説明

エチレン系重合体ペレット混合物

【課題】 粉末包装材料のヒートシール材として用いられるエチレン系樹脂において、帯電防止効果の安定性を改善した材料を提供する。
【解決手段】 少なくともエチレン系重合体60〜99.99重量%およびグリセリン脂肪酸エステル0.01〜40重量%からなるエチレン系重合体組成物ペレット(A)、および少なくともエチレン系重合体60〜99.99重量%およびポリオキシエチレンアルキルアミン0.01〜40重量%からなるエチレン系重合体組成物ペレット(B)の少なくとも二種のペレットを含むエチレン系重合体ペレット混合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はエチレン系重合体ペレットに関するものである。さらに詳しくは、帯電防止性や防曇性に優れたフィルムや積層体などを製造することが可能なエチレン系重合体ペレットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
押出ラミネート法は、特に包装材料の多機能化が可能であるため、食品や医療薬品などの包装材料を提供する方法として広く利用されている。押出ラミネート法に用いられる材料としては高圧法低密度ポリエチレン(以下、LDPEと記す。)が、成形性に優れていることなどの理由から広く用いられている。しかしながら、LDPE等のポリエチレン系樹脂フィルムは、摩擦等により表面に静電気を帯び、フィルム表面に粉体や埃が付着し易くなるという欠点がある。
【0003】
この欠点を改良するため、様々な提案がなされている。
【0004】
オレフィン系樹脂と、帯電防止剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン高級脂肪酸エステル及び高級脂肪族アルコールを配合した押出ラミネート成形用オレフィン系樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0005】
また基材の少なくとも片面に密度が0.925g/cm未満の低密度ポリエチレン層並びに密度が0.925g/cm未満の低密度ポリエチレン層に帯電防止剤としてポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン高級脂肪酸エステル及び高級脂肪族アルコールを配合してなるポリエチレン樹脂組成物層を順次押出ラミネートされてなることを特徴とする薬包材用積層体が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0006】
しかしながら、これら方法によれば帯電防止剤として用いられているポリオキシエチレンアルキルアミンとグリセリン高級脂肪酸エステルとがポリエチレン樹脂組成物ペレットの表面でエステル交換反応し、帯電防止性に乏しいグリセリン、グリセリン高級脂肪酸ジエステル、グリセリン高級脂肪酸トリエステル、アルキルアミンの脂肪酸エステルに変化するため、帯電防止性能が劣り問題となっていた。
【0007】
また、薬などの粉体包装では、包装袋の易開封性を目的に、基材としてセロファンを用いることがあるが、その場合、上記樹脂組成物ではヒートシール強度が経時で低下するといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平1−141932号公報
【特許文献2】特開2002−212350号広報
【特許文献3】特開平4−214343号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、帯電防止効果が大幅に改良され、かつ基材との接着性を維持した積層体を得ることが可能なエチレン系重合体ペレット混合物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のエチレン系共重合体組成物ペレットの混合物を用いることにより、帯電防止性能を大幅に改良できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、少なくともエチレン系重合体60〜99.99重量%およびグリセリン脂肪酸エステル0.01〜40重量%からなるエチレン系重合体組成物ペレット(A)、および少なくともエチレン系重合体60〜99.99重量%およびポリオキシエチレンアルキルアミン0.01〜40重量%からなるエチレン系重合体組成物ペレット(B)の少なくとも二種のペレットを含むことを特徴とするエチレン系重合体ペレット混合物に関するものである。
【0012】
また、本発明は、上記エチレン系重合体ペレット混合物を押出成形してなるフィルム、積層体に関するものである。
【0013】
以下に、本発明を詳細に説明する。
【0014】
本発明のエチレン系重合体組成物ペレット(A)、エチレン系重合体組成物ペレット(B)を構成するエチレン系重合体は、エチレンの単独重合体、及びエチレンと炭素数3〜12のα−オレフィンとの共重合体、エチレンと酢酸ビニルなどのビニルエステルとの共重合体のことを示す。例えば、低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸エステル共重合体、エチレン・メタクリル酸エステル共重合体等が挙げられ、これらエチレン系重合体は、1種単独又は2種以上の組み合わせで用いてもよい。また、エチレン系重合体組成物ペレット(A)とエチレン系重合体組成物ペレット(B)を構成するエチレン系重合体は同種でも異種でも構わない。
【0015】
これらの中で、低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−へキセン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体、エチレン・4−メチル−1−ペンテン共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体が、コストパフォーマンス、ヒートシール強度等の点で好適である。
【0016】
このようなエチレン系重合体は、一般に市販されているエチレン系重合体から本発明の範囲において便宜選択され、その重合方法は、特に限定されるものではない。例えば、高圧法低密度ポリエチレンやエチレン・酢酸ビニル共重合体等の場合、高圧法によるラジカル重合法を挙げることができ、エチレン・1−ブテン共重合体やエチレン・1−へキセン共重合体等のエチレン・α−オレフィン共重合体の場合、チーグラーナッタ触媒やメタロセン触媒を用いた気相法、溶液法、高圧法等の重合法を挙げることができる。
【0017】
本発明を構成するエチレン系重合体は、JIS K6922−1(1997年)で測定した密度が880〜930kg/mの範囲にあると得られたフィルム、積層体のヒートシール性、耐ブロッキングに優れるため好ましい。
【0018】
また、このエチレン系重合体(A)は、JIS K6922−1(1997年)によるメルトマスフローレート(以下、MFRと記す場合がある。)が1〜50g/10分の範囲にあるものがフィルムや積層体の成形性に優れるため好ましく、さらに好ましくは2〜30g/10分の範囲にある。
【0019】
本発明のエチレン系重合体組成物ペレット(A)を構成するグリセリン脂肪酸エステルは、脂肪酸とグリセリン及び/又は重合度が2以上のポリグリセリンのエステル化反応により得られる化合物である。脂肪酸の炭素数が8〜24である場合、十分な帯電防止性能が得られるので好ましく、ポリグリセリンの重合度は2〜10の範囲にあると十分な帯電防止性能が得られるので好ましい。該化合物としては、例えばモノグリセリンラウリン酸エステル、モノグリセリンパルミチン酸エステル、モノグリセリンステアリン酸エステル、モノグリセリンオレイン酸エステル、モノグリセリンリノール酸エステル、モノグリセリンエルカ酸エステル等のモノグリセリン脂肪酸エステル、ジグリセリンラウリン酸モノエステル、ジグリセリンパルミチン酸モノエステル、ジグリセリンステアリン酸モノエステル、ジグリセリンオレイン酸モノエステル、ジグリセリンリノール酸モノエステル、ジグリセリンエルカ酸モノエステル、ジグリセリンラウリン酸ジエステル、ジグリセリンパルミチン酸ジエステル、ジグリセリンステアリン酸ジエステル、ジグリセリンオレイン酸ジエステル等の脂肪酸ジグリセリド、トリグリセリンラウリン酸エステル、トリグリセリンパルミチン酸エステル、トリグリセリンステアリン酸エステル、トリグリセリンオレイン酸エステル、トリグリセリンリノール酸エステル等のトリグリセリン脂肪酸エステル類、ヘキサグリセリンステアリン酸エステル、ヘキサグリセリンオレイン酸エステル、ペンタグリセリンステアリン酸エステル、ペンタグリセリンオレイン酸エステル、デカグリセリンステアリン酸エステル、デカグリセリンオレイン酸エステル等が挙げられる。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該モノグリセリン脂肪酸エステルとして、リケマールP−100、S−100(理研ビタミン製)、レオドールMS−50(花王製)、モノグリD、モノグリM、モノグリI(日油製)等、該ポリグリセリン脂肪酸エステルとして、リケマールL−71D、S−71D、O−71D、C−71D(以上、理研ビタミン製)、ユニグリGO−102、GL−106、GS−106(以上、日油製)、サンソフトQ−18D、Q−18F、Q−17F、Q−18S、Q−17S、Q−12S、A−181C(以上、太陽化学製)等が市販されている。
【0020】
本発明のエチレン系重合体組成物ペレット(A)を構成するエチレン系重合体とグリセリン脂肪酸エステルの配合割合は、エチレン系重合体が60〜99.99重量%、グリセリン脂肪酸エステルが0.01〜40重量%である。グリセリン脂肪酸エステルの割合が0.01重量%未満の場合、押出成形に供し得られたフィルムや積層体の帯電防止効果が劣るため好ましくなく、40重量%超の場合はエチレン系重合体組成物ペレット(B)の作製が困難となる。
【0021】
また、エチレン系重合体組成物ペレット(A)は、必要に応じて酸化防止剤、中和剤、ブロッキング防止剤等、通常ポリオレフインに使用される添加剤を添加したものでもかまわない。
【0022】
本発明のエチレン系重合体組成物ペレット(A)の製造は、特に限定するものではないが、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、回転ロールなどの溶融混練装置、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが挙げられる。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はオレフィン系重合体の融点〜350℃程度が好ましい。溶融混合した後、冷却しペレット化することができる。
【0023】
本発明のエチレン系重合体組成物ペレット(B)を構成するポリオキシエチレンアルキルアミンは、下記一般式(I)
【0024】
【化1】

で表される化合物である。
(式中、Rは炭素数8〜30の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、アルケニル基を示し、R、Rは双方が−OCR′(R′は炭素数8〜30の炭化水素基)、またはいずれか一方が−H、他方が−OCR′、または双方が−Hを表し、m、nは1〜10の整数である。)
該化合物としては、例えばラウリルジエタノールアミン、パルミチルジエタノールアミン、ステアリルジエタノールアミン、オレイルジエタノールアミン等が挙げられる。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。
このようなポリオキシエチレンアルキルアミンは市販品から入手することができ、例えば日油株式会社からナイミーンL−201、ナイミーンL−202、ナイミーンL−207、ナイミーンS−202、ナイミーンS−204、ナイミーンS−210、ナイミーンO−205、ナイミーンT2−202などの名称で販売されている。
【0025】
また、エチレン系重合体組成物ペレット(B)は、必要に応じて酸化防止剤、中和剤、ブロッキング防止剤等、通常ポリオレフインに使用される添加剤を添加したものでもかまわない。
【0026】
本発明エチレン系重合体組成物ペレット(B)を構成するエチレン系重合体とポリオキシエチレンアルキルアミンの配合割合は、エチレン系重合体が60〜99.99重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミンが0.01〜40重量%である。ポリオキシエチレンアルキルアミンの割合が0.01重量%未満の場合、押出成形に供し得られたフィルムや積層体の帯電防止効果が劣るため好ましくなく、40重量%超の場合はエチレン系重合体組成物ペレット(B)の作製が困難となる。
【0027】
本発明のエチレン系重合体組成物ペレット(B)の製造は、特に限定するものではないが、通常用いられる樹脂の混合装置により製造することができる。例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、回転ロールなどの溶融混練装置、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどが挙げられる。溶融混練装置を用いる場合、溶融温度はオレフィン系重合体の融点〜350℃程度が好ましい。溶融混合した後、冷却しペレット化することができる。
【0028】
また、エチレン系重合体組成物ペレット(A)及び/又はエチレン系重合体組成物ペレット(B)は、脂肪酸アミド及び又は脂肪族アルコールを含むと押出成形に供し得られたフィルムのスリップ性、帯電防止性がさらに向上するため好ましい。
【0029】
上記脂肪酸アミドは、一般式(II)で表される化合物である。
【0030】
CONH (II)
(式中、Rは炭素数が11〜23である直鎖又は分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基である。)
脂肪酸アミドを構成するRの炭素数が11〜23の範囲にあると、得られた積層体のスリップ性に優れるため好ましい。このような脂肪酸アミドとしては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等が例示され、エルカ酸アミドが帯電防止性能を損なわないため最も好ましい。これらの化合物は単独又は混合物のいずれにおいても使用できる。該脂肪酸アミドとしては、アルフローP−10、E−10、S−10(以上、日油製)等が市販されている。
【0031】
上記脂肪族アルコールは、下記一般式(III)
−OH (III)
で表される化合物である。式中、Rは一般に直鎖もしくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基であり、炭素数が8〜22である場合、十分な帯電防止性能が得られるので好ましい。該化合物としては、例えばラウリルアルコール、パルミチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等が挙げられ日油(株)などから市販されている。
【0032】
また、それぞれエチレン系重合体組成物ペレット(A)にポリオキシエチレンアルキルアミンを含む場合、エチレン系重合体組成物ペレット(B)にグリセリン脂肪酸エステルを含む場合には、帯電防止効果が悪化する場合があり添加しない方が好ましい。
【0033】
本発明にて用いられるエチレン系重合体組成物ペレット(A)とエチレン系重合体組成物ペレット(B)の配合割合は、特に限定されるものではないが、エチレン系重合体ペレット混合物が、エチレン系重合体96〜99.99重量%、グリセリン脂肪酸エステル0.005重量%〜2重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミン0.005〜2重量%の範囲となるよう混合すると、帯電防止効果に優れるため好ましく、さらに好ましくはエチレン系重合体98〜99.98重量%、グリセリン脂肪酸エステル0.01重量%〜1重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミン0.01〜1重量%の範囲、最も好ましくはエチレン系重合体99〜99.93重量%、グリセリン脂肪酸エステル0.05重量%〜0.5重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミン0.02〜0.5重量%の範囲である。
【0034】
また、エチレン系重合体ペレット混合物には、エチレン系重合体組成物ペレット(A)とエチレン系重合体組成物ペレット(B)の他にエチレン系重合体ペレットが添加されていてもよく、この場合もエチレン系重合体ペレット混合物が、エチレン系重合体96〜99.99重量%、グリセリン脂肪酸エステル0.005重量%〜2重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミン0.005〜2重量%の範囲となるよう混合すると、帯電防止効果に優れるため好ましい。
【0035】
さらに、エチレン系重合体ペレット混合物は、脂肪族アルコール及び/又は脂肪酸アミドを添加したエチレン系重合体ペレットが混合されていてもよく、脂肪族アルコール及び/又は脂肪酸アミドがエチレン系重合体ペレット混合物の0.005〜2重量%含むとスリップ性や帯電防止効果がさらに向上するため特に好ましい。
【0036】
本発明のエチレン系重合体ペレット混合物は、押出機が付帯されたインフレーション成形機やTダイキャスト成形機などの公知の押出フィルム成形装置に投入され、フィルム化することができる。
【0037】
また、エチレン系重合体ペレット混合物を押出ラミネート成形に供し積層体を得ることができる。さらに、該フィルムを用い、ドライラミネート成形やサンドウィッチラミネート成形により積層体を得ることも可能である。これらの中では、押出ラミネート成形がコストパフォーマンスに優れるため好ましい。
【0038】
本発明のフィルム、積層体の厚みは、本発明の目的が達成される限りにおいて特に限定はなく、柔軟性に優れ、破損などの問題が小さいことから、1μm〜5mmの厚みであることが好ましく、経済性の観点から、1μm〜100μmの範囲が最も好適である。
【0039】
本発明の積層体を構成する基材としては、合成高分子フィルム又はシート、織布、不織布、紙、金属箔等が挙げられる。合成高分子フィルム又はシートとして、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコール、エチレン・酢酸ビニル共重合体鹸化物、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成高分子からなるフィルム又はシート等が挙げられる。更に、これら高分子フィルム又はシートは、その表面がアルミニウムやアルミナ、シリカなどにより蒸着されたものでもよく、また、表面がウレタン系インキ等を用い印刷されたものであってもよい。織布、不織布としては、ポリエステルやポリエチレン、ポリプロピレンなどの合成樹脂製のもの、あるいはスフなどの天然材料を原料したものが挙げられる。紙としては、クラフト紙、クルパック紙、上質紙、グラシン紙、板紙等が挙げられる。積層体の耐熱性、カールに優れることからポリエステルフィルムが好ましい。
【0040】
基材に本発明のエチレン系重合体ペレット混合物を直接押出ラミネートしてもよいが、基材上にエチレン系重合体層を設けその上に本発明のエチレン系重合体ペレット混合物を押出ラミネートする方法が特に好ましい。また基材との接着性を高めるため基材の接着面に対してはコロナ処理、フレーム処理、アンカーコート処理など、押出ラミネートされるエチレン系重合体に対してはオゾン処理などの公知の表面処理を施してもよい。
【0041】
本発明の積層体は、エチレン系重合体ペレット混合物を押出した層の表面同士の動摩擦係数がJIS K7125(1998年)により測定し0.01〜0.9であり、かつ押エチレン系重合体ペレットを押出した層の表面固有抵抗値が加電圧500Vで1014Ω以下であれば、薬充填工程において積層体の蛇行や積層体へのシワ発生、更に薬の付着によるシール不良を抑制することができるため好ましい。
【0042】
本発明のエチレン系重合体ペレット混合物は、薬等の医薬品包装やスナック菓子、削り節、パン粉、小麦粉、粉末調味料等の粉末乾燥食品など広範囲にわたる包装用積層体に用いることができる。
【発明の効果】
【0043】
このような本発明のエチレン系重合体ペレット混合物は、従来の材料では得られなかった帯電防止性能が良好であるといった効果が認められ、粉末や顆粒状の食品や医薬品などの包装用ラミネートフィルム材料として極めて有用である。
【実施例】
【0044】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0045】
以下に、評価方法を示す。
【0046】
(1)メルトマスフローレート(MFR)
JIS K6922−1(1997年)に準拠。
【0047】
(2)密度
JIS K6922−1(1997年)に準拠。
【0048】
(3)帯電防止性
実施例及び比較例により得られた積層体のエチレン系重合体ペレット混合物層表面について、アドバンテスト社製TR8601とTR−42を用い、23℃,50%RHの環境下で、加電圧500kVにおける1分後の積層体表面の固有抵抗値を測定した。
【0049】
実施例1
エチレン系重合体として、MFRが13g/10分、密度が919kg/mである高圧法低密度ポリエチレン(E1)(東ソー(株)製、商品名:ペトロセン212)を99重量%、グリセリン脂肪酸エステルとしてグリセリンステアリン酸エステル(理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールS−100、以下、G1と記す場合がある。)1重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(A1)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0050】
また、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を99重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしてポリオキシエチレンラウリルアミン(日油(株)製、商品名:ナイミーンL−202、以下、Am1と記す場合がある。)1重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(B1)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0051】
さらに、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を96重量%、エルカ酸アミド(日油(株)製、商品名:アルフローP−10、以下S1と記す場合がある。)4重量%を配合し、単軸押出機にて溶融混練しペレット化することによりスリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレットを得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0052】
得られたエチレン系重合体組成物ペレット(A1)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B1)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット22.5重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%をドライブレンドし、エチレン系重合体ペレット混合物を得た。その後、エチレン系重合体ペレット混合物を25mmΦのスクリューを有する押出ラミネート装置(プラコー(株)製)の押出機へ供給し、280℃の温度でTダイより押出して溶融フィルムとし、予め押出ラミネート成形法により厚さ25μmのLDPE(東ソー(株)製 商品名ペトロセン203)と基材であるポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製、商品名エステルフィルムE−5100、厚み12μm)とがラミネートされた積層体のLDPE側上に、上記溶融フィルムが15μmの厚さになるようラミネートし、積層体を得た。得られた積層体のエチレン系重合体ペレット混合物を押出した層表面にポリエステルフィルムを常温で貼り合わせた後、23℃の雰囲気にて7日間放置した。帯電防止性評価の直前に、常温で貼り合わせたポリエステルフィルムを剥がし、試料とした。評価結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

実施例2
エチレン系重合体組成物ペレット(A1)30重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B1)ペレット15重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット52.5重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%とした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0054】
実施例3
高圧法低密度ポリエチレン(E1)を98重量%、脂肪族アルコールとしてステアリルアルコール(日油(株)製、商品名:NAAー45、以下、Al1と記す場合がある。)2重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することにより脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレットを得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0055】
エチレン系重合体組成物ペレット(A1)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B1)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット22.5重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%の代わりに、エチレン系重合体組成物ペレット(A1)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B1)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット10重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%とした以外は実施例1と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
実施例4
エチレン系重合体として、高圧法低密度ポリエチレン(E1)の代わりに、MFRが10g/10分、密度が913kg/mであるエチレン・−オレフィン共重合体(東ソー(株)製、商品名:ニポロン−Z TZ420、以下E2と記す場合がある。)とした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
実施例5
グリセリン脂肪酸エステルとして、グリセリンステアリン酸エステル(G1)の代わりに、ジグリセリンステアリン酸エステル(理研ビタミン(株)製、商品名:リケマールS−71D、以下、G2と記す場合がある。)とした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
実施例6
ポリオキシエチレンアルキルアミンとして、ポリオキシエチレンラウリルアミン(Am1)の代わりに、ポリオキシエチレンステアリルアミン(日油(株)製、商品名:ナイミーンS−202、以下、Am2と記す場合がある。)とした以外は実施例3と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0059】
実施例7
エチレン系重合体として、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を90重量%、グリセリン脂肪酸エステルとしてグリセリンステアリン酸エステル(G1)10重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(A2)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0060】
また、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を90重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしてポリオキシエチレンラウリルアミン(Am1)10重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(B2)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0061】
エチレン系重合体組成物ペレット(A1)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B1)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット10重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%の代わりに、エチレン系重合体組成物ペレット(A2)5重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B2)ペレット2.5重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット77.5重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。評価結果を表1に示す。
【0062】
比較例1
エチレン系重合体として、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を99.999重量%、グリセリン脂肪酸エステルとしてグリセリンステアリン酸エステル(G1)0.001重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(A3)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0063】
また、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を99.999重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしてポリオキシエチレンラウリルアミン(Am1)0.001重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(B3)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0064】
エチレン系重合体組成物ペレット(A3)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B3)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット10重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%の代わりに、エチレン系重合体組成物ペレット(A3)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B3)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット10重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示すが、表面固有抵抗値が高く、帯電防止性に劣っていた。
【0065】
【表2】

比較例2
エチレン系重合体として、高圧法低密度ポリエチレン(E1)を98.5重量%、グリセリン脂肪酸エステルとしてグリセリンステアリン酸エステル(G1)を1重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミンとしてポリオキシエチレンラウリルアミン(Am1)0.5重量%を配合し、ニ軸押出機(東洋精機製、商品名:ラボプラストミル)にて溶融混練しペレット化することによりエチレン系重合体組成物ペレット(C1)を得た。その後、得られたペレットを40℃の雰囲気にて1ヶ月間ペレットを放置した。
【0066】
エチレン系重合体組成物ペレット(A1)50重量%とエチレン系重合体組成物ペレット(B1)ペレット25重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット10重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%の代わりに、エチレン系重合体組成物ペレット(C1)50重量%、高圧法低密度ポリエチレン(E1)ペレット35重量%、スリップ剤マスターバッチ(SL1)ペレット2.5重量%、脂肪族アルコールマスターバッチ(MB1)ペレット12.5重量%としたこと以外は実施例3と同様にして積層体を得た。評価結果を表2に示すが、表面固有抵抗値が高く、帯電防止性に劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともエチレン系重合体60〜99.99重量%およびグリセリン脂肪酸エステル0.01〜40重量%からなるエチレン系重合体組成物ペレット(A)、および少なくともエチレン系重合体60〜99.99重量%およびポリオキシエチレンアルキルアミン0.01〜40重量%からなるエチレン系重合体組成物ペレット(B)の少なくとも二種のペレットを含むことを特徴とするエチレン系重合体ペレット混合物。
【請求項2】
請求項1に記載のエチレン系重合体ペレット混合物が、エチレン系重合体96〜99.99重量%、グリセリン脂肪酸エステル0.005重量%〜2重量%、ポリオキシエチレンアルキルアミン0.005〜2重量%から構成されることを特徴とするエチレン系重合体ペレット混合物。
【請求項3】
脂肪族アルコール及び/又は脂肪酸アミドを0.005〜2重量%含むことを特徴とする請求項2に記載のエチレン系重合体ペレット混合物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体ペレット混合物をインフレーション成形またはTダイキャスト成形に供して得られることを特徴とするフィルム。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のエチレン系重合体ペレット混合物を押出ラミネート成形に供して得られることを特徴とする積層体。
【請求項6】
請求項5に記載の積層体を構成する基材がポリエステルフィルムであることを特徴とする積層体。

【公開番号】特開2011−162595(P2011−162595A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−24044(P2010−24044)
【出願日】平成22年2月5日(2010.2.5)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】