説明

エッジ補正回路及びエッジ補正方法

【課題】従来は、出力映像信号の画質が劣化する可能性があった。
【解決手段】入力信号を遅延させる第1の遅延素子群と、前記入力信号とその遅延信号から前記入力信号の傾きの連続性を判定する傾き検出回路と、その判定結果に応じて前記第1の遅延素子群がサンプル点から前後に遅延させた信号を選択する第1、第2の選択回路と、設定に応じて前記第1の遅延素子群がサンプル点から前後に遅延させた信号を選択する第3、第4の選択回路と、前記入力信号の高周波成分を抽出し、その抽出成分をサンプル点に加算した値と前記第1、第2の選択回路が選択した信号の値との中間値を選択する中間値選択回路と、を有するエッジ補正回路。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッジ補正回路及びエッジ補正方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイや、プラズマディスプレイ等の画像表示装置において、映像信号の高画質化に伴い、画像のエッジ部分を強調して映像の鮮鋭度を上げる方法が採用されている。従来のエッジ補正回路として、特許文献1、2のような技術がある。
【0003】
特許文献1では、入力映像信号の傾き量を検出し、その検出結果に応じた遅延量の入力映像信号のタップを選択する。そして、処理対象とするサンプリング点の前後で遅延させた、上記選択した遅延量のタップの信号に所定のゲインをかけ、処理対象のサンプリング点に加算することで、輪郭補正された映像信号を出力する。
【0004】
このような特許文献1の技術で、入力映像信号の傾き量に応じて、サンプリング点から離れた画素の信号の値を利用して、画像のエッジ近傍に発生するシュート成分による輪郭の強調を行う。その結果、映像の輪郭が強調され、よりシャープな解像感を得ることができる。
【0005】
特許文献2では、サンプル点の入力映像信号と、その前後で遅延させた入力映像信号(つまりサンプル点の隣接画素信号)の高周波成分を抽出して整形し、サンプル点に加算する。その加算後の信号の値と、更に前後に遅延させた入力映像信号の値とのうち、入力映像信号の傾きが急峻な場合、中間の値を選択し、出力映像信号とする。
【0006】
このような特許文献2の技術は、FIR(Finite Impulse Response)フィルタであるハイパスフィルタを通過した映像信号のリンギングを除去するLTI(ルミナンス・トランジェント・インプルーブメント)である。この技術により、リンギングの発生を抑制し、画質劣化を抑えつつ、輪郭の鮮鋭度が良好な映像信号を生成可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−236805号公報
【特許文献2】国際公開第2005/084039号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の技術では、映像信号の傾きからできるだけサンプル点から離れたタップの信号を利用することで、エッジ近傍に発生するシュート成分(リンギング)を生成し、そのリンギングを利用することにより、解像感を上げることができる。しかし、この特許文献1の技術では、入力映像信号によっては、そのリンギングの影響により、エッジ近傍にシュートが発生し、白飛び、黒沈み、擬似輪郭等の副作用が発生する可能性がある。
【0009】
ここで、図8に特許文献1にかかるエッジ補正回路の入力映像信号に対する出力映像信号の波形の一例を示す。図8中のA部分に示すように、特許文献1の技術では、大きなシュート成分が発生しており、この部分が上述した白飛び、黒沈み、擬似輪郭等となる。なお、上記特許文献1の技術は、画像のエッジ近傍にリンギング(シュート成分)をあえて発生させているため、LTIではないことを指摘しておく。
【0010】
ここで、リンギングを抑える方法として、特許文献2のような技術が有効である。特許文献2の技術では、中間値選択回路で、隣接画素信号の値の中間値を選択するため、リンギングの除去が可能である。しかし、特許文献2の技術では、エッジ補正処理にサンプル点の近傍の画素での比較を行っているため、急峻な傾きの出力映像信号を生成することが難しい。このため、エッジの傾きの改善が十分でないという問題が発生する。
【0011】
また、ここで、図9に特許文献2にかかるエッジ補正回路の入力映像信号に対する出力映像信号の波形の一例を示す。図9中のB、C部分に示すように、入力映像信号の急激な変化点に出力映像信号の波形の乱れが発生している。この波形の乱れにより、入力映像に対して出力映像の絵柄が変わってしまうという問題を引き起こす場合がある。特にC部分では、出力映像信号の波形の乱れに加えて、トランジェントも劣化してしまっている。
【0012】
このように、従来の特許文献1、2では、図8、図9に示すような出力映像信号が劣化する可能性がある。そこで、このような劣化を抑えるために従来技術である特許文献1に対して特許文献2を適用することが考えられる。しかし、そもそも特許文献1は、リンギング(シュート成分)をあえて発生させる技術であり、シュート成分を抑える特許文献2の適用には、背反した問題を発生させる。よって、このような背反問題を起こさず、出力映像信号の劣化を防止するエッジ補正技術が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様は、入力信号を順に単位遅延量分遅延させ、前記入力信号の補正対象サンプル点より前の遅延を有する複数の第1の遅延信号と、前記補正対象サンプル点より後の遅延を有する複数の第2の遅延信号と、を生成する第1の遅延素子群と、前記入力信号と、前記入力信号から単位遅延量分遅延した差分信号を、順に単位遅延量分遅延させた複数の遅延差分信号から前記入力信号の傾きの連続性を判定する傾き検出回路と、前記傾き判定部の判定結果に応じた遅延量の第1の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択する第1の選択回路と、前記傾き判定部の判定結果に応じた遅延量の第2の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択する第2の選択回路と、設定信号に応じた遅延量の第3の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択する第3の選択回路と、前記設定信号に応じた遅延量の第4の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択する第4の選択回路と、前記入力信号の補正対象サンプル点の信号と、前記第3および第4の択遅延信号とに基づき、前記入力信号の高周波成分を抽出するハイパスフィルタと、前記ハイパスフィルタの抽出成分を前記入力信号の補正対象サンプル点に加算した加算信号を生成する加算回路と、前記加算信号、前記第1、第2の選択遅延信号の各値を比較して、中間の値を有する信号を出力信号とする中間値選択回路と、を有するエッジ補正回路である。
【0014】
本発明の他の態様は、入力信号を順に単位遅延量分遅延させ、前記入力信号の補正対象サンプル点より前の遅延を有する複数の第1の遅延信号と、前記補正対象サンプル点より後の遅延を有する複数の第2の遅延信号と、を生成し、前記入力信号と、前記入力信号から単位遅延量分遅延した差分信号を、順に単位遅延量分遅延させた複数の遅延差分信号から前記入力信号の傾きの連続性の判定結果を生成し、前記判定結果に応じた遅延量の第1の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択し、前記判定結果に応じた遅延量の第2の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択し、設定に応じた遅延量の第3の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択し、前記設定に応じた遅延量の第4の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択し、前記入力信号の補正対象サンプル点の信号と、前記第3および第4の択遅延信号とに基づき、前記入力信号の高周波成分を抽出し、抽出した前記高周波成分を前記入力信号の補正対象サンプル点に加算した加算信号を生成し、前記加算信号、前記第1、第2の選択遅延信号の各値を比較して、中間の値を有する信号を出力信号とするエッジ補正プログラムである。
【0015】
本発明は、入力信号の傾きの連続性を判定する傾き検出回路の判定結果に応じて、第1、第2の選択回路が選択するタップ(第1の遅延素子群が生成する遅延信号)の幅を調整することができる。また、中間値選択回路により、ハイパスフィルタの抽出成分から生成されるシュート成分を除去することができる。このことにより、入力信号に対して出力信号の劣化を防止しつつ、トランジェントを改善することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、入力画像信号に対して、白浮き、黒沈み等の画像劣化の発生を抑えつつ、トランジェントが改善した出力画像信号を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施の形態1にかかるテレビ受像機のブロック構成である。
【図2】実施の形態1にかかるエッジ補正回路の構成である。
【図3】実施の形態1にかかるハイパスフィルタの構成の一例である。
【図4】実施の形態1にかかるエッジ補正回路の動作波形の一例である。
【図5】実施の形態2にかかるエッジ補正回路の構成である。
【図6】DE信号を説明する模式図である。
【図7】その他の実施の形態にかかるエッジ補正回路の構成である。
【図8】従来技術の問題点を説明するための動作波形の一例である。
【図9】従来技術の問題点を説明するための動作波形の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の実施の形態1
【0019】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態1について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態1は、本発明をテレビ受像機のエッジ補正回路に適用したものである。図1に本実施の形態にかかるテレビ受像機TV101のブロック構成の一例を示す。図1に示すように、テレビ受像機TV101は、アンテナ部102と、チューナー部103と、デコーダ部104と、エッジ補正回路100と、エンコーダ部105と、ディスプレイ部106とを有する。
【0020】
チューナー部103は、アンテナ部102からのデジタル放送信号を受信する。デコーダ部104は、チューナー部103が受信したデジタル放送信号をデコードし、映像信号として出力する。
【0021】
エッジ補正回路100は、デコーダ部104が出力した映像信号を入力し、エッジ補正処理を施し、出力する。
【0022】
エンコーダ部105は、エッジ補正回路100が出力した映像信号をディスプレイ部106が処理可能な信号にエンコードする。ディスプレイ部106は、エンコーダ部105が出力した信号に応じて、画像を表示する。
【0023】
なお、デコーダ部104、エッジ補正回路100、エンコーダ部105を1つのLSIで構成してしてもかまわない。
【0024】
図2に、本発明の特徴部分であるエッジ補正回路100の構成を示す。図2に示すように、エッジ補正回路100は、遅延素子111〜118と、選択回路121〜124と、ハイパスフィルタ125と、加算器126と、中間値選択回路127と、傾き検出回路130と、TAPレジスタ150と、乗算器160と、ゲイン調整回路161と、ゲインレジスタ162と、入力端子INと、出力端子OUTとを有する。
【0025】
入力端子INは、図1のデコーダ部104が出力した映像信号(以下、入力映像信号と称す)を入力する。
【0026】
出力端子OUTは、図1のエンコーダ部105へ、当該エッジ補正回路100がエッジ補正した出力映像信号を出力する。
【0027】
遅延素子111〜118は、入力端子INと、ノードN118との間に直列接続される。遅延素子111〜118は、入力端子INから入力した映像信号を遅延させる。本例では、遅延素子111〜118は、入力映像信号をサンプリング単位時間T1で遅延させるフリップフロップとする。遅延素子111〜118が遅延させた遅延映像信号は、それぞれノードN111〜N118に出力される。なお、ノードN111〜N118に印加される遅延映像信号をそれぞれS111〜S118とする。また、必要に応じて、これらの各ノードをタップと称する。
【0028】
傾き検出回路130は、入力映像信号の傾きの連続性を検出する。そして、その検出結果に応じた選択制御信号SEL1を出力する。選択制御信号SEL1は、選択回路121、122の選択する信号を決定する制御信号である。傾き検出回路130は、差分回路140と、差分判定回路131と、遅延素子132〜138と、連続性判定回路139と、を有する。
【0029】
差分回路140は、入力端子INに印加される信号(入力映像信号)と、遅延映像信号S111(入力映像信号がサンプリング単位時間T1だけ遅延した信号)との差分値を、差分信号S140として差分判定回路131へ出力する。なお、サンプリング単位時間T1遅延した信号は、水平走査線上の隣接画素の映像信号(例えば、輝度信号)とみなすことができる。このことから、差分判定回路131は、隣接画素間の映像信号の傾きを検出することができる。このため、差分信号S140の値が「0」の場合は、隣接画素間の映像信号が同じ値となり、傾きが存在しない。差分信号S140の値が正もしくは負の値を有する場合、隣接画素間で傾きを有していることになる。
【0030】
差分判定回路131は、差分回路140が出力した差分信号S140を入力する。そして、差分信号S140の値が所定の閾値(thr)より大きい場合、値が「1」の差分判定信号をノードN131に出力する。または、差分信号S140の値が所定の閾値(−thr)より小さい場合、値が「−1」の差分判定信号をノードN131に出力する。または、差分信号S140の値が所定の閾値以内(−thr〜thr)である場合、値が「0」の差分判定信号をノードN131に出力する。なお、以後、この差分判定信号をS131とする。
【0031】
入力映像信号にノイズが乗っている場合、差分値が「0」(つまり、隣接画素間の映像信号の傾きがない)であっても、そのノイズによって差分信号S140も「0」以外の値を持ち、変動する。ここで、上記閾値(−thr〜thr)を設定することにより、差分信号S140がこの閾値(−thr〜thr)以内であるならば、ノイズであるとみなし無視することができる。なお、差分回路140と差分判定回路131を1つの回路構成とした、差分信号生成回路としてもよい。
【0032】
遅延素子132〜138は、ノードN132とN138との間に直列接続される。遅延素子132〜138は、ノードN131の差分判定信号S131を遅延させる。本例では、遅延素子132〜138は、遅延素子111〜118と同様、入力した信号をサンプリング単位時間T1で遅延させるフリップフロップとする。遅延素子132〜138が遅延させた差分判定信号は、それぞれノードN132〜N138に出力される。なお、これらノードN132〜N138に出力される信号をそれぞれ差分判定信号S132〜S138とする。
【0033】
連続性判定回路139は、差分判定信号S131〜S138を入力し、隣接画素間の映像信号の傾きがどの程度連続しているのか判定する。そして、その判定結果を選択制御信号SEL1として出力する。
【0034】
例えば、差分判定信号S131〜S138が同じ値(例えば、全て「1」)であると判定した場合、選択制御信号SEL1の値を「4」として出力する。または、差分判定信号S132〜S136が同じ値であると判定した場合、選択制御信号SEL1の値を「3」として出力する。または、差分判定信号S133〜S136が同じ値であると判定した場合、選択制御信号SEL1の値を「2」として出力する。または、差分判定信号S134とS135が同じ値であると判定した場合、選択制御信号SEL1の値を「1」として出力する。または、差分判定信号S134とS135が同じ値でないと判定した場合、選択制御信号SEL1の値を「0」として出力する。
【0035】
なお、上記のように、差分判定信号S131〜S138は、それぞれ隣接タップ間の遅延映像信号の差を示している。このため、例えば、差分判定信号S134とS135の値が共に「1」である場合、遅延映像信号S113〜S115まで単調増加していることになる。更に例えば、差分判定信号S133〜S136の値が全て「1」である場合、遅延映像信号S112〜S116まで単調増加していることになる。更に例えば、差分判定信号S132〜S137の値が全て「1」である場合、遅延映像信号S111〜S117まで単調増加していることになる。更に例えば、差分判定信号S131〜S138の値が全て「1」である場合、入力映像信号から遅延映像信号S118まで単調増加していることになる。
【0036】
選択回路123は、入力映像信号、及び、遅延映像信号S111〜S113を入力する。そして、選択制御信号SEL1に応じて、入力映像信号、遅延映像信号S111〜S113のうち1つを選択し、選択映像信号S123として出力する。
【0037】
例えば、選択制御信号SEL1の値が「1」である場合、遅延映像信号S113を選択し、出力する。または、選択制御信号SEL1の値が「2」である場合、遅延映像信号S112を選択し、出力する。または、選択制御信号SEL1の値が「3」である場合、遅延映像信号S111を選択し、出力する。または、選択制御信号SEL1の値が「4」である場合、入力映像信号を選択し、出力する。
【0038】
選択回路124は、遅延映像信号S115〜S118を入力する。そして、選択制御信号SEL1に応じて、遅延映像信号S115〜S118のうち1つを選択し、選択映像信号S124として出力する。
【0039】
例えば、選択制御信号SEL1の値が「1」である場合、遅延映像信号S115を選択し、出力する。または、選択制御信号SEL1の値が「2」である場合、遅延映像信号S116を選択し、出力する。または、選択制御信号SEL1の値が「3」である場合、遅延映像信号S117を選択し、出力する。または、選択制御信号SEL1の値が「4」である場合、遅延映像信号S118を選択し、出力する。
【0040】
入力映像信号、及び、遅延映像信号S111〜S118は、上述したように対応する各タップから出力されるとみなすことができ、選択回路123、124は、傾き検出回路130からの選択制御信号SEL1の値が大きくなるに従って、選択するタップの間隔を広げていくことになる。
【0041】
選択回路121は、入力映像信号、及び、遅延映像信号S111〜S113を入力する。そして、TAPレジスタ150の保持する値に応じて、入力映像信号、遅延映像信号S111〜S113のうち1つを選択し、選択映像信号S121として出力する。
【0042】
例えば、TAPレジスタ150の保持する値が「1」である場合、遅延映像信号S113を選択し、出力する。または、TAPレジスタ150の保持する値が「2」である場合、遅延映像信号S112を選択し、出力する。または、TAPレジスタ150の保持する値が「3」である場合、遅延映像信号S111を選択し、出力する。または、TAPレジスタ150の保持する値が「4」である場合、入力映像信号を選択し、出力する。
【0043】
選択回路122は、遅延映像信号S115〜S118を入力する。そして、TAPレジスタ150の保持する値に応じて、遅延映像信号S115〜S118のうち1つを選択し、選択映像信号S122として出力する。
【0044】
例えば、TAPレジスタ150の保持する値が「1」である場合、遅延映像信号S115を選択し、出力する。または、TAPレジスタ150の保持する値が「2」である場合、遅延映像信号S116を選択し、出力する。または、TAPレジスタ150の保持する値が「3」である場合、遅延映像信号S117を選択し、出力する。または、TAPレジスタ150の保持する値が「4」である場合、遅延映像信号S118を選択し、出力する。
【0045】
TAPレジスタ150は、保持する値に応じて上述したように選択回路121、122を制御する。TAPレジスタ150の値は、固定値であってもよいし、LSIのコントローラの制御信号に応じて変化させてもよい。固定値の場合は、本エッジ補正回路100を備えるLSI(図1参照)の起動時に、LSIのコントローラの制御信号により設定される。
【0046】
または、TAPレジスタ150の値として、選択制御信号SEL1の値を利用してもよい。例えば、TAPレジスタ150の値を(SEL1+1)とすることで、入力映像信号の傾きに応じて、選択回路121、122が出力する選択映像信号を変えることができる。但し、SEL1=4の場合、TAPレジスタ150の値は「5」とならず「4」で制限される。
【0047】
ハイパスフィルタ125は、選択映像信号S121、S122、及び、遅延映像信号S114を入力し、その高周波成分を抽出する。ハイパスフィルタ125の具体的な構成の一例として、図3に示すFIRフィルタ等がある。なお、これは一例でありハイパスフィルタ125は、図3以外の回路構成であってもよい。
【0048】
図3に示すように、ハイパスフィルタ125は、乗算器141〜143と、加算器144、145とを有する。乗算器141〜143の乗算係数は、例えば、それぞれ−1、+2、−1とする。乗算器141は、選択映像信号S121を入力し、所定の乗算係数で増幅する。乗算器142は、遅延映像信号S114を入力し、所定の乗算係数で増幅する。乗算器143は、選択映像信号S122を入力し、所定の乗算係数で増幅する。そして、加算器144、145により乗算器141〜143の出力が加算され、ハイパスフィルタ125の出力信号S125が出力される。なお、図3に示すFIRフィルタであるハイパスフィルタ125の動作は、公知であるため、動作の説明等は省略する。
【0049】
乗算器160は、ハイパスフィルタ125が出力したハイパスフィルタ出力信号S125を、ゲイン値生成回路161で設定されるゲイン値(例えば、1/2や1/4等)で増幅し、加算器126へ出力する。ゲイン値生成回路161が設定する上記ゲイン値は、ゲインレジスタ162が保持する値に応じて変更可能である。
【0050】
加算器126は、乗算器160により増幅されたハイパスフィルタ出力信号S125を、遅延映像信号S114に加算し、加算映像信号S126として出力する。つまり、本エッジ補正回路100は、遅延映像信号S114を補正対象サンプル点としている。これ以降、遅延映像信号S114を必要に応じて補正対象サンプル点信号と称する。
【0051】
中間値選択回路127は、加算映像信号S126、選択映像信号S123、S124のうち中間の値を有する信号を選択する。そして、その選択した信号を出力映像信号として、出力端子OUTに出力する。例えば、選択映像信号S121が「1」、加算映像信号S126が「7」、選択映像信号S122が「5」である場合、中間の値である「5」つまり、選択映像信号S122を選択し、出力映像信号として出力端子OUTに出力する。
【0052】
以上のようなエッジ補正回路100の動作波形の一例を図4に示す。図4は、図8、図9と同様の入力映像信号に対して、エッジ補正回路100が出力する出力映像信号の波形である。なお、従来技術との比較のため、図9で示した特許文献2にかかるエッジ補正回路の入力映像信号に対する出力映像信号の波形も同時に示す。図4に示すように、入力映像信号波形の単調増加部分及び単純減少部分では、従来技術に対して傾きを急峻した出力映像信号波形となっており、トランジェントの改善が行われている。更に、従来技術で問題となっていた図8でのシュート成分や、図9で発生していた信号の急な変動点での波形の乱れの発生が抑制されている。
【0053】
このように、本実施の形態1のエッジ補正回路100は、入力映像信号の傾きの連続性を傾き検出回路130で検出し、その検出結果に応じて選択回路123、124の選択するタップの間隔を広げる。このことにより、シュート成分の除去や入力映像信号の急な変動点での波形の乱れの抑制が可能となり、且つ、トランジェントの改善が可能となる。
【0054】
発明の実施の形態2
【0055】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態2について、図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態2は、実施の形態1と同様、本発明をテレビ受像機のエッジ補正回路に適用したものである。
【0056】
図5に本実施の形態2にかかるエッジ補正回路200の構成を示す。図5に示すように、エッジ補正回路200は、遅延素子111〜118と、選択回路121〜124と、ハイパスフィルタ125と、加算器126と、中間値選択回路127と、傾き検出回路130と、TAPレジスタ150と、乗算器160と、ゲイン調整回路161と、ゲインレジスタ162と、ノイズ判定回路260と、除去回路266と、乗算器267と、入力端子INと、出力端子OUTと、DE入力端子DE_INを有する。
【0057】
なお、図5に示された符号のうち、図2と同じ符号を付した構成は、図2と同じか又は類似の構成を示している。本実施の形態2が、実施の形態1と異なるのはノイズ判定回路260等が新たに付加されている点である。本実施の形態2では、その相違部分を重点的に説明し、その他の実施の形態1と同様の部分の説明は省略する。
【0058】
DE入力端子DE_INは、映像入力信号がブランキング部分の信号か否かを示すDE信号を入力する。DE信号は、図6の模式図に示すようにディスプレイの表示部分の外側であるブランキング(黒表示)部分でDE=0となる信号である。なお、映像表示部分ではDE=1となる。DE信号は、例えば水平同期信号を利用することで生成することができる。
【0059】
ノイズ判定回路260は、絶対値生成回路261と、リミッタ回路262と、閾値生成回路263と、コアリング値生成回路264と、タイミング調整回路265とを有する。
【0060】
ノイズ判定回路260は、DE=0の区間の入力映像信号、つまり映像信号がないブランキング部分の信号に乗ったノイズ成分を検出する。そして、その検出したノイズ成分に応じて差分判定回路131のDE=1の区間における閾値を変更する。また、DE=1の区間において、ハイパスフィルタ125の出力信号から、検出したノイズ成分に応じた値を取り除く機能を有している。
【0061】
絶対値生成回路261は、差分回路140が出力した差分信号S140の絶対値を生成し、リミッタ回路262へ絶対値信号S261として出力する。
【0062】
リミッタ回路262は、絶対値信号S261が所定の値(bthr)以上となった場合、絶対値信号S261を所定の値(bthr)に抑制して閾値生成回路263に出力する。
【0063】
例えば、入力映像信号に恒常的なノイズではなく、突発的に大きなノイズが乗ってしまった場合、差分信号S140も大きな値となってしまう。このため、絶対値生成回路261が出力する絶対値信号S261も大きな値となる。このため、リミッタ回路262は、上記所定の値(bthr)以上である場合は、上述した突発的ノイズ成分であるとして、その値を除去する機能を有する。
【0064】
閾値生成回路263は、リミッタ回路262を経て入力される絶対値信号S261の平均値を閾値信号STHとして出力する。この閾値信号STHは、差分判定回路131に入力される。閾値生成回路263は、例えば、IIR(Infinite Impulse Response)フィルタで構成される。このIIRにより、入力の急激な値の変化に対して敏感に反応しないように抑止された、上記閾値信号STHを出力することができる。
【0065】
実施の形態1では、差分判定回路131に固定した値の閾値(−thr〜thr)があらかじめ設定されていた。しかし、本実施の形態2では、差分判定回路131の閾値(−thr〜thr)が上記閾値信号STHに応じて可変する。よって、入力映像信号に大きなノイズが乗っている場合には、差分判定回路131の閾値(−thr〜thr)を大きくし、入力映像信号に小さなノイズしか乗っていない場合には、差分判定回路131の閾値(−thr〜thr)を小さくすることができる。
【0066】
ノイズ判定回路260は、上述したようにDE=0の区間のブランキング部分の信号に乗ったノイズ成分を検出し、その検出結果に応じて差分判定回路131のDE=1の区間における閾値を変更する。このため閾値生成回路263が閾値信号STHを生成する動作は、DE=0の区間に行われる。一方、DE=1の区間では、DE=0の区間で生成された閾値信号STHの値が保持され、その保持された値の閾値信号STHに応じて差分判定回路131が動作を行う。
【0067】
また、後述する除去回路266で行うハイパスフィルタ125の出力信号から、検出したノイズ成分に応じた値を取り除く動作もDE=0の区間で生成された閾値信号STHを基に行われる。
【0068】
コアリング値生成回路264は、閾値生成回路263が出力した閾値信号STHに応じたコアリング値信号SCORを出力する。例えば、コアリング値信号SCORの値を、閾値信号STHの値を用いて式(1)のように計算する。
SCOR=COR_BASE+STH×COR_VAL ・・・(1)
【0069】
但し、式(1)にあるCOR_BASE及びCOR_VALの値はレジスタ等で任意に調整可能なパラメータである。
【0070】
除去回路266は、コアリング値生成回路264が出力したコアリング値信号SCORを、タイミング調整回路265を経由して入力する。そして、乗算器160により増幅されたハイパスフィルタ出力信号S125の値からコアリング値信号SCORの値を除算する。そして、この除算後の信号をS266として出力する。
【0071】
乗算器267は、タイミング調整回路265を経由して入力されるDE信号と、除去回路266の出力信号S266を乗算し、出力する。
【0072】
上述したように、DE信号はブランキング区間の値が「0」であるため、乗算器267の出力する値も「0」固定となる。よって、加算器126が出力する加算映像信号S126は、ブランキング区間の補正対象サンプル点信号(遅延映像信号S114)がそのまま出力される。
【0073】
一方、映像表示部分ではDE信号の値が「1」であるため、乗算器267はスルー回路となり、除去回路266の出力信号S266を後段の加算器126へ伝達する。このため、加算器126は、除去回路266の出力信号S266と補正対象サンプル点信号(遅延映像信号S114)の値を加算し、加算映像信号S126として出力する。
【0074】
タイミング調整回路265は、遅延回路等からなり、コアリング値信号SCORやDE信号の出力タイミングを調整する。より具体的には、ノイズ判定回路260が入力した差分信号S131に対応する補正対象サンプル点信号(遅延映像信号S114)に合わせてコアリング値信号SCORやDE信号の出力タイミングが調整される。
【0075】
以上のような構成のノイズ判定回路260を備えることで、本実施の形態2のエッジ補正回路200は、入力映像信号にノイズ成分が乗っている場合に、そのノイズ成分に応じた値を除去して出力映像信号を生成する。また、差分判定回路131の閾値を上記ノイズ成分に応じて変化させることで、傾き検出回路130による入力映像信号の傾きの連続性の検出精度を上げることができる。このため、実施の形態1と比較して、入力映像信号に対するノイズ耐性を上げることができ、出力映像信号の映像品質をより向上させることが可能となる。
【0076】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものでなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【0077】
例えば、図7に示すエッジ補正回路300のように、乗算器267の前段にゲイン値生成回路370を追加してもよい。ゲイン値生成回路370は、DE信号の値が「1」のときの乗算器267のゲインを調整する。
【0078】
例えば、ゲイン値生成回路370により乗算器267のゲインが0.5に調整された場合、信号強度が50%となった出力信号S266が加算器126で補正対象サンプル点信号に加算される。このゲイン値生成回路370による乗算器267のゲインの調整は、ゲインレジスタ371が保持する値により可変とすることができる。なお、ゲインレジスタ371は、ゲイン値生成回路370が内部に有していてもよい。ゲインレジスタ371の値は、コントローラ等からの制御信号により書き換えられる。このように、エッジ補正回路300では、補正対象サンプル点信号に行うエッジ補正の強弱を調整することが可能となる。
【0079】
また、上述したエッジ補正回路100〜300と同様の機能を、PC等のコンピュータプログラムで実現してもよい。つまり、入力映像信号のデータを、エッジ補正回路100〜300と同様の動作でソフトウエア的に処理し、その処理結果を出力映像信号のデータとして得るようにしてもよい。
【符号の説明】
【0080】
100、200、300 エッジ補正回路
101 テレビ受像機
102 アンテナ部
103 チューナー部
104 デコーダ部
105 エンコーダ部
106 ディスプレイ部
111〜118 遅延素子
121〜124 選択回路
125 ハイパスフィルタ
126 加算器
127 中間値選択回路
130 傾き検出回路
150 TAPレジスタ
IN 入力端子
OUT 出力端子
131 差分判定回路
132〜138 遅延素子
139 連続性判定回路
140 差分回路
260 ノイズ判定回路
266 除去回路
267 乗算器
DE_IN DE入力端子
261 絶対値生成回路
262 リミッタ回路
263 閾値生成回路
264 コアリング値生成回路
265 タイミング調整回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号を順に単位遅延量分遅延させ、前記入力信号の補正対象サンプル点より前の遅延を有する複数の第1の遅延信号と、前記補正対象サンプル点より後の遅延を有する複数の第2の遅延信号と、を生成する第1の遅延素子群と、
前記入力信号と、前記入力信号から単位遅延量分遅延した差分信号を、順に単位遅延量分遅延させた複数の遅延差分信号から前記入力信号の傾きの連続性を判定する傾き検出回路と、
前記傾き判定部の判定結果に応じた遅延量の第1の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択する第1の選択回路と、
前記傾き判定部の判定結果に応じた遅延量の第2の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択する第2の選択回路と、
設定信号に応じた遅延量の第3の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択する第3の選択回路と、
前記設定信号に応じた遅延量の第4の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択する第4の選択回路と、
前記入力信号の補正対象サンプル点の信号と、前記第3および第4の択遅延信号とに基づき、前記入力信号の高周波成分を抽出するハイパスフィルタと、
前記ハイパスフィルタの抽出成分を前記入力信号の補正対象サンプル点に加算した加算信号を生成する加算回路と、
前記加算信号、前記第1、第2の選択遅延信号の各値を比較して、中間の値を有する信号を出力信号とする中間値選択回路と、を有する
エッジ補正回路。
【請求項2】
前記傾き検出回路は、
前記入力信号と、前記第1の遅延素子群が生成する前記入力信号に対して前記単位遅延量1つ分遅延した信号と、に応じた差分判定信号を生成する差分信号生成回路と、
前記差分判定信号を順に単位遅延量分遅延させ、複数の遅延差分信号を生成する第2の遅延素子群と、
前記複数の遅延差分信号から前記入力信号の傾きの連続性を判定する連続判定部と、を有する
請求項1に記載のエッジ補正回路。
【請求項3】
前記差分信号生成回路は、
前記入力信号と、前記第1の遅延素子群が生成する前記入力信号に対して前記単位遅延量1つ分遅延した信号とを差分した差分信号を生成する差分回路と、
前記差分信号が、第1の閾値から第2の閾値の値の範囲内である場合第1の値の前記差分判定信号を生成し、前記第1の閾値以上である場合第2の値の前記差分判定信号を生成し、前記第2の閾値以下である場合第3の値の前記差分判定信号を生成する差分判定回路と、を有する
請求項2に記載のエッジ補正回路。
【請求項4】
前記出力信号は、ディスプレイ装置が表示する映像信号に使用され、
前記映像信号がブランク部分のときに入力される前記入力信号に応じて生成される前記差分信号に基づき前記第1、第2の閾値の値を変化させる閾値信号を生成するノイズ判定回路を更に有する
請求項3に記載のエッジ補正回路。
【請求項5】
前記ノイズ判定回路は、
前記映像信号がブランク部分のときに入力される前記入力信号に応じて生成される前記差分信号が所定の値以上のとき、前記所定の値に抑制した信号を出力するリミッタ回路と、
前記リミッタ回路の出力した信号の値を所定の回数、平均化した値を前記閾値信号として出力する閾値生成回路と、を有する
請求項4に記載のエッジ補正回路。
【請求項6】
前記ハイパスフィルタと前記加算器の間に接続され、前記映像信号がブランク部分ではないときに、前記ハイパスフィルタの抽出成分から前記閾値信号に応じた値を除去する除去回路を更に有する
請求項5に記載のエッジ補正回路。
【請求項7】
前記除去回路と前記加算器の間に接続される乗算器を更に有し、
前記乗算器は、
前記映像信号がブランク部分のとき、前記除去回路の出力信号をスルーして前記加算器に出力し、
前記映像信号がブランク部分ではないとき、前記除去回路の出力信号に所定の乗算係数をかけて前記加算器に出力する
請求項6に記載のエッジ補正回路。
【請求項8】
前記設定信号は、設定レジスタの保持する値に応じて決定される
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のエッジ補正回路。
【請求項9】
前記設定レジスタの値は、前記傾き検出回路の判定結果に応じて変化する
請求項8に記載のエッジ補正回路。
【請求項10】
入力信号を順に単位遅延量分遅延させ、前記入力信号の補正対象サンプル点より前の遅延を有する複数の第1の遅延信号と、前記補正対象サンプル点より後の遅延を有する複数の第2の遅延信号と、を生成し、
前記入力信号と、前記入力信号から単位遅延量分遅延した差分信号を、順に単位遅延量分遅延させた複数の遅延差分信号から前記入力信号の傾きの連続性の判定結果を生成し、
前記判定結果に応じた遅延量の第1の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択し、
前記判定結果に応じた遅延量の第2の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択し、
設定に応じた遅延量の第3の選択遅延信号を、前記複数の第1の遅延信号から選択し、
前記設定に応じた遅延量の第4の選択遅延信号を、前記複数の第2の遅延信号から選択し、
前記入力信号の補正対象サンプル点の信号と、前記第3および第4の択遅延信号とに基づき、前記入力信号の高周波成分を抽出し、
抽出した前記高周波成分を前記入力信号の補正対象サンプル点に加算した加算信号を生成し、
前記加算信号、前記第1、第2の選択遅延信号の各値を比較して、中間の値を有する信号を出力信号とする
エッジ補正プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−34266(P2012−34266A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173469(P2010−173469)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】