説明

エチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法

【課題】連続多段重合によるエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、強度と伸びのバランスに優れるエチレン−α−オレフィン系共重合体が得られる製造方法の提供。
【解決手段】2槽以上の重合反応器が直列に連結された重合反応装置を用いて、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを溶媒中で連続重合するエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、流れ状態が完全混合槽列モデルで1.5槽以上である重合条件で、重合体成分を1槽の重合反応器で製造する第1重合工程と流れ状態が完全混合槽列モデルで1.5槽未満であり、第1重合工程での完全混合槽列モデルでの槽数(n1)と第2重合工程での完全混合槽列モデルでの槽数(n2)との比(n1/n2)が1.5以上である重合条件で、重合体成分を1槽の重合反応器で製造する第2重合工程を有するエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エチレン−α−オレフィン−共役ジエン共重合体などのエチレン−α−オレフィン系共重合体は、自動車用材料、工業機器用材料、OA機器用材料、建築用材料などに幅広く用いられている。このエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法としては、エチレン−α−オレフィン系共重合体を、各用途にあわせて所望の物性の重合体とするため、2種類のエチレン−α−オレフィン系共重合体を夫々製造し、次にそれらを溶融混合する方法が知られている。
【0003】
他の製造方法としては、2槽以上の重合反応器が直列に連結された多段重合反応装置を用いて、エチレン−α−オレフィン系共重合体を連続多段重合により製造する方法が知られている。例えば、特許文献1には、同容積の2つの重合反応器を連結した多段重合反応装置を用い、第1重合反応器と第2重合反応器とで重合反応器に供給する水素ガスとコモノマーの量を変更する以外は、第1重合反応器と第2重合反応器とを同条件で、エチレンとプロピレンとジシクロペンタジエンとを多段で共重合することが記載されている。引用文献2には、同容積の2つの重合反応器を連結した多段重合反応装置を用い、水素ガスとコモノマーの量に加え、重合温度を第1重合反応器と第2重合反応器とで変更して、エチレンとプロピレンとを多段で共重合することが記載され、また、連続多段重合による製造方法は、経済的に有利であるとされている。
【0004】
【特許文献1】特開昭55−36251号公報
【特許文献2】特表2002−505357号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の連続多段重合によるエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造では、得られるエチレン−α−オレフィン系共重合体は、強度あるいは伸びが低いことがあり、強度と伸びのバランスにおいて十分満足のいくものではなかった。
かかる状況のもと、本発明が解決しようとする課題は、連続多段重合によるエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、強度と伸びのバランスに優れるエチレン−α−オレフィン系共重合体が得られる製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、2槽以上の重合反応器が直列に連結された重合反応装置を用いて、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを溶媒中で連続重合するエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、下記第1重合工程および第2重合工程を有するエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法にかかるものである。
第1重合工程:重合温度が−20〜200℃であり、重合圧力が0.1〜10MPaであり、流れ状態が完全混合槽列モデルで1.5槽以上である重合条件で、100℃のムーニー粘度が10〜300であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量が45〜80重量%(但し、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。)である重合体成分を1槽の重合反応器で製造する工程
第2重合工程:重合温度が−20〜200℃であり、重合圧力が0.1〜10MPaであり、流れ状態が完全混合槽列モデルで1.5槽未満であり、第1重合工程での完全混合槽列モデルでの槽数(n1)と第2重合工程での完全混合槽列モデルでの槽数(n2)との比(n1/n2)が1.5以上である重合条件で、100℃のムーニー粘度が10〜300であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量が45〜80重量%(但し、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。)である重合体成分を1槽の重合反応器で製造する工程
【発明の効果】
【0007】
本発明により、強度と伸びのバランスに優れるエチレン−α−オレフィン系共重合体が得られる連続多段重合によるエチレン−α−オレフィン系共重合体製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
2槽以上の重合反応器が直列に連結された重合反応装置を用いて、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを溶媒中で連続重合するものである。
【0009】
オレフィン重合触媒としては、遷移金属化合物と活性化助触媒とを接触処理してなる触媒が用いられ、例えば、遷移金属化合物としてバナジウム化合物を、活性化助触媒として有機アルミニウム化合物を用いた触媒;遷移金属化合物としてシクロペンタジエン型アニオン骨格を有する配位子を有する遷移金属化合物を、活性化助触媒として有機アルミニウムオキシ化合物、ホウ素化合物、有機アルミニウム化合物などを用いた触媒などをあげることができる。
【0010】
バナジウム化合物としては、一般式VO(OR)n3-n(但し、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子、nは0〜3である数を示す。)で示される化合物をあげることができ、より具体的には、VOCl3、VO(OCH3)Cl2、VO(OCH32Cl、VO(OCH33、VO(OC25)Cl2、VO(OC252Cl、VO(OC253、VO(OC37)Cl2、VO(OC372Cl、VO(OC373あるいはこれらの混合物を例示することができる。
【0011】
シクロペンタジエン型アニオン骨格を有する配位子を有する遷移金属化合物としては、一般式R1k2l3m4n1(ただし、M1は、元素の周期律表の第4属の遷移金属化合物(ジルコニウム、チタン、ハフニウム等)であり、R1はシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する配位子であり、R2,R3およびR4は、それぞれシクロペンタジエン形アニオン骨格を有する配位子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、ハロゲン原子または水素原子であり、kおよびlは1以上の整数であり、k+l+m+n=4である。)で示されるメタロセン系化合物があげられ、該メタロセン系化合物としては、ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルチタニウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメチルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)チタニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジメチルチタニウム、エチレンビス(インデニル)メチルチタニウムクロリド、エチレンビス(インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジメチルチタニウム、エチレンビス(4−メチル−1−インデニル)チタニウムジクロリド、エチレンビス(2,3−ジメチル−1−インデニル)チタニウムジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジエチルチタニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジメチルジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジクロロジルコニウム、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムモノクロリドモノハイドライド、ビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(インデニル)メチルジルコニウムクロリド、エチレンビス(インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(4,5,6,7−テトラヒドロ−1−インデニル)ジメチルジルコニウム、エチレンビス(4−メチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリド、エチレンビス(2,3−ジメチル−1−インデニル)ジルコニウムジクロリドなどがあげられる。
【0012】
有機アルミニウム化合物としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリノルマルブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリノルマルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルヘキシルアルミニウム、ジイソブチルオクチルアルミニウム、イソブチルジヘキシルアルミニウム、イソブチルジオクチルアルミニウムなどをあげることができる。
【0013】
有機アルミニウムオキシ化合物としては、テトラメチルジアルミノキサン、テトラエチルジアルミノキサン、テトラブチルジアルミノキサン、テトラヘキシルジアルミノキサン、メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、ヘキシルアルミノキサンなどがあげられる。
【0014】
ホウ素化合物としては、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートなどをあげることができる。
【0015】
遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物との接触処理において、有機アルミニウム化合物の接触処理量は、遷移金属原子1molあたり、有機アルミニウム化合物のアルミニウム原子換算として、通常、0.1〜10000molであり、好ましくは5〜2000molであり、より好ましくは10〜1000molである。また、遷移金属化合物と有機アルミニウムオキシ化合物との接触処理において、有機アルミニウムオキシ化合物の接触処理量は、遷移金属原子1molあたり、有機アルミニウムオキシ化合物のアルミニウム原子換算として、通常、0.1〜10000molであり、好ましくは5〜2000molであり、より好ましくは10〜1000molである。遷移金属化合物とホウ素化合物の接触処理において、ホウ素化合物の接触処理量は、遷移金属原子1molあたり、ホウ素化合物のホウ素原子換算として、通常、0.01〜100molであり、好ましくは0.1〜50molであり、より好ましくは0.5〜20molである。
【0016】
α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等の直鎖状オレフィン;3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン等の分岐オレフィンをあげることができる。α−オレフィンは、1種以上用いられ、好ましくは、炭素原子数3〜20のα−オレフィンであり、より好ましくは、プロピレン、1−ブテンであり、特に好ましくはプロピレンである。
【0017】
本発明においては、エチレンとα−オレフィンに加えて、他の共重合可能なオレフィン性モノマーを用いて、共重合をおこなってもよい。該オレフィン性モノマーとしては、ポリエン、ビニル芳香族化合物、ビニル脂環式化合物、環状オレフィンなどをあげることができる。
【0018】
ポリエンとしては、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,5−ヘプタジエン、1,6−ヘプタジエン、1,6−オクタジエン、1,7−オクタジエン、1,7−ノナジエン、1,8−ノナジエン、1,8−デカジエン、1,9−デカジエン、1,12−テトラデカジエン、1,13−テトラデカジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,5−ヘキサジエン、3−エチル−1,4−ヘキサジエン、3−エチル−1,5−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、3,3−ジメチル−1,5−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ビニル−2−ノルボルネン、2,5−ノルボルナジエン、7−メチル−2,5−ノルボルナジエン、7−エチル−2,5−ノルボルナジエン、7−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、7−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ペンチル−2,5−ノルボルナジエン、7−ヘキシル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジメチル−2,5−ノルボルナジエン、7,7−メチルエチル−2,5−ノルボルナジエン、7−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、7−ブロモ−2,5−ノルボルナジエン、7−フルオロ−2,5−ノルボルナジエン、7,7−ジクロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−メチル−2,5−ノルボルナジエン、1−エチル−2,5−ノルボルナジエン、1−プロピル−2,5−ノルボルナジエン、1−ブチル−2,5−ノルボルナジエン、1−クロロ−2,5−ノルボルナジエン、1−ブロモ−2,5−ノルボルナジエンなどをあげることができる。
【0019】
また、ポリエンとしては、下記の構造の化合物もあげることができる。

【0020】
ポリエンは、1種以上用いられ、好ましくは、5−エチリデン−2−ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5−ビニルノルボルネン、ノルボルナジエンである。
【0021】
ビニル芳香族化合物としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどをあげることがでる。また、ビニル脂環式化合物としては、ビニルシクロヘキサン、ビニルシクロヘプタン、ビニルシクロオクタンなどをあげることができる。環状オレフィンとしては、シクロヘキセン、2−ノルボルネンなどをあげることができる。
【0022】
溶媒としては、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン等の脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素等の不活性溶媒を用いることができる。
【0023】
重合反応装置としては、2槽の重合反応器が直列に連結され、第1槽の重合反応器で重合して得られた反応液を続いて第2槽の重合反応器に連続して供給して、エチレンとα−オレフィンと必要に応じて使用される他の共重合可能なオレフィン性モノマーとの重合ができる連続の多段重合反応装置が用いられる。通常、第1槽で第1重合工程が行われ、第2槽で第2重合工程が行われる。重合反応装置に直列に連結された重合反応器の槽数は、通常、3槽以下であり、好ましくは2槽である。
【0024】
第1重合工程では、重合反応器に、溶媒、重合触媒、モノマー(エチレン、α−オレフィン、必要に応じて他の共重合可能なオレフィン性モノマー)を供給し、エチレンとα−オレフィンと必要に応じて他の共重合可能なオレフィン性モノマーとを溶媒中で連続重合して、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位とを有する重合体成分(X)の製造を行う。また、重合触媒は、遷移金属化合物と活性化助触媒とを別々に重合反応器に供給して、重合反応器内で接触処理してもよく、各モノマーは、別々に供給してもよく、予め混合して供給してもよい。
【0025】
第1槽の重合反応器での重合温度(T1)は、−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは20〜120℃である。
【0026】
第1槽の重合反応器での重合圧力(P1)は、0.1〜10MPaであり、好ましくは0.1〜5MPaであり、より好ましくは0.1〜3MPaである。
【0027】
第1槽の重合反応器での流れ状態は、完全混合槽列モデルで1.5槽以上となるものである。該完全混合槽の直列モデルでの槽数(n1)は、好ましくは1.8槽以上であり、より好ましくは2槽以上である。また、該槽数(n1)は、通常、5槽以下である。
【0028】
完全混合槽列モデルでの槽数(n1)は、撹拌翼の形状を変更、重合反応器内に仕切り板を設置、仕切り板の位置や形状の変更等により調整することができ、槽数(n1)を大きくすることは、例えば、多段翼としたり、重合溶液の流れ方向と垂直な面を有する仕切り板を設けたりすることにより達成できる。
【0029】
第1槽の重合反応器での完全混合槽列モデルでの槽数(n1)は、ステップ応答法、インパルス応答法などの公知の方法で求めることができる。
【0030】
第1重合工程において、重合体成分(X)の分子量を調節するために、水素等の分子量調節剤を用いてもよい。
【0031】
第1槽の重合反応器での反応液中の重合体成分の濃度は、通常、3〜25重量%であり、好ましくは7〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%である。
【0032】
第1重合工程で製造する重合体成分(X)のムーニー粘度(ML1)は、10〜300(ML1+4、100℃)であり、好ましくは30〜250であり、より好ましくは30〜200である。該ムーニー粘度はJIS K6395(1997)に従って、100℃にて測定される。
【0033】
第1重合工程で製造する重合体成分(X)のエチレンに基づく単量体単位の含有量(E1)は、45〜80重量%であり、好ましくは50〜75重量%であり、より好ましくは50〜65重量%である。但し、重合体成分(X)中のエチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。該含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0034】
第1重合工程で製造する重合体成分(X)のエチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量は、好ましくは85重量%以上であり、より好ましくは88重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上である。但し、重合体成分(X)中の単量体単位の総含有量を100重量%とする。該含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0035】
第2重合工程では、第1重合工程の重合反応器で重合して得られた反応液、必要に応じ、溶媒、重合触媒、モノマー(エチレン、α−オレフィン、必要に応じて他の共重合可能なオレフィン性モノマー)を、第2重合工程の重合反応器に連続して供給し、エチレンとα−オレフィンと必要に応じて他の共重合可能なオレフィン性モノマーとを溶媒中で連続重合して、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位とを有する重合体成分(Y)の製造を行う。また、重合触媒は、遷移金属化合物と活性化助触媒とを別々に重合反応器に供給して、重合反応器内で接触処理してもよく、各モノマーは、別々に供給してもよく、予め混合して供給してもよい。
【0036】
第2槽での重合温度(T2)は、−20〜200℃であり、好ましくは0〜150℃であり、より好ましくは20〜120℃である。
【0037】
第2槽での重合圧力(P2)は、0.1〜10MPaであり、好ましくは0.1〜5MPaであり、より好ましくは0.1〜3MPaである。
【0038】
第2槽の重合反応器での流れ状態は、完全混合槽列モデルで1.5槽未満となるものである。該完全混合槽の直列モデルでの槽数(n2)は、好ましくは1.2槽以下である。また、該槽数(n2)は、通常、0.5槽以上である。
【0039】
完全混合槽列モデルでの槽数(n2)は、撹拌翼の形状を変更、重合反応器内に仕切り板を設置、仕切り板の位置や形状の変更等により調整することができ、槽数(n2)を小さくすることは、例えば、1枚翼としたり、重合溶液の流れ方向と並行な面を有する仕切り板を設けたりすることにより達成できる。
【0040】
第1重合工程での完全混合槽の直列モデルでの槽数(n1)と第2重合工程での完全混合槽の直列モデルでの槽数(n2)との比(n1/n2)は、1.5以上であり、好ましくは1.8以上である。また、該比(n1/n2)は、通常、10以下であり、好ましくは5以下である。
【0041】
第2槽の重合反応器での完全混合槽列モデルでの槽数(n2)は、第1槽のの槽数(n1)と同様に、ステップ応答法、インパルス応答法などの公知の方法で求めることができる。
【0042】
第2重合工程において、重合体成分(Y)の分子量を調節するために、水素等の分子量調節剤を用いてもよい。
【0043】
第1槽の重合反応器での反応液中の重合体成分の濃度は、通常、3〜25重量%であり、好ましくは7〜20重量%、より好ましくは10〜15重量%である。
【0044】
第2重合工程で製造する重合体成分(Y)のムーニー粘度(ML2)は、10〜300(ML1+4、100℃)であり、好ましくは30〜250であり、より好ましくは30〜200である。該ムーニー粘度はJIS K6395(1997)に従って、100℃にて測定される。
【0045】
第2重合工程で製造する重合体成分(Y)のエチレンに基づく単量体単位の含有量(E1)は、45〜80重量%であり、好ましくは50〜75重量%であり、より好ましくは50〜65重量%である。但し、重合体成分(Y)中のエチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。該含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0046】
第2重合工程で製造する重合体成分(Y)のエチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量は、好ましくは85重量%以上であり、より好ましくは88重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上である。但し、重合体成分(Y)中の単量体単位の総含有量を100重量%とする。該含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0047】
第1重合工程で製造する重合体成分(X)と第2重合工程で製造する重合体成分(Y)との重量比は、好ましくは5/1〜0.5/1であり、より好ましくは3/1〜1/1である。
【0048】
最終重合工程の重合反応器から抜き出された反応液からは、公知の脱溶媒処理、乾燥処理などを行い、エチレン−α−オレフィン系共重合体を取り出すことができる。
【0049】
エチレン−α−オレフィン系共重合体のムーニー粘度は、10〜300であり、好ましくは30〜250であり、より好ましくは30〜200である。該ムーニー粘度はJIS K6395(1997)に従って、100℃にて測定される。
【0050】
エチレン−α−オレフィン系共重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは2〜6である。なお、分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)法により測定される。
【0051】
エチレン−α−オレフィン系共重合体中のエチレンに基づく単量体単位の含有量は、通常、45〜80重量%であり、好ましくは50〜75重量%である。但し、エチレン−α−オレフィン系共重合体中のエチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。該含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0052】
エチレン−α−オレフィン系共重合体中のエチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量は、好ましくは85重量%以上であり、より好ましくは88重量%以上であり、更に好ましくは90重量%以上である。但し、エチレン−α−オレフィン系共重合体中の単量体単位の総含有量を100重量%とする。該含有量は赤外分光法により求めることができる。
【0053】
本発明により得られるエチレン−α−オレフィン系共重合体は、各種ウェザーストリップ類、ホース類、防振ゴム類などの自動車用材料、ガラスパッキン類などの建築材料、各種工業用材料、電線用被覆材料などやポリプロピレン樹脂の低温衝撃特性改良剤、熱可塑性エラストマー原料、オイルの粘度指数改良剤などとして広く好適に用いることができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例および比較例により本発明を説明する。
重合体の物性評価は、次の方法で行った。
【0055】
1.ムーニー粘度(ML1+4
JIS K6395(1997)に従って、100℃にて測定した。
【0056】
2.エチレン単位量、プロピレン単位量
赤外分光法により、エチレンに基づく単量体単位の含有量(エチレン単位量)とプロピレンに基づく単量体単位の含有量(プロピレン単位量)を測定した。エチレン単位量とプロピレン単位量は、エチレン単位量とプロピレン単位量の総量を100重量%として求めた。また、試料として、厚み約0.1mmのフィルムを用い、赤外分光光度計(日本分光工業社製 IR−810)により、文献値(赤外吸収スペクトルによるポリエチレンのキャラクタリゼーション 高山、宇佐美 等著 又は Die Makromolekulare Chemie,177,461(1976)Mc Rae,M.A.,MadamS,W.F.等著)に準じ、メチル分岐由来の1155cm-1の吸収ピークとメチレン基由来の721cm-1の吸収ピークを測定した。標準試料としては、エチレン単独重合体、プロピレン単独重合体およびエチレン−プロピレン共重合体(エチレン単位量50wt%、プロピレン単位量50wt%)を用いた。
【0057】
3.ヨウ素価
プレス装置により重合体を厚み約0.5mmのフィルムに成形し、赤外分光光度計により、該フィルムの5−エチリデン−2−ノルボルネン由来のピーク(1688cm-1の吸収ピーク)を測定して、重合体中の二重結合のモル含量を求め、該モル含量からヨウ素価を算出した。
【0058】
4.破断伸度、破断強度
150℃に温度調節したプレス装置と2mm厚のシート成形用金型を用いて、重合体を2mm厚のシートに成形し、次に、該シートからJIS K6251(1993)に記載の3号ダンベルを用いて試験片を打ち抜いた。該試験片を、温度23℃、引張速度500mm/分の条件で、引張試験し、破断伸度と破断強度とを求めた。
【0059】
実施例1
(重合)
100LのSUS製重合反応器が2つ直列に連結された重合反応装置を用い、連続的にエチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンの共重合を行った。第1重合反応器には、傾斜パドル翼を上下に2段設置し、傾斜パドル翼によりつくられる液流れが上向き(上に掻き揚げ)になるように回転方向を設定した。第2重合反応器には、図1に示す撹拌翼を設置した。第1重合反応器の下部から重合溶媒としてヘキサンを87.4kg/時間の速度で、モノマーとしてエチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンをそれぞれ5.05kg/時間、21.20kg/時間、0.73kg/時間の速度で、触媒としてオキシトリイソプロポキシバナジウムと、エチルアルミニウムセスキクロリドをそれぞれ0.00494kg/時間、0.0282kg/時間の速度で第1重合反応器中に連続的に供給した。一方、第1重合反応器上部から第1重合反応器中の反応液が100Lとなるように連続的に反応液を抜き出した。また、分子量調節を水素により行った。水素の供給速度は15NL/時間とした。第1重合反応器から抜き出された反応液を第2重合反応器の下部から供給するとともに、第2重合反応器の下部から重合溶媒としてヘキサンを33kg/時間の速度で、モノマーとしてエチレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンをそれぞれ1.25kg/時間、0.315kg/時間の速度で、触媒としてオキシトリイソプロポキシバナジウム、エチルアルミニウムセスキクロリドをそれぞれ0.0247kg/時間、0.0141kg/時間の速度で第2重合反応器中に連続的に供給した。第2重合反応器の上部から第2重合反応器中の反応液が100Lとなるように連続的に反応液を抜き出した。第1重合反応器、第2重合反応器共に50℃に制御した。
【0060】
第2重合反応器から抜き出された反応液に、少量のポリプロピレングリコールを添加して重合反応を停止させ、脱モノマー、水洗浄後、大量の水中でスチームにより溶媒を除去し、80℃で減圧乾燥して、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体を得た。
【0061】
(重合体の物性)
得られたエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のムーニー粘度は61、プロピレン単位量/(エチレン単位量+プロピレン単位量)は31.7重量%、ヨウ素価は17、破断伸度は2625%、破断強度は1.36MPaであった。
【0062】
(完全混合槽列モデルの槽数測定)
第1重合反応器を用い、連続的にエチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンの共重合を満液にて行い、十分に条件が安定した後に5−エチリデン−2−ノルボルネンをジシクロペンタジエンに切替えた。このときの重合反応器から排出される反応液を所定時間間隔で採取し、残存する5−エチリデン−2−ノルボルネンとジシクロペンタジエンの濃度変化を調べた。この際の重合反応器の下部からの供給条件は、重合溶媒としてヘキサンを78.8kg/時間の速度で、モノマーとしてエチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンをそれぞれ3.33kg/時間、17.15kg/時間、0.703kg/時間の速度で、触媒としてオキシ3塩化バナジウムと、エチルアルミニウムセスキクロリドをそれぞれ0.00337kg/時間、0.01886kg/時間とした。この条件を保ちつつ5−エチリデン−2−ノルボルネンをジシクロペンタジエンに切替え、切り替えた時間を0分として、5、10、15、20、25、30、35、40、60、80、100、120分の時点で排出孔から反応液を採取し、ガスクロマトグラフにて未反応の5−エチリデン−2−ノルボルネンとジシクロペンタジエンの濃度変化を調べ、ポリマー中に重合したジエン成分はプロトンNMRにて調べ、サンプリングした時間の溶液中に未反応ジエンモノマーとポリマー中に重合されたジエン成分を合算し、濃度と時間をプロットすることで、出口のジエン濃度の応答曲線を得た。この応答曲線を用い、ステップ応答法によって解析すると、完全混合槽列モデルの槽数は2.0であった。
【0063】
第1重合反応器で行った方法と同様の方法で、第2重合反応器を用いて連続的に重合を行い、第2重合反応器の出口のジエン濃度の応答曲線を得た。この応答曲線を用い、ステップ応答法によって解析すると、完全混合槽列モデルの槽数は1.1であった。
【0064】
比較例1
実施例1に記載の第1重合反応器の撹拌翼を第2重合反応器に、第2重合反応器の撹拌翼を第1重合反応器に取り付けて、それ以外は実施例1と同様の条件で重合を行った。即ち、この比較例では、第1重合反応器の槽数は完全混合槽の直列モデルで1.1槽であり、第2重合反応器の槽数は完全混合槽の直列モデルで2.0槽となる。実施例1と同様に重合を行った結果、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体を得た。エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のムーニー粘度は62、プロピレン単位量/(エチレン単位量+プロピレン単位量は30.8重量%、ヨウ素価は18、破断伸度は2650%、破断強度は1.18MPaであった。
【0065】
実施例2
(重合)
100LのSUS製重合反応器が2つ直列に連結された重合反応装置を用い、連続的にエチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンの共重合を行った。第1重合反応器には、傾斜パドル翼を上下に2段設置し、傾斜パドル翼によりつくられる液流れが下向きになるように回転方向を設定した。第2重合反応器には、図1に示す撹拌翼を設置した。第1重合反応器の下部から重合溶媒としてヘキサンを87.4kg/時間の速度で、モノマーとしてエチレン、プロピレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンをそれぞれ5.05kg/時間、21.20kg/時間、0.63kg/時間の速度で、触媒としてオキシトリイソプロポキシバナジウムと、エチルアルミニウムセスキクロリドをそれぞれ0.00415kg/時間、0.0237kg/時間の速度で第1重合反応器中に連続的に供給した。一方、第1重合反応器上部から第1重合反応器中の反応液が100Lとなるように連続的に反応液を抜き出した。また、分子量調節を水素により行った。水素の供給速度は15NL/時間とした。第1重合反応器から抜き出された反応液を第2重合反応器の下部から供給するとともに、第2重合反応器の下部から重合溶媒としてヘキサンを33.1kg/時間の速度で、モノマーとしてエチレン、5−エチリデン−2−ノルボルネンをそれぞれ1.29kg/時間、0.216kg/時間の速度で、触媒としてオキシトリイソプロポキシバナジウム、エチルアルミニウムセスキクロリドをそれぞれ0.0247kg/時間、0.0141kg/時間の速度で第2重合反応器中に連続的に供給した。第2重合反応器の上部から第2重合反応器中の反応液が100Lとなるように連続的に反応液を抜き出した。第1重合反応器、第2重合反応器共に50℃に制御した。
【0066】
第2重合反応器から抜き出された反応液に、少量のポリプロピレングリコールを添加して重合反応を停止させ、脱モノマー、水洗浄後、大量の水中でスチームにより溶媒を除去し、80℃で減圧乾燥して、エチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体を得た。
【0067】
(重合体の物性)
得られたエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のムーニー粘度は61、プロピレン単位量/(エチレン単位量+プロピレン単位量)は28.3重量%、ヨウ素価は16、破断伸度は2100%、破断強度は3.32MPaであった。
【0068】
(完全混合槽列モデルの槽数測定)
実施例2の重合を行っている系の第1槽目に供給するヘキサンラインにドデカン50g/Hrをステップ関数的に導入するとともに、ドデカン導入時点を時間0として、時間0、5、10、15、20、25、30、40、60、100、120分後に1槽目の出口から排出される重合溶液を採取し、採取した重合溶液中のドデカン含量をガスクロマトグラフ質量分析計にて測定することによりドデカンの滞留時間分布を測定した。第2槽目に関しても同様の操作を行い、滞留時間分布を求めた。得られた滞留時間分布に、槽列モデルにおける滞留時間分布関数をフィッティングすることにより、第1槽および第2槽の完全混合槽列モデルの槽数を求めた。第1槽の槽数は1.6、第2槽は1.2であった。
【0069】
比較例2
(重合)
第1重合反応器に設置された傾斜パドル翼によりつくられる液流れが上向き(上に掻き揚げ)になるように回転方向を設定した以外は、実施例2と同様の条件で重合を行った。
【0070】
(重合体の物性)
得られたエチレン−プロピレン−5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体のムーニー粘度は64、プロピレン単位量/(エチレン単位量+プロピレン単位量)は29.9重量%、ヨウ素価は16、破断伸度は2200%、破断強度は1.75MPaであった。
【0071】
(完全混合槽列モデルの槽数測定)
実施例2と同様の方法で第1槽および第2槽の完全混合槽列モデルの槽数を求めた。第1槽の槽数は1.3、第2槽は1.5であった。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明の実施例1の第2重合反応器で使用した撹拌翼の模式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2槽以上の重合反応器が直列に連結された重合反応装置を用いて、オレフィン重合触媒の存在下、エチレンとα−オレフィンとを溶媒中で連続重合するエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法であって、下記第1重合工程および第2重合工程を有することを特徴とするエチレン−α−オレフィン系共重合体の製造方法。
第1重合工程:重合温度が−20〜200℃であり、重合圧力が0.1〜10MPaであり、流れ状態が完全混合槽列モデルで1.5槽以上である重合条件で、100℃のムーニー粘度が10〜300であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量が45〜80重量%(但し、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。)である重合体成分を1槽の重合反応器で製造する工程
第2重合工程:重合温度が−20〜200℃であり、重合圧力が0.1〜10MPaであり、流れ状態が完全混合槽列モデルで1.5槽未満であり、第1重合工程での完全混合槽列モデルでの槽数(n1)と第2重合工程での完全混合槽列モデルでの槽数(n2)との比(n1/n2)が1.5以上である重合条件で、100℃のムーニー粘度が10〜300であり、エチレンに基づく単量体単位の含有量が45〜80重量%(但し、エチレンに基づく単量体単位とα−オレフィンに基づく単量体単位との総含有量を100重量%とする。)である重合体成分を1槽の重合反応器で製造する工程

【図1】
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【公開番号】特開2008−208351(P2008−208351A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−17657(P2008−17657)
【出願日】平成20年1月29日(2008.1.29)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】