説明

エチレン系樹脂組成物およびその用途

【課題】電線被覆用として耐候性と機械強度のバランスに優れる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】エチレン・α-オレフィン共重合体(A)31〜80重量部、エチレン含有量50−85モル%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が10−300である、エチレン系共重合体ゴム(B)69〜20重量部、(A)(B)の合計量100重量部に対して有機過酸化物(C)0〜15重量部を含むことを特徴とするエチレン系樹脂組成物、さらに該樹脂組成物を被覆してなる電線・ケーブル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン系樹脂組成物に関する。特に好適には電線被覆用として優れるエチレン系樹脂組成物ならびにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エチレンと炭素原子数が3〜20のα- オレフィンと非共役ポリエンとからなる無定形、或いは低結晶性のランダムな弾性共重合体ゴムを含む、電線ケーブル等に好適な樹脂組成物は知られている(特許文献1、2)。しかし、耐候性と機械強度のバランスで未だ充分ではなかった。
【特許文献1】特開平8−127680号公報
【特許文献1】特表2001−510629号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは、電線被覆用として耐候性と機械強度のバランスに優れる樹脂組成物について鋭意居検討した結果、エチレンと炭素原子数が3〜20のα- オレフィンと非共役ポリエンとからなる無定形、或いは低結晶性のランダムな弾性共重合体ゴムおよびエチレンと炭素原子数が3〜20のα- オレフィン共重合体の2種の樹脂を一定の割合で含む樹脂組成物を用いると上記課題を解決することができ、本発明に至った。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は以下を特徴とする。
(1)エチレン・α-オレフィン共重合体(A)31〜80重量部、エチレン含有量50−85モル%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が10−300である、エチレン系共重合体ゴム(B)69〜20重量部、(A)(B)の合計量100重量部に対して有機過酸化物(C)0〜15重量部を含むことを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
(2)
上記(1)に記載の(A)(B)の合計量100重量部に対して、さらに金属水酸化物(D)0〜250重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物。
(3)
上記(1)に記載の(A)(B)の合計量100重量部に対して、さらに金属水酸化物以外のフィラー(E)0〜300重量部を含むことを特徴とする請求項1〜2に記載のエチレン系樹脂組成物。
(4)
上記(1)〜(3)に記載のエチレン系樹脂組成物を被覆してなる電線・ケーブル。
【発明の効果】
【0005】
本発明の樹脂組成物を用いると耐候性と機械強度のバランスの点に優れ、電線被覆材として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)
本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、エチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとの共重合体である。この炭素数3〜10のα-オレフィンとしては、具体的に、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン1-オクテン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセンなどが挙げられ、これらの単独もしくは2種以上のものとエチレンで共重合体は構成される。これらのうち、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテンのうちの少なくとも1種以上が好ましく使用される。
【0007】
中でも、エチレン・1-ブテン共重合体は同一密度における柔軟性と引張物性のバランスが特に優れているため、より好ましい。
【0008】
エチレン・αオレフィン共重合体中の各構成単位の含量は、エチレンから誘導される構成単位の含量が通常75〜95モル%、好ましくは80〜95モル%であり、炭素数3〜10のα-オレフィンから選ばれる少なくとも1つの化合物から誘導される構成単位の含量が通常5〜25モル%、好ましくは5〜20モル%であることが好ましい。
【0009】
さらに本発明で用いられるエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、付加的にかつ個別単独に以下のような性質を有することが好ましい。すなわち、
(i)密度が855〜900kg/m、好ましくは、0.857〜0.890kg/mであり、
(ii)190℃、2.16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)が0.1〜100g/10分、好ましくは、0.1〜20g/10分、さらに好ましくは、0.1〜10g/10分の範囲にあり、
(iii)GPC法により評価される分子量分布の指数:Mw/Mnが1.5〜3.5、好ましくは1.5〜3.0、より好ましくは1.8〜2.5の範囲にあり、
(iv)13C-NMRスペクトルおよび下記式から求められるB値が0.9〜1.5、好ましくは0.9〜1.2である;
B値=[POE]/(2・[PE][PO])
(式中、[PE]は共重合体中のエチレンから誘導される構成単位の含有モル分率であり、[PO]は共重合体中のα-オレフィンから誘導される構成単位の含有モル分率であり、[POE]は共重合体中の全ダイアド(dyad)連鎖に対するエチレン・α-オレフィン連鎖数の割合である。)。
【0010】
このB値は、エチレン・α-オレフィン共重合体中のエチレンと炭素数3〜10のα-オレフィンとの分布状態を表す指標であり、J.C.Randall(Macromolecules,15,353(1982))、J.Ray(Macromolecules,10,773(1977))らの報告に基づいて求めることができる。
【0011】
上記B値が大きいほど、エチレンまたはα-オレフィン共重合体のブロック的連鎖が短くなり、エチレンおよびα-オレフィンの分布が一様であり、共重合ゴムの組成分布が狭いことを示している。なおB値が1.0よりも小さくなるほどエチレン・α-オレフィン共重合体の組成分布は広くなり、取扱性が悪化するなどの悪い点があることがある。
【0012】
さらに好ましくは(v)13C-NMRスペクトルにおけるTααに対するTαβの強度比(Tαβ/Tαα)が0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下である。ここで13C-NMRスペクトルにおけるTααおよびTαβは、炭素数3以上のα-オレフィンから誘導される構成単位中のCHのピーク強度であり、下記に示すように第3級炭素に対する位置が異なる2種類のCHを意味している。
【0013】
【化1】

【0014】
このようなTαβ/Tαα強度比は、下記のようにして求めることができる。エチレン・α-オレフィン共重合体の13C-NMRスペクトルを、たとえば日本電子(株)製JEOL-GX270 NMR測定装置を用いて測定する。測定は、試料濃度5重量%になるように調整されたヘキサクロロブタジエン/d6-ベンゼン=2/1(体積比)の混合溶液を用いて、67.8MHz、25℃、d6-ベンゼン(128ppm)基準で行う。測定された13C-NMRスペクトルを、リンデマンアダムスの提案(Analysis Chemistry,43,p1245(1971))、J.C.Randall(Review Macromolecular Chemistry Physics,C29,201(1989))に従って解析してTαβ/Tαα強度比を求める。
【0015】
本発明のエチレン・α-オレフィン共重合体は上記の特性に加えさらに以下の特性を有するものも好適に用いられる。
【0016】
(vi)190℃、10kg荷重におけるメルトフローレート(MFR10)と190℃、2,16kg荷重におけるメルトフローレート(MFR)との比:MFR10/MFRが次の関係を満たす。
【0017】
Mw/Mn+4.7 ≦ MFR10/MFR
ここで、MFR10、MFR、Mw/Mnが上記の関係を満たさない場合は、成形性または材料強度若しくはその両者が低下することがある。
【0018】
[エチレン・α-オレフィン共重合体(A)の製造方法]
このようなエチレン・α-オレフィン共重合体(A)は、V化合物と有機アルミニウム化合物から構成されるチーグラー系触媒やメタロセン系触媒の存在下にエチレンと少なくとも1種以上の炭素数3〜10のα-オレフィンとを共重合させることによって製造することができるがメタロセン系触媒が好適に用いられる。
【0019】
このようなメタロセン系触媒は、メタロセン化合物(a)と、有機アルミニウムオキシ化合物(b)および/またはメタロセン化合物(a)と反応してイオン対を形成する化合物(c)とから形成されていてもよく、さらに(a)、(b)および/または(c)とともに有機アルミニウム化合物(d)とから形成されていてもよい。 エチレン・α-オレフィン共重合は、上記触媒の存在下、通常炭化水素溶媒を用いた液相で、バッチ式、半連続式、連続式のいずれの方法でも行うことができる。メタロセン化合物(a)と有機アルミニウムオキシ化合物(b)またはイオン化イオン性化合物(c)とからなるメタロセン系触媒が用いられる場合には、重合系内のメタロセン化合物(a)の濃度は、通常0.00005〜0.1ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは0.0001〜0.05ミリモル/リットルである。また有機アルミニウムオキシ化合物(b)は、重合系内のメタロセン化合物中の遷移金属に対するアルミニウム原子のモル比(Al/遷移金属)で、1〜10000、好ましくは10〜5000の量で供給される。イオン化イオン性化合物(c)の場合は、重合系内のメタロセン化合物(a)に対するイオン化イオン性化合物(c)のモル比(イオン化イオン性化合物(c)/メタロセン化合物(a))で、0.5〜20、好ましくは1〜10の量で供給される。また有機アルミニウム化合物を用いる場合には、通常約0〜5ミリモル/リットル(重合容積)、好ましくは約0〜2ミリモル/リットルとなるような量で用いられる。
【0020】
共重合反応は、通常、反応温度が-20〜+150℃、好ましくは0〜120℃、さらに好ましくは0〜100℃で、圧力が0を超えて7.8MPa(80kgf/cm、ゲージ圧)以下、好ましくは0を超えて4.9MPa(50kgf/cm、ゲージ圧)以下の条件下に行われる。
【0021】
エチレンおよびα-オレフィンは、上記特定組成のエチレン・α-オレフィン共重合体(A)が得られるような量で重合系に供給される。共重合に際しては、水素などの分子量調節剤を用いることもできる。
【0022】
エチレン系共重合体ゴム(B)
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)は、エチレンと炭素原子数が3〜20のα- オレフィンと非共役ポリエンを構成成分として含む無定形、或いは低結晶性のランダムな弾性共重合体ゴムである。このようなゴムの公知の広角X線回折法により求めた結晶化度は通常10%未満のものが用いられる。
【0023】
このようなエチレン系共重合体ゴム(B)のエチレンとα-オレフィンのモル比は通常55/45〜85/15であり、その中でも60/40〜83/17の範囲にある物が好ましい。
このようなエチレン系共重合体ゴム(B)のエチレン含有量は50−85モル%、好ましくは55−80モル%、より好ましくは60−80モル%である。
【0024】
非共役ポリエンとしては、具体的には、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネンなどが挙げられる。これらのうちでは、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン・1-ブテン・非共役ジエン共重合体ゴムが好ましく、特にエチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体ゴム、中でもエチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴム、エチレン・プロピレン・ビニルノルボルネン共重合体ゴムが、適度な架橋構造を有する熱可塑性エラストマーが得られる点で特に好ましい。
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)は特にエチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴムが好ましい。
【0025】
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)のムーニー粘度[ML1+4 (100℃)]は、10−300、好ましくは10〜200の範囲内にある。
【0026】
また、このエチレン系共重合体ゴム(B)のヨウ素価は、3〜30であることが好ましく、5〜25の範囲にあることが特に好ましい。エチレン系共重合体ゴム(B)のヨウ素価がこのような範囲にあると、バランスよく架橋され、成形性とゴム弾性に優れた組成物が得られる。
【0027】
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)は、軟化剤を含んだいわゆる油展品を使用することができる。また、油展品を使用しなくとも、後から軟化剤を加えても良いし、油展と後添加を併用して軟化剤を配合することもできる。軟化剤を用いることでより柔軟性、成形性に優れる組成物が得られる。油展品に用いることの出来る軟化剤は、通常ゴムに使用される軟化剤を用いることができる。
【0028】
具体的には、プロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリン等の石油系物質; コールタール、コールタールピッチ等のコールタール類; ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、ヤシ油等の脂肪油; トール油、蜜ロウ、カルナウバロウ、ラノリン等のロウ類; リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム等の脂肪酸またはその金属塩; 石油樹脂、クマロンインデン樹脂、アタクチックポリプロピレン等の合成高分子物質; ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジオクチルセバケート等のエステル系可塑剤; その他マイクロクリスタリンワックス、サブ(ファクチス)、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコールなどが挙げられる。
【0029】
これらの軟化剤の中でも、パラフィン系のプロセスオイルが特に好ましく、更に、揮発しやすい低分子量成分の含有量が少ない高粘度タイプのパラフィン系プロセスオイルが特に好ましい。ここで高粘度タイプとは、40℃における動粘度が100〜1000センチストークスの範囲にあるものを言う。
【0030】
本発明においては、軟化剤は、エチレン系共重合体ゴム(B)100重量部に対し、150重量部以下、好ましくは2〜100重量部、さらに好ましくは5〜60重量部の割合で用いられる。
【0031】
上記のような必要に応じて油展されていても良いエチレン系共重合体ゴム(B)は、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体ゴム(B)との合計量100重量部に対して、40〜85重量部、好ましくは60〜80重量部の割合で用いられる。 上記のような割合でエチレン系共重合体ゴム(B)を用いると、耐熱性、柔軟性、ゴム弾性に優れるとともに、成形加工に優れた組成物が得られる。
【0032】
本発明においては、本発明の目的を損なわない範囲で、エチレン系共重合体ゴム(B)の他に、必要に応じてエチレン系共重合体ゴム(B)以外のゴムを用いることもできる。このようなエチレン系共重合体ゴム(B)以外のゴムとしては、たとえばスチレン・ブタジエンゴムおよびその水添品、スチレン・イソプレンゴム及びその水添品、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、ポリイシブチレンゴム、天然ゴム、シリコンゴムなどが挙げられる。エチレン系共重合体ゴム(B)以外のゴムを用いる場合には、エチレン系共重合体ゴム(B)100重量部に対して、通常100重量部以下、好ましくは50重量部以下である。
【0033】
本発明においては、上記のような非共役ポリエン、例えば非共役ジエンを単独で用いてもよく、また2種以上の混合物として用いてもよい。さらに、上記のような非共役ポリエンの他に、他の共重合可能なモノマーを、本発明の目的を損なわない範囲で用いてもよい。
【0034】
本発明で用いられるα- オレフィン系共重合体ゴムを構成する非共役ジエンの含有量は、0.01〜30モル%、好ましくは0.1〜20モル%、特に好ましくは0.1〜10モル%の範囲内にある。
【0035】
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)としては、例えばエチレン・炭素数3以上のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体であって、エチレンと炭素数3以上のα-オレフィンとの比率であるエチレン/炭素数3以上のα-オレフィン(モル比)が40/60-95/5であるものが挙げられる。
【0036】
本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)の135℃デカリン溶媒中で測定した極限粘度[η]は、1.0〜10.0dl/g、好ましくは1.5〜7dl/gの範囲にある。また本発明で用いられるα-オレフィン系共重合体ゴムは、特に制限はないがDSCの吸熱曲線から求められる融点(Tm)が存在しないかまたは120℃未満に存在することが好ましい。
【0037】
上記のようなエチレン系共重合体ゴム(B)は、以下の方法で製造することができる。本発明で用いられるエチレン系共重合体ゴム(B)は、オレフィン重合用触媒の存在下に、炭素原子数2〜20のα- オレフィンと、非共役ジエンとを共重合させることにより得られる。
【0038】
有機過酸化物(C)
本発明で用いられる有機過酸化物としては、具体的には、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert- ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert- ブチルペルオキシ)-3,3,5- トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4- ビス(tert- ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert- ブチルペルオキシベンゾエート、tert- ブチルペルベンゾエート、tert- ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert- ブチルクミルペルオキシドなどが挙げられる。
【0039】
これらの内では、反応性、臭気性、スコーチ安定性の点で、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert- ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等の2官能の有機過酸化物が特に好ましい。更にそのなかでも、2,5-ジメチル-2,5- ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイドが最も好ましい。
【0040】
金属水酸化物(D)
本発明で用いられる金属水酸化物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マンガン、水酸化亜鉛、ハイドロタルサイト等の単独もしくはこれらの混合物が挙げられ、水酸化マグネシウム単独及び水酸化マグネシウムを含む混合物、あるいは水酸化アルミニウム単独及び水酸化アルミニウムを含む混合物が特に好ましい。
【0041】
金属水酸化物以外のフィラー(E)
本発明で用いられる金属水酸化物以外の無機フィラー(E)としては、炭酸カルシウム、シリカゲル、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化マグネシウム、硫酸バリウム、タルク等を挙げることができる。好ましくは、炭酸カルシウム、シリカゲル、タルク、さらに好ましくはシリカゲルである。
【0042】
無機フィラー(E)の粒径は、0.1〜20μm、通常0.3〜10μmである。
【0043】
エチレン系樹脂組成物
本発明のエチレン系樹脂組成物はエチレン・α-オレフィン共重合体(A)31〜80重量部、エチレン系共重合体ゴム(B)69〜20重量部、(A)(B)の合計量100重量部に対して有機過酸化物(C)0〜15重量部を含むことを特徴とする。好ましくは、エチレン・α-オレフィン共重合体(A)40〜80重量部、エチレン系共重合体ゴム(B)60〜20重量部、より好ましくはエチレン・α-オレフィン共重合体(A)50〜80重量部、エチレン系共重合体ゴム(B)50〜20重量部を含む(ここで(A)(B)の合計量100重量部)。また好ましくは(A)(B)の合計量100重量部に対して有機過酸化物(C)を0.001〜10重量部、より好ましくは0.003〜0.5重量部、さらに好ましくは0.005〜0.3重量部を含む。
【0044】
本発明のエチレン系樹脂組成物はエチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体ゴム(B)の合計量100重量部に対して金属水酸化物(D)0〜250重量部、好ましくは0〜200重量部、より好ましくは0〜180重量部を含む。
【0045】
本発明のエチレン系樹脂組成物はエチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体ゴム(B)の合計量100重量部に対して、金属水酸化物以外のフィラー(E)0〜300重量部、好ましくは0〜200重量部、より好ましくは0〜150重量部を含む。
【0046】
本発明のエチレン系樹脂組成物はエチレン・α-オレフィン共重合体(A)とエチレン系共重合体ゴム(B)の合計量100重量部に対して、上記の重量部の有機過酸化物(C)、金属水酸化物(D)、金属水酸化物以外のフィラー(E)をそれぞれ単独に独立に含んでいてもよいし、また2種以上を同時に含んでいても良い。
【0047】
本発明に係るエチレン系樹脂組成物には、上記の他に、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、耐熱安定剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、滑剤などの添加剤を配合することができる。一般に難燃剤として知られたトリアジン環含有化合物、粉末シリコーン(シリコーンパウダーとも言う)を含んでいてもよい。 また本発明に係る重合体組成物には難燃助剤としてホウ酸化合物、好ましくはホウ酸亜鉛を含むとより好ましい。
本発明に係るエチレン系樹脂組成物は、上記の成分と、必要に応じて配合される添加剤とを、種々の従来公知の方法で溶融混合することにより調製される。
本発明に係るエチレン系樹脂組成物は電線被覆用樹脂組成物として好適に用いられる。
【0048】
例えば、本発明に係るエチレン系樹脂組成物は、上記各成分を同時に、または逐次的に、たとえばヘンシェルミキサー、V型ブレンダー、タンブラーミキサー、リボンブレンダー等に装入して混合した後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等で溶融混練することによって得られる。
【0049】
これらの内でも、多軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサー等の混練性能に優れた装置を使用すると、各成分がより均一に分散された高品質の重合体組成物が得られる。
【0050】
また、これらの任意の段階で必要に応じて前記添加剤、たとえば酸化防止剤などを添加することもできる。
【0051】
エチレン系樹脂組成物の用途
本発明に係る成形体は、本発明に係るエチレン系樹脂組成物を用い、従来公知の溶融成形法、たとえば押出成形、回転成形、カレンダー成形、射出成形、圧縮成形、トランスファー成形、粉末成形、ブロー成形、真空成形などの方法により、種々の形状に成形することができる。
【0052】
本発明に係るエチレン系樹脂組成物を例えば電線シースや電線の絶縁体などの電線被覆の用途に好適に使用できる。また本発明に係る成形体は、電線シースや電線の絶縁体などの被覆層であり、この電線シースや電線の絶縁体などの被覆層は、従来公知の方法たとえば押出成形などの方法により電線の周囲に形成される。
【0053】
[実施例]
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。
【0054】
[測定方法]
SWOM:サンシャインウェザロメーター 63℃ 雨無し
EL(%): JIS K6301に準拠し、スパン間20mm、引張速度200mm/分にて引張試験を行い、EL(破断点伸び)を測定した。
EL残率(%):SWOMで一定時間暴露後のサンプルを用いて上述ELと同様の測定を行い、ELとこの測定値から残率を算出した。65%以上が望ましい。
ΔE(ハンターの色差):JIS Z 8730-1980に準拠。ΔEが小さいほど望ましい。
【0055】
実施例等で用いたエチレン・α-オレフィン共重合体、エチレン系共重合体ゴムおよびパーオキサイドは次のとおりである。
【0056】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A):
以下の製造例1で調製したエチレン・1-ブテン共重合体(a)である。
【0057】
[製造例1]
(エチレン・1-ブテン共重合体(a)の調製)
[触媒溶液の調製]
十分に窒素置換したガラス製フラスコに、ビス(1,3-ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロリドを0.63mg入れ、更にメチルアミノキサンのトルエン溶液(Al;0.13ミリモル/リットル)1.57ml、およびトルエン2.43mlを添加することにより触媒溶液を得た。
【0058】
[エチレン・1−ブテン共重合体(a)の調製]
充分に窒素置換した内容積2リットルのステンレス製オートクレーブにヘキサン912mlおよび1−ブテン320ml、水素0mlを挿入し、系内の温度を80℃に昇温した。引き続き、トリイソブチルアルミニウム0.9ミリモルおよび上記の如く調製した触媒溶液2.0ml(Zrとして0.0005ミリモル)をエチレンで圧入することにより重合を開始した。エチレンを連続的に供給することにより全圧を8.0kg/cm2-Gに保ち、80℃で30分間重合を行った。
【0059】
少量のエタノールを系中に導入して重合を停止させた後、未反応のエチレンをパージした。得られたポリマーを大過剰のメタノール中に投入することによりポリマーを析出させた。このポリマーを濾過により回収し、減圧下で一晩乾燥し、エチレン・1−ブテン共重合体(a)を得た。得られたエチレン・1−ブテン共重合体(a)の性状を表1に示す。
【0060】
【表1】

【0061】
エチレン系共重合体ゴム(B):三井EPT 3045 (三井化学(株)製:エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体ゴム)(以下エチレン系共重合体(b)と表記する) 物性を表2に示す。
【0062】
【表2】

【0063】
パーオキサイド:ジクミルパーオキサイド (化薬アクゾ(株)製)(以下DCPと表記する)
[実施例1]
表1に示すエチレン・α-オレフィン共重合体(a)と表2に示すエチレン系共重合体ゴム(b)とを(a)/(b)=35部/65部の割合で2本ロールを用いて溶融混合し、さらにDCPを(a)(b)合計100部に対して、2部配合し溶融混合した。その後、160℃に設定したプレス成形機にて30分間加熱成形し、2mm厚のプレスシートを得て、各項目について測定した。
【0064】
[実施例2]
表1に示すエチレン・α-オレフィン共重合体(a)と表2に示すエチレン系共重合体ゴム(b)とを(a)/(b)=50部/50部とし、実施例1と同様の評価を行った。
【0065】
[比較例1-2]
表1に示すエチレン・α-オレフィン共重合体(a)と表2に示すエチレン系共重合体ゴム(b)とを比較例1では(a)/(b)=0部/100部とし、比較例2では(a)/(b)=15部/85部とし、実施例1と同様の評価を行った。
結果を表3にまとめる。
【0066】
【表3】

【0067】
表3



【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の樹脂組成物は耐候性と機械強度のバランスが良好であるので例えば電線シースや電線の絶縁体などの電線被覆の用途に好適に使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α-オレフィン共重合体(A)31〜80重量部、エチレン含有量50−85モル%、ムーニー粘度ML1+4(100℃)が10−300である、エチレン系共重合体ゴム(B)69〜20重量部、(A)(B)の合計量100重量部に対して
有機過酸化物(C)0〜15重量部を含むことを特徴とするエチレン系樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の(A)(B)の合計量100重量部に対して、さらに金属水酸化物(D)0〜250重量部を含むことを特徴とする請求項1に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1に記載の(A)(B)の合計量100重量部に対して、さらに金属水酸化物以外のフィラー(E)0〜300重量部を含むことを特徴とする請求項1〜2に記載のエチレン系樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3に記載のエチレン系樹脂組成物を被覆してなる電線・ケーブル。



【公開番号】特開2006−249136(P2006−249136A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−63897(P2005−63897)
【出願日】平成17年3月8日(2005.3.8)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】