説明

エナミンの触媒的不斉水素化によるピリド[2,1−A]イソキノリン誘導体の調製方法

本発明は、a)キラルジホスファンリガンドを含有する遷移金属触媒の存在下で、式(II)[式中、Rは低級アルキルである]のエナミンを触媒的不斉水素化する工程、b)アミノ保護基Protを導入する工程、及びc)エステルをアミド化して、式(V)[式中、R、R、R及びProtは、明細書に定義のとおりである]のアミドを形成する工程を含む、式(I)[式中、R、R及びRは、明細書に定義のとおりである]のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の調製方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DPP IVに関連する疾患の処置及び/又は予防に有用な、式I:
【0002】
【化1】

【0003】
[式中、
、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニル(ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルからなる基により置換されていてもよい)からなる群より選択される]のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体及びその薬学的に許容しうる塩の調製方法に関する。
【0004】
式Iのピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体は、PCT International Patent Appl. WO 2005/000848に開示されている。
【0005】
式Iの化合物の合成における主要な課題は、ピリド[2,1−a]イソキノリン部分におけるキラル中心の導入であり、それは、PCT Int. Appl. WO 2005/000848に記載の現在の合成において、キラルHPLCによる後期の段階でのラセミ化合物の分離を伴う。しかしながら、このような方法は、技術的規模において取り扱いが困難である。したがって、解決すべき課題は、工程の初期の段階で所望の光学異性体を得ることができ、高い収率を得て、技術的規模で実施することができる、適切な代替的方法を見つけることである。
【0006】
以下に概略する本発明の方法を用いて、その問題を解決できることが見出された。
【0007】
特に断りのない限り、以下の定義を、本発明を記載するために用いられる種々の用語の意味および範囲を説明し、定義するために示す。
【0008】
本明細書において、用語「低級」は、1〜6個、好ましくは1〜4個の炭素原子からなる基を意味するのに用いられる。
【0009】
用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表し、フッ素、臭素及び塩素が好ましい。
【0010】
用語「アルキル」は、単独で、又は他の基と組み合わされて、1〜20個の炭素原子、好ましくは1〜16個の炭素原子、さらに好ましくは1〜10個の炭素原子の分岐鎖又は直鎖の一価飽和脂肪族炭化水素基を表す。
【0011】
用語「低級アルキル」は、単独で、又は他の基と組み合わされて、1〜6個の炭素原子、好ましくは1〜4個の炭素原子の分岐鎖又は直鎖の一価アルキル基を表す。この用語はさらに、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、s−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、3−メチルブチル、n−ヘキシル、2−エチルブチルなどの基により例示される。好ましい低級アルキル残基は、メチル及びエチルであり、メチルが特に好ましい。
【0012】
用語「ハロゲン化低級アルキル」は、低級アルキル基の少なくとも1個の水素が、ハロゲン原子、好ましくはフルオロ又はクロロに置き換えられている、上記と同義の低級アルキル基を表す。そのうち、好ましいハロゲン化低級アルキル基は、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、フルオロメチル及びクロロメチルである。
【0013】
本明細書で使用される用語「アルケニル」は、2〜6個の炭素原子、好ましくは2〜4個の炭素原子を有し、1又は2個のオレフィン二重結合、好ましくは1個のオレフィン二重結合を有する、非置換又は置換された炭化水素鎖基を示す。例は、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル(アリル)又は2−ブテニル(クロチル)である。
【0014】
用語「アルコキシ」は、基R'−O−(ここで、R'は、アルキルである)を表す。用語「低級アルコキシ」は、基R'−O−(ここで、R'は、上記と同義の低級アルキル基である)を表す。低級アルコキシ基の例は、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ及びヘキシルオキシであり、メトキシが特に好ましい。
【0015】
用語「低級アルコキシカルボニル」は、基R'−O−C(O)−(ここで、R'は、上記と同義の低級アルキル基である)を表す。
【0016】
用語「アリール」は、芳香族一価モノ−又はポリ炭素環式基、好ましくはフェニル又はナフチルを表し、前記アリールは、非置換であるか、あるいは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、アジド、アミノ、低級ジアルキルアミノ又はヒドロキシにより、独立して、モノ−、ジ−又はトリ−置換されている。さらに好ましくは、「アリール」は、置換されたフェニルであるか、あるいは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ、アジド、アミノ、低級ジアルキルアミノ又はヒドロキシにより、独立して、モノ−、ジ−又はトリ−置換されたフェニルである。
【0017】
用語「アリール」(ジホスフィンリガンドの定義に使用)は、芳香族一価モノ−又はポリ炭素環式基、好ましくはフェニル又はナフチルを表し、前記アリールは、非置換であるか、あるいは低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ハロゲン化低級アルキル、シアノ、アミノ、低級ジアルキルアミノ、モルホリノ、−SOH、−SO−低級ジアルキルアミノ、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)−低級アルキルアミノ、−C(O)−低級ジアルキルアミノ、フェニル及び低級トリアルキルシリルにより、独立して、モノ−、ジ−又はトリ−置換されている。好ましい「アリール」は、非置換フェニルであるか、あるいは低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ、ハロ、ハロゲン化低級アルキル、シアノ、アミノ、低級ジアルキルアミノ、モルホリノ、−SOH、−SO−低級ジアルキルアミノ、−C(O)O−低級アルキル、−C(O)−低級アルキルアミノ、−C(O)−低級ジアルキルアミノ、フェニル及び低級トリアルキルシリルにより、独立して、モノ−、ジ−又はトリ−置換された、フェニルである。
【0018】
用語「低級アルキルアミノ」は、基−NHR'(ここで、R'は、上記と同義の低級アルキル基である)を表す。
【0019】
用語「低級ジアルキルアミノ」は、基−NR'R”(ここで、R'及びR”は、上記と同義の低級アルキル基である)を表す。
【0020】
用語「シクロアルキル」は、3〜6個、好ましくは4〜6個の炭素原子の一価炭素環式基を表す。この用語はさらに、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルなどの基により例示され、シクロペンチル及びシクロヘキシルが好ましい。このようなシクロアルキル残基は、場合により、低級アルキル又はハロゲンにより、独立して、モノ−、ジ−又はトリ−置換されていてもよい。
【0021】
用語「ヘテロシクリル」は、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、モルホリノ、ピペラジノ、ピペリジノ又はピロリジノ、好ましくはピリジル、チアゾリル又はモルホリノなどの、さらなる窒素又は酸素原子を場合により含んでもよい、5員又は6員芳香族又は飽和N−複素環残基を表す。このような複素環は、場合により、低級アルキル、低級アルコキシ、ハロ、シアノ、アジド、アミノ、低級ジアルキルアミノ又はヒドロキシにより、独立して、モノ−、ジ−又はトリ−置換されていてもよい。好ましい置換基は、低級アルキルであり、メチルが好ましい。
【0022】
用語「ヘテロアリール」(ジホスフィンリガンドの定義に使用)は、一価複素環式5員又は6員芳香族基(ここで、ヘテロ原子はN、O又はSから選択される)を表す。好ましい「ヘテロアリール」基は、チエニル、インドリル,ピリジニル、ピリミジニル、イミダゾリル、ピペリジニル、フラニル、ピロリル、イソオキサゾリル、ピラゾリル、ピラジニル、ベンゾ[1.3]ジオキソリル、ベンゾ{b}チオフェニル及びベンゾトリアゾリルからなる群より選択され、前記基は、非置換であるか、あるいは低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、ハロゲン化低級アルキル、シアノ、アジド、アミノ、低級アルキルアミノ、低級ジアルキルアミノ、−SOH、−SO−低級アルキル、−SO−低級ジアルキルアミノ、ニトロ、低級アルコキシカルボニル、−C(O)−低級アルキルアミノ、−C(O)−低級ジアルキルアミノ、ヒドロキシなどより独立して選択される1個以上の置換基により置換されている。
【0023】
用語「薬学的に許容しうる塩」は、生体に対して非毒性である、塩酸、臭化水素酸、硝酸、硫酸、リン酸、クエン酸、ギ酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、メタンスルホン酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸などの無機又は有機酸との式Iの化合物の塩を包含する。酸との好ましい塩は、ギ酸塩、マレイン酸塩、クエン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩及びメタンスルホン酸塩であり、塩酸塩が特に好ましい。
【0024】
詳細には、本発明は、工程a)及び/又はb)及び/又はc)を含む、式I:
【0025】
【化2】

【0026】
[式中、R、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニル(ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルより選択される基により置換されていてもよい)からなる群より選択される]のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の調製方法に関し、
工程a)は、遷移金属触媒の存在下で、式II:
【0027】
【化3】

【0028】
[式中、R、R及びR

上記と同義であり、Rは低級アルキルである]のエナミンを触媒的不斉水素化して、式IIIaの(all−S)−アミノエステルを、単独で又は3R−エピマーIIIbとの混合物として形成することを含み
【0029】
【化4】

【0030】
[式中、R、R及びRは上記と同義であり、R1'は低級アルキル又はハロゲン化低級アルキルである];
工程b)は、アミノ保護基Protを導入して、式:
【0031】
【化5】

【0032】
[式中、R1'、R、R及びRは上記と同義であり、Protはアミノ保護基を表す]のN−保護(2S)−アミノエステルを形成することを含み;
工程c)は、式IVa及びIVbのエステルをアミド化して、式V:
【0033】
【化6】

【0034】
[式中、R、R、R及びProtは上記と同義である]のアミドを形成することを含む。
【0035】
一つの実施態様において、本発明の方法は、前記と同義の工程a)を含む。
【0036】
別の実施態様において、本発明の方法は、前記と同義の、工程a)及びそれに続く工程b)を含む。
【0037】
本発明のさらに別の実施態様において、方法は、工程a)〜c)を共に含む。
【0038】
工程a)は、遷移金属触媒の存在下で、式II:
【0039】
【化7】

【0040】
[式中、R、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニル(ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルより選択される基により置換されていてもよい)からなる群より選択され、Rは低級アルキルである]のエナミンを触媒的不斉水素化して、式IIIaの(all−S)−アミノエステルを、単独で又は3R−エピマーIIIbとの混合物として形成することを含む
【0041】
【化8】

【0042】
[式中、R、R及びRは上記と同義であり、R1'は低級アルキル又はハロゲン化低級アルキルである]。
【0043】
工程a)において使用される溶媒に応じて、エステル基−COORのトランスエステル化が可能であるため、R1'が低級アルキル又はハロゲン化低級アルキルである、式IIIa及びIIIBの化合物が得られる。例えば、2,2,2−トリフルオロエタノールを溶媒として使用する場合、R1'がRと等しい化合物の他に、R1'が2,2,2−トリフルオロエチルである、式IIIa又はIIIbの化合物が得られる。
【0044】
式IIのエナミンを、下記のスキーム1に従って、市販の前駆体から合成することができる。
【0045】
【化9】

【0046】
便宜上、遷移金属触媒は、ジホスフィンリガンドを含有する、ルテニウム、ロジウム又はイリジウム錯体触媒から選択される。
【0047】
最も好ましくは、遷移金属触媒は、ジホスフィンリガンドを含有するロジウム錯体触媒である。
【0048】
本発明の好ましい実施態様においては、ジホスフィンリガンドは、式A〜Q:
【0049】
【化10】


【0050】
[式中、
はそれぞれ、互いに独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及び低級アルキルからなる群より選択され;
5'は、水素及び低級アルキルからなる群より選択され;
5”は、水素、低級アルキル及びフェニルからなる群より選択され;
はそれぞれ、互いに独立して、低級アルキルであり;
はそれぞれ、互いに独立して、低級アルキル又はアリールであり;
及びR8'は、互いに独立して、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ及び−O−C(O)−低級アルキルからなる群より選択され;
、R9'、R10及びR10'は、互いに独立して、水素、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級ジアルキルアミノからなる群より選択されるか;あるいは
及びR、R8'及びR9'、R及びR10、R9'及びR10'又はR及びR8'は、両方が一緒になって、−X−(CHn−Y−(ここで、Xは−O−又は−C(O)O−であり、Yは−O−又は−N(低級アルキル)−であり、nは1〜6の整数である)であるか;あるいは
及びR、R8'及びR9'、R及びR10又はR9'及びR10'は、両方が一緒になって、−CF−基であるか、又はそれらが結合する炭素原子と一緒になってナフチル、テトラヒドロナフチル、ジベンゾチエニル又はジベンゾフラニル環を形成し;
11及びR11'は、互いに独立して、アリール、低級アルキル、ヘテロアリール及びシクロアルキルからなる群より選択されるか;あるいは
11及びR11'は、一緒になって、キラルホスホラン又はホスフェタン環を形成する]からなる群より選択される化合物である。
【0051】
特に好ましいのは、式A:
【0052】
【化11】

【0053】
[式中、
はそれぞれ、互いに独立して、アリール、ヘテロシクリル、シクロアルキル及び低級アルキルからなる群より選択され;
5'は、水素及び低級アルキルからなる群より選択され;
5”は、水素、低級アルキル及びフェニルからなる群より選択される]のジホスフィンリガンドである。
【0054】
好ましい触媒は、
DCyPP、
DPPP、
DPPB、
1,2−ビス(iPrP)−アセナフチレン、
PiPPP、
(S,R)−PPF−P(tBu)
(R)−CyMeOBIPHEP、
(S,S)−MeDuphos、
(R,R)−SKEWPHOS、
(1R,1'R,2S,2'S)−DuanPhos、
(S,S)−BCPM、
(R,R)−(Cy)(3,5−tBu)−DIOP、
(R)−Cy−BIPHEMP、
(R)−Cy−MeOBIPHEP、
(S)−Binapine、
(S,S,R)−MePHOS−MeOBIPHEP、
(R)−iPr−MeOBIPHEP、
(R)−Et−BIPHEMP、
(S,R)−CyPF−PPh
(R,R)−XylPPhFcCHCHPXyl
(R,R)−PhPPhFcCHCHPPh
(R,R)−PhPPhFcCHCHPXyl
(S,R)−MOD−PPF−P(tBu)
(S)−TMBTP、
(all−S)−BICP、
(S,R)−フリルPF−P(tBu)
(S,R)−(3,5−tBu−4−MeOPh)PF−P(tBu)
(S,R)−(2−MeOPh)PF−P(tBu)
(S,R)−(4−F−Ph)PF−P(tBu)及び
(R)−PP(4−Ph)F−CHP(tBu)からなる群より選択されるジホスフィンリガンドを含有するロジウム錯体触媒より選択される。
【0055】
より好ましい触媒は、(R)−Cy−BIPHEMP、(R)−Cy−MeOBIPHEP、(S,R)−MOD−PPF−P(tBu)及び(S,R)−PPF−P(tBu)からなる群より選択されるキラルジホスフィンリガンドを含有するロジウム又はイリジウム錯体触媒より選択される。
【0056】
特に好ましい触媒は、上記と同義の式Aのキラルジホスフィンリガンドを含有するロジウム錯体触媒であり、最も好ましいのは、(S,R)−PPF−P(tBu)をキラルジホスフィンリガンドとして含有するロジウム錯体触媒である。
【0057】
上記のロジウム錯体触媒において、ロジウムは酸化数Iにより特徴付けられる。そのようなロジウム錯体は、中性又はアニオン性のいずれかの、さらなるリガンドを場合により含むことができる。
【0058】
そのような中性リガンドの例は、例えば、オレフィン類、例えば、エチレン、プロピレン、シクロオクテン、1,3−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ノルボルナジエン(nbd=ビシクロ−[2.2.1]ヘプタ−2,5−ジエン)、(Z,Z)−1,5−シクロオクタジエン(cod)、又はロジウムもしくはルテニウムと容易に可溶する錯体を形成する他のジエン類、ベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、p−シメン、あるいは、さらに、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン、メタノール及びピリジンなどの溶媒である。
【0059】
そのようなアニオン性リガンドの例は、ハロゲン化物、基アリール−O、又は基A−COO(ここで、Aは、低級アルキル、ハロゲン化低級アルキル及びアリールを表す)である。ロジウム錯体を荷電した場合、ハロゲン化物、BF、ClO、SbF、AsF、PF、B(フェニル)、B(3,5−ジ−トリフルオロメチル−フェニル)、CFSO、CSOなどの非配位性アニオンが存在する。
【0060】
ロジウム及びキラルジホスフィンを含有する好ましい触媒は、式:
【0061】
【化12】

【0062】
[式中、Xは、Cl、Br又はIなどのハロゲン化物、基 A−COO(ここで、Aは、低級アルキル、アリール又はハロゲン化低級アルキルを表す)であり、Bは、オキシ酸又はClO、PF、BR(ここで、Rはハロゲン又はアリールである)、SbF、AsF、CFSO及びCSOなどの錯酸のアニオンであり、Lは、上記と同義の中性リガンドである]の触媒である。好ましくは、ハロゲン化物は、塩化物である。好ましいA−COOは、CHCOO又はCFCOOである。好ましいBは、CFSOである。Lが、2個の二重結合を含むリガンド、例えば1,5−シクロオクタジエンの場合、そのようなLは1個のみ存在する。Lが、1個の二重結合のみを含むリガンド、例えばエチレンの場合、そのようなLは2個存在する。
【0063】
ロジウム錯体触媒は、例えば、ロジウム前駆体、例えばジ−η−クロロ−ビス[η−(Z,Z)−1,5−シクロオクタジエン]ジロジウム(I)([Rh(cod)Cl])、ジ−μ−クロロ−ビス[η−ノルボルナジエン]−ジロジウム(I)([Rh(nbd)Cl])、ビス[η−(Z,Z)−1,5−シクロオクタジエン]ロジウムテトラ−フルオロボラート([Rh(cod)]BF)又はビス[η−(Z,Z)−シクロオクタジエン]ロジウムペルクロラート([Rh(cod)]ClO)などを、キラルジホスフィンリガンドと適切な不活性有機又は水性溶媒中で反応させることにより製造することができる(例えば、J. Am. Chem. Soc, 1971, 93, p. 2397-2407又はE. Jacobsen, A. Pfaltz, H. Yamamoto (Eds), Comprehensive Asymmetric Catalysis I-III, Springer Verlag Berlin (1999)及びそこで引用された文献に記載の方法に従う)。
【0064】
上に示したルテニウム錯体触媒において、ルテニウムは、酸化数IIにより特徴付けられる。そのようなルテニウム錯体は、中性又はアニオン性のいずれかのさらなるリガンドを場合により含むことができる。そのような中性リガンドの例は、例えばオレフィン類、例えばエチレン、プロピレン、シクロオクテン、1,3−ヘキサジエン、ノルボルナジエン、1,5−シクロオクタジエン、ベンゼン、ヘキサメチルベンゼン、1,3,5−トリメチルベンゼン、p−シメン、又は、さらに、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ベンゾニトリル、アセトン及びメタノールなどの溶媒である。そのようなアニオン性リガンドの例は、CHCOO、CFCOO又はハロゲン化物である。ルテニウム錯体を荷電した場合、ハロゲン化物、BF、ClO、SbF、PF、B(フェニル)、B(3,5−ジ−トリフルオロメチル−フェニル)、CFSO、CSOなどの非配位性アニオンが存在する。
【0065】
当該適切なルテニウム錯体は、例えば以下の式:
【0066】
【化13】

【0067】
[式中、Zは、ハロゲン又は基A−COOを表し、Aは、低級アルキル、アリール、ハロゲン化低級アルキル又はハロゲン化アリールを表し、Dは、キラルジホスフィンリガンドを表す]により表すことができる。
【0068】
これらの錯体は、原則としてそれ自体公知の方法で、例えば、B. Heiserら, Tetrahedron: Asymmetry 1991, 2, 51又はN. Feikenら, Organometallics 1997, 16, 537又はJ.-P. Genet, Acc. Chem. Res. 2003, 36, 908, M.P. Flemingら, US 6,545,165 B1及びそこで引用された文献に従って製造できる。
【0069】
都合よく、かつ好ましくは、ルテニウム錯体は、例えば、式:
【0070】
【化14】

【0071】
[式中、Zは、ハロゲン又は基A−COOを表し、Aは、低級アルキル又はハロゲン化低級アルキルを表し、Lは、上記と同義の中性リガンドを表し、mは、数1、2又は3を表し、pは、数1又は2を表し、qは、数0又は1を表す]の錯体を、キラルジホスフィンリガンドと反応させることにより製造する。mが、数2又は3を表す場合、リガンドは、同一であるか、又は異なることができる。
【0072】
上述のようなロジウム、イリジウム又はルテニウム錯体触媒はまた、インサイチューで、すなわち、使用直前に単離せずに調製することができる。そのような触媒を調製した溶液は、エナンチオ選択的水素化のための基質をすでに含んでいるか、あるいは溶液を、水素化反応を開始する直前に、基質と混合することができる。
【0073】
本発明に係る式IIの化合物の不斉水素化は、水素圧1bar〜200barの範囲で起こる。好ましくは、不斉水素化を、10〜40barの圧力で実施する。反応温度は、20℃〜120℃の範囲で都合よく選択される。不斉水素化を反応温度50℃〜80℃で実施する方法が好ましい。この反応は、テトラヒドロフラン、エタノール及び2,2,2−トリフルオロエタノールなどの不活性有機溶媒中、あるいは2,2,2−トリフルオロエタノールと、ジクロロメタン、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ベンゾトリフルオリド(Ph−CF)、テトラヒドロフラン、酢酸エチル又はトルエンなどの他の溶媒との混合物中で実施することができる。好ましくは、ロジウム触媒水素化は2,2,2−トリフルオロエタノール中で実施する。ルテニウム触媒水素化は、2,2,2−トリフルオロエタノール、メタノール、エタノール、n−プロパノール及びジクロロメタンからなる群より選ばれる溶媒中、あるいはこれらの溶媒の混合物中で実施する。さらに好ましくは、ルテニウム触媒水素化を2,2,2−トリフルオロエタノール中で実施する。
【0074】
本発明の方法中で使用する触媒の量は、基質に対して20〜0.005mol%の範囲にあり、好ましくは基質に対して1〜0.01mol%の範囲にある。
【0075】
本発明の方法は添加剤の存在下で実施することができる。適切な添加剤は、無機又は有機塩及び有機塩基を含む。塩の例は、酢酸アンモニウム、炭酸セシウム、ギ酸ナトリウム及びリン酸ナトリウムである。有機塩基は、第2級又は第3級アミン、例えばジシクロヘキシルアミン、ジイソプロピルエチルアミン及びトリエチルアミンなどを含む。これらの塩基はそれぞれ、単独で又はそれらの2種以上の混合物として使用してもよい。使用する塩基の量は、通常、エナミンに対して、0.1〜2当量の範囲から、好ましくは0.1〜0.5当量の範囲から適切に選択する。
【0076】
工程b)は、アミノ保護基Protを導入して、式:
【0077】
【化15】

【0078】
[式中、R、R及びRは上記と同義であり、R1'は低級アルキル又はハロゲン化低級アルキルであり、Protはアミノ保護基を表す]のN−保護(2S)−アミノエステルを形成することを含む。
【0079】
用語「アミノ保護基」又は「Prot」は、アミノ基の反応性を妨げるために従来使用されている任意の置換基を表す。適切なアミノ保護基及びその導入は、Green T., "Protective Groups in Organic Synthesis", Chapter 7, John Wiley and Sons, Inc., 1991, 309-385に記載されている。適切なアミノ保護基は、トリクロロエトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル(Cbz)、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、フェニルアセチル、ホルミル、アセチル、ベンゾイル、tert−ブトキシカルボニル(Boc)、パラ−メトキシベンジルオキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、フタロイル、スクシニル、ベンジル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル(トリチル)、メタンスルホニル、パラ−トルエンスルホニル、ピバロイル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリフェニルシリルなどであるが、tert−ブトキシカルボニル(Boc)が好ましい。
【0080】
アミノ保護基の導入は、当業者に周知の手順に従って実施することができる。
【0081】
代替的には、工程a)及びb)を、式IIIa又はIIIbの化合物を単離せずに、1つの反応器中で共に実施することができる。例えば、Protがtert−ブトキシカルボニル(Boc)である場合、IIの不斉水素化をBocOの存在下で実施して、式IVa又はIVbのN−保護(S)−アミノエステルを直接形成することができる(Prot=tert−ブトキシカルボニル)。好ましくは、2,2,2−トリフルオロエタノール中のBocOの溶液を、水素化の間ポンプにより連続的に加える。
【0082】
好ましい実施態様において、工程b)は、R及びRがメトキシであり、Rが水素であり、R及びProtが前記と同義のエステルIVを製造することを含む。
【0083】
最も好ましくは、Rはエチルである。最も好ましくは、ProtはBocである。
【0084】
工程c)は、式IVのエステルをアミド化して、式V:
【0085】
【化16】

【0086】
[式中、R、R、R及びProtは上記と同義である]のアミドを形成することを含む。
【0087】
アミド化は通常、ホルムアミド/ナトリウムメトキシド(NaOMe)、ホルムアミド/ナトリウムエトキシド(NaOEt)、アセトアミド/ナトリウムメトキシド及びアセトアミド/ナトリウムエトキシドなどの適切なアミド化剤を用いて実施する。
【0088】
反応は、THF、MeTHF、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジオキサンなどの有機溶媒中、10℃〜70℃、好ましくは20℃〜45℃の温度で実施することができる。
【0089】
好ましい実施態様において、工程c)は、R及びRがメトキシであり、Rが水素であり、Protが上記と同義のアミドVを製造することを含む。
【0090】
最も好ましくは、ProtはBocである。
【0091】
所望の生成物は、式Vの(all−S)−ジアステレオマーである。したがって、最も好ましい生成物は、以下の構造V:
【0092】
【化17】

【0093】
を有する、(2S,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸アミドである。
【0094】
エステルのアミド化の間、位置3でエピマー化が起こり、そうして式IVbの3R−エピマーが、かなりの程度、式Vの3S−エピマーに変換されることが見出されている。
【0095】
さらなる工程:
【0096】
さらに別の実施態様(スキーム2、下記)に従って、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン(VII)を、例えばホフマン分解(Hoffmann Degradation)によりカルボキシアミド(V)から得ることができるアミノ−ピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(VI)と直接カップリングすることができる。カップリングにより、ピリド[2,1−a]イソキノリン(VIII)のヒドロキシメチル誘導体を得て、その後、それを次にフルオロメチル−ピロリジン−2−オン誘導体(IX)に環化することができる。後者を脱保護して、所望のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体(I)を得ることができる。
【0097】
【化18】

【0098】
さらに好ましい実施態様において、(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オン又はその薬学的に許容しうる塩の調製方法は次の工程を含む。
【0099】
d)[(2S,3S,11bS)−(3−カルバモイル−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)]−カルバミン酸tert−ブチルエステル[式V(式中、R及びRはメトキシであり、Rは水素であり、ProtはBocである)のアミド]を分解する工程、
【0100】
e)そのようにして得られた(2S,3S,11bS)−3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル[式VI(式中、R及びRはメトキシであり、Rは水素であり、ProtはBocである)のアミン]を、式VII:
【0101】
【化19】

【0102】
の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンとカップリングする工程、
【0103】
f)得られた(2S,3S,11bS)−3−((S)−3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを、塩基の存在下で、環化する工程、及び
【0104】
g)得られた(2S,3S,11Bs)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを脱保護する工程。
【0105】
PCT Int. Application WO 2005/000848に開示されたような式(II)のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体は、糖尿病、特にインスリン非依存型糖尿病、及び/又は耐糖能障害、並びに、通常、DPP−IVにより不活性化されるペプチドの増幅作用が治療上の利益を与える他の状態などのDPP IVに関連する疾患の治療及び/又は予防に有用である。驚くべきことに、本発明の化合物はまた、肥満、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、及び/又は代謝症候群の治療及び/又は予防、又はβ−細胞保護にも使用することができる。さらに、本発明の化合物は、利尿剤として使用でき、高血圧を治療及び/又は予防するために使用できる。予期せぬことに、本発明の化合物は、当該技術において既知の他のDPP−IV阻害剤と比較して、例えば、薬物動態学及び生物学的利用能などのコンテキストにおいて、改良された治療及び薬理学的特性を示す。
【0106】
以下の実施例は、本発明を限定することなく説明するであろう。
【0107】
実施例
【0108】
【表1】

【0109】
(S)−エナミンエステルは、(S)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル(又は、具体的に示せば、メチルもしくはトリフルオロエチルエステル)を意味する。
【0110】
(all−S)アミノエステルは、(2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチル(又は、メチルもしくはトリフルオロエチル)エステルを表す。
【0111】
(all−S)−N−Boc−エステルは、(2S,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル;(又は、具体的に示せば、メチルもしくはトリフルオロエチルエステル)を表す。
【0112】
(2R,3S,11bS)−N−Boc−エステルは、(2R,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを意味する。
【0113】
(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステルは、(2S,3R,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルを表す。
【0114】
(all−S)−N−Boc−アミドは、(2S,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸アミドを表す。
【0115】
前駆体化合物の合成
A)(±)−1−(3−エトキシカルボニル−2−オキソ−プロピル)−6,7−ジメトキシ−1,2,3,4−テトラヒドロ−イソキノリニウムクロリドの合成
【0116】
【化20】

【0117】
環状無水物1 250g、続いてヘプタン925mLを反応容器に装填した。温度を20〜25℃に保持しながら、エタノール925mLを15分かけて懸濁液に加えた。1時間の反応後、温度を20〜25℃に保持しながら、得られた溶液を、イミン塩酸塩2 370g、酢酸ナトリウム13.33g、エタノール2.77L及び水93mLからなる溶液に、1.5時間かけて加えた。反応の間、生成物は結晶化し始めた。1.5時間の反応後、37%HCl水溶液16.48mL、続いてヘプタン2.75Lを、30分間かけて加えた。黄色の懸濁液を室温で2時間撹拌し、濾過した。フィルターケーキを、エタノール599mL及びヘプタン1.2Lの冷混合物(0℃)で洗浄した。結晶を50℃にて、恒量になるまで10mbarで乾燥させて、アミン塩酸塩3 534g(収率88%、HPLC純度及び残留溶媒含有量により修正)。
【0118】
試薬として使用する式1の環状無水物を以下のとおり調製した:
【0119】
無水酢酸2.13L及び酢酸3Lを室温で反応容器に装填した。溶液を8〜10℃に冷却し、1,3−アセトンジカルボン酸2kgを加えた。反応混合物を8〜10℃で3時間撹拌した。約1.5時間の反応時間の後、ほとんどの溶液が得られ、生成物の結晶化が始まった。8〜10℃での3時間の反応時間の後、懸濁液を濾過した。結晶をトルエン4Lで洗浄し、恒量になるまで45℃/10〜20mbarで乾燥させて、環状無水物1 1.33kgを得た(収率80%)。
【0120】
B)(±)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの合成
【0121】
【化21】

【0122】
アミン塩酸塩3 480g、続いてメタノール7.2L及び酢酸ナトリウム108.9gを反応容器に装填した。温度を20〜22℃に保持しながら、得られた溶液を25分かけて、メタノール2.4L中の36%ホルムアルデヒド水溶液106.6mLに加えた。反応の2.5時間後、酢酸アンモニウム306.9gを加え、反応混合物を45〜50℃に加熱した。一晩撹拌した後、溶液を粘ちょうな油状物に濃縮した。ジクロロメタン4.0L、続いて水2.0Lを加えた。10%NaHCO水溶液3.0Lをゆっくりと加えた。有機相を分離し、10%NaCl水溶液3.0Lで洗浄した。水相を連続してジクロロメタン3.6Lで再抽出した。合わせた有機相を濃縮し、還流下でメタノール1.32Lに再溶解した。溶液を8時間かけて0℃に冷却し、0℃で8時間、−25℃で5時間撹拌し、その後懸濁液を濾過した。フィルターケーキを、少量ずつ、冷メタノール(−25℃)総量800mL及び冷ヘプタン(−25℃)300mLで洗浄した。結晶を45℃にて、3mbarで乾燥させて、エナミンエステル4 365gを得た(収率73%、HPLC純度及び残留溶媒により修正)。
【0123】
C)(S)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの、(2S,3S)−ビス−ベンジルオキシ−コハク酸との塩の合成
【0124】
【化22】

【0125】
機械式撹拌機、還流冷却器、温度計及びアルゴン注入口/排気口を備えた500mL四つ首フラスコに、ラセミエナミン4(10.0g、30.1mmol)を装填し、EtOH/HO 9:1(125mL)を加えた。混合物を50℃に加熱すると、清澄な黄色を帯びた溶液を得た。(+)−O,O’−ジベンゾイル−D−酒石酸5(10.8g、30.1mmol)を一度に加えて、清澄な溶液を得た。数分後、結晶化が始まった。混合物を2.5時間かけてゆっくりと周囲温度に冷却し、次にさらに14時間撹拌した。懸濁液を濾過し、フィルターケーキを、0℃にて、EtOH/HO(15mL)で洗浄した。真空下で乾燥した後、(S)−エナミン塩6(9.37g、収率45.1%、98.0% ee)を、白色の結晶として得た。鏡像体過剰率を、Chiralcel OD-Hカラムを用いたキラル固定相上のHPLCにより決定した。
融点=161℃
【0126】
D)(S)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルの合成
【0127】
【化23】

【0128】
磁気撹拌機を有する500mL一首丸底フラスコに、(S)−エナミン酒石酸塩6(18.6g、29.9mmol、99.0% ee)及びCHCl(180mL)を装填した。水酸化ナトリウム溶液(1.0N、180mL)を加え、混合物を室温で5分間撹拌した。混合物を分液漏斗に移し、水相をCHCl(180mL)で抽出した。NaSOで乾燥させ、濾過し、溶媒を蒸発させて、所望の(S)−エナミン7(8.77g、収率98%、99.0% ee)を黄色の泡状物として得た。鏡像体過剰率を、Chiralcel OD-Hカラムを用いたキラル固定相上のHPLCにより決定した。
【0129】
ジホスフィンリガンドの略称
【0130】
【表2】





【0131】
実施例1
(2S,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸アミドの調製
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコ(Erlenmeyer flask)に、[Rh(COD)TFA] 4.88mg(0.0075mmol)、(S,R)−PPF−P(tBu) 9.12mg(0.016mmol)及びトリフルオロエタノール5mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0132】
b)不斉水素化(S/C 500)
グローブボックス中で、磁気撹拌棒を備えた35mLガラス線オートクレイブに、(S)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル7 0.50g(1.50mmol)、トリフルオロエタノール3mL及び上記触媒溶液1mLを装填した。オートクレイブを密閉し、水素(30bar)で加圧した。反応混合物を、65℃で18時間、撹拌しながら水素化した。この時点で、HPLC分析に従って、反応が完了した。水素化混合物(橙色の溶液)をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.492mg(2.26mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物(0.65g)のHPLC分析は、(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルからなる保持時間16.2分(77面積%)のピーク、(2S,3S,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸トリフルオロエチルエステルからなる保持時間18.2分(13.6面積%)のピーク(13.6面積%)、及び(2S,3R,11bS)−2−tert.−ブトキシカルボニルアミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2Hピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステルからなる保持時間20.3分(1.6面積%)のピークを示した。
【0133】
c)アミド化
THF 7mL中の上記残留物の溶液を、ホルムアミド0.60mL(15.1mmol)及びメタノール(4.5mmol)中のナトリウムメチラートの30%溶液0.84mLで処理し、一晩室温で撹拌した。得られた懸濁液に、水3.5mLを加え、混合物を3時間加熱還流し、室温に冷却し、吸引により濾過した。フィルターケーキを、水/THF 1:2 総量6mL、脱イオン水2mLで洗浄し、60℃にて5時間、5mbarで乾燥させて、(2S,3S,11bS)−N−Boc−アミド8 0.46gを、HPLCにより、99.1面積%の純度で得た。
【0134】
水素化及びアミド化の変換及び選択性の決定のためのHPLCの条件:X-Bridge C18カラムを有するAgilent Mod. 1100(Waters, Taunton, Mass., USA)、孔3.5μm、4.6×150mm;溶離剤:A(5%アセトニトリル及び1%トリエチルアミンを含むHO)、B(1%トリエチルアミンを含むアセトニトリル)。プログラム:開始時85%A/15%B 2分間、次に30%A/70%B 18分以内、アイソクラチック(isocratic)10分、波長285nm。
2131の元素分析:
C 62.20(計算値62.10);H 7.71(計算値7.63)、N 10.36(計算値10.28)
【0135】
実施例2
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)TFA] 1.95mg(0.0030mmol)、DCyPP 2.89mg(0.0066mmol)及びトリフルオロエタノール1mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0136】
b)不斉水素化(S/C 25)
グローブボックス中で、上記触媒溶液を、ガラスバイアル中、(S)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル7 0.050g(0.15mmol)に加え、バイアルをオートクレイブに置いた。オートクレイブを密閉し、水素(30bar)で加圧した。反応混合物を、50℃で18時間、撹拌しながら水素化した。水素化混合物をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.050mg(0.23mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、97.5%の変換、(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Bocエチルエステルからなる保持時間16.2分(58面積%)のピーク、(2S,3S,11bS)−N−Boc−トリフルオロメチルエステルからなる保持時間18.2分(4.1面積%)のピーク、(2R,3R,11bS)−N−Boc−エステルからなる保持時間17.4分(4.6面積%)のピーク及び(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステルからなる保持時間20.3分(3.6面積%)のピークを示した。
【0137】
c)アミド化
カルボン酸エステル基を、実施例1の記載と同様の方法で、THF中の残留物をホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液で処理することにより、対応するアミドに変換した。HPLC分析は、混合物が所望の(2S,3S,11bS)−N−Boc−アミド8を44%含有することを示した。
【0138】
実施例3.1〜3.5
種々の非キラルジホスフィンを、[Rh(COD)TFA]との触媒のインサイチュ形成に用い、実施例2と同様にして、下記の表1中の以下の実験を実施した(S/C 25)。
【0139】
【表3】

【0140】
a)ホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液を用いたアミド化反応の後、HPLCにより決定、面積%。
【0141】
実施例4
種々のキラルジホスフィンを、[Rh(COD)TFA](前駆体A)、[Rh(COD)Cl](前駆体B)又は[Rh(COD)2]OTf(前駆体C)との触媒のインサイチュ形成に用い、実施例2と同様にして、表2中の実験を実施した(S/C 25)。
【0142】
【表4】

【0143】
a)ホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液を用いたアミド化反応の後、HPLCにより決定、面積%。;b)実施例1と同様にして、基質としての(S)−エナミンエチルエステル0.5gに対して実験を実施した;c)(S)−エナミンエチルエステル0.60gを、S/C 25にて、35mLオートクレイブ中で、基質として使用し、(all−S)−N−Boc−アミドの単離収率は70%であった。
【0144】
実施例5
種々のキラルジホスフィンを、[Rh(COD)TFA](前駆体A)、[Rh(COD)Cl](前駆体B)又は[Rh(COD)]OTf(前駆体C)、[Rh(COD)]SbF(前駆体D)との触媒のインサイチュ形成に用い、実施例2と同様にして、表3a及び3b中の実験を実施した(S/C 25)。
【0145】
【表5】

【0146】
【表6】

【0147】
a)ホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液を用いたアミド化反応の後、HPLCにより決定、面積%。;b)(S)−エナミン0.70gを、S/C 50にて、35mLオートクレイブ中で、基質として使用した;c)この実験を、実施例11と同様にして、S/C 1500にて実施した。d)(all−S)−N−Boc−エチルエステル+(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル+(2S,3S,11bS)−N−Boc−2,2,2−トリフルオロエチルエステルの含有量(%)、(all−S)−N−Boc−アミドの含有量ではない。
【0148】
実施例5a
(S)−エナミンエチルエステル50mgを、触媒としての[Rh(COD)]OTf/(S,R)−PPF−P(tBu)と共に、溶媒総量1mL中、S/C 50にて用い、実施例2と同様にして、表4の実験を実施した。
【0149】
【表7】

【0150】
a)エステルを一緒に添加:(all−S)−N−Boc−エチルエステル+(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル+(2S,3S,11bS)−N−Boc−2,2,2−トリフルオロエチルエステル;ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート50mgでの処理の後、HPLCにより決定、面積%。b)トリフルオロエチル及びメチルエステルの混合物として。
【0151】
実施例5b
表5中の実験を、添加剤(0.15mmol)を加えて、実施例8と同様にして実施した。
【0152】
【表8】

【0153】
a)ホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液を用いたアミド化反応の後、HPLCにより決定、面積%;
【0154】
実施例6
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)TFA] 7.4mg(0.011mmol)、(R)−Cy2−BIPHEMP 14.0mg(0.025mmol)及びトリフルオロエタノール5mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0155】
b)不斉水素化(S/C 200)
グローブボックス中で、上記触媒溶液1mLを、ガラスバイアル中、トリフルオロエタノール2mL中の(S)−エナミンエチルエステル7 0.30g(0.90mmol)の溶液に加え、バイアルをオートクレイブに置いた。オートクレイブを密閉し、水素(30bar)で加圧した。反応混合物を、50℃で18時間、撹拌しながら水素化した。水素化混合物をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.306g(1.4mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、99.6%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(84面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2−トリフルオロエチルエステル(7.6面積%)、(2R,3R,11bS)−N−Boc−エステル(0.3面積%)を示した。
【0156】
c)アミド化
カルボン酸エステル基を、実施例1cの記載と同様の方法で、THF中の残留物をホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液で処理することにより、対応するアミドに変換した。HPLC分析は、混合物が所望の(2S,3S,11bS)−N−Boc−アミド8を84%含有することを示した。
【0157】
実施例7
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)TFA] 7.4mg(0.011mmol)、(R)−Cy−MeOBIPHEP14.8mg(0.025mmol)及びトリフルオロエタノール5mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0158】
b)不斉水素化(S/C 200)
グローブボックス中で、上記触媒溶液1mLを、ガラスバイアル中、トリフルオロエタノール2mL中の(S)−エナミンエチルエステル7 0.30g(0.90mmol)の溶液に加え、バイアルをオートクレイブに置いた。オートクレイブを密閉し、水素(30bar)で加圧した。反応混合物を、50℃で18時間、撹拌しながら水素化した。水素化混合物をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.306g(1.4mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、99.5%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(80面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2−トリフルオロエチルエステル(6.7面積%)、(2R,3R,11bS)−N−Boc−エステル(0.3面積%)を示した。
【0159】
c)アミド化
カルボン酸エステル基を、実施例1cの記載と同様の方法で、THF中の残留物をホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液で処理することにより、対応するアミドに変換した。HPLC分析は、混合物が所望の(2S,3S,11bS)−N−Boc−アミド8を79%含有することを示した。
【0160】
実施例8
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)]OTf 7.0mg(0.015mmol)、(S,R)−PPF−P(tBu) 9.00mg(0.016mmol)及びトリフルオロエタノール5mLを装填した。混合物を室温で1.5時間撹拌した。
【0161】
b)不斉水素化(S/C 500)
グローブボックス中で、磁気撹拌棒を備えた35mLガラス線オートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル7 0.50g(1.50mmol)、トリフルオロエタノール3mL及び上記触媒溶液1mLを装填した。オートクレイブを密閉し、水素(30bar)で加圧した。反応混合物を、50℃で18時間、撹拌しながら水素化した。水素化混合物(橙色の溶液)をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.492mg(2.26mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、99.9%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(77面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2−トリフルオロエチルエステル(15面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(1.9面積%)を示した。
【0162】
実施例9
a)触媒溶液のインサイチュ調製:実施例8と同じ
【0163】
b)不斉水素化(S/C 500)
グローブボックス中で、磁気撹拌棒を備えた35mLガラス線オートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル7 0.50g(1.50mmol)、トリフルオロエタノール3mL及び上記触媒溶液1mLを装填した。オートクレイブを密閉し、水素(10bar)で加圧した。反応混合物を、50℃で18時間、撹拌しながら水素化した。水素化混合物(橙色の溶液)をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.492mg(2.26mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、完全な変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(77面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2−トリフルオロエチルエステル(15面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(1.3面積%)を示した。
【0164】
実施例10
a)触媒溶液のインサイチュ調製:実施例AH8と同じ
【0165】
b)不斉水素化(S/C 500)
グローブボックス中で、磁気撹拌棒を備えた35mLガラス線オートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル7 0.50g(1.50mmol)、トリフルオロエタノール3mL及び上記触媒溶液1mLを装填した。オートクレイブを密閉し、水素(30bar)で加圧した。反応混合物を、80℃で18時間、撹拌しながら水素化した。水素化混合物(橙色の溶液)をオートクレイブから取り出し、ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート0.492mg(2.26mmol)を加え、混合物を40℃で1時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、99.9%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(85面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2−トリフルオロエチルエステル(9面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(1.4面積%)を示した。
【0166】
c)アミド化
この実施例の残留物を実施例8及び9の残留物と合わせ、実施例1cと同様にして、ホルムアミド及びメタノール中のナトリウムメチラートの30%溶液で処理することにより、対応するアミドに変換した。沈殿物を濾過し、乾燥させた後、(S,S,S)−N−Boc−アミド1.46g(80%)を、HPLCにより、純度98.3面積%で単離した。
【0167】
実施例11
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)]OTf 6.9mg(0.015mmol)、(S,R)−PPF−P(tBu) 8.15mg(0.016mmol)及びトリフルオロエタノール6mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0168】
b)不斉水素化(S/C 2000)
グローブボックス中で、185mLオートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル7 9.97g(30mmol)、トリフルオロエタノール65mL及び上記触媒溶液を装填した。オートクレイブを密閉し、60℃にて、水素30barで、撹拌しながら水素化を実施した。16時間後、オートクレイブを開け、反応混合物(橙色の溶液)を、テトラヒドロフラン10mLと共に、ガラスフラスコに移した。ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート9.64g(44.2mmol)を加えた後、混合物を40℃で1.5時間撹拌し、真空下で蒸発乾固した。残留物のHPLC分析は、99.2%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(80面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2,2,2−トリフルオロエチルエステル(12面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(1.2面積%)を示した。
【0169】
c)アミド化
残留物をテトラヒドロフラン120mLに溶解し、36℃にて一晩、ホルムアミド(12mL、302mmol)及びメタノール中のナトリウムメチラートの30%溶液(16.5mL、88.9mmol)で処理することにより、対応するアミドに変換した。得られた懸濁液を、還流下、水で処理し、室温に冷却し、吸引により濾過した。フィルターケーキを、総量12mLのTHF/水 2:1の混合物で十分に洗浄した。沈殿物を乾燥させた後、濾過し、沈殿物を乾燥させた後、(S,S,S)−N−Boc−アミド9.79g(82%)を、HPLCにより、純度99.6面積%で単離した
【0170】
21lNの元素分析
計算値 実測値
C 62.20 61.95
H 7.71 7.61
N 10.36 10.19
残留物 <0.1%
【0171】
実施例12
a)基質溶液の調製
250mL丸底フラスコ中で、(S)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,6,7,11b−テトラヒドロ−4H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−カルボン酸エチルエステル20.72g、(2S,3S)−ビス−ベンゾイルオキシ−コハク酸塩6、炭酸ナトリウム7.0g、酢酸イソプロピル100mL及び脱イオン水80mLの混合物を、30分間激しく撹拌した。水相を分離した後、有機相を水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させ、ロータベーパー(rotavapor)で部分的に蒸発させて、総重量16gにした。(S)−エナミンエチルエステル7の理論含有量は9.97gであった。溶液をグローブボックスに導入した。
【0172】
b)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)]OTf 9.37mg(0.02mmol)、(S,R)−PPF−P(tBu) 9.37mg(0.02mmol)及びトリフルオロエタノール4mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0173】
b)不斉水素化(S/C 1500)
グローブボックス中で、185mLオートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル7の上記溶液、トリフルオロエタノール54mL及び上記触媒溶液を装填した。オートクレイブを密閉し、60℃にて、水素30barで、撹拌しながら水素化を実施した。16時間後、オートクレイブを開け、反応混合物(橙色の溶液)を、メタノール総量10mLと共に、ガラスフラスコに移した。ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート9.82g(45mmol)を加えた後、混合物を40℃で1.5時間撹拌し、真空下、メタノール総量150mLを同時に加えながら蒸発させた。最後に、残留物(総量35g)をテトラヒドロフラン30mLに取った。残留物のHPLC分析は、97.7%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(77面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2,2,2−トリフルオロエチルエステル(11.1面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(0.3面積%)を示した。
【0174】
c)アミド化
上記溶液を、36℃にて一晩、ホルムアミド(12mL、302mmol)及びメタノール中のナトリウムメチラートの30%溶液(17mL、88.9mmol)で処理することにより、実施例11に記載のとおりの対応するアミドに変換した。沈殿物を乾燥させた後、(S,S,S)−N−Boc−アミド8 10.11g(83%)を、HPLCにより、純度98.8面積%で単離した
【0175】
実施例13
a)触媒溶液のインサイチュ調製を実施例11のとおりに実施した。
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)]OTf 6.9mg(0.015mmol)、(S,R)−PPF−P(tBu) 8.15mg(0.016mmol)及びトリフルオロエタノール6mLを装填した。混合物を室温で2時間撹拌した。
【0176】
b)不斉水素化(S/C 2000)
グローブボックス中で、185mLオートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル7 9.97g(29mmol、96.7%の純度)、ギ酸ナトリウム204mg(3.0mmol)、トリフルオロエタノール60mL及び上記触媒溶液を装填した。オートクレイブを密閉し、60℃にて、水素30barで、撹拌しながら水素化を実施した。16時間後、オートクレイブを開け、反応混合物(橙色の溶液)を、メタノール10mLと共に、ガラスフラスコに移した。ジ−tert.−ブチル−ジカルボナート9.82g(45mmol)を加えた後、混合物を40℃で1.5時間撹拌し、真空下、メタノール150mLを同時に加えながら蒸発させて、総重量36gの溶液にした。残留物のHPLC分析は、99.6%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(79面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2,2,2−トリフルオロエチルエステル(8.6面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(0.5面積%)を示した。
【0177】
c)アミド化
上記溶液に、テトラヒドロフラン100mLを加え、次に36℃にて一晩、ホルムアミド(12mL、302mmol)及びメタノール中のナトリウムメチラートの30%溶液(17mL、91.6mmol)で処理することにより、対応するアミドへの変換を実施した。得られた懸濁液を、還流下、水で処理し、室温に冷却し、吸引により濾過した。フィルターケーキを、総量12mLのTHF/水 2:1の混合物で十分に洗浄した。沈殿物を乾燥させた後、(S,S,S)−N−Boc−アミド8 9.37g(80%)を、HPLCにより、純度99.4面積%で単離した
【0178】
実施例14
a)触媒溶液のインサイチュ調製
グローブボックス(O含有量<2ppm)中で、エルレンマイヤーフラスコに、[Rh(COD)]OTf 7.1mg(0.015mmol)、(S,R)−PPF−P(tBu) 8.99mg(0.016mmol)及びトリフルオロエタノール5mLを装填した。混合物を室温で1時間撹拌した。
【0179】
c)不斉水素化(S/C 1500)
グローブボックス中で、60mLオートクレイブに、(S)−エナミンエチルエステル1.50g(4.51mmol)、トリフルオロエタノール12mL及び上記触媒溶液1mLを装填した。オートクレイブを密閉し、70℃にて、水素10barで、撹拌しながら水素化を実施する一方、トリフルオロエタノール7mL中のBocO 1.50g(6.78mmol)の溶液を、4.5時間ポンプにより加えた。22時間後、オートクレイブを開け、反応混合物(橙色の溶液)を、メタノール総量5mLと共に、ガラスフラスコに移した。HPLC分析は、N−Boc−保護対遊離エステルの比が1:2.7であることを示した。BocO 1.5gを加えた後、混合物を40℃で1.5時間撹拌し、真空下で蒸発させた。最後に、残留物をテトラヒドロフラン10mLに取った。残留物のHPLC分析は、99.8%の変換、ならびに以下の組成:(2S,3S,11bS)−及び(2R,3S,11bS)−N−Boc−エチルエステル(67面積%)、(2S,3S,11bS)−N−Boc−2,2,2−トリフルオロエチルエステル(22.5面積%)、(2S,3R,11bS)−N−Boc−エステル(0.8面積%)を示した。
【0180】
実施例15
基質としての(S)−エステル50mg(0.15mmol)及び種々のキラルルテニウム触媒(0.0066mmol)を用い、実施例2と同様にして、表6の実験を実施した(S/C 25)。
【0181】
【表9】

【0182】
a)ホルムアミド及びナトリウムメチラート溶液を用いたアミド化反応の後、HPLCにより決定、面積%;b)キラルジホスフィンをトリフルオロエタノール中の[Ru(OAc)(COD)]と室温で2.5時間反応させることにより、グローブボックス中で触媒をインサイチュで調製した。
【0183】
実施例16
(2S,3S,11bS)−(3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
【0184】
【化24】

【0185】
機械式撹拌機、Pt-100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた6L四つ首フラスコに、アミド7 100g(242mmol)を装填し、2N水酸化ナトリウム溶液982mLを加え、混合物を室温で5分間撹拌した。アセトニトリル1.75Lを加え、撹拌をさらに30分間続けた。得られた懸濁液に、温度を18〜22℃に維持しながら、水240mL及びアセトニトリル500mL中のジアセトキシヨードソベンゼン95.5g(291mmol)の溶液を15分間加えた。わずかに黄色の反応混合物を室温で15分間撹拌した。いくつかの不溶解結晶を含有するわずかに黄色の2相混合物が形成され、それに塩化ナトリウム400gを加え、混合物を室温で20分間さらに撹拌し、次に5℃に冷却した。25%塩酸220mL及び水220mLの溶液をゆっくりと30分間加えて、pHを約5.5にした。pH8以降は、沈殿物が形成された。懸濁液を、5〜10℃にて75分間、pH5.5でさらに撹拌した。懸濁液を濾別し、反応器中に戻し、ジクロロメタン1.5Lに懸濁した。10%重炭酸ナトリウム溶液1Lを懸濁液に加え、混合物を15分間撹拌すると、pHは8に達した。有機相を分離し、水相をジクロロメタン1Lで再び抽出した。有機相を回収し、結晶点の直前まで45℃で濃縮した。TBME 275mLを加え、得られた懸濁液を室温で1時間、次に0〜4℃で1.5時間撹拌した。次に、結晶を濾別し、冷TBME総量150mLで少量ずつ洗浄した。
【0186】
結晶を40〜45℃にて48時間、10mbarで乾燥させ、次にエタノール530mL及びメタノール530mLの混合物に懸濁し、室温で2時間撹拌した。沈殿物を濾別し、総量100mLのメタノール及びエタノール 1:1の混合物で少量ずつ洗浄した。濾液を50℃で蒸発乾固し、結晶を50℃/1mbarで乾燥させた。次に、それらをTBME 400mLに懸濁し、20℃で2時間、次に0℃で2時間撹拌した。結晶を濾別し、冷TBME総量200mLで少量ずつ洗浄した。結晶を40〜45℃にて24時間、≦20mbarで乾燥させて、アミン9 67.2gを得た(73%収率、;アッセイ:99%)。
【0187】
実施例17
(2S,3S,11bS)−(3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンへの変換
a)4−フルオロメチル−5H−フラン−2−オンの調製
機械式撹拌機、Pt-100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を備える6L反応器に、4−ヒドロキシメチル−5H−フラン−2−オン500g(4.38mmol)及びジクロロメタン2.0Lを装填した。溶液を−10℃に冷却し、冷却浴を用いて温度を−5〜−10℃に維持しながら、ビス−(2−メトキシエチル)アミノ硫黄トリフルオリド(Deoxo-Fluor)1.12kg(4.82mol)を50分間加えた。添加の間、黄色を帯びたエマルションが形成され、添加の終了後、これは橙赤色の溶液に溶解した。この溶液を15〜20℃で1.5時間撹拌し、次に−10℃に冷却した。温度を−5〜−10℃に維持しながら、エタノール1.00L中の水250mLの溶液を30分間加え、その後混合物を15〜20℃にした。次に、それを、ロータリーエバポレーター中、40℃/600〜120mbarで、約1.6Lの容量に濃縮した。残留物をジクロロメタン2.0Lに溶解し、1N塩酸4.0Lで3回洗浄した。合わせた水層を、ジクロロメタン1.4Lで3回抽出した。合わせた有機層を、ロータリーエバポレーター中で蒸発させて、粗生成物681gを暗褐色の液体として得た。この物質を0.1mbarにてVigreuxカラムで蒸留し、生成物画分を71〜75℃で回収した(312g)。この物質を同じ条件で再蒸留し、画分を65〜73℃で回収して、4−フルオロメチル−5H−フラン−2−オン299gを得た(収率58%;アッセイ:99%)。
MS: m/e 118 M+, 74, 59, 41
【0188】
b)(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンの調製
機械式撹拌機を備えた2Lオートクレイブに、メタノール284mL中の4−フルオロメチル−5H−フラン−2−オン(8.27×10−1mol)96.0gの溶液を装填した。オートクレイブを密閉し、微量の酸素も除去すべく、アルゴン(7bar)で数回加圧した。アルゴン(〜1bar)下、メタノール100mL中のRu(OAc)((R)−3,5−tBu−MeOBIPHEP)82.74mg(6.62×10−5mol)(S/C 12500)の溶液を、撹拌しながら、グローブボックス(O含有量<2ppm)中、前もって装填した触媒添加装置より加え、アルゴン(7bar)で加圧した。オートクレイブ中のアルゴン雰囲気を水素(5bar)で置き換えた。この圧力で、反応混合物を30℃で20時間撹拌し(〜800rpm)、次にオートクレイブから取り出し、真空下で濃縮した。残留物を蒸留して、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン91.8g(94%)を得た。生成物の化学純度は、GC面積により99.7%であった。
【0189】
c)(2S,3S,11bS)−3−((S)−3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
機械式撹拌機、Pt-100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた1.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステル50g(128mmol)、トルエン500mL及び2−ヒドロキシピリジン2.51g(25.6mmol)を装填した。このわずかに褐色を帯びた懸濁液に、(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オン22.7g(192mmol)を室温で滴下した。添加の間、発熱は観察されなかった。滴下漏斗をトルエン総量100mLで少量ずつすすいだ。懸濁液を加熱還流すると、それは60℃から清澄な溶液に変化し、還流下で40分後、再び懸濁液が形成された。還流下で合計23時間後、粘ちょうな懸濁液を室温に冷却し、ジクロロメタン100mLで希釈し、室温で30分間撹拌した。濾過後、フィルターケーキを、トルエン総量200mLで少量ずつ、次にジクロロメタン総量100mLで少量ずつ洗浄した。フィルターケーキを、50℃/10mbarで20時間乾燥させて、生成物60.0gを得た(収率94%;アッセイ:100%)。
MS: m/e 496 (M+H)+, 437
【0190】
d)(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルの調製
機械式撹拌機、Pt-100温度計、滴下漏斗、冷却浴及び窒素注入口を備えた1.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−((S)−3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル28g(56.5mmol)及びTHF 750mLを装填した。混合物を0℃に冷却し、温度を0〜5℃に維持しながら、THF 42mL中のメタンスルホン酸6.17mL(79mmol)の溶液を10分間加えた。0℃で、THF 42mL中のトリエチルアミン12.6mL(90.2mmol)の溶液を15分間加えた。得られた懸濁液を0〜5℃で80分間撹拌すると、それは徐々に粘ちょうになった。次に、1Mリチウム−ビス(トリメチルシリル)アミド141mL(141mmol)を混合物に15分間加えると、懸濁液が溶解した。溶液を60分間撹拌しながら室温にした。水500mLを、冷却せずに加え、混合物を抽出し、その後水相を500mL及び250mLのジクロロメタンで抽出した。有機層をそれぞれ半飽和ブライン300mLで洗浄し、合わせ、ロータリーエバポレーターで蒸発させた。得られた泡状物をジクロロメタン155mLに溶解し、濾過し、再び蒸発させて、粗生成物30.5gをわずかに褐色を帯びた泡状物として得た。この物質をメタノール122mLに溶解すると、粘ちょうな懸濁液を得て、それを溶解し、過熱還流した。20分間の還流後、溶液を2時間徐々に室温に冷却すると、10分後結晶化が始まった。2時間後、懸濁液を0℃に1時間、続いて−25℃に1時間冷却した。予冷したガラス焼結漏斗により結晶を濾別し、TBME 78mLで少量ずつ洗浄し、45℃/20mbarで18時間乾燥させて、生成物RO4876706 21.0gを白色の結晶として得た(収率77%;アッセイ:99.5%)。
MS: m/e 478 (M+H)+, 437, 422.
【0191】
e)(2S,3S,11bS)−1−(2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4(S)−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンジヒドロクロリドの調製
機械式撹拌機、Pt-100温度計、滴下漏斗及び窒素注入口を備えた2.5L反応器に、(2S,3S,11bS)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステル619g(1.30mol)、イソプロパノール4.2L及び水62mLを装填し、懸濁液を40〜45℃に加熱した。第2の容器中で、イソプロパノール1.98Lを0℃に冷却し、温度を0〜7℃に維持しながら、塩化アセチル461mL(6.50mol)を35分間加えた。添加の終了後、混合物を約15℃にし、次にゆっくりと1.5時間第1の容器に加えた。添加の終了後、混合物を40〜45℃で18時間撹拌すると、1時間後結晶化が始まった。白色の懸濁液を20℃に2時間冷却し、その温度で1.5時間撹拌し、濾過した。結晶をイソプロパノール1.1Lで少量ずつ洗浄し、45℃/20mbarで72時間乾燥させて、生成物583gを白色の結晶として得た(収率100%;アッセイ:99.0%)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程a)及び/又はb)及び/又はc)を含む、式I:
【化25】


[式中、R、R及びRは、互いに独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニル(ここで、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級アルケニルは、場合により、低級アルコキシカルボニル、アリール及びヘテロシクリルより選択される基により置換されていてもよい)からなる群より選択される]のピリド[2,1−a]イソキノリン誘導体の調製方法であって、
工程a)が、遷移金属触媒の存在下で、式II:
【化26】


[式中、R、R及びR

上記と同義であり、Rは低級アルキルである]のエナミンを触媒的不斉水素化して、式IIIaの(all−S)−アミノエステルを、単独で又は3R−エピマーIIIbとの混合物として形成することを含み
【化27】


[式中、R、R及びRは上記と同義であり、R1'は低級アルキル又はハロゲン化低級アルキルである];
工程b)が、アミノ保護基Protを導入して、式:
【化28】


[式中、R1'、R、R及びRは上記と同義であり、Protはアミノ保護基を表す]のN−保護(2S)−アミノエステルを形成することを含み;
工程c)が、式IVのエステルをアミド化して、式V:
【化29】


[式中、R、R、R及びProtは上記と同義である]のアミドを形成することを含む、方法。
【請求項2】
工程a)の不斉水素化を、ジホスフィンリガンドを含有する、ルテニウム、ロジウム又はイリジウム錯体触媒から選択される遷移金属触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)の不斉水素化を、ジホスフィンリガンドを含有する、ロジウム錯体触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
ジホスフィンリガンドが、式A〜Q:
【化30】




[式中、
はそれぞれ、互いに独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及び低級アルキルからなる群より選択され;
5’は、水素及び低級アルキルからなる群より選択され;
5”は、水素、低級アルキル及びフェニルからなる群より選択され;
はそれぞれ、互いに独立して、低級アルキルであり;
はそれぞれ、互いに独立して、低級アルキル又はアリールであり;
及びR8’は、互いに独立して、低級アルキル、低級アルコキシ、ヒドロキシ及び−O−C(O)−低級アルキルからなる群より選択され;
、R9’、R10及びR10’は、互いに独立して、水素、低級アルキル、低級アルコキシ及び低級ジアルキルアミノからなる群より選択されるか;あるいは
及びR、R8’及びR9’、R及びR10、R9’及びR10’又はR及びR8’は、両方が一緒になって、−X−(CHn−Y−(ここで、Xは−O−又は−C(O)O−であり、Yは−O−又は−N(低級アルキル)−であり、nは1〜6の整数である)であるか;あるいは
及びR、R8’及びR9’、R及びR10又はR9’及びR10’は、両方が一緒になって、−CF−基であるか、又はそれらが結合する炭素原子と一緒になってナフチル、テトラヒドロナフチル、ジベンゾチエニル又はジベンゾフラニル環を形成し;
11及びR11’は、互いに独立して、アリール、低級アルキル、ヘテロアリール及びシクロアルキルからなる群より選択されるか;あるいは
11及びR11’は、一緒になって、キラルホスホラン又はホスフェタン環を形成する]からなる群より選択されることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
ジホスフィンリガンドが、式A:
【化31】


[式中、
はそれぞれ、互いに独立して、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル及び低級アルキルからなる群より選択され;
5’は、水素及び低級アルキルからなる群より選択され;
5”は、水素、低級アルキル及びフェニルからなる群より選択される]であることを特徴とする、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項6】
工程a)の不斉水素化を、(R)−Cy−BIPHEMP、(R)−Cy−MeOBIPHEP、(S,R)−MOD−PPF−P(tBu)及び(S,R)−PPF−P(tBu)からなる群より選択されるキラルジホスフィンリガンドを含有するロジウム錯体を用いて実施することを特徴とする、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項7】
工程a)の不斉水素化を、(S,R)−PPF−P(tBu)をキラルジホスフィンリガンドとして含有するロジウム錯体触媒を用いて実施することを特徴とする、請求項1〜3に記載の方法。
【請求項8】
不斉水素化を、不活性有機溶媒中で実施することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
不斉水素化を、2,2,2−トリフルオロエタノール中で実施することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
不斉水素化が、水素圧1bar〜200barの範囲で起こることを特徴とする、請求項1〜9に記載の方法。
【請求項11】
不斉水素化が、反応温度20℃〜120℃の範囲で起こることを特徴とする、請求項1〜10に記載の方法。
【請求項12】
工程b)において、tert−ブトキシカルボニルをアミノ保護基として導入することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程c)のアミド化を、ホルムアミド/ナトリウムメトキシド、ホルムアミド/ナトリウムエトキシド、アセトアミド/ナトリウムメトキシド及びアセトアミド/ナトリウムエトキシドを用いて実施することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
工程c)のアミド化を、有機溶媒中、10℃〜70℃の温度で実施することを特徴とする、請求項1又は13に記載の方法。
【請求項15】
(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンの調製のための、請求項1〜14に記載の方法。
【請求項16】
d)[(2S,3S,11bS)−(3−カルバモイル−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを分解する工程、
e)そのようにして得られた(2S,3S,11bS)−3−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル)−カルバミン酸tert−ブチルエステルを、式VII:
【化32】


の(S)−4−フルオロメチル−ジヒドロ−フラン−2−オンとカップリングする工程、
f)得られた(2S,3S,11bS)−3−(3−フルオロメチル−4−ヒドロキシ−ブチリルアミノ)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを、塩基の存在下で、環化する工程、及び
g)得られた(2S,3S,11bs)−3−((4S)−フルオロメチル−2−オキソ−ピロリジン−1−イル)−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−2−イル]−カルバミン酸tert−ブチルエステルを脱保護する工程が後に続く、請求項1〜14に記載の方法を含む、(S)−1−((2S,3S,11bS)−2−アミノ−9,10−ジメトキシ−1,3,4,6,7,11b−ヘキサヒドロ−2H−ピリド[2,1−a]イソキノリン−3−イル)−4−フルオロメチル−ピロリジン−2−オンの調製のための、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
本明細書に記載の新規の方法。

【公表番号】特表2010−504288(P2010−504288A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−527784(P2009−527784)
【出願日】平成19年9月5日(2007.9.5)
【国際出願番号】PCT/EP2007/059265
【国際公開番号】WO2008/031750
【国際公開日】平成20年3月20日(2008.3.20)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】