ω、T)=bTG”(aTω、T0) (2)
ここで、ωは角周波数(rad/秒)を、Tは各測定温度(K)を、T0は基準温度を、aTは角周波数方向のシフト量を、bTはG’、G”軸方向のシフト量をそれぞれ表す。
【0061】
[活性化エネルギーの算出]
流動の活性化エネルギー(Ea)は以下の手順で求めた。
1/Tに対してlog(aT)をプロットした。このプロットについて、最小自乗法による直線近似をして直線の傾きを算出した。得られた傾きをEa/2.303RとみなしてEa(kJ/mol)を算出した。
【0062】
実施例および比較例で用いた重合体は以下のとおりである。各重合体の物性を表1に示す。
1.エチレン−1−ヘキセン共重合体
【0063】
2.エチレン−1−オクテン共重合体
メルトフローレート(MFR)が1g/10分であり密度(d)が870kg/m3である市販のエチレン−1−オクテン共重合体である。
【0064】
3.高圧法低密度ポリエチレン
住友化学(株)製の商品名がスミカセン F102−0である高圧法低密度ポリエチレン。このポリエチレンのメルトフローレート(MFR)は0.3g/10分、密度(d)は922kg/m3である。
【0065】
4.スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体
(株)クラレ製の商品名がSEPTON 2104であるスチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体。この共重合体のメルトフローレートは0.8g/10分、密度は970kg/m3である。
【0066】
[実施例1]
(エチレン−1−ヘキセン共重合体の製造)
下記方法によりエチレンおよび1−ヘキセンの共重合を行い、エチレン−1−ヘキセン共重合体を得た。
【0067】
[触媒成分の調製]
助触媒担体(A)の調製
窒素置換した撹拌機を備えた反応器に、窒素流通下で300℃において加熱処理したシリカ(商品名:Sylopol948;デビソン社製;平均粒子径=55μm;細孔容量=1.67ml/g;比表面積=325m2/g)2.8kgとトルエン24kgとを入れて、撹拌した。5℃に冷却した後、1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジシラザン0.91kgとトルエン1.43kgと混合溶液を反応器の温度を5℃に保ちながら33分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、95℃で3時間攪拌した後、ろ過した。得られた固体生成物をトルエン21kgで6回洗浄した。その後、トルエンを6.9kg加えてスラリーとし、一晩静置した。
【0068】
上記で得られたスラリーに、ジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50wt%)2.05kgとヘキサン1.3kgとを投入し、攪拌した。その後、5℃に冷却した後、ペンタフルオロフェノール0.77kgとトルエン1.17kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら61分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、反応器の温度を5℃に保ちながら水0.11kgを1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、55℃で2時間攪拌した。その後、室温にてジエチル亜鉛のヘキサン溶液(ジエチル亜鉛濃度:50wt%)1.4kgとヘキサン0.8kgとを投入した。5℃に冷却した後、3,4,5−トリフルオロフェノール0.42kgとトルエン0.77kgとの混合溶液を、反応器の温度を5℃に保ちながら60分間で滴下した。滴下終了後、5℃で1時間、40℃で1時間攪拌した。その後、反応器の温度を5℃に保ちながら水0.077kgを1.5時間で滴下した。滴下終了後、5℃で1.5時間、40℃で2時間、更に、80℃で2時間攪拌した。攪拌を停止し残量が16Lになるまで上澄み液を抜き出し、トルエン11.6kgを投入し、攪拌した。95℃に昇温し、4時間攪拌した。静置して固体成分を沈降させ、沈降した固体成分の層(下層)とスラリー部分(上層)との界面が現れた時点でスラリー部分(上層)を取り除き、次いで残りの液成分(下層)をろ過した。得られた固体生成物をトルエン20.8kgで4回、ヘキサン24リットルで3回洗浄した。その後、乾燥することにより、固体成分(以下、助触媒担体(A)と称する。)を得た。
【0069】
[予備重合触媒成分の調製]
予め窒素置換した内容積210リットルの撹拌機付きオートクレーブに、上記助触媒担体(A)0.53kgを投入し、オートクレーブ内を25℃、大気圧にして水素3リットルと、ブテン−1 20gとブタン80リットルとを仕込んだ後、オートクレーブを30℃まで昇温した。さらにエチレンをオートクレーブ内のガス相圧力で0.03MPa分仕込み、系内が安定した後、トリイソブチルアルミニウム159mmolとラセミ−エチレンビス(1−インデニル)ジルコニウムジフェノキシド53mmolを投入して重合を開始した。31℃に昇温するとともに、エチレンと水素を連続で供給しながらさらに51℃まで昇温し、合計で4時間の予備重合を実施した。重合終了後、エチレン、ブタン、水素などをパージして残った固体を室温にて真空乾燥した。こうして、上記助触媒担体(A)1g当り15gのポリエチレンが予備重合された予備重合触媒成分を得た。
【0070】
[重合]
上記で得た予備重合触媒成分を用い、連続式流動床気相重合装置でエチレンと1−ヘキセンの共重合を実施し、エチレン−1−ヘキセン共重合体パウダーを得た。重合条件としては、重合温度を75℃、重合圧力を2MPa、エチレンに対する水素モル比を0.9%、エチレンに対する1−ヘキセンモル比を0.9%とした。重合中はガス組成を一定に維持するためにエチレン、1−ヘキセン及び水素を連続的に供給した。また、上記予備重合済触媒成分とトリイソブチルアルミニウムとを連続的に供給し、流動床の総パウダー重量を一定(80kg)に維持した。平均重合時間は4時間であった。
【0071】
[混練]
得られたエチレン−1−ヘキセン共重合パウダーに酸化防止剤(住友化学(株)製スミライザーGPを750ppm添加、混合した後、押出機(商品名:LCM50;神戸製鋼所社製)を用いて、フィード速度50kg/時、スクリュウ回転数450rpm、ゲート開度50%、サクション圧力0.1MPa、樹脂温度200〜230℃の条件で造粒することによりエチレン−1−ヘキセン共重合体ペレットを得た。
【0072】
[押出発泡成形品の製造]
エチレン−1−ヘキセン共重合体ペレット100重量部と、アゾジカルボン酸系化学発泡剤(商品名:セルマイク MB2043;三協化成(株)製)1重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料を、直径が50mm、長さが2.1mで、3箇所にミキシングセグメントを有するスクリュウを備えたシート成形機に供給し、スクリュウ回転数が60rpm、混練部の温度が150〜210℃、ダイ部の温度が150℃の条件で押し出した。押出量は18kg/時であった。押出機の中間部には注入バルブが設置されており、該バルブから10MPaに加圧した炭酸ガスを0.4重量部となるように注入量を調整して、連続注入した。押出機の先端には、外径が80mm、内径が79.2mm、リップのクリアランスが0.4mmのサーキュラーダイが設置してあり、該サーキュラーダイから溶融状態の発泡樹脂をサーキュラー形状に押出した。この溶融状態の発泡樹脂を温度25℃の冷却水を循環させた冷却マンドレルにより冷却して固化させ、ピンチロールにより引き取り、厚さ0.8mm、発泡倍率2.1倍の押出発泡成形シートを得た。この押出発泡成形シートにはコルゲーションが発生せず、シートは外観に優れていた。また、このシートは、引裂強度は38kg/cmであり、機械強度にも優れていた。結果を表2に示す。
【0073】
[実施例2]
炭酸ガスの注入量を0.5重量部となるように調整して連続注入した以外は、実施例1と同一の方法で押出発泡成形シートを製造した。得られた結果を表2に示す。この押出発泡成形シートにはコルゲーションが発生せず、シートは外観に優れていた。また、このシートは、引裂強度は32kg/cmであり、機械強度にも優れていた。
【0074】
[比較例1]
エチレン−1−ヘキセン共重合体の代わりに高圧法低密度ポリエチレン(スミカセン F102−0)を用いた以外は、実施例1と同一の方法で押出発泡成形シートを製造した。得られた結果を表2に示す。この押出発泡成形シートにはコルゲーションが発生し、外観が優れるシートではなかった。また、引裂強度は20kg/cmであり、機械強度に劣っていた。
【0075】
[比較例2]
エチレン−1−ヘキセン共重合体の代わりに市販のエチレン−1−オクテン共重合体を用いた以外は、実施例1と同一の方法で押出発泡成形シートを製造した。得られた結果を表2に示す。この押出発泡成形シートにはシャークスキンが発生し、外観が優れるシートではなかった。また、このシートは、引裂強度は22kg/cmであり、機械強度に劣っていた。
【0076】
[比較例3]
市販のエチレン−1−オクテン共重合体60重量部と、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体水添物(SEPTON 2104)30重量部と、高圧法低密度ポリエチレン(スミカセン F102−0)10重量部、および化学発泡剤(商品名:セルマイク MB2043;三協化成(株)製)アゾジカルボン酸系1重量部とをタンブルミキサーにて1分間混合した。この混合原料を実施例1と同一のシート成形機に供給し、スクリュウ回転数が60rpm、混練部の温度が150〜210℃、ダイ部の温度が180℃の条件で押し出した。押出量は18kg/時であった。サーキュラーダイのリップのクリアランスが0.4mmの条件で、溶融状態の発泡樹脂をサーキュラー形状に押出した。この溶融状態の発泡樹脂を温度25℃の冷却水を循環させた冷却マンドレルにより冷却、固化させ、ピンチロールにより引き取り、厚さ0.4mmの押出発泡成形シートを製造した。この押出発泡成形シートの発泡倍率は1.1倍と低く、シート表面にはシャークスキンが発生し外観に劣るものであった。また、引裂強度は14kg/cmであり、機械強度に劣っていた。
【0077】
[比較例4]
押出発泡成形において、10MPaに加圧した炭酸ガスを注入量が0.4重量部となるように、注入バルブから連続注入した以外は、比較例3と同様にして押出発泡成形シートを製造した。この押出発泡成形シートは厚さが0.72mmであり、発泡倍率は1.6倍であったが、シート表面に穴が空き外観に劣るものであった。また、シートの引裂強度は13kg/cmであり、機械強度に劣っていた。
【0078】
【表1】

【0079】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子量分布が5以上、20以下であり、スウェル比が1.15〜1.45であり、流動の活性化エネルギーが60kJ/mol以上、90kJ/mol以下であり、メルトフローレートが0.05〜4g/10分であるエチレン−α−オレフィン共重合体。
【請求項2】
密度が895〜935kg/mである請求項1に記載のエチレン−α−オレフィン共重合体。
【請求項3】
請求項1または2に記載のエチレン−α−オレフィン共重合体を成形して得られる押出発泡成形品。

【公開番号】特開2009−256690(P2009−256690A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186380(P2009−186380)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【分割の表示】特願2005−31362(P2005−31362)の分割
【原出願日】平成17年2月8日(2005.2.8)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】